第六話「水色宇宙に『ときめき』と『背負うモノ』」







《Side アキト》





地球圏を脱出して一息ついたナデシコのブリッジに、俺とガイとジュンの3人は来ていた。

ジュンはバツの悪そうな顔をしながら話し始めた。


「ユリカ、その………ごめん」

「ううん、ジュン君は悪くないよ」


ユリカは朗らかに笑いながら言う。


「ミスター、副長の処遇だが」

「はい、そうですな。
 ……もし、副長に復帰していただけるなら、今回の件は不問という事で……艦長が宜しければですが……」

「はい、構いません。
 ユリカもジュン君が居てくれると嬉しいな♪」

「ユっ、ユリカ………」


ジュンの表情が「パッ」と輝きが戻る。


「それにしてもユリカのためを思って軍を抜けちゃうなんて……さっすがジュン君、最高のお友達だねっ!!」

「「「「「「はぁ?」」」」」」


呆気にとられるみんな。

その中で、ミナトさんがおずおずと手を挙げて……


「あのね、艦長……副長が何のために、あんな事したか解ってる?」

「はい、親友のユリカのためだよねジュン君♪」

「……艦長は、副長の事どう思ってるんですか?」


メグミさんが続けて質問する。


「えっ……ジュン君は大切なお友達だよ?」


ユリカの返答に含むところは全く窺えない。

混じりっけなしの本気でそう思っているらしい。

この位、俺でも分かるのに………報われないなジュンの奴。


「副長も大変ねぇ」

「がんばって下さい。
 私、応援しますから」

「いいんです、慣れてますから……」


ミナトさんとメグミさんが励ますが、「ルル〜」っと涙を流すジュンの姿が妙に印象深かった。



「ただいま戻りました」


ユラが俺たちより二十分程遅れてブリッジにやってきた。

入ってきた時の表情が、どこか綻んでいる気がしたのは気のせいではないと思う。

たぶん、ウリバタケさんと例の話をしたからだろう。



入ってくるのと同時に、ユラに駆け寄る二人がいた。


「「おかえりなさい、ユラ」」

「ただいま………二人の期待に応えることが出来たかな?」

「もう、ばっちりだよ!!」

「ええ、充分に……いえ、それ以上の結果を出してくれたわ」


今のラピスちゃんとパールちゃんは、先程の戦闘の時の緊張した顔ではなく、年相応の微笑みを見せている。


「そうだ……ユラ君、ちょっといいかな?」

「何ですか?」


涙を流すジュンを素通りして、二人と談笑しているユラにユリカが質問する。


「さっきの戦闘の事なんだけど………えっとね……問題があるって訳じゃないの、本当にあの戦闘は完璧だった。
 ただ、ミサイルを撃墜して次の標的をロックするのに全然タイムラグがなかったでしょう?
 どんなパイロットでも、標的の位置を一瞬でも確認する筈。
 ………でも、ユラ君は位置を全て把握していたかのようにすぐに行動を起こして撃墜しているように見えたの。
 それに、常に位置を変えるミサイルを予測だけで把握できる動きじゃなく、確信を持って行動してるように見えた。
 ……ユラ君、いったいどんな方法を使ったの?」


ユリカの言葉で俺も気づいた。

今思い返すと、確かにタイムラグが無い。

いくらなんでも「凄い」の一言では納得できない動きだ。


「その秘密は……彼のサポートがあったから出来たんですよ」

『みなさん、こんにちは』


ユラの真横に突然ウィンドウが表示され、しかも挨拶してきた。


「彼がこのナデシコの中枢コンピューターAI、その名も……」

「「「「「「その名も………」」」」」


みんな、息を呑んで次の言葉を待つ。


「その名も………ってまだ考えてなかった」


俺を含む、ブリッジのみんなが盛大にコケる。(ルリちゃんたち3人は除く)

アレだけ焦らしておいてこれは無いよな………


「……オモイカネ」

「んっ?」

「オモイカネですよ、ユラさん」

「えっ………っと言う事は、もう名前付けちゃったの?」

「ハイ……ユラさん知らなかったんですか?
 ………おかしいですね、ラピスたちには言ってあるのに……」


その言葉を聞いて、「ギロリ」っといった感じにラピスちゃんとパールちゃんを睨むユラ。

一方の二人は、両手を合わせて謝る動作をしている。


「ふう、まあいいか………オモイカネ、おまえも一言くらい言ってほしかったぞ」

『すみません……言い出すタイミングが掴めなくて………』

「ナデシコに乗艦した時に言っただろう。
“これから仲間なんだから気軽に声を掛けてくれ”って言った筈だぞ?」

『以後、気をつけます』

「そんな堅苦しい敬語は使わなくていいぞ……ともかく、改めてよろしくなオモイカネ」

『ハイ、ユラ』


二人………二人でいいよな。

とにかく、二人の間でほのぼのっとした空気が流れる。


「あのさ、さっきの続きを聞かせてくれないか?」

「あっ、ごめん……じゃあ続きを話すぞ」


俺の言葉で、再び説明が始まった。


「さっきも言ったけど、オモイカネのサポートがあったからアノ動きができたんだ」

「どういうことなのかな?」

「ユリカさん、俺はマシンチャイルドだと言う事は知っていますよね?」


ユリカが「うんうん」っと頷く。


「俺のIFSは、パイロット用とオペレーター用の両方が使えます。
 あの戦闘中にオモイカネとリンクして、リアルタイムでミサイルの位置を教えて貰っていたんですよ。
 教えて貰った情報を脳内で処理して周囲全てを把握………これがあの動きの正体です」


ユラってオペレーターもできるのか………あれっ、両方使えるIFSなんてあるのか?

火星にはなかったけど……っと言っても一年前の話だし、地球でもそんなのがあったら話題になる筈。

う〜ん……考えても仕方が無いな。


「付け加えると、有人機なら気配を読んであれと同じ動きをする事が可能です。
 無人機だと、どうも気配が薄くてあの動きは中々できませんけどね………」


オイオイ、マジかよ………

ユラ……おまえ笑っているけど、すごいこと言っているぞ。



本当にユラは凄いと思う。

だけど、俺は…………自分の身ですら満足に守れない………

それが当たり前と言えば、当たり前だ……だって、俺はコックなんだから………

頭では理解している筈なのに……何故、どうして……こんなにも胸が痛いんだろう?

どうして……どうして……どうしてなんだっ!?

………なんだ、答えはとっくに出ているじゃないか。

ただ、“コック”の俺がそれを認めたくないだけだ。


「ユラ」

「んっ、なんだアキト?」

「俺を強くしてくれっ!!」


もう、後悔したくないっ!!

あの時、“火星で誰も助けられなかった”……あの時と同じなのは、もう嫌なんだっ!!

そう……俺はずっと………

両親の顔とその最後……ユートピアコロニーとアイちゃん……その姿が、次々と浮かび上がる。



………大切なモノを守れる力が欲しかったんだっ!!!





俺たちは今、エステバリスのシミュレーターの在る部屋にいる。

あのあと、ユラはすぐにOKをだしてくれた。

周りのみんなは、とても驚いた表情をしていた。

それが、俺の発言によるものなのか、ユラがすぐに了承した事なのかは解らない。

とりあえず、言われた通りの時間にここに来たけど………


「ガイ……なんでお前もいるんだ?」

「フッ、お前だけ秘密特訓をするなんて、黙って見ていられるかっ!!」

「二人とも、私語は慎むように……」


なんか、ユラの奴………妙に様になっているな。

ネルガルでも、こういう事をしていたのかな?

まっ、そんな事は気にしない事にしよう。

………しかし、いったいどんな風に鍛えてくれるんだろう?


