水―――?

これは何?

分からない

分からなくていいと頭の声は言う

そのうち思い出すからと・・・

私は―――知りたい

知らなければいけない気がする

そう・・・

これは必然的な何かのような気がしてならない

どうして―――?

邪魔をされている気がする

私と水・・・どんな関係があるのかは分からない

でも・・・

水の音が響く

わたしの心臓音も響く

同じように・・・

振動していく―――









『蛍のような光だけど暖かな天使』

第1−1話     夢から覚めても『不明』








私の手元にある資料は、
全て私の遺伝子情報。
といっても、分からないことだらけ・・・。
なんかプロテクターみたいなのがあるから
正確な情報が分からないみたい。
それを聞いたときに思い浮かんだのは頭の中でしか聞こえない声。
あれは誰?
私は何?
不思議といえば、あの戦艦。
ユーチャリスにいたこと。
何か分からない事ばかり。
考えても仕方ない事だけど・・・やっぱり考えちゃう。
記憶喪失になった原因も不明。
だって、強い衝撃とかなかったらしいもの。
しかも過去に来てしまったって言うから
分けが分からない。
何、何なの?
どうして私がこんな目に会わないといけないの?
混乱する頭の中を、出したくてため息をつく。
とりあえずこの情報を教えます。
穴あきばかりの自己紹介。
名前はテンカワ・ミナハ(仮名)
性別 女
出身 火星(仮)
血縁関係 ラピス・ラズリと似た遺伝子情報を持つらしい・・・。
ただそれだけであり、現在身元不明。
年齢 15
詳細不明。
履歴 テンカワ様がおっしゃるには、A級ジャンパーでその後
遺伝子情報を書き換えマシンチャイルドとなる。
研究所のシステムを稼動させるために使われていた。
その後北辰に捕まりネルガルによって救出される。
そして、テンカワ様とともに復讐していたらしい・・・・。
・・・・・・・・・・・何、それ。
全部が分からない。
武器はチャクラムと銃を使用・・・・。
どちらも暗殺者の使用する武器。
ちなみに、遠距離特化型人物らしいです。
まあ、自己紹介はこれぐらいにしましょうか。
私が忘れている事は2つ。
1つは、人に関する事。
例えば私の事や、私に関わっていた人達のプロフィールや
人物像。
もう1つは場所の知識。
機体とか戦艦の名前、動かし方は分かるけれど
(多分体が感覚を覚えているだけ)
場所への行き方、ブリッジとかの光景を忘れているみたいです。
詳しくは分かりませんけれども・・・・。
まあ、そんなけ忘れてるってことです。
物の知識。
まあ、シャーペンの使い方とか物の名前はきちんと覚えています。
赤ちゃんよりも知識は残ってるってこと。
・・・・・・・・・・うれしくないけれども。
そして、私は今人間開発センターというところにいます。
記憶を失ってから1年。
長く感じませんでした。
だって、私が生きた15年の記憶のことを考えると
一瞬で失ってしまったけれど
長かったと思うから・・・。
覚えてませんけどね。えー、覚えていませんとも。
私がこの1年過ごした所は、ネルガル重工傘下の研究機関――人間開発センターです。
私は研究されていた方。
同情されても困るかなー?
私より長く居たホシノさんの方が大変だったろうし・・・。
同情なら親に虐待されたり、教育も受けさせてもらえない子供にしてください。
研究されていたのは簡単な事。
”遺伝子情報書き換え”という事を受けられたから
色々と調査、検査の繰り返し。
というか、遺伝子操作ってしていいのかなー?
今思うと地球も結構あくどいよね。
私が遺伝子操作を受けたって良いことないと思うけれどな〜。
だいいち、コンピュータと同調?シンクロ?
まあ、そんな感じの事をするためだけに行われた事ですし・・・。
そう思うと・・・頭の声もコンピュータか何か・・・なのかな?

