「さて、プロス君。ナデシコのオペレーターとして確保できたっていうルリ・スカイハートがヤバいってのはどういうことだい?」

「こちらの資料によるとですが、5年ほど前に人類進化研究所から引き取った少女であります。

 IFSナノマシン投与し、特異体質としての成果が見えた段階で研究主任のホシノ夫妻の戸籍に入れる段取りをしていたのです。

 が無戸籍の段階で『ルーザー』に易々と攫われてしまいましたのが痛いですね」

「世間的には何も取られてないから、あの娘の所有権を主張はできないしね」

 そうなんですよ。と苦笑いをするプロスペクター。

 プロスの報告を受けているロンゲの男性は飄々と資料とプロスを交互に見てニヤリと笑っている。

 ここまでは序章なんですがね……とズキリと痛む胃をさする。

「問題はこの娘が育った場所ですね。屑鉄屋『空心』。

 100年前に崩壊した世界システムを運用していたニューステラの日本支部のCCOのお孫さんが経営する場所です。

 それだけならば既に対応が出来るのですが、あそこに出入りしているメンバーが全力であの娘さんを護っておりまして……。

 元官僚の白川仁が手続き関係をすべてこちらが把握する前に完了し、法的にどう足掻いても手が出せまなくなっております。

 シオラ・スカイハートに至ってはあの娘に家族の愛を与えつつ、その特異な能力を最大限育て上げております。

 我々がたてた理論値と遜色ありません。

 戸籍上はスカイハートの孫となっておりますし、あの娘も好いているようです。

 先日、尋ねたところ『グランマ』と嬉しそうに言っておりました」

 ならさ。と青年は指で銃で打つジェスチャーをし、言葉に出さずにプロスに武力行使を促す。

「ここまでならば過去の亡霊と笑って対処できたのですが、武力が最も悪手となってしまっています。

 会長は『グレンデルの獣』を知っておられますか?」

「100年前に存在としたとされる人間を限界まで鍛え上げた超人部隊だろう。

 なんだい、そんな都市伝説を持ち出して……」

「そのグレンデルの中でも特出した才能を持った者に与えられた称号持ちを畏怖と尊敬をもって『グレンデルの獣』と呼ぶそうです。

 その中の1人である可能性があります。まことに信じがたい事ではありますが」

「プロス君ともあろう者がそんなオカルト持ち出すなんてね」

「そう考えざるを得ない事態です。4年前、特殊部隊を引き連れて何度か襲撃しようとしましたが、串のみを武器に彼が撃退したのです」

 それだけだとね……と苦笑する青年にプロスは追撃を出す。

「襲撃の際に手に入れた毛髪からDNA検索をかけたところ、一度だけ100年前の人物『マブチ キョーマ』とHITしました。

 信じられないともう一度かけた処、マブチキョーマのDNAデータは削除されておりました」

「まぁ真偽のほどは定かではないけど、ナデシコに乗り込むんだろう? 懐柔してこちらの戦力となるならば万々歳じゃないか。

 まぁ、機動兵器全盛期のこの時代にそんな懐古(レトロ)がいたところでとは思うけどね」




 ――――




シルフェニア 12周年記念作品
機動戦艦ナデシコ × ディメンションW
―― 懐古の串と電子の妖精 ――
第2話「世紀を超えた出会いの最中に」
作者 まぁ




 ――――




 ブリッジメンバーへの紹介を終えたルリは、ブリッジメンバーからの質問に愛想よく笑いながら答えている。

 ルリをはたから見守るキョーマは、プロスの視線に気づき視線を一瞬向ける。

 そういえばこの2人の組み合わせは『あの時』以来だなとルリへと視線を戻す。

 ルリがグランマと慕うシオラ・スカイハートのガキの頃によく似てきているなと、キョーマは昔のことを思い出す。


 …………

 ……


 時は戻り、『ルーザーの復活劇』すぐ後。



 AKATSUKI電算開発研究所からクラシックカーを楽しそうに運転するキョーマは横で大人しく座る少女に違和感を覚えていた。

 仮にも見知らぬ者に誘拐されたのに何も抵抗も意思表示も示さない。

 まるで諦めているように……。

「私をどうするんですか? 実験ですか?」

「しらねぇよ。頼まれただけだよ、お前を誘拐しろってな」

 やっぱりか。とルリはそれ以上男に問いかけることもなく大人しく黙る。

 諦めに似た感情を察したキョーマは頭をかき、法被の裾から二本の紐が垂れた白いフードをルリの頭に乱暴に置く。

 私の存在を車の外にバレにくくするためかとルリは大人しく帽子をかぶる。

 抵抗したところで、帰りたいところでもないし、誰も私個人がいなくなっても悲しまない。