「まずは二人とも………何で強くなりたい?」


唐突に、ユラから質問が投げ掛けられる。


「そんなの決まっているだろうっ、地球の平和を守るためだっ!!」

「ふむっ………アキトは?」

「俺は……もう、大切な人や場所を失いたくないから……それを守りたいから力が欲しい」

「そうか………二人とも、何かを守るために強くなりたいんだな。
 なら、覚悟はできているのか?」

「応っ、どんなに辛い特訓も耐えてみせるっ!!」

「俺もガイと同じ気持ちだっ!!」


ありのままの気持ちをぶつける………っが、ユラは大きな溜息を吐く。


「俺の言っている事は、そんな事じゃない。
 …………何をしてでも………例え人を殺してでも守る覚悟があるのか……っと訊いているんだ」


えっ……今、ユラはナンテイッタ


「なんで、人を殺す必要があるっ!?
 木星蜥蜴は、全部無人兵器だろっ!!」

「確かにそうだ………っが、それに人が乗っていとしたら………おまえは、それを討つ事が出来るか?」

「そっ、それは………」


先程まで、威勢が良かったガイが黙り込む。


「……でも、人が乗っていても破壊するだけが戦いじゃないんだろうっ!?
 ユラだって、そう言っていたじゃないかっ!?」

「それが、通じない敵がナデシコに襲い掛かって来たらどうする。
 ただ、お前は人を殺すのが嫌で、ナデシコがやられるのを見ているだけなのか、アキト?」
 
「あっ……うっ………」


何も言い返せない………


「大切なモノを奪う敵は、木星蜥蜴だけじゃない………人である可能性もあるんだ。
 敵にだって、理想や信念………お前達と同じ様に、守るべきモノために戦うのかもしれない。
 ………何かを守るとは、そう言う事だ」

「ユっ、ユラ……まさかっ!?」

「この両手は、既に紅く……綺麗な場所など残っていない。
 俺は………大切なモノを守るためなら、全身が紅く染まろうとも………守り抜く……」


俺は、自分の認識が甘かった事を痛感した。

ユラの言う通り、何かを守るとはそういう事だ。

……………俺にその覚悟はあるのか?

俺は……俺は……俺は……もう二度と、あの光景を見たくないっ!!

ふと、ガイと目が合う。

俺と同じで、ガイにも色々な葛藤があったのだと思う。

しかし、決心したのか………その瞳には一切の迷いが無い。


「もう一度訊こう……覚悟はあるのか……」

「腹は決まったぜっ!!」

「俺は………もう、何も失いたくないっ!!」

「わかった………二人とも、今から言う事を覚えておいてくれ」


俺たちは、「コクリ」頷く。

「“力に善悪は無い……それは、振るうお前達の心次第”………何が正しいのか、何が間違っているのかは俺にも判らない。
 だけど……後悔だけするなよ……今いった事と覚悟だけは、忘れないでくれ」

「応っ!!」

「ああっ!!」


俺は絶対に忘れない。

その一言一句を聞き逃す事なく、心に深く刻み込んだ。





そう応えた瞬間、ユラの顔が緩み。


「じゃあ、まずは俺とシミュレーターで対戦して、二人の実力をみよう」

「チョット待て………ユラ、それって凄く差がでないか?」

「安心しろ、アキト……俺はノーマルエステを使うから」

「それなら、まあ……」





そう思ったのが間違いだったっ!!

俺とガイの二人でユラに挑んでも、もうこれでもか……っと言うほどに、ボコボコにされた。

さらに……10戦10連敗と言う、もっとも不名誉な戦績を飾った。

ハッキリ言って、強すぎるぞぉ〜。



シミュレーターでの対戦が終り、ユラが最初に出した言葉が……「予想以上に厳しそうだ」っである。

すいません、弱くて……



「とりあえず、二人の欠点を述べよう」


……ってな訳で、反省会。

しかし、ユラ………そのメガネを何処から持ってきたっ!?


「まずは……ヤマダ……」

「ダイゴ……」

「シャラッァァァァプッ!!!」


ガイが言葉を吐く前に、それよりも早く大声で遮るユラ。

「おまえは俺の弟子………よって、師匠の前ではその名は封印。
 以後は、ヤマダっと呼ぶ………反論は許さんぞ」

すっ、凄い……ガイの怯んだ隙に、一気に畳み掛けて魂の名を封印する。

それに、何だか本物の先生みたいだ………


「話を戻すぞ……おまえは、突っ込み過ぎだっ!!
 何の考えもなしに突貫なんて、愚の骨頂だぞ。
 あと、格闘戦にも頼りすぎ………それに持ち込みたいのなら、ライフルで牽制くらいはしろ」


ああっ、ガイがドンドン落ち込んでいく………

後ろに背負っているのがブルーを通り越して、ブラックっだぞこれは!?


「まあ、近接戦闘……つまり、格闘戦には光るモノが在るがな………」


「ほっ、本当かっ!!!」


破顔一笑………一気にガイの雰囲気が明るくなる………やれやれ、単純な奴だ。



「次は、アキト………素人のエステバリスライダーっとしては良くやった方だ」


おっ、なんか俺っ褒められてる。


「ただし、あくまで素人での話だ」


あれっ?


「攻撃するなら、すぐに攻撃をしろ。
 一瞬の迷いが、戦いを左右する時だってあるんだぞ。
 あと………どれもこれも中途半端だっ!!
 近接、中距離、遠距離……全くの“才”が感じられない」


あっ、あうう………そ、そこまで言うかぁ〜。
もう少し、和らげていってくれよ……あっ、涙が………


「……だがな、アキト」


ううっ、まだあるのか……いっその事ズバっと、言ってくれっ………


「中途半端って事は、まだお前のスタイルは決まっていないっと言う事だ。
 それは、これから徐々に決めていけばいい。
 あと、お前はナイフや剣などの近接用の武器を使った戦いに向いているみたいだ。
 そこを伸ばしつつ、他の攻撃方法を覚えていこう」

「そっ、そうすれば強くなれるのか?」

「ああっ、俺が保障しよう」


さっきの気分がなんとやら、一気にテンションが上がる。

そうだっ、やれば何でもできるんだっ!!


「今日のところはここまでだ……明日の午前九時にトレーニングルームに集合だ。
 運動のできる動きやすい格好で来るように………以上で解散っ!!」


そう言って、ユラはこの場所をあとにした。


「なあ、アキト」

「んっ、なんだ?」

「あいつってさ……相当の修羅場を潜って来たんだな………」


そうだよな………あの言葉と瞳は力強く、決意の様なモノを感じた

ガイの言った通り、俺たちには想像もつかない道を歩んで来たんだろうな。


「そうだな………なあ、ガイ……ユラの事が怖いと思うか?」

「正直、分かんねえっ………おまえはどうなんだ?」

「俺も分からない……だけど、良い奴だって事は確かだな」

「俺も同感だ」


ふと……俺たちは笑い始めた。

何故かは解らない………ただ、笑いたかった。



しばらくの間、この場所が笑い声が絶える事は無かった。





《Side ユリカ》





私は今、アキト部屋のインターホンを鳴らし、ドアが開くの待つ。


「ハイハ〜イ……ちょっと待っててくれっ!!」


言われた通り、私は部屋の前で待つ。

この前、マスターキーを使って勝手に開けちゃったんだよね。

その時、まだアキトは着替え中で………(ポッ)

イヤ〜ン、だめよユリカ……あの時の事を思い出したらダメっ!!

あっ、でも……小さい頃に、お風呂で見たときより大きくなっ………


だから、駄目だって言ってるでしょうッ!!!


「何やってるんだ、ユリカ。
 顔を真っ赤にして、座り込んで?」


アっ、アキトっ………何時の間にっ!?

「なっ、何でもないのっ!!
 だから、気にしないでっ!!」

「だけどさぁ……」

「悪いのは、変な事を思い出しちゃうユリカなのぉ〜〜」

「……何だそりゃ?」

「とっ、とにかく……早く、トレーニングルームに行こう」

「何で俺の行き先を知っているんだ?
 ………あっ、おまえ……昨日、盗み聞きしていたなっ!!」

「ギクッ……ユリカは知らないよ。
 ユラ君が、今日の午前九時から特訓をするから、集合だなんて……」


「知っとるじゃないかぁぁっ!!!」


「ア〜〜ン、ゴメンなさぁぁ〜い」

「朝っぱらから、賑やかだな……」


ヤマダさん……いたんだ………





それから……何とか、アキトを説得して同行を許されて、一緒に目的地に向うことになった。



私たちはトレーニングルームに着いて、ドアを開けると……そこは、異質な空間だった。

上手く説明できないが………中に入った途端、濃密な何かが一点に集められている感じがする。

しかし、周りのそれは嫌なモノでは無い………むしろ……暖かく、心地よいモノだ。

そして、その中心に立っているのが……ユラ君であった。



声を掛けようとしたその時っ!?


