連休の温泉旅行以来、豪勢な家に閉じこもり部屋からも出ない。いや、突然襲ってきた異形の者達の恐怖により外へと出る事ができない。
 ふかふかのベッドの上で毛布を被り、些細な物音にすらビクついているそんな少女、アリサバニングスは困惑していた。

 夜いつものように執事が運んできてくれた食事を終え、また毛布に包まって眠りにつこうとしていた時、執事が真っ黒の作業和服を着ている顔半面に包帯を巻きつけた少女を運んできたのだ。
 その少女にアリサは見覚えがあった。

 否、忘れるはずがない。自分がライバルと思い、最近接し始めた墨村美守だ。
 包帯を顔半面に巻きつけているとはいえ、わからないはずはない。
 ぐったりとして荒い息をして、どことなく具合が悪そうに眠っている。

 しかし、そんな美守でさえ今のアリサにとっては関わりたくはない存在。
 何も美守だからというわけではない。親友の月村すずかや高町なのはだってそうだ。
 メールは時間をかけて何とか返せても、電話に出る事は身体が震え声が出てこなくなってしまうため出れない。

 今も、近くにいる執事に声を出して、応える事はできない。
 身体を大きく動かして『はい』『いいえ』の応答をするのみである。
 早く去ってほしい……。ただそれだけだった。

 執事は、このままアリサが部屋に閉じこもりたいだけ閉じこもるのはそろそろもう駄目だと判断し、運命とばかりに庭で倒れていた美守を利用しようと引き下がらない。

 『友達ならば、一緒に寝てはどうか?』 っと何度も何度も聞き返す。

 その度にアリサの拒否の応えが帰ってくる。
 初めは弱弱しく答えていたが、徐々にフラストレーションが溜まってきて、アリサは声は出ていないが返答が荒々しくなってくる。

 払いのけようとしたのか、布団の中からアリサは腕だけを出して左右に大きく振る。
 ブンブンっと空振りしていたアリサの腕を、突然誰かの細い手が弱弱しくもしっかりと掴む。体全体でビクッと反応しつつアリサは布団の隙間を必死で凝視し、“掴んだ手”の主を探す。もちろん、振り払おうと力を込めるが、何か接着剤でくっつけられているかと思うほど、不自然に腕から手が離れない。
 アリサの視線が手の主が、ぐったりと眠る美守であると確認すると同時に美守の手に掴まれた腕が焼けるように熱くなる。

 アリサが反射的に「あついっ!」っと叫び美守の手を振り払おうとした瞬間、アリサの腕を突き刺す鋭い痛みが突き抜けるっと共に、異物が身体の中に進入してくる感覚がアリサを襲う。強烈な不快感と痛みに、アリサは全力で後ろに体ごと飛び退くように腕を引く。
 しかし、美守の手を振り払えず、執事に抱えられた美守がアリサに覆いかぶさるように落ちてくる。

 美守に覆いかぶされたアリサは必死にどかそうともがくが、腕に突き抜けた鋭い痛みが今度は左の肩にも襲い来る。
 アリサは痛みに反応しようにも、今まではっきりしていた意識が混濁し始め、身体から力が抜けていき、言葉を発することすらできず意識を失っていく。

 寝息を立てる2人を見て、執事は掛け布団を掛けて静かに去っていく。
 先程まで腫れていたはずの美守の包帯が巻かれた半面の腫れが無くなっていることに気づく事はなく……。





魔法少女リリカルなのは×結界師
―ふたつの大樹は世界を揺らす―
第11話 「異世界との遭遇」
作者 まぁ





(なんだこれ……夢? 懐かしい……昔の、そうだ。僕にもいたんだ……妹みたいな女の子が)

「ウエェェン! ウエェェン!」
「ナ、ナクナヨー。僕ノヲアゲルヨ」

(確か……オヤツを食べる前に落としちゃったんだったな。あれ以来会ってないな……元気かな)



 落ち着いた音色を奏でるアラームが鳴り響く戦艦の一室を思わせる無機質な部屋。アラームで目覚める少年の風貌が抜け切らない少年はゆっくりと瞼を開けて、アラームを止める。
 忘れていた幼い頃の記憶を夢で見て、“妹のような女の子”について思い出そうとしているようにボォ〜っと壁を眺める。

「時間か……。いくとするか」

 少年の名はクロノ。クロノ・ハラオウン。いくつもの世界が繋がった次元世界を管理する組織“時空管理局”に所属する執務官である。
 単独で凶悪な事件の捜査に当たる事を許されたごく一部のエリートの職務。
 10代前半の幼いクロノが執務官をしている事は、そのままクロノの有能さを表している。

