第八話「『運命の選択』みたいな………『生まれた場所』への帰還」 後編










《Side ユラ》





入るとすぐに、研究所内の明かりが一斉に点き始める。

外でも思ったが、この一帯に配置された発電機はまだ生きていた。

……ということは、ここの管理コンピューターがまだ稼動し続けていると推測できる。

俺が入った途端、明かりが点き始めたのが何よりの証拠だ。

………まあ、色々と考えるのは後にして、とっと回収して帰りますか。


「えっと………こっちか」


さっき使ったPCを取り出し、中に保存しておいた研究所の見取り図を表示する。



これは半年前の地球で、ここの生き残りである研究者を探し出し、ソイツから奪い取った物だ。

『奪う』っと言っても、ちゃんと互いに合意をした上での取引だから問題ない。

もっとも、ソイツは全治三ヶ月のケガと職場の全PCにプライベートな秘密を流し社会的に抹殺したけどね。

まさか、S○クラブに通っていたとは…………



それはさて置き、地図を頼りに目的の場所に足を進めていく。





「ここか………フゥ、ようやく辿り着けたな」


俺がこの世界に来て、一年と数ヶ月………この身体について知る時が来た。

目の前の扉は、さしずめ『真実への扉』と言ったところか。

俺が一歩踏み出せば、センサーが反応し扉は自動的にひらくだろう。

………………だが、俺はその一歩を中々踏み出せない。

どうしたのか?

頭では踏み出しているつもりなのに、どういう訳か足が動かない。

さっきの戦闘で足を痛めたのかと思い、手を足に持っていこうとしたら……手が震えている事に気付いた。

よく見てみると手だけじゃない、足も体も……身体全体が震えている。

ああっ、そうか………俺は怖いんだ。



今までは、本来の持ち主である『この子』の代わりに生きていると思っていた。

だから、“この身体は自分のモノではない”っと頭の隅では思っていたのかもしれない。

……だが、この扉は前にしてようやく解った。

俺は『ユラ・マルス』なんだということを…………



過去を無かったことにはできない。

前の自分の思い出、今の自分の思い出、そして………『この子』の思い出。

その三つの記憶にある喜びも、怒りも、哀しみも、苦しみも、楽しかった事も、嫌な事も………

その全てが在って、『ユラ・マルス』が形作られたのだ。

身体は違っても、俺は『ユラ』であり、それと同時に『ユラ・マルス』でもある。

なら、怖くて当然だ。

だって、自分自身の身体の事を知るんだから………

だけど、俺はその『真実』と向き合わないといけない。

例え、それが残酷で自分の存在を否定されようと………



全てはここから始まり、再びここから始まる。

これは、その為の………


「……一歩だ」


踏み出した一歩は、とても重く感じられた。





中に入ると、最初に目に映ったのは透明なガラスケース。

………それは、俺たちが生まれた人工子宮だった。

ケースには、思わず目を背けたくなる様な者が存在していた。



その子達は、人の形を成さずにただそこにあるだけの存在。

意思も無く生きているというより、生かされていると言った方がいい。



何のために、この世に生を受けたのだろう。

ここの奴等は、この子たちを見て何も感じなかったのか。

何故、一思いに死なせてやらなかったのだろう。

……行き場のない怒りが、俺を支配する。



………やはり、オレ一人で来てよかった。

こんな悪夢のような光景を、誰にも見せたくない。

そう思いながら、この子達の姿を目に焼き付ける。

この子達が、ここに生きていたという事を決して忘れないように…………



………探索を再開する。

ケースをよく調べると、下部のコネクターにコードが繋がっていた。

その先を辿る……………っと、この一室を管理しているコンピューターを発見。

すぐにそこへ向うが、その途中でガラス越しに隣の部屋を覗ける場所が何故か目に入る。



――――その瞬間、何かの映像が流れ込んできた。





小さい俺(おそらく5,6歳頃)はナイフを持って機械と対峙していた。

銃器を装備している事から、戦闘用に使われる物だと推測できる。

撃たれる弾に怯むことなく、俺は突っ込んで攻撃を仕掛けた。

突き出されたナイフは、機械の目と言えるメインカメラに命中する。

目標を見失った機械は、ところ構わずにマシンガンを乱射し始めた。

トドメを刺すため、避けながら再度の接近を試みる。

しかし、避けるといっても全てではない、急所にくる弾だけを避けているのだ。

そのため、それ以外の身体の部位に何度も鋭く熱い痛みが突き刺さる。

それでも、俺は接近を止めない。

痛みに耐え、出血で意識を失いそうになる身体を奮い立たせ、ようやく懐に潜り込む。

そこから、動力のある箇所にナイフを弓のように身体をしならせて突き放つ。

動力を破壊されたソイツは、青白い放電を発しながら崩れ落ちた。

よかった、これであいつらを守る事が出来た。


――――ダレヲ?


二人は、部屋の隅で震えながら身を固めて自分を守っていた。


――――オトコノコト、オンナノコガイル。


「もう大丈夫だよ、『―――』に、『―――』……もう終わったから」





――――そこで戻ってきた。



………今のは、『この子』の記憶!?

あそこで、俺の身体能力を計る実験が行われていたのか。

しかし、最後に出てきたあの二人は誰だろう。

………ダメだ、思い出せない。

どうして、いつも肝心な事が思い出せないんだっ!!

…………悔やんでも仕方が無い、今は目の前の事を終わらせよう。





PCとの接続完了、さてとコイツの中身を全て暴きますか。

……………コンソールに手を置くと同時に、ものすごい勢いで様々な研究データが流れ込んでくる。

これじゃない、これでもない………どこだ、どこにあるっ!?

………んっ、これだけ何重にもプロテクトが施されている。

これかもしれない……でも、少し時間が掛かりそうだなぁ。

迷っている暇はない、とにかく作業に掛かろう。

俺の身体に流れるナノマシンの発光がさらに強くなる。



………ここがこうなって……うわっ、このトラップ悪質だな。

さらにこれが………それを上に持ってきて……この位置を変換しておいて、これを置く。

…………だぁぁぁぁぁっっ!!

なんで、こんな細かくて難解なプロテクトなんだっ!?

しかも、一つでもまちがえたらその場でデータが全てデリートされるだとっ!?

ええいっ、こうなったら意地でも解いてやるっ!!



「お……終わったぁ〜〜〜」


一時間後、ようやく全てのプロテクトを解読して、データを閲覧できるようにした。

これで、もしハズレだったら……………イカンイカン、今のは危険な思考だぞ。

とりあえず、見てみない事には始まらない。

なになに………< プロジェクト O.S.W. >の私的研究日誌。

ビンゴだな………ここに、全てが書かれている筈だ。





2185年 某日

私たちは、火星極冠遺跡で新たな一室を発見。

そこは巧妙に隠されており、この一室がいかに重要かを現している。

ここを発見したのは、同行していた『C.C.』の研究者であるテンカワ夫妻が偶然に見つけた所だ。

そこで、厳重に保管されていた未知のナノマシンの採取に成功する。

これに『Gift from Ancient Times(古代からの贈り物)』、通称『G.A.T.』と名付けた。






同年 某日

調査の結果、このナノマシンは『自己修復』、『適応性』、『身体能力の向上』を促す力を持っていた。

この報告がネルガルに行き、帰って来た答えが「このナノマシンの『適合者』を探せ」との事だった。

我々は必死に探したが、『適合者』は現れなかった。

しかし、ある研究員が自らを実験体として、このナノマシンを注入したところ。

彼は発狂し、気が狂ったように暴れ回るが………数分後に息絶えていた。




2186年 某日

ナノマシンを発見してから一年が経過したある日、私はある事に気付いた。

『適合者』を探すのではなく、『適合者』を作ればいいとうことに………

すぐに、この事を上層部に報告。

その結果、< プロジェクト O.S.W. >が発足された。

『O.S.W.』は『Organism slaughter weapon(生体殺戮兵器)』の略称である。

私は、立案者として最高責任者に一任されることになる。






………前会長がやりそうな事だ。

しかし、テンカワ夫妻が関係していたとは思ってもみなかったな。

……………先を読もう。





2188年 某日

ついに、最初の兵器が誕生させる事に成功する。

MCの理論を応用して作られた最強の人形。

私たちは、この兵器に『Dolls シリーズ』とコードネームを付ける。

そして、これをコードナンバー『No.00(ナンバーダブルオー)』と付けた。






………もしかして、この『No.00』は俺か?

