「ほら、彼女も人類に貢献する意思があるようですよ。ほら、攫われているのに抵抗すらしません」

 プロスペクターが指で刺した先には、男に抱えられるルリが完全に諦めた表情で黙っている。

 それを見たマブチは「なぜ?」という疑問は浮かばず、ブチッと頭の緒が切れる音がした。


 ――奇病に蝕まれた妻は、新技術を人類にとっては危険と判断し、笑顔で使用を拒否して死んでいった。

 それが、人類の真の発展のために必要と信じて。


 それと同じことが目の前で起こっている。

 たった6歳の女の子の意思も希望も夢も奪い、人類のためと、発展のための礎になれと大人が笑顔で言っている。

 人類全てと比べると個人など取るに足らないと言われるかもしれない。

 だが、そんな犠牲が必要な発展に両手を挙げて喜べはしない。

 すべてを救うことはできないが、手の届くところで犠牲になんてさせない。

「……しばらく休業してたが『回収屋』、再開だ。

 おい、プロスとやら」

 キョーマの言葉とともに、プロスは背中に寒気が駆け抜ける。

 ただただ粗暴に怒りを表していた男から放たれる研ぎ澄まされた殺気。

 気配の変化だけで、プロスは警戒をマックスに引き上げ、銃とナイフを構え、キョーマとルリの間へと入る。

 キョーマも法被の裏地から三本ずつ串を取り出し、構える。

「うちの宝玉を奪わせはしない。回収させてもらう。

 ――シオラが怒るんでな!」

「圧倒的不利な状況と分かりながらの宣戦布告、承りましょう。

 こちらもお仕事ですので、恨みっこなしで!」

 プロスの言葉を最後に、2人は言葉も出さずに命の奪い合いを開始した。

 プロスがナイフで威嚇し、誘導した先に向けて放たれる銃弾をキョーマはいとも簡単に避ける。

 避けた反動を使い、全力で放たれた串にプロスは反応できず、頬と耳たぶに一筋の切り傷を付ける。

 一合の会合でプロスは驚愕した。

 10数年かけて磨き上げてきた戦闘技術を軽く凌駕する存在が目の前にいるのだ。

 それも一回り以上下の男が、だ。

 何度となく超えてきた死線とそれにより磨かれた技能。

 それよりも深いところを潜り続けてきたのだと確信した。

 プロスはキョーマを『倒す』ではなく、ルリを連れた部下が逃げる時間を稼ぐ動きにシフトする。

 本能的に直感したキョーマはプロスへの直撃を狙わず、プロスを気付かれずに誘導するように串を投げ続ける。

 何度となく放たれる銃声と串が刺さる音。

 プロスが銃創を装填しなおそうと一歩さがった瞬間、キョーマはプロス側の壁を駆け上がり、プロスをすり抜ける。

 意識していた逆側に来られ、突破を許したプロスは後ろに控える部下へと発砲の指示を即座に出す。

「残念だったな」

 ぽつりと残されたキョーマの一言とともに、プロスは驚愕の光景を目の当たりにする。

 後ろに控えていたはずの部下が全て身体に刺さった串を抑え、蹲っていた。

「すぐに出発しなさい!」

 焦ったプロスは無線で車に乗り込もうとしている部下にルリを運び出すように叫ぶように指示を出す。

 全力で駆けるキョーマは、法被の裏から串を三本ずつ取り出し、同時に車に向かって投擲する。

 高速で飛翔する串は車の2つのタイヤへと突き刺さり、ブシューっと空気が抜ける音が立ち上る。

 地面に跳ねた串は車の下へと入り込み、シャフトドライブの歯車に突き刺さる。

 ルリを車に放り込もうとした男の足へと2本の串が突き刺さる。

「餓鬼!」

 ストっと重力を感じさせない着地をしたキョーマはルリを抱きかかえ、走り出す。

 抱きかかえられたルリは、困惑と思慮に暮れていた。




――――




シルフェニア 12周年記念作品
機動戦艦ナデシコ × ディメンションW
―― 懐古の串と電子の妖精 ――
第3話「世紀を超えた出会いの後に」
作者 まぁ




――――




 車に飛び乗ったキョーマは助手席にルリを載せ、急発進した。

「なんで……私を取り戻したんですか? シオラさんに怒られるから? 相手にむかついたから?」

「……」

「答えてください。ずっとこういう事が起こるなら私、汚い大人の取り合いの駒になりたくないです。

 あっちに行けばそれもないなら……」

「お前が! 選んでないからだよ! 諦めて、周りに言われるがまま!!