<結論違う>
<即答!?>

・・・・・・・・・・・・・簡単に言われました。
ちょっと泣きたい。

「ミナハさん」
「ホシノさん?どうしました?」
「呼んでますよ」

ホシノさんの後ろには笑顔のおじさま。
って、失礼かな?
研究員がすっごい笑顔だ・・・。
しかも重たそうな鞄・・・。
つまり、お金で解決ってことね。
じゃなく・・・テンカワ様とラズリさーん!
私だけどっか行きますよ?
いいんですかー!?
まあ、聞こえないだろうけど

<独り言激しい>
<あなたが私なら、私はあなた。独り言が激しいのはあなたもじゃないの?>
<・・・・・・・・>

テンカワ・ミナハ。華麗にしょーりぃ!!
でも・・・自分に勝ったって嬉しくない。
・・・・・・・ちっ

「はじめまして、ホシノ・ルリさん。テンカワ・ミナハさん」

わざわざ目線を合わせてくれるおじさま。
一応頭を下げる。
礼儀は正しく・・・?
礼儀正しくか。

<一人ツッコミってつまらない>
<私自身が何言ってるの?>
<記憶あるんじゃないの?>
<あったら苦労などしておりませんわ>
<バカ>
<それは自分の事を言っているのね>

黙らせること成功。
なんとなくコツが分かったかも。
おじさまはヒゲがトレードマークなのかな?
クリーム色のシャツの上に赤いベスト。
ダンディなおじさまをお目指し中・・・・?

「私はネルガルの社員でプロスペクターと言います。そして、こちらはゴート・ホーリー」

再び頭を下げておく。
ホーリー様という方は大柄で
ちょっと横にも大きいお方です。
身長は・・・2m近くあると思いますよ。
見た目は40すぎたぐらいのちょっと失礼だけどごっつい顔つき。
あっ、頭を下げられた。
というわけで、もう1度頭を下げておく。
あれ・・・?あの頭を下げたのって私が下げたからじゃないか・・・・??
まあ、いっか。

「突然ですが、ホシノ・ルリさん。テンカワ・ミナハさん。まずは、ルリさん。
 私たちは、新しい宇宙戦艦のオペレーターとして、あなたをスカウトに来たんです」
「・・・・・・はあ」

ちょっと迷惑そうな声をもらすホシノさん。
オペレーターってすっごーい!
すごいすごーい!
それほど頭がいいのかな?
それとも、マシン・チャイルドってオペレーターにするための子共たち?
じゃあ、私は?
でも、プロスペクター様が言うと・・・なんか、新製品と思う。
だって営業マンみたいだもん。
ところで、私は??
まあ、ほんとに突然だねー。

「テンカワ・ミナハさん。私たちは、あなたをパイロット兼サブオペレーターとして
 スカウトしに来ました」
「えっ!?」

よりにもよって兼任ですか。
パイロット兼だから、出撃時以外はサブオペレーターを務めればいいのね。
って・・・ちがーう!!
ラズリさーん、テンカワ様ー!!!
私、この人たちにつれさられちゃいますよー!
誘拐されちゃうよー
おーい!いいんですかー!

<だまれ>
<あなたがね>
<少しはやるようね・・・>
<というか自分自身を褒めて何がしたいの?
 まさか、ナルシスト!?>
<違う!!>
<じゃあ、おとなしくし・ろ>
<・・・・・・・・・>

はい。おしまい。

「お給料は、危険手当、海外赴任手当てなどを各種つけて、これぐれいで。
 テンカワ・ミナハさんにはこれプラスパイロットのお給料がつきますから・・・これぐらいです。
 もちろん税抜き、福利厚生も色々ついて、ボーナスは春秋冬の年3回で11ヶ月分と・・・・・・いかがでしょう?」

プロスペクター様・・・・
セールスマンの方がお似合いですよ。
とうか、ソロバンって結構時代遅れだと思います。
電卓っていう便利な物がありますし・・・
まあ、ソロバンをはじいて見せてくれました。
・・・・・・・・・・・でか!
それプラスパイロットの給料・・・。
ゴールドカードを作ってもらってもいいですか。
ま、これぐらいもらわないとこんな仕事やってられないけどね。
葬式やってもあまる額じゃないと遺族が―――って
私に遺族というよりも家族なんていないか。
能力を買うためにはこれぐらい安いと思っているのか。
どちらにしても、これは・・・裏があると考えた方がいいのかもしれない。
いや・・・いいんだろうけどね。
民間企業が軍と似たような事をする方が1つの間違いだし・・・。

