IS〜インフィニット・ストラトス〜
自由の戦士と永遠の歌姫

第三十話
「戦いが終わって」



 旅館に帰ってきて直ぐに全員大浴場へ向った。キラと一夏は当然男湯で、たった二人で広い露天風呂を楽しんでいる。
 一方、女湯では千冬やラクス達が露天風呂に入っており、スタイルの良い千冬、箒、セシリア、シャルロットが、胸が小さい事を気にしているメンバー、鈴音、ラクス、ラウラの標的となっていた。

「ちょっと箒! 何で同じ一夏の幼馴染なのにアンタとあたしでこんなに胸の大きさに差があるのよ!!」
「な!? そ、そんな事、私が知るか!? って、んあ!? こ、こら! む、胸を・・・揉むなぁ・・・」

 鈴が箒の後ろから手を回して豊満な乳房を揉みしだいていた。思わず声を出してしまった箒だが、直ぐに怒鳴り引き剥がそうとしたのだ。
 だが、鈴の指が胸の先端を摘んだ瞬間、電流が奔ったかのような感覚が身体を駆け巡り、下半身にお湯以外のヌルッとした熱い何かを感じながらへたり込んでしまう。

「セシリアも大きいな・・・むう、やはりイギリス人は胸が大きいモノなのか?」
「ひゃん!? ら、ラウラさん!? やぁ! そ、そこはらめれすわ〜〜っ!!」

 セシリアもラウラに胸を揉みしだかれていた。小柄なラウラはセシリアの真正面から抱きつく様に胸を揉み、傍から見るとセシリアに抱っこされている様にも見える。

「シャルさん、本当に胸が大きいですわ・・・私より」
「お、お姉ちゃん? あの・・・」
「私の方が年上なのですよ? ですのに・・・」
「えと、えと・・・その、僕はお母さんが胸、大きかったし」
「私のお母様も大きかったですわ」

 シャルロットの必死のフォローも失敗に終わった。というか、ラクスの母親は胸が大きかったらしい。

「シャルさん」
「?」
「頂きますわ」
「え? ちょ!? ひゃやややあああああああ!!!???」

 シャルロットも貧乳(ラクス)の餌食になってしまった。
 彼女たちの様子を少し離れた所に移動して見ていた千冬は呆れを溜息と共に吐き出し、ずれたタオルを頭の上に乗せなおした。

「いや〜、みんな楽しんでるねぇ〜」
「・・・いつの間に此処にいた?」
「え〜? 何かちーちゃんの匂いがしたから、ついさっき」

 犬かコイツは、と思ってしまった千冬は悪くないだろう。そして千冬の視界に妖しく蠢く束の手が見えた。

「さあさあ! みんなも楽しんでることだし、私もちーちゃんのバストを揉ませぷぎゅるっ!」
「やらせるか馬鹿者」
「え〜! ちーちゃんのイケズ〜! じゃあじゃあ、束さんの胸を揉んでも良いからぁ〜」
「風呂から叩き出すぞ」
「ぶぅ〜」

 脹れて湯船に口まで浸かった束だったが、何を思ったのか目がキランッと光った。

「ねえねえちーちゃんちーちゃん!!」
「煩いぞ、何だ?」
「隣の男湯にはキー君といっくんが入ってるんだよね!?」
「その筈だが・・・まさか貴様」
「にゅふふふふ・・・そう! そのまさかなのだよ!!」

 湯船から飛び出した束は何処から取り出したのかステルスマント・・・ステルスバスタオルを身体に巻いて男湯と女湯を隔てる壁をよじ登り始めた。

「させるか馬鹿者が!!」

 千冬が咄嗟に近くに置いてあった桶を掴み、全力で投げる。一直線に風を切り裂く音と共に桶は束の後頭部に直撃、凡そ人の頭に桶が当たったとは思えない爆音が露天風呂に響き渡った。


 夜、キラとラクスは夕食も食べずに二人で砂浜を歩いていた。
 月明かりと星の輝きに照らされる夜の海が静かに小波の音を奏で、寄り添いながら歩く二人の姿を幻想的な演出で映し出す。

「静かですわね・・・」
「うん、戦いがあったなんて思えない、静かな夜だね」

 適当な場所で足を止め、夜闇に染まった漆黒の海を眺める。小波の音以外、お互いの呼吸の音しか聞こえない静寂の世界で、二人は何を思うのか。

「ラクス・・・オルタナティヴの事だけど」
「はい、“472個目”のコアを使っているみたいです」
「やっぱり・・・紅椿が“471個目”だから、これから色々と大変な事になるよ。ラクスも、箒も」