 選ぶなら、自分が本当にしたいことを選べ!」

「あなたに関係あります? 私とあなたは赤の他人」

「諦めて、世界のためにと死ぬことを選んだ奴を知ってる。そいつは……自分の命と世界の秩序を天秤にかけて世界を取りやがった!

 でもな……それでもあいつが選んだことを否定はしない」

 私と何が違うんですか? とルリは呟いた。

 自分も世界の発展のためにとまた戻ろうとしている。

「てめぇは選んじゃいねえ。

 諦めて周りがこうすれば幸せなんでしょうと勝手に想像して勝手に動いてる。

 シオラはお前に何を期待した!?」

「……」

「仁は!!」

「……」

「あいつらはお前にそんな借りてきたペットのようになってほしいなんて一言も言ってない!」

 ゴン! と、ルリの頭を小突く。

「てめぇは何がしてみたい」

「…………たいです」

「ぁあ!?」

「シオラ……さんと、ビワを……取りに…………行きたいです!」

 そうかよ! とキョーマは笑い、車を急旋回させ、とある場所に急行する。

 追手となって追撃していたプロスの部下たちも慌てて急旋回する。

 最先端の自動車で追手はジワジワとキョーマ達に迫っていた。

 キョーマは急ハンドルを切り、自動車をスピンさせて360度ターンを行う。

 旋回中、コンマ何秒という刹那の瞬間に、キョーマは串を投げる。

 地面に反射し、串たちは的確に一台ずつタイヤへと突き刺さり、バーストを起こさせる。

 スピンを綺麗に決め、追手を置いて去っていく。

 ルリは身体全体で後ろを見、キョーマが投げたそのすべての串が正確にタイヤに命中している。

 そんな天文学的な確率を横の男は事もなげに成し遂げた。

 ルリは横の男がただガサツで乱暴なだけの存在ではないのだと感じ始めていた。


 ……

 …………

 ……


 車はほどなくして、一軒のスポーツショップの前に停まる。

 キョーマはルリの手を引いてスポーツショップに急ぎ入る。

「これはどうだ?!」

「……派手……」

「なら!」

 といくつかジャージを見繕い、ルリは濃いめのエメラルドグリーンのジャージを選ぶ。

 合わせて靴も買い、キョーマはシオラのお使いを終えた。

 さてと……とキョーマはルリと車に乗り込み、屑鉄屋『空心』へと向けて進路を取る。

 ザッザッザ。とキョーマの法被に着けられた小型の通信機から音声が流れる。

『追手をまいて、買い物とは……中々に余裕なようで』

「あぁ、買わずに帰るとシオラが怒るからな」

『先に伝えておきましょう。我々は空心の周りを占拠しています。

 たどり着けますか? 私の自慢の戦力を前に』

「行くさ。餓鬼のジャージ姿シオラが見たがってるんでな。

 どう取ろうとお前の勝手だが、俺らは車を自然公園に置いて、この足で空心へ帰る」

『ほう……まさかあなたに心理戦に持ち込まれるとは……逸話とは違うようですね、事実は』

 ブチっと、通信機が切れる。

 キョーマは窓から通信機を捨て、車を自然公園に向かわせる。

「あの……相手に本当のこと、伝えたんですか?」

「嘘ついて何になる?」

 ガサツだとは思っていた。が、ここまで考えなしに生きれるのだろうか?

 こう思うままに生きれたら楽しいのだろうか?