ポチャン―――

また、水の音・・・。

ポチャン―――

静かな・・・水の音。

ボチャーン―――

水の中に沈んでいく・・・
これは、誰?
私・・・?
沈んでいく。
苦しいはずなのに―――
私は、笑っている
暗い水の底へと・・・
沈んでいく・・・
頭が、痛い
何・・なんで・・・

「宇宙戦艦・・・・・・ってことは、宇宙に行くんですよね」

その声で我にかえる。
あれは・・幻・・・?・・・
違う・・・・・・私、濡れてる
指から水滴が落ちてる
あれは・・・何?何なの?

「はい。もちろん、寒冷地手当、残業代などをお付けして、食事や葬式などに関しても、
 地上と遜色ないものを用意しております」
「はあ」

まあ、どうでもいっか。
って・・・やっぱり、残業はあるのね・・・・

「お二人は・・・宇宙は・・・・・・嫌いですか?」

宇宙か〜
ホシノさんもちょっと考えてるみたい。
宇宙に行けば記憶が戻るかもしれないけど・・・。
それは、好きという感情ではない。
そう。今のは期待にしかならない。
じゃあ、嫌いかと聞かれれば・・・
そうでもない気がする・・・
大切な物を失くしてしまった場所でもあるけれど、
何かをくれた気がする。
まあ、嫌いにはなれない場所って所かな?
とりあえず、首を振っておいた。
横に。
そしたら、プロスペクター様はうれしそうに頷いた。
何故だかその笑顔を見たことがある気がして・・・
素直に喜べなかった

「名前・・・・・・なんですか?」
「は?」

ふいにホシノさんの声がする。
まぬけなプロスペクター様の声に、ちょっと笑いそうになった。

「戦艦の名前です」

あっ、そういえば聞いてなかったっけ
まさか・・・ユーチャリスなんて言わないでくださいね

「あ、ああ。まだ正式決定ではないんですが、ナデシコと言います」
[ナデシコ・・・・・・]

ホシノさんと私の声が重なる
どうして花の名前を?

「はい。機動戦艦ナデシコ。戦艦らしくないという意見もあるんですが、」
<まったくだ>

あえて、今回は無視をしてみる

「何しろネルガルは民間企業なもので、やはりイメージというものが・・・・・・」
<イメージが花って笑えるね>
「ナデシコ・・・・・あれ?」
「どうかしましたか?ミナハさん」
「あっ、いえ」
「ナデシコ」

ふいに聞こえるホシノさんのつぶやく声。
プロスペクター様には聞こえてないらしい。
そういえば、ナデシコって・・・名前は覚えてる。

―――ABCのC―――
―――ナデシコB艦長の―――
―――オモイカネと―――
―――ナデシコは無敵になる―――
―――ナデシコC艦長の―――

                ズキッ


っ・・・・・・・!・・・・・・・・
誰の言葉?
誰が言ったの?
誰が・・・艦長だった?
駄目、思い出せない

「機動戦艦ナデシコ・・・・・・」

ホシノさんの声も、どこかで聞いたことがあるような気だってしてきた・・・。
まあ、違うよね。
勘違いよ・・・きっと

「すいません。部屋で休みます」
「では、明日お迎えに来ます。ルリさんも、それでよろしいですか?」
「かまいません」

私は走った。
頭痛が治まらない。
苦しい・・・。
テンカワ様―――
ラズリさん―――
助けて・・・・ください。
そこで、私の意識は完全に途絶えてしまった。



また・・・水。
水の上に誰がいるの―――?
立っているのは誰?
やっぱり、私だ。
どうして泣いているの?
分からないよ・・・
教えて―――

教えてよ―――


”            ”






私は目を開ける。
そこは、見慣れた天井。
白くて少し不気味な殺風景すぎる部屋。
間違いなく私の個室。
研究所の・・・部屋。
起き上がると、ちょっとだけめまいがして頭をおさえる。

「大丈夫?」

その声を聞いて目を見開く。
桃色の髪が少しだけ手の隙間から見えた。
正面には、ラズリさんの姿。

「ラズリ・・・さん」

手をどけて一息つく。
何でだろう・・・
すごく落ち着いた

「大丈夫か?」

のれんをくぐって姿を見せたのはテンカワ様。
というか、お二人ともどうして私の部屋をご存知で?

