仮面ライダー×仮面ライダー ファズム&ブライ MOVIE大戦MEGAMAX
MOVIE大戦MEGA MAX


日本某所・空港X付近。

――ブゥゥゥゥウウゥゥゥゥン!!――

駐車場の役目を担ったビルの内部を駆け上がる四台のバイクと二台のバイク。
それは欲望の戦士たちと神秘の戦士たち。
即ち、鋼刃介、火野映司、真庭竜王、ルナイト・ブラッドレイン・シルフィード、アヴェンジャー、如月弦太郎である。

「待たせちまったな」

全員がバイクから降り、ヘルメットを脱ぐ中で刃介が軽い挨拶を待ち人に向けて交わした。
そこにいたのは特徴的なカラーリングをしたバイクでここへやってきたであろう二組のコンビ。

「あんたらがWとイーヴィルですか!俺、全てのライダーと友達になる男、如月弦太郎です!!」

何時ものように自らの胸を叩き、真正面に指を指して宣言する弦太郎。
それを受け、帽子を被った男、左翔太郎が渋々ながら反応する。

「あー……なんか、暑苦しい奴だな」
「翔太郎と、弦太郎……?」

クリップを髪留め代わりにし、分厚い本を手にした少年、フィリップが似た名を呟く。

「……似た者同士かもしれないね」
「はあ!?俺がぁ?このリーゼントとぉ!?」

納得したかのような表情をするフィリップの言葉に、翔太郎は冷静な態度を瓦解させてツッコんだ。

「―――ハッ、笑わせるぜ」
「うすっ!」

ハードボイルド気取りな翔太郎とは違い、弦太郎はどこまでも真正直な言葉を弾かせる。

「ダチを泣かせる奴は、許せねぇっす!!」
「お前……!」

翔太郎は今にも掴みかかりそうな形相で弦太郎に接近すると、

「―――良い奴じゃねぇか!」
「オッス!」

見事に意気投合した。
やはり、冷徹(ハード)ではなく半熟(ハーフ)である。

「おいっス!」
「おいっス!」
「おいッス!!」
「おいッス!!」
「オイッス!!!」
「オイッス!!!」
「ウザい」
「黙れや」

――ガンッ!――

「「あがッ!!」」

青天井ばりに上がる二人のテンションを拳で横から叩き折った二人の男。
片方は刃介、片方は黒いロングコートを纏った長身の男、無限ゼロ。

「はぁ……話を本題に移そう」

そのギャグ風景に溜息をつく銀髪紅眼の美女、リインフォース。

「そうですね。メダルを持ち去った男は何者なんですか?」
「奴の名はレム・カンナギ。財団Xのアンノウンエネルギー担当で、超進化生命体ことミュータミットの開発にも携わっていた」
「財団Xとは、一言で述べると死の商人。奴らがこれまで、ただの人間に地球の記憶をドーピングして超人形態を与えるガイアメモリと、亡骸の疑似蘇生技術・NEVERの資金提供をしていた」
「そして、コアメダルとゾディアーツスイッチにも」

リインフォースとゼロが財団に関する説明を簡潔にすると、ルナイトと竜王が続けてそこに入った。

「カンナギは時空を超えた未来のコアメダル、コズミックエナジーの制御装置であるアストロスイッチの力で地球全域のエネルギーを一手に掌握する。それが彼の野望よ」
「尤も、奴はその力で、財団Xすらも己が支配下に置く腹積もりだ。文字通り、この世を治める玉座の為にな」





*****

エクソダス内部。
そこではカンナギと、彼に呼び出されたキイマ統制官が対峙していた。

「このエクソダスは地球の衛星軌道上にて、私の基地となる。そして、財団Xを始め、世界の全人類が私の支配下におかれるだろう」
「貴様……我が財団を裏切ったか!?」

キイマはカンナギが暴露した野望を耳にして激昂し、拳銃を向けて叫び散らした。

「全ては計画通りだ。―――消えろ。ハッ!」
「―――うッ―――!?」

カンナギが口から発した謎の波動により、キイマは抵抗することさえできず、この世から塵となって消滅した。





*****

空港X付近。

「クソったれが……。僕たちをナメているらしいな」

事情を全て聞き、アヴェンジャーが舌打ちと同時に怒りを顕わにした。

「止められるのは、俺たち仮面ライダーだけってことですね」
「そういうことだ」
「急ごう」

一行はすぐにエクソダスに乗り込もうと動き出す。

「待った」

そこへ刃介が何かを気取り、皆を制した。
同様に気配を感じ取っていたのか、ゼロやアヴェンジャーも正面を見定めている。
そこには、ソラリスを筆頭に白服姿の者達が十人、横に並んでこちらに歩んでくる。
彼女たちの内、六人はゾディアーツスイッチを持ち、残る四人はガイアメモリを手にしている。

【MAGMA】
【ARMS】
【JEWEL】
【ENERGY】

先んじて四人はガイアウィスパーを響かせ、体に刻印されたコネクタに挿し込むと、マグマ・ドーパント、アームズ・ドーパント、ジュエル・ドーパント、エナジー・ドーパントに変貌した。

――カチッ――

すると、残る六人もゾディアーツスイッチを押し、カメレオン・ゾディアーツ、オリオン・ゾディアーツ、ユニコーン・ゾディアーツ、ハウンド・ゾディアーツ、コーヴァス・ゾディアーツ、ケートス・ゾディアーツに変貌した。

「どうやらレム・カンナギは僕たちを排除する気のようだ」
「甘く見られたな。この面子を相手に、あの程度とは」

フィリップとリインフォースは冷静に物を言うと、ゼロと翔太郎が続けて言う。

「お前たちは先に行け。カンナギとのケリは自分で着けたいって顔してるぜ」
「カンナギの『欲望』……実に美味そうだが、今回は貴様らに譲ってやる。思う存分に感謝するが良い」

オーズ組とフォーゼ組の背中を押す二人。
翔太郎は兎も角、ゼロまでもが御膳立ての役目に回ったことに、リインフォースは目を見開くと同時に、なぜか嬉しい気持ちになっていた。

「それはそうかもしれませんけど……」
「映司。最初に会った時、お前が言った言葉を覚えてるか」

かつて風都でNEVERらの陰謀を打ち砕かんとしたとき、偶然にも映司は風都に訪れていた。
そしてオーズの力でWに手を貸す中で、こう言っていた。

「”ライダーは助け合いでしょ”―――だろ?」
「……」
「借りは返しとくぜ」

普段はどれだけ半熟でも、決めるべき時に決める。それが本当のハードボイルドなのだ。

「……わかりました。行こう、皆」

頷く映司は、自分と共にこの場から進む者達に呼びかけた。

「頼んだぜ先輩!」
「……僕らが先輩か」
「ま、それも悪くないんじゃねぇか」
「私たちが、目上として見られるようになるとはな」
「何を言っている?私たちは常に上にいるのだぞ」

弦太郎の元気な発言に各々の反応を示すメモリ組。

「行くぜ、相棒」
「久しぶりだ、ゾクゾクするね」
「やるぞ、我が妻よ」
「あぁ。二人で一緒に」

前へと歩き、並んだ二人と二人。
ドライバーを装着し合い、ガイアメモリを手にして腕を構えた。

【CYCLONE】
【JOKER】
【MAGICAL】
【LEADER】

「「変身ッ!」」
「「変身……!」」

【CYCLONE/JOKER】
【MAGICAL/LEADER】

フィリップとリインフォースの心はメモリに乗って翔太郎とゼロの許へと送られた。
二つの記憶が揃った時、彼らは旋風の中で一つに重なり、仮面の騎士へと姿を変えた。

仮面ライダーW・サイクロンジョーカー。
仮面ライダーイーヴィル・マジカルリーダー。

正中のラインで分たれた緑と黒、銀と紫を栄えらせ、二人で一人の仮面ライダーが再び降臨した。

「そんじゃまあ……」
「こっちも、な」

それに応じて、後に続く四人。
腰にはそれぞれのドライバーを装着すると、三枚のメダルを装填し、四つのスイッチをオンにし、スキャナーとレバーを手に取り、

〔〔THREE・TWO・ONE〕〕

そして、

「「変身―――ッ!!」」

≪TAKA・TORA・BATTA≫
≪RYU・ONI・TENBA≫

「「変身―――ッ!!」」

≪TA・TO・BA!TATOBA!TA・TO・BA!≫
≪RI・O・TE!RIOTE!RI・O・TE!≫

♪〜〜〜♪〜〜〜

舞いに舞う何十枚ものメダルたち。
その中から三つのメダルが混ざり合い、一つの円を成し、映司と刃介の胸に張りつく。

四方を取り囲む紋様によって形成される神秘のカーテン。
その中でコズミックエナジーの力が凝縮され、弦太郎とアヴェンジャーの全身を包み込む。

仮面ライダーオーズ・タトバコンボ。
仮面ライダーブライ・リオテコンボ。
仮面ライダーフォーゼ・ベースステイツ。
仮面ライダーファズム・ナイトステイツ。

今ここに欲望の戦士と我欲の剣士、そして宇宙の闘士と神秘の騎士が勢揃いしたのである。

「っしゃあ!宇宙キターーーーー!!」
「うおッ!?なんだって!?」
「宇宙っす!」
「あぁ……あ、そう」

フォーゼの決め台詞に思わずビックリするW。
が、フォーゼ本人の返答にあっさりとした相槌を打つ。

「…………」
『どうした?』
「いや、別に」

一方でファズムは何かを言いたげにしているが、口を噤んでいる。
イーヴィルがそれを訝しげにしているが、ファズムは頑として語らない。

「単に自分も決め台詞を言いたいが、時間が押してるので我慢しているのだろ」
「言うな其れを!」

尤も、そんな配慮はドS魔人には関係なかった。

「はいはい。お喋りはそこまで」
「向こうが数で来るなら、我々も数でいくだけのこと」

そういって、ルナイトと竜王も前に出た。
懐からオーズドライバーとよく似たフォースドライブを取り出し、それをベルトとして装着すると、メダルネストとスキャナーが出現する。
竜王はバックルに三枚の橙色のコアメダルを、ルナイトは黄色のコアメダルを三枚手に持ち、バックルの装填口にコアを装填していく。
竜王はバックルを右側に、ルナイトは左側に傾けると、スキャナーを手に取り、スライドさせるように読み取った。

