キ☆チ★ク☆な、ご舎弟さま



前後編で終わらせるつもりが長くなり過ぎたので、
前中後編の三編構成に変更。

今回は、原作で悲運な最後を遂げた上総嬢メイン。
エロ甘な展開を、存分にご堪能下さい。


中編






◆Side:Kazusa

「ハァッ♡…フゥ……あぁぁぁ♡……」

 荒い吐息が、私の口の端から零れ落ちる。
 それと和する様に、滑る様な水音が鳴った。

 鳴らしているのは私自身。
 たっぷりと唾液に濡れた舌先が、明憲様の逸物の上をヌラヌラと這っていく。
 鼻孔に届く濃い男性の匂い、私の脳髄を痺れさせるソレを、はしたなくも鼻を鳴らして吸い込みながら、両脇から寄せ上げる乳房で、明憲様を挟み揉みあげる。

「アァァぁ♡……熱い……」

 無意識の内に零れ落ちる声。
 押し付ける乳肉を押し返す逸物の硬さと熱さに陶然としながら、半ば以上まで私の胸から突き出したソレを咥えていった。
 大きく張った先端は、私の口を一杯に広げてもまだ余る程で、含むだけでも一苦労しながら何とか納める。

 私の口の中一杯に広がる明憲様の感触。
 今も胸から感じる幹の鋼の様な硬さとは異なり、硬いのに柔らかいという不思議な触感が、絡みつく舌全体から感じ取れる。

 そのまま幹の部分を乳房で擦り上げ、揉み上げながら、亀の頭の様な先端への奉仕を繰り返す私。
 先端の割れ目から滲み出したヌメリを啜り上げながら、張り出したエラの裏をチロチロと舐めしゃぶっていく。
 このエラが、私の胎内を掻き回し、擦り上げる際に齎される強烈な悦びを、自然と思い出してしまった私。
 下腹部に宿る重く熱い感覚が、どんどん強くなっていく。

『はぁ♡……あぁぁ♡……もうすぐ……もうちょっと♡』

 すぐ後に訪れるであろうその時、この凶悪なまでに雄々しく逞しい逸物に貫かれ、身体の奥の奥まで征服される瞬間を、そして同時に齎されるであろう気が狂いそうな悦びを想像するだけで、私の身体の熱は更に上がっていった。

 そんなヒートアップする身体と心に引き摺られ、私の奉仕も更に熱を帯びていく。

 ほぼ身体全体を使い、長大な幹の部分を余す所無く乳房で擦り上げながら、しっかりと咥え込んだ先端を軽く甘噛みし、同時に舌先を割れ目へと捻じ込むと、明憲様の眉が僅かに寄った。
 苦痛では無く快感を示すソレを、上目遣いで見取った私は、更にチロチロと割れ目を弄る。
 舌先に感じる先走りの味が濃さを増し、その量も徐々に増えていった。

 僅かに息を荒くされる明憲様。
 その左手が私の頭に置かれ、サラサラと髪を撫でていく。
 それだけで、この方が私の奉仕に喜ばれている事が伝わってきて、それが更に私の鼓動を早くしていった。

「フゥ……はぁ♡……ふぅん♡……」

 私の昂ぶりを露わにする蕩けた声が口の端から洩れ、同時に口内から溢れた唾液が、たらりたらりと明憲様のモノを伝って滴っていく。
 滴り落ちた唾液は、明憲様のモノを擦り上げる私の乳房と絡み、白く泡立ちながらヌメリとなって滑りを良くしていった。

 私の胸の中、明憲様の逸物はヌメリを帯びてテラテラと黒光り、巨木に絡みつく蔦の様な血管が、ぷくりと浮き上がり陰影を濃くしていく。
 更に一回り太くなり、獰猛さを増した明憲様の『男』。
 これが私の『女』の中を侵し、蹂躙した時に味わった法悦の極みを否応なく思い起こし、クラクラしてしまった私。
 ジュクリと溢れ始めた淫蜜が、ショーツをヌチャリと濡らしていくのを感じ取る。

 ……もう我慢出来そうに無かった。

 口一杯に頬張った明憲様のモノを、舌先と口腔粘膜全て使い味わい尽くしながら、溢れ出る先走りを音高く啜り上げ、そのまま嚥下する。
 喉を滑り落ちていくソレを感じつつ、私は名残惜し気に明憲様のモノから口を離した。
 先端と私の唇の間に、透明な橋が掛かる。
 それを舌で舐め取りながら、恋しくて、愛しくてたまらない御方を見上げた。

