「ファングユニット、セット!」

 マキシマの左肩についていたブラッディ・ブレイカーの頭部がスライドし、左拳に
装着される。

 装着された魔竜の頭は眼前の獲物を粉砕するために唸り声にも似た駆動音をあげる。

 セグラントは照準を正面に陣取ったKMFに向け、

「ファングナッコォォォォ!」

 コクピット内で叫び、魔竜を解き放つ。

 ファングユニットを装着された拳が射出され、眼前の一機のみならずその後ろに
控えていた機体をも食い破っていく。
 
 一番最初に狙われた機体はコクピットを真ん中から撃ち貫かれ、後ろに控えていた
機体もまた避ける際に掠ったのか、脇腹部分を大きく食い破られていた。

 いくら戦意があろうとも機体がこれでは戦える筈もないのだが、ルルーシュの奴隷と
なっている兵士には(ルルーシュ)の命なくして退くという選択は有り得ない。

 深く損傷した機体を無理に動かし、セグラントに届く前に爆散するという結果となる。

 複数の敵を一撃で食い破ったファングナックルが左腕に納まる。
 
 射出された拳はスラッシュハーケンと似たような構造で左腕と繋がっており、
ファングナックルの戻るタイミングは全てセグラントの判断による物である。

 有線で繋がっている為、射出したファングナックルと左腕を繋ぐ特殊ワイヤーを
断ち切られれば、それだけでマキシマは片腕を失う事となる。
 
 だが、それを防ぐ為の武装も多数用意されていた。

 ファングナックルが戻っていく瞬間を見逃す事なく再び6機のKMFが迫る。
 それを見たセグラントはただ不敵に笑い、

「胸部ハドロン砲、発射!」

 チャージしていたハドロン砲を拡散モードで撃ち出す。

 拡散するハドロン砲は嵐の如く、眼前の全てを蹂躙していく。

 しかし拡散させるという事は単発の威力を落とすという事である為、嵐に巻き込まれた
6機は1機が犠牲になったのみであり残った5機いずれもが軽い損傷で済んでいた。

『オールハイル、ルルーシュ!』

 5機はルルーシュを称えながら、一斉にハドロン砲を撃つ。

 しかしハドロン砲がマキシマへと届く事はなかった。

 マキシマの両膝、両肘に付けられた父のギャラハッドから受け継がれたブレイズ
ルミナス発生装置から発生した磁気バリアがそれを防ぐ。

 5機同時のハドロン砲を防がれた事により隙が出来た敵を見逃すほどセグラントは愚か
ではない。マキシマは真っ直ぐ最短距離を進み、5機の中心で体を一回転させる。

 それに付随し、尻尾も動く。
 尻尾に取り付けられたテールMVSが4機を真横に両断する。

 テールMVSを避けた1機は右腕に付けられたブレイカーユニットに捕まり、粉砕される。

 圧倒的なまでの彼我の戦力差。
 数は絶望的なまでの差があるというのに、それでも戦況はセグラント達の有利となり
始めていた。セグラントとマキシマの戦線参加、戦況が傾いた理由としてはこれが一番
大きいだろう。

 これこそがクラウンの求めたたった一機で戦場を支配する機体。

 その集大成こそがホーリーグレイル・マキシマとそれを動かすセグラントだった。

 ドラグーンネストの艦橋にてクラウンはプルプルと肩を震わす。

 拳は固く握り締められ、顔には歓喜の笑顔が浮かぶ。

「そうだ、もっとだ。もっと私を魅せてくれ。君たちにこそ最強の座は相応しいという
事を。敵も味方も、戦場の一切合財全てを魅了してくれ!」

 クラウンの叫びが届いていたのか、セグラントとマキシマは新たな獲物を求めて、
爆進していく。立ちはだかる全てを食い破り、切り裂き、打ち砕きながら。

 ダールトンは彼等の様子に自軍の士気が上がるのを感じる。
 皆、魅せられているのだ。
 
 ダールトンはコクピットの中で笑う。
 
「まったくなんという益荒男振りか。私の中の血潮が沸騰しそうだ。冷静にならなければ
戦場で生き抜く事は出来ないと口を酸っぱくして息子たちに教えてきたというのに。
ヴァルトシュタイン卿、貴方はなんという戦を魅せてくれるのですか」

