Muv-Luv Alternative The end of the idle

【伏竜編】

〜 幕間 :篁唯依の日記〜西暦一九九〇年十一月 〜






○西暦一九九〇年十一月二日

 世相が騒がしくなってきました。
 カシュガルを発した大規模BETA群は東進を続け、ユーラシア北東部、東アジアそして東南アジアで激しい戦闘が繰り広げられているそうです。
 またインド領ボパールにも新たなハイヴが建設され、大陸東部におけるBETAの圧力はこれまでに無い程高まっているとか………

 こんな情勢を受け、帝国内でも大陸派兵がほぼ本決まりとなり、来年には間違いなく第一陣が大陸の地を踏むだろうとルル兄様が、以前、言っておられました。

 そんなルル兄様も、今までにない程、お忙しそうです。
 先々月に発表された『アヴァロン計画』―― 宇宙空間に本格的な居住空間(スペースコロニーと言うそうですが)を設け、そこに後背地として機能させる為の大規模な生産施設を造り上げるというソレにかかりっきりだとか。
 その所為で、唯依もここ二ヶ月ほど、ロクにお話する機会も無い程なのです。

 真理亜叔母様が仰るには、やはり帝国上層部に居る反枢木の方々が、色々と妨害を仕掛けて来ており、それを排除して計画を進めるのにご苦労されているとの事でした。

『まあ、あの子にしてみれば、これも計算通りなんでしょうけどね』

 とか、最後には笑って誤魔化していましたが、やはり心配です。
 お身体とかを、壊されなければ良いのですが……

 ………ちなみに、ここ二月程で、政治家の方が三人ほど体調や年齢を理由に職を辞し、官僚も次官クラスが二名、局長クラスが五名ほど相次いで辞めたそうです。

 何故、そんな事を唯依が知っているかというと、時折、ルル兄様が、何故か高笑いを上げて読んでいる新聞を、後からこっそり見てみると、ごく小さな扱いですが必ず載っていた辞職・辞任の記事の合計がそれだったのです。



 ………唯依は、何も見ていません。
 見ていないったら、見ていないのですっ!





○西暦一九九〇年十一月五日

 相変わらずルル兄様はお忙しい日々が続いています。
 ここ何日かは、朝のご挨拶くらいしかできません。

 はぁ……憂鬱です。

 勉強や稽古、習い事にも今ひとつ身が入らない日々です。
 ……こんな事ではいけないと思いはするのですが。

 真理亜叔母様は、お友達と遊んで気晴らしでもすればと勧めてくれますが、元々、唯依は人付き合いの良い方ではありませんし、その所為か、それほど親しい友人とかも居りません。
 それでも、それなりに級友との付き合いは有ったのですが、ここの所、何故かよそよそしいと言うか、壁を感じるというか……
 こちらから話しかけても、あまり相手にされない事が多かったりします。
 その為、何となく学校にも居づらい雰囲気があって、篁の家か、枢木のお屋敷で、ボォ〜〜っとしている事が多くなっていました。



 はぁ……本当に憂鬱です。





○西暦一九九〇年十一月七日

 ………なんと書けばいいのか。
 なにを書けばいいのか………

 どうも唯依は、イジメというモノに遭っている様です。
 ここ最近よそよそしかった級友達ですが、ついに何を話しかけても全く反応してくれなくなってしまいました。
 まるで唯依など居ないかのように、空気の様に無視されるのです。

 それは以前、叔母様が冗談交じりに教えてくれたイジメそのもの出来事でした。
 よくよくコレまでの日々を思い返してみると、何となくですがクラス全体に唯依を排斥するような空気が、ジワリジワリと広がっていたような気もします。

 ただ正直、原因にサッパリ思い当たる物がありません。
 唯依は、何かおかしな事をしたのでしょうか?
 何かの誤解だと思うのですが……

 少しだけ、少しだけ、不安が募ります。
 本当に、どうすれば良いのでしょう。





○西暦一九九〇年十一月十五日

 ………悔しいです。
 本当に、本当に悔しいです。

 今日まで、相も変わらず無視される日々が続いていました。
 こちらから積極的に話しかけても、全く無視されるというのは正直かなり堪えます。
 何よりも、その事を愉しむかのような空気が、教室内に蔓延している事が心を削るのです。
 そのような心根の方達が、唯依の級友であるという事実が、悔しくて悲しくて堪りませんでした。