「「変身っ!」」

≪CHAMELEON・KOMODO・YAMORI≫
≪ONDO〜MORI!≫

奏でられた洒落た歌声と共に、竜王の体は三つの爬虫類、否、蜥蜴たちの命によって変身した。
カメレオンの頭、コモドドラゴンの腕、ヤモリの脚。
そして、腰には刀身・鍔・柄の全てが影のように黒い二振りの忍者刀”メダブラッカー”を提げている。
これぞ仮面ライダークエス・オンドモリコンボ。

≪KOUMORI・SYLPH・KAMAITACHI≫

ルナイトはメダルが形を成したサークルを身に受けることはなく、メダルを直接頭と胸と脚に受けることで鎧とした。
変身したことで現れた鎧の胸板にはオーズのようなオーラングサークルはなく、各部位ごとに宿した命が黄色い色彩と共に濃く出ている。
蝙蝠の翼手を模した仮面、黄金の拳銃が装備され肩に黄金の飾り布が着けられた両腕、大腿部に鎌を装備しイタチのフサフサした尻尾が纏わりついた両脚。
歌声なく、彼女は新たな欲望を秘めてそれを此の世に現した
女吸血鬼―――仮面ライダーカーミラの誕生である。

「私たちが此処を守るわ」
「お前たちは、自分の役割を果たせ」

カーミラとクエスに促され、二組のライダー達がマシンに跨ると、彼女らもWとイーヴィルと共にライドベンダーに乗ってエンジンを噴かす。
W、イーヴィル、クエス、カーミラの四人は一直線に怪人たちへと突撃していくが、オーズ、ブライ、フォーゼ、ファズムの四人は別の道へと進んでいく。

――ズドドドドドドッ!!――

道中、別ルートを往く四人を武装ヘリ二機が襲い掛かるも、彼らはそれに臆せず走り続け、青い空が延々と広がる屋上へと昇って行く。
無論、これによって狭苦しかった屋内以上に武装ヘリの攻撃は猛烈になっていくが、それさえもかまわず、四人はバイクを走らせる。
その行く先には何もない。進めばただビルという崖から落ちて転落するか、真正面の武装ヘリに蜂の巣にされるかだ。

尤も、

――ブゥゥゥゥゥゥ……!!――

「「「「ハアアアァァァァァァァ!!!!」」」」

彼らに限って、そのような心配は無用だった。
四人はアクセルを更に上げると、マシンで助走をつけて跳び、武装ヘリへと突っ込んだのだ。
激突によって爆散し、派手な炎を上げて墜落する武装ヘリたち。
まともに考えれば、衝突したが最後、双方とも悲惨な末路を迎えただろうが、

――ブゥゥウウゥゥン!!ブゥゥゥウウウゥゥゥン!!――

彼らは既に、まともという範疇から跳び越えた存在であったのだ。





*****

「ったく、汚しやがって」

ビルの屋内から地上へと移動したW、イーヴィル、クエス、カーミラ。
それと対峙するのは十もの怪人たち。
だが、彼らは決して怯みはしない。仮面ライダーとは―――

「『さあ、お前の罪を数えろ!』」
「『さあ、貴様の欲望を差し出せ!』」

決して独りで戦っているのではないのだから。

決め台詞と共に敵へと駆けるライダーたち。

まずはWとイーヴィルの活躍だ。

「勝負だ」

【JOKER・MAXIMUM DRIVE】
【EVIL/LEADER・MAXIMUM DRIVE】

Wがジョーカーメモリを、イーヴィルがリーダーメモリとイーヴィルメモリをサイドバックルのマキシマムスロットにインサートする。
それによって二人の体は猛烈な旋風によって舞い上げられ、オリオン・ゾディアーツとマグマ・ドーパントを見下ろす形となる。

「『ジョーカーエクストリーム!』」
「『リーダーブレイクラッシャー!』」

繰り出された必殺キック。
ボディ正中のラインを境に二分されたWとイーヴィルによる左右連続の蹴りは見事に決まり、オリオンとマグマを撃沈させた。

【HEAT】
【METAL】
【SONIC】
【KNIGHT】

「手際よく行こうか」

【HEAT/METAL】
【SONIC/KNIGHT】

メモリチェンジを行い、Wは赤と銀のヒートメタル、イーヴィルは青と金のソニックナイトとなる。

Wが高熱のパンチ、イーヴィルが高速のパンチを打ち出すと、次は背中の棍棒と薙刀、メタルシャフトとナイトグレイブを手にし、近くにいたハウンド・ゾディアーツとジュエル・ドーパントを牽制する。
ウェポンに設けられたスロットにガイアメモリをインサートする。

【METAL・MAXIMUM DRIVE】
【EVIL/KNIGHT・MAXIMUM DRIVE】

「『メタルブランディング!』」
「『ナイトゲイルスラッシャー!』」

メタルシャフトから噴き出る超高温の炎の出力によってWは勢いのままにハウンド・ゾディアーツに重量級のお熱い一撃をかました。
一方でナイトグレイブを真っ直ぐに構え、イーヴィルは一瞬姿が消えたかと思うと、次の瞬間にはジュエル・ドーパントの弱点、即ち宝石の石目に相当する部位を一突きで粉砕していた。

【LUNA】
【TRIGGER】
【TRICK】
【BLASTER】

「ったく、しつけぇんだよ!」

【LUNA/TRIGGER】
【TRICK/BLASTER】

Wはその手に銃火器を持った黄と青のルナトリガー、イーヴィルも同様に銃火器をその手にした灰と緑のトリックブラスターへとハーフチェンジする。

【TRIGGER・MAXIMUM DRIVE】
【EVIL/BLASTER・MAXIMUM DRIVE】

Wはトリガーマグナムのスロットにトリガーメモリをインサートし、折れ曲がった銃身を真っ直ぐにすることでマキシマムモードに移行。
イーヴィルは銃身の下部にあるマガジンに二本のメモリをインサートすることでマキシマムドライブを発動させる。

「『トリガーフルバースト!』」
「『ブラスターガンショット!』」

二つの銃口から解き放たれた何十もの光弾は通常では有り得ない、曲がりくねった軌道を描いていき、カメレオン・ゾディアーツとエナジー・ドーパントの全身をくまなく銃撃し、その体を爆散させた。

一方―――

「私の相手は、お前か」
『ウゥゥ……!』

クエスは鯨座のケトス・ゾディアーツと対峙している。

「折角の新たなコンボだ。試させてもらおう」

クエスはそういうと、腰に提げられた忍者刀を抜くことなく、カメレオンヘッドから長い舌を伸ばし、それを鞭として振るいケートスの肌に叩きつけてきた。
ビシバシとケートスを強打する舌の鞭。

『グゥゥゥ!』

だが、ケートスは好い加減それを振り払うべく、鯨特有の孔から潮を吹き、その水圧でカメレオンの舌を振り払った。

「ほお」

クエスは感嘆しながら舌を頭に戻すと、次は両腕を構えながらケートス目がけて突き進んでいく。

「ぬん!」

擦れ違いざまにクエスはコモドアームに生えたノコギリを連想させるでケートスの分厚い肉を斬り付けていたのだ。
しかもこの刃、単なる殺傷性の武器と思ったら大間違い。

『ッ……ぬぁ、ぎ、ぐ……!?』

コモドドラゴンの口には有害なバクテリアや毒が存在し、これを受ければたちまち死に至るという。
ライダーの武器という事もあり即効性に仕上がったソレがケートスの肉体を蝕んでいるのだ。

『クッソォォォ!!』

ケートスは立つのがやっとの体に鞭を撃ち、強引に身体を跳ね上がらせ、その巨大な口でクエスの首を食いちぎろうとした。
が、それが叶うことは無かった。
クエスも同じタイミングで後方へとジャンプし、それと同時に姿を消したのである。