『父上!』

「デヴィットか。どうした」

『我等もヴァルトシュタイン卿に続くべきです! 今のヴァルトシュタイン卿は正に古に
聞く一騎駆けというものでしょう。アレを見て大人しく戦えというのは無理という物」

 デヴィットの熱が入った言葉にダールトンは答える。

「ゾディアック隊に告げる! 全機集結。これより我等はヴァルトシュタイン卿の道に
続く! 総員、牙を剥け! 爪を砥げ! 卿の討ち漏らしは我等が狩りとる!」

『イエス、マイロード!』

 先頭を駆ける戦神に狼の群れが続く。
 
 そんな彼等を見た他の兵士もまた士気を上げ、それに続く。

 策を幾十に張り巡らせ、どんな状況にでも対応できるようにしてきたルルーシュに
とってこの光景は驚くべきものだった。

 ギアスによって狂戦士となった兵士達の狂気は敵方の士気を確実に落としていた筈。
 それは間違っていなかった。

 現にアレが現れるまでは戦況はルルーシュの傾いていた筈なのだ。

 全ての原因はアレ。

 先頭を駆け、全ての兵士を戦へと導く漢。

「セグラント・ヴァルトシュタインか。シュナイゼルめ、奴の資質を見抜いていたか」

 自身のKMF蜃気楼のコクピット内でルルーシュは顔を歪ませる。

 自身の悲願を達成する為にはなんとしてもダモクレスをこの手に掌握しなければ
ならないというのに。

「アレにいくら兵士をぶつけても餌を与えて、調子付かせるだけか」

 ここでルルーシュはひとつの判断を迫られる。
 指示を出すか、出さないか。

 迷う彼に通信が入る。

『ルルーシュ迷わなくて良い。指示を』

 その言葉にルルーシュは深く息を吸い、

「スザク! 我が騎士よ。ヴァルトシュタインを討ち取れ! 俺はその間にダモクレスに
侵入する!」

『イエス、ユアマジェスティ!』

 純白の騎士が横を駆けていく。
 蜃気楼はその後ろに続く。
 目指すは銀の戦士。




 マキシマのレーダーに新たに二機のKMF反応が現れる。

 二機の速さは尋常ではない。
 これが意味するのは当然、

「来たな、枢木」

 純白の騎士の後ろに黒いKMFも見えるが、既にそれはセグラントの意識の外にある。

 彼の視界を支配しているのは(きょうしゃ)を討ち取った(さいきょう)

『ヴァルトシュタイン卿、枢木の相手は?』

「当然俺だ」

『では黒い方は?』

「任せる」

『はっ。ご武運を!』

 蜃気楼は凱旋するかのように進んでいく。
 進行を遮る全てはギアスによって奴隷となった兵士がその身を投げ打って防ぐ。

『ルルーシュを行かせて良いのかい?』

「あっちにはモニカとかも居るんだ、問題は無い」

『それで君は仇討ちというわけか、セグラント」

 スザクの言葉をセグラントは鼻で笑う。

「仇討ち? 違うな。そんな理由じゃあない」

 父の仇討ちをそんな理由と言い放ったセグラントにスザクは眉間に皺を寄せる。

『では、なんだと言うんだい?』

「それこそ愚問だ。親父は最強の騎士だった(・・・)。だが、親父はお前に敗れた。
つまり、今の最強はお前だ。なら後は簡単だ。俺は親父の言葉に従う。親父の望んだ姿を
見せてやりたいのさ」

 ファングユニットを装着し、臨戦態勢に入る。

「どけ、枢木。最強の座(そこ)は俺のものだ」



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