『お休み』『一時停止』『お休みします』『休み』
などの言葉とカラフルな背景色。
そして、ナデシコC艦長ホシノ・ルリ少佐の顔アイコンがついたウィンドウが
火星の司令部を埋め尽くすように現れる。
本部を護衛するように配置されていた機体が次々に地面へと降りていく。
これらは全て、勝手に機体が降りているのだ。
そして、パイロットの目の前に表示される『休み。』の文字とルリの顔アイコンがついたウィンドウ。
司令部でも制御不能となっている。
”火星の後継者”指令草壁 春樹の周りにも消えたり現れたりするウィンドウが多数表示されていた。
火星のシステムは全て、この瞬間に乗っ取られたのだ。
【電子の妖精】であるホシノ・ルリに・・・。

髪飾りが桃色に光り、髪がふわりと舞う。
目を開けると金色の瞳が輝いている。
ホシノ・ルリはウィンドウ・ボールの中にいた。

「相転移エンジン異常なし」
「艦内警戒体制パターンBへ移行してください」

ハルカ・ミナトの声に続くようにして、白鳥ユキナの声が響く。

「ハーリー君。ナデシコCのシステム、全てあなたに任せます。」
「えっ、全部?」

ウィンドウ・ボールの中からルリは声をかける。
マキビ・ハリ(通称 ハーリー君。命名 ルリ)の声が聞こえたあと、ルリの前にハーリーの顔が
うつしだされたウィンドウが表示される。

「バックアップだけじゃないんですか?」
「駄目」

とぼけた声のハーリーに、棘をさすようにしてルリは即答する。

「私はこれから火星全域の敵のシステムを掌握します。艦までカバー出来ません」

ハーリーはぱっとしない表情でルリの方を見ていた。
『ナデシコC、あなたに預けます』という後方からの声に
前を向くハーリー。
やはり、まだ驚きを隠せていない。

「でも・・・」

戸惑いの声を出す。
ハーリーの右横顔を見るようにして
ミナトが映ったウィンドウが表示される。

「ハーリー君。がんばれ」
「えっ?」

ハーリーはそのウィンドウへと顔を向ける。

「甘えた分だけ男になれよ」

ミナトは手を組み、その上に顎をのせた。




「かくして火星州域の全ての敵はルリちゃんにシステムを掌握された。」

イネス・フレサンジュの声と共にウィンドウが変化していく。
ナデシコCとルリなどの文字が映ったウィンドウ。
ナデシコCから球状に広がる桃色の空間に
現在ナデシコCがいる火星の場所が包まれていく。
場面は変わり、火星を桃色で包まれ
さらに場面が変換。宇宙上になり
桃色の円状のものが火星圏に広がっていく。
そして、ウィンドウは桃色一色となる。
その中央に表示される水色の枠。
そこには、『敵システム全て掌握しました。
さすがルリさんv   (オモイカネマークが表示)』
そして、ウィンドウは圧縮されて消える。
壁一面に火星の遺跡と同じ模様が描かれている場所。
椅子には様々なコードが接続され、そこにイネスが座っている。
ボードのようなものを操作するようにしてウリバタケ・セイヤが椅子に座っていた。
ボードのようなものには『点検中』という1つのウィンドウだけが表示されている。
セイヤは調整をしようとボードの方に体を向けるが、

「さすがね」

というイネスの声に体をイネスの方へ向ける。

「体の方は大丈夫か?」

セイヤは右手をボードから離す。
イネスは顔をセイヤへと向けた。

「ええ。やっぱり戦艦一隻を火星まで飛ばすのはこたえるわね」

かすかに体を前へと動かす。

「そうか」

セイヤは離した右手をボードへと戻す。
そして、調整へと入る。
イネスは少しだけ上を向く。

「新たなる秩序か・・・」






ネルガル重工ビル、国際高速通信社、重力波通信研究会、
東京臨海国際室、地球連合宇宙軍本拠地、統合平和維持軍本拠地、
地球連合総合会議場、地球連合宇宙開発所、木連地球駐在公所
などの場所が書かれたプレートが壁に貼り付けられている。
そして、そこにルリが映るウィンドウが表示された。