『ン!?何処だ!?』
「ここに居る」

声のした方向を振り向くと、そこにはカメレオンの保護色で完全に周囲の背景と一体化していたクエスがいた。
さらに驚くべきは重力的にはあり得ない、壁に足の裏だけを引っ付け、壁こそが地面だと言わんばかりの動きをしている。
無論、これはヤモリレッグの能力により、どれほど急な傾斜であろうと、垂直であろうと、クエスは縦横無尽な足運びが可能になったのだ。

これらの能力を総合的に見ると、純粋な力技よりもトリッキーさが物を言う忍者によって最適なコンボなのである。

「これで粗方わかったな」

クエスはそういうと、壁から地面に飛び降り、腰に提げられた二振りの忍者刀を抜刀してこう言った。

「では、止めだ」

片や―――

「さあ、いらっしゃい。ボ・ウ・ヤ」
『チッ、舐め腐りやがって!』

妖艶な仕草と声音で先手を誘うカミーラの姿に、コーヴァスはバカにされたと思い汚い口調を迸らせた。
コーヴァスは背中に生えた漆黒の翼を広げると、それを羽ばたかせて上空へと舞い上がる。

『串刺しだ!』

黒い翼から射出される何重もの羽手裏剣。
速さと量から観て、回避するのは極めて厳しいだろう。
しかし、

「吹き荒べ」

カーミラが両腕を優雅に広げた瞬間、彼女の周囲に竜巻が発生し、迫りくる羽手裏剣を全て跳ね除けてしまったのだ。
羽手裏剣を全て地に落とされ、コーヴァスが驚愕していると、直後に竜巻が止んでカーミラが姿を現した。

「シルフィードの家名は伊達ではないのよ。貴方程度に劣るようじゃ、ご先祖様に顔向けできないわ」

一説によると”シルフィード”とは風の精霊と人間の間に生まれた者のことを指し、またシルフの女性系とも言われている。
即ち、シルフと人間の血を引く女魔術師を初代とし、ルナイトに至るまでの全ての当主の座に女を据えてきたのが、シルフィードという魔術師の一族なのだ。

「というわけで、貴方はここで退場よ」

カーミラは両前腕に装備されている黄金の拳銃、ブローマグナムのグリップを手にすると、銃口をコーヴァスに向けてこう言い放った。

「墜ちろ」

――バンバンバンバンッ!!――

非情な一言が発せられた直後、ブローマグナムから発砲された四発の弾丸は螺旋回転しながら直進し、コーヴァスの翼―――しかも羽ばたく為に必要な筋肉の部分に命中していた。

『何ッ!』

羽ばたく力を失い、地上へと無残に墜ちていくコーヴァス。
頭から地面に激突した所為でアスファルトの上でのた打ち回っているが、カーミラはそんな敵の事情などお構いなしである。
ブローマグナムを仕舞うと、今度は大腿部に備え付けられている鎌、ツイスターシックルを手に持ち、そして構える。

「継ぎ接ぎだらけにしてあげる」

その言葉と共に駆けたカーミラは二振りの小鎌の刃を手にした両手を広げながら体を回転させる。
まさにツイストを躍るかのようなその動きは何度となくコーヴァスの体を斬りつけ、その姿は本当に継ぎ接ぎだらけになる前の哀れな重傷患者のようだ。
刃と身体が接触する毎に生じる火花も絶えることなく、回転のスピードも徐々に上がっていく。

『ギッ、ギャ……ガァッ……!!』

最早、出ることの叶わない嵌め技の術中にどっぷりと入り浸されてしまったコーヴァスは、抵抗とすらいえない悲鳴を僅かに漏らすしかなかった。





*****

カンナギは全ての準備を終えると、部下たちを従えてエクソダスに乗り込もうとしていた。
出発前に何か重要そうな物を納めた二つのケースを部下に持たせると、時は満を持さんとしている。
そこへ、

――ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!――

かまびすしいバイクのエンジン音が聞こえてきた。

「「オオオオオオオ!!」」

現れたのはマシンマッシグラーとマシンストレイダーに乗ったフォーゼとファズム。
彼らの登場によってカンナギたちは足を止められ、

「オラァ!」

今度は部下たちを跳ね飛ばさん勢いで走るライドベンダーとシェードフォーゼに跨ったオーズとブライが突っ込んできた。
その際、部下たちは本当に跳ね飛ばされ、その内二人が持っていたケースも手から離れて地面に落ちてしまった。

二組のライダーはビークルを止めると、すぐに降りてカンナギと対峙する。

「よお、カンナギ。もう逃げ支度かい?」

ファズムは開口一番でカンナギに痛烈な嫌味を浴びせかけた。

「ふん。よくここまで来たな。若き仮面ライダーたちよ」

だが、カンナギがその挑発になど乗ることなかった。

「テメェの欲望は、俺たちが噛み砕く」
「残念だが、君たちに私を止めることは出来ないよ」

そう嘯くカンナギたちの背後には、それを証明する者たちがいた。
マスカレイド・ドーパント、屑ヤミー、ダスタード。
前時代における戦闘員の役柄を与えられた、群れを成すことを本領とする下級怪人たちだ。
だが、その群れの力は決して侮れない。数が十や二十ならいざ知らず、百や二百になれば話は別だ。
それはもはや群れではなく、大群と呼ぶ。

「行くぞ」

部下にそう言い、カンナギはエクソダスへと歩いていく。
すぐにでも追いかけたいライダーたちだが、目の前の雑兵どもを野放しにすれば、後々厄介の種になるのは火を見るより明らかだ。

「はぁ……メンドくせぇが……やるか」
「そうだな。それに我々四人なら、あの程度の数は問題にならないだろう」

ブライのやる気のなさに僅かなやる気を混ぜた言葉にファズムはバイザーの奥の目を光らせて答えた。
それと同時に四人は跳んだ。敵の大群目がけて、真正面から突っ込んでいったのだ。

まずはオーズ・ブライの戦いを見てみよう。

≪≪SCANNING CHARGE≫≫

戦闘を開始するや否や、オーズは手足を、ブライは魔刀『釖』を構える。

「ハアッ!セイヤァァァァァ!!」

オーズはバッタレッグの力で空高く跳び立つと、両脚を前に突出し、赤・黄・緑のリングを潜っての必殺キックこと”タトバキック”を決め、十体前後の雑魚どもが粉砕される。

「んじゃま……チェストォォォォォ!!」

ブライは前方に展開された三つの血錆色のリングを疾走して潜りながら魔刀を振り回し、最後に二振りの刃で眼前にある全ての敵を一刀―――否、二刀両断する”リオテスラッシュ”で斬りつけた。

≪KUWAGATA・KAMAKIRI・BATTA≫
≪GATA・GATAGATAKIRIBA!GATAKIRIBA!≫
≪KABUTO・HACHI・INAGO≫
≪KABU・KABUKABUHCHINA!KABUHACHINA!≫

メダルを三枚とも換装し、二人は緑色の昆虫系、ガタキリバコンボとカブハチナコンボにチェンジする。
カマキリソードと虫刀『釘』による斬撃と刺突、クワガタヘッドとカブトヘッドによる雷撃が炸裂する。

≪≪SCANNING CHARGE≫≫

「「「「「ハッ!セイヤァァァァァ!!」」」」」
「「「「「フッ!チェストォォォォ!!」」」」」

ジャンプした直後、得意技のブレンチシェイドによる多重分身を披露し、そこから必殺の超多連のガタキチバキックとカブハチナスタッブがお見舞いされた。

≪LION・TORA・CHEETHA≫
≪LATA・LATA!LATORARTAR!≫
≪YAMANEKO・JAGUAR・SMILODON≫
≪YAJA・YAJA!YAJAGUADON!≫

再びコンボチェンジ。
黄色の猫系、ラトラーターコンボとヤジャガドンコンボだ。
ライオンヘッドとヤマネコレッグから閃光を発しながら、トラクローと猫刀『鉤』によるひっかき攻撃を繰り返しつつ、スキャナーをバックルに滑らせる。

≪≪SCANNING CHARGE≫≫

「ダダダダダ!セイヤァァァァァ!!」
「杜若―――チェストォォォォォ!!」

チーターレッグによる高速の走力を生かしたトラクローによる必殺の爪の一撃”ガッシュクロス”。
クラウリングスタートのような構え”杜若”による爆発的なスピードを得、自らの一個の弾丸のように高速回転させながら敵陣を抉り取る”ビーストスパイラル”。

≪SAI・GORILLA・ZOU≫
≪SAGOHZO……SAGOHZO!≫
≪BAKU・MAMMOTH・INOSHISHI≫
≪BAMAHI……BAMAHI!≫

さらなるメダルチェンジ。
灰色の重量系、サゴーゾコンボとバマーイコンボである。
ゴリラアームの重い拳、マンモスアームの重刀『鉞』によるヘビーな一撃によって次々と敵をのしていく二人。

≪≪SCANNING CHARGE≫≫

オーズは上方へと浮遊すると、前振りなく地上へと落下し、ゾウレッグが地表に特殊な波動を流すことで周囲の雑魚たちが波動に捕らわれ、みるみるオーズに吸い寄せられていく。
同じように、ダブルアックスからグレートアックスに変化した重刀『鉞』を地面に叩き付けることで波動が生じ、周囲の雑兵が強引に連れてこられていく。