すぐに、自分の遺伝子データと照合してみる。

………少し時間がかかりそうなので、先を読むことにした。






2189年 某日

我々は、新たなる二つの兵器を作り出す。

一体は『No.00』のクローン兵器。

もう一体は、一から作り上げた兵器。

それぞれ、『No.01(ナンバーゼロワン)』と『No.02(ナンバーゼロツー)』と付ける。

『No.00』と『No.01』は男性体。

それに対し、『No.02』は女性体。

この三体以後、どういうわけか失敗し続けて生産を一時中断。

『No.00〜No.02』を使い、実験的な性能テストを行う方向に移行する。




2090年 某日

ネルガルが秘匿され続けてきた遺跡のオーバーテクノロジーの研究。

これを独占的に売り出すため、スキャパレリプロジェクトが開始された。

それに平行して、実験体の成長を促進させて、遺跡のオーバーテクノロジーに適応した兵器にする事が決まった。




同年 某日

ついに、『Dolls シリーズ』を人工子宮から出す日が来た。

出してすぐに、兵器として必要な教育を開始する。

主に電脳ネットワークとのリンクとその使い方、そして戦闘技術を中心に教え込む。

今はまだ弱弱しいが、きっと『Dolls シリーズ』は最強の兵器となるだろう。






………照合の結果が出た。

どうやら、俺が『No.00』みたいだ。

『No.01』と区別をつけるため、遺伝子に刻印のような物つけたらしい。

その刻印が、俺にはあるので『No.00』という結果が出た。

オレ以外に、あと二人『Dolls』がいるのか………

しかし、俺がいた研究所には二人はいなかったぞ?

いったい何処に…………





2091年 某日

私は、おかしくなってしまったのだろうか。

教えている時、私はまるで「母が子に諭すよう」だと、周りの研究員が言っていた。

そう……私は最近、この子達を愛しく感じてしまう時がある。

しかし、この子達に情が湧いたところで、私にどうしろというの!?

この子達が、兵器として生きていく運命は変える事は出来ない。




同年 某日

このプロジェクトの最高責任者としての自分、あの子達の母親代わりとしての自分と板ばさみになっていた。

実験で傷つくあの子達の姿が、不憫で仕方が無い。

しかし、その命令を出しているのは私自信。

本当の私はどちらなのだろう…………

……そして、私はこの先どうしたらいいのだろう。




2092年 某日

私は突然吐血し、病院に搬送された。

診断の結果、悪性ウィルスが体内に感染した事により、身体機能の全てが徐々に失われていくそうだ。

余命は僅か半年と宣告され、私は呆然とした。

それと同時に、プロジェクトの最高責任者としての地位を降ろされる。

私は今の状況に絶望し、部屋に閉じこもった。

そんな時だった、この子達が部屋に来て私を励ましてくれたのは………

私は思わず、この子達を抱きしめて泣いてしまう。

そして、この時に私は決心した。

残りの命を、この子達の母親として生きる事を………




同年 某日

それは、突然の知らせだった。

この子達に、二回目の強制成長の命令がくだされる。

私は必死にやめて貰えるように懇願したが、その願いは聞いて貰えず、命令は執行された。

三人は恐怖で泣き叫ぶが、すぐに眠らされて処置室に連れて行かれる。

あの時の叫び声が、まだ耳に残っている。

ゴメンなさい、ゴメンなさい、ゴメンなさい、ゴメンなさい、ゴメンなさい…………




同年 某日

あの子達は、地球に移送されることが決まった。

『No.00とNo.02』は同じ研究所だが、『No.02』だけは違う場所。

運命とは、なんて残酷なのだろう。

そして、私はなんて無力なんだろう。

この日ほど、そう思ったことはない。






………『No.02』は俺と一緒だった。

でも、あの研究所にはラピスたち以外はいなかったぞ。

俺が此方に来る前に、何処か他の場所に移されたのだろうか?

それとも………いや、それ以上考えるのはやめよう。

きっと、生きている筈だ…………





同年 某日

私の命は残り少ない。

吐血する回数も増えてきたし、意識が無くなるのも度々ある。

それでも、私はあの子達に何か残そうとこの作業を続けている。



これを見るには、パスワードが必要なります。

それは、私があなた達によく言っていた言葉。






ここで、文書は終わっていた。

書かれた通り、その場所を探してみる。

……あった、でもパスワードを俺が知るわけが…………


――――突然、頭に言葉が浮かび上がる。


浮かび上がった言葉を入れる。


【あなた達の未来に幸あれ】


電子音と共に、次々とファイルが開かれていく。





これを読んでいるという事は、私が施したプロテクトを解除して、パスワードを入れたということね。

この二つを突破できるのは、あなた達しかいない筈。

母親としても人としても、何も出来なかった私だけど、せめてもの罪滅ぼしとしてコレを残します。

それは、今までの私の研究データと『G.F.A.』の知りうる限り事の全て。

私はもうこの世にはいないけど、あなた達の役に立てることを願っています。

そして最後に…………運命に負けず、幸せになってね。



ミレネ・D・二レグリアより






読み終わった途端、涙が頬を伝う。

聞こえるか………おまえを愛してくれた人はいたぞ。

その身を削ってまで、おまえの幸せを願っていたんだ。

自分の身体の本来の持ち主である『ユラ』に、届くように心の中で何度も叫んだ。





………涙を拭き、もう一度PCを操作し始める。

アクセスする場所は、ここのメインコンピューター。

俺の予想が正しければ、このような研究所には万が一ここを放棄する際。

データの流出を防ぐ為にある事をする筈だ………あったぞ。

迷わず、俺はそれを起動させる。


『自爆システムが起動されました、研究員はただちに退避をしてください』


警報と共に、施設内に退避勧告が流れる。


『繰り返します、自爆システムが………』





“こんなモノは残してはいけない”……そう思い、全てを消す事にした。

それに、あの子たちの『魂』もこれで解放される。


「せめて、来世では幸せに………」


ケースに浮かぶ子たちに別れを告げ、出口に向けて走り出した。





研究所を抜け出し、さらに下りてきた階段を駆け抜ける。

あの隠し扉の前に着くのと同時に、小さな揺れと爆発音が下から聞こえてきた。


「終わったか………」





研究所から避難民のいる場所まで戻ってくると、アキトやメグミさん、それにイネスさんとユナがいない事に気付く。


「セリカちゃん、アキトたちは?」

「今さっき着いた、戦艦に乗り込んで行きましたよ」


人差し指を上に向けながら、経緯を話し始める。

ほんの数分前にナデシコが到着。

それに合わせてアキトが避難民の誘導を行なうが、誰も行くつもりは無いとのこと。

理由も分からず、ただ愕然とするアキトにイネスさんが理由を話すことになった。

ついでに、ナデシコのクルーにも一緒に事情を説明する為に乗り込んだ………っと言う事らしい。


「やれやれ、さすがイネスさんというか、なんというか………仕方が無い、俺も一度戻るかな」

「はいっ、私も行きますっ!!」

「あ、あの……私も………」

「ミナさん、セリカちゃん?
 ……別にいいけど、行くんだったらなんでイネスさん達と一緒にいかなかったの?」

「そ、それは……」

「えっと、えっと………」


なんか、顔を真っ赤にして慌てる二人……風邪でも引いたのかな?