 それでも、今日まではジッと我慢して耐えてきました。
 唯依が諦めず、誤解を解く努力を続ければ、いつか報われると信じて。

 でも、その期待も砕けました。
 今日、木っ端微塵に。

 ……帰り際、級友の一人が珍しく唯依に声を掛けて来ました。
 何でも担任の先生が呼んでいるとの事。
 特に身に覚えはありませんでしたが、とにかく行ってはみたのです。
 すると職員室に居られた先生は、そんな覚えはないとのお返事。
 首を捻りながら教室に戻ってきた唯依が見たのは、ひっくり返ったカバンと床に散乱した中身。
 明らかに踏まれた痕のあるそれ等を、唯依は呆然と見ている事しか出来ませんでした。

 その後の事は、良く覚えていません。
 ただ正気づくと、家の自室の布団の上で涙を流している自分に気付きました。
 悔しくて、辛くて、悲しくて、流れる涙を、唯依は止める事ができません。

 ……兄様、ルル兄様。
 お会いしたいです
 お声が聞きたいです。

 唯依は、唯依は………挫けてしまいそうです。





○西暦一九九〇年十一月二十日

 ふ……ふふ……ふ……

 この想いをなんと言えば良いのでしょう?
 我が胸の内に滾るドス黒いナニかを……

 いえ、分かっています。
 分かっているのです。
 これがナンなのか等という事は。

 思えば、今日の朝、登校した時から妙な気配は感じていたのです。
 何かを期待するような、暗い空気を。

 これまでの経緯から、まさか直接仕掛けては来るまいと油断していた唯依も愚かでした。
 どうやら唯依が、我慢に我慢を重ねた事で、相手を悪い意味で調子づかせてしまった事に気付かなかったのですから。

 油断のツケは、直ぐに唯依に襲い掛かりました。
 何となく厭な空気を感じながら、自分の席に着き……そのまま後ろへ無様に倒れるという形で。

 突然の出来事に呆気に取られる唯依の耳に、クラス中から囃したてる声が聞こえます。

 ―― ブタ、ブタ、子ブタ〜〜と。

 唯依の椅子が座った途端に壊れた事を。
 それが、それが……唯依の体重の所為だと揶揄している事に気付いた瞬間、目の前が怒りで真っ赤に染まりました。
 周囲から音が消えた赤い視界の中、何故か三人だけ色が着いている女の子が居ました。
 その瞬間、唯依は気付きました。
 彼女達が犯人だと。

 握り締めた手の平に爪が食い込み、僅かに血が滲みました。

 ……もし、もしあの時、担任の先生が来るのが後三十秒遅かったなら、間違いなく唯依は彼女達に殴りかかっていたでしょう。
 そして、そして……大変、不愉快ですが、一方的に唯依が悪い事になっていた筈です。
 残念ながら、あの時、あの場には唯依の味方は誰一人として居なかったのですから。
 そう先生さえもです。

 朝礼の為にやって来た先生は、思わぬ騒ぎに何事かと問い質してきたので、誰よりも早く唯依が答えたのでした。
 これまでの経緯も全て含めて。

 ですが、話を聞いた先生は、他の人達にも問い質します――唯依の言う事が事実かと。

 ……結果は、考えるまでもありませんでした。
 唯依以外の全員が、唯依の言葉を否定した結果、結局、誰もお咎めなし。
 それどころか、証拠も無しに級友を疑うなど恥ずべき事と、唯依の方がお小言をくらう破目に………



 ……良いでしょう。
 良く分かりました。
 証拠が必要というなら、動かぬ証拠を突きつけましょう。

 この喧嘩、最高値で買って差し上げます!
 そして唯依を子ブタと罵った事、必ず後悔させてみせましょう!

 だいたい唯依くらいの年代は、多少、ぽっちゃりしていた方が良いのです。
 真理亜叔母様も言っていました。
 子供の頃から痩せていると、成長したらガリガリの洗濯板決定なのだと!

 だから、唯依は、唯依は……決して、子ブタなどではありません!





○西暦一九九〇年十一月二十四日

 何と言うか、事態は思わぬ結末を迎えました。
 事実は小説よりも奇なりとでも言うべきでしょうか?