「―――セイヤァァァァァ!!」
「―――チェストォォォォォ!!」

ゴリラアームの剛腕とサイヘッドの角による超弩級の一撃”サゴーゾインパクト”、重刀で360度の全てを横薙ぎにして敵を一網打尽にした”バマーイショッキング”が決まった。

≪TAKA・KUJAKU・CONDOR≫
≪TAJADOR!≫
≪HAYABUSA・HOUOU・YATAGARASU≫
≪HAOURASU!≫

今再びのメダルチェンジ。
真紅の鳥類系、タジャドルコンボとハオウラスコンボ。

≪SCANNING CHARGE≫

「チェストォォォ!!」

ブライは両腕のホルスターに収められた二丁拳銃の鳥刀『鏃』を手に取り、その引き金を引くと、銃口からは超高温の弾丸が連続して発射される”コロナフィーバー”が戦闘員たちを焼き尽くしていく。

≪TAKA・KUJAKU・CONDOR!GIN・GIN・GIN!≫
≪GIGA SCAN!≫

「ハァ……セイヤァァァ!!」

オーズは左腕のタジャスピナーに三枚のコアと四枚のセルをセットしスキャンすると、不死鳥の一撃”マグナブレイズ”を炸裂させ、喰らった物全てを灰燼に帰した。

≪SHACHI・UNAGI・TAKO≫
≪SHA・SHA・SHAUTA!SHA・SHA・SHAUTA!≫
≪ZEUGLODON・MEGALODON・TACHIUO≫
≪ZE・ZE・ZEMETA!ZE・ZE・ZEMETA!≫

五度目のコンボチェンジ。
蒼き海の水棲系、シャウタコンボとゼメタコンボ。

≪≪SCANNING CHARGE≫≫

有無を言わさぬ勢いでメダルをスキャンすると、二人は上方へと跳ぶ。
オーズはタコレッグを八本の脚に変化させ、それを両脚に纏わりつかせた上でドリル回転させると、そのまま敵目がけて突撃していった。
ブライもタチウオレッグを巨大な刃物に変質させ、オーズと同じように敵陣目がけて突っ込んっでいった。

「セイヤァァァァァア!!」
「チェストォォォォォオ!!」

オクトバニッシュとフィッシュスライスの同時攻撃により、戦闘員の大群は残り2割程度まで目減りしていた。

「ふぅ……火野、俺はもうちょっとアップしてくるぜ」
「え、ちょ、鋼さん?」

だが、残った敵軍を見て、まだまだ暴れたりないのか、オーズの制止を聞くことなく、ブライはメダルチェンジしながら駆けていく。

≪YAIBA・TSUBA・TSUKA≫
≪YABAIKA・YAKAIBA!YAIBAKA!≫

ブライは一人、黄金の刀剣系のヤイバカコンボにチェンジすると、間髪入れずローグスキャナーを手にした。

≪SCANNING CHARGE≫

「我欲刀鋩ォォォッ!!」

エネルギーが充填した全身から一本の刀身のオーラが現れ、ブライはその切っ先を蹴りに乗せて雑魚どもの1割を消し飛ばした。

「お次ィ!」

≪RYU・WYVERN・DRAGON≫
≪RYU・WA・DRAGON KNIGHT!≫

決して他とは交わらぬ破滅の力。
禍々しき紫の竜神系、リュワドラコンボに変化したブライは残る極僅かな戦闘員たちのほうへ顔を向けた。
そして彼は解き放つ。恐竜メダルが失われた今、彼だけが持つ虚無の波動を。

≪SCANNING CHARGE≫

「ガアアアアアアアッ!!」

口から放たれた竜人の咆哮、ドラゴニュートシャウトが極太の光線のように全てを蹂躙した。
結果、百を優に超える此方側の割り当ては、万遍なく消化されたのだった。





*****

フォーゼ・ファズムは―――。

〔SHIELD〕
〔SHIELD・ON〕
〔FISHER〕
〔FISHER・ON〕

フォーゼはスペースシャトルを模した盾、シールドモジュールを―――ファズムは漁師が使うような大型の銛が備え付けられたフィッシャーモジュールをそれぞれ左腕に装備した。
防御しつつ打撃に転ずるフォーゼ、銛の穂先で敵を串刺しにしていくファズム。

〔CHAIN SAW〕
〔CHAIN SAW・ON〕
〔GATLING〕
〔GATLING・ON〕

フォーゼはソケットからランチャースイッチとドリルスイッチを取り外すと、換わりにチェーンソースイッチとガトリングスイッチを嵌め込む。
オンにされた瞬間、右足にチェーンソーモジュール、左足にガトリングモジュールが装備される。
本来ならば両方とも手に持って使う道具だ。しかし、フォーゼは右足を巧に振るうことで予想外の角度から斬撃をくらわせ、さらに壁に左足を着けることで足場を固定しガトリングが盛大に火を噴いた。

〔WAVE〕
〔WAVE・ON〕
〔BURNER〕
〔BURNER・ON〕

ファズムはベルトのソケットからアーチャースイッチとランサースイッチを外し、ウェーブスイッチとバーナースイッチに換装してオンにする。
右足に装備された拡声器に似たウェーブモジュール、左足には火炎放射器型のバーナーモジュールが装備された。
ウェーブモジュールから放たれる超音波や電磁波、バーナーモジュールから放たれる高熱火炎が次々と敵を薙ぎ払う。

〔CHAIN ARRAY〕
〔CHAIN ARRAY・ON〕
〔SCISSORS〕
〔SCISSORS・ON〕

フォーゼが次に出したのは、右腕に装備された鎖鉄球のチェーンアレイモジュール、左腕の鋏型のシザースモジュール。

「これでも喰らえぇぇぇ!」

シザースモジュールで近距離の敵を牽制しつつ、大振りなれど破壊力のあるチェーンアレイモジュールで固まっている敵を一掃していく。

〔CHAIN SCYTHE〕
〔CHAIN SCYTHE・ON〕
〔GUILLOTINE〕
〔GUILLOTINE・ON〕

ファズムは右腕に鎖鎌のチェーンサイズモジュール、左腕に断頭台を小型化したギロチンモジュールを装備する。
チェーンサイズモジュールを振り回すことで周囲の兵どもは一挙一動ごとに薙ぎ払われ、続けて射出されたギロチンの刃は一直線上に敵を斬殺していった。

〔ROCKET〕
〔ROCKET・ON〕
〔SPIKE〕
〔SPIKE・ON〕

続けてフォーゼは右腕にロケットモジュール、左足にスパイクモジュールを装備する。
スパイクモジュールで蹴りつけたと同時に飛び出す無数の棘が敵を串刺しにすると同時に、ロケットモジュールの推進力が縦横無尽な動きを可能にしている。

「ライダーロケットパーンチ!!」

さらなる勢いで繰り出された強烈な打撃が、一人の雑魚を粉砕した。

〔PILE DRIVER〕
〔PILE DRIVER・ON〕
〔RIDER〕
〔RIDER・ON〕

ファズムは右腕に杭打機型のパイルドライバーモジュール、左足に車輪型のライダーモジュールを装備する。
車輪が高速回転しファズムは直進や逆走、ドリフトなどを利かせながらダスタードらを転倒させ、杭を彼らに打ち込んでやった。

〔LAUNCHER〕
〔LAUNCHER・ON〕
〔ARCHER〕
〔ARCHER・ON〕

スイッチを取り換え、二人はランチャーモジュールとアーチャーモジュールを右足に装備。
発射される合計で八発の小型ミサイルがマスカレイドや屑ヤミーを吹き飛ばしていく。

〔MAGIC HAND〕
〔MAGIC HAND・ON〕
〔HOPPING〕
〔HOPPING・ON〕

「オラ、オラァ、オラァッ!」

右腕にマジックハンドモジュール、左足にホッピングモジュールを装備するフォーゼ。
ホッピングで得たジャンプ力により通常よりも高く跳ね上がり、高所に居る敵、地上に居る敵、それら全てにマジックハンドが薙ぎ払う。

〔GRENADE〕
〔GRENADE・ON〕
〔JUMPER〕
〔JUMPER・ON〕

ファズムの右腕にグローブ型のグレネードモジュール、左足にバッタの足のようなジャンパーモジュールが装備される。
前へ後ろへとヒット&アウェイの要領で飛び跳ねつつ、グレネードモジュールによって時には精製された手榴弾を地上へ投擲し、時には爆発エネルギーを拳に込めて高台の敵を殴りつけた。

〔DORILL〕
〔DORILL・ON〕
〔LANCER〕
〔LANCER・ON〕

「ライダードリルキーーーック!!」
「ヒーローランサーキィィィック!!」

そして、ドリルモジュールとランサーモジュールによる強烈な左足キックが炸裂し、その直線状にいた最後の雑兵たちを纏めて消し飛ばしたのであった。





*****

その頃、エクソダスは主を乗せ、発着場から飛び立とうとしていた。
それを阻止しようと急ぐ中、フォーゼとファズムは先程バイクで跳ね飛ばされた構成員が落としてしまった二つのケースに目が付き、中身を確かめた。