「まっいいか、言いたくないならそれで良いよ。
 ………んじゃ、二人とも俺に付いてきてくれ」

「は〜い」

「分かりました」


……と言いながら、何故か俺の手と腕を握る二人。


「いや、なんで………」

「迷子になるといけないしぃ〜」

「ここの地理は、ミナさんの方が良く知っているでしょう?」

「ギクッ……えっと………あはははははっ」

「笑って誤魔化されても、困るんですが……」

「あの……だ、ダメですか?」


セリカちゃんが、上目遣い+潤んだ瞳、さらに俺の手を強く掴んできた。

ヤバイ………かなりキタ………ここまでのは、あの事件以来だ。

その事件は、通称『血のバスルーム事件』と言う名が関係者の間で有名だ。

なんというか、大人っぽいセリカちゃんがこんなに可愛い仕草をするギャップが何とも言えない。

そんな姿を見て俺は……………


「全然構わないよ」


表面上は笑顔で答えを返しているが、脳内ではガッツポーズを取りながら、「グッジョブ」と何回も叫んでいた。



前の世界でもそうだったが、こういう状態に陥ることが何度もある。

原因として考えられるのが、父親からの遺伝。

あそこまで酷くは無いが、このような事がある度に自己嫌悪に苦しむ事が毎回ある。

ああっ………なんて……無様なんだ。



……とか思っていたら、いつの間にか地上まであと半分の所まで来ていた。


「もうすぐ、地上ねぇ〜」

「そうですね」

「ユラ君は、あの戦艦に戻ったらどうするの?」


右腕を握るミナさんが訊いてくる。


「………とりあえず、報告と今後の方針を決める会議ですね。
 でも、その前に………」

「「その前に?」」

「うちのお姫様たちに謝らないと………」

「お姫様ですか?」


今度は、左手を握るセリカちゃんが訊いてくる。


「まあ、例えだよ……ケンカと言うか………俺が一方的に傷つけるような事を言ったままここに来ちゃってね。
 まだ、仲直りしていないんだ………」

「そうですか………どんな娘たちなんですか?」

「それは口で説明するより、実際に会ってみた方がはや……そこで何をしているんだい?」


俺はその場で止まり、数メートル離れた瓦礫に向って言う。


「ふっふっふっ……よくぞ、見破ったっ!!」


瓦礫の向こうから、三人の少年少女が飛び出してポーズを決める。


「俺たちは、火星の平和と孤児院を守る為っ!!」


リーダー格らしい、真ん中の黒髪でツンツン頭の少年が叫ぶ。


「結成された最強のトリオっ!!」


左に立つ、眼鏡を掛けた茶髪の少年が続けて叫ぶ。


「つ、強く……気高い私たちの名は……」


右に立つ、緩めのウェーブの掛かった亜麻色の長髪の少女が最後に言う。

ただ、両頬が赤く染まっていたのが気になった。


「「ユートピアコロニー防衛組っ!!!」」


「………防衛組」


さらに、トドメの決めポーズを繰り出す。





「う〜ん………バックに爆発が欲しい所だな」

「おっ、分かる……やっぱり、爆発があるとないとでは違うからな」


俺に向って、リーダー格の少年がフレンドリーに話しかけてきた。


「ソウちゃん、なに楽しく話してんだよっ!!」


眼鏡の少年が、『ソウちゃん』……つまり、リーダーの少年に怒鳴る。


「別にいいんじゃない、コウタ。
 悪い人じゃないみたいだし………」


眼鏡の少年は『コウタ』と言う名のだろうか、少女が彼の言葉に反論のような事を言う。


「なんだよっ、いきなり怒鳴って………解ったぞ。
 コウタ、俺がこのお姉ちゃんと仲良くしているのがうらやましんだろう」

「そそそ、そんな事ないよ……そういう、ソウちゃんも顔が真っ赤じゃないかっ!!」

「なななっ………お、俺がそんな訳……ないだろ……」

「ん〜〜、よく聞こえないよぉ〜」

「ハァ………あんた達、なに言ってるの?
 この人は、お兄さんよっ!!」

「「違う、お姉さんだっ(だよっ)!!」」

「いいえ、お兄さんよっ!!」


『ナジュ』と呼ばれる少女の発言により、さらにすごい言い争いに発展する。



あれから数十分は経過しただろうか、未だに『男』か『女』かを言い争っている。

………時間も無いし、とりあえず三人を止めよう。


「え〜と君たち、ちょっと話を聞いてくれるかな?」


左手と右腕に掴まっていた手を解き、三人の前で中腰になる。

……解いた時に、セリカちゃんとミナさんがとても残念そうな顔したのは何故だろう?


「まずは、名前を教えてくれないかな?」


先程のやりとりで、名前を含めて大体のことは分かっていたので、これはあくまで確認作業である。


「タカベ・ソウマだ」

「タカベ・コウタです」

「タカベ・ナジュよ」

「ソウマ君に、コウタ君、それにナジュちゃんだね」


苗字から察するに、孤児院の子供達だろう。

それに、さっき「孤児院を守る為」とか言っていたしね。


「それじゃあ俺の番だね。
 俺の名前はユラ・マルス………ちなみに、男だからね」


名乗りながら、ポケットに入っているネルガル社員証の性別欄を指しながら答える。

それと同時に、明らかに落胆する少年二人と、それを見て呆れる少女。

…………オレ、何かしたかな?



「ソウマ君たちは、なんでコソコソと隠れて後を追ってきたのかな?」

「知っていたんですかっ!!」

「まあね………」

「ちぇっ、バレバレだったんだ」

「コウタにソウマも、あんなにしゃべっていたからよ」


いえ、声より先に気配を感じたからです。


「そういうナジュだって………」

「そうですよ。
 ずっと一番前で先導していたのは、誰でしたっけ?」

「そ、それは………」

「知ってるか、そういうのを『猫をかぶる』って言うんだぞ」

「なんですってっ!!」


再び騒ぎ出す三人の子供たち。

俺が事態を収拾すべく、口を開きかけたその時………


「ソウ君、コウ君、ナジュちゃん……」


呼ばれた三人は、その身体を「ビクッ」と震わせながら声のした方を向く。


「「「せ、センセイ………」」」


そこには、普段と変わらない表情をしているが、近寄りがたい雰囲気を出すミナさんが立っていた。


「三人とも………」

「「「ハ、ハイっ!!」」」

「静かにして、ユラさんの話を聞かないと………イレルワヨ


何をですかっっっ!!?


「ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、ゴメンナサイ……」

「スイマセン、スイマセン、スイマセン、スイマセン……」

「ソレダケハイヤ、ソレダケハイヤ、ソレダケハイヤ、ソレダケハイヤ……」


顔を真っ青にして、慌てふためく……嫌、恐慌状態に陥るソウマ君たち。

あっ、セリカちゃんも若干だけど震えている。


「あの………ミナさん」

「何ですかユラさん?」

「いったい、何を入れるんですか?」


非常に気になったので、思わず訊いてみる。

すると、ミナさんは顔を真っ赤にして………


「そ、そんな恥ずかしい事、私の口からはとても言えませんっ!!」


言えないような事をやるなよ………



ソウマ君たちが落ち着いたところで、隠れて追ってきた理由を話して貰った。

要約するとこうだ……この子たちは、俺が此処に着いた時の姿を目撃したようだ。

正確には、エステバリスの姿なのだが………

この年頃の子は、やはりロボットなどにある種の憧れを抱く。

もしも、それが目の前にあったら……さわりたい、乗りたい、動かしたいと思う筈。

その願いを叶えるため、俺に頼みにきたという。

ちなみに、隠れていたのは話を切り出すタイミングが掴めなかったからだそうだ。



乗れる事は可能だが、操縦にはIFSが必要だと説明したら、少年二人は「ガックリ」と肩を落とす。

しかし、「代わりに思う存分乗せてあげる」と言ったら、大喜びでエステのある場所に向けて歩き出した。

ナジュちゃんの方は、二人に付き添う形で歩く処をみると、乗る事には感心が無いみたいだ。

………って言うか…………俺のことを、ずっと見ているんですけど。



歩き始めてから数十分後、一番前を歩くソウマ君とコウタ君、その次がミナさんとセリカちゃん。

地上まで、あと僅かというところで………


「ねえ………」

「なんだい?」


共に最後尾を歩く、ナジュちゃんが話し掛けてきた。


「ユラお兄さんは、何の為に戦うの?」


その質問に答えるのに、一瞬だけ戸惑ってしまう。

何故、十歳程の少女がこんな質問をしたのか疑問に思ったからだ。


「………どうしたの?」

「あっ、いや……小さいのに難しい事を訊くんだなあっと思ってね」

「別に年齢は関係ないわ。
 ただ、私たちを見捨てた軍と違いがあるのか知りたかっただけよ」



随分と成熟した考えを持つ娘だと思った。

パールと違い、無理に背伸びをしている訳ではない。

おそらく、この状況下と孤児であることが彼女の精神を急速に成長させたのだろう。

これが、皮肉と言うべきなのか少し悩む。



「……まちがっても、センセイを助けたのがどんな人なのか知りたい訳じゃないからね」

「……え〜〜とっ、つまり………」

「い・い・か・ら、さっさと質問に答えなさいよっ!!」


なんで、怒ってるんだろう?

