Fate/BattleRoyal
5部分:第一幕


変な所があったらすいません。
あと主人公チートです。本当にすいません・・・・
第一幕


 岩に刺さった剣の前に一人の少女がいた・・・少女はその剣を抜こうと手を伸ばした―
「いやいや、それを手に取る前に、きちんと考えた方がいい」
それを老人の声が止める。老人はこう続ける。
「それを手にしたが最後、君は人間ではなくなるよ。歳もとらず、ただ国の為、王として生きる他なくなる。その挙句にあらゆる人間に恨まれ惨たらしい死を迎えるだろう」
恐れなかったはずはあるまい、何故なら老人はその剣を取った後の全てを少女に見せたのだから、それでも少女は頷かなかった。老人はさらに言葉を尽くして説得する。
「その剣を抜いた先、君の前には栄光と破滅が等しく訪れるだろう。それでも尚、その剣を取るのかい?」
すると、少女は笑って言った。
「多くの人が笑っていました。それはきっと、間違いではないと思います」
少女はそう言って剣の柄に手をかける。老人は憐憫に満ちた眼を少女に逸らしつつ、こうも言った。
「奇蹟には代償が必要だ。君はその一番、大切な物を引き替えにするだろう」
そんな予言染みた言葉を残し、そして、少女の人生はそこで終わった―

奏はパチクリと眼が覚めソファーから起き上がった。そこは奏が事務所と住居を兼ねている部屋で大抵はここで寝食をしている。現在の時刻は深夜の三時。

さっきの夢・・・もしかして、キャスターの?マスターとサーヴァントは意識がリンクしているから互いの過去夢を見る事があるってアレか?
しかし・・あの夢って・・・ん?そう言えばキャスターは何処に―

奏はふと、自らのサーヴァントの姿が見当たらない事に思い至り辺りを見回す。霊体化しているのだろうかと思ったが、訪ね人はすぐに現れた。それも事務所の入り口から―
「やあ、お目覚めかね」
奏はまず、キャスターが両手に抱えている紙袋を見た。そして、問うた。
「その紙袋は何だ?」
「ああ、これかね?ノートPCと言う物を買って来た。これから戦争が始まる。ならば情報収集は必須だろう」
「ノートPCならとっく家にあるけど。と言うより金はどこから?それ以前に店は閉まっているだろう」
奏の言葉にキャスターは少し、ギクッとした後、無駄に爽やかな笑顔で言った。
「それじゃあ早速、設定を始めよう」
と紙袋からノートPCが納められた段ボール箱を取り出す。

無視された・・・

奏はどこか諦めたような顔で嘆息をつく。
一方、キャスターは素早くPCを取り出し手際良く設定を進めて行く。

と言うか、随分と順応性が高いサーヴァントだな・・・そりゃサーヴァントは皆、英霊の座である程度は現代の知識を得て限界すると言うが・・・それにしたって・・・・

「それにしても魔術師(キャスター)とも在ろう者が機械を躊躇もなく使うとは思わなかったよ。昨今の魔術師はよっぽどの物好きでもなければ手にも触れないって言うのに・・・」
奏が呆れたように言うとキャスターは設定を進めながら答えた。
「そうなのかね?それはいかんな・・魔術師たる者、視野を広く持たねば。それに引き換え君は機械類にも躊躇なく手を出しているようだね。感心、感心」
「俺は別に仕事をする上で有益と思ったから魔術をかじっただけだよ。別に時計塔の連中のような『根源に至る』なんてご大層な理由で学んだわけじゃないさ」
すると、キャスターは興味深そうに奏を見据えて聞いた。
「ふむ・・仕事とはどのような事を?」
「探偵だよ」
「ほう・・明智や金田一のようなかね」
「どこで知ったんだよ、そんな事・・・と言うかお前って本当に順応性高いのな・・・生憎と俺はそいつら程、頭が特別いいと言うわけじゃない。有り体に言えば『何でも屋』だな」
「ふむ・・何でも屋?では犯罪の捜査を実際にしている訳ではないと?」
「馬鹿にするな・・一応、そう言う依頼だって来るさ」
すると、キャスターは首を傾げる。
「しかし、頭が特別いいと言うわけではないのだろう?」
「まあ、俺には頭に代わる物があるからな」
「頭に代わる物・・それは一体・・・ッ!」
そこでキャスターはサーヴァントの気配を感じ、奏もそれに気づく。
「サーヴァントか?」
「ああ、それもこの事務所の真ん前だ・・・舐められた物だな。さて、どうするマスター?私のようなキャスターの一般的な戦い方としては陣地を作って待ち伏せるのがセオリーではあるが・・・」
「お前すっかり忘れてた物な」
奏が若干、青筋を立てて突っ込むとキャスターはあははと言って誤魔化す。だが、すぐにまた、あの不敵な笑みを浮かべて言う。
「まあ・・慌てる事はないさ。たとえ、この身は最弱とは言え勝算がまったくない訳でもない」

そして、二人が事務所の外へ出ると案の定、二人の男が仁王立ちしていた。一人はラテン系の容姿をしたドレッドヘアーの男性。その隣には圧倒的な存在感を放つ中華系の武者が控えていた。武者はとても大きな体躯をしており鮮やかな紅髪を後ろに二つに分け結い、赤を基調にした鎧を纏っている。
ドレッドヘアーの男性が出て来た奏達に対し口を開く。
「へえ・・こっちの誘いを蹴らずに出て来るとは中々に剛毅じゃねえか。取り敢えずは初めましてだな、俺はアレックス・マリオン。こっちは俺のサーヴァントのランサーだ」

ランサー・・・選りにも選って三騎士クラスか・・それにしてもアッサリとクラス名を明かして来たな。それだけ自信があるって事か。

今度はランサーの方が口を開く。
「次は貴様らが名乗るのが礼儀と思うが?」
その鋭い一瞥をまともに喰らった奏は内心、気圧された。

凄い迫力・・・ッ!改めて思い知るが、これが英霊(サーヴァント)かッ!!