 とルリは買い物袋を抱きながら、考えにふける。



 ……

 …………

 ……



 10分少々の時間を経て、2人は宣言通りの自然公園の駐車場に辿り着いていた。

 車を降りたキョーマはルリを抱きかかえ、空心に向けて文字通り、真っすぐ走り出す。

 公園の端に設置された街灯2本に巨大な特殊ゴムをかけ、即席の発射台を作って自身を打ち出す。

 キョーマたちは3階建てのビルの屋上に着地し、建物の屋上伝いに空心を目指す。

 プロスが配置した部隊のほとんどは路上にいたため、キョーマの大ジャンプにほぼほぼパスされる。

 狙撃をと配置されている狙撃手が数名いたが、ルリを抱えている現状、撃ち落とせば目標にも多大な被害があるのは容易に想像できた。

 屋上にいて唯一手が出せた狙撃班はルリを傷つけないために手が出せない。

 そうして、キョーマは空心までの大半の距離を襲撃に逢わずに走破した。

「まったく想像通り、奇天烈なことをされる」

 戦闘態勢に移ったプロスがキョーマの道を塞ぐ。

 キョーマは立ち止まることなく、3階の屋上からためらいなく飛び降りる。

 落下中、キョーマは路上に配置された敵を串を投げて四肢のいずれかに突き刺す。

 ストっと軽く着地したキョーマはまた全開で走り出し、部隊が立て直す暇を与えずに空心へとたどり着く。

 電光石火。

 その言葉に相応しい逃走劇を起こしたキョーマは息を乱さず、ルリを下ろして間延びしている。

 ルリはゴムでの跳躍時に既に意識を手放していた。

 数年後。ナデシコに乗った後にルリはプロスにこう語ったらしい。

「意味が分からない人です、キョーマさんは」

 と。




――――




 眠りから覚め、ゆっくりと開かれた瞳。

 ルリは昨日まで見知った天井とは違う景色に、環境が変わったのを実感させられる。

 見た夢に思いを馳せながら、お気に入りのフードを被る。

「そうか……昨夜、おやすみなさいって言ってなかった……からか」

 まだ眠気をまとった瞳からポツポツと流れる涙を手で拭い、隣のベッドで眠るキョーマを見る。

 いつも『家族』に挨拶をせずに寝てしまった時、喧嘩をしたときは決まって、昔を追体験する夢を見る。

 全てを諦めていたあの時の夢。

 いつもはグランマであるシオラ・スカイハートが一緒に寝てくれているが、今日からはいない。

 隣のベットで寝息を立てているキョーマにこの4年間甘えることができなかった。

 いつも対応はギャーギャーとうるさく苦手だなと。

 ただ物騒なことに関しては腕が立つようで何度も助けられた。

 苦手だけど拒絶するまではいかない、身内程度の認識。

 こういうこともわかっていた、大好きなグランマにこれまでと同じようには甘えれないことを。

 覚悟していたはずだった。

 それでも涙は悲しく流れ続ける。

 拒否されることしか考えられなかったが、ルリはキョーマの元へと歩き始める。

 静かにキョーマの布団の中へと侵入したルリは身をかがめキョーマの腕の中へと落ち着く。

 すぐにキョーマのうるさい声が聞こえてくるとわかっていても、ひと時でも刹那でも、人の温かさを感じていたかった。

 ルリは涙を流しながら再び眠りへと落ちていく。

「グランマ……寂しい……です」

 ……

 …………

 ……

 いい焼酎と飲み仲間が見つかり上機嫌に眠りについたキョーマは一つの違和感とともに目覚めた。

 腹部に身に覚えのない暖かさがいた。

 寝ぼけ眼で布団の中を確認すると、いつも自分に近づかない銀髪の少女が丸まっている。

 愛想がいいとはお世辞にも言えない自分にこの4年懐くことなく最低限の会話しかしてこなかった餓鬼が眠っている。