「あ……あ♡…あき……のり様ぁ♡……」

 喘ぎ混じりに名を呼び、はしたなくもおねだりしてしまう私。
 その間も、明憲様のモノを挟み、擦り上げる乳肉の動きは止まらない。

 擦れ合う二つの肉の狭間から、ニチャニチャと響くいやらしい音。
 絶え間なく続くそれに、呼吸と鼓動を荒げながら、ひたすら待ち続ける私に向けて、クスリと小さく笑みを零しながら明憲様は仰った。

「上総、来るが良い」

 その一言で、弾ける様に立ち上がった私は、いそいそと残っていたタイトスカートを下す。
 更にショーツもろともストッキングも脱ぎ捨てると、その身を覆うのは制服のYシャツのみというあられも無い姿になった。
 一瞬だけ、羞恥に頬が赤くなるが、私の動きは止まらない。
 いや、止まれなかった。

 昂ぶり、餓えた衝動が、武家の娘としての分別を上回り、私は恥じらいも無くシート上に座す明憲様の上に乗る。
 広げられた私の太股のすぐ下で、天を指す様に屹立する明憲様自身。
 逞しく、雄々しいソレに、私の秘裂が擦りつけられるや、にちゃりとイヤラシイ音がした。

「ああぁぁぁ……♡」

 思わず深い吐息が漏れる。
 擦れ合う粘膜から、ピリピリとした刺激が伝い、私の胎内から淫らな蜜が零れ落ちていった。

 だが、そのまま一気に腰を落とそうとすると、不意に添えられた明憲様の両腕が、その動きを阻害する。
 それに思わず目を見開く私の前で、明憲様は楽しそうに微笑んでみせた。

 ――ああ、これは。

 明憲様が、何を望んでいるかを悟り、同時に頬が燃える様に熱くなった。
 羞恥心など忘れてしまったかの様な淫らな振舞いをしてしまった私でも、そうする事を思わず躊躇してしまうが、そうしなければきっとこのまま……

 明憲様の両腕にしっかりと抱え込まれた私の腰が、もだえる様にユラユラと揺れる。
 触れるか触れないかの境界で、明憲様のモノを求める様に、私のお尻が淫猥なダンスを踊っていた。
 時折、擦れる度に走る感覚が、私の脳を煮融かしていく。

「あぁぁ♡……はぁ♡……ああぁぁぁぁぁ……」

 今にも腐り落ちる果実の様な甘く爛れた声が、私の唇から零れ落ちた。

 もう……もう……上総は……

「く……さ……あぁ♡」

 落ちる。堕ちる。オチていく。

「……だぁ♡……い……」

 また、この方に貶められる。

「くだ………いぃぃ♡……」

 誇り高き武家の息女から卑しい牝へと……
 牡を求めるだけの淫らな牝へと……

 ……堕とされる。

 でもそれは当然の事。
 これが、私が犯した罪に対する罰。

 だからもう……

「くださいぃぃ!
 上総にくださぁ〜い♡
 明憲様の太くて逞しいモノを、上総にぃ〜♡、上総にぃぃぃぃっ!!」

 屈服し、隷従した淫蕩な牝の叫びが、私自身の絶叫が、耳奥まで響いた。
 そして――

「かっ!?……はっ………あぁぁぁぁぁ♡」

 目の前が真っ白になる。
 一気に押し出された空気が、苦悶と歓喜の悲鳴となって迸った。
 躊躇なくこの身の奥深くまで貫いた肉の槍が、私を串刺しにし、明憲様の膝上で晒し者とする。

 失われた酸素を補う様に喘ぐ私。
 だがそれすらも、明憲様は、許しては下さらなかった。

「あっ!……はぁ♡……ひんっ♡」

 荒々しく突き上げてくる衝撃と、それに伴う眼も眩むような快感。
 それが私の身体を、心を、滅茶苦茶に掻き回していく。
 私の身体を知り尽くした明憲様の責めは、ただ激しいだけでなく、微妙な緩急をつけながら私の秘肉を自由自在に貪り、はしたない悲鳴を絞り出させていった。

「ひぅ♡……あぁぁぁ♡……ひぐぅぅぅっ!?」

 敏感過ぎる箇所を、硬くて柔らかい穂先で突き上げられ、或いは、大きく張ったエラで擦り上げられる度、抑え切れぬ悦びが発情しきった喘ぎ声となって響く。
 お預けを喰らっていた状態から、一気に責め抜かれた私は、瞬く間に押し上げられ、いやらしい潮を吹きながら、その身をビクンビクンと波打たせた。