 研究対象が消えたという失望はあるかもしれないが……


「なまえは?」

「……ルリです。名字も戸籍もありません」

「そうか、俺はマブチ・キョーマ。奇遇だが、俺にもまだ戸籍はない。今の時代のはな」

 ほらよ。とキョーマはルリにタブレットを渡し、手のひらをタッチパネルに重ねるように指示する。

 ルリは言われるがままにタッチパネルに手を重ねる。

 タブレットはルリの手のひらをスキャンし、完了するとピコン! と音が鳴る。

 それと時を同じくして、タブレットに着信が入る。

 出ろ。とキョーマが支持をし、ルリは着信をとる。

『キョーマさん、お疲れ様です。どうでした? 僕らが用意した衣装』

「中々に洒落は聞いてたな。まさかルーザーの衣装とは恐れ入ったよ」

『姿隠せて、かつあなたへ辿り着くヒントをちりばめとかないといけませんしね。

 話したいことも多々ありますが、まずはルリさん』

「はい」

『勝手で申し訳ないが、君に戸籍と名字を用意しました。我々はあなたの意思を尊重します。

 実験なんてこともさせません。あなたに自由な空の下で生きてほしいのです』

「そうすることであなたたちに何かメリットがあるのですか? ネルガル重工の開発が遅れるとか」

『そんなことは些細なことです。そうすることで私たちが得るメリットはお金にも何にも代えがたいものです。

 わかりますか?』

「利権……ですか?」

『あなたの笑顔ですよ。私たちはそれを見て過ごしたいのです。無理に引き出そうとは思いません。

 自然に笑える生活を過ごしてほしい。それが我々があなたを誘拐した目的です』

 ワケがわからないと静かな瞳で見つめ続けるルリに、仁は優しく微笑む。

『私たちが子供のころは学校の成績と普段の態度などが全て数値化され、その数値によって将来が全て決まっていました。

 何も選択できず、大人たちは関わらないように僕達には当たり障りなく……』

 なんだ、それでも何かしらの自由は与えられているのに……

『選択できるというのは重要な事ですよ。それが叶う叶わないは別の話としても、それに挑戦できるという希望は何よりも輝く。

 私たちはそれをあなたにも与えたいのです。

 周りから言われるから、私に自由はないからと諦めた顔をさせたくないのです』

 などと、仁とルリの会話は静かに進んでいく。

 しばらくすると、キョーマは2人の会話に割り込む。

「さて、ついたぜ」

 キョーマは嬉しそうに工場へと侵入する。

 所狭しと並んだ鉄くずたちを掻い潜り、キョーマは建物の中へと車を入れる。

 降りろ、とキョーマは車を降りていく。

 こんなところでごねても、何も自分に得はないなといつもどおりに思考し、シートベルトを外す。

 場所が変わってもなにも変わらないなと思った瞬間、窓ガラス越しに少女のような笑顔がルリを見つめていた。

 いつも通り、冷静に感情をのせず『なんですか?』 と言ってやろうと思った矢先。

 見ず知らずの老婆は満面の笑みでドアを乱暴に開け、ルリを抱きしめて車から引っぱり出す。

「いやぁあん! うちの小さい時のお気に入り帽子よくにあってるやん!」

 ルリを抱きながら、グルグルと回る老婆は名乗りすらせずルリの名前を幾度となく発し続ける。

 想定外の出来事にルリはフリーズするしかなく、老婆に振り回されるがまま。

 しばらく、老婆の嬉しさに満たされた声が途切れることがなかった。




 ――――




 それからシオラはルリを実の孫娘としてルリを育て始めた。

 ただ、ルリから言葉が放たれることなく、暇をつぶすように部屋に置かれた教材などを自主的に行っていた。

 身に染みた習慣なのよね。と皮肉めいたため息を落とすが、誰もいない個室では反応が返ってくるわけはない。

 部屋を出て家の中を歩くと、シオラはいつも笑っているし、キョーマはブスッと不愛想。仁はいつも穏やかな表情を浮かべている。

 ルリはそれを横目で見つつ、コミュニケーションを取るわけでもなく暇をつぶしている。

 屑鉄屋『空心』に来て一か月。

 好きなことをしてもいいが、

 『毎日三食食べる』
 『夜の10時には眠る』。
 『週に2回、公園に一緒に行く』。

 の3つを約束させられ、それ以外は特に拘束も束縛もない。

 一日中テレビを見てても怒られないし、ゲームをし続けても怒られない。

 自分から誘わないと誰もが自分の作業に集中している。

 誰かを誘って何かをする必要もないかと、巨大クッション型ソファーに身をゆだねる。

「ル〜リ〜ちゃ〜ん! 公園いくでー」

 シオラの楽しそうな声に、『ああ、今日が公園の日か』とルリはゲームを途中で終え、立ち上がる。

