―――本当の真実というものはいつでも真実らしくないものだ。 真実をより真実らしく見せるためには、どうしてもそれに嘘を混ぜる必要がある。 だから人間はつねにそうしてきたものだ。









 新造の航空艦というのは伊達ではないようで、ほんの僅かな時間でアイスランドに到着する事が出来た。終始不機嫌そうだったルルーシュも、この戦艦アースガルズの性能には感嘆の声を上げていた。
 しかし、本当に大変なのはこれから。
 先ず始めにアイスランド方面の総司令官であるジョセフ・ディ・ブリタニアに挨拶に行かなくてはならない。
 ところで、これは……。

「なぁ主任。
"アイス"ランドって言う割にはあんまり寒くないな」

「アイスランドの海域には暖流のメキシコ湾流が流れてきているので、冬でもそれほど寒くないんですよ。首都であるレイキャヴィークでも精々最低気温は−10℃ほどなんです」

「ほほぅ、また一つ賢くなった」

 そうこう話しているうちに司令室についた。
 扉を開け中に入ると、茶色っぽい髪の偉丈夫が立っている。慎重は185cmくらいだろうか。
 少なくともまだ成長期であるルルーシュよりかは一回り大きい。

「久し振りだな、ルルーシュ。
人質の役目すら満足にこなせず本国に逃げ帰ってきたと思ったら、今度はこのアイスランドまで足を引っ張りに来るとは」

「皇帝陛下のご命令です、兄上……いえジョセフ総司令」

 傍目には穏やかそうなルルーシュだか、付き合いの長いレナードには分かる。
 あれは、かなり怒っている目だ。
 それも、何時か絶対に嘘でも誇張でもなく『ブッ殺す』という目。
 たぶん今ルルーシュの脳内ではジョセフを殺すための数十通りの方法を考えているだろう。

「まあいい。最新鋭の戦艦…………アースガルズだったか?
あんなものを、平民出の息子に与えるなど父上も何を考えておいでなのだか」

 ルルーシュの目が細まる。
 嫌な予感がする……それも生半可なものではない。
 何かよからぬ事が起きようとしているような、そんな予感。
 この予感は前にも感じた事がある。あれは確か河口湖で…………

「ふんっ。だかあの性能なら指揮官が無能だろうと多少の働きは出来るだろう。
お前には栄誉ある先陣を任せる、最前線だ」

 配置された場所を見て驚く。
 向かわせられる場所は最前線の中の最前線。
 ジョセフの意図は明確だ。
 ようするに、ルルーシュを"殺そう"と考えているのだろう。
 栄誉ある戦死という形で。

「それとレナード卿。
貴卿には私の側で仕えてくれ」

「申し訳ありませんが、お断りさせて頂きます」

「…………なんだと?」

「私は皇帝陛下よりルルーシュ・ヴィ・ブリタニア殿下の指揮下にて動けと、そう承っております。
故に現在私に指示を出せるのは陛下とルルーシュ殿下しかおられません」

「この私に逆らうと?
たかが父上の狗の分際で皇族に逆らうのか」

「おそれながら、如何に総司令であろうとラウンズに勝手な指示を出すのは越権行為に当たりますが、いかが?」

「ちっ! 勝手にしろ」




「すまなかったな」

 アースガルズ艦内で最も立派な造りをしている一室、皇族専用の部屋でレナードとルルーシュはゆったりとしていた。
 ちなみに此処では畏まる必要はないと、ルルーシュからのありがたい御命令を頂いているのでタメ口である。 
 
「なにがだ?」

「さっきの、ジョセフとのあれだよ。
正直、お前という最高の駒がいなくなれば、戦術に大きく支障が出るところだった」

「…………相変わらずの毒舌だな。
まぁそんな事より、いよいよ初陣だな、ルルーシュ」

「ん、ああそうだな」

「初陣だからって、あんまり緊張するなよ。」

「ふっ。そうだったな。
"俺"にとっては初陣だったか……」

「?」

「いや、なんでもない。
それより、お前の活躍には期待しているぞ。
ナイトオブツー、レナード・エニアグラム卿」

「勿論、御期待には全力でお応えします。
ルルーシュ殿下」

 うやうやしく頭を垂れる。
 
「それで、栄誉ある最前線に突っ込まれた訳だが、どうするんだ?
まさか逃げ出す、とか言わないよな」

「冗談。率いているのが素人なら兎も角、お前が言うにはそれなりに使える駒が揃っているんだろう」

「まあな。ルークやビショップクラスも何人かいるし、ポーンだってプロモーションすればクイーンに化ける可能性もある。
コーネリア殿下の親衛隊という程じゃないかもしれないけど、かなりの精鋭だぞ」

