とある魔術の未元物質
SCHOOL146 最悪の結末


―――死。
死とは万物に訪れるものだ。この社会、平等とはとてもではないが言い難いが『死』だけは誰しも平等に訪れる。しかし近年、科学が発展したことにより『死』の定義も変わってきている。心停止が死んだと認定される条件だったのが、現代においては脳死、脳が死んだことでも『死亡』したと認定されることになった。人の生命が思い出によるものなら、記憶を失うとは死ぬことと同義である。










 大天使ガブリエル再浮上。
 その出来事はフィアンマの撃破によって安堵しきっていた者達を再び絶望の淵へと放り込んだ。ガブリエルは更なる力を求め大量の氷のある北極へと向かっている。もしガブリエルが北極に行く事を許せば大量の氷がガブリエルに吸収され地球全体の環境に致命的な打撃を与えるのは想像に難しくない。
 しかし人類にとって幸運なことに、これを止められるヒーローはいた。
 人類の命運を背負われてしまった『不幸』なヒーローはその事実をいち早く認識すると立ち上がる。救い出したばかりの少女を置いて。

「アンタ! 何処へ行く気! もうここ崩れかけてるんでしょ!」

 フィアンマに囚われていた第三位の超能力者、御坂美琴。
 上条は彼女を無理矢理に緊急避難用のコンテナに押し込んだ。上条は乗らない。他のコンテナは垣根とフィアンマが暴れた影響で使い物にならない上、御坂の乗るコンテナは一人用だ。子供なら二人や三人くらいは入れそうだが男子高校生一人