IS〜インフィニット・ストラトス〜
自由の戦士と永遠の歌姫

第五十話
「楽しい時間」



 週末、息抜きも兼ねてキラとラクスはシャルロットと一夏、箒を誘って街に遊びに行く事になっていた。
 既にシャルロットと箒、ラクスの三人は待ち合わせ場所に行っているので、キラと一夏は準備を整えてから向う事に。

「キラの私服、それ・・・何か格好良いな」
「これ? 前の世界で好んで着ていた服を特注で作ってもらったんだけど」

 キラが着ているのは前の世界でもよく来ていた全身にベルトが付いている黒いズボンとジャケットに赤いインナーだ。

「特注・・・良いなぁ」
「一夏も白式のデータ提供とかしてるし、お金も貰ってるんだから自分好みの服を特注してもらったら?」
「う〜ん、考えとく」

 そんな他愛ない話をしながら待ち合わせ場所に行くと、何故かシャルロットと箒が軽薄そうな男二人の腕を締め上げていた。

「ナンパか?」
「へぇ、ナンパって初めて見るよ」
「そういう問題じゃねぇって」

 それにしてもあの男二人は随分と命知らずな事をする。
 確かにシャルロットと箒、ラクスは誰の目から見ても美人だ。しかし、シャルロットはフランスの代表候補生で、箒は剣道全国優勝者、ラクスに至ってはバルトフェルドとマリューに直接格闘技指導を受けていたのだ。そんな三人をナンパするとは、本当に運が無い。

「とりあえず、キラは銃を仕舞え」
「え? でもマリューさんからナンパ男は射殺して良しって教わってるんだけど」
「それ、間違いだからな?」

 そもそも、キラは不殺を貫いているのではなかったのか。というツッコミを入れたい一夏だったが、キラの目を見れば解る。ラクスに手を出す者は滅すると言っているのだ。目は口ほどにものを言うとはよく言ったものだ。

「取り合えず、行こうぜ?」
「うん」
「・・・銃、仕舞え」
「わ、わかってるよ」

 やっと銃を仕舞ったキラを連れてラクス達のところに行くと、丁度箒が殺気混じりの鋭い眼光で男たちを睨みつけ、腰を抜かした男二人が逃げ出す所だった。

「ラクス、シャル、お待たせ」
「箒、あんま睨んでやるなって」
「キラ、遅いですわ」
「そうだよ!」
「全く、待たせすぎだ」

 文句を言ってくる三人娘、キラと一夏が早く来ていればナンパなんてされなかったのにと言いたいのだろうが、そもそも待ち合わせにしたいと言い出してきたのは三人の方だ。

「取り合えず、ここで話しててもあれだから、行こう?」

 キラに言われて渋々と三人娘が立ち上がると、キラの両サイドにラクスとシャルロットが、一夏の隣に箒が並んで歩き出した。
 目的地はショッピングモール、息抜きの買い物をしたいとラクスとシャルロットが言い出したので、地元の一夏と、たぶん一夏が一緒なら喜ぶであろう箒も誘ったのだ。

「あれ? ちょっと待っててくれ・・・・・・お〜い! 蘭!」

 一夏が目を向けた先、全員、其方に目を向け、そしてキラだけ目を逸らした。
 そこは女性物の下着を扱っている店で、その店先に立っている少女(一夏の知り合いらしい)が手に持っているのは、白と黒のストライプの下着だ。

「え!? い、一夏さん!?」

 少女・・・五反田蘭が顔を真っ赤にして手に持っていたものをカートに戻した。
 一夏は特に気にする事なく・・・というより、気付きもしないで歩み寄り、その後ろでシャルロットと箒が顔を真っ赤にしている。
 ラクスは少し頬を染めて苦笑して、キラは店に近づくのを拒否して顔を逸らしていた。

「こんにちは、一夏さん」
「おっす。今日は一人?」
「あ、はい。ぶらっと買い物に」

 というか、こんな店に友達が一緒でないのなら一人しか考えられない。彼女の兄なんて連れてこれる筈もないだろう。

「あ、この間の件、ごめんな。学園祭、見たかったよな? 来年入学するんだし」
「そ、そうですね。できれば次からは優先的に私にチケットを譲って頂けると・・・・・・」

 そこでラクスは理解した。つまりこの子も一夏の事が好きな、一夏に落とされた女の子の一人なのだと。

「一夏、シャルロットたちに紹介しなくて良いのか?」
「あ、そうだったな。シャル、ラクス、キラ・・・って、キラ? なんでそんなに離れてるんだよ?」
「・・・一夏、その店、なんの店?」
「え? ・・・・・・あ」