「ハァァァァァッ………覇っ!!」


ユラ君の声と共に、先程まで在った空間が霧散する。


「フウッ………待たせてすまない」


余りに解らない事が、次々と起きたので頭が付いて行かない。

アキトもヤマダさんも、私と同じ様に「ボォ〜」っと突っ立っている。


「んっ、どうしたんだみんな?」

「ユっ、ユラ……今のはいったい………」


最初に正気に戻ったのはアキト。

続けて、私も言う。


「そっ、そうだよっ!?
 今のは、いったい何をしていたのっ!?」

「ああっ……大気の氣と体内の氣を、同時に練っていたんですよ」

「「「氣っ?」」」

「そうです………簡単に言うと、生き物の誰もが持つ生命エネルギーみたいなモノです」

「フ〜ン………でも、どんな使い方をするの?」

「そうですね………よっ」


一瞬で、私たちの前からユラ君の姿が消えるっ!?


「何処なの、ユラ君っ!?」

「いったい、何処にっ!?」

「オイオイ、かくれんぼする歳じゃねえだろっ!?」


アキトとヤマダさん共に探すが、私たちの前には影も形も無い。


「ここですよ、ユリカさん」


ふと、後ろから声を掛けられたので、振り向くと………


「ユっ、ユラ君!?」

「えっ!?」

「なにぃっ!?」


私たちの後ろに、ユラ君がニコニコと笑っていた。


「これが、応用です。
 今のは、氣で身体能力を強化して爆発的なスピードで動ける様にしました。
 あと、他にも…………」


ユラ君が、天井から吊るされたサンドバックの前に移動し始め。

およそ10m程離れた所で止まり、おもむろに手の平を向ける。


掌氣弾(しょうきだん)


手のひらから、何かエネルギーの塊が飛び出しサンドバックを木っ端微塵にする。


「……っで、今のが体内の氣を集めて放つ技です。
 これは初歩の技で、比較的に使い易くて簡単にできます。
 えっと………ユリカさん、あと他に何か質問がありますか?」


そう言われるが、余りの出来事に声が出ない。

私は、どう答えて言いか分からずに黙り込んでしまう………


「「すっ、凄えぇっ!!!」」


えっ?


「ユユユユっ、ユラっ……今のどうやるんだっ!!」

「落ちつけアキト……ちゃんと順番に説明していくから待ってろ」



「………っと最終的には、この二つ基本的に使いこなし……幾多の技も含めて完璧にモノにして貰う」

「ほっ、本当かユラっ!!」

「うおぉぉぉっ、なんて燃える技なんだっ!!」


アキトもヤマダさんも、あんなに瞳をキラキラさせて………

男の子って、なんでこういうのに弱いのかな?


「ユリカさんは、見学ですか?」

「へっ、え〜っと……いいのかな?」

「どうせ、最初からそのつもりだったんでしょう?」


そう言って、ユラ君が意地の悪そうな目を向けて来る。

ううっ、イジワル………





「さて、二人とも鍛錬に入るぞ」

「よろしくお願いします」

「オウっ、頼むぜっ」


そうして、二人の特訓が始まった。

私は、部屋の隅でそれを見学させて貰っている。

アキトとヤマダさんの格好は、ネルガルからの支給品の紅いジャージ姿。

一方のユラ君は青いスポーツウェア姿に、邪魔にならないよう髪をポニーテールに結んでいる。


「二人とも、しばらくは基礎体力作りに専念する。
まずは……このランニングマシーンで、1Km走って貰おう」

「へっ、それでいいのか?」

「なんか、拍子抜けだな」


そう言いながら、二人はマシーンの上に乗って走り始めた。

すると……ユラ君が、床に札の様な物を貼り始め。

ちょうど、それがアキトたちを四角で囲むような形になっていた。


真空領域(しんくうりょういき)


ユラ君が何かの印を結んで、そう呟くのと同時に薄い膜が二人を包む。


「ユラ君、これはなんなの?」

「これはですね………」

「お〜い、ユラ……何か……息苦しい……んっだけど………」

「そりゃそうだ……今、おまえたちの周りだけは標高2000mの場所と同じなんだからな」

「「なにぃぃぃっ!!」」


えっ、どうやってそんな事………もしかしてっ!?


「ユラ君、あの膜の所為なの?」

「さすがですね、ユリカさん。
 あれは、俺が作り出した人工のフィールドです。
 まあ、本来の使い方ではありませんけど………」

「ほえ〜っ、ユラ君って色々できるんだね♪」

「俺にだって出来ない事はありますよ。
 完璧な人間なんていません………誰にだって、欠点の一つや二つあります」


私に微笑みながら、そんな風に言うユラ君。

う〜ん、確かにそうかも………

完璧な人間……そんな人はいないと思う。

もし、居たとしたら……その人は、本当に人間なのだろうか?

少なくとも、私はそう思ってしまう。



あのビックバリアの戦闘を見て、正直に言うと………ユラ君が少し怖かった。

あの状況下で、ミス一つ無く成功させた事に畏怖の念を抱いたし、人にこんな事が出来るのか……っと疑問も持った。

………けれども、私は安心した。

だって、ユラ君も欠点がある普通の男の子なんだと分かっやから………

そうだよね……こうやって微笑んでいる姿も、あの戦闘での姿も……両方ともユラ君なんだよね。

そう考えたら、私は本当の意味でユラ君を受け入れる事ができた気がする。

だから、これは………


「これからもよろしくね、ユラ君♪」

「へっ……ハァ、よろしくお願いします」


本当の友達になった挨拶。





そして、ちょうど正午に為った所で………



「よしっ、今日の鍛錬は終了だっ!!」

「はぁぁぁぁっ……やっと、終わった………」

「疲れたぁぁぁぁっ!!」

「ガイ……いきなり、それかよ……」


最後の座禅が終わって、大の字に寝る二人。


「お疲れ様、アキト」

「おまえ、見ているだけで暇じゃなかったのか?」

「ううん、結構おもしろかったよ」


あのマラソンが終わった後に、腕立て・腹筋・スクワットを50回を5本セットを行い。

背筋を鍛えるため、背すじを伸ばしたまま10キロのバーベルをお腹まで持ち上げるのを、20回を3セット。

そして………

「なあ、ユラ……最後の座禅は何の意味があったんだ?
 何か途中で、『バッタが前から来たぞ』っとか、『今度はミサイルだ』っとか……言ってきて……
 しかも、『頭でどう対処するか想像しろ』って言われた通りにしたけど……何の意味があったんだ?」

「アキト……それは、その内わかると思うぞ」

「???」


アキトは、訳が解らないっといった感じの顔をする。


「こりゃあ、明日は筋肉痛だろうな………」


ヤマダさんが、明日の事を想像して辛そうな顔をする。


「それなら大丈夫だ………二人とも、背中の札を外せ」

「えっ……あっ、本当だ。
 いったい、何時の間に………」

「アキト、俺にも付いているか?」

「ああっ、しっかりと付いているぞ」


二人とも、自分の背に貼られた札を外す。


「ねえねえ、ユラ君……これって、何の意味があるの?」

「簡単言うと、許容範囲はありますが……これを貼っておくと筋肉痛にならないんですよ。
 まあ、トレーニング前に貼らないと効果は無いので予防措置みたいなものです。
 ちなみに、疲れは取れませんが………」

「わ〜あっ、便利だね」

「……つうかっ、何時の間に貼ったんだ?」

「最初に、氣の説明した時に後ろに廻っただろう……その時だよ」


ああっ、あの時にっ!!

