IS〜インフィニット・ストラトス〜
自由の戦士と永遠の歌姫

第八話
「現れたセカンド幼馴染」



 一夏がグラウンドに大穴開けて、キラとラクスが恋人同士だという事がクラス全体に知れ渡った日の放課後、キラとラクスの二人は千冬と共に生徒指導室に来ていた。

「それで、ヤマト・・・束から預かってきているな?」
「ええ・・・これが白式のプロトタイプIS・・・・・・そして織斑先生の嘗ての愛機を改良した第4世代型IS、暮桜・真打です」

 キラがポケットから取り出したのは桜の花の形をしたペンダントだ。これが白式のプロトタイプ、そして嘗て千冬が現役時代に乗っていた暮桜を改良した第4世代機の試作型、暮桜・真打である。

「暮桜・・・真打・・・・・・まさか、束に返した筈の暮桜が、こんな形で戻ってくるとはな・・・・・・」
「しかし、束さんにはこれを織斑先生が本当に必要とした時に返してくれと言われています」
「織斑先生・・・先生がこれを必要とする日は来ると思いますか?」
「・・・・・正直な話、今の状況では必要無い。今の私はIS操縦者ではなく、一教師でしかないのだからな」

 寧ろ、来て欲しくない。再び、嘗ての世界最強が己の剣を取り戻す日など・・・来ない方が良いのだ。

「それでは、これはラクスに預けておきます。もし、先生がこれを必要とする時が来たら・・・ラクスから受け取ってください」
「・・・わかった」

 キラから暮桜・真打を受け取ったラクスは、それを自分の制服のポケットに入れると、改めて千冬の方を向いた。

「それでは、一時だけですが・・・お預かりいたしますわ」
「ああ、使う日が来ない事を祈るよ」
「そうですわね」

 話はそれで終わり、キラとラクスは帰路に着いた。

「あ、キラ・・・布仏さんからお誘いがあったはずですわ」
「? ああ、確か一夏のクラス代表就任記念パーティーだっけ?寮の食堂の一角を借りてやるって言ってたね」

 ならば少し急いだ方が良いだろう。駆け足気味に寮へ戻ったキラとラクスは玄関で待っていたクラスメートに案内され食堂に入った。
 食堂には既に1年1組の生徒達が全員揃っていて、キラとラクスも案内された席・・・キラが一夏の隣に座り、そのキラの横にラクスが、キラの向いにはセシリアが座り、一夏の反対側には箒が座っている。

「よう、遅かったな」
「ちょっと織斑先生と話があったからね」
「千冬姉と? まあいいか、それよりそろそろ始まるみたいだぞ?」

 確かに、キラとラクスの前にジュースが置かれ、クラスメート全員がクラッカーを持って構えていた。

「それでは! 織斑君のクラス代表決定おめでとうーーっ!!」
『おめでとうーー!!』

 クラッカーが鳴り響き、それぞれが手に持ったグラスで乾杯をするとパーティーが始まった。
 テーブルには皆が持ち寄ったのか様々なお菓子やジュースが並んでおり、自由に取って食べるという形になっているらしい。

「織斑くん頑張ってね!」
「応援してるよ!」
「あ、ありがとう・・・・・・」

 女子たちがパーティーという事で妙にハイテンションになっている所為か、一夏がそのテンションに付いて行けず少し引いている。
 もっとも、キラも少しそのテンションは苦手なのか苦笑しながらジュースを飲み終えて珈琲を淹れているのだが。

「あれ? ヤマト君は珈琲派?」
「うん、ラクスは紅茶が好きだけど・・・僕は珈琲が好きかな。僕の兄みたいな人が好きだったから、その影響で」

 脳裏に浮かぶのは自身が恋人を殺して片腕と片目の視力を奪ってしまった兄の様な人・・・バルトフェルドだ。
 二年、彼と一緒に過ごしている内に、いつの間にか一緒に珈琲を飲んだり、ブレンドしてみたり、珈琲に凝ってしまう様になった自分がいた。

「そう言えばヤマト君とクラインさんって・・・本当に付き合ってるの?」
「ええ、私はキラの恋人ですわ」
「うん、4年前から・・・ずっと変わらない。僕が護るべき存在だよ」