 やっと気付いたらしい。今、自分たちがいる所が女性物の下着の店、所謂ランジェリーショップである事を。

「わ、悪い蘭・・・その」
「い、いえ・・・」

 取り合えず、ランジェリーショップを離れて近くの喫茶店に入ることになった。
 キラと一夏、箒は珈琲を頼み、ラクスとシャルロット、蘭は紅茶を頼んで、改めて、紹介という事になる。

「先ず、こいつが俺と同じ男性IS操縦者って事になってるキラ。で、キラの隣にいるのがキラの恋人で俺や箒、キラと同じクラスのラクス、それとフランス代表候補生のシャルだ」
「キラ・ヤマトです、よろしく」
「ラクス・クラインですわ。よろしくお願いいたします」
「シャルロット・デュノアです。よろしくね?」
「は、はい! 五反田蘭です・・・よろしくお願いします」

 桁違いの美形三人に蘭は緊張している。ラクスもシャルロットもモデルや芸能人並、それ以上に美人で、キラも男なのに女顔で、やはり絶世の美形。そこに同レベルの美人である箒と、男の中では美形に入る一夏もいるのだから、今のところ一般人でしかない蘭としては緊張するなという方が無茶だ。

「キラとラクスは知らないか、俺の友達に五反田弾って奴がいるんだけど、蘭は弾の妹なんだ」
「あ、確か僕が急用が入って会えなかった一夏の友達だっけ?」
「おう」
「そういえば、先ほど一夏さんが仰ってましたけど、蘭さん・・・と呼んでも宜しいですか?」
「は、はい!」
「ありがとうございます。蘭さん、IS学園を受験するのですね」
「はい・・・その、ISの簡易適正ではAランクを出してます」

 Aランクという事はセシリアやシャルロット、ラクスと同じランク、つまり国家代表候補生レベルのランクだ。

「Aランク・・・凄いな、中学生なのに」
「篠ノ之先輩は因みにランクは・・・?」
「わ、私は・・・その、Cだった」
「僕はAだったんだよ」
「私もAでした」

 因みに一夏はB、数居るIS操縦者の中では比較的平均値だった。正確に補正して表すのであればB+、Aには若干届いていない程度である。

「えっと、ヤマト先輩は・・・?」
「僕は、Sランク」
「え、Sランク!? え、ブリュンヒルデやヴァルキリーと呼ばれるような人たちと同じランクなんですか!?」
「まあ、ね」

 他にキラが知る限り、Sランクの人間は千冬と束だけだ。

「そうだ。あのチケット、まだいけたはず・・・蘭、ケータイ持ってる?」
「は、はひ!?」

 声が裏返って顔を真っ赤にしながら、蘭が携帯電話をポーチから取り出して、一夏が自分の携帯電話からキャノンボール・ファストのチケットを送信した。

「これって・・・」
「今月行われるキャノンボール・ファストの特別指定席。見たいだろ?」
「あっ、はい! ぜひぜひ!」

 ただ、このチケット、一人一枚しか無いので、一夏が招待できるのはもういない。蘭だけになってしまい、彼女の友達の分は無いのだが、蘭としてはこれだけで充分、友達には悪いが、我慢してもらう事にした。

「何なら、僕とラクスが持ってるチケットもあげようか? それなら友達も連れてこられるよね?」
「え、その・・・良いんですか? お二人も、その・・・お知り合いとかに」
「日本には僕もラクスも知り合いはいないから、誰かを招待する事も無いし、別に良いよ」
「ええ、えっと・・・携帯電話は・・・」

 キラとラクスも携帯を取り出す。キラの携帯はスライド式の携帯で、色は白。ラクスは折りたたみ式でカメラの機能が高いピンクの携帯だった。

「はい、送信完了。これで友達も連れてこられるよね?」
「あ、ありがとうございます! その、友達と一緒に見に行きますので!!」
「悪いなキラ、ラクス・・・」
「構いません、招待する方も居りませんもの」
「なら僕もあげるよ」
「そうだな、私も」

 結局、蘭は合計5つのチケットを貰った。蘭と、後は友達四人は誘って見に行けるだろう。ただし、兄である弾がその数に入っていなかったのは、ご愛嬌だ。



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