「みなさんこんにちは。私は地球連合宇宙軍所属ナデシコC艦長のホシノ・ルリです」

そこは、作戦などのウィンドウが表示される
長スクリーンの周りに火星の後継者が座っている場所。
そのスクリーンにはルリのデフォルトが表示されている。

「元木連中将の草壁春樹・・・あなたを逮捕します」

静かだった場所にルリの声が響く。

「黙れ!魔女め」

ルリに反発する声1つ・・・。
そして、そいつの後ろに1つのボース粒子反応。
光が錯乱し、人が現れる。
そう、ボソンジャンプ。

「魔女・・・・魔女・・・魔女?
 誰に向かって物を言っています?」
「貴様何奴!?」

一斉に銃をその人物へと向ける。
だが、それより早くルリを魔女と言った男の首筋にチャクラムを
こめかみにスコーピオンをあてていた。

「動くと死ぬ事になるよ?順番的に言うと、スコーピオンを撃ったあとに
 首を切断するから・・・断末魔が響くよ?」

それだけで空気が固まる。
ただ、固まるだけではない。

「ただ、こいつの命は奪わせてもらう。
 【電子の妖精】ホシノ・ルリを魔女と言ったからね。
 全世界のホシノ・ルリ愛好会、研究会、LOVEvLOVE(ハート)部
 などなどから標的にされるよりマシだし。
 世界を相手に一人で勝てる自身なんて・・・あるわけないしね?」

いわゆる、脅しである。
草壁春樹は目を瞑った。
そして、ざわつく会場・・・。
微かに微笑むのは、ボソン・ジャンプをしてやってきた
一人の少女。
草壁が目を開く。

「部下の安全は・・・保障してもらいたい」

それを確認すると、少女は男の耳元でつぶやくと
ボソン・ジャンプをして消えていく。
そして、男は血の気がなくなっていき・・・倒れた。




火星の岩場にボソン・ジャンプであらわれる機体




「ボソン反応7つ!」
「ルリルリ!」

ナデシコCに響く2つの声。
ユキナとミナトの声だ。

「構いません」
[ええー!]

ルリの冷静な声に、驚く全員。
全員はルリへと体を向けた。
ルリはウィンドウボールの中で静かに前を見据えている。

「あの人に・・・まかせます」





地面を進む7つの機体。
先頭は赤のカラーリングをした機体・・・夜天光。
7つの機体に共通するものは1つ。
錫杖をもっていること。

「いいんですか?隊長」

静かな声が夜天光のコックピットに響く。

「ジャンプによる奇襲は諸刃の剣だ。
 アマテラスがやられた時、我々の勝ちは五分と五分。
 地球側にA級ジャンパーが生きていたという時点で我々の勝ちは・・・」

そこで危険信号を発する音がコックピットに響く。
7つの機体の目の前にボソンジャンプであらわれる戦艦一隻。
戦艦の艦首が機体の方を向く。
機体はその場に止まった。
そして、戦艦の目の前に現れる黒き機体。
テンカワ・アキトの操る・・・ブラックサレナ。
アキトはゆっくりと顔を上げる。
それと同じようにレールカノンが持ち上がった。
浮上する夜天光。北辰は前かがみになる。

「決着をつけよう」

アキトの顔に文様が浮かび上がる。
北辰は笑みを浮かべ、アキトの文様の光が強くなっていく。
錫杖の音が響いた次の瞬間に、全ての機体が飛び立つ。
サレナの後を夜天光が追うようにして飛び、そのあとに螺旋を描くようにして
積尸気が飛ぶ。
サレナが降下をして夜天光にバルカンで攻撃をし、
サレナを囲むようにして積尸気が配置。
一旦離れるとサレナは夜天光へと近づく。
夜天光は上昇をしながらバルカンでサレナへと攻撃。
一回転するとミサイルを6発発射する。
サレナは回避をしながらミサイルをおとしていく。
レールカノンで夜天光へと攻撃をする。
アキトはサレナとなり、夜天光を見すえていた。