まあ、これ以上怒られないように早く答えた方がいいな。


「自分の為……かな?」

「なんで疑問系なのよ………」

「基本的に“後味が悪い”のが嫌なだけ」


言っている意味が解らないのか、首を傾げる。


「例えば………人が目の前で死なれたら嫌な気分になるだろう?」

「そりゃまあ………」

「その後で……こうすれば、ああすれば良かったなんて何度も後悔していたら、いつかは精神的に病んじゃうよね」

「それは、そうだけど……だったら、最初からあのロボットのパイロットをやらなきゃ良かったじゃない」

「うん、そうだね。
 ………でもね、俺には生まれた時からそういう力が備わっていた。
 普通の人には無い異能の力を………そのおかげで、大切な人を護れた事も事実なんだ。
 ……話を戻すよ、さっき“自分の為”と答えたのと、“後味が悪いのが嫌”のとどういう関係あるのか。
 結論は、『自分の心』を精神的苦痛から護るためなんだ」


この事に気付いたのは、数ヶ月前のある出来事がきっかけだった。

それを理解した時、何故だかあっさりと事実を受け入れる事が出来た。

それは何故か………答えは簡単だ。



俺自身の心の根底は、既に解っていたんだよな…………



「要するにね………俺は『自己満足』の為に、自分の考えを他人に押し付けて好き勝手にやるエゴイストなのさ。
 疑問系なのは、これに気付いたのが最近の事でね。
 まだ、自分の内で整理できていないからだよ。
 ………幻滅したんじゃないかな?
 君の大切な人を救ったのがこんな奴で…………」

「別にいいんじゃない………」

「……………………はっ?」


どんな罵詈雑言を投げ掛けられるか、構えていたのにっ!?


「『正義』とか『平和』の為だ……って言っている人たちより、好感が持てるわ。
 自分以外の為に戦う人なんて、『生』への執着が無い証拠。
 そんな人に、私は自分の命を預ける気にはなれないわ」

「………って事は……俺に命を預けると?」

「まあ、そういう事ね。
 私は、こんな所で死ぬつもりはないわ」


………強い娘だと、素直にそう思う。

また、『状況が精神を成長させた』という事以外にも、この娘には何かありそうだと同時に考えた。


「君は………っ?」


微かに地面が揺れた気がした。


「どうし………っ!?」


気が付くのが遅かった。

僅かな時間でできた事は、彼女をこの場から突き放すのが精一杯。

身体が宙に浮く彼女と、ほんの一瞬だけ目が合う。

それは、一秒にも満たなかったが……『大丈夫だから』という意志を彼女に伝えた。

その次の瞬間、背中に来る衝撃と目の前を覆う瓦礫でナデシコが攻撃を受けたのだと理解した。





意識は失わなかった。

ただ、衝撃で思考に若干の混乱があっただけで身体にも問題は………


「やれやれ、酷い目に遭ったな」


服に付いたホコリを払いながら、自分の下に駆け寄るみんなに言った。


「だだだだだだ、大丈夫なのユラ君っ!?」

「ユラさん、大丈夫ですか!?」

「ユラ兄ちゃん、平気かっ!?」

「ユラさん、怪我は……してるに決まっていますね!?
 早く治療をしないとっ!?」


ミナさん、セリカちゃん、ソウマ君、コウタ君と順に訊かれたので………


「んっ、俺は大丈夫だぞ」


………っと答えた。


「「「「ハイィィっっ!?」」」」


驚く四人に、身体全体を見せてカスリ傷しかない事をアピールする。


「どういう身体をしているのよ……」

「むむっ、助けてあげたのにそのセリフはないんじゃないかな」

「……一応、お礼は言っておくわ……その………ありがと」


そう言ってくる彼女の顔は赤く、年相応の少女のモノだった。


「えっ、あっ、いや……どういたしまして」


急に、先程していた大人の顔から少女のモノに戻ったので思わず驚いてしまった。

まるで、俺と同じ様に『仮面を使い分けて』いるようにも見える。



それはさておき、瞬時に頭を切り替える。


「いつまた、天井が崩れるか分からない。
 地上まで、全速力で走るぞ」


皆、互いに頷き合い地上に向けて走り出した。





ヤバイな……出血が止まらない。

走りながら、右わき腹に目を向ける。

そこには、CDを半分に割った大きさの破片が突き刺さっていた。



先程、ケガをしてないように見えたのは『幻装壁(げんそうへき)』という術のおかげだ。

本来、この術は周りの景色に溶け込む様に、その場所と同じ景色をした幻の壁を作って身体全体に装着するのだ。

作り出す景色は場に合わせて自動で作り出され、また術者の任意で様々なモノに切り替える事ができる。

さっき、それを一部に展開して傷を隠したのだ。



………内臓まで傷ついているな。

こりゃ、ヘタに引っこ抜いたら今以上に出血の量が多くなる。

おまけに、蜥蜴の攻撃もまだ続いているから、天井がいつ崩れてもおかしくない位に軋んでいる。

これだと、治療中に天井が崩れて生き埋めになる可能性が高い。

全く、踏んだり蹴ったりだな。





皆、なんとか無事地上に辿り着く事が出来たが………


「こっちはこっちで、ヤバイ状況だな」


上空では、ナデシコと木星蜥蜴の攻防戦が繰り広げられていた。

しかし、攻防戦と言ってもナデシコは防戦一方で敵からの集中砲火を受けている。



………ここで、ナデシコとヘタに連絡をとれば指揮系統に乱れが生じる。

その僅かな乱れが、この切迫した戦況を最悪の方向に壊す恐れがある。

ならば…………


「(ユナ……ユナ……聞こえるか?)」

「(……主様っ!?  良かった、無事だったんですねっ!!)」

「(まあ、なんとかな………それより、そっちの状況はどうなんだ?)」

「(はっきり言って最悪です。
 ラピスちゃんとパールちゃんは、錯乱状態に陥っていますし………
 ……エステバリスの出撃も、この状況下では自殺行為。
 ユリカさんの指揮とミナトさんの操舵、二人のサポートをするルリちゃん達のおかげで凌いでいますけど………
 ………ユリカさんが、もう限界なんですよっ!!)」