そこには、

「うあああ!?」
「この仮面とシンボルは……」

二つのケースには四つのスイッチと三枚のメダル―――合計で14人の戦士の力が収められていた。
一方でオーズとブライは逸早くエクソダスの船体に辿り着こうとするも、そこで厄介な邪魔者と遭遇してしまった。

テラー・ドーパント、クレイドール・ドーパント、スミロドン・ドーパント、Rナスカ・ドーパント。
ウヴァ、カザリ、ガメル、メズール。

「グリードにドーパントまで……!カンナギはこんなダミーまで造れたのか……!」
「チッ、最後の最後までメンドっちぃ真似を……!」

オーズが驚き、ブライが悪態をついていると、

『『『『『『『『フンッ!』』』』』』』』

ダミーたちは同時にエネルギーを手から放ち、オーズとブライを爆炎と共に吹き飛ばした。

「「うわあああああ!!」
「オーズ!」
「ブライ!」

そこへフォーゼとファズムが駆けつけ、二人を後ろから抱き留める形でキャッチし、地上へ下した。

「ありがとう」
「助かった」

簡潔に礼を述べ、敵を前に身構える二人に対し、ファズムは例の物を見せながら……。

「おい、これ使えないか」
「こいつは……?」

それはケースの中に入れられていたメダルとスイッチだった。
数はメダルが六枚、スイッチが八つ。丁度、この場のメンツのバックルに収まる数の合計と一致する。

「やってみよう、弦太郎くん」
「わかった」

四人はそれぞれが担当するスイッチとメダルを手に取り、バックルへと装填を開始する。

〔RIDERMAN〕
〔ICHIGO〕
〔V3〕
〔NIGO〕

≪X≫
≪STRONGER≫
≪AMAZON≫

〔BLACK RX〕
〔SKY RIDER〕
〔ZX〕
〔SUPER 1〕

≪SHIN≫
≪J≫
≪ZO≫

〔RIDERMAN・ON〕
〔ICHIGO・ON〕
〔V3・ON〕
〔NIGO・ON〕

〔BLACK RX・ON〕
〔SKY RIDER・ON〕
〔ZX・ON〕
〔SUPER 1・ON〕

全ての準備は整った。
二組はスキャナーとレバーを握り、そして―――

〔RIDERMAN・ICHIGO・V3・NIGO:LIMIT BREAK〕
〔BLACK RX・SKY RIDER・ZX・SUPER 1:LIMIT BREAK〕

≪X!AMAZON!STRONGER!SCANNING CHARGE!≫
≪SHIN!ZO!J!SCANNING CHARGE!≫

辺り一面を眩い閃光に激しい衝撃波が生じ、ダミーたちは後方へ吹き飛ばされてしまった。

14のメダルとスイッチは四人のベルトから離れ、それぞれが実体となって現れた。
それこそが、

フォーゼのスイッチからは、仮面ライダー1号、仮面ライダー2号、仮面ライダーV3、ライダーマン。
オーズのメダルからは、仮面ライダーX、仮面ライダーアマゾン、仮面ライダーストロンガー。
ファズムのスイッチからは、スカイライダー、仮面ライダースーパー1、仮面ライダーZX、仮面ライダーBLACK RX。
ブライのメダルからは、仮面ライダーシン、仮面ライダーZO、仮面ライダーJ。

「おおッ!!伝説の7人、いや、栄光の昭和ライダーだ!ホントにいたんだ!!」

学園祭で自分たちが紹介していた生ける伝説を目の当たりにしてフォーゼのテンションは鰻登りである。

「昭和ライダーキターーーッ!!」

フォーゼが感動していると、昭和ライダーたちはこちらへと近寄ってくる。

「よくやってくれた。フォーゼ、オーズ、ファズム、ブライ」
「君達のお蔭で、我々はカンナギの罠から解放された」

と、礼を言うのは1号と2号のゴールデンコンビ。

「成功して良かったです」
「ここまで揃うと、爽快だな」
「俺、如月弦太郎。全てのライダーと友達になる男っす!」
「僕は衛宮空。始めまして、大先輩方」

四人はそれぞれかつての世代を守ってきた先達に挨拶する。

「余計は挨拶はいい。君たちは、カンナギを追え」
「奴が宇宙でコズミックエナジーをフルチャージしたら……」
「いくら我々でも適わない」
「倒せるとしたら、大気圏内にいる間」
「あの宇宙船を、飛ばしてはならない」

タイムリミットまであと僅か。
少しでも無駄な時間を使わないよう、先輩ライダーたちは簡潔に説明してくれた。

「ここは俺たちが食い止める。カンナギを頼む!」
「わかりました」
「任せろ!」
「宜しく頼みますよ!」
「ケリ、着けてくるぜ!」

そうして、四人の若き仮面ライダーはエクソダスを目指して駆けて行った。

「頼んだぞ、皆」
「さあ、行くぞ!」

RXが後輩たちの後ろ姿にポツリとつぶやくと、ストロンガーが檄を飛ばした。
駆けるのは彼らも同じ。戦うのも、同じ正義の鉄槌を降すべき悪。

「「「「「「「「「「「「「「おおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」」」」」」」」」」」」





*****

エクソダスが地上から宇宙へと打ちあがる為のレールの前にまで移動した頃、四人は空中に奇怪な現象が起きているのを目にした。

「おい、あれ!」
「あれって、時空の孔か?」

ポセイドンら未来の存在が潜り抜けてきた裂け目がここに来て再び出現したのだ。
孔からは二つの何かが飛び出し、地上へと降りてくる。
それは青い水の戦士アクア、緑の風の戦士ゲイルだった。

「ミハル君にユウ君!どうして此処に?」
「これを渡したくて」

そう言ってアクアとゲイルはオーズとブライの手にある物を三枚手渡した。

「こいつぁ……コアメダルじゃねぇか」
「あぁ。カンナギとやり合うには打って付けの代物だ」

新たな切り札を手にオーズとブライが一言礼を言うと、アクアとゲイルは頷き、ダミーたちとの戦いに赴いた。





*****

「ライダーロケットドリルキーック!」
「ヒーローセイバーランサーキーック!」

今まさに出発しようとしているエクソダス。
フォーゼはオーズの手を、ファズムはブライの手を掴みながらエクソダスの内部へと強行突入した。

その直後、発射時間となったのか、エクソダスの両脇に着けられた巨大なロケットエンジンが点火され、辺り一面に盛大な煙を撒き散らしながら直進し、目の前の上向きのレールに乗って上空へと飛び立った。
だが、エクソダス内部への進入に成功した四人のライダーはカンナギと対峙することに成功した。

「まさか、スイッチとメダルからライダーたちを復元するとはな」
「物は試しって、よく言うだろ?」
「だが、そうやって群れたがるのは……力のない者の証だ」

カンナギは余裕の表情を崩すことなく、懐からポセイドンのコアとSOLUスイッチが嵌め込まれた鋼鉄のバックルを取り出し、装着する。
さらには、テュポーンのコアを刀身に、MEGAスイッチを鍔のソケットに嵌め込んだ鈍色の大剣を手にする。

「真の王は……一人で世界を制圧する。見給え!これが新しい地球の、いや……銀河をも掴む、王の姿だ!」

――カチッ――

カンナギがギンガオードライバーのSOLUスイッチをオンにすると、

≪SAME!KUZIRA!OOKAMIUO!≫

三枚のコアメダルとコズミックエナジーがカンナギの周囲を駆け巡ると、やがて一つに重なり、一人の男を一体の異形へと変身させていた。

銀色の厳つい面構えをし、その体は黒と銀のローブによって覆われている。
変身直後の余剰エネルギーを全身から蒸気として吹きだす際、ローブの隙間から幾本もの触手が這い出ている。
これがカンナギが変身した銀河の王、かつて地球を滅ぼそうとした機械生命体を連想させる存在。
その名も”超銀河王”!

「―――っしゃあ!」

フォーゼを一番槍とし、ライダーたちは一斉に超銀河王へと突撃していく。
だが、

『フン!』

超銀河王はその圧倒的な膂力によって近づく者全てをその腕で薙ぎ払い、さらに手にした大剣”ギンガオーブレード”で斬りつけていく。
ブライは肉弾戦では分が悪いとふみ、構えを取って拳にコアのエネルギーを集中させる。

「奥義、星拳波動!」

右の拳によるストレートから放たれた光弾状の一撃は、間違いなく超銀河王をとらえていた。
しかし、

『効かん!』
「何っ!?」

我刀流の奥義すら、コズミックエナジーのローブという頑強な装甲によって弾かれてしまったのだ。

さらに超銀河王はそのローブを手に取ると、ローブの形を巨大な刃に変え、ブーメランのように投げた。
ローブは超銀河王の意のままに動き回り、予測困難な動きでライダーたちに襲い掛かる。

『わかっていることは一つある。君たちは、絶対私には勝てない』

ローブを再びその身に着込みつつ、超銀河王は絶対不可侵とでも言うべき自信をこめて言い放った。

「わかっていることは……もう一つある。此の世に、絶対はない!」
『ところが、あるのだよ……フン!』

言葉を終えた直後、超銀河王の姿が四人の視界から消えた。
その直後、オーズとブライの体は超銀河王の拳によって飛ばされていたのだ。
続けざまに、フォーゼとブライも背後からギンガオーブレードによって刺突され、壁に激突する。