『説明しましょう!!』

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・誰!?
場が凍る。
ラズリさんとテンカワ様は硬直。
いきなりウィンドウが表示され、あらわれる人。
おば様

『誰がおば様ですって?』

前・言・撤・回
お母様でしたか・・・

『誰がお母様かしら・・・?
 私は説明お姉さん!!!です』

大変失礼いたしました。
というか、心読まれてる!?
なんで!?
ところで、誰!?

『アキト、アキト、アキト!』
『アキトさん!』

・・・・・・・・・えっ・・・・・・・・
ホシノさん!?
ていうか、服違う・・・
髪も長くなってるじゃないですか!!
もしかして・・・1ヶ月以上たったんですか?
悪い夢・・・でも見ているのでしょうか・・・

「ミナハ・・・覚えてないか・・・?」
「はい・・・」
「ナデシコC・・・私達が跳んだところ・・・」
「つまり、未来・・・ですよね?」
「そうなるな」
「どうやって通信しているのでしょうか?」
『説明しましょう!!』
『邪魔です』
『お引取りくださーい!関係者以外立ち入り禁止ー!
 イネスさんも、ルリちゃんもみ〜んな出ていきなさーい!』
『私は関係者です!ユリカさんこそ一人占めしようとしないでください』
『ルリちゃんったら冷たーい!ユリカショックー。
 艦長命令です!みんな出てけー!』
『ナデシコCの艦長は私、連邦宇宙軍少佐ホシノ・ルリです!』
『今日から私が艦長でーす!ブイ!』
『勝手な事言わないでください!!』

・・・・・・・・・・・切ってもいいですか?
テンカワ様とラズリ様からOKサインが出たので
強制終了しましょうか。

『イネス・フレサンジュの説明をお聞きなさい!』
『邪魔ですイネスさん』『引っ込んでてください』

・・・・・・・・・・・玉砕?
どうでもいいけれど・・・はやく終わろうよ
本当に切るからね

「で、用が無いなら切るぞ」

ナイス低音ボイスです!テンカワ様!
一気に静まりましたね・・・
ナデシコってこんな艦?
すっごく嫌
ホント、黙りなさいって感じ

『よう!アキト!』
「ウリバタケさんか・・・」
『やっと出来たんだぜ〜お前らとの通信が出来るコミュニケーズ!』
「そのままだな」
『おうよ!いきなり過去に飛ばされたって聞いてよー苦労したんだぜー?
 出来ても通信先が分からなかったりしたしよー
 しかも、試作品だからまだ5分しか通信が出来ない』
「どうやって連絡先をつきとめた?」
『説明し』
『あー、それはだな!とある人が説明の場面ってことで
 なんかあら技を使いやがったんだ』

というか、説明お姉さんの扱いひどいですね。
まあ、私には関係ないです。
というか、私とラズリさん置いていかれている気が・・・
まあ、聞いておいた方がいいですね。

『ナノマシンの形状とそれが発する熱反応のデータを使い
 それのコードをたたきだす。
 そのコードを打ち込んでコミュニケに覚えさせたんだとよ
 科学班はこういうときにしか無意味だからな』

ちょっとひどい言いようですね・・・。
というか、まだ後ろでギャーすか騒いでたんですか・・・
黙りなさいって感じですね

「あのー・・・5分しか通信できないんですよね?
 もう、4分52、53、54、55秒経過しました」
『なにぃぃぃぃいいいい!?』

プツリ

あっ、ひっかき傷があった男性の
魂からの叫びが途切れた・・・・。

<映像回線強制遮断>
<可愛そうに・・・>
<当然の報い>
<脳内会話強制終了。LINK遮断>
<!・・・・Yes My Master>


Link・・・リンク・・・て?何?
マスター?マイマスター??イエスゥ??
何、何なのさ
もう!!何がなんなのさー!!!
わけわかんない・・・
脳の声は誰かわかんないし
わけわからん