逸材といっても、実戦経験の浅い二十歳の女性。

あの状況で、艦を護る為に火星の避難民を切り捨てる判断が出来ただけでも上出来と言ってもいい。

精神的に参っている状態に、追い討ちの様に襲い掛かるこの窮地に最早限界なのだろう。


「(ユナ、これからおまえを此方に呼び寄せる)」

「(なっ、正気ですか主様っ!?
 今日は、かなりの量の氣を消費してるんですよっ!?)」


これを実行するには、多量の氣を消費しなくてはならない。

陣と言霊で強制的に空間を捻じ曲げ、長距離をゼロにするのだ。

ヘタをすれば術者は気絶、絶対量が無い人が使用すればその場で廃人になる可能性もある。


「(考え無しで言っている訳ではない、リスクも理解した上で言っているんだ。
 それに、どうしても助けたい人たちがいる………すまないが、拒否権は無いからな)」

「(ハァ……主様の性格は解っていますし、拒否する理由なんてありません。
 それに、主様がそこまで言うひとたちなんですから、良い人に違いありません♪)」

「(サンキュウ、ユナ………じゃあ、行くぞっ!!)」

「(りょう〜〜か〜〜い♪)」


氣を集中させた指先で宙を描くと、その軌跡に合わせて光の帯が浮かび『陣』を形成する。


「汝、契約の名の元に我が呼びかけに応じよ」


開放の言霊を発するのと同時に、『陣』が『門』となり開かれた扉からユナが現れる。


「おまたせしました」

「説明はいらないな、早く五人をナデシコへ……」

「ハイ……皆さん、色々と説明して欲しいと思っているでしょうが……今は何も聞かず、私に掴まってください」


みんなが、こちらに目を向けて何かを言おうとする。

俺は無言で頷き、それで分かってくれたのかユナの元に駆け寄っていく。



背中にミナさんとセリカちゃん、両腕にはソウマ君とコウタ君を抱え、胸元では首を掴むナジュちゃんがいる。


「しっかり掴まっていてくださいね。
 あと、絶対にしゃべらないように……でないと、舌を噛みますから」

「ユナ、戻ったらウリバタケに伝言を頼む。
“例の奴”の準備をしておいてくれって……」

「わかりました……必ず伝えます。
 それでは主様、ご武運を………“疾風”…………」


掛け声と共に、風の様に火星の大地を駆け抜けて行った。

………ナデシコは、上空50メートル程の所で戦闘をしているが、「飛天翔(ひてんしょう)」を使えば届くだろう。

これは補助系風術の一つで、人工的に作った風の塊を爆発させ、その勢いで空中に舞い上がる術。

爆発と言っても、足元から強力な風を噴出するだけなので周りを巻き込む事はない。

せいぜい、地面が少し陥没する位だ。



時間もない、俺も自分のやるべき事をしないと………





アサルトピットに座ると、すぐに機器を操作してエステを起動させる。

その操作中に、右わき腹に再び痛みが走った。

傷口からの出血はナノマシンのおかげで止まったが、内臓器官からのはまだ止まっていない。

仕方がない………


“自己暗示開始”………右わき腹からの脳への痛覚神経を遮断。


………これで、しばらくは全力で戦える。

問題は、失血で意識を保てる時間が限られていることだ。

はっきり言って、状況と状態は最悪。

しかし、それでも…………


「……やるしかないだろう」


エステを急発進させ、両手に持つカノン砲のトリガーを引いた。





足はナデシコに向かいつつ、攻撃する敵艦に肩部のミサイルとカノン砲を発射。

着弾するも、敵のフィールドに阻まれ艦は全くのノーダメージ。

しかし、これでいい………おかげで、やつらはこちらの存在を確認できたようだから。



『『ユラっ!!!』』』


「よっ、ラピスにパール。
 んっ、どうしたんだ?
 まるで、幽霊に会ったみたいな顔をして……」


『『バカァァァアァァっ!!!』』


「うをっ!?」

『生きているならすぐに連絡してよっ!!』

『そうよっ!!
 このっアホ、マヌケ、オタンコナスっ!!』

「パールさん?」

『女誑しの天然ジゴロっ!!』

「いや、ラピス……意味を分かって言ってるか?」


『『このっ、鈍感ッッっ!!!』』


「ちょっっと待てっ、その前と最後のは絶対に違うぞっ!!
 それに俺は、鋭い事で有名なんだぞっ!!」

『………そういう事を言っている時点で、鈍感なのよねぇ〜〜』


『『『『『『『うんうん』』』』』』』


「そ、そんなぁ〜〜」


ミナトさんの指摘に、ブリッジの全員が頷く。


「ううぅ〜、みんながいじめるぅ〜〜」


自分で言うのもなんだが、敵の攻撃を避けては反撃を繰り返しつつ器用に会話している。



『もう……どれだげ……ヒック……心配をしで……ヒック……』

『私だちを……ヒック……おいで死んじゃっだが……ヒック……と思って……』


ウィンドウの向こうで、ラピスとパールがしゃくり上げた声で言ってくる。


「ごめん、また泣かせちゃったな。
 ………二人とも聞いて欲しい。
 この戦闘が終わったら、今の事も含めて後でちゃんと謝りたい。
 だからさ、その………笑って出迎えてくれると嬉しいな」