 お互いがそう言い合って、そしてお互いに見つめ合い微笑み合う。それだけでも絵になる美形のカップルに、隙は無かった。
 そして、それを目の前で見ていたセシリアは落ち込み、暗くなってしまうが・・・それでも自身の胸の内に芽生えた気持ちを諦められなかった。
 セシリアにとってキラは初恋で、初めて出会った理想の男性で、強く、気高く、何よりもセシリアの心を振るわせる言葉を投げ掛けた初めての男性だ。簡単に諦められるほど、セシリアの気持ちは軽くないし、何よりも簡単に諦めるなどセシリアのプライドが許さなかったのだ。

「あっ! いたいた・・・ 織斑く〜ん! ヤマトく〜ん!」
「「ん?」」

 誰かに呼ばれた気がして、声がした方を見ると・・・廊下の向こうから恐らく二年生であろう色のリボンを胸元で結んだ制服姿の眼鏡を掛けた女生徒の姿があった。

「話題の新入生のインタビューに来ました! 新聞部副部長二年の黛薫子です。はいこれ名刺! よろしくね〜!」

 薫子が差し出した名刺を受け取り、キラは何となくだけど予想していた事が起きたなと思ってしまった。
 史上初の男性IS操縦者が二人、IS学園に入学してきたのだから、学園でも話題にならない筈がない。間違いなく新聞部か何かの部活に取材を受ける事になるだろうとは思っていたのだ。

「まず織斑君に、ずばりクラス代表になった感想とか聞かせてくれるかな?」
「まあ・・・何と言うか・・・頑張ります」
「え〜、それだけ〜? ま、いっか・・・そこは適当に捏造するから良いとして」

 捏造するのか・・・・・・。それで良いのだろうか新聞部。

「次はヤマト君に! 何でクラス代表を降りちゃったの?」
「一言で言うのなら一夏にISでの戦闘をクラス代表対抗戦で経験してもらう為かな? 一夏は僕やセシリアさんとは違って、一夏はISの稼働時間が圧倒的に少ないし、戦闘経験も少ない。だから良い経験になると思ったんだよ」
「お〜・・・こりゃ捏造する必要無さそうねぇ」

 キラの完璧すぎる回答に捏造する点が見つからなかったのか、薫子はちょっと残念そうな表情をした。・・・・・・そんなに捏造したいのだろうかこの子は。

「じゃ、次はセシリアちゃんね。ヤマト君と試合して負けた訳だけど、何か思うところはあるかな?」
「わ、私ですか・・・? そうですわね・・・・・・キラさんとの試合は、私にとって今までの経験を改めて見直す良い機会になりました。そ、それで・・・」
「あ〜、後は良いよ適当に捏造してヤマト君に惚れたからって書いとくから」
「ちょっ!?」

 慌ててセシリアがキラの方を向くが、当のキラは珈琲片手にラクスと雑談していて聞いていなかった。
 安心した様な、残念な様な・・・複雑な心境でセシリアは頬を膨らませるのだが、それに気付いたキラが疑問符を浮かべて首を傾げてしまう。

「じゃあ最後に写真撮らせてよ。1年1組の専用機持ち三人の写真! はい三人とも並んで〜」

 何故かキラを真ん中にして右にセシリア、左に一夏が並んだ。

「じゃあ、真ん中で手を結んでくれると良い絵になるかな〜?」

 そう言われて三人は真ん中で右手を重ね合わせると、真っ直ぐカメラのレンズを見る。

「は〜い、それじゃあ・・・3、2、1・・・」

 シャッターが切られる瞬間、箒が一夏の横に立ち、ラクスがキラの前に立って頭をキラの胸に預け、クラスメート全員が枠に収まる様に乗り出してきた。

「な、何でみんな写ってるんですの!?」

 一夏がいるとは言え、折角キラの横で写真を写せるチャンスだったのに、見事に邪魔されてしまってセシリアが憤慨した。
 箒も一夏が鼻の下を伸ばしている様に見えたのか鋭い眼光で彼を睨みつけていて、キラとラクスはそんな様子を眺めながら、どこかやんちゃな妹達と弟を見ている気持ちで微笑んでいるのだった。