「あっ♡…あっ……あああぁぁぁぁ〜〜♡」

 ポタポタと床を打つ水音が、ひどく遠くに聞こえた。
 強引に忘我の域へと押し上げられた私は、全ての骨を抜かれてしまった様な脱力感に囚われたまま明憲様へと倒れ掛かる。

 ぐったりとした私を貫いたまま抱きとめて下さった明憲様。
 その手がゆっくりと私の髪を梳るのを感じながら、私は深い安らぎを覚える。

 嵐の谷間の僅かな凪の様に、静かに流れる時間の中、明憲様の腕の中で荒れた呼吸を整える私。
 意識が徐々にクリアになる中、明憲様を迎え入れた私自身が、ヒクヒクと痙攣している事に気付く。
 まるで、もっともっと催促するかの如く、ヒクつき、絡みついていくソレに、私の頬がカッと熱くなった。

 嗚呼、なんと――

「いやらしいのだな。 そなたは」
「――っ!?」

 私の内心を見透かした様に、明憲様が嗤う。
 嗤って、そして……

「上総よ、安心するがいい。
 そなたの望みを、叶えてやろう」

 そう言って、とてもとても綺麗な笑顔で嗤った明憲様は、脱力していた私の両腕を捕えるとそのまま後ろ手に回す。
 そして床に落ちていたネクタイを、爪先だけで器用に蹴り上げると、私の腕を捕えているのとは別の手で掴んだ。

 拘束された私の両腕と明憲様の手に在るモノ。
 それだけで、この方が何をする気なのかを悟った私の頭から一気に血の気が退いていく。

「あぁぁぁ………」

 恐怖に塗れた吐息が漏れる。
 額にじっとりと脂汗が滲んでいくのを感じた。

「ああ……あぁぁ……お許しを……お許しを……」

 壊れたレコードの様に繰り返し許しを乞う。
 だが、そんな私の懇願も虚しく、拘束された両手首にシュルリとネクタイが巻きついた。
 あの時の恐怖と絶望が、ヒシヒシと蘇って来る。

「……ああぁぁ……止めて…やめてぇ……」

 そう言いながら、必死にイヤイヤをしながら身じろぐ私。
 だがガッチリと抱き留められたこの身は、明憲様の腕から逃れる事は出来ず、ただ背後から聞こえるシュルシュルといった音だけが、嫌になるほど鮮明に聞こえた。

 やがて、グッと締め付けられる感覚と共に、私の腕が動かせなくなる。
 明憲様がネクタイで、私の両手首を戒めたからだ。

 粘つく汗が額に滲む。
 きっとその時の私の顔は、紙よりも白くなっていた事だろう。
 荒い呼吸の中、恨みがましい眼で明憲様を睨む私に向けて、あの方はクスリと笑って見せた。

 そして………

「ひぐぅぅぅぅぅっ!!」

 世界が真っ白に染まった。
 ただ深々と私の深奥を犯した逞しい肉の槍の感触だけが、私の全てを満たしている。

 ただ一突き。
 たった一突きだけで、私は先程よりも、更に深く気をやり、果てた。
 秘裂から噴き出した淫らな液が、ピチャピチャと床を打つ。
 息すら満足に出来ぬまま絶頂の余韻に震える私。
 そんな私の耳元で、明憲様が優しく囁く。

「我を見よ、我だけを感じよ。 上総よ」

 その一言で世界が色を取り戻す。
 ぼやけていた輪郭が元に戻り、精悍な青年の顔になった。

 ドクンと私の胸が鳴る。
 あの時と同じ様に。
 死への恐怖に絶望し、そして終生の恋を得たあの夜の様に。

 冷たくなっていた筈の身体が、燃える様に熱くなっていく。
 明憲様の男根を咥え込んだ私の媚肉が、痙攣するように激しく震えた。
 腰がもどかしげに揺れて、お尻が淫猥に蠢く。