三人揃って、手を「ポン」っと叩く。


「さて……俺は用事があるから先に失礼させて貰う
 あと、ヤマダ……アキトにOG戦フレームの訓練を頼む」

「応っ、任せとけっ!!」

「じゃあ、また後で………」

「ありがとな、ユラ」

「また、頼むぜっ!!」

「ああっ」


そう言って、ユラ君はトレーニングルームを後にした。



「食堂へ行こうか、アキト」

「パス……何か胃が受け付けない」

「だめだよぉ〜、ちゃんとご飯食べないと……」


それに、ユラ君から頼まれているんだから。


「けどなあ……」

「いいから行こうっ!!」

「ちっ、ちょっと待て……腕を引っ張るな」

「食堂に、レッツゴオォ〜っ!!」

「まっ、待て……俺も行く」


アキトとのランチタイム……早く、食堂に行こう♪





「ホウメイさんっ!!」


食堂に着いた私は、すぐにホウメイさんの所に駆ける。


「んっ、艦長に……テンカワたちか、いらっしゃい。
 ちょっとまってな……すぐに温めるから」

「えっ、ホウメイさん……私たち、まだ頼んでいませんけど?」

「実はユラから、コレをテンカワたちに食わせてやれって言われてんだよ」

「ユラ君が?」

「そうだよ……まあ、席に着いて待ってな」


言われた通りに、私たちは席について待つ事にした。

いったい、何がくるんだろう?

何だか、ワクワクしちゃうっ!!



十分後………

ようやく、私たちの前に料理が運ばれた。


「ホウメイさん、コレっ何っスか?」

「これは、ボルシチって言ってね……ロシアの家庭料理さ。
 簡単言うと、牛肉と野菜の煮込みスープだね。
 本来は、赤カブでこの赤色を出すんだが……今回は、トマトで代用したみたいだよ」


うわぁ〜、おいしそう………

綺麗な赤色のスープに、四種類の野菜と牛肉が程よく煮込まれており、湯気と良い匂いが立ち昇っている。

では………


「「「いただきます」」」


三人同時に、口に入れる。


「旨いっ!!」

「おいしーいっ!!」

「うめぇぇえぇぇっ!!」


一度、口に入れたらもう止まらない。

皿のボルシチが口の中に、ドンドン消えていく。

ホクホクと甘い人参とジャガイモに、スープにはキャベツと玉ねぎの旨みが溶け出している。

そして、牛肉は凄く柔らかくて口の中でトロける。

もう、おいしくて何回もおかわりしてしまう私たち………

あっという間に、鍋のボルシチをお腹に納めてしまった。


「あ〜っ、旨かったな」

「本当だねぇ〜」

「もっ、もう食えんっ」


お腹も膨れて、ノンビリしていると……ホウメイさんが寄ってきた。


「テンカワ、ヤマダ……ユラに感謝するんだよ」

「「えっ?」」

「あんた達、運動で胃が何も受けつかなかったんだろう?
 それを予想して、ユラがこのボルシチを作っておいたんだよ。
 良く煮込んであったから、食べやすかっただろう」

「そういえば……」

「ああ、確かに……」

「まったく、本当にできた子だよ」


アキトたちの事、そこまで考えてくれてたんだ。

あとで、ちゃんとお礼を言っておかないと………


「さて、テンカワ……これから食堂の仕事だよ……早く着替えてきなっ!!」

「ハっ、ハイッ!!」


駆け足で食堂を後にする、アキト。

あっ、そろそろ忙しくなる時間か……

確か今日は、一時過ぎから開店するんだっけ……

じゃあ、私も行かないとね。


「ホウメイさん、ごちそうさまでした」

「ハイよ……またのお越しを………」


私はブリッジへと向かう………さあっ、お仕事がんばろうっ!!





《Side ユラ》





「もうすぐ、サツキミドリか……」


ブリッジに向かう通路を歩きながら、ポツリっと呟く。

サツキミドリ崩壊は、ナデシコクルーが初めて死というモノに直面した出来事。

何とか被害を最小限にするために、俺はある案をユリカさんとプロスさんに持っていく事にした。





ブリッジのドアがスライドし、中に入るとすぐに話をしている二人の所に近づく。


「あっ、ユラ君……さっきはごちそうさま♪」


先に、ユリカさんが俺に気づいたようだ。


「おそまつさまです……味の方はどうでしたか?」

「もう、すっっごっくおいしかったよぉ〜」

「ありがとうございます……実は、ユリカさんとプロスさんにお話が……」

「はて、何でしょうか?」

「それは………………」



「宇宙空間でのフレームテストですか……」

「ハイ……念のため、高機動フレームのブースターの調子を見ておこうと思って……」


そう、これが俺の案だ。

襲われる前に、サツキミドリで応戦すれば被害も少なくなる筈。

ついでに、アレの設計図も本社に送っておきたいし………


「それで、フルドライブでサツキミドリまでですか………艦長、いかがなさいますか?」

「許可します……先に、サツキミドリでお迎えの準備しておいてね♪」


微笑みながら、OKをだしてくれるユリカさん。

よしっ、これで何とかなりそうだ。


「それじゃあ、さっそく行ってきます」

「気をつけてねぇ〜」

「道中、お気をつけください……」


俺は、すぐに格納庫に向かった。





整備班の人たちが、急いで換装作業をしていてくれるのがピット内のモニターに映る。


「よーしっ、おめぇらっ……高機動フレームの換装とバッテリーの取り付けは万端か?」


拡声器を使ったウリバタケさんの声が響く。


「「「「「完了しましたっ!!」」」」」


「おうっ………ユラ、OKだ」

「了解です……すみません、急な作業を持ってきて……」


外部スピーカーを使って、答えを返す。


「気にすんな……これが、俺たちの仕事だからよっ」


同じ様に、ウリバタケさんが、拡声器で答えを返す。


「ハイ……じゃあ、行ってきます」

「気をつけろよぉぉぉっ!!」





カタパルトまで移動し、発進体勢に入る。

……っと、コミュニケが入ってきた。


『ユラ、向こうでちゃんと待っててね』

『事故とか、ケガの無いようにしてね』

「分かってるよ、ラピス、パール……」


心配性だな二人は……でも、これから戦闘になるんだから、また心配を掛ける事になる。

すまない………っと心の中で謝る。


『重力カタパルト起動』


ルリちゃんの声と同時に、機体が宙に浮く。


「ユラ・マルス、高機動フレーム……発進する」


機体が加速し、ブースターを吹かせ漆黒の宇宙へと飛び出す。

さあ行こう……………





………ふむ、どうやら宇宙空間でも大丈夫のみたいだ。

ナデシコから発進して、一時間が経った位だろうか……今の所、ブースターや各スラスターに異常は無い。


「各関節部、駆動機関にも問題なし……良好、良好……おっ、見えてきた」


モニターで、サツキミドリの姿を確認した。

んっ、あの後方にある影は何だろう?