「時間を、止められるのか!?」
『その通り。これが、時間を越えてきたコアメダルの力だ!』

しかも場所が悪いことに、そこはエクソダスへの乗り降りに使用するハッチのある場所だ。
ハッチが開き、階段が外に向かって伸びると、超銀河王はフォーゼを機内から投げ飛ばした。
だが、フォーゼも必死になって車体にしがみつき、落とされまいともがく。

「フォーゼ!」
『人の事を心配する余裕があるかな?』

フォーゼに手を伸ばそうとするファズムの胸ぐらを掴み、超銀河王は彼さえも船外に投げ出そうとしている。

「―――投影開始(シャドー・オン)―――」

蚊蜻蛉のように小さく、掠れるようにはっきりしない声音がファズムの口からゆっくりと出た。
余りの小ささに兜の中にしか響かない程だったが、それで十分だ。
元より魔術の詠唱とは己に対して訴えかけるためにある自己暗示の一種なのだから。

超銀河王の背後に現れた漆黒のロングソード。
それは音もなく現れ、音もなく直進し、超銀河王の隙を創る筈だった。

――ガギンッ――

だが、それはギンガオーブレードの一斬によって粉々に砕け散った。

「ッ!?」

有り得ない、と思った。
詠唱以外の全工程を完全な無音で成し遂げたにも関わらず、それを察知されるなど。

『教えてあげよう。このSOLUスイッチは今”根源”へと繋がる鍵となっている。そこへこのコアメダルの力でアクセスを維持し、そこから私は敵を攻撃を測る』
「未来を……!」
『これでわかっただろう。全ての攻撃は、私には通じないのだよ!』

超銀河王はそう断言し、ギンガオーブレードでファズムを強打し、フォーゼ共々エクソダスから無慈悲に落下させられてしまった。





*****

地上へと落ちていくフォーゼとファズム。
このまま地面に激突すれば如何にライダーといえど大ダメージとなる。
尤も、

――ガシッ――

〔POWER DIZER〕

パワーダイザーが二人をナイスキャッチしてくれれば、話は別だが。

「危なかったぁ」
「ありがとな」

パワーダイザーを操縦しているであろう隼にフォーゼが感謝の言葉を贈る。

「しかし、弱ったな」
「確かにこの距離じゃもう届かねぇな」

そこへフォーゼのレーダースイッチが何かを知らせるように点滅し、音が鳴っている。

〔RADER・ON〕

スイッチをオンにしてレーダーモジュールを装備すると、モニターにはラビットハッチから交信する賢悟の顔が映っている。

『諦めるな。ダイザーで打ち上げる』
「そっか。その手があったか」
「成程。失念していた。では、こちらも」

〔BLUE BASTAR〕

ファズムはすぐさまスマートフォン型の端末を取り出して操作を行うと、パワーダイザーの横に緑色の波動が出現し、そこから一台の青い戦車(ブルーバスター)が召喚される。

〔TOWER MODE〕

ブルーバスターとパワーダイザーは変形し、発射台型のタワーモードとなる。フォーゼとファズムはマシンマッシグラーとマシンストレイダーに乗り込む、マシンをダイザーとバスターにセットする。

〔READY〕

前輪が固定され、発射台となるパーツは遥か上空のエクソダスを見上げるように角度を上げた。

〔THREE・TWO・ONE―――BLAST OFF〕

「「行っけぇぇぇぇぇぇぇ!!」」

本物のロケットのような勢いで打ち上げられた二台のマシン。
しかし、やはりここまで来ても直接エクソダスにまでは届かなかった。
だが、それで終わる彼らではない。

〔WINCH〕
〔HOOK〕
〔WINCH・ON〕
〔HOOK・ON〕

左腕に装備したウインチモジュールとフックモジュールの先端パーツを伸ばし、エクソダスの船体に引っ掻けることに成功すると、二人はマシンを乗り捨てて一気にワイヤーと鎖を巻き上げた。





*****

その頃、船内に残った三人は未だに超銀河王がダブルライダーを圧倒していた。

『そろそろ大気圏離脱だ。終わりにしようか?』
「ハッ、冗談!」

超銀河王の言葉を身体ごと蹴りつけて距離を取ると、オーズとブライはベルトのサイドにあるメダルネストから三枚のコアメダルを取り出す。

「使わせてもらうよ、ミハル君」
「仲間ってのはありがてぇよな、ユウ」

二人は三枚のメダルを全て取り換え、スキャナーで一気に読み込んだ。

≪≪SUPER!SUPER!SUPER!≫≫
≪SUPER TAKA・SUPER TORA・SUPER BATTA≫
≪SUPER RYU・SUPER ONI・SUPER TENBA≫
≪SUPER!TATOBA!TA・TO・BA!SUPER!≫
≪SUPER!RIOTE!RI・O・TE!SUPER!≫

喧しく鳴り響いた声達。
巡りに巡ったメダルたちが彼らを進化させた。

今までのコンボとは違い、基本形態であるタトバとリオテをモデルとすることで安定性を得たまま更なるパワーを獲得した色鮮やかな姿。
これまでの黒い装甲とコアの色彩を逆転させ、リュウヘッドとタカヘッドをブレイブへと昇華させている。

仮面ライダーオーズ・スーパータトバコンボ!
仮面ライダーブライ・スーパーリオテコンボ!

「「ハッ!」」

スーパートラクローと超刀『銀』を構え、二人と一人が激突する。

――ガギンガギンガギンガギンガギンガギンッッ!!――

僅か数秒の間に、双方は幾度となく刃を交え、対等に渡り合っていた。

『バカな……何故時間が止まらない!いや、そもそも何故攻撃が通る!』
「俺たちが使ってるのも、未来のコアメダルだから」
「それに幾ら未来が解っても、片方が動きを抑えて、片方がその隙に叩けば、意味ないだろ?」

未来視といえど、望む未来を得るにはそれに至る為の手順が必要となる。
だが、踏むべき手順そのものを封殺されてしまった場合、望む未来には辿り着けないのだ。
ブライが時間停止と高速移動を併用することで超銀河王の凶刃を超刀『銀』が阻み、オーズのトラクローソリッドが一撃を叩き込む。
皮肉にもこれは超銀河王と同じ境地に立った者が複数いて初めて実現する戦法―――彼が見下した弱者たちが嬉々として振るう力なのだ。





*****

地上。
そこでは大多数の決着が着こうとしていた。

「その肉身、開いてやろう」

≪SCANNING CHARGE≫

クエスはメダブラッカーを構えると、ベルトから身体のラインを通してエネルギーが刀身へと伝わっていく。
二振りのメダブラッカーの刃には橙色の光が灯り、十分な力が込められたことを示している。

「ふん!はあっ!」

二つの線を交差させるように振り下ろされた斬撃は、ケートスはおろかその周囲の世界さえも切り裂いていた。
かつてオーズがメダジャリバーで空間断裂を引き起こしたオーズバッシュと同じ現象が起こっていたのだ。

『があああああああああ!!』

無残な断末魔を上げ、ケートスは”クエスシュレッド”の前に敗れ去った。



「ふっふ〜ん♪」

一方、カーミラはお気に入りの玩具でも自慢するかのような手つきでブローマグナムとツイスターシックルを合体させ始めたのだ。
ツイスターシックルの鎌らしい曲がった刃を真っ直ぐにすると、柄をブローマグナムの銃身の下部へと連結させることですることで、銃剣”ウインドバイヨネット”が完成した。

≪SCANNING CHARGE≫

スキャナーを手に取り、カテドラルへと走らせると、威勢のいい声と同時にコアのエネルギーがウインドバイヨネットに伝達される。

「蜂の巣となり―――」

撃ち出される弾丸はまさしく怒涛の嵐のようだった。
拳銃にもかかわらず、まるで機関銃のような連射性能を誇り、威力は大口径のマグナム弾にも匹敵した。

「微塵切りとなり―――」

繰り出される鎌による斬撃は真空の刃を伴い、一撃ごとに幾重もの深い切り傷を作り上げる。
それをカーミラは自らが台風になったかのように身体を回転させ、何度も何度も繰り返した。

そして、

「オブジェとなりなさい」

斬撃と銃撃を同時に叩き込んだ。

結果、コーヴァスは悲鳴を上げる事すらできず、爆炎の中で散った。





*****

【CYCLONE/JOKER】
【XTREME】

一方でWはドライバーのメモリを換装することでサイクロンジョーカーに戻ると同時に鳥型の大型ガイアメモリ、エクストリームメモリをバックルに装着することでサイクロンジョーカーエクストリームへと進化した。

【MAGICAL/WISEMAN】
【XCELION】

イーヴィルは右半身が銀、左半身が金のマジカルワイズマンにハーフチェンジし、龍型の大型ガイアメモリ、エクセリオンメモリをドライバーにセットすることでマジカルワイズマンエクセリオンへと強化変身を果たす。