 パーティーが終わって部屋に戻ってきたキラとラクスは順番にシャワーを浴び終わるとラクスは寝る前の紅茶を飲み、キラはパソコンに向かっていた。

「楽しかったですわね」
「そうだね・・・みんな元気だった」
「私たちがあの位の歳の時は・・・楽しむ暇は御座いませんでしたものね」

 そうだ、キラやラクスが15〜16歳の時は丁度、連合とザフトの戦争中で、キラはストライクのパイロット、ラクスは議長の娘として、心休まる時間など殆ど無かった。
 キラは常に戦場に出て、命のやり取りをしていたし、ラクスは政治の道具にならない為に色々と能天気の裏で画策する毎日・・・・・・それを考えると、IS学園の生徒は本当に平和で、毎日が楽しそうで、少し羨ましいと思ってしまう。

「でも、彼女たちもいつかは・・・ISの操縦者として戦場に立つ日が来る」
「今のままで行くと・・・世界は必ずISによる世界大戦が起きてしまう・・・悲しいことです」
「束さんは興味無いって言ってたけど・・・僕はこの世界で世界大戦が起きると言うのなら、止めたい」

 しかし、この世界でキラとラクスは無力だ。
 確かにキラにはストライクフリーダムがあるから、戦場に立てば戦争を止められるかもしれない。しかしそれでは駄目なのだ。所詮、個人の力は国には通用しないのが道理で、真理なのだから。

「キラ・・・あの計画はどの位進んでいるのですか?」
「一応、島自体は買い取ったけど・・・まだまだやる事が山積みでね。後何年掛かるか・・・」
「人材が欲しいですわね」

 本当に必要となる日が来るのなら、計画は早めておく必要があるけど・・・世界大戦なんてまだまだ何年先になるか判らない。なら、無理に急ぐ必要は無いのだけど、出来るだけ世界大戦が起きる頃には全ての準備を終わらせておきたい。

「うん、取り合えず今日はこの話もお終い。明日も早いから・・・もう寝よう?」
「ええ」

 二人とも自分のベッドに入ると、リモコンで部屋の電気を消して就寝する。
 明日は、何か起きそうな予感がして、悪い予感ではないので何となくだけど、楽しみにしながら・・・・・・。


 翌朝、教室ではとある噂が広まっていた。
 何でも隣の2組に転校生が来るという話らしい。それも中国の代表候補生らしい。

「中国の代表候補生ですか・・・私の存在を危ぶんでの転入かしら」
「このクラスに転入してくるわけではないのだろう? 騒ぐほどのことでもあるまい」

 セシリアと箒はあまり興味が無さそうだ。キラもラクスも特に興味を惹かれる内容ではないが、まあ一夏にとっては丁度良い刺激にはなるか、という程度の認識しかない。

「代表候補生か・・・どんなやつなんだろうな」
「一夏、興味あるの?」
「ん? ああ・・・少しな」
「今のお前に女子を気にする余裕はないぞ! 来月にはクラス対抗戦があるんだからな!」

 確かに、箒の言うとおり今の一夏に他のクラスの人間の事を気にしている余裕は無い。只でさえ実戦経験もIS操縦技術も不足しているのに、他の事に気を取られてる暇なんて無いのだ。

「そうそう! 織斑くんには是非勝って貰わないと!」

 クラスの女子がハイテンションなのはクラス対抗戦優勝賞品である学食デザート半年無料パス券があるからだ。
 しかもクラス全員分があるというのなら、当然スイーツ大好きな女子はテンションも上がるだろう。

「まあうちには専用機持ちが三人もいるし、楽勝だよ! ね! 織斑くん!」
「えっ・・・ああ・・・・・・」
「その情報、古いよ!」

 突然、教室の入り口から会話に乱入してくる者が現れた。IS学園の制服を着た小柄なツインテールの女生徒、アジア系の顔付きだが日本人とは少し違う所を見ると、中国かその辺りの人間だろう。

「二組も専用機持ちがクラス代表になったの! そう簡単には勝てないから!」
「お前・・・鈴・・・・・お前、鈴か!?」

 一夏の知り合いらしい。二組の専用機持ち・・・一年で専用機を持っている人間がいるのは一組と四組だけの筈だが、二組の専用機持ちという事は、彼女が中国の代表候補生という事になる。

「そうよ! 中国代表候補生、鳳 鈴音! 久しぶりね・・・一夏」

 昨夜にキラが感じた予感、それが現実になった。
 どうも一夏の知り合いみたいだから、箒の事も考えると・・・本当に面白い事になりそうだと思い、キラとラクスは顔を見合わせて苦笑するのだった。


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