『あなたは誰?』

ふいに聞こえた声に桃色髪の少女―――ラピス・ラズリは眉をぴくりと動かす。
ルリの周りに浮かぶ数々のウィンドウ。
その中心でルリは髪をなびかせていた。

『私はルリ。これはお友達のオモイカネ。』

ルリの響く声。
光がルリの体を撫でるように頭から足へと進む。

『あなたは・・』
『ラピス』

静かな声がふいに名前を答えた。

『ラピス?』

その声に答えるようにルリが声を発する。
遺跡と同じ模様が壁一面にあり、椅子が浮くようにして1つあるだけ。
そこに、ラピスは座っていた。

『ラピス・ラズリ。ネルガルの研究所で生まれた』

ラピスは表情を変えずに、前だけを見ている。

『私はアキトの目。アキトの耳。アキトの手。
 アキトの足。アキトの・・・アキトの・・・』

ラピスの中にある1つの暗い記憶―――。
空が赤く染まっている、赤と黒と白しかない世界。
家が爆発を起こして、煙があがる。
いや、屋敷という形。
人が一瞬で血を出して倒れていく。
何をされたのかは分からない。
2名はすぐに倒れて、動かなくなった。
指に血が付いてそれでガラスケースをひきずるように触り・・・血が流れる。
そして、姿が見える一つの人影。
顔は見えない。
そして、ガラスが割られる。
その顔は笑顔で、目はこちらを見据えていた。
ラピスは恐怖を感じる。
逃げれなかった・・・・。
その人の目には、恐怖で目を見開きただ驚く事しか出来なかったラピスの表情。





レールカノンを打ち続けるサレナ。
回転をしながら降下していく。
そして、それを追う積尸気。
アキトの表情に変化はない。
錫杖を回避していき、レールカノンを撃つ・・・。
その繰り返し。
それでもサレナにかすったりもし、少しずつダメージは増えていく。
サレナは夜天光へとレールカノンを放つ。
が、フィールドにより遮られる。
すぐ目の前に来た夜天光は、サレナの装甲へとパンチを繰り出す。
押されて行くサレナがナデシコCからはしっかりと見える。
そして、積尸気が近づいていく。

「怖かろう。悔しかろう。」

アキトの表情に焦りが出始める。コックピットに響く北辰の声。

『たとえ鎧を纏おうとも』

目つきがさらに鋭くなる北辰。

「心の弱さは守れないのだ!」

その言葉にアキトの頭の中にはミスマル・ユリカの笑顔が思い出された。
風でなびく髪のユリカ。
結婚式での隣にいるユリカ。
そして・・・今の状態のユリカ・・・・。

「・・・くっ・・・・」

アキトは唇を噛む。
そして、バーニアの出力を上げサレナの高等部で夜天光を押し返す。
激しく閃光が走り、外部パーツの一部が砕け散る。
そしてサレナは夜天光より離れた。
すぐさまレールカノンを放つ。
夜天光は回避をしていく。
夜天光が逃げるように動くのを、サレナが追う。

「隊長ー!」

積尸気も後を追うが、途中で別方向からレールカノンを受けて
邪魔をされる。

「何!?」

足止めされて、レールカノンをよける。
スバル・リョーコはヘルメットの下で唇を舐めた。

「騎兵隊だー」

そこには三機のエステバリス・カスタムと、一機のエステバリス・改。

「男の怠慢邪魔するやつぁ、馬に蹴られて三途の川だ!」

その言葉に反応してリョーコの横に笑顔のアマノ・ヒカル
が映し出されたウィンドウが浮かぶ。
リョーコは横目でヒカルを見る。

『馬その1ひひ〜ん』

ヒカルのウィンドウの正面にもう1つウィンドウが浮かび、
リョーコは微かに顔を動かし、目を右に動かし
そのウィンドウに映ったマキ・イズミを見る。

『馬その2のひひ〜ん』

あきれた顔の高杉 三郎太

「おいおい。俺も馬なのかよ」
『そうそう。馬なのに』
『リョーコはサブを尻に引き』
「おっ、やるねー」

やはり右に浮かぶ笑顔のヒカルが映ったウィンドウ。
そして、それに重なるようにして表示されるイズミのウィンドウ。
そのウィンドウの方を横目で見るサブロウタ。
そして、一回り大きいリョーコのウィンドウが表示されると
同時に2つのウィンドウが消える。
サブロウタは微かにリョーコのウィンドウから顔を離す。