「それを聞いて安心した。
盤上の駒が揃っているならば文句はないさ」

 ルルーシュが余裕気にキングを指で器用に回す。
 念のため一つだけ忠告しておこう。

「油断し過ぎて、変なミスするなよ。
お前は昔っからイレギュラーには滅法弱かったからな」

「!……分かっている。

「それじゃあ、俺はKMFのパイロット達と交流を深めてくるさ。
ルルーシュも他のブリッジ要員達と仲良くなっておけよ。
先ずは足元の地盤を固めておかないと、何時か引っ繰り返るぞ。
…………ちなみに、医務室のナースが結構可愛かったぞ」

「なんの話だっ!」

「こっちの話だ、じゃあ」

 顔を赤くして怒鳴るルルーシュをおいてKMFの格納庫へと向かう。
 そこでは既にエリア11からついてきたキューエル、ヴィレッタ。そして他数人のパイロット達。
 ちなみにキューエル達もギアスのことは知らされている。

「それで……そっちの二人が」

「サンチア大尉です」

「ルクレティア中尉です、少将」

(二人は確か壊滅したギアス嚮団の生き残りだったか。生き残りのもう二人はナナリーの護衛についていたんだっけか。
これもルルーシュのギアスを抑える為、それとも単なる護衛としてか、或いは監視)

「ああ、君達二人の着任を歓迎する」

 型通りの敬礼を返しつつ尚も思考する。

(この二人もルルーシュと同じギアスユーザーなんだよな。
確かサンチアが周囲の気配を察知する能力で、ルクレティアが事象の起こる確率を求める、だったか。
随分と俺と組むにはうってつけの能力……これも陛下の御采配か?)

「次、他の者」

 ギアスのことを知ってるパイロットは、自分も含めて五人。
 残りは普通の一般兵士という事になる。
 普通の艦一隻に配置されるパイロットの数がやや少ないが、それでもギアスユーザーの二人の乗る機体は特派のランスロットに先駆けて開発された第七世代KMFだし、キューエルとヴィレッタもエース級の腕前だ。
 それに加え俺の専用機の最終調整さえ終われば、戦力過多とも言えるだけの力が備わる。

「じゃあ、これから手始めに――――――」

 突如として、基地全体に響き渡る大地を引き裂くかのような轟音。
 一体なにが起きたと思う前に体が動いていた。

「全員、KMFに騎乗しろっ!
敵の奇襲かもしれない!」

「イエス、マイ・ロード!」

 急ぎグロースターに騎乗する。
 しかし、一体これは。

『司令部より緊急命令。
出撃可能なKMFは全て出撃し、強奪された実験機を奪還せよ。
繰り返す。
司令部より緊急命令――――――』

 思わず唖然とする。

「たっく、着任早々にこれかよ」

『そう言うな』

 モニターにルルーシュの顔が浮かび上がった。

『親愛なる兄上からの御命令だ。
急いで出撃して、実験機を奪い返してくれと』

「はぁ〜、ガウェインといい今回といい……。
実験機は敵にやる為に造ってるんじゃないんだぞ」

『…………レナード。
実験機はフロートユニットを標準装備している。
だがこの艦でフロートを装備しているKMFはお前のグロースターだけだ』

「つまり俺一人で行けと?」

『そういう事だ。頼むぞ』

「イエス、ユア・ハイネス!」

 フロートを起動する。
 つい先日に専用機の前の肩慣らしとしてグロースターに装備しておいたのが役立つ時がくるとは。

「レナード・エニアグラム。
カスタムグロースターU・エア出撃する」



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