うわぁ〜、すっげぇ〜キザなセリフ。

いったい、どこからこんな言葉が出てきたのやら………きっと俺の顔は真っ赤だろうな。



その言葉で少し落ち着いたのか、声の震えが治まってきた。


『……うん、待っているからね』

『……絶対に帰ってきなさいよ』


パールが言い終わると、二人は顔を見合わせて頷き………


『『がんばって、ユラ』』


まだ涙を目に溜めながらも、今出来る精一杯の笑顔で送り出してくれた。

その言葉に俺は………


「応っ、任せとけっ!!」


たった一言だけど、不安を吹き飛ばせるように笑顔と共に言った。





「デカイ図体している分、フィールドの強度は高いな」


駆け抜けながらミサイルを撃つが、全てフィールドに阻まれ爆発する。


「けどな………」


急旋回をして、敵艦が正面にくるように立ち止まる。

エステのカカトから、反動で機体がズレないようストッパーが大地に突き刺さる。

両腕のカノン砲を構え、腰部と背部に付けられた四丁のレールガンを展開。

照準を合わせてトリガーを引くと、まずはカノン砲から勢いよく弾が飛び出す。

続いて、レールガンのトリガーを引くと同じ様に弾が飛び出していく。

カノン砲の弾が着弾するが、やはりフィールドに阻まれる。


――――しかし、その次の瞬間


寸分の狂いもなく同じ所に、後から発射されたレールガンの弾丸がフィールドを貫通して本体に突き刺さる。

小規模の爆発を切っ掛けに、高度を維持できずに噴煙を出しながら堕ちてくる敵艦。

すぐに俺は、背部と足底部のブースターを使って舞い上がり、さらにソイツを踏み台に高く飛翔した。



狙うは、横三列に並んだ小艦隊の真ん中の艦。

ソイツの真上の位置から、両手のカノン砲と全レールガンを一点に向け一斉発射。

高速で撃ち出された弾丸は、フィールドを突き抜け本体を直撃し、周りの艦を巻き込み大爆発を起こす。


「こういう戦い方だってあるのさ………っと、危ない」


離脱した処にレーザーが放たれるが、素早くスラスターを操作して横に避けた後に着地。

それに続くように、俺の動きを追尾して多方向から発射されるレーザーとグラビティブラストの嵐。

刹那の差で、ローラーダッシュを動かし回避。

そのすぐ後、轟音と共に背後で大爆発の衝撃波がピット内を襲う。





「………アレ?」


不意に視界がぼやけた。


「……っと、イカンイカン」


首を左右に振り、なんとか意識をハッキリとさせる。

………もう少しだけ持ってくれよ。





ジグザクに走行しつつ、敵の照準を散らしながら反撃のチャンスを待つ。

この辺り一帯は、障害物がほとんどない平原なので遮蔽とる自然の盾が無い。

だから、一箇所で迎え撃つのは“狙ってください”っと言っている様なモノだ。


「だったら、作るまでっ!!」


前方300メートル程の所に、ミサイルを一斉に発射。

着弾と同時に、舞い上がる土埃と土砂の中にローラーを走らせる。

敵艦隊は、土煙の直前で静止し晴れるのを待つ。



何故、攻撃をしないのか………それは、この火星の土壌の特性にある。

知っての通り、ナノマシンによるテラフォーミングのおかげで、火星は地球に近い大気組成を持つ星になった。

そして、今もこれらは休まずに火星の土壌や大気中で活動している。

ナノマシン……それは言わば、生体に近く『熱』を持った極小の『機械』。

それが大量に含まれた中に、もし飛び込んだらセンサー類はどうなるだろう。


「答え簡単だ………敵味方の両方が見失う」


木星蜥蜴のAIは、索敵などに熱や金属、震動に反応するセンサー類を主に使っていると推測される。

今いるこの中は、多数あるナノマシンの熱や金属反応で向こうのセンサーはかく乱されている筈。

稼げた時間は僅か数十秒であったが、反撃態勢を整えるには十分だった。



センサーが使えないのはこっちも同じ、ならば両者の違いは何か。


「あっちは機械で………」


煙が晴れる前に、敵の位置を予測して外へとブースターを噴かして飛翔する。

予測は大当たり、十隻がほぼ一団となって静止していた。


「そんで、こっちは………」


瞬時に、全武装を展開。


【 ミサイル発射管、胸部ガトリング開放 】


【 及び、全火器の照準セット完了 】


「人が乗っているからさっ!!」


エステに搭載された全武装から、次々と撃ち出される弾丸とミサイル。

それらは全て、フィールドを貫き敵艦の装甲を蹂躙する。



あれだけ、大気圏内で配分を考えずにレーザーやグラビティブラストを撃ったのだ。

フィールド出力が下がるのは、当然と言っていいだろう。

『人』と『機械』違い………それがこの結果を生み出したのだ。



撃ち出される銃火器の反動で後退しつつ、地面へとゆっくりと落下していく機体。

着地の直前に、火星に空に大きな紅蓮の華が大音量と共に咲いた。





『ユラ、聞こえるかっ!?』

「ウリバタケさん」

『すまねえ、“アレ”の準備だけどよ………微調整であと二十分……嫌、十分だけ待ってくれっ!!』

「五分でお願いします。
 弾薬の消費量が、もう半分を切ってるし、エネルギーの方も………」


現在のナデシコは、エステバリスに供給するエネルギーさえも惜しい状況。

だから、探索に出発した時に積んだバッテリーで戦っていた。

フィールドの展開も節約して、逃げと回避に徹していたのもその為だ。


「それに……」


それに、こっちの身体もヤバイ。


『それに……なんだ?』

「何でもありません。
 それより、準備の方をよろしく」

『ハァ……ったく、無茶な注文しやがって』

「それだけ、あなたの腕を信用しているってことですよ」

『はっ、よく言うぜ………よっしゃぁぁっ、野郎ども五分で済ませるぞっ!!』

「あっ、ユナたちは無事ですか?」

『………心配すんな、怪我一つしてねえよ』

「そうですか………すいません、あとの事はよろしくお願いします」

『応っ、こっちは心配いらねえからな』

「ハイ………」





「………こっちも、がんばらないとな」


そっと右脇に手を当てると、「ヌルッ」とした感触が伝わってくる。

さっきの反動で傷口が開いたか………あと五分だけ、五分だけ持たせる。





機体が被弾し、ピット内に強い衝撃が襲う。


「くっ、あと二分………」


ここにきて、意識が途切れる事が多くなってきた。

なんとかして意識を保とうするが、それに反して被弾率は上がる。

それでも、致命傷に至っていないのは機体の装甲強度が高いからだ。



もう何度目だろうか、こちらに放たれるミサイル群を目にしたのは……


「………くそっ」


胸部ガトリングでこれを迎撃するが、間髪入れずにまた警告音が鳴り響く。

撃ち続けながら、機体を180度回転させて迎撃に当るが………


【 残念、弾切れです 】


「なっ、弾切れっ!?」


表示されたウィンドウを見て愕然とする。

トリガーを引くが、ガトリング砲はただ廻るだけで何も放たれない。

頭はその行為に一瞬停止するが、身体に染み付いた経験の選択は早かった。

ローラーが勢いよく回転して後退…………間一髪で避ける事ができた。


「残弾数が分からなくなるまで集中力が落ちているなんて………」


だが、敵は悩んでいる暇を与えてくれ無かった。



右上をグラビティブラストが掠める。

さすがに、コレに当たったら致命傷では済まないので必死に回避する。

すかさず、反撃とばかりに左のカノン砲を撃ち込む。

砲身から発射される五つの弾丸、その内の三発が命中し敵艦を撃沈。


【 九時方向、ミサイル接近中 】


「チッ、またかっ!?」


迎撃しようと、カノン砲のトリガーを引くが………何回引いても弾が出てこない。


【 左カノン砲、弾切れです 】


「こっちも、弾切れかよっ!?
 ………くっ、それなら」


ギリギリまで引き付けて…………今だっ!!

空になったカノン砲を、ミサイル群に投げつけ一気に後退する。

全てのミサイルを融爆させ、なんとか回避に成功。

しかし、またこれで武器が減った。

残りは、レールガン四丁と右手のカノン砲だけ。

残弾数も、全部合わせてようやく二桁といったところだ。



――――突然



「……うっ!?」


胃から何かが登ってくる。

必死に堪え様と、両手を口元に持ってくるが………


「ウグゥ………ガハっ!?」


口から、勢いよく吐き出されるドス黒い血。

大体、コップ一杯分の量を吐血し為だろうか。

口元を覆っていた両手から、座っているシートに滴り落ちていく。



内臓に溜まっていた血が、胃を介して逆流したか。

………口元を腕で拭い、通信を『音声のみ』に切り替えた。


【 前方、敵艦よりグラビティブラスト発射 】


ピット内に警告音が鳴り、素早く行動を起こす。


「奴等、こっちの状態が悪い事に気付いていやがる」


愚痴を零しながら、右方向にダッシュして回避。

ふと目を向けると、ナデシコに接近する一隻の敵艦を発見。

急いで方向転換をして、ナデシコに向って爆走する。





しかし、どうやって奴を堕とすっ!?

弾薬もほとんど空の状態だし、ナデシコからの援護も期待できない。

残りの全弾薬を使えばなんとかなるが、あとの事を考えると良い手とは思えない。

…………いや、迷う事は無い。

残りの全弾を使用して、ナデシコを護る。

あとの事はなんとかする………いや、してみせるっ!!

コンソールを握る力が強くなり、同時にローラーが加速する。



『おっ、何でサウンドオンリーなんだ?』

「その声は、ウリバタケさんっ!?」

『おうよっ、待たせたなユラ。
 最終調整が完了したぜ………今からそっちに……」

「ちょっと待ってくださいっ!!
 ………射出のタイミングは、こっちが指示していいですか?」

『別に構わねえが………大丈夫なのか?』

「邪魔な一隻を堕とす位は……」

また、意識が遠ざかる。

今度のは一番酷く、気を抜いたら簡単に倒れてしまいそうだ。

………負ける……もんかっ!!


「っゥ!?」


舌の横をを軽く噛み切り、痛みでムリヤリ意識を戻した。


『おいっ、どうしたっ!?』

「いえ………それより、射出の準備をお願いします」


通信を切り、目の前に迫る敵艦を凝視した。



牽制にミサイルが発射されるが、着弾の位置を予測。

そこから、安全なルートを瞬時に導き出して突き進む。

そして、真下へと入り込み………


「……もう、遠慮はいらない。
 残った全弾………喰らいやがれっ!!」


掛け声と共に、トリガーを引き絞る。



各火器から、残った全ての弾丸が飛び出し装甲を突き破る。


「コイツは、オマケだ」


空になったカノン砲を、槍投げの要領で真上に投げつけるとすぐ離脱。

それが、トドメになり艦は撃沈。

機体が爆煙に覆われるが、ブースターを噴出させて空中へ抜ける。

向った先は、ナデシコの後部デッキ上空…………





目的の場所に到達する直前、格納庫に向けて通信を入れる。


「ウリバタケさん、お願いしますっ!!」

『よっしゃあ、射出っ!!
 ………くぅ〜〜〜っっ、一度は味わいたかったこのシチュエーションっ!!』


重力カタパルトから、射出される特殊大型ライフル。

装着されたサポートブースターが、こちらに向かって誘導する。

機体をクルリと回転させ、ナデシコの正面に背を向ける形になる。


………リミットブレイク


――――機体の制御プログラムにアクセス。


              コード   ブリューナク
――――解除確認 CODE Brionac 起動。


【 各機関、シーケンス開始 】


ライフルが真正面に来ると、サポートブースターがパージ。

同時に、人間で言う水月の一部分が開かれる。


【 ブリューナク コネクト開始 】


レーザービーコンが照射され、ライフルがその部分に接続される。


【 コネクト完了 機体とのシンクロ問題ナシ 】


ブースターを噴出させながら、目的の場所である後部デッキにゆっくりと着地。

銃身の中間の左右から、飛び出してくるグリップ。

それぞれの手でそれを握り、敵艦群を正面に見据えて構える。


――――IFSフィードバックレベル……10……15に移行。


【 レンズカートリッジ装填、及びエネルギーパック装着を確認 】


――――ジェネレーター出力最大、バイパス開放。


【 グラビティレンズ生成開始 】


数十秒後、銃口の先に直径5メートル程の薄いレンズが形成される。

ピット内のメインモニターに、敵の艦群が映し出される。

敵の構えは、大型旗艦三隻をそれぞれトライアングルの頂点にした基本的陣形。

しかし、それは此方にとって好都合なのだ。


――――ターゲットロック。


旗艦三隻が赤くポイントされ、拡大されたウィンドウがそれぞれ開かれる。


【 座標軸、相対距離算出………誤差修正完了 】


【 All Complete 】


サポートプログラムから、完了の合図が表示。

そして……………


「くらぇぇぇぇえぇぇっっ!!!」


………迷わずトリガーを引いた。





正式名称、“試作型 特装グラビティライフル ブリューナク”