 公園の日は必ず公園の近くで何かを食べるから、空腹を感じ始めた自身の腹をさすりながらシオラの元へと向かう。

 週に2度、シオラとルリ、キョーマでサセボシティの海岸公園や運動公園に遊びに出掛けた。

 初めルリは、ベンチに座り、シオラが帰ろうというまで何もすることなくただ景色を眺めていた。

 シオラは散歩からはじめ、気づけば付近の子供たちと鬼ごっこやボール遊びに興じ、一番運動公園を楽しんでいる。

 つまらなさそうにみているルリを見かね、シオラは海岸公園の際にルリの手を引っ張る。

 エイヤ! っと柵を飛び越えルリを海へと放り投げる。

 突如海へと放り投げられたルリは必死に身体をばたつかせるが自身がイメージしている動きとはかけ離れたぎこちない。

 水の中で態勢を整えることができない事に驚きつつも、命の危機にルリはさらに身体をばたつかせる。

 容赦なく口に入ってくる海水に息もままならず、あろうことか気管にも容赦なく入ってくる。

 俗にいう「溺れる」という状態に陥ったルリは必死に身体をばたつかせて、生きるためにもがく。

「おい、やりすぎじゃねーか?」

「キョーマはん、早く助けたらな、ルリちゃんトラウマになるで?」

 なんで他人事なんだよ! とキョーマは慌てて海に飛び込み、ルリを抱きかかえる。

 涙と鼻水をダダ流しにしたルリはキョーマに助けられてるのに死への恐怖か、暴れまわっている。

 片手でルリを抱きかかえつつ、顔や体をルリにたたかれながらキョーマは陸へと上がっていく。

 ずぶ濡れになった2人を笑いながら見守るシオラは、自分が引き起こしたことへの謝罪も一切ない。

「どお、ルリ? 知識だけやとあかんって思わん? 泳ぎも知識ではしってたやろ? でも実際は君は溺れた。

 知識だけでもあかんし、経験や身体能力だけでもあかん。人間って面白いやろ」

 だから、訓練しろとでも言いたいんですか、必死に瞳で語り掛けるルリの息はいまだ絶え絶えだ。

 苦しそうにするルリにシオラは笑顔を崩さない。

「ルリを格闘家にしたいわけでもなく、うちの朝のウォーキングのお供がほしいんや。キョーマはんは起きてこんし。

 ひとりで散歩はそろそろ寂しいしね」

 シオラの提案にルリは答えることなく、自分の身体能力の低さを実感していた。

 全身がもう限界とばかりにダルさが襲ってきている。

 還暦を超えた目の前の老婆に劣る自分に少なからず危機感を得たルリは初めてシオラに声をかけた

「危機感を与えて誘導しようとしてます?」

「いや、ルリ泳げるかなって」

「泳げるわけないじゃないですか」

「知らんよね、ルリ話してくれんし」

 不機嫌な視線をシオラに投げるが、シオラは笑顔を崩さない。

「少しして、飽きたんやったらやめたらええし。

 実を言うとね、どーしても取りたいビワがあるんやけどギリギリ届かんのや。

 ルリを肩車したら取れるかなって」

 窃盗では? と思ったがルリは何も言えなかった。

 毎日何かしらで話しているが、この人は冗談に見えて本気。本気に見えて本気。

 たぶんビワも本当だろう。がその前に言ったお供も本気だ。

 まぁ、毎日ゲームにも飽きてきたしやってみるか。と気まぐれに心が動いた。

 こうして楽しいルリとシオラの早朝ウォーキングの日々が始まろうとしていた。




 ――――



「ほなら、ルリちゃんの運動用の服一緒に買いに行ってきてなー」

 運動公園から帰ってきたシオラは、エンジン自動車のレストアを初めながら、服を着替えたルリとキョーマに告げる。

 はい、これ予算〜。とがま口の財布を渡し、作業に集中し始める。

 はぁ……と渋々と車に乗り込むキョーマ。

 地図に書かれたルートを辿り、指定の商店街付近へと車を運転する。

 近くの駐車場に停め、キョーマはつまらなさそうな表情のルリを連れ出す。

 指定された店に入り、ルリの赴くままにさせてみると、ルリは服に触ろうとせずトコトコと店内を徘徊している。

 果ては男性用コーナーまで踏破したルリは、つまらなさそうに二週目に入っていく。

 はー! とキョーマはルリの手を引き、女児用コーナーへと向かう。

 めぼしそうなものを手に取り、「これか?」 とルリに尋ねるが、ルリは興味なさそうに答えない。

 いくら品を変え色を変えようとルリの反応が変わることはなかった。

 そんな奴に買ったところで仕方ないと、キョーマは店を出る。

 何店か回っても変わらず、仕方ないかと駐車場へと向けて歩き始める。

 人混みは嫌いなんだよなと横を歩くルリに「おい」と声をかけた瞬間。

 バチン!!