 もっと、もっと、もっと――貪欲なまでに欲する衝動が私の中で渦を巻く。

 それに応える様に、明憲様が、ゆっくりと私の中で動き出した。

 媚肉を引き裂かれる度に、甲高い嬌声が口を突き、張り出した部位が肉襞を擦り上げる毎に、溢れ出る蜜が私達の下肢を濡らす。

 もはや全てが私の手の内から離れていた。
 この身も、この心も、全て。
 あの夜、壊れてしまった私の一部、それが狂乱の種となって、私を狂わせる。

 ――あの日、あの初陣の夜、私に心理的外傷(トラウマ)として刻まれた死への恐怖。

 それは四肢を拘束される事で、今でも顕在化する。
 それほどまでに恐ろしかったのだ。
 四肢を動かせぬまま、生きたまま食い殺されるという恐怖は。

 私がソレを知ったのは、私が罪を犯した日。
 親友である唯依が、明憲様の許嫁となった事を知ってから三日後の事。

 同じ日に出会い、同じ時に恋した方が、彼女のモノとなった事を知った時、私は呆然と立ち竦む事しか出来なかった。
 真っ赤な顔で幸せそうに婚約の報告をする唯依に、心ここに非ずの状態のまま取り繕った笑顔で受け応えした事だけは、今でも妙にはっきりと覚えている。

 初陣で下肢を失い、擬似生体で補いはしたものの衛士としては再起不能となった私。
 それでもCP将校として再起を図れたのは、少しでも明憲様に近づきたかったからだった。
 だが、それこそ血の滲む様な努力の果てに、斯衛軍のCP将校として明憲様の部隊の担当に配属された矢先の出来事に、私は目の前が真っ暗になる様な思いを味わう破目になったのだ。

 正直に言えば、元々、叶う恋とは思っていなかった。
 私より家柄が上の唯依ですら、身分違いの叶わぬ想いと諦めて、胸の内にしまっている事を薄々知っていた以上、私の方に、その芽があるとは到底思えはしない。
 そうやって自身を慰めていた私にとって、同じく叶わぬ想いを抱いていた筈の唯依が、その想いを叶える機会を得た事は、驚きであり……そして何より、嫉妬を抑える事が出来ない事でもあったのだ。

 互いを分けたのは、家柄の差。
 『山吹』である唯依ならば、先方が望みさえすれば、あの方の妻となる事が許されたのだ。
 既に消えたと思っていた家柄へのコンプレックスが、否応なしに私の中で息を吹き返す。

 だからだろう、私の心の内に暗い焔が灯ったのは。
 唯依に許されるなら、私にも……そんな思いが、私の背を押し、暴走させたのは。

 三日後、私は唯依の事で大事な話があると嘘を言い、明憲様を山城家の別邸へと呼び出した。
 人払いをし、ただ一人待つ私の前に、明憲様が来られたのは夕刻の事。
 来て早々、挨拶も疎かに、唯依の事を訊いて来る明憲様に、私の中に宿った焔が黒々と燃え上がった。

 いきなり立ち上がり、浴衣を脱ぎ捨て、産まれたままの姿となった私を前に、絶句する明憲様へとあの夜より抱き続けた思いの丈をぶつけた私は、涙ながらに願った。

 ――ただ一夜、今宵、一夜だけ、妻にして欲しい、と。

 本当にそれだけで良かった。
 それだけで、この想いを飲み込み、笑って唯依を祝福出来る。

 そんな一念のみで懇願した私に、明憲様は静かに首を振って見せた。
 首を振って、そしてはっきりと言われたのだ。

 ――唯依を裏切れない、と。

 その瞬間、私の中を満たしたのは、絶望と安堵、そして羞恥。

 想いが届かぬ事に絶望し、親友を裏切らずに済んだ事に安堵し、そしてその裏切りそのものを死にたくなるほど恥じた。
 床の間に飾られていた刀掛けの脇差に飛びついたのは、衝動以外の何物でもなく、そしてそれ故に、私は躊躇う事無く自身の喉を貫こうとした。
 もしあの時、明憲様の動きが、あと一瞬だけ遅かったなら、私は間違いなく死んでいただろう。
 死んでそして、親友の許嫁を寝盗ろうとした挙句、拒まれて自害した馬鹿で愚かな女として醜態を晒していた筈だった。

 とはいえ、その時の私に、そこまで考えが回る余裕など微塵も無く、錯乱し暴れるだけ。
 そして、業を煮やした明憲様が、落ちていた浴衣の帯で私の両腕を縛り上げた瞬間、破滅のスイッチが落ちた。

 私の魂に刻まれた暗くて深い傷。
 心の芯の芯にまで至るその傷が、露わになった瞬間だった。

 狂った様に泣き叫びながら、怯え震えた私。
 あの夜、砕けた瑞鶴の管制ユニット内で味わった絶望の光景が、私の中でフラッシュバックし、私を狂乱の底へと叩き落としたのだ。
 衛士として再起不能とされた事に、不思議なほど動揺しなかった理由を、私はその時、ようやく理解する。
 自分が、当の昔に『壊れて』いたのだと……