機体ジェネレーターと、ライフルに装着したエネルギーパックを連結。

それにより、戦艦並のグラビティブラストを生み出す事が可能となった。

そして、装填された特殊レンズミラーを媒介にグラビティレンズを生成。

このレンズは、意図的に高圧縮したDFと媒介を使って空間歪曲を引き起こして作り出される。

放たれたグラビティブラストは、一度レンズを介して集束し三条の黒き光の槍となって喰らい尽くす。



実はコレ、未完成のままナデシコに持ち込まれた重甲フレーム専用装備なのだ。

それを、火星に着くまでの間にウリバタケさんと共同で作り上げていったが………完成したのは火星圏内の直前。

故に、テストもナシのぶつけ本番での使用である。

多少の不安はあったが…………



三条の黒き光の槍は、大気を振動させながら寸分の狂いもなく目標に向っていく。

その光景はケルト神話の通り、まさに“投げると稲妻となって敵を死に至らしめる灼熱の槍”そのものだった。

そして……………到達する。

ナデシコの主砲にも耐えたDFは、その威力の強大さに意味をなさず“神を突き滅ぼす槍”は敵を喰らい。

次の瞬間には、旗艦の周りにいた全て艦を巻き込み大爆発を引き起こした。





その結果に安心したのか、俺はシートに背中を預けて張り詰めていた力を抜く。


「なんとか持った………」


【 銃身強制冷却開始 】


【 次の発射まで約30分必要 】


サポートプログラムが、次々と情報を表示していく。

でも、もう必要ないか。


『ユラ君、凄いスゴイすごぉ〜〜〜いっ!!』

『テストもしなかったが、上手く作動したな。
 しかし、作っておいて何だがここまで威力があるとは………』


ユリカさんとウリバタケさんから通信が入る。


『はぁ〜〜、どうにか危機を脱しましたな』

『しかし、まだ油断できん。
 次の攻撃がある前に、このエリアを離脱せねば』


あっ、次はプロスさんとゴートさんか。


『ハイ、そうですね………ミナトさん、全速でこの空域を離脱。
 ルリちゃん、フィールド解除後にそっちに廻していたエネルギーを各機関部に送って」

『りょ〜かい………フゥ〜、ようやく一息つけるわね』

『半径3キロメートル圏内に敵の反応ナシ………ディストーションフィールド解除します』


ミナトさんも緊張していたみたいだな………それに、ルリちゃんは相変わらず冷静か。


『そういえば、艦長。
 エネルギーなら、あのライフルの予備パックがまだあるぜ』

『じゃあ、それも廻してください。
 あっ、でも必要な分は残しておいて下さいね』

『了解………おめえら、まだ仕事が残ってんだっ!!
 いつまでも腑抜けているんじゃあねえっ!!
 ……ったく、安心したらすぐこれだ』


二、三個残っていれば一先ず大丈夫かな。


『ユラ、もう帰艦しても大丈夫だよ』

『そうそう………早く、私たちに謝って貰わないとね』

『あれだけ、心配させたんだから………』

『もちろん、覚悟はできているわよね?』


ラピス、パール………お手柔らかにお願いします。


『………ユラ、聞こえてる?』

『さっきから、ずっと黙っているけど……』


聞こえてるよ………でも、少し待ってくれないかな………なんだか、とても眠いんだ。


『なあ………ユラの様子、おかしくないか?』


んっ、失礼だなアキトは………別に、どこもおかしくないぞ。


『…………ルリちゃん、通信設定をこっちで切り替えられる?』

『ハイ、多分出来ます………………サウンドオンリー切り替え、ピット内の映像でます』





『『『『『『っっっ!!!?』』』』』』


あれっ、なんでみんな驚いた顔をしてるんだ?


『リョーコさん達っ、ユラ君のエステバリスを大至急回収してくださいっ!!』

『お、応っ………ヒカル、イズミいくぞっ!!』

『う、うん』

『分かったわ、急ぎましょう』


どうして、そんなに慌てているのかな?


『メグミさん、救護班に連絡をお願いします』

『は、はいっ!!
 アキトさん、ちょっとどいてください…………ブリッジより救護班へ、大至急………』

『格納庫、ウリバタケさん聞こえますか?』

『おっ、どうした。
 また、新しい注文でも………」

『作業を全部一時中断してください。
 今から、そちらに運ばれるエステバリスのパイロット救出を最優先です』



いったい、何が…………


『ユ……大丈……しっかり…て……死……ダメ………』

『いや……目…あけ……へんじ…て……お願…よ………』


ラピス、パール……また泣かせちゃった。

全く、俺も進歩がねえな。


『オイ……しろ……ユ……オイ…ちきしょ……なんで……』


アキト、顔が真っ青だぞ。

少しは強くなったと思ったけど、まだまだ修行足りないかな。



………それにしても、凄く眠い………それに、とても寒い。

なんでだろう………ピット内は適切な温度に保たれているのに?

そうい……えば、身体…も動…か……ない。

あ……れっ、だんだ…んと…視界…が……狭まっ…てき…た。

もう、疲…れた…から寝……ちゃお…うか………ナデシ…コは、もう……安全だ…よな。

……でも、謝ら…ないと…謝らな…いと…謝…らないと……謝…らな…い………



――――意識が途切れた。










第九話へ










楽屋裏劇場



以降は

二式(クイック二式) ユ(ユラ) ラ(ラピス) パ(パール) エル(エメラルド) ユナ





二式「hollow、さいっっこうぅぅっ!!
   いや〜〜、Fate本編をプレイした人にはたまりませんなぁ〜」

ユ「そのおかげで、執筆速度は落ちたがな」

二式「ぐっ……」

ユナ「シナリオは10月中に全て終わらせた筈なのに……今まで、遅れたのは何故ですか?」

二式「はうっ!!」

エル「ミニゲームのコンプ……」

パ「意外にハマった、花札と風雲○○○城……」

ラ「メモリー容量確保の時に、間違って消した完成直前の下書き……」

二式「ノォオオオォォォォォッッ!!
   し、仕方なかったんやぁ〜〜、下書きを消した事を楽しさで全力逃避しようと……」

ユ「問答無用っ!!
  くらえっ、疾空閃 (ver.斬艦刀)」

二式「ふっ、いつまでもツッコミが入れられると思うなよっ!!
   オープン・ゲェェェットッ!!」

ユ「なにぃぃぃぃぃっ!!」

エル「首と胴体と下半身が分離しちゃったぁ〜……」

パ「ついに、人間を捨てたわね」

ラ「ううっ………夢に出てきそう……」

二式「そして、合体。
   ……ふぅ、意外と疲れるなコレの動き」

ユ「てめえっ、いつから人外作者になったっ!?」

二式「……人間のままでいたら、この世界は生きていけないっしょ♪」

ユ・ラ・パ・エル「「「「…………………(こいつ、完全に開き直った)」」」」

ユナ「それは、一先ずおいて置いて………新キャラの紹介を軽くしようと思います。
   皆さん、台本通り進めてくださいね♪」

ユ「まずは、セリカちゃんからだ。
  本名はセリカ・ファシネンス、年齢は十二歳。
  黒髪のロングヘアーで、少し琥珀色が掛かった瞳をしている」

パ「凛とした表情と控えめな性格。
  そして、この娘の出す神秘的な雰囲気が実年齢よりも上にみせるか……
  いいなぁ〜、オトナっぽくって………」

エル「しかも、ユラに『お姫様抱っこ』されてるぅ〜〜」

ユ「緊急事態だったんだから、しょうがないだろ」

エル「ううぅ〜〜、でもぉ〜〜……」

ユ「ハァ………よっと……これでいいだろう?」

エル「うん、ゆるすぅ〜〜♪」

ラ「あっ、ずるいっ!!」

ユ「次に行こうっ、次に……(汗)」

パ「エル、あとで覚えてなさいよ。
  ………えっと、次はミナさんね。
  本名はタカベ・ミナさん、年齢は23歳。
  軽くウェーブの掛かった肩の半ばまでの栗色の髪に、瞳はダークブルー」