 もしかして酔った勢いで餓鬼のベッドで眠っていたのかと思い出したがどうやら違う。

 餓鬼のベッドにはわかりやすいようにウサギの抱き枕がおいてあり、隣のベッドに置いている。

 どうやら朝早くに餓鬼が移動してきたのだろう。

『おぉい!』

 といつものように声を荒げて起こそうとしたが、瞼に溜まっている涙を見て、キョーマはため息をつく。

『ルリちゃん、強がってるけど寂しがりややからね。

 キョーマはんがしっかりとルリちゃん安心させるんやで』

 柄じゃないんだよな……と頭をかきながら、キョーマは再び寝転ぶ。

 シオラがしていたようにルリの頭に優しく手を載せる。


 ……

 …………

 ……

 心地よい暖かさにルリは瞼を開ける。

 いつもグランマが寂しい時に自分を抱きながら頭を撫でてくれた。

 その手の温かみが今も自分の頭の上に……。

「グランマ……」

 ああ……? と寝言のような声で応えで、大好きなグランマでないと確信した。

 そして、自分が何をしたのかを確信して、バッとベッドから転げ落ちる。

 逃げるようにルリは自分のベッドへと駆け込む。

 程よい温度に設定した空調で涼し気に冷えた布団に身震いしながら、アワアワと猛省した。

「ようやく起きたか……飯行くぞ、餓鬼」

 間延びしながらキョーマは起き上がる。

 顔を洗い、法被を着て、ものの数分でキョーマは部屋の玄関へと足を運んだ。

「ちょっと待ってくださいよ! こっちはまだパジャマなんです!」

「ほら、浴衣着ていくぞ。こっちは腹減ってるんだ」

 ルリは赤らめた顔がサッと引き、慣れた手つきで浴衣をパパパと着込む。

 最後にハンガーにかけられたグランマ特性の法被を着てキョーマを追う。

 先に部屋を出たキョーマはルリが出てくるのを確認して歩き始める。

「一応、言われたようにチキンライス、味見してきたぞ」

「どうでした?」

「プロスが言うだけあって、シェフは超一流だな」

 なら楽しみですね。とルリは小さく鼻歌を歌い始める。

 未だ寝癖でピンピン跳ねているのを気にしていないのを見て、キョーマは法被の袖からルリのお気に入りのフードを出して被せる。



 そして、このキョーマの発言がモノの一時間もたたないうちに怒る『とある男』の不運に繋がるとは誰も知りえなかった。




――――




 戦艦が緊急出港した次の朝、夜勤明けのスタッフと日勤が連続して襲って来る食堂の激戦の時間。

 前日から厨房から入ったコック見習いテンカワ・アキトは一つのクレームに汗を流していた。

 昨夜のテストの結果として、一つの料理が任された。

 『チキンライス』

 あまり注文は入る料理ではないが、これを自身を含める厨房スタッフの賄いとして作り、腕を上げろと言われた。

 気長にするかなと思った矢先の初勤務に入ったチキンライスの注文。

 誠意を込めて、一生懸命に作った。

 自分なりの自信作を提供できたと思っていた。

 が、帰ってきたのはクドクドとしたクレームであった。

 それも言っているのが中学生にもなっていない少女だというのだから、どうしていいのかわからない。

 コック長のホウメイさんに助けを求めるも、『しっかりと聞いてやんな!』と一蹴されてしまった。

 少女の横に座る保護者らしき、男性は我関せずと和朝食セットを食べている。

「今日から入った見習いなんで……本当にすみません」

「見習いってことも、今日から入ったという事も言い訳にはなってないですよね?

 ならお金を取らずに……コミュニケで感覚はないかもしれませんが、食費としてしっかりと引かれていますよね?

 お金を取るならばしっかりとした料理を出すべきではないでしょうか?