 そんな自身への更なる絶望と拭い難く根差した死への恐怖。
 重なり続ける精神への負荷に、私の心は罅割れていくだけ。

 もし、あのまま行ったなら、きっと私は完全に壊れていただろう。

 そんな私を、救って下さったのは、やはり明憲様だった。
 死の恐怖に狂乱する私を、明憲様は抱いたのだ。
 激しく、荒々しく、そして優しく。
 ほぼ一晩中、私の狂態が鎮まる時まで抱き続けて下さった。

 死の恐怖の裏返しである生への渇望。
 在り続けたいと願う生物の原初の本能に根差す性行為(SEX)で、強引に私を正気の側に繋ぎ留めたのである。

 正気に戻った後、随分と無茶をすると呆れたモノだったが、困った様な表情で頬を掻く明憲様を見ていたら、それも言えなくなった。
 何より、結局の所、明憲様の取った手段が、結果として正しかったと、自分でも無意識の内に理解していたのだろう。
 私は、少しだけ、本当にホンの少しだけ、自分が元に戻った事を感じ取っていたのだから……

 そしてそれは、明憲様にも分かっていたのだろう。
 紆余曲折の末に、不承不承ながらも唯依の許しを得、妾として明憲様に抱かれる様になった私。
 そんな私を、明憲様は、時たま腕を縛って抱かれるのだ。

 無論、今でも怖い。
 腕を縛られ、自由を奪われると思っただけで冷や汗が出るほどに、未だ、死への恐怖は私の中に深く食い込んでいる。

 だが、生と死は同じコインの裏表。
 死という影が強くなるなら、相反する生という光もまた強くなる。
 そして『生』は『性』へと通じていた。

 両腕を拘束される恐怖に蒼褪めながら、明憲様のモノを咥え込み淫奔に狂い咲く華――それが私。
 死の恐怖は、裏返しである私の性感を極限まで高め、狂わんばかりの悦びの海で溺死さる。

 ……そう、今この時の様に。

「あぁぁぁ♡
 突いてぇ、もっと突いてください♡
 上総のぉ♡…上総のナカを、明憲様の逞しいモノで突き破ってぇぇぇ♡」

 発狂寸前の快楽の中、卑猥な言葉を躊躇う事無く口走る私。
 後で我に帰れば、憤死ものの醜態と分かっていても、情欲に狂った私の口は止まらなかった。
 そんな私の耳元で、再び、明憲様が囁き告げる。

「良いのか上総、そんなにも乱れて?
 唯依が、呆れた顔で見ているぞ」
「―――っ!?」

 欲情に曇った私の頭に、冷や水が浴びせ掛けられる。
 不自由な身を必死で捻り、背後を見た私は、こちらを凝視している親友を見出し、絶句した。
 荒い息を堪え、真っ赤な顔をした唯依は、まっすぐにこちらを、私と明憲様を見つめている、否、睨んでいる。
 最愛の方との情事に溺れ、彼女の事を忘れていた私の中で、麻痺していた羞恥と理性が甦り――

「あぁぁぁぁぁぁっ!?」

 ――瞬時に潰された。

 いやらしく粘ついた水音と共に、私の身体が持ち上げられ、圧倒的な迫力をもって私の中を征服していた明憲様の逸物の感触が抜けていったのだ。
 反射的に身を捩り、失われたモノを取り戻そうとする私を、逞しい双腕が押さえ込み、そのまま向きを変えられてしまう。
 熱を帯びた眼差しで、こちらを見やる唯依へと、私は強制的に向き合う形にされてしまった。

 私の中で、罪の意識が湧き起こる。
 たとえ今は許された事とはいえ、私が彼女の許嫁を寝盗ろうとした過去は変わらないのだ。
 なにより、つい数瞬前まで、その許嫁に抱かれ、媚態の極みともいえる姿を晒していた事が、さらに私の引け目を大きくする。