『バカヤロウ!!何が尻が』
「おっと」

サブロウタの表情が真剣になると
リョーコのウィンドウが落ち着きを取り戻す。
そしてレールカノンがいつでも撃てる体制を作ると
積尸気に向けて撃つ。

「まっ、尻に引くか引かないかはその後の展開としてーねっ、中尉」

積尸気からの攻撃を避け、なおもレールカノンを放つ。
襲い掛かるミサイルを撃墜していく。

「バッバカ」

リョーコのうわずった声が通信を通して響く。
エステバリスは回転をしながら動きを止めない。

「おー、熱い熱い」

イズミの声が聞こえると、ヒカルの機体がライフルで
積尸気を攻撃していく。
リョーコの声をバックに、六人衆は冷や汗をかいている。

「き、気をつけろ。へらへらしとるが奴らは強い」

と忠告しながら、打たれて被弾をする。
そして、落下をしていく。

「む、無念」

そして、空中で爆発していく。
夜天光は構えも何もせず、そこにいた。
目の前にはサレナ。
そして、遠くにはエステと積尸気の打ち合いする姿。
風が吹く。
爆発音が微かに響き、次々に落とされていく積尸気。

「よくぞここまで。人の執念見せてもらったぞ」

北辰の声が静かな場所で響く。
アキトはヘルメットをとり、捨てる。

「勝負だ」

北辰は唇を微かに歪ませた。
そんな2人の空気に関係なく流れてくるリョーコたちの声。

『こぉらお前ら!マジメに戦え!』
『戦ってる戦ってる〜』
『マジメな戦い・・・撃たせていただきます』

そして、爆発音と六人衆の叫び声。
サレナはレールカノンをしまう。
夜天光は拳を作り、まわす。

『抜き打ちか・・・笑止!』

拳の回転が止まり、構える。
遠くの空では爆発が響く。
そして、サレナと夜天光が同時にバーニアの出力を上げ・・・

近づく!


夜天光が先にサレナへと拳を突き入れた。
外部装甲を深々と突き刺さっていく。
そして、サレナの拳も夜天光へと突き刺さる。
閃光が走った。
次の瞬間には、サレナではなく、夜天光から火花が走る。
そして、煙が起きる。
サレナの右肩パーツが崩れ落ちた。
北辰はコックピットをつぶされ、血を吐く。
その瞬間にコックピットに火花が走った。

「見事・・・だ・・・」

火花はなおも走る。
そして、電源が切れたようにして
サレナの拳からでる光が消える。
外部パーツが一瞬光、くずれるようにして外れた。
中から出てきたのはアキトが使っていたショッキングピンクのエステバリス。
そして、夜天光から拳を抜く。
夜天光は崩れ倒れた。
アキトの回りに浮かぶ3つのウィンドウには
『装甲排除』『フィールドジェネレーター強制排除』『システム〜中』
と書かれてある。
アキトは荒い息をもらし、肩で息をしていた。
エステバリスからは目からオイルが涙のように・・・流れる。







「んーと・・・まあ、こんなもんかな〜。
 はい!お仕事おっしま〜い」

少女は軽く伸びをすると、遺跡に融合されていたミスマル・ユリカの顔を
見下ろした。

「結構時間掛かっちゃったねー・・・・。
 ごめんなさい。最善の方法をしたけれど、後遺症が多少残るかもしれない・・。
 私がテンカワさんにしてあげれることはこれまでですね・・・。
 すいませんでした。発見からすぐに助け出せればよかったのに・・・。
 私が・・・しっかりとしていなかったから・・・・」

涙を流しそうになるが、必死でそれをこらえる。
そして、ウィンドウが表示された。

『ミナハ・・・撤退するぞ。終わったか?』
「あっ、はい・・・。あとは、ナデシコCに任せるということですね」
『そうだ』
「了解。ミナハ、すぐに戻ります」
『なるべく、早くな』
「はーい」