 強烈な音とともに右腕と左わき腹に容赦ない電撃がキョーマを襲う。

 あまりの衝撃に崩れ落ちたキョーマは、視界が歪み、キーンという金きり音が鳴り響き何も聞こえなくなる。

 一瞬でも早く体の痺れを解くために動く部位から順に力を入れては抜く。

 その間も横を歩いていたルリの足元に視線を向ける。

 ルリは導かれるように歩いていた。

 耳鳴りがやみ始めたキョーマは足先に誰かが立っているのに気づく。

「だれ……だ、てめぇ」

「ルーザーに秘宝を奪われた者ですよ」

 それだけで、キョーマは敵であると理解した。

 痺れと痛みが走る中、キョーマは立ち上がる。

 声の主を見ると、人のよさそうな笑顔が張り付いた髭ズラの眼鏡。

 スーツに身を包んではいるが、その下にかなりの密度の筋肉が収まっていることがわかる。

「争い事は私どもとしましても避けたいので大人しくしていただけると助かります」

 飄々とした声で言葉を紡ぐ男が既に王手を打った気でいるのがわかった。

 男の視線の先を見ると、黒スーツに誘導されるがままのルリが歩いている。

「アイツに何言った」

「いえいえ、帰りましょうと伝えただけですよ。

 ――少し刺激的なことを言ったかなという程度です」

 こういう大人には覚えがある。

 自分の動かしたいように人を誘導するためにどんなえげつない内容も武器に使う。

 頭いいかは知らないが狡賢い大人には太刀打ちできなかったらしい。

 見送ってやるのもいいか……と呆れたようにため息を吐くキョーマ。

 黒塗りの高級車の後部座席に乗り込もうとした瞬間、ルリはキョーマを見る。

 大丈夫だと言いたげな少しはかなげな笑顔。

 キョーマは車に乗り込むルリの表情には見覚えがあった。

 かつて愛し、救おうと必死になった女性、四阿屋雅”の最後の表情と一緒だった。

 最先端技術が生み出した神すら超える技術を拒絶したあの時と……。

 雅はこの技術が立証されれば、自分が愛した世界の理が音を立てて崩れると確信し、世界のために自分を犠牲にした。

 あいつは人類のためにと自分の人生を諦めた。


 まだ何も知らない餓鬼が……。

 それを当然として笑っているおっさんも、何も疑問に思わず動くおっさんの部下たちも……。

 気に食わねぇ……


「――決めた。

 人類の繁栄のためなんてしらねぇ。

 あいつが自分の幸せを手に入れるために我儘を言えるようにする」

「人類の繁栄と個人の幸せを秤にかけると? 抵抗せずにつれていかれている現状、本人は望んでいるのでは?」

「諦めてるだけだろ、自分の意思は通らないと! まだ右腕が痺れてるが

 ――こっちの道理、通させてもらうぜ!」

 グレンデルの獣は怒りとともに、100年後の世界で目覚めた。

 100年後の誰もその強さを見たことがない牙が解き放たれようとしていた。




―――――――


 時は戻り。



 ブリッジでのあいさつを終えた2人は、プロスペクターに案内された部屋へと入っていく。

 事前に送っていた荷物が置かれていた。

 チェストに鏡のついたドレッサー、ソファーベットにクッション、テーブルライトをルリはまず確認し、キョーマへと指示を出す。