「あ……唯……依?」

 思わず零れた声に、彼女の眉がヒクリと動いた。だが……

「はうぅぅうぅぅ〜〜♡」

 蕩けきった嬌声が、私の口を突く。
 再び、私の中に潜り込んできた明憲様自身が、深々とこの身を抉っていったからだ。

 そのまま息継ぐ間すら与えずに、私の媚肉を抉り貪る動きに、悲鳴とも嬌声をも付かぬ音の羅列だけが私の喉を鳴らた。

「あぅ……ひんっ♡……くぁぁぁぁ!?」

 背面座位の姿勢を取らされ、両胸を荒々しく揉みし抱かれながら、明憲様の膝の上で翻弄される私。

 息すらまともに出来ず、頭が真っ白になっていく中、時に深く、時に浅く、捩じる様な動きと共に、私の胎内を掻き回す明憲様の男根の感触と、その身を揺らせる唯依の顔だけが鮮明になっていく。

「あ♡…あ♡……はぁっ!………ひぅぅぅ♡」
「うっ♡…く♡……あぁっ!………はぅぅぅ♡」

 甘く蕩けきった嬌声と、必死に押し殺そうとしている歓喜の悲鳴が重なり合う。
 私の媚肉を引き裂き、突き上げる動きに合わせる様に、唯依の身体も震えている事に、私はようやく気付いた。
 官能にぼやける眼を、必死で凝らして見ると、彼女の身体が震える度に、シートに座ったお尻がもどかしげに揺すられている。
 ある予感の下、激しい突き上げに喘ぎながら下を見ると、私の胸を弄ぶ明憲様の右手、その指先に見覚えのあるリモコンが抓まれているのが見えた。

「……あぁ♡……あ……あき…のり様ぁ♡……」

 熱く掠れた声で、途切れ途切れにそう言いながら、必死に首を捻ると、ようやく気付いたかといった表情で、楽し気に笑う明憲様のお顔が見える。
 それだけで、私にも全てが通じた。

 ――ああ、なんて、ひどい方だろう。

 この方は、私を抱きながら、同時に唯依を犯していたのだ。

 ――ひどくて、憎くて。

 私を犯し貫きながら、お尻に仕込んだ淫具で唯依をも抱いていたのだ。

 ――愛しい御方。

 胸中で、そっと呟く私。
 憤りよりも、妬みが多い呟きは、きっと私の偽らざる本心だったろう。

 無論、私達を弄ぶ事に対する憤りも確かにあった。
 だがそれ以上に、いま肌を合わせている私だけを見てくれない事への不満と、私を抱いている最中にも、この方に抱かれ続けている唯依への嫉妬が勝ったのである。

 悔しいが、許嫁という立場を抜きにしても、この方は唯依を好んでいた。
 彼女の生真面目で一生懸命な性格や真っ直ぐな心根などの内面を、好ましく思っているのは間違いない。
 だが同時に一人の女性としての肉体的な魅力――その涼やかな美貌や豊麗な胸、そして柔らかくボリュームたっぷりなお尻などにも、男として強く惹かれている筈だ。
 その証拠に昨晩も、私の眼の前で、唯依の真っ白なお尻を抱え込んだまま激しく攻め立て、身も世も無い程によがり狂わせていたのだから。

 残念ながら、顔はともかく、胸や、お尻の豊かさでは、唯依に一歩及ばないのは事実だ。
 そのくせ腰の細さや足首の締り具合は、私以上というのだから、アレは反則というものだろう。

 だがそれでも、私は負けを認めるつもりは無かった。
 妻と妾という世間的な立場の差はあろうとも、女としては負けたくない。
 いや、親友であり、そしてライバルであるからこそ、この方の寵を争う場でも後れを取りたくは無かった。

 ――だからこそ、今だけは、私だけを見させたい。

 そんな想いと共に、私は明憲様をより深く受け入れる。
 必死に身を捻りながら、背後で私を抱きかかえている明憲様と眼を合わした。

 どちらからともなく、唇が寄り合い、そして合わさる。
 絡み合う舌と舌の奏でる水音と、留まる事無く私の体奥を貪り続ける濡れた音が、絡み合い響き合った。
 そのまま明憲様の抽送に合わせて腰を振り、お尻を揺らし続けると、微かな呻きがその口から零れる。
 私の乳房を弄ぶ両手にギュッと力が籠り、その動きが止まった。

 更に激しく腰を振る私。
 汗に塗れたお尻が、明憲様の逸物を秘所に咥え込んだまま、その膝の上で荒いリズムと共に跳ねる。

「……ぁぁああぁ♡……私を見てぇ♡……私だけを……いまだけはぁ♡」

 そう懇願しながら、明憲様の上で淫奔な尻振りダンスを踊る私。
 擦れ合う粘膜の齎す激しい快感が、この身を押し包む愛しい人の温もりと匂いが、私を際限なく昂ぶらせていく中、必死で頂きに至ってしまう事を耐える。
 今まで以上の昂ぶりに、このままイってしまえば、しばらく戻って来れないと直感的に悟っていたからだ。