「「プリズムビッカー!」」
「「ネクサスブレイブ!」」

【PRISM】
【NEXUS】

己が身の正中のサーバーより出現した矛と盾を手にし、矛の柄尻にプリズムメモリとネクサスメモリをインサートし、光と絆の武器が起動する。

「「これで決まりだ!」」
「「これで終わりだ!」」

【CYCLONE/HEAT/LUNA/JOKER・MAXIMUM DRIVE】
【MAGICAL/EVIL/ZODIAC/NAIL/HOPPER/WISEMAN・MAXIMUM DRIVE】

「「ビッカーチャージブレイク!!」」
「「ブレイブショックストライカー!!」」

ビッカーシールドとブレイブシールドにインサートされた四本と六本のメモリ。
そのパワーはプリズムソードとネクサスソードに供給され、一撃必殺の斬撃となり、ユニコーンとアームズを一刀両断した。





*****

「「ハァァ……!」」

アクアとゲイルはダミー・カザリと対峙し、構えを取ると、

「アクアヴォルテクス!!」
「ゲイルウォールウインド!!」

アクアは空中に水を生み出し、それを滑るようにして回し蹴りを決めた。
ゲイルも風を生み出すことで己をドリル回転させ、敵の土手っ腹に叩き込む。

――ジャリィィィィィン!!――

同時攻撃の結果、ダミー・カザリは衝撃を許容し切れず、何十枚ものセルメダルとなって爆散した。





*****

昭和ライダー、1号&ZO対ダミー・Rナスカ。

「トドメだ!」
「トオッ!」

ダブルライダーがバッタの脚力を活かし、ダミー・Rナスカのいる上空へと跳びあがり、

「「ライダーダブルキーーーック!!」」
『ぐああああああああ!!』

ダブルライダーだけが放てる伝家の宝刀たる必殺技により、ダミー・Rナスカは空中で真っ赤な爆炎となった消えた。



2号&J対ダミー・ガメル。

「「ライダー……!」」

2号は両腕を風車のように回し、Jは右手の指で『J』を形作ってエネルギーを拳にチャージする。

「「ダブルパァァァンチ!!」」

ズドンと打ち出された2つの鉄拳はガメルの顔面と胸板に直撃し、

――ジャリィィィィィン!!――

ダミー・ガメルは声もなくメダルの塊としてバラバラになっていった。



V3&ZX対、ダミー・クレイドール。

『チッ』

クレイドールは舌打ちをしつつ、腕の砲口からエネルギー弾を撃ち出した。

「「トオ!」」

しかし、V3とZXは華麗な跳躍でそれを躱し、

「V3ィィィ!」

先行してV3がクレイドールに一撃目の飛び蹴りをお見舞いすると、

「ZXキック!」

ZXが空中で腕を構えることでエネルギーを解放し、クレイドールに灼熱の一撃を決めた。
そして、

「反転ぇぇぇん、キーーーック!!」

V3の2撃目が華麗に決まると、クレイドールは本当にただの土くれとなって崩れ落ちた。



ライダーマン&スーパー1対ダミー・メズール。

「ロープアーム!」

ライダーマンの右腕に装着されたアタッチメントの先端の鉤爪がロープによって伸び、ダミー・メズールを拘束する。

「チェーンジ!冷熱ハンド!」

スーパー1はファイブハンドの内、左は超高温火炎、右は冷凍ガスを発射する緑色の腕を装備した。

「超高温火炎!」

左腕から放射される火炎の温度は巨大な鉄球を一瞬で赤熱化させるほどの威力を有している。
なによりダミー・メズールの属する水棲系は高熱に弱い。

「冷凍ガス噴射!

そこへ右腕から絶対零度の白煙が吹きつけられる。
無論、この行動には意味がある。
例えば陶器などを高温で熱した直後に水で冷やした際、ひび割れることがある。
それと同じように高温の物体は急激に冷やされると脆くなってしまう。

「ぬん!」

ライダーマンは今一度ロープアームを振り回し、上空へと舞い上げられたダミー・メズールを一気に地面へと叩き付け、粉々に粉砕した。



X&スカイライダー対ダミー・ウヴァ。

「トォ、トォ!」

Xはライドルスティックを振り回し、ダミー・ウヴァを牽制する。
そこへスカイライダーが前に出ると、

「スーパーライトウェーブ!」
『ッ!?』

ベルトのバックルから渦状の閃光が迸り、ウヴァが緑色の複眼を手で押さえると、

「今だ!」

XはスティックでX字を描いた直後、スティックを上空へと投げ自らもジャンプする。
上空で静止するライドルスティックを鉄棒のようにして扱い、体操選手さながらの回転をするX。
当然、そんな隙塗れな状態をウヴァが狙わない筈もないのだが、先程の閃光の所為で視界が霞んでいる上に、

「スカーイキーック!!」

スカイライダーの必殺蹴りが炸裂し、隙を突く暇など無い。

「トオッ、Xキーック!」

そこへさらに回転を終えたXが手足を伸ばした直後の必殺キックを炸裂させ、ダミー・ウヴァは何も出来ぬまま爆発四散した。



アマゾン&シン対ダミー・スミロドン。

「キキィィィ!」

そこでは3匹の野獣がルール無用の戦いをしていた。
一人は蜥蜴、一人は飛蝗、一人は剣歯虎。
類さえ違う者達がにらみ合い、野獣特有の四肢の全てを活かした戦術を見せていた。

「キィィィ!」

だが、それもここまで。
敵の行動は全て見切った。

「大ぁぁぁい、切断ぁぁぁん!!」
「うぅっ、シャアアアアアアア!!」

二人の前腕部に備わったヒレカッターとスパインカッターはダミー・スミロドンの体を肩口から腹部にかけてまで切り裂いて見せた。



ストロンガー&BLACK RX対ダミー・テラー。

「リボルケイン!」

RXは腹部のバックルの奥にあるキングストーンより光子剣リボルケインを生成する。
光り輝く刀身をしているそれはこれまで幾度となくRXの勝利の決め手となった必殺武器。

「トアァァ!」

RXは剣の先端をダミー・テラーの腹部に勢いよく突き刺した。
突き刺されたダミー・テラーの背部にはリボルケインの光エナジーによる火花が散っている。
背後の空気を察し、RXがリボルケインを引き抜いた直後、

「ストロンガー電キーック!!」

電気人間の超高電圧を乗せたパワフルなキック技が炸裂した。
RXが切っ先でRの文字を描く中、ダミー・テラーは二つの光の前に消え去った。





*****

エクソダスの船体。ロケットのジェット噴射が終了し、両脇のそれは役目を終えて切り離された。
残るシャトル本体のエンジンが点火され、大気圏からの離脱までもう間もなくとなる。
そして、戦いの場は船体の上そのものへと変わっていた。
ウインチモジュールとフックモジュールでどうにかしがみつくことが出来たフォーゼとファズムは、オーズとブライの手を借りてやっと舞台へと上がった。

「助かったぜ、二人とも」
「あぁ」
『最後によく目に焼き付けておけ』

そんな雰囲気を台無しにするように、超銀河王がローブの巨大刃とギンガオーブレードを手に能書きを垂れる。

『この世界の王を!』

〔ROCKET SUPER〕
〔SABER SUPER〕
〔ROCKET・ON〕
〔SABER・ON〕

「決着だ、カンナギ!」

ロケットステイツとセイバーステイツとなったフォーゼとファズムを加え、四人は再び超銀河王へと挑みかかった。

ツインとなったロケットモジュールとセイバーモジュールによる推進力によって突撃するフォーゼとファズム、新たな最強コンボによるパワーで立ち向かうオーズとブライ。
だが、超銀河王はその圧倒的な力と未来を知る力で全ての攻撃を捌いていく。

さらに超銀河王はローブを投擲し、その軌道を自在にコントロールすることで空中を縦横無尽に飛び回るフォーゼとファズムを追い回している。
だが、ただ逃げ回るだけの二人ではない。一度距離が離れ、十分な間合いがとれる状況になると、左腕のモジュールを解除してエンターレバーを引いた。

〔ROCKET:LIMIT BREAK〕
〔SABER:LIMIT BREAK〕

「ライダーきりもみクラッシャー!!」
「セイバー竜巻バニッシャー!!」

両腕のモジュールの噴射を利用した高速回転による一撃が二人分同時に決まり、コズミックエナジーから作られしローブは跡形もなく消滅した。
船体の上に戻ったフォーゼとファズムは再び超銀河王に突っ込むも、当の超銀河王は最後に残ったギンガオーブレードで激しい攻防を繰り広げる。

短時間ながらも勝負の行方は難航し、四人は一旦距離をとって相手の出方を見るように構えた。

『味わってみるかね?君の恋人と親友だったモノの力を。SOLUを変換したコズミックエナジーと『根源』より引きだされる絶大なる魔力だ!』

ギンガオーブレードにコズミックエナジーと魔力が大量に蓄えられていき、超銀河王の素振りのような動作と共にそれらは一気に放出された。
真正面から向かってくる二つの力に対し、それに耐性のあるフォーゼとファズムが両腕のモジュールを盾にして凌ぐ。

「なんてパワーだ!」
「王の力は、伊達じゃないか……!」

気を抜けば先刻のように船体から弾き飛ばされ、二度とここへは戻ってこれない。
その事実もあって二人は手足に懸命に力を混め、どうには踏ん張っていた。
しかしながら、それも長くはもたないだろうし、持久戦に持ち込めば超銀河王は優位な立場のままになってしまう。
もう無理か、という考えがファズムの脳裏をよぎったその時、声が聞こえてきた。