ウィンドウが消えると同時に、足音が響く。
あわててミナハはボソン・ジャンプでその場から去る。



視界が徐々にはっきりとしていく。

「あれ?みんな・・老けたねー」

周りにいた全員が肩をおろして、落ち着く。
ため息すら聞こえる。

「よかったー。いつものボケだー」

ミナトの安堵した声が響く。

「あたし・・・ずっと夢見てた・・・あれ?」

目を見開くユリカ

「アキトは、どこ?」




ユーチャリスはゆっくりと上昇していく。
そして、ボース粒子に包まれて・・・消えた

「さよーならー」

ヒカルの声が響く

「って、ほんとに行かせてよかったの?」
「行くってもんを無理に引きとめらんねーよ」

リョーコがあきれたように目を瞑る。
そして、顔を上げる

「でも、これからどうすんだよあいつ・・・。」

風がリョーコの髪をなびかせた。




「帰ってきますよ」

答えるようにルリの声が響く。

「帰ってこなかったらおっかけるまでです」

遠い空を見上げるルリ。
全員の視線がルリにあつまっている。

「ルリルリ」

ミナトはルリを呼ぶ
うつむくルリ。

「だってあの人は」

ルリは振り向き、笑顔になる。








「あの人は大切な人だから」



 












「で、そこまではいいが・・・・」

アキトの力ない声がユーチャリスの艦橋に響く。
ラピスはアキトの方を振り向いた。

「・・・・・・・・・・ここ、どこ?」
「ミナハ?」

少女はつぶやき、不思議そうな顔をアキトへと向ける。
アキトすら不思議そうに声をもらした。
首を傾げる少女。

「あなた・・・だれ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・アキト」

ラピス、アキト共に絶句。
単刀直入に言うと・・・記憶喪失。
そして、今いる場所。
それは・・・第一次火星大戦の戦場近くの宙域。
といっても、もうバッタが撤退していくところ。
しかも記憶喪失者が出没。
ラピスとアキトは顔を見合わせる。
記憶喪失になった少女―――ミナハは、
名前すら言わなかった。
ミナハという名前だけは名乗っていたが・・・
それが本名ではないと、彼女自身が言っていたのだ。
つまり、彼女の本名を知る人が誰もいない。

「ミナハだ。君の名前は、テンカワ・ミナハ」
「ミナ・・・ハ・・・・」

ラピスの嫉妬が纏う視線はアキトに突き刺さっているが、
鈍感アキトに分かることもなく・・・。

「テンカワ・・・ミナハ・・・・」

少女ミナハは、何度も自分の名前を繰り返す。

「俺はテンカワ・アキト」
「ラピス・・・ラピス・ラズリ」
「お父様・・・?」

当然同じ苗字だからこうも思う。
さらにラピスの嫉妬が増えるのは・・・言うまでもない。
それでも気付かないテンカワ氏。

「君が記憶を思い出すまでの仮名だ。
 名前が分からなくてな・・・テンカワ・ミナハでしばらくいてくれないか?」
「あっ・・・・はい!喜んでこの名を名乗らせていただきます」


というわけで、私に名前がつきました。
記憶が無いのはすごく驚いたけれど、
よくよく考えると・・・記憶が無いから名前も分からない。
でも、なんか・・・胸がすっきり出来た気がするから。

「ラピス。ボソン・ジャンプする。目標はネルガル重工本社近くの海中。」
「了解アキト」
「・・・・・・・・・」

何もかもが新鮮な経験で、嫌な事なんかなかった。
それに、驚く事もない。
多分・・・記憶になくても体が覚えているんだと思う。
頭に響く誰かの声で、安心出来るのかも知れない。

<あなたは誰?私はテンカワ・ミナハ>
<こんにちは。私はあなた。あなたは、私>
<どういう事?>
<記憶を思い出したら、分かるよ>

・・・・・・・・・意味が、分からない。



「ボソン・ジャンプ終了だよ。アキト、ミナハ」
「これから、どうなさるのですか?」
「ネルガルの戦闘員になろうと思う」

私達は再びボソン・ジャンプでネルガルへと・・
足を踏み入れた。








機動戦艦ナデシコ    〜蛍のような光だけど暖かな天使〜



プロローグ       完







あとがき


やっと、プロローグ完成です。
長くなりましたが・・・。
劇場版の途中からなのでちょっと疲れました。
なんどもリピートさせたり
戻したりしてました。
オリキャラさんは頭の誰かと記憶喪失になった
少女の2人です。
ちなみに、これは小説版のストーリーとなります。
それでは失礼します
(大空 夏美)






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