 クロノはベッドをのそっと出ると、寝癖を直し黒を基調とした制服に着替え部屋を出て行く。
 事務的に朝食を取り、職場であるブリッジへと足を運ぶ。

「おはよう、クロノ執務官。いい夢は見れたかしら?」
「おはようございます、かあ……リンディ艦長。懐かしい夢を見ました。昔の……」

 クロノが挨拶した女性は、リンディ・ハラオウン。時空管理局所属の時空航行艦“アースラ”の艦長を務める、クロノの母親である。
 ポニーテールにくくっても腰まである緑の髪が鮮やかで、出るとこは出て引っ込むところは綺麗に引っ込んでいるナイスバディなスタイルを持つ燐とした女性である。
 リンディがかもし出す穏やかな雰囲気通り、部下達に厳しく当たっていないのが傍から見てもわかるほどブリッジ内の雰囲気は穏やかである。

「そう……」
「しかしなぜ、第97管理外世界になんて行くのですか? 巡回パトロール任務とはいえ特定の世界に行くなんて」
「明日には休暇が入りますからね。第97管理外世界で一日取るのも一興でしょう?」

 またか……っと呆れつつも、クロノは口に出さずに第97管理外世界についての資料を手に取る。

 今は世界と世界を繋ぐ次元空間の安全を確認するために定期的に行われているパトロール任務中である。
 事件さえ起こらなければただただ見回るだけの任務。
 事件がなければやることはルーチンワーク。

 クロノは暇を潰す目的も含め、手に取った第97管理外世界の資料に目を通す。

 次元世界とコンタクトを取る技術を持たない知的生命体が繁栄している世界である管理外世界。ただ1つ特記事項として、異能者が他の世界よりも蔓延っている世界だという事が記されている。
 それを目にした直後、クロノは誰にも気づかれないように怪訝そうな表情を出す。

「やほぉ、クロノ君。どうしたの? そんな顔するなんて珍しいね」
「ん? あぁ、すまないエイミィ」
「そういえばさ、この世界にちょっと気になることあるんだけど」

 ん? っと聞き返すクロノに、エイミィと呼ばれた女性は“気になる”っと言った資料をモニタに出す。
 そこには、高エネルギー物質が漂着したと思わしき形跡が記されていた。
 近くで観測しなければわからないような微かな形跡だったが、確かに存在していた。

「これは……ロストロギアか。艦長!」
「ええ、これは調査しないといけないわね。エイミィ、ロストロギアの活動とそれに関係してると思しき反応があれば教えて頂戴」

 了解! っとエイミィは元気な声を上げて作業に移る。
 エイミィはイキイキとした表情でキーボードを軽快にタッチしていく。

「そういえばクロノ、話は戻りますが夢は悲しいものでしたか?」
「いえ……今日まで忘れていましたが、僕にも妹みたいな女の子がいた事を思い出しましたよ」
「そう……ですか。ひょっこり再会できるかもしれませんね。正夢というやつかもしれませんよ」

 まさか……っと肩で笑いながら、クロノは通常業務へと意識を移していく。
 艦長であるリンディもクロノを微笑ましく見つつ、小さく自分の席に映し出している小さなモニターに目を移す。

 そのモニターには、お姫様が寝るような豪華なベッドにすやすやと眠る金髪と黒髪の2人の少女が映し出されていた。

「高エネルギー感知! ……これは、戦闘が行われてる?」

 数時間の時が過ぎたころ、反応を感知したエイミィの報告とともに、エイミィはモニターにその反応を映像を写し出す。

 そこには、白いバリアジャケットを着た栗色の少女と黒のバリアジャケットを着た金髪の少女が目を疑うほど激しく戦闘を行われている様が映し出されている。
 大量の桃色の魔法弾を操る栗色の髪の少女。それを掻い潜り手に持った魔法体で構成された鎌で切り裂こうと高速移動でかく乱している金髪の少女。

「すご。どっちもAAAクラス……こんな管理外世界で」
「稀に生まれるとは聞くけど、このレベルとなると奇跡だな」

「ではその戦闘……止めて来て貰えるかしら? クロノ執務官。そして、2人をここへ招待してください」
「……はい、リンディ艦長」

 余裕を含ませたリンディの言葉に応えるようにクロノは、瞬時に形成したバリアジャケットとデバイスを身につけ入り口付近へと足を進める。

「サポートして貰える? エイミィ」
「りょうかいです」








 時は少し戻り、海鳴市で最も海を楽しめる公園。なのはとフェイトは申し合わせたように集まり、対峙している。
 ジュエルシードの活動を感知してから、お互いに相手が来る前にジュエルシードを確保しようと全力で駆けつけた。運命か、2人は同じタイミングで辿り着く。そして、言葉もなく厳しい表情で見合う。2人の緊張が広域結界内の空気をピンっと張り詰めさせる。

