―――俺はクリスマスが大っ嫌いなんだ。ラジオから流れる馬鹿らしい音楽やCMには我慢ならない。
クリスマスがどうこうというのは、さておくとして。
ラジオというのは面白い。
TVが流通し物事を映像で捉えられるようになった現在においても"音"だけの情報であるラジオを人間は手放さない。
そう、それはアッシュフォード学園生徒会も例外ではなかった。








事件は今日の朝。
結局、夕食をご馳走になった後、時間も遅く明日の予定もなかったレナードは、クラブハウスに泊まる事となった。
それはそれで一悶着起きたのだが、それはそれ。
問題なのは朝起きて登校したところ麗しの生徒会長から、

「今日は宜しくね♪」

と妙に機嫌よく声を掛けられた事だ。
その時は、たぶん放課後の生徒会のことだろうと思い曖昧に返事を返したのだが、それがいけなかった。
四時間目の日本語の授業が終わると、三年の教室からやって来たミレイの「会長命令」により半ば強制的に視聴覚室へと連れてこられて、

「さぁ今日もいってみましょう!
昼休み恒例、アッシュフォード学園校内放送!」

今に至るという訳だ。
ちなみにミレイの言う通りこの校内放送は、何時も昼休みになると生徒会メンバーや放送部の者によって流されている。
ちなみにDJの一番人気は、今くっちゃべっているミレイ、
二番人気は副会長のルルーシュ。
尤もルルーシュの場合は、彼の声が流れることに一部の女子生徒が喜んでいるだけだが。

「本日のゲストは、なんとなんと!
あの皇帝陛下直属、ナイトオブツーにして我が校の生徒会専属ボディーガード兼、掃除係のレナード・エニアグラム卿です。」

「………会長、一体これはなんなんですか?」

「なにって、ラジオだけど。」

「そんな事は分かってますよ。
俺がラジオに出るというのも、この校内放送は以前からも行われていたことですし、生徒会の仕事の一つでもあるようですから百歩譲って認めましょう。」

「ふんふん。」

「しかし、普通なら事前に打ち合わせの一つでもするものじゃないんですか?」

やや苛立ちを込めた口調でレナードが言う。

「まあ細かい事は気にしない、気にしない。
ナイトオブラウンズでしょ。」

「ラウンズとラジオは関係ないと思いますが。」

「今回は普段はお目にかかれないナイトオブラウンズに、好き勝手に質問しておちょくろうというコーナーです。」

「無視ですか……。」

「生徒の皆から送られたハガキの中から厳選された質問を、この場でナイトオブツーにぶつけちゃいます。」

「まあそれくれいならいいですけど…。
雑誌の取材も何回か受けたことありますし。」

「おぉ、強気な発言。
じゃあ早速…『好きな食べ物はなんですか?』
うーん、お約束の質問ね。
それで、どうなのレナード。」

「好きな食べ物といっても、特にこれといって好き嫌いしない性分ですから。」

「まあ、あんなゲテモノ料理を何食わぬ食べるくらいだからね……。」

「なにか?」

「なんでもないわ、さっ続けて。」

「?……まあいいですが。
強いて上げるなら、ブリタニア料理のコース、だな。
故郷の味というか、まあそんな感じです。」

「お袋の味って事ね…。
レナードを狙ってる女子生徒、そういう訳だから料理修業頑張ってねー。
では次の質問。
ペンネーム、レッド・ムーンさんから。
『レナードくんのKMFでの弱点はなんですか?』
これはなんともマニアックな質問だね〜。
それで、どうなのレナード。
ぶっちゃけ弱点とかあるの?」

「弱点って……。
そうですねぇ、特に不得手はありませんが……。
近接戦ではルキアーノやジノに負けることかな。
だけど同じラウンズ相手ってだけで、別に近接が苦手という訳じゃないよ。
そうそう、随分と前にビスマルクのおっさんと模擬戦したんだけど、コテンパンにやられたよ。
流石はナイトオブワンって思いましたよ、あの時は。」

「つまり、特に弱点はないってこと?」

「まあそういうことで。」

「ブリタニア人としては頼もしい事でなにより!
じゃあ三つ目の質問。
ペンネームは、クルクルキックさんから。
『どうすれば、ラウンズになれますか?』
これまた夢のある質問がきたわね〜。」

「そうですね。
だけど、ラウンズになるといっても、選ぶのは皇帝陛下ご自身だから、どのような基準でお選びになっているのかは分からないな。」

「へぇ、それじゃあレナードはどんな風に選ばれたの?」

「EUで戦ってる所に、先にラウンズ入りしたルキアーノがやって来て報告してきたんですよ。
お前のラウンズ入りが決定されたって。
だから目に見える形で戦功をあげるのがいいんじゃないかと思う。
例えば敵司令官を一人で倒すとか、ナイトメア千人切りとか。」