ラ「ちょっと天然が入った暴走お姉さん。
  孤児院のみんなからは、『先生』と言って慕われているみたい。
  この人、なんかユラに一目惚れしちゃったみたいだよ」

ユ「そんな訳ないだろう?」

ユナ「でも、あの人の瞳は熱っぽい感じで主様を見つめていますし……」

ユ「むっ、まだ病気が治ってなかったか?」

ラ・パ・エル・ユナ「「「「(やっぱり、超鈍感だ……)」」」」

二式「スリーサイズは、上から、86・59・88……である」

ユナ「なんで、そこだけいつもあなたが言うんですかっ!!」

【ボグゥっ】

二式「ぬぐぉぉぉっ……く、釘バットで……横一閃かよ……ガクっ」

ユ「でも、ミナさんって怒らせると怖いんだよな……」

エル「いったい、何を入れるんだろうねぇ〜〜。
   じゃあ、次いくよぉ〜〜……ソウマ君、本名はタカベ・ソウマ、年齢は10歳。
   黒髪のツンツン頭、黒い瞳のやんちゃ少年」

ユナ「まるで、アキトさんが小さくなった感じですね。
   本当に、絵に描いたような熱血やんちゃな性格で、曲がった事が大嫌い」

ラ「どんどん、いくよっ!!
  コウタ君、本名はタカベ・コウタ、年齢は同じく10歳。
  茶髪に、髪型は耳が隠れる位の長さで真ん中分けている。
  瞳の色は、ダークブラウンで……あっ、眼鏡を掛けているんだ」

パ「性格は、基本的に大人しいけど、言うべき事はちゃんと言う子。
  ソウマとは、意見の食い違いでよく口論になるが、互いを認め合っている親友である」

ユ「この二人は、本当にこっちが羨ましく思うほど仲が良いんだよな」

二式「この二人の裏設定。
   元々、二人は手先が器用なので、壊れた暖房器具や家電製品などを修理して孤児院に提供していた。
   そして、火星が陥落してからの一年の間も、様々な物を拾ってきては修理して避難生活に役立てる。
   そのおかげで、腕前はメキメキと上がり、設計図があれば図面どおりに作り出せるようになった」

ユナ「最後は、ナジュちゃんですね。
   本名はタカベ・ナジュ、年齢はやっぱり10歳
   緩めのふわふわウェーブの掛かった亜麻色のロングヘアーに、ブルーサファイアの瞳。
   あと、八重歯がチャームポイントの大人と少女の心を持つ少女ですね♪」

ラ・パ・エル「「「ライバル出現だ(ね)(だよぉ〜)」」」

ユ「………なんのだ?」

ユナ「主様………(泣)」

ユ「なんで、泣いてるんだ………まあいいか。
  彼女は、好奇心旺盛で知らない事はすぐに訊いてくる。
  既に成熟した精神の持ち主であり、その言動には周りを驚かせている。
  また、年相応の少女らしい一面もあり、セリカちゃんとは違ったギャップを感じるな」

二式「裏設定ツゥーだ。
   彼女はIQ200以上の超天才児で、イネス女史の弟子でもある。
   上の二人が注文する設計は、彼女が全て手掛けている。
   彼女を成長させたのは、火星の状況とその頭脳の良さが要因だ」

ラ「三人で一つのチームなんだね」

パ「名前はダサいけどね……」

エル「私たちも、何か付けてみようかぁ〜」

ラ・パ「「遠慮する」」

ユ「彼女が、第二のイネス・フレサンジュに成らない事を願う」

ユナ「マッドはいやですぅ〜〜(泣)
   解剖されそうになるし、とってもカラフルなお薬を打たれそうになりましたぁ〜(泣)」

ユ「あのあと、そんな事が………(汗)」【八話前編参照】

ラ「それで、この人たちは今後も出てくるの?」

二式「一応ね………でも、プロットは次の九話はまでしか書いてないから何とも言えない………」

パ「次が、火星編の最後になるのね」

二式「予定だけどね……」

エル「早く書いてよぉ〜〜、そうしないと私の出番がぁ〜〜」

ユナ「そうですね……私もエルさんに早く会って見たいです」

ユ「こいつの努力次第だな」

二式「よぉぉぉしっ、やぁぁぁってやるぜっ!!」

ユ「むっ、珍しく気合が入っているな?」

ラ・パ・エル・ユナ「「「「いい傾向、いい傾向ね(だわ)(だよぉ〜)(ですね)」」」」

二式「いざっ、テイルズ オブ ジ アビスをやりまくるぞぉぉぉっ!!」

ユ・ラ・パ・エル「「「「執筆しろぉぉぉぉぉぉっ!!!」」」」

斬っ!!】【フォンっ(バット一閃)】【グシャっ(斧で一撃)】【ドコっ(木刀一文字)】



ユナ「え〜〜とっ、作者さんは制裁をされているので、私が代わりを務めさせていただきます。
   ………コホン……それでは、またの機会にお会しましょうね♪」

二式「お、俺のセリフが………【ゴンっ!!】はうっ………」









あとがき




皆様、更新が遅れて申し訳ありません。

私の方で手違いがあり、大幅に遅れてしまった事を此処でお詫びいたします。



今回のお話はいかがでしたか?

今回のエステの戦闘シーンは、オリジナルを多く取り入れたので、皆様に上手く伝わったか心配です。

おもしろいっと、感じてくれたら幸いです。

本来、この八話はもっと短かったのですが、終わってみたらこの長さ。

三つに分けても、良かったかもしれません。

ユラの秘密の一端が明かされ、更に弟と妹がいる事が発覚。

ちなみに、この二人の設定は現在練り直し中です。

ユラの初期設定は、ただのMCの予定でしたが、それだけだと安直だったから。

火星の遺跡から発掘されたナノマシンと、適合するように生み出された兵器という事にしました。



ちょっと、ネタバレ。

第一話で、『ジャンプコントロール遺跡』のナノマシンとこれが拒絶し合わなかった理由。

それは、この二つがほとんど同種のモノだからです。(用途は違いますが、核の部分が一緒)



さて、次回は火星編でのラストになる訳ですが………

年末年始が忙しくなりそうなので、更新は大幅に遅れます。

私事ではありますが、なにとぞ御理解のほどをよろしくお願いします。



最後に、WEB拍手してくださった皆様、またコメントを送っていただいた皆様。

いつも、ありがとうございます。

本当に、読んでいただいて貰っている事に感謝と喜びでいっぱいです。

更新は遅いですが、これからもよろしくお願いします。

それでは。



感想

ユラ君とうとう、目的を得ましたね。

お話の切り込み方、お笑いの間のとり方など綺麗に纏められており、いつも楽しませていただいております。

しかし、彼らが生きているとしてどこに所属しているのか、木連? クリムゾン? 色々想像できますね。

でもま〜相変わらず凄いもてっぷり(汗)

会う人会う人落とす様は美少女キラー?(爆)

まぁ、アレですな、アキトでも敵わん事請け合いです。

特殊なマシンチャイルドとしての戦闘力と陰陽師としての能力を兼ね備えているという意味でも。

主人公最強主義として名に恥じないキャラであろうことは間違いありません。

今回は、子供たちを庇う為に不覚を取りましたが、それも実力が出し切れなかったという意味でもあります。


欠点としてあげるなら、あらゆる物を兼ね備えたユラと言う人物は、失敗や、敗北、妄執という部分においてアドバンテージを失いがちになります。

今回に関して言えば、即ちやられたときの危機感ですね。

まあ、主人公というものは基本的に死んでも死にきれ無いんですけど(爆)


後もう一点は、ユラと言う人物が完璧である事で物語はユラ君一人の牽引する形となっています。

他のキャラもどうしてもユラの居る中でしか動けず、ユラの行動に一喜一憂する事でキャラ表現をする形になりがちです。

つまり、ユラの関与しない部分の無い物語となってしまう事でしょうかね。


別にこれらは、必ず問題になる物でもありませんし、読者の方によってはむしろ喜ばしい事である場合もあります。

主人公最強主義はパワーバランスとか考えないのが味噌ですしね。

まあ、私個人の意見として聞いておいて下さい。


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