「…アァァぁ♡……あきのり……さまぁ♡」

 哀れっぽくも淫らな声が、私の喉を通り抜けていく。

 ――発情し切った牝の声が。
 ――牡を求めてやまぬ淫らな声が。

 そんな自身のはしたなさに、全身を羞恥の色で染めながらも、明憲様を求め続ける私。
 ジュプジュプと泡立つ音が一際激しく響き、私の左胸に明憲様の指がきつく食い込んできた。
 絞り出される様に私の乳房が尖り、その先端が痛いほど硬く熱くしこっていく。
 同時に、腹を撫でる様に降ろされた明憲様の右腕が、私の下腹部をまさぐる様に動き出し、そして――

 ――カランと小さな音が鳴った。

 妙に耳につくその音に惹かれ、荒い呼吸を繰り返しながら私の視線も下を向き……固まる。

 先程まで、明憲様の右手にあったリモコンが――
 私を抱きながら、唯依のお尻を犯していた淫具を操るソレが――

 ――無造作に床に転がっていたのだ。

「あぁぁぁぁぁ……」

 安堵とも、歓喜とも取れる吐息が、私の口から零れ落ちる。
 チラリと目線を変えてみれば、肩で息をしつつ、俯く唯依が居たが、先程までの共鳴磨るかの様な動きは既になかった。

 私の中に、深い満足感と充実感が満ちていく。
 そして同時に、それを煽る様な激しい攻めが開始された。

 パンパンと激しく肉を打つ音と共に、私の肢体が嵐の海の小舟の様に激しく揺さぶられる。
 怒涛の如き抽送に、胎内を激しく泡立てられながら応ずる様に、私も黒髪を振り乱しながら激しくお尻を振った。

「ふゎぁぁ♡……はんっ!……ひぅ♡」

 吐く息そのものがピンク色に染まっていく様な錯覚。
 淫靡な艶声を撒き散らしながら、私は明憲様のモノを必死に締め上げ、ご奉仕する。
 そうするとご褒美が貰えると、本能的に悟っていたから……

「あぁぁ!……胸ぇ♡……オッパイがぁ♡……ああぁぁぁぁ!」

 乳肉を揉みし抱く力が更に増し、同時に伸ばされた親指が、しこりきった乳首を弄り、乳房の中に押し込む様に押し付ける。
 眼の奥に火花が飛び散るのを感じながら、弓なりに反る私の身体。
 それを待っていたかの様に、自慢の髪を掻き分けて、明憲様の舌が私のうなじを這っていく。

 自らの弱点を、優しく責められた私の身体が、ビクビクと震え出した。
 そして溢れ出る蜜に指をふやかせながら、私の下腹部をまさぐっていた明憲様の指先が、ついに私の最も敏感な個所を探り当てる。
 半ばまでサヤから顔を覗かせていた血色の珠へと無骨な指先が添えられた時、私の身体は、もうどうしようも無い程、昂ぶっていた。
 荒い呼吸の中、その先への期待を込めたおねだりが、私の唇を割っていく。

「あぁ〜♡……あぁぁ……あきのり……さまぁ♡……上総を……カズサを♡」

 今にも破裂しそうな程に暴走した心臓が、ドキドキと脈打つ中、途切れ途切れにこぼれていったおねだりに、明憲様が応えて下さる。

「果てるがいい。 上総よ」

 それが止めを告げるお言葉だった。

 同時に、これまでよりも尚、深く、降り切った子宮そのものを突かれる様な一撃に、声にならぬ悲鳴を上げながら仰け反る私。
 そして同時に、しこりきった乳首が強烈に捩じ上げられ、ぷっくりと膨れた過敏なクリが力任せに押し潰された

「あぁぁアァッあぁっ♡……いぎぃぃぃ!…ヒィッ♡……はっ♡……はぐぅぅぅぅっ!!」

 全身から届く処理限界を超えた凄絶なまでの快楽情報が、ドクドクと注ぎ込まれる熱い精の感覚が、私の快楽神経内で飽和した。
 ドプドプと異常分泌される快楽物質(セロトニン)が、私の全てを押し流す。
 そしてそのまま、身も心も包み込まれる様な多幸感に溺れ切りながら、私の意識は遥かな高みへと打ち上げられていったのだった。