奏は敵の覇気に呑まれそうになりながらも名乗る。
「俺は鳴宮奏。こっちはサーヴァントのキャスターだ」
すると、ランサーはフンッと鼻を鳴らして吐き捨てた。
「選りにも選って、最弱のキャスターとは・・・・つまらん」
すると、キャスターも挑発するように笑った。
「ふっ、早計は余り、感心しないな。如何にこの身は最弱でも戦いようがない訳ではない」
「ほう・・」
ランサーが値踏みするような眼で見るとキャスターはその威圧がこもった視線を物ともせずに奏に言った。
「マスター、宝具の開帳を許して貰いたい」
その言葉に奏は静かに頷く。すると、キャスターは右手をかざして魔力を放出し宝具を具現化させる。その形が露わになった時、この場にいる全員が眼を疑った。なんと、それは剣だった。一振りの剣は岩に刺さった状態でこの場に具現化されたのだ。

この剣はさっきの夢で見た・・・

そう、この剣はまぎれもなく奏が先程、見たキャスターの過去夢で少女が抜いたであろうあの岩に刺さった剣であった。
それを見た一同は驚愕する。白兵戦とは無縁に等しいキャスターが剣の宝具を持つなどと・・・!
「これぞ我が第一の宝具『勝利すべき黄金の剣(カリバーン)』!!さあ、マスターよ。この剣を取れ!」
「え?俺がッ!?」
奏が思わず面を喰らうとキャスターは大声でさらに促す。
「早くッ!」
その声に奏は半ば、自棄になってその剣・・勝利すべき黄金の剣(カリバーン)の柄を握り岩から引き抜いた―すると、その剣から大きな魔力が魔術回路を通して身体中に流れて行くのを感じた。

この宝具・・・もしかして―

奏の考えを読むようにキャスターが肯定する。
「そう・・これは()()()が使う事を想定された宝具ではない。この宝具の真の意味はマスターとの契約を結んだ後にこそある」
「つまり―」
奏は勝利すべき黄金の剣(カリバーン)を手にランサー目掛けて突撃する。その無謀とも言える行動にアレックスもランサーも面を喰らうが、それも一瞬だった。奏は人間とは思えない速さと剣戟を繰り出しランサーはそれを紙一重で避けた。
「マスターを強化する為の宝具って事か・・・一応」
奏は相も変わらず気のない声だったが、その戦闘態勢は微塵の隙もなかった。それを見たランサーはこれは決して一筋縄では行かない事を察した。
「主よ、こちらも宝具を開帳するぞ・・・あの小僧・・宝具で強化された事は勿論だが、あの小僧自身の力量もまた、侮れん」
「了解。あんたの方が戦闘の先輩だ。任せるよ」
アレックスは溜息を付きながらも渋々了解した。ランサーは右手にその巨躯に相応しい巨大な戟を具現化させた。

あれって方天画戟って奴か・・・と言う事はあのランサーの真名って・・・

「考え事とは余裕だなッ!」
そこで奏の思考は途切れた。ランサーの凄まじい突きが迫って来たからだ。しかし、奏はそれを考え事の途中だったにも拘らずそれを読んでいたかのように避けた。これにはランサーもかなり、驚いたのか眼を剥いている。奏はその隙にと剣戟を繰り出すが、勿論、そう易々と殺らせる程、ランサーは甘くはない。忽ち戟をその刃に合わせる。
そこからは凄まじい剣戟の打ち合いだった。随所に火花が飛び散り、互いに際どい一撃を何度も繰り出して行く。その場に他のマスターやサーヴァント達がいたら皆一様に驚愕したろう。何せ、生身の人間が如何に宝具の助けがあるとは言え、サーヴァントと互角に戦うなどと・・・
しかし、一番に驚愕しているのはランサーの方だった。

この小僧・・・多分に宝具の助けがあるとは言えこの俺とここまで打ち合えるとは・・・ほぼ互角・・いや、僅かに俺を圧してすらいる!
それにこ奴の動き・・まるで、俺の繰り出す斬撃の一つ一つを見透かしているかのようではないかッ!?

そう見透かしているかのようではなく現実に見透かしているのだ。これぞ奏が頭脳に代わると言った奏自身の起源『予知』であった。
奏はそれによって対象や物事の事象を先取りする事によってあらゆる捜査を遂行し時には障害に成り得る人間を打ち倒して来たのだ。おまけに彼は身体の強化に特化した魔術師でもある。さらに、そこへキャスターの宝具による強化補正によって今の奏の戦闘力はサーヴァントに迫る物となった。
「チッ!調子に乗るなッ!!」
ランサーは一際大きな力で戟を振るい奏を薙ぎ払う。奏は後ろに吹き飛ばされながらも綺麗に着地する。
一方、ランサーは一層に鋭い視線で奏を射抜く。
「小僧・・・遊びは終わりだ」
そう言った途端に戟の形状が弓の形に変化した。
「なッ!」
奏が面食らっているとランサーは殺気がこもった声で弓へと変化した己の得物をつがえながら言った。
「小僧・・・お主の技量、人間風情の身でよくぞ、ここまでと誉めてやる。だが、貴様ができるのも所詮はここまで・・・我が宝具『軍神五兵(ゴッドフォース)』のスキル・・必中無弓(ゆみ、きそうかちなし)によって引導を渡してくれる」
そう告げた瞬間にランサーは矢を放った―



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