「まあ、ミナハはゆっくり休め。明日は俺たちもいる」
「えっ・・・?それってどういう・・・?・・・」
「アキトも私もナデシコに乗るから」
「ええぇぇぇぇぇぇええっ!?」

思わぬ言葉に絶句する私。
でも、よかった。本当に。
1人は・・・嫌だから。
あっ、でも、ホシノさんが居ましたね。
でも!大勢=にぎやかですから!
・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・
前言撤回!!
逆に空しいわ・・。このメンバーじゃ。
くっ!思わぬ精神ダメージが・・・。

「とりあえず、ゆっくり休め」

私は、テンカワ様に肩を押されて横になる。
そういえば、テンカワ様は小鍋を持って姿を見せていたような・・・。
ラズリさんがテンカワ様の服を引っ張る。
それに気付いてテンカワ様がラズリさんの方を向く。
ラズリさんは、引っ張っていない方の手で何かを指差す。
その先には小鍋。

「あっ」

ふいにもれたテンカワ様の
珍しく間抜けな声。
笑ってしまう私とラズリさん。
テンカワ様は小鍋をテーブルの上に持ってくる。
そして、お椀に中身をそそぐと、お箸と一緒に持ってきた。
私はゆっくりと起き上がる。
まったく!寝たかったのに・・・
あっ!でも、いいにおい。

「何か食べた方がいい。ちなみに、味覚がないんでな。味は保障しない」
「手作りですか!?」
「当たり前だろう?レトルトなんか冷蔵庫には無かったし、いつ目を覚ますか分からないのに買いにいくわけにも
 いかないだろ」
「だから、アキトが作ったの」

そっか。
お椀と箸を受け取る。
中身はすごくおいしそうな豚汁。
こういう時はお粥なのでは?というツッコミはやめておこう。
作ってもらったのに文句なんて言えない。
一口飲む。
あっ、おいしい。
というわけで、感想も言わずにパクパクと食べる。
ついでにおかわりってことで、お椀を差し出す。
・・・・・・・・おかしいですかね?
テンカワ様もラズリさんも目を丸くしてる・・・。

<無言で食べて、無言で差し出されたら・・・誰だって困る>
<あっ、そっか>

「おかわり下さい♪」
「分かった」

テンカワ様はお椀を受け取って、そそぎに行く。

「ベー○ーベンだって耳が聞こえなかったのに日光とか、
 数々の名曲を作り出しているから、
 味覚が無くてもおいしい料理は作れるものなんですね〜」

私の言葉で場は静まる。
時が止まったように・・・。
あっれー・・・・?

<弱点正確に突いた>
<えっ?>




「どーですか、ルリさん。ミナハさん。これが、我が社の誇る新造戦艦ナデシコです」

どこか誇らしげなプロスペクター様。
確かに、見たことがありますね。
さすがに東京タワーより少し小さいと思います。
だって333mですからね東京タワー。
第1感想は、変!とにかく変!
何て言ったらいいのか分からないけれど・・・
とりあえず、前方の左右が突き出ている。
普通の戦艦っていうのがどういうものなのかは知りませんから比較はできませんけれど・・・
これは、ありえないんじゃないかな〜って思います。
でも、真っ白。
多分ナデシコがユリ科だからじゃないかな?
あれ?ユリ科であってるのかな?
あれれ??
まあ、いいや。

「どうですか、初めて見るナデシコは」
「・・・・・・変な形」
「イメージしてたのと全然違います」
「はっはっは。これは手厳しいですなルリさん。ミナハさんはどんなのをお考えでしたか?」
「えっ!・・・本で見た奴です」
「それは軍の戦艦ですからなー」