「話は聞いてくれない……のかな?」
「引いてはくれない? もう……誰も殺したく、傷つけたくないんだ」

 お互いに投げかけ、お互いに答えない。どちらも引く気はない……お互い同時に理解すると、バリアジャケットを展開する。

 言葉もなく始まる2人の戦い。お互い牽制するように一発の魔法弾を相手の足元へと撃ち込み、空へと大きく飛び上がる。
 そして先制はなのは。得意とするミドルレンジにフェイトを釘付けにするように大量の魔法弾を操っていく。
 フェイトは落ち着いて避け、少しずつ少しずつ距離を縮めていく。

 前回の戦闘同様に鬼気迫るフェイトに少しずつ押されるなのは。幾度となく接近を許し、斬撃を紙一重で避けて退避していく。
 前回のようにフェイトの鬼気に押されているわけではないなのはの魔法弾の操作は精細を欠いていた。
 とある疑問がなのはの中で大きくなっていく。

 温泉の戦闘の時にはなかったフェイトの鬼気。前回の戦闘から突然に表れ、フェイトの『もう“誰も”殺したくはない』っという言葉。
 誰かを……殺したのか? 自分の知らない所で。そんな危ない戦闘が行われたのか?
 などとなのはの心の疑問は尽きない。

「ねぇ! 何があったの!? この前までそんなに怖くなかったのに!」
「……」
「それに、『もう誰も殺したくない』って……何があったの!!」

 なのはの必死の呼び掛けにもフェイトは答えはしない。
 精細を欠いたなのはの攻撃を巧みに避け、フェイトはバルディッシュを大きく振りかぶり、全力で振り下ろす。
 間一髪防壁を張って受けたなのは。しかし、勢いを殺しきれずバルディッシュは防壁を突き破る。刃をレイジングハートの柄で受け止めるが、地面へと一直線に吹き飛ばされてしまう。
 大きな土煙が立ち上るほどの衝撃、なのはは痛みによって体がうまく動かない。それでもフェイトに対しての集中を切らさず魔法の生成を始める。

 なのはが生成を終える前に、フェイトはバルディッシュで生成途中の魔法を切り裂き、未だ立ち上がれないなのはの胸を踏みつけて動きを封じる。

「……今回も私の勝ちだね。ジュエルシードは諦めて」
「嫌だ……って言ったら? もう、殺したくないんだよね!?」
「そう。“美守”のようにもう誰かを事故でも殺しちゃうのはもう嫌なの」


 美守……ちゃん? まさか、フェイトちゃんが殺しちゃった人って美守ちゃん? でも、美守ちゃんは生きてる。
 そうか! この娘は勘違いしてるんだ……。殺しちゃったと思って、心を痛めて。ジュエルシードを集めないといけないのと、傷つけたくないのに板ばさみにあって、あんなに追い詰められて。

「……死んでないよ。誰も」
「え……?」
「死んでないよ、誰も。そう、美守ちゃんも!」

 えっ……っとフェイトがひるんだ一瞬、なのははレイジングハートを回し、フェイトのまっすぐ伸びた膝へと当てる。ちょうど膝カックンの要領でフェイトの体勢が崩れる。
 なのはは迷いなく飛び立ち、フェイトの拘束を抜ける。

 なのはを逃がしてしまったフェイトはゆっくりと飛び立ち、再びなのはと対峙する。

「嘘……言わないで」
「嘘じゃないよ。温泉の後も会ったもん。体調が優れなくて学校お休みしてるけど」
「でも、私が……アルフが美守を傷つけたのは変わらない……。だから手を抜く事はしない。それで美守を傷つけてしまったから」
「望むところだよ。これで私が勝ったら話を聞いて!」
「出来るなら……!!」

 緊迫する雰囲気の中、なのはとフェイトはただ黙って力を溜める。

 打ち合わせなく、言葉もなく、2人は一斉に飛び出す。一直線に進み、フェイントもなく、お互いのデバイスを振りかぶる。


「そこまでだ!!」

 バルディッシュとレイジングハートがぶつかろうかという刹那。たった2人のタイマンに乱入者が現れる。
 黒髪の少年、黒をベースにしたロングコートのようなバリアジャケット。クロノ・ハラオウンは片手に自身のデバイスでバルディッシュを受け止め、もう一方にレイジングハートを握り、2人の戦闘へと介入する。