■□■□■□■□■□■□





◆Side:Yui





「あぁぁアァッあぁっ♡……いぎぃぃぃ!…ヒィッ♡……はっ♡……はぐぅぅぅぅっ!!」

 断末魔の悲鳴にも似た一際激しい絶頂の叫びと共に、全身を弓なりに反らせて痙攣する上総。
 そのままグッタリと前のめりに倒れそうになった彼女を抱き留めると、半ば朦朧としている彼女に、明憲様は愛おしそうに口付けた。

 私の眼と鼻の先で、重なった唇。
 その中から、クチュクチュと粘る水音が響く。
 意識を殆ど失っている筈なのに、口腔を侵す明憲様の舌に舌を絡め返す上総。

 その無意識の媚態と共に、深々とあの方の『男』を咥え込んだまま、ヒクヒクと震えている彼女自身の『女』が、私の胸を妬き焦がす。

 ――その方は私の……私のっ!

 自らの夫たる方と親友の激し過ぎる情事を目の当たりにし、私の心臓に張り裂けんばかりの負荷が掛かっていた。
 泣き喚きたくなる様な衝動を、必死で堪える私を他所に、甘ったるい空気を放つ事後の後戯が続く。

 そのまま暫し、私一人を置き去りにして睦み合っていた二人だったが、やがてクタリとばかりに上総の身体から力が抜けた。
 どうやら完全に意識を失ったらしいその姿に、情けなくもホッと安堵する。

 ここ数日の間、明憲様は、私や上総を一緒に抱く様になられた。
 昨晩も、上総の眼の前で、お尻を攻め抜かれ、はしたない声を散々絞り取られたばかりである。

 ……ああ、それでも、やはり慣れないモノは慣れないがな。

 素直にそう思う。
 現金な話だが、自身が抱かれている時の他人に見られる羞恥は、圧倒的な悦びの前に感じている暇が無いのだが、上総が抱かれるのを脇で見ている際の遣る瀬無さと切なさは、やはり耐えがたいものがあった。
 今更、明憲様が、上総と肌を合わせる事を拒むつもりはないが、出来ればこれまで通り、別々にして欲しいと思う。

 そして更に思う。
 上総自身は、どう思っているのだろうかと。

 そこまでぼんやりと思考を進めていた私は、それを契機に二人の事を思い出す。

 慌てて視線を転じてみると、私からやや離れたシートの端に、ゆっくりと上総を降ろすあの方が居た。
 両腕の拘束を解いた上総をシートの端に寝かせ、ご自身の制服の上着を掛けてやった明憲様が、こちらへと向き直る。
 その下腹部で、未だ天を指して屹立したままの逸物に、私は否応なく視線を引き寄せられた。
 大きく開いた傘の下、歳経た巨木に絡み付く蔦の様に、縦横無尽に走る血管が、ドクドクと脈打っている様にすら見える。
 上総の蜜とご自身の精に塗れ、湯気を立てながらテラテラと濡れ光る様は、先程よりも更に猛々しさを増している様にも伺えた。

 なにより、あの有様では、まだ明憲様は満足されていないだろう。
 だが上総は、既に気を失い、お相手を務められる状態ではなかった。

「ああぁぁぁ……♡」

 熱く潤んだ吐息が、意図せぬままに零れ落ちる。
 散々、淫具で嬲られたお尻の奥が熱くなっていく様な錯覚を覚えると、私の菊座が何かを期待するかの様に、ヒクヒクと震え始めた。

 頬に再び、羞恥の色が散る。
 呼吸と鼓動が早くなり、喘ぐ様に唇が開いていった。

 そんな私の媚態を見抜いたのだろう。
 この方には珍しい笑みを含んだ視線が私を捕え、ソレが意味するモノを直感的に悟った私の喉が、はしたなくもゴクリと鳴った。





〜今度こそ後編に続く〜


 後書き

これにてサブヒロインによるオードブルはお終い。
さて次はお待ちかねのメイン(ヒロイン)ディッシュです。


じっくりと時間を掛けて下拵えし、技巧の極みを尽くしてトロトロに蕩かせたジューシーなお(尻の)肉を、ご提供させていただきます。
味付けは、甘く蕩ける様な女蜜のソースを添えて、彩りに散らした菊の花びらの美しさを堪能しつつ、ご賞味下さい。


……まあ短期集中連載のえっちぃSSですので、後編も近日中にはお出しします。
 乞うご期待という事で。





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