言えない・・・
ユーチャリスを想像してたなんて言えない!
言ったら戸惑われる!
ちなみに、ユーチャリスはネルガル本社の海底ドックにあります。
説明お姉さんがなんとか会長を丸めて
極秘にしてくれたみたいです。
でも、過去の会長にどうやって持ちかけたんでしょう・・・。
社長以外知らないなんて・・・。
不思議な方です。
ツッコミどころが多そうで、ツッコメない方ですね。

「両舷側から張り出しているのは、ディストーション・フィールド発生ブレードだ。
    大気圏突破時も、ディストーション・フィールドを発生させることで、摩擦係数を減殺するようになっている」

む、無表情で説明されても、どう反応していいやら・・・。
摩擦係数・・・?
摩擦力の事でいいのかな?
2つの物体が、くっついている時にそのくっついている方向へと働く力。
これが摩擦力なんだけれど・・・
まあ、大気圏とナデシコ(?)が擦れる事によって起こる力を減らせるってところかな?
よし!そういう事にしよう

「戦艦ってことは、私達、軍人になるんですか?」

あっ、それは気になってた。
いくつか厳しいチェックみたいなの受けてきたし。
なんか軍服着てる人ばかりだったけど・・・。

「いえいえ。あくまでルリさんとミナハさんは、ネルガルの社員ということで」

社員・・・か。
なんか不思議な感じ。
記憶を無くして所属していた所も分からなくなって・・・
それで再就職みたいな感じ。
再就職じゃないか。

<再就職で間違いは無い。あなたはここに居たのだから>
<そう・・・。やっぱり、そうなんだ>
<覚えてるの?>
<体がね・・・。感覚的に覚えてるみたい。
 行きたがっているの。どこかに>
<そういう感覚は覚えておくべき。あなたが無意識に
 とても大切な・・・記憶に覚えておくべき事を
 思い出そうとしているのかも知れないから>
<うん。そうするね>

「いいんですか。民間企業が戦艦動かしても」

・・・?
どういう事ですかねホシノさん。

<つまり、戦艦は軍の許可が無ければ動かしてはいけないの。
 民間企業となると、戦闘中に民間船がうろついていて
 攻撃してしまったなんて事になりやすから>
<教えてくれてありがとう>

・・・とまあ、そういう事らしい。

「ま、そこはその蛇の道はヘビというか、魚心もあれば水心というか。
 ま、早い話がこれですな」

プロスペクター様は親指と人差し指で輪を作って見せてくれました。
えーっと・・・お金?
お金がどうしたの?

<どんな人間でも金があれば生きていけるでしょう?
 特に軍人は、命を張らなくてすむというわけ>

なるほど。そういうことか。

「そういうわけで、こうして軍のドックも使わせていただけるわけで。
 もっとも、このドックのレンタル料が、これまた高い。
 お役所ってのは基本的に言い値ですからね。
 競争のない分野はこれだから困りますなあ」

きょろきょろしてからプロスペクター様はため息と共に話した。
軍人は敵にしか対抗する分野が無いから
レンタルとかでお金を取るって事みたい。
なんか、私、小学生以下みたい・・・。

<仕方ないでしょう?勉強なんかさせなかったんだから>

・・・えっ?
させな、かった・・・?
それって・・・

「どういう事・・・。させなかったって」

あっ・・・。
声に出てしまった。
あうあうあうあうあう、ごまかさないと!
でも、どうやって?
頭の中の声のばっかやろぉおお!

<自業自得>
<うっさい!>

うわ・・・反撃されたし。
さっきのお返しかよ。

「だから、君には軍の専門用語を覚えさせなかったって言ったんだ」


Why?
誰?
後ろからの影で私の視界は少しだけ暗くなる。
ゆっくりと後ろを振り向くと―――


「いやいや、お待ちしておりましたよ」






**********************
前編です。
大変長らくお待たせしました。
ほんと、何ヶ月かかってんだよ!てな
感じですね。すいません。
執筆速度をもう少し上げたいです。
しかもギャグとかがなくて申し訳ないです。
後編でやっとナデシコメンバーの登場!

楽しみにしていてください。







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