 思いもよらぬ乱入者に2人は、驚愕に包まれる。

「僕は時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ。直ちに戦闘行為をやめてもらおう!」

 クロノは2人の答えを聞く前に、2人を離すように握ったデバイスを離す。
 離された勢いに流されるまま、2人はゆっくりと後退していく。
 両者にすぐに戦闘を再開させる気が起きていない事を確認してクロノは静かに口を開く。

「この世界に散らばったロストロギアについて話を聞きたい。両者、僕に大人しくついてきてくれ」
「は、はい」

「……」

 大人しく言葉に従ったなのはにクロノが視線を移した瞬間、フェイトは全速力で逃走を図る。
 なのはの『っあ』っという反応で気づいたクロノはフェイトを撃墜しようと魔法弾を生成し始める。

 クロノが魔法生成を終えるよりも早く、公園の森から3発の魔法弾が高速で撃ち込まれる。
 間一髪で防壁を貼るも、魔法弾の弾かれヨロヨロと体勢を崩される。
 しかし崩れる体勢の中、クロノは集中を高め、逃走するフェイトに向けて照準を合わせる。もちろん、警告の意味を含め直撃は避けるように……。

「だめぇ!!」

 照準を合わせ発射する刹那、クロノに飛び込んできたのは対立していたはずのなのは。身を挺してクロノとフェイトの間に割って入ってきたのだ。
 クロノが驚愕に包まれつつも、刹那のタイミング早くクロノは魔法弾を3発すべてを発射する。
 多少の照準ズレがあったものの、フェイトへ向けて一直線に突き進む。

 魔法弾の接近に気づいたフェイトは体を回転させてやり過ごそうとするが、それよりも速くクロノ魔法弾がフェイトの右足にヒットする。
 激痛にフェイトはヨロヨロと落ちていく。

 フェイトォ! っと赤い体毛の巨大な狼・アルフが、森から空をまるで岩場を駆け上がるように飛んでいく。
 力が抜けたフェイトを背に乗せると、アルフは全速力で逃走する。

 体勢を立て直したクロノは、フェイトとアルフの2人を撃墜する覚悟で攻撃に移ろうとするも、なのはがクロノに力いっぱい抱きつき妨害する。

「邪魔をするなっ!」
「だめ! あの娘を攻撃しちゃだめ!」

「はぁ……もう逃げられたよ……。さっさと離れてくれないか?」
「へ? っあ!」

 なのはが男の子に抱きついていると気づき、顔を赤らめつつ急いで飛び退く。
 開放されたっと、ふぅとため息をつくクロノ。妨害はされたものの、目の前の少女・高町なのはが今すぐに敵対する事はないと判断し肩の力を下ろす。

 戦闘は終わった。っと結界内の緊張の糸が解け、『それでこれからの事について話したいのだが……』っとクロノが話しかけようとした瞬間、緊張の糸は再びピンっと張られる。
 透明な立方体の結界がクロノをすっぽりと包み込み、クロノ達がその存在について理解する前に容赦なくクロノを巻き込みながら爆発するように滅される。

 なのはにはこの『透明の立方体の結界』に見覚えがあった。
 この海鳴市を夜の闇の中で守護する者、結界師の術だ。
 必死で辺りを見回し、良守の姿を探す。
 しかし、なのはの目に入ってきたのは、真っ黒の作業和服を着た見知った少女の姿だった。


「なにしてんだぁぁ!! お前!!」

 少女は地上から、透明な結界をトランポリンのように使い上空に飛び上がり、結界を足場にして軽快に空中を走り、クロノの目の前で仁王立ちする。
 真っ黒の長い髪を風になびかせ雄雄しく仁王立ちするその様は、少女が怒りを一切隠そうとしない怒り心頭の表情がより引き立てている。
 普段は少しキツメの目が更に大きく釣りあがり、視線だけでも人を怯ませることが出来そうな目で、未だ爆発で出た煙に包まれるクロノをにらむ。

「美守ちゃん!? なんで……美守ちゃんが、結界師……さん??」
「……殺す気では滅してないんだ。生きてるのはわかってる……答えろよ」

 美守が突然登場したこと、結界師だったこと、なのはが困惑し放った言葉は美守には届かなかった。
 美守の視線は煙の中。つまりはクロノへと注がれ、一瞬たりとも外される事はない。
 煙が晴れると、その中には防御フィールドを纏ったクロノが、何食わぬ顔で立ちすくんでいた。