 ぁあ! と入れた瞬間、ルリは約束ですよね? と即答して再び指示を出す。

 あっちへこっちへと家具を移動させられ、程よい疲労感がキョーマを襲い始めた瞬間、ルリはベッドで寝息を立て始める。

 くそっと頭をかき、起こしても仕方ないかとベットへと運んで、布団をかける。

 すっぽりとかぶっていた二つマダラのマークがついた帽子を取り、ドレッサーへと放り投げる。

 自身の荷物の段ボールをあけ、着物を取り出し、シャワー室へと入っていく。

 10分もせずに、シャワーから出てきたキョーマはルリが眠っていることを確認して部屋を出ていく。

 案内板を辿り、とある部屋を探す。

 何度か曲がった後に見つけ、入っていく。

 入った部屋は『食堂』。

 すでに9時を回った食堂には利用者はまばらであり、静けさが顔を出していた。

 ピッと食券を買い、カウンター席へと座る。

「あら、見ない顔だね。今日からかい?」

「ああ、つい先ほどな。

 明日からは餓鬼んちょが世話になる。

 まぁババアの教育の賜物というか、余計なというか……そこそこ味には煩くてな。その下見をしてこいってな」

「あらあら、目利きをしに来たって事かい」

「そんな大層なもんでもないさ。ただ晩飯を食って晩酌しに来たってだけだよ」

 そうかいっとコックのホウメイは笑って厨房の奥へと入っていく。

 数分たって、ホウメイはチキンライスとスープを持ってキョーマの元へとやってくる。

「中々ニッチな注文じゃないか」

「餓鬼んちょがな、好物なんだよ。俺は食いたくもねぇ。

 まぁ、レトルトを食うよりかはマシだな」

 キョーマは一口食べ、味、風味全てにおいてホウメイの腕を確信した。

 ニヤリと笑ったキョーマにふぅんと鼻息を少し落としたホウメイは会話なく視線だけを交わした。

 バクバクとチキンライスを平らげたキョーマの元にホウメイは、ニジマスの竜田揚げを持ってきた。

「頼んでないぜ?」

「まぁコックしたいって奴がいてね。ソイツの腕試しと業者がオマケしてくれた奴だから気にしなさんな」

「そうかい。なら焼酎あるかい?」

 お供させてもらおうかね。とロックグラス2つと焼酎を持ってきたホウメイはカウンター越しにキョーマと対面に座る。

「おや、キョーマさんは晩酌ですか。

 ご同席してもよろしいですか?」

 焼酎が入ったロックグラスで乾杯をしたキョーマとホウメイの後ろから声をかけたのはプロスペクター。

「出会ったあの時にはこうしてお酒を酌み交わす間柄になれるとは思いませんでしたね」

「まぁ、そうだな。

 呉越同舟というか、互いに身内が殺されたってわけでもねぇしこういうのもありじゃねーかな」

 チンとグラス3つが中に入った焼酎を揺らし、乾杯をはたす。

 立場はそれぞれ違えど、旅は始まろうとしていた。



―――――――






 ――TO BE CONTINUED






  あとがき


 12周年ということで気合を入れて書き始めたものの
 ブランクが長すぎて進まぬ……。

 さぁ、あと一話。
 クリスマスまでに完成させるように頑張ります!

 まぁ!



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