 あの日から、とにかく動かぬ証拠を掴むべく唯依は動き出しました。
 とはいえ、そうそう簡単に尻尾が掴めるとも思いません。
 なにせ敵はクラス全て、対して味方は皆無。
 物量に差が有り過ぎて勝負になりません。

 ですが、正攻法がダメなら搦め手から攻めれば良いだけです。
 戦力差が大きいなら、罠を張って嵌めれば良いのです。
 それがルル兄様の教えでもありました。

 故に数日は、相手を油断あるいは増長させる為、何もしないで過ごします。
 但し、相手にも付け入る隙を見せる事無く。
 妙な小細工が出来ないよう教室内に私物は置かず、いつも机の中も空っぽ。
 これで当面のチョッカイは避けられると踏み、事実、その通りとなりました。

 思い返せば、これまでの嫌がらせも、全て偶然、あるいは唯依の不注意と言い張れる事ばかり。
 ある意味、狡猾とも言えますが、逆に言うと、そう主張できない状況で仕掛ける度胸が無いとも言えます。

 結果、ここ数日は、奇妙な平穏が続いていました。
 ですが、逆に言うなら、そろそろ向こうの我慢の限界とも言えます。
 だからこそ、今日、唯依は罠を仕掛けたのです。
 今日が唯依の習い事の日であるというのは、クラス内の大体の人間が知っているのですから。
 放課後になり、そのままそそくさと帰ります。
 いえ、帰るフリを見せ付けました。
 習い事の先生には申し訳ないですが、本日はお休みとさせて頂いたのです。
 そのまま唯依は、教室から少し離れた人気の無い場所で時を待ちました。
 正直、クラス全員が積極的に協力していたりするとお手上げでしたが、流石にそれは無いと踏んでおり、そしてそれは正解でした。

『群集は扇動者の尻馬にアッサリと乗るが、逆に、積極的に協力するのは一部に留まるものだ』

 とは、何かの折に兄様が教えてくれた事です。
 流石はルル兄様と感心しながら、三十分ほど間を置いた唯依は、こっそりと無人になった我が教室へと戻りました。
 最初に自分の席を調べて、特に小細工されていない事を確認します。
 問題ない事を確認し、ホッと一息ついた唯依は、速やかに教卓の下へと潜り込み、機を待ちました。

 ――さて、どうなるか?

 胸の内で、そう呟きつつ、本音は少し不安でした。
 これが空振りに終わったら、また神経にヤスリを掛けられるような日々が続く訳ですから。
 ですが、兄様も父様も、今が大変な時、頼る訳にはいきません。
 なんとしても、唯依の問題は、唯依自身の手で決着をつけてみせます!

 そう心に誓っていた唯依の耳に、微かな物音が聞こえました。
 ドアをソロリソロリと開ける音でした。
 教卓の陰からそっと覗いてみると、教室の後ろのドアが開き、そこから三人分の人影が入り込んできます。

 彼女達です。
 あの時、唯依が確信した通り。

 二人は唯依と同じ武家の出で、同じ山吹の家柄。
 残りの一人は、帝国軍の将官の娘とか。
 正直、殆ど話したことも無く、恨みを買う覚えなどサラサラ無かったのですが、今は、そんな事を気にしている場合ではありませんでした。

 彼女達が、忍び足で唯依の席へと向かうのを、固唾を呑んで見守ります。
 やがて、唯依の席の周りに座り込んだ彼女達が、何かを始めました。
 それと同時に、唯依も右手に構えた物のスイッチを入れます。

 父様の部屋から、内緒でお借りしてきたビデオです。
 申し訳ありません父様。

 微かな駆動音が鳴り、事態の一部始終が記録され始めました。
 そのまま五分ほど経ったでしょうか。
 彼女達は、細工を終えたらしく立ち上がりました。
 小波のように楽しげな笑い声が聞こえてきます。

 唯依の中で、冷え固まっていたナニかが、ゆっくりと融け出していくのを感じました。
 そして気付くと、唯依は教卓の陰から立ち上がり、彼女達に声を掛けていました。

 ―― 何がそんなに面白いのか、と。

 ギョッとした様子で、彼女達は唯依へと振り返りました。
 同時に唯依も、内心、大慌てです。

 本来なら声を掛けるつもりなどなかったのですから。
 このままやり過ごし、証拠のコピーを取った上で、しかるべき筋から学校へ提出すれば済んだのです。
 それなのに………どうやら、自身が思った以上に怒りに囚われている事を自覚せざるを得ませんでした。