「何について怒ってるんだ? 今の一撃は見逃そう」
「答えろよ。なんでフェイトを攻撃した!」
「逃げたあの子の事か……。僕の言う事を聞かずに逃走しようとしたからだ。別に当てるつもりはなく、事故だ。それよりも君は誰だ?」

「っで、何が目的で“ここ”にいるんだ?」
「質問ばかりだな。見たところ、僕が知る限りの魔法体系に君が使うようなものは存在しない。つまり……君は“異能者”だな?」
「だからなんだよ! それよりも」

 美守が言葉を吐ききる前に、美守の腹に強烈な衝撃が襲う。
 襲ったのはクロノの魔法弾。遠慮なしに撃ち込まれた魔法弾に美守はなすすべなくくらい、地面に衝突しのた打ち回る。
 激痛が走る腹部を抱え、美守は立ち上がる。

「そっちが先に仕掛けてきたんだ、文句はないだろう? まぁ最も、“異能者如き”に許しを請うつもりはないがな」

 氷のように冷たい視線で美守を見下ろす。
 美守は変わらず、怒りの形相でクロノを見上げる。

「最後の警告だ。これ以上邪魔をするなら時空管理局に反逆すると捉えるぞ。それでもいいのか、“異能者”?」
「だからなんだ……何しにここにきたんだよ!?」
「お前に言った所で理解はできないと思うよ。それよりもさっさと立ち去れよ、死にたくはないだろう?」

「気に入らないんだよ、そのえらそうな態度! “時空管理局”? シラネェよ。それよりも私の質問に答えろよ。

 ――お前が我が物顔で荒らそうとしてるのはな、“私の庭”だ!!」

 ゾクリ……。話に入れないなのはの体を震えるかのような寒気が走る。

「ちょっとまって!! 今日も休んでたのに……美守ちゃんまだ、具合悪いんじゃ……」
「……そんなの関係ない。そんなの誰も待っててくれない」

 美守はなのはの言葉に答えるも、一瞬たりとも視線を向けることはない。
 声の主がなのはである事も、美守は気づきはしない。それどころか、誰かも興味を持っていない。
 ただ怒りに支配され、その対象であるクロノに集中している。

 一度は解けたはずの緊張感が、再びピリピリと張り詰め、広域結界内にいるなのはとユーノは話す事もできなくなっていく。
 その中心であるクロノと美守は、殺し合っているかのような目で睨み合い、言葉もない……






「あらあら……案外早かったわね」

 アースラ内で巨大モニターを眺めるリンディは小さく嬉しそうに笑う。
 戦っていたフェイトとなのはの戦闘が終わり、フェイトには逃げられたものの、なのはは確保しているので、既に安心してクロノの動向を見守る。
 異能者である美守の出現にも、多少は驚かされたものの、美守を確認した瞬間……いや、美守の術を目視した瞬間に、緊張が走った表情が暖かい笑みへと変化していった。

「エイミィ、あの娘が出てきた瞬間からの映像は全て破棄してね。録画する必要はないから」
「? どうしてですか? 艦長」
「……いらないでしょう? “異能者”との交戦記録なんて」
「あ……はい」

 疑問に思ったエイミィはリンディを見やるが、問答無用の眼差しに納得する以前に行動に移していた。
 記録映像破棄作業をすぐに完了させたエイミィは、小さく深呼吸する。
 それを見て、作業を終えたと悟ったリンディは、先程の問答無用な視線はなくなり、優しい眼差しとともに優しく声をかける。

「それにしても珍しいわね、クロノがあんなに好戦的なんて」
「まぁ、仕方ないと思いますよ。クロノ君、異能者嫌いですから」
「あらあら。もしこれが交戦に至ったとして、どっちが勝つかしらね?」
「そりゃ……まぁ、クロノ君ですよ。なんたってうちらの“切り札”ですし!」

 そうね……っと、リンディは優しく返答すると、優しげな視線でモニターに写る、これから起こるであろう『魔道師』クロノと『異能者』美守の戦闘へと集中していく。






 ――TO BE CONTINUED






  あとがき



 どうも、まぁです。

 なんとか……なんとか、管理局を出せました ;x;

 こうなってくると、リリカルなのは一期の話も折り返しに入ったなーっと思えますね……(これで折り返しか……長いな。。

 次回はようやく、クロノ君 vs 美守 が書けそうです。

 ふと思い出したのですが、プレシア登場してない…… orz
 まぁ、そろそろ登場すると思うので……ま、いっかww



 では、これにて失礼します。。


   まぁ!



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