あの時こうしていればよかった―――

あの時何かしてあげれていたら―――

こんなことには…ならなかった―――

 

目の前に広がる血の海。
そんな中に私は立っていた。
ただ、ただ、見ることしかできなかった。
ねぇ、どうしてあなたは……
こんなにも冷たくなっているの?
誰か、教えてください

私はどうしたらいいですか?
私は何をすれば許せますか?

私にできることは……ありませんか?

 

+++++++++++++++++++++++++++

 

「今日の訓練はこれにて終了です。お疲れ様でした!」
「お疲れ様でした!」

機動六課が解散してから1年。
みんなそれぞれの部署について、目標に向かったりしている。
ティアナ・ランスターはその代表とも言えるかな。
私は相変わらず”戦技教導官”を続けています。
あれからみんなで集まることはないけれど、フォワードだったあの子達はよく会いに来てくれる。
あの子達は”ストライカー”と呼ばれるほどに成長して、今では立派な魔導師。

訓練を終えて片付け担当以外はみんな帰っていく。
私はそれを見届けて全員の戦闘データを確認する。

「なのはー!」
「なのはママー!」

その二つの声に私は振り返る。
駆け寄ってくる小さな私の娘を抱きしめた。
あれから少しだけ大きくなったこの子は、学校に通いはじめてから精神的にもだいぶ成長した。
でも、まだまだ幼くて可愛いの〜
自慢の娘です!

「ごめんねヴィヴィオ。今日は授業参観だったのに見にいけなくて」
「ううん! ヴィヴィオはママをお迎えにいくのが好きだからいいの!」

どうしてこのこはこんなにも可愛い事を言ってくれるんだろう
正式に娘にしたのは正解だったとつくづく思う。
もう一つの声の主が私とヴィヴィオを挟んでしゃがみヴィヴィオの頭を撫でる。

「ヴィヴィオいっぱい先生に褒められてたよ」
「ほんと? ヴィヴィオすごいじゃない!」
「えへへ〜」
「ありがとうねフェイトちゃん。ヴィヴィオの参観日に行ってくれて」

そう、私の大親友のフェイトちゃんにお願いして、ヴィヴィオの参観日に行ってもらったの。
さすがに誰も行かないのはヴィヴィオにとって寂しいから…

「いいよ。今日は母さんに会いに行く予定があったし、私もヴィヴィオのお母さんみたいなものだし」

ヴィヴィオを引き取る時の手続きや後見人はフェイトちゃんがしてくれた。
だから今の親子関係を築いたのはフェイトちゃんのおかげ。
それにヴィヴィオのお迎えまでしてくれる。
忙しい合間に元スターズの二人と一緒に遊びにきてくれたりするし。

「なのは」
「ん?」
「なのはははやてに呼ばれてる?」
「えっ? うん…てことは、フェイトちゃんも?」

フェイトちゃんは控え気味にうなづいた。
ヴィヴィオの体が一瞬強張ったのが分かった。
ヴィヴィオに大丈夫、と言う風にして強く抱きしめる。
その瞬間に私の胸には嫌な予感が過ぎる。
フェイトちゃんと私が呼ばれたという事は…

「なのはさん! フェイトさん! ヴィヴィオ!」

水色の道が私達の横に出来て、その道は海の先から伸びている。
ローラーブーツでその道を走ってきたのは私と同じスターズだった子。

「スバル! 魔法のコントロール上手くなったね」
「ありがとうございます! フェイトさん」
「スバルもはやてちゃん呼ばれたの?」
「はい! てことは、なのはさんも?」
「そう。私とフェイトちゃんも呼ばれたの」

胸騒ぎがより一層強くなった…

++++++++++++++++++++++++++++

「……サクハ」
「何?」
「まかせる」
「はぁああっ!? ちょ、ちょっとぉ!」
「あれ以外単体にしか攻撃手段はない」
「だけど…この数は…」

そう、私達は今、囲まれています。
人と同じぐらいの大きさの蟻の大群。
数は大体100かなぁ…
相方は魔法攻撃力は強いけれど、範囲魔法は1つしか持ってないし。
しかもその範囲魔法ってかなり精神力を使うから1日1発が限度。
そのあと動けなくなるし…。
まったく、もう! か弱い女の子にこんな大群を相手にさせないでよね!

「援護はする」
「りょーかい! んじゃ、派手にいくよー!」

私の言葉に胸元の花飾りが反応を示した。

『Thunder *possible to move it』(雷*発動可能)

魔力が電気を帯びて、私の体から電気から音を立てて姿を見せた。
ミッドガルド式ともベルカ式とも異なるの魔法陣が黄緑の光を発しながら私の足元に展開される。

『Normal operation confirmation』(正常作動確認)

私は右手を目の前に伸ばす。
そこに集まる紫電。
それは徐々にボールのような大きさになる。

『The throw target confirmation』(投擲目標確認)
「ライトニング!」

それを聞くと私は紫電の塊を相手に投げる。
紫電の塊は蟻の1体にぶつかるとそのままガムのようにくっつく。

「拡散!」

私は投げたまま伸ばしていた右手の指を鳴らす。
すると、紫電の塊が4つに分裂してそれぞれバラバラにとび蟻にくっついて破裂した。
それを受けた蟻は塵になって消えていく。