 ――何たる未熟。

 そう己自身の至らなさを噛み締めながら、それでも彼女等の反応に注視します。
 対して彼女達はと言うと、真っ青な顔で唯依を、いえ、唯依の右手に握られたビデオを見つめていました。
 どうやら一部始終を、撮られてしまった事に気付いた様です。
 一瞬、目線を合わせた三人は、次の瞬間、何かを決めたように頷き唯依へと向き直りました。

 ああ、そう来ますか。

 唯依は、胸中でそう呟きました。
 各々が手にした道具― ヤスリに金槌、後はドライバー ―を構えて、唯依へと向けてきます。
 対する唯依も、右手のビデオを左手に持ち替え、半身で構えました。

 運足、目配り、息遣い。

 ただそれからでも、相手の力量はある程度掴めます。
 武家の二人は、やはりそれなりの修練を積んでいる様子。
 対して、残りの一人は滅茶苦茶でした。

 唯依も片手が塞がってはいますが、これなら武家の二人が余程上手く連携しない限り、充分対処できます。
 そう安堵した瞬間でした。

『貴様ら、何をしている』

 鋭く堅い声が、互いの間に割って入りました。
 驚きと共に振り向いた先には、数名の上級生が立っています。
 困った事に、その先頭に居たのはルル兄様と犬猿の仲である月詠真耶でした。
 良く見ると真耶以下の上級生達は、週番の腕章を着けています。
 放課後の見回りと言った所のようですが、余りにも間が悪過ぎる状況に、唯依はしばし固まってしまいました。

 正直拙すぎる展開です。
 ルル兄様を毛嫌いしている月詠が、唯依に良い感情を持っているとは思えません。
 それを現すように、唯依を見るその眼差しは冷え冷えとしたものでした。

 そんな唯依と月詠の関係を悟ったのか、犯人達はこれ幸いとばかりにある事ない事喚き出し、唯依を非難し出しました。
 堪らず唯依も反論しますが、こちらを見る冷ややかな眼差しは変わりません。
 そして、双方の言い合いが途切れた所を見計らう様に、月詠は再び口を開きました。

『笑えんな、実に笑えん話だ』

 切り捨てる様な物言いに、唯依は悔しさに唇を噛み締めました。
 ここまで来て、また負けるのかと思うと、悔しさと無念さで目の前が真っ暗になりそうです。
 そんな唯依の視界に、勝ち誇った笑みを浮かべた彼女達が映りました。
 握り締めた拳が、ギリリッと軋みます。
 最早、我慢の限界でした。

『貴様らは分かっているのか?
 校内の備品を故意に破損させたのだぞ。
 器物損壊――これは立派な犯罪行為だ』

 唯依に『背を向けて』月詠が言い放ちました。
 一瞬、何が起こったか判らず、硬直した唯依の眼前で、犯人達がキョトンとした顔をしています。
 彼女達も、ナニを言われたのか理解できなかったのでしょう。
 そしてそれは、致命的な遅れとなりました。

 成り行きを見守っていた他の週番達が、その一言が合図だったかのように一斉に動きます。
 唖然としていた三人の少女達は、抗う事すら出来ぬまま、アッサリと押さえ込まれていました。

 一体、何がどうなったのやら……
 全く訳がわからず、呆けていた唯依を、チラリと一瞥した月詠は、つまらなそうに口を開きました。

『もう時間も遅い。
 篁は帰るが良い』

 そうぶっきらぼうに言い捨てると、真っ青になった生徒達を週番達に拘束させ引き摺っていきました。
 悲鳴とも哀願ともつかぬ声が、しばらく聞こえていましたが、やがてそれも途絶えます。
 予想外の成り行きに、しばし呆気に取られていた唯依ですが、誰も居なくなった教室にいつまでも残っている訳にも行かず、止むを得ず家へと帰ってきました。