気になるな……調べてみるか。

カメラアイを最大までズームアップする……っが、丁度サツキミドリに隠れるような位置にいるので、上手く見えない。

少し場所を変えてみるか………っと向こうから通信が送られてきた。


『こちら、サツキミドリ二号……そちらの所属を教えたし……』

「NERGAL ND−001 ナデシコ、パイロット班所属ユラ・マルス」

『ナデシコ乗員コード……及び、声紋を照合中………本人と断定。
 入港を許可します、……ようこそ、サツキミドリ二号へ……」


入港する場所のデータが送られ、それに従い第3ドッグから入港する。





………ドッグの奥にあるエステバリスハンガーに機体を固定して、ようやく外に出る事が出来た。

すぐに、ここの整備班が機体に駆けつけて来る。

その中で、ここの主任らしき中年男性が話しかけてきた。


「ほうっ……これは、従来のエステバリスとは違うタイプだな。
 ………君がコレのパイロットかな?」

「ええ、そうです………失礼ですが、あなたは?」

「これは失敬……サツキミドリ二号整備班主任マツダだ。
 よろしく、ユラお嬢ちゃん」


またか………


「俺……男です」

「知っているよ……ちょっとカラかっただけだ」


………やるなこの人。



上着の胸ポケットからタバコを取り出し、それに火を点けて話を続けてくる。


「それより……このエステバリスはここにある最新型より、性能は上みたいだが………」

「次世代の試作型エステバリスを専用に改造した物です。
 ただ、自分専用にしたから俺以外の人にはちょっと………」

「……だろうな、随分とイカれた機体だぜ」

「褒め言葉として受け取っておきます」


その言葉を聞いて、「ピュー」っと口笛を鳴らすマツダさん。


「言うじゃねえか……よしっ、何処のチェックをして置けばイイ?」

「各スラスターとブースターを中心に……あと、バッテリーの充電もお願いします」

「了解、入念にやっておくよ」


格納庫を出て、管制塔に向かう。





管制塔の中に入ると、管制員たちが止まる事なく作業を続けている。

ふと、目の前を通り過ぎようとする若い女性スタッフを呼び止める。


「お忙しいところスミマセン……ここの最高責任者にお会いしたいのですが……」

「ハっ、ハイっ!!
 すっ、すぐにご案内しますっ!!」

「ハァ……どうも………」


何かスゴク勢いのある人だな……顔も赤かったし………風邪かな?

そんな事を考えながら、その人の案内に付いて行く………





「だからっ……いつになったら、ナデシコが来るんだって言ってんだよっ!!!」


どうやら、先客いるようだ………しかし、何処かで聞いた事のある声だな?

などと思っていたら、ドアがスライドし中に入っていた。


「失礼致します、お客様をお連れしました」

「おっ、そうか……ありがとう、君は下がりたまえ……」

「ハイ………では、失礼します」


案内してくれた人が出て行く前に……


「案内……ありがとうございます」


その言葉に、ニッコリと微笑みその場を後にした。


「待たせたな………私がここの最高責任者で所長のホンダだ……ようこ……」


「てめぇ、こっちの話はまだ終わってねぇぞっ!!!」


「リョーコさん、俺の紹介させてくださいよ」

「気安く名前を呼ぶ……な……ってユラじゃねえかっ!?」

「お久し振りです、リョーコさん……スカウト交渉の時以来ですね」

ようやく、俺の事に気づいてくれた……彼女、怒ると周りが見えなくなるからな。

俺の姿を確認すると、次々と質問をしてくる。


「何でお前がここにっ!?
 それより、ナデシコはもう着いたのかっ!?
 ああーーっ……早く、答えろっ!!!


……っと言いながら、凄い形相で迫ってくる。


「説明しますから、とっ、とりあえず……落ちついてください。
 ………最初に、ナデシコはまだ着いていません。
 俺がサツキミドリにいるのは、機体のテストを兼ねて先に来たからです。
 ここにいるのは、ネルガルの社員として挨拶を………」

「なんでぇ、まだ着いてねえのか………」


先程とは打って変わって、落胆の表情を浮かべるリョーコさん。

しかし、これでやっと話ができる。

ホンダ所長の座る机の前まで行き、姿勢を正して………


「ネルガル重工新造戦艦 NERGAL ND−001 ナデシコ、パイロット班所属ユラ・マルスです。
 ……ご挨拶が遅れて申し訳ありませんでした」

「嫌、気にしなくていい……しかし、若いのに礼儀正しいねえ」

「ハイ、ありがとうございます」

「大体は、君たちの会話を横から聞いていたので承知している。
 まあ、ナデシコの到着までゆっくりしていきなさい」

「ハイ……ですが、少々気になる事がありまして………」

「気になる事?」

「実は………」

「すいませ〜ん、リョーコを迎えに来ました♪」

「……来ました」


ホンダ所長に説明する前に、誰かが割り込みでこの部屋に入ってきた。

………まあ、誰かは検討が付くけどね。


「ヒカル、イズミ……迎えってどういう事だ?」

「リョ−コの事だから、頭に血が上って暴れていると思っていたけど……」

「こりゃ、ビックリ……意外に冷静……」


やれやれ……本当にマイペースな人たちだ。

でも、これも彼女たちの強さなのかもしれない。

「あっ、ユラ君を発見」

「どうもお久しぶりですね……ヒカルさん、イズミさん」

「新作のネタ……聞いてくれる」

「断固として遠慮します♪」


時が凍るのは勘弁して……


「チッ」


オイオイ……「チッ」って何?

しかし……このままだと、まともな話ができないな………仕方が無い。


「所長……お話は管制室でします。
 御同行をお願いしてもよろしいでしょうか?」

「うむ、いいだろう」


所長が椅子から立ち上がり、俺と共に移動を開始した。


「オイっ、待てよ……俺たちもイイか?」

「ええっ、そっちの方が俺としても都合が良いです」

「それじゃあ……レッツゴウーっ!!」

「行きましょうか……」


リョーコさん、ヒカルさん、イズミさんと続く……何気にシリアスモードですねイズミさん。

この人は、こういうのにかなり敏感だからな。






全員が管制室に着くと、俺はすぐに行動に移る。


「ホンダ所長、外部の監視カメラを操作してもいいですか?」

「別に構わんが……いったい、何をするんだね?」

「ただ、確認したいだけです……あのが何なのか………」

ってなんだ?」


リョーコさんが質問してくる。

いきなり、「」っと言っても意味が分かる筈が無い。


「実は、ここに入る時に妙な影をみたんですよ。
 それが、どうしても気になって……」


携帯用のIFSコネクターを取り出し、ここのコンピューターと接続する。

すぐに手を置くと、手の甲の紋様が光を放つ。

あの影………俺の予想が正しければ、あれはおそらく……



「………やっぱりか……マズイな」


捜査を開始してから十分が経過した頃、その正体を突き止める。

できれば、当たって欲しくない予想が見事に的中した。


「どうしたの、何がマズイの?」

「コレを見てもらえば解りますよ、ヒカルさん」


メインモニターに、影の正体の映像を回す。


「オイ……こりゃぁ………」

「死神が見えてきたわね」

「大ピンチって感じ〜〜」

リョーコさんが驚く中で……周りの人達も作業を一時中断したモニターを凝視する。

それはそうだろう……ほぼ目と鼻の先に………


「チューリップが何故ここにっ!?」


所長の叫びを合図に、管制室の職員がパニックを起こす。



しょうがないな………腕を広げて、勢いをつけて柏手を打つ。

「パァッッン」っと、大きな音が部屋に鳴り響く。

それと同時に、職員たちの騒ぎがピタリっと止まる。



「皆さん、落ちついて俺の話を聞いてください」


これ以上の騒ぎにならないように、微笑みながら諭す様に話し始める。


「木星蜥蜴の無人兵器は、相転移エンジンのエネルギーに反応します。
 このサツキミドリには、それが無い……だから、活動はしない筈です」

「しかし、ユラ君……もうすぐ、ナデシコが……」

「所長、ナデシコが着くまでに多少の時間はあります。
 準備を含めて、脱出をするには充分な時間です」

「ここを放棄するのか?」


その言葉に、管制室がざわつき出す。

それは当然だろう……「今まで過ごしてきた仕事場を捨てる」っと言っているのだから。

しかし………


「皆さん……ここは、皆さんが居て初めて機能するんです。
 物はまた作れても、人である皆さんに代用なんてありませんっ!!
 だから……生きましょう」


シーンと静まる室内……っと所長が一歩前に出てどこかに向かう。

着いた場所は、放送用のインカムの前。

そのスイッチを入れて………


「私は所長のホンダだ……今より、サツキミドリ内の全職員に通達する。
 現在、サツキミドリ近郊に木星蜥蜴のチューリップを発見した。
 ……落ちついて聞いて欲しい……現時刻を持ってここを放棄する。
 各員は速やかに脱出の準備を整えよ……以上だ」


インカムを外し、「フゥ」っとタメ息を吐く。


「これでいいかね、ユラ君?」

「ハイ……ありがとうございます」

「礼は言わんでくれ、コレが私の仕事だ。
 ……皆、呆けている場合かっ、速やかに作業を開始しろっ!!!