「そりゃまた規模がデカイわね。
じゃあどんどんいくよ、次はこれ!
ペンネーム、MEIDOさんから。
『レナード様とルルーシュ様は随分と仲が宜しいようですが、もしかして、そのような関係なのですか?』
こ、これは…………遂に我が生徒会からそっちの道に進む人が…」

「違いますよ!
ってか、そのお便り誰が出したんですか?」

「さぁ。プライバシーの為に本名は書かれてないし。
それでどうなの、結局のところ。」

「どうもこうもないですよ。
俺は完全無欠、頭の先から爪先まで、男より女が好きです。
BLだとか薔薇だとかの趣味はありませんよ。」

「おおぅ、さっきの発言はこの学園にいる腐女子を絶望させたわよ。」

「絶望しといてくれ、勝手に。」

「そんな貴方に次の質問。
ペンネーム、一生友達で終わりそうな男bPさんから。」

「やけに悲壮感の漂うネーミングだな。」

「まあ最初は『ミレイ会長LOVE』ってなってたから直したんだけどね。」

「ひでえ。」

丁度その頃。
窓から投身自殺を図ろうとしていたバイク好きの学生が、クルクルキック達によって止められていた。

「では気を取り直して…。
『レナードの初体験はいつですか?
もしかして………○貞?』
わおっ、ナイスな質問よ、リヴァル。」

「プライバシーは何処にいったんですか!?
実名出してますよ、思いっきり!」

「細かい事は気にしないの。
ナイトオブラウンズでしょ。」

「便利ですね、その言葉!」

「それで、どうなの?」

「…………お昼に流すのも、どうかと思いますが。
少なくとも○貞じゃありませんよ。」

「へぇ〜。
で、ご相手は。」

「EUでの戦いの時に、元上官が「天国に連れて行ってやる」と言われて着いていったら、そこ娼館で。」

「………………」

「まあそこで、ですね。」

「………ごめん、どうコメントしたらいいか分からないわ。」

「まあまあ、現実なんてそんなもんですよ。」

「生々しい話題ね。
もしかして、今回の企画って子供の夢をぶち壊す類のものじゃないのかしら?」

「今更気付いたんですか?」

「もう、この話おしまい!
じゃ、じゃあ場の雰囲気を明るくする、この質問!
ペンネーム、マークネモさんから。
『お付き合いしている女性はいるのでしょうか?』
ふむふむ、健気な質問だね〜。
で、そこんところどうなのよ?」

「特定の誰かと付き合った事はないな。
いつも一晩だけとか、そういうドライな関係が主だったし。」

「あー、つまり彼女は無し。
フリーって事でいいのね?」

「まあ、そうなるかなぁ。」

「ではズバリ!
好きな女性なタイプはっ?」

「これまたアバウトな。
だけど好きなタイプかぁ〜。
やっぱり第一条件として"顔"だな!」

「やけに強く言ったけど、どうして?」

「どうもこうも……。
よく美人は三日で飽きるとかいうけどな。
飽きたって美人の方がいいだろ。」

「確かにねえ。
私もお見合いとか家の事情でよくするけど、やっぱり顔が、こうモンキーみたいな人とかいるわよね。」

「お見合いなら俺の所にも話が来るな。
そりゃもう、あちこちから。
四十のオバサンからきた事もあって驚いたな、あれは。」

「そりゃまた……。
あー、まだまだ質問は山ほどあるんだけど、もう直ぐ五時間目に突入しちゃうから、続きはまた次回ね。」

「次回もやるんですか、この企画?」

「あったりまえでしょう。
あのラウンズに直接質問する機会なんて一生に一度あるかないか、なんだから。」

「まあいいけど……。」

「じゃあ残り五分にまで迫ったところで、最後の質問!」

「最後?
さっきのが最後じゃなかったんですか?」

「ラジオじゃ最後って言ってからじゃないと最後にならないのがお約束なの。」

「はぁ。」

「ペンネーム、会長さんから。」

「それ名乗ってるのと同じですよねえ!」

ミレイはほんの少しだけ間を空ける。
そして真っ直ぐレナードの目を見つめて言った。


「この学園に入って、良かったですか?」


それは、誰もを虜にさせる満面の笑みで、
だからレナードも満面の笑みで答えてやった。


「勿論。感謝してますよ、会長には。
学校というのは、初めての経験ですから。」


「よろしい!では、本日の放送はこれでお終い!」



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