「サクハ、下がれ」
「えっ?」

ぐいっと引っ張られて私は相方の後ろに下げられる。
黒の光を見た私は、そのまま次のターゲットを決めて雷の塊を作った。
次の瞬間に空が空間が割れ、そこから鎌が落ちてくる。
それは蟻の体を突き刺し蟻とともに消えていった。
それが相方の放った魔法だと頭で認識する前に、私は雷を投げて拡散させる。
次々に襲って来る蟻を”ライトニング”で消し去っていく。

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「はやてちゃ〜ん!」
「おっ、みんなおそろいやな?」

なのはちゃんが大きく手を振って駆け寄ってくる。
こうしてみると、”管理局の白き悪魔”なんて噂が嘘みたいや。
まあ、ちょっぴりそれを連想させる出来事もあったといえばあったんやけど…

「んで、みんなに聞いてほしい話があるんよ」
「聞いてほしい話?」
「ああ。客人がいるんだ」
「客人…?」

シグナムの言葉でみんなは奥を見た。
部屋の奥には、トランプ占いをしている人影。

「そうだ。こいつが今回みんなに集まってもらった原因」

ヴィータの言葉に反応をしたのかはわからへんけど
お客さんは占いをしていた手を止めた。
ゆっくりと顔を上げいきなり立ち上がる。

「すみませんが…」

その人はトランプを慌てて片付けて駆け寄ってくる。
狸のような丸い耳を付け、茶髪を後ろで結んでいる男性。

「少し、用事が出来ましたのでお時間をいただいてもよろしいですか?」
「構いませんよ。何か、あったんですか?」
「ええ…少し…よかったら、見に来ますか? 俺達の…戦いを」

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「ハァ…ハァ…も、だめぇ」

激しく動き回り、私は限界を感じていた。
湧き上がる汗と疲労。

「…出る…!…」

その言葉に私達は走り出した。
やっとの思いで作り上げた通り道。
そこを通りやっと私達は蟻の壁から脱出ができた。
正直、疲れたなんてもんじゃない。
あと少しで魔力が底をつきるとこだった。

「チーフが入ればなんとかなったのに!」
「仕方ない」
「仕方なくなーい!」

私はその場に座り込むと最後の『ライトニング』を放り投げた。
もう、魔力はない。
でも蟻はまだ30以上いる。
相方も魔力はない。
絶体絶命。
ここで蟻を排除しないとこの世界”ミッドチルダ”に多大な被害をあたえることになる。
それだけは駄目!

 

「ご苦労様でした。サクハ、スイあとは俺にまかせてください」

 

空から降ってきた人物の声に私たちに笑みが浮かんだ(たぶん…)

「『フルハウス』! 当たるも八卦当たらないも八卦です」

チーフが投げた5枚のカードは5匹の蟻に刺さった。
そして、そのうち4匹の体からトランプの絵柄4種が現れ、蟻が砂になっていく。
微かな舌打ちをする音が聞こえたと思ったら、カードをアームドデバイスのロッドに変えて次々蟻を殴っていく。
次々砂と化していく蟻を私たちは呆然と見つめる。
チーフが参入してから約3分。
あの大量にいた蟻が全て砂となった。

「さすが…チーフ…」
「………能力制御……」
「ああ、チーフの『フルハウス』は能力制御に含まれてないから」
「何故」
「さぁ……私は聞いてない」

それからちょっとして無傷で笑顔を浮かべたチーフが私たちの前に立った。

 


 

「確かに、あなたたちが別世界から来たのは認めざるを得ませんね」

なのはさんの言葉にミッドチルドの人達は深く頷いた。

「状況を整理します」

小さな妖精みたいな子が声を発した途端
周りに無数のウィンドウが浮かんだ。
それは、私たちのたった今の戦闘風景が映し出されているものが80%以上。
残りは個人データなど。
薄暗い部屋に浮かぶ無数のウィンドウは少し不気味でもある。

「あなたたち3人は、別世界『カバリア』から来た。
  その世界は今のような蟻で攻められている。
  カバリアだけでは手が回らないため、他の国にも呼びかけている。
  ……これで、間違いはないですか?」

私たちは頷く。

「……うちは構わんよ」
「はやてちゃん!?」

なのはさんの驚きの声が部屋に響く。
そんななのはさんを小学生くらいの女の子が止めた。

「困ってるんなら力を貸してあげるべきやし、なんか、ほっとけへんねん」

はやてさん……
そこに、赤毛の子と紫の髪の人が立ち上がった。

「はやてがいくならあたしだっていく!」
「私も行こう。主であるはやてを守るのが騎士としての役目だ」
「ありがとうございます」

チーフが頭を下げたのを見て、私も慌てて立ち上がり頭を下げる。
こうして、私たちの目的の1つは終了した。
しかし、1つ疑問が残る。
それは相方も同じだったらしい。

 

「チーフ」
「ん? スイ、なんでしょう?」
「……戦闘……わざとか?」
「ああ、そうですよ。あなたたちの能力制御付きの実力を測りたいってこともありましたしね」

一瞬の沈黙後
相方・・・スイハの足元に黒い魔法陣が生まれる。

「落ち着きなさいスイ」

わけのわからないプロローグが幕を開けた。

 

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第1話?
そんなのありませんよ。読みきりですよ。これ多分

ちなみに画像の参照は以下
二次職のところが今回使われているキャラ像です

サクハ http://trickster.hiyokomi.net/pc/sheep.htm
スイハ http://trickster.hiyokomi.net/pc/dragon.htm
チーフ http://trickster.hiyokomi.net/pc/raccoon.htm

他のも気になる方は http://trickster.hiyokomi.net/
で見てくださいな。


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