 何よりも味付けが甘すぎます。 食べたことあります? チキンライス」

 決死の思いで紡ぎ出した言葉は火に油だったようで、クレームはさらに勢いを増していく。

 少し気まぐれに食事を終えたマブチはルリのチキンライスを一口食べる。

 味を丹念にみたところ、ふうと一息ついてお茶をすする。

「二枚……いや、かなり落ちるな。精進しな。

 それと餓鬼、そろそろ出勤の準備する時間だ。文句はわかったから食え」

 ガシっと頭を握ったキョーマは不敵な笑みを浮かべる。

 今は朝食の時間、周りにはたくさんのクルー。

 キョーマはその表情でルリに暗に語り掛ける。

『今朝の泣いてた事話すぞ?』

 と。

 ブスッと頬を膨らませて不機嫌さをアピールするが、キョーマは無視を決め込む。

「すみませんでした、言い過ぎました。

 ただ、私はチキンライスが好きでこの戦艦にもあると言われて楽しみにしていました。

 グランマの得意料理でよく食べていました。

 その味付けにしてくれとは言いません、ただ精進してください。

 シェフに追いつくように頑張ってください」

 パクパクとチキンライスを食べるルリに、ようやく解放されたとアキトは厨房の奥へと入っていく。

 10分と経たず、先ほどの少女に『ごちそうさまでした』と声をかけられる。

 反射的にバッと駆け寄ったアキトは、ルリが綺麗に平らげた皿を見て安心した。

「ごちそうさまでした。先ほどはすみませんでした。

 私に合わせて甘くしてくれたんですよね……。

 毎朝は食べないと思いますが、これからよろしくお願いします」

 ルリはペコリと下げ、頭を上げざまにニコリと笑みをこぼす。

 その後ろで爪楊枝を加えたキョーマは手で挨拶して去っていく。

 悪い人ではないのかな……とアキトは不安とともに、あの子に美味しいと心から言わせるような料理を作りたいと決意を新たにした。




――――




 ナデシコが飛び立った翌日の早朝。

 屑鉄屋『空心』の秘密スペース。

 いつものように楽し気にティータイムを楽しむ老婆と老人。

 シオラ・スカイハートと白川仁は楽し気に笑って話している。

「今になっても信じられないよ、シオラがルリのナデシコ入りを許すなんて」

「まぁ……ルリがこうも頑なに我儘ゆうのも久しぶりやしね。それに

 ――うちらの目的に火星と木星、両方とも必要やしね」

「まったく孫娘として溺愛しているルリを送り出すほどかね?」

「まずは火星圏を人類に取り戻してもらわないとやね。

 そんなことは二の次やね」

 ニヤニヤと笑うシオラは、キーボードを操作し部屋の壁が静かに動き、さらに奥の部屋が顔を出す。

 大きな水槽と町の一角の屑鉄屋には見合わない最先端の精密機器が所狭しと並んでいる。

 水槽には綺麗な顔で目を瞑るアンドロイドの頭部のみが浮いている。

 シオラと仁はその頭部を懐かしそうに、愛おしそうに見つめる。

「ニートのキョーマはんを載せる対価としてうちらの切り札もサツキミドリで引き渡し予定やし。

 そっからやで、ルリちゃんの初めての親子で旅行になるのは。それに給料貰いながら旅行できるって最高やん」

 そやんね……とシオラは頭部に優しく語り掛ける。

「火星圏で『120年前の遺物』を探している翔太の結果も聞きたいし、もしかしたら紛争のごたごたで木れ……

 ――木星に行っている可能性もある。

 ネルガルの会長のレトロコレクションもルリ達が帰ってくるまでには貰い受けないといけないね」

 せやせや。とシオラは頷く。

「もうすぐやで、”ミラ”っち」
「もうすぐです、”ミラ”さん」

 2人は決意を新たに、誓うように頭部に話しかける。

 頭部は何も応えはしないが、安らかな笑顔を2人は見つめる。

 その頭部はかつて子供の時分にお姉ちゃんと慕い、遊んでもらったアンドロイド。

 悪ガキ4人衆が未だにつるんでいる最たる理由。

 動かなくなったコイルによりロストテクノロジーとなったアンドロイドの再生。

 もう一度、『お姉ちゃんに逢いたい』。

 『逢ってまた遊びたい』

 キョーマとミラ、かつての組み合わせとルリ。

「それに案外うちらは大所帯になってきたし、あの子たちにも”ママ”は必要や」

「バァバー」

 こっちやでーと、陽気な声で応える。

 ものの数秒で秘密スペースの扉が開く。

 桃色やエメラルドグリーンなどカラフルな髪の幼女たちが瞳に涙を浮かべながら、嬉しそうに入ってくる。

「ルーねぇねは?」

「お母さんを迎えに行ったよー。しばらくおらへんからバァバといっぱい遊ぼうなー」

 わーい! と幼女たちは嬉しさを身体全体で表していた。



 日本のとある都市、サセボシティ。

 その下町通りの一角にあるとある鉄鋼屋『空心』。

 創業100年を超える老舗。

 スクラップ処理から最先端の精密機器の開発事業を手掛けている。

 120年前に世界を牛耳っていた企業の最高幹部の孫娘、シオラ・スカイハートの誰にも秘密にしていた計画が動き始めた。


「こんな傀儡戦争に付き合うってのも難儀やけどうちらはうちらで楽しまなやで。

 みんな揃ったら、イースター島”に遊びに行こうな〜」

 幼女たちは何それ何それ! と興味津々に質問攻めにしはじめた。

 ここ最近の『空心』の日常





 ――TO BE CONTINUED...??




 あとがき


 なんとか最終話、間に合いました。

 追い込めば何とかなるものですね(´・ω・`)


 まだまだリハビリ中ですが、読者の皆様に楽しんでいただける作品を書けるように頑張ります(*'ω'*)

 まぁ!



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