 遅くなった事を心配していた父様にお詫びし、お風呂と夕餉を頂いた後、これを書いている訳ですが、本当に何が何やら……

 正直、混乱するばかりではありましたが、何となく一区切りが着いたような気がします。

 本当に、そうであって欲しいと思いました。
 とてもくたびれてしまいましたから……





○西暦一九九〇年十一月三十日

 本当に、結局、なんだったのでしょう?
 切実にそう思います。

 あの後、事態は完全に唯依の手を放れた為、詳しい事は良く分からないのですが、彼女達の親御さんが呼び出された事だけは確かなようです。
 ただ何故か、ご両親ではなく、母親だけがやってきたとの事。
 それ程の大事と捉えなかったのかもしれませんが、それはそれで面白くない話です。

 呼び出された親御さんと学校側の間で、どのような話し合いが持たれたのかまでは唯依に知らされる事はありませんでした。

 ただ誰にでも分かる決定的な変化はありました。

 件の三人の女子が、翌日、教室に姿を見せる事はなく、代わって担任から彼女達の転校が伝えられたのです。
 何でも、親御さんのご都合により一人は九州に、残りの二人は東京へと転校になったとか。
 あまりの急転回に、今回の一件が原因かと思い、後でこっそり担任の先生を問い詰めましたが、本当に親御さんのご都合との事。
 何故か、妙に怯えた様子でしたが、それだけに嘘を吐いている様にも見えませんでした。

 つまりアレですか。
 後、一日我慢すれば事態は収まったと。

 とすると、唯依のやった事は無駄だったのでしょうか?

 地味に落ち込みます。
 あの苦労が徒労だったとは……

 ……いえ、お忙しいルル兄様に余計なご心配を掛けず、唯依自身の手で事を終わらせられたのです。
 それだけでも意味があったのだと思います。
 というか、そうでも思わなければやっていられません。



 ふぅ……何はともあれ、これでイジメは終わりました。
 どうやらそれだけは確かな様です。

 あれ以来、無視されることも無く、妙な嫌がらせを受ける事もありません。
 正直、色々と分からない事も多く、気分が悪い点も多々あるのですが、取りあえずはそういう事で、納得するしかないようです。

 ……とはいえ、少しだけ気に入らないこともあります。
 何と言うか、アレ以来、教室内で妙な扱いを受ける様になりました。

 いえ、イジメとは違うのです。
 何と言うか、こう……妙に恭しい態度で接せられるのでした。
 級友はもとより、先生ですらも。

 本当に、一体、何がなにやらサッパリでした。
 ああ、本当に訳がわかりません。

 ……兄様、ルル兄様。
 唯依は、唯依は、一体どうすれば良かったのでしょう?















■欄外秘話『ある夜の彼と彼女の色気の無い電話』

『フム、そうか手間を掛けたな』
『別に貴様の為にやった訳じゃない。
 私自身、ああいった陰湿な真似が気に入らなかっただけだ』
『それでも感謝しよう。
 唯依が世話になったな月詠』
『……それでどうする気だ枢木?
 今回は私が介入して事を収めたが、あの手の連中は、ほとぼりが冷めたら、また同じ事を繰り返すぞ。
 ついでに言うなら、私ももうすぐ卒業だ。
 貴様の可愛い可愛い妹を、気に掛けてやる事は出来なくなる』
『問題ない。
 今回の一件の根は、こちらに在った。
 そして、それへの対処も完了した以上、同じ事は起こらんさ』
『どういう意味だ?』
『なに、オレの気を逸らしたい連中が居て、その内の三人がお前が捕まえた女生徒の父親だったというだけだ』
『……そういう事か。下種共が!』
『そういう事だ。
 まぁ既に報いはくれてやったがな』
『……貴様、何をした?』
『さてな。
 知りたかったら、明日の朝刊でも精読する事だ。
 記事の片隅位には載っているかもしれんぞ』
『チッ……この悪党が』
『最高の褒め言葉だな』
『切るぞ!』
『ああ、お休み。良い夢を』
『き、気色の悪い事を言うなぁ!』
『それは悪かったな』
『……貴様なぞ、貴様なぞ、悪夢に魘されてしまえ!』







-----------------------------------------

どうもねむり猫Mk3です。

トラブルメーカーの傍に居ると、どうしても巻き込まれる。
今回は、そんなお話でした。

題して『唯依姫、とばっちりをくう』

まあ、敵が多いルル様の傍に居るのは大変という事で。

それでは次へどうぞ。




押して頂けると作者の励みになりますm(__)m


<<前話 目次 次話>>

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.