「「「「「ハっ、ハイっっ!!!」」」」」


ホンダ所長の掛け声と共に、皆がそれぞれの作業を開始する。



「リョーコさん、ヒカルさん、イズミさん……俺達はエステバリスで待機しましょう」

「戦えるのはアタシたちだけだからな……」

「安全圏に避難できるまでの護衛って訳ね」

「がんばりますか♪」


リョーコさん、イズミさん、ヒカルさんと順番に答えを返してくる。

三人の顔には、恐怖や不安といったモノが感じられない。

むしろ、これからの戦いを“望む所だ”といった顔だ。

頼もしいパイロットだな、彼女達は………


「すいません、先に行って下さい」

「応、早く来いよ」

「まったね〜」


そう言って、彼女達は格納庫へ向かった……何故か、イズミさんだけがウクレレを弾きながら去って行った。

いったい、何処から出したんだろう?



「ホンダ所長」

「んっ、なんだね?」

「ナデシコはこの近くまで来ている筈……だから、救援とOG戦フレームを届けて下さい。
 あと……これをお願いします……」


俺は、懐から一枚のデータディスクを手渡した。


「これは、いったい?」

「ネルガル本社に届けてください。
 俺の名前を出せばすぐに取りに来てくれますから」

「中身については聞かないでくれ……っと言う事でいいのかな?」

「ハイ………」

「了解した……責任を持って届けよう」

「よろしくお願いします」


俺はホンダ所長に頭を下げて、その場を後にした。



……あのデータは、二人にとって役立つ筈だ。

完成は……火星から戻った頃かな?

その時が来たら、驚くだろうなあの二人………





迫り来るバッタに、両手のハンドガンの照準を合わせて、鉄爪(ひきがね)を三回引く。

銃口から吐き出された弾は計六発、それに合わせるかのかの様に爆発する六機のバッタ。


「倒しても、倒してもキリがないな……おっと……」


愚痴を零していたら、三機のバッタが体当たりを仕掛けて来るのを避ける。

まったく、愚痴を零す時間くらい持たせろっ!!

すぐに、ハンドガンで迎撃してこれを破壊する。



サツキミドリの全員の準備を終え、脱出を開始して数十分後………チューリップが活動し始めた。

それは、ナデシコの相転移エンジンに反応したのか、俺達の行動に反応したのか分からない。

だが、俺たちはナデシコが来るまで戦うしかなかった。



先程、脱出艇が全て出たのを確認できた……後は、できるだけコイツ等をここに留めるのが俺たちの仕事だ。

しかし、バッテリーがあるとは言え……エネルギーの浪費は抑えなくてはならない。

そのため、フィールドは極力使うのは避けている………それは、リョーコさん達も同じ事だ。



リョーコさんの赤い機体は、主に接近戦で戦い。

ヒカルさんの黄の機体、イズミさんの青緑の機体はラピッドライフルでのフォローに回っている。

それを見て、彼女達のチームワークは素晴らしいものだと解る。

……だが、戦闘の最初の頃と比べると勢いが無い。

バッテリーの残量、弾薬の残数の事もあるが………一番は、やはり疲労だろう。

戦闘開始から小一時間は経過しているし、サバイバル戦によるプレッシャーも一因している。





………拙いな。

リョーコさん達のエステのバッテリーは、もう限界に近い。

どうする………切り札を使うしかないか………

しかし、分の悪い賭けになりそうだ。

これを使えば、チューリップは確実に破壊できるが……周りの無数のバッタも全て破壊できるかどうか………

さらに……莫大なエネルギーを喰うために、エステが停止する恐れがある。

仮に使ったとして、バッタを全て破壊できずにエネルギー切れを起こしたら………確実にTHE ENDだ。

よって、今の状況では使い所が難しい。



使う事を迷いながら、バッタを二刀の“フラガラッハ”で斬り裂いて迎撃していく。

………っと。


『ちきしょうっ……もうエネルギーが……』

『こっちも、ヤバいっスよ』

『私の方も駄目……』


リョーコさん、ヒカルさん、イズミさん……っと順に通信が入ってくる。

さすがに、限界だな………やるなら、今しかないっ!!


「皆さん、派手なヤツを使いますから巻き込まれない様に離れてくださいっ!!」

『………分かった、頼んだぞ』


俺の表情から、今からする事の重大さを汲み取ったのか、リョーコさんはあっさりと引き下がってくれた。

「分の悪い賭けは嫌いじゃない」か………某ロボットシミレーションゲームのキャラの心情もこんな感じだったのかな。


「リミット………」


覚悟を決めて使おうとした瞬間っ!!


『グラビティブラスト発射っ!!!』


掛け声と共に、俺の横を通り過ぎる黒い光の奔流がバッタを飲み込んでいく。

あの声に、グラビティブラスト……って事はっ!?


『ユラ君、お待た………』


『ユラっ、大丈夫っ!?』


『ケガとかしてないわよねっ!?』


先に出ていたユリカさんのウィンドウを弾き飛ばし、ラピスとパールが泣きそうな顔をして叫んでくる。


「心配を掛けてすまない……でも、大丈夫だ。
 この通り、無事だよ………」


二人に笑いかけて、無事をアピールする。


『良かったぁ………もう、心配したんだよ』

『脱出してきたサツキミドリの人達に事情を聞いた時、パニックになって何も考えられなかったわ』

「何度も言うけど心配を掛けてすまない。
 ………そう言えば、サツキミドリの人達は?」

『それなら、ご心配なく………軽傷者は出ていましたが、全員無事でした。
 今頃、月に向かっている筈です』

「そうか………ありがとう、ルリちゃん」

『いえ、仕事ですから……』


そうは言っているが、彼女の頬は少し赤くなっていたのを俺は見逃さなかった。


『う〜〜、私を無視しないでぇ〜〜』

「別に無視していた訳では………」

『ぜっっったいに、ユリカの事を無視してたでしょう。
 も〜う、プンプ〜〜ン………』

「だから、無視していませんって……って言うか、プンプンって何ですか?」


いい年齢して、頬を膨らませないでくださいユリカさん………


『お〜い、ユリカぁ〜〜〜。
 早く出撃許可を出してくれ〜〜〜』

『あっ、ゴメンなさい………アキト機、発進してください』


『ヒーローの俺を忘れるなぁぁぁぁぁっ!!!』


『ついでに、ヤマダさんもお願いします』


例の如く、叫ぶヤマダだが………

「都合により省略」………っだそうだ。

哀れなり、ヤマダ ジロウ…………変な電波を受信してしまった。





エネルギー切れの心配が無くなり、アキト達を新たな戦力として加え、反撃を開始した。


『オラオラ、オラオラぁーーっ!!』

『ほ〜ら、お花畑〜〜』

『落とさせて貰います』


今までの鬱憤(うっぷん)を晴らす様に、彼女達の凄まじい勢いに敵は無かった。

リョーコさんは、とにかく殴る、殴る、殴る、殴る……の連打でバッタを破壊していく。

ヒカルさんは、時にはライフルで撃ち、またバッタ群にフィールドアタックを仕掛けて、紅蓮の華を咲かせる。

イズミさんは、素早く正確にライフルで次々と撃ち抜いていく。


一方、アキトたちは………


『ゲキガンッッッフレァァァアァァっ!!!』


ヤマダは、突撃、突撃、突撃の繰り返し。

アキトは、ヤマダの零したバッタを丁寧に倒していく。

今回はただの考えナシの突撃ではなく、アキトをフォローに当てている所を見ると、少しはマシなったと言える。



突如、猛スピードで一機のバッタがアキトに迫る。


「アキトっ、二時方向に敵が来ているぞっ!!」

『えっ、にじほうこう?』

「バカっ!!
 前方の右斜めの方向の事だっ!!」


ようやく気づき、敵影を確認したと思ったら………

アキトのエステは、その身を少しだけ後ろに引いてこれを避ける。

しかも、アキトは交差した瞬間に、何時の間にか取り出したイミディエットナイフで斬りつけていた。

斬られたバッタは、アキトから少し離れた所で爆発する。


『………今のは……俺がやったのかっ!?』


自分のした事が、「信じられないっ」といった顔するアキト。


「その通り……いい動きだったぞ」

『嫌……なんか身体が勝手にというか……』

「………アキト、座禅を覚えているか?」

『ああっ………横から、「バッタが来ているぞ」ってうるさかったけど……もしかしてっ!?』

「そう言う事だ。
 あれは、イメージトレーニング一種……攻撃された時の対処法をイメージして貰った。
 IFS……つまり、イメージ・フィードバック・システムはイメージが大切だからね。
 しかし、やらせた本人が言うのも何だが……ここまで、上手く行くとは予想外だった」

