―――状況?何が状況だ。俺が状況をつくるのだ
一度そんな事言ってみたい、いや、本当に。
こうやって一兵士として動いている俺だが、大軍団を統率するというのにも、少し憧れがある。
尤も実際にやるとなると、重圧やら責任で、ならなければよかった、と思うかもしれないが。
そう、安易に軍人という道を選んでしまった時のように。








日本解放戦線というのは、どうやら報告以上に軍備を整えていたようだ。
恐らく、ヨコハマは誘い。
囮を使いブリタニア軍を誘い出し、その後サクラダイトでゲットー内を爆破。
全軍とはいかなくとも、一割のKMFが大破、三割ほどのKMFが中破ないし小破。
そして周囲には、消耗ゼロの日本解放戦線。
はっきりいって、ピンチだ。

「――――――――クッ、ジェレミア卿、ジェレミア卿!」

『おおっ、レナードか!
貴公も無事で何よりであった!』

ふぅ、よかった。
今回の戦いの実質的な指揮官であるジェレミア卿は生きていた。
これなら、なんとかなるかもしれない。

幸いにして、数はまだこちらが上だ。

「ジェレミア卿。
一旦体勢を整えましょう。
それに、暫くすれば租界から援軍も到着する筈です。」

『うむ、分かった。
私は一軍を率いてテロリスト共の掃討にかかる。
面倒な事は君に任せたぞ、レナード!』

「は、はい!?」

おいおい、俺にやれっていうのか?
まだ着任して一週間……は経ったな。
いやいや、それでもまだ一ヶ月も経ってないんだぞ!

『なに、君ならば出来る!
やろうと思わなければ、何も出来はせんぞ!
では任せた。』

「ジェレ――――――――――」

プツン、そんな音を残し通信は途絶えてしまった。
まったくあの人は………。
普通新兵に緊急とはいえ全軍の指揮を任せるかよ。

だが仕方ない。
幾ら無茶苦茶でも命令は命令。

「二番機、三番機。
急いで集合ポイントへ向かうぞ、遅れるな。」

『イエス、マイ・ロード』

グラスゴーを走らせる。
既にここにも、ナイトメア同士の銃撃戦の音が響いてきている。
これは急がないと。

集合ポイントには、既に結構の数のブリタニア軍が集まっていた。
負傷者は多いが死傷者はいない。
ここはゲットーとはいえ市街地、もしかしたら日本解放戦線もそのせいで、余り多くのサクラダイトを設置できなかったのかもしれない。

「ヴィレッタ卿、負傷者は?」

「三十五名だ、中で戦えぬ程重体なのが三人。
死者は四人だ。」

「そうか………では、ここはヴィレッタ卿。お願い出来ますか。
私はジェレミア卿の援護に。」

「卿が?
なんなら、私が行くが?」

「いえ、私にやらせて下さい。
俺も全軍に細かな指揮をするのは慣れてませんし、それにヴィレッタ卿は――――――。」

負傷兵などには女性らしい気配りが出来る人の方が、と言い掛けて止めた。
このようなタイプの人は、女性だから、という理由を言ったりすればよく憤慨するものだ。
緊急時に変ないざこざは避けたいし、女性の不興は買いたくない。

「どうした?」

「いえ、なんでもありません。
ではレナード・エニアグラム、これよりジェレミア卿の援護へ向かいます。」

ヴィレッタ卿に一礼して去る。
目指すは高所。
出来れば戦場を見渡せるような高い場所がいい。

「………あれなんて、どうだ。」

一際大きいビル、恐らくは戦前は会社か何かだっただろうそれを見て呟く。
あのビルの屋上からなら戦場を見渡せそうだ。

「よし、二番機、三番機。
例のものは持ったな?」

『はっ!』

「よし、ナイトオブナインの弟は並みじゃねえってとこを見せてやる。行くぞ!」

スラッシュハーケンを打ち込み、屋上へ上がる。
予想的中。ここからなら戦場を見渡せるぞ。

「さて、と。」

ファクトスフィアを最大望遠。
戦場が良く見える、どうやら眼鏡を掛けた白衣のおっさんの調整は上手くいったようだ。
なんでも、第七世代のKMFを作るための実験だとかなんとか言っていたが…。
まあいいや。

ガタンッ、

ナイトメア用の巨大な銃身が戦場へ向かって伸びる。
これからやる事を簡単にいってしまえば…………狙撃だ。
距離にして三千はあるようだが、この程度なら別に大した距離じゃあない。

さて、では最初に……。
そうだな、あの灰色に塗装された無頼から。
照準、発砲。

ダアァンッ

唸り声をあげて真っ直ぐに飛ぶ弾丸。
イメージ通り、弾は敵に当たると弾け、そして沈黙させた。
続いてもう一発。

ダアァンッ

もう一機の敵ナイトメアが倒れる。
訳の分からない内に二機のナイトメアをやられた、あちらさんは混乱しているようだ。

そう俺は確かに白兵戦でもナイトメアの騎乗でもルキアーノに負ける。
ちょっとだけ勝っている所があっても、それは微々たる差。
しかし俺がルキアーノの技量を圧倒しているものが一つある。
それが、狙撃。

昔からそうだった。
どうやら俺には剣よりもライフルの才能があったようだ。
そう、狙撃(これ)だけは、例え姉にだろうと負けない、いや、負けてやらない。

あちらさんも(狙撃手)の存在に気付き始めたようだ。
直ぐにこの場所に無頼が迫るだろう。だが…………。

俺のいる場所に接近していた無頼の反応が消える。
残念だったな。
既にそこには、我が軍が防御を固めている。
突破は不可能なんだよ。

暫くすると一度本隊の建て直しを行っていたヴィレッタ卿や、租界からの援軍も駆けつけてくる。
これで日本解放戦線の勝ち目は、消えた。

敗北を悟った日本解放戦線は退却を始める。
しかし、逃げる相手をそのままにする訳がない。
ブリタニア軍は撤退する日本解放戦線を執拗に討ち取っていった。

「……一時はどうなるかと思ったけど、これで勝ったな。」

なにはともあれ勝利は勝利だ。
まずは喜ぼう。

『…………………………』

「ん、どした?」

『いえ、レナード卿にはこのような特技があったのかと。
流石はナイトオブラウンズ様の弟であらせられる!』

「まあな。」

これで少しは落ち着けるかな。
卒業して実家に帰る間もなく直ぐにエリア11だからな。
贅沢かもしれないが、ここらで長い休みが欲しいところだ。

叶わない望みだと思いながら、俺は溜息をついた。



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