 コアは現在、世界に普及している数が467個、その内ナンバー001のコアは白式に、ナンバー002のコアは暮桜・真打に使っている。
 だが、紅椿はナンバー471のコアを、オルタナティヴにはナンバー472のコアを使っていて、この二つは世界の公表されていないコアだ。

「今まで以上に学園上層部や日本政府、世界各国の政府や国際IS委員会が煩くなる」
「はい」
「・・・守るよ、一夏やシャルだけじゃなく、箒も・・・そして何よりも、ラクスを」
「キラ・・・」
「僕には、ラクスが託してくれたフリーダムが今もこうして此処にある。僕はまだ、守る為に戦う事が出来るんだ。フリーダムで、ずっとラクスを守っていくよ・・・いつまでも」

 それがキラの誓い、ラクスの祈りの形であるストライクフリーダムを託されるよりも前、嘗ての自由の剣を駆り、永遠の戦艦に乗るラクスと共に戦場を駆け抜けたあの時からの誓いなのだ。

「それでしたら、オルタナティヴで私は歌い続けます。戦っているキラに、ずっと・・・私の歌を届けますわ」
「うん、ずっと、僕に君の歌を・・・届けて」
「はい、ずっと、永遠に」

 改めてお互いの誓いを述べて、口付けを交わした。
 自由と永遠、お互いが背負う二文字の力、その全てをお互いの為に、キラはラクスを守る為、ラクスはキラに歌を届ける為、その誓いを胸に、長く、深い口付けを交わすのだった。


 翌日、IS学園一同は学園に帰る為にバスに乗り込んでいた。

「ねぇ一夏、何でそんなにボロボロなの?」
「・・・聞くな」

 昨夜、彼は箒と一緒だったらしいのだが、そこで何があったのか、それは不機嫌そうなラウラと鈴音の姿、それと何処か呆けている箒の姿を思い出して納得する。

「俺の事より、なんかセシリアの奴が物凄ぇ落ち込んでねぇか?」
「みたいだね」

 バスの後ろを見ると、暗い影を背負って落ち込んでいるセシリアの姿があった。
 ブツブツと何かを呟いている様にも見えたが、残念ながらバスの最前列に座っている二人には聞こえない。
 隣に座っている本音は、何故か“キス”という単語が聞こえ、何かを察したのか慰める様にセシリアの肩を優しく叩いていた。

「織斑、お前に会いたいという奴がいる」

 突然、バスに乗り込んできた千冬そう言って、バスの外から知らない女性を招き入れた。
 金髪のアメリカ人女性、その彼女に一夏は見覚えが無いだろうが、キラには見覚えがある、というか直接見ている。何故なら彼女は・・・。

「キラ君には昨日会ってるわね。織斑一夏君は始めまして、私はナターシャ・ファイルス、“銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)”の操縦者よ」

 そう、キラ達が倒した福音こと、アメリカ・イスラエル共同開発の軍事用IS、銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)の操縦者が彼女、アメリカ国家代表のナターシャ・ファイルスだ。

「シルバリオ・ゴスペルって、福音!? あれって無人じゃなかったのか!?」
「あ、一夏には言ってなかったね。彼女、ナターシャさんはあの後、福音から回収されたんだ。福音は最初から有人機だったんだよ」

 最も、ナターシャを救出したのはキラと千冬、ラクス、真耶だけなので、一夏が知らないのも無理は無い。ずっと無人機だと思っていたのだから、まさか有人機だったなどと思ってもいなかっただろう。

「あ、キラ君とは昨日挨拶してるわよね?」
「ええ、でも改めて、ストライクフリーダム操縦者のキラ・ヤマトです」
「え、っと、白式操縦者の織斑一夏です」
「よろしくね、それで・・・これはお礼」

 一夏が呆然としていると、唐突にナターシャの唇が一夏の頬に触れた。

「キラ君には昨日の時点でお礼言ってるから、一夏君には今日って思って、福音(あの子)を救ってくれて、ありがとう」

 そう言って微笑んだナターシャは静かに離れ、改めてキラと一夏の二人を視界に収めた。

「じゃあ、今度は二人とも戦場以外で会いましょう? バイバイ!」

 それだけ言い残してバスを去って行ったナターシャ、後に残されたのはキスをされた頬に手を当てて呆然としている一夏、後ろから殺気を放つ箒とラウラ、それに苦笑するキラとラクス、驚愕に目を見開くクラスメートと真耶、呆れてため息を吐いた千冬だけだった。



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