『ヲイっ………』

「まっ、結果よければ全て良し……って事で………」



「アハッハハハハ」っと俺の乾いた笑い声が、ピット内を包む。


『アキトぉぉっ、ボケっとするなっ!!』

『ガ、ガイっ……いきなりなんだよっ!?』


俺たちの会話に、突如割り込むヤマダ。


例のアレ……やるぞ………』

アレを………よぉぉしっ、やるかっ!!』


いったい、何をするのやら………


『いくぞぉぉぉっ、アキトぉぉぉっ!!!』


『いっっっけえぇぇぇぇぇっ!!!』


『『ダブルゥッッ・ゲキガンッッフレアァァァァッ!!!』』


叫び声と共に、バッタの一団に突撃する二人。

その威力は凄まじく、一団だけを倒しただけでは終わらず、次々と他の一団にも突撃する。

そして……僅か数分で、50機以上のバッタを撃墜という記録を残した。



う〜ん……原作アニメでは、見られない光景だな。





ナデシコが来てからも、受身でバッタを迎撃していたが………

そろそろ、エネルギーも溜まってきたし……俺も攻めるっ!!!


「艦長、チューリップの破壊に行ってきます」

『ハ〜イ…………って、ハイぃぃぃぃぃっ!?』


淡々と言った所為か、最初は「のほほん」っとしていたが、トンデモナイ事を言われたのに気づいて驚くユリカさん。


『ちょっと待って、いくらユラ君でも無茶だよっ!?』

「大丈夫です………このフレームの切り札を使いますから」

切り札?』

「ええっ……観ていて下さい」


ブースターを吹かし、全速力でチューリップへと向かう。

途中、幾度もバッタが妨害してくるが……止められる筈も無く破壊される。





………目的のポイントに辿り着くと、すぐに実行に移す。


「……リミットブレイク


―――機体の制御プログラムにアクセス。


              コード  アンスウエラー
―――解除確認  CODE Ansuerer 起動。


両手に持っていた“フラガラッハ”を合わせて、“アンサラー”にして構える。

すると、剣から青白い光が溢れ出す。

ビックバリアの時とは違い、光は伸びずに剣の周りに留まっている。

これは、俺が意識的にエネルギーを圧縮しているのだ。

IFSとは、文字通りイメージを伝達するシステムであり、俺のイメージが形を成した姿だ。


―――ジェネレーター出力最大。


―――IFSフィードバックレベル2…4…7………10に移行。


機体の出力が爆発的に高まり、全体を駆け巡る。

剣の切っ先をチューリップに向けた前掲姿勢を取り………突撃する。


―――ウイング展開、ブースター・フルドライブ。


加速、加速、加速、加速するっ!!

その速度は音速となり、誰も寄せつけさせる事はできない。

そして、次第に剣から発する青白い光が機体を包み込む。

その姿は、まるで一振りの剣の様に見えるだろう。

これが、このフレームの切り札であり、アンサラーの真の姿だ。


「いっっっけぇぇぇぇぇっ!!!」


迎撃にと襲い掛かる触手は、光に触れた途端に消滅して攻撃の意味を為さない。

そのまま、真正面からチューリップの口に突っ込む………が、すぐに真後ろから飛び出す。

振り返ると、チューリップは真っ二つに斬り裂かれていた。

おそらく、剣のエネルギーに耐え切れずに内部から外部に溢れて、こう成ったんだろう。

………っと、チューリップ全体に入っていたヒビが更に広がった……次の瞬間っ!!



大きな爆発と光と共に、チューリップは塵と化した。





『オーライ、オーライ……そこで、ストーーップ!!
 野郎共、すぐにエステを固定しろっ!!』


ウリバタケさんの誘導に従って、エステバリスをハンガーに固定させる。

何時間も居たピットのハッチを開けて、その場から飛び降りた。

……っと、着地した時に拍手の音が聴こえてきた。

振り向くと、拍手をしていたのはリョーコさんとヒカルさん……何故か、イズミさんだけ点数板を掲げていた

「よく、あんな所から飛び降りられるね」

「いや〜、驚いたぜ」

「どうも」

「……10点満点」


これを初めて見る人は、絶対にこんな風に言ってきて、その後は決まって雑談へと発展する。

俺とっては、見慣れた光景である。


「あの、皆さん………艦長に報告をしに行かなくて良いんですか?」

「いっけねえっ!!」

「それじゃあ、あとでね♪」

「さ〜ような〜ら」


リョーコさんは、ウクレレを弾くイズミさんを引きずりながら去っていく。

ヒカルさんは、後ろから面白そうにそれを見ながら付いて行った。

あのウクレレは、何処にしまって置いたんだろうか………再び、謎だ。





何となく格納庫をブラブラしていたら、思わぬ光景が飛び込んできた。

アキトとメグミさんが………キスしている。

そして、それを目撃しているユリカさん。



………その後、二人で仲良く腕を組んで去って行った。


「これは夢、もの凄くリアルな夢なのよ……うん、絶対にそうっ!!」


目の前に展開されていた光景を受け入る事が出来ずに、現実逃避を始めるユリカさん。

俺は様子を見ようとユリカさんに近づき………


「ユ、ユリカさん……もしもし、もしも〜〜し……お〜い、聞こえてますか?」


目の前に手を持ってきて上下に振ってみるが……………反応ナシ。

ダメだこりゃ………完全に逝っちゃってる。

どうしよう…………………うんっ、ほっておこう。

下手に構ったら、延々と話してきそうだし………

俺は、そっとこの場を後にした。

別名、戦略的撤退。





格納庫から通路に移動し………歩きながら、ボソっと呟く。


「三角関係、成立だな………」


アキト………君の未来にカンパイ。





おまけ





IN ユラの部屋


ユラ(以下“ユ”)「………目を瞑って、口を突き出し、何をやっている?」

ラピス(以下“ラ”)「アキトとメグミのマネぇ〜〜」

パール(以下“パ”)「おかえりなさいの……キ・ス♪」

〔ゴンッ×2〕

ラ・パ「「いったぁ〜〜いっ」」

ユ「バカな事を言うな、たくっ………誰に吹きこまれたのやら……」

ラ・パ「「ミナトさん」」

ユ「あの人は………」

パ「私たちに心配を掛けたんだから、コレ位の事はやってくれても良いと思う」

ユ「うっ…………それより、アキトとメグミさんの事は何か知らないか?」

パ「話を変えないでよっ!!
  ………まあ、いいわ………あとで、たっぷりとして貰うんだから」

ユ「………何をさせるつもりだ?」

ラ「ヒ・ミ・ツ………アキトたちの事だけど………」


(現在説明中)


ユ「要約すると……展望室で色々と悩んでいたら、そこに気晴らしに来たメグミさん。
  そんで、アキトはメグミさんに悩みを打ち明ける。
  悩みってのは、“自分の今の実力”について………それを親身になって聞き、励ますメグミさん。
  その時に見せた、アキトの“スマイル”(後のアキトスマイル)にて撃沈。
  しかも、犬耳と尻尾が見えた。(ミナトさん談)
  ………んで、今に至るわけか」