(弦太郎)
(アヴェンジャーさん)

聞き違える筈はない。
その声の主は間違いなく、

「撫子?お前、生きてたのか!?」
「シャロナ……どうしてなんだ?」

フォーゼとファズムは聞こえる筈のない二人の声に困惑する。

(生きる?それは少し違う。それより弦太郎。このコズミックエナジーを使って!)
(説明など無粋です。今は、ただ勝つことだけを考えてください)

その言葉と同時に、二人のアーマーにはコズミックエナジーと魔力が浸透していった。

「おお、エナジーを吸収していく……!」
「甲冑に、魔力が溢れ出るようだ……!」

そして、

「宇宙……」
「幻想……」

与えられたエナジーと魔力を余さず受け入れたその時こそ、

「宇宙キタァァァアアアアア!!」
「幻想キタぜぇぇぇえええええ!!」

ライダーの反撃の時、即ち、勝利の時。

エクソダスは既に地球の大気圏ギリギリの高度にまで上昇していた。
タイムリミットまでもう数分足らずといったところか。

「トドメ、決めるぜ!」
「応」

≪≪SCANNING CHARGE≫≫

オーズとブライがスキャンによるチャージをする傍ら、

〔DRILL・ON〕
〔LANCER・ON〕
〔ROCKET・DRILL:LIMIT BREAK〕
〔SABER・LANCER:LLIMIT BREAK〕

左足にドリルモジュールとランサーモジュールを装備し、リミットブレイクを発動する。
四人は身を深く構え、一斉に飛んだ。
その体からは途方も無いエネルギーが溢れだし、触れる者すべてを弾いてしまいそうな力強さを持っていた。

「ライダーダブルロケットドリルキーーーック!!」
「ヒーローダブルセイバーランサーキーーーク!!」

オーズのスーパータトバキックとブライのスーパーリオテキックと共に繰り出された渾身の必殺技は見事超銀河王に命中した。
いや、正確にはギンガオーブレードで防御しようとしたが、あまりの威力に刀身が砕け散り、四人の足が彼本体に届いてしまったのだ。

『何故、仮面ライダー如き!?銀河の王となるべき私が!?』

最期まで王となる野心を捨てぬ男、レム・カンナギ。

「セイヤアアアアア!!」
「チェストオオオオオ!!」
「ダァァァアアアアア!!」
「ハァァァアアアアア!!」

――ッバ……!!――

『残念無念……!』

ライダー達の同時四連キックは超銀河王を船体の前方へと吹き飛ばし、皮肉にも自らが用意したエクソダスとの衝突によって爆死する最期を遂げた。

為すべきことを為し遂げた四人のライダーは無事に着地するも、この戦いの影響で既にエクソダスには火の手が回っていた。
ハッキリ言って、あと一分で爆発しても可笑しくない状況だ。

「―――やったぜ!」
「あぁ。だが、君にはもう一つ、やっておくことがあるよ、弦太郎」





****

エクソダスの船内は最早手の施しようがない状態だった。
火の海と呼べる場所で、フォーゼはある人物と対面していた。

「撫子……」
(今の私は、意志を持ったエナジー体。……肉体は消滅した)
「え……?」

目の前の青白いエナジー体の言葉に、フォーゼ―――いや、弦太郎の表情が曇った。

(でも、ありがとう。弦太郎のお蔭で、思い出が出来た。大切な友達の思い出が)
「あぁ。お前は俺のダチだ。大事な大事な、俺のダチだ!」

それは二人だけに見える光景だったのか、誰にもわからない。
撫子の姿となったエナジー体は弦太郎と握手を交わし、拳をぶつけあう―――友達のシルシをした。
そして、彼女は弦太郎の頬に手を添えると、足りない分の身長を背伸びで賄った。

――バッ!――

〔PARACHUTE〕
〔PARACHUTE・ON〕
〔DARK FLIER〕

エクソダスから脱出した四人の内、オーズはタジャドルコンボ、ブライはリュワドラコンボにチェンジして空を舞う。
フォーゼは左腕にパラシュートモジュールを展開してゆっくりと降下し、ファズムは異次元より闇色の戦闘機”ダークフライヤー”を召喚し操縦席に座り込んだ。

「―――――」

爆発するエクソダスの爆炎から一筋の青白い光を目にし、フォーゼは只管無言でそれを見送った。

「青春って……切ないな」
「あぁ。だが、羨ましいよな」

空を舞いながらオーズとブライがひっそりと呟いた。

「―――――」

そしてブライもまた、ダークフライヤーの操縦席であるものを大事そうに握りしめていた。
刀身と共にコアメダルが砕け、今やMEGAスイッチが装填された柄の周辺だけが残された、ギンガオーブレードの残骸を。





*****

その頃、地上では。

「ふむ。エクソダスは綺麗サッパリ消えたらしい」
「よくやったな……後輩」

魔人としての常識を超えた視力でエクソダスの爆発を肉眼で確認したゼロに続いて、翔太郎が弦太郎たちにクールな称賛を贈った。





*****

一方、クスクシエでは屑ヤミーの所為でメチャクチャになった店内を片づけていた。
その片付けのお手伝いとして、後藤、伊達、金女、烈火が駆りだされていた。

「これじゃ当分、営業は無理そうですね」
「ううん。明日からいつも通り通常営業よ」

この惨状の中で知世子があっさりとした口調で言いのけた。

「……遺跡フェア、とか?」
「さっすが知世子さん」
「商魂逞しいなぁオイ」
「兄さんが御得意先にするわけですね」

後の時代で彼らの後輩ライダーはこんな言葉を口癖にしていたらしい。
”ピンチはチャンス”―――と。

(いつか……いつかの明日に……)

その光景を見て、比奈は思う。
明日とは必ず来るものである。だから、待ち続けようと。

「比奈ちゃん!」
「あ、はい!」





*****

映司は再び旅に出た。
何処とも知れぬ国の、何処とも知れぬ土地で、答えに辿り着く道を探している。

(待ってろよ、アンク。俺たちは必ず届いて見せる。お前がいる”明日”に!)

その手に、割れた希望を握りしめて。





*****

「そうだ。これが、俺のやりたいこと。俺が掴むべき明日」

同時刻、刃介も割れた希望を手にし、旅の最中に戻っていた。

「刃介〜!」
「参るぞ」
「あぁ……そうだな」

彼はこれからも決して独りではない。
頼るべき仲間が居る限り、彼を想う者がいる限り、そして彼が望み続ける限り。

(七実……次は、どんな明日で会えるんだ?)





*****

そして最後に。

「えぇ!三人とも、天高に来るのぉ!?」

ユウキはビックリ仰天していた。
それもその筈だ。
アヴェンジャー……いや、衛宮空とカース、そしてシャロナの三人が天高に来るというのだから。

「うん。僕は用務員、マスターは保険医、それから……」
「私が教師として天高に赴任します」

眼鏡を指でずり上げながらシャロナが答えてみせた。

「でもでも、シャロナさん、無事に戻れてよかったよ〜!」
「それについてはラストワンのゾディアーツと同じ理屈だ。スイッチさえ切ってしまえば、精神は自動的に身体へと戻る」

そう。あの時、ファズムが態々ギンガオーブレードの残骸を回収していたのは、こういったもしもの可能性を考慮しての事だった。

「だが、貴方がたに学校で働ける免許があったとは、正直驚いた」
「伊達にそなたらより年を喰っている訳ではないのじゃ。妾とて、かつての表稼業は医術に携わる立場じゃったからな」

そんな驚きの新事実をあっさり公開しつつ、カースが朗らかに笑ってみせた。

「あ、弦ちゃーん!こっちこっち!」

と、そこへ弦太郎が用向きを済ませてこちらへと戻ってきた。
が、そんな時に女子高生たちの話し声が耳に入り、そちらへと顔を向けると―――

「あれって……」
「ああ。本物の美咲撫子だ」

SOLUのコピー元である、オリジナルの美咲撫子がそこにいた。

「…………」

当然、弦太郎の心は複雑なものとなり、口は何の声も発しない。
ただ、人間の美咲撫子が自分の横を通り過ぎて行ったのを黙って見ているだけだった。

弦太郎の心中は余人には計り知れない。
だけど、それでも……。

「弦ちゃん!」
「如月!」
「弦太郎!」

仲間たちの前で彼は真っ直ぐに笑っていた。
いつも通りの、青春に真っ直ぐな気持ちのいい顔をしていた。



記憶、欲望、神秘。
三つの物語を交差させた銀幕の舞台はここで幕を下ろす。
此処から先の未来は誰にもわからない。分からないからこそ、人は人でいられる。

何時だって闇の中に光を見出し、その光を火種にして、新たな光が灯していく。
それこそが、遥か古の時より人が紡いできた新天地の歴史。
最後のフロンティア―――宇宙という星の海の旅へと飛び立たせる翼たる思いなのだから……!




遂に完結!
色んな設定も添えてますので、よかったらどうぞ!



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