ラ「ミナトって凄いよね………観ていただけで、これだけの見解を言えるから」

ユ「ああっ、敵に回したら恐ろしい人物だ………」

パ「でも、犬耳と尻尾って………」

ユ「あながち間違いではないと思う……今日の訓練で褒めた時に、もし尻尾が生えていたら……「ブンブン」っと振っていたな」

パ「今日のワンコ………出られるかも?」

ユ・ラ「言えてる………」









第七話へ










楽屋裏劇場



以降は

二式(クイック二式) ユ(ユラ) ラ(ラピス) パ(パール) エル(エメラルド) ル(ルーミィ)





ラ「楽っ!!」

パ「屋っ!!」

エ「裏っ!!」

ラ・パ・エ「「「劇場〜っ!!」」」

ラ「今回もやってきました楽屋裏劇場」

エ「はりきって行こうぉ〜………って、あれれっ?」

パ「ユラと二式が居ない?」

ラ「何処にいったんだろう?
  ………あっ、隣から何か聴こえてくる」

パ「あっちに居るのかしら………」





ユ「誰か助けてくれぇぇぇぇぇっ!!」

二式「ここに生贄を捧げます。
   そして、どうかお怒りをお静め下さいぃぃぃっ!!」

ユ「何で俺が生贄にならなきゃならないんだっ!?
  元々、お前が原因だろうがっ!!」

二式「やかましいっ!!
   知らなかったとはいえ、何度も“彼女”を“ちゃん”付けで呼んでしまったんだ。
   俺が助かる道は、これしかないっ!!
   ………っと言う訳で、大人しく生贄になってくれ」

ユ「なるかっっっっ!!」

二式「無駄無駄………呪印式のロープで簀巻きにしたんだ、そう簡単に解けまい」

ユ「ちきしょう………んっ、ラピス、パール、エル……頼む、助けてくれっ!!」

ラ「何やってるの?」

二式「見て分からんか、儀式だ」

パ「儀式?」

二式「そうっ、全ては“彼女”のお怒りを静めるためっ!!」

エ「何か、西洋に東洋……その他、色々な宗教が混ざってるけど………」

二式「気分の問題だっ!!
   ………ついに、きたかっ!!」

〔ピシッ……ピシッ……〕

ユ「あわっわわわわわ………」

ル「逃げずに待っていたんですか………いい覚悟です。
  あっ、今回はラピス達には何もしませんから……そんなに隅で震えなくても大丈夫ですよ。
  さて、二式………あなたは、禁句を何回も言いましたね。
  そして、ユラさん………あなたは、アキトさんを誘惑しましたね。
  ……以上の罪状から、貴方たち二人を………殺ります

二式「お待ちください、ルーミィさんっ!!」

ル「何ですか?

二式「(こわひ……)あっ、あのですね……彼を好きにしていいですから私を見逃してくれませんか?」

ル「ほうっ、取引ですか………本当に好きにしていいんですか?

二式「煮るなり、焼くなり、気が済むまでサンドバックにしても結構です♪」

ユ「(ブンブンブンブン)」

ル「本人は否定していますが?」

二式「作者の権限で、彼の意思は全て却下です♪」

ル「………さて、どうしたものでしょうか?」

ラ「ちょっと、まったぁぁぁぁ!!」

エ「ルーミィ……私たちと取引だよぉ〜」

ル「あなた達もですか………いいでしょう、何をくれるんですか?

パ「これよっっ!!」

ル「こっ、これはっっ!?」

ラ「今回の話に出てきた………初期アキトのスマイル写真」

エ「しかもっ、犬耳と尻尾付きver!!」

ル「クッ………しかし、コレだけでは……」

パ「ア〜ンドっ、湯上りアキトの写真も付けるわっ!!」

ラ「これは、しっとりと濡れた犬耳と尻尾付きっ!!」

エ「だから、ユラを許してっ!!
  ………ちなみに、二式は好きにしていいよぉ〜」

ル「取引成立です。(1秒)
  ユラさんは、許しましょう………まあ、ワザとでは無いようですし………」

二式「決断早っ!!
   ………って言うか、俺ピンチィィィっ!!」

ユ「ううっ、助かった………三人とも、ありがとうぉ〜(マジ泣き)」

パ「念のため焼き増しをしておいて良かったわ」

二式「ちょっと待てぇぇぇっ、俺には救いはナシかあぁぁぁぁぁっ!!」

ラ「自業自得

パ「身から出たサビ

エ「因果応報だよぉ〜

ユ「地獄へ堕ちろ

ル「さあ、あっちの部屋に行きましょうか………

〔ズルズル、ズルズル〕

二式「いやああぁぁぁぁぁぁっ!!
   おっ、おまえら見てないで助け…〔バタン〕………」

ユ「さて、〔ズドンッ!!〕今回はこのへんで……〔それは、マジでヤバ……〕

ラ「次回作も、〔バキャッ〕よろしくお願いします」

エ「この作品を読んで下さる、皆様に深い感謝を申し上げます………〔自己再生が追いつかな……〕

パ「それでは、〔もうダ……メ……ノォォォォォォッ!!〕次回の楽屋裏でお会いしましょう」





二式「………あいしゃる、りたぁぁぁぁんっっ!!〔ドカっ、カキっ、バスっ、ドコンっ!!〕はうっ」










あとがき





今回は、私のオリジナルの要素を多数入れさせて頂きました。

原作のイメージを壊さない様に書いて見ましたが………いかがでしょうか?

これを読んで“おもしろい”と感じられたら、幸いです。



機体の設定について追加………

今回の話で使われた“アンサラー”は、必殺verです。

通常時は剣の様に使いますが、高機動フレームの制御リミッターを解除する事により、設定されたプログラムが起動。

高機動フレームの全てを使い、集束させた剣と共に“超高速度アタック”を仕掛ける技です。

エネルギーの消費量から、連続での使用は不可能。

まさに、“一撃必殺”の必殺技……っという設定です。

ちなみに、もう一つの重甲フレームにも必殺技があります。



この作品を読んで拍手を下さった皆様、もの凄く励みになります。

次回も、読んで貰える様に精一杯頑張らせて頂きます。

それでは…………



感想

クイック二式さんお忙しい中書いてくださってありがとうございます♪

今回はユラがサツキミドリ二号に挑むお話と言う事になるでしょうか…

しかし、ユラ君の限界を突破した強さや優しさ、料理の腕等も既にびっくりですが、更にナデシコ陣営全体を強化するようですね〜

今後作品内でどれ位違った歴史となるのか楽しみにしています♪

ユラもアキトの師匠になる つもりかな? アキトこの頃はまだ弱かったって言う話しだし、仕方ないかな…

でも、ユラの強さの源ってやっぱり気になるよね、悲しみとか背負っているみたいだけど。

アキトみたいにアニメで既に分っているわけじゃないから、このままだとユラの緊迫感が少し浮いちゃうかもしれないね。

ラピス…案外きつい事を言うね…(汗)

うん、その辺の暴走したヒ ロインのなりそこねとは違うから。

…(滝汗)

うふふふ…

なんだ! この笑い声は……(汗)

うふふふ…アキトさん可愛いです♪

むっ、そこか!

殺気!って、なんだ貴方ですか、良い所なんですから邪魔しないでくださ い。

邪魔? って、そう言えば上のほうでなにやら手に入れていたみたいだね。

そうですよ、レアものなんですか ら! 犬耳アキトさん…ラブリーです♪

ふ〜ん、電子の妖精ともあろうものが…こんなのに引っかかるんだ…タダの合成 じゃん、そんなの。


なんですって!?(怒)

う〜ん、結構いい出来だと思うけどね…多分…端っこの方に、オモイカネ監修って小さく入ってるし…(汗)

あの小娘共、よほど死にたいと見えますね…折角見逃してあげたというのに…(怒)

これは、避難警報を発令せねば!! っていうか、それは駄目だって!
 
心配要りません、ちょっと輝いてくるだけです。
 
主に男性陣を吹っ飛ばして我慢します。

ああ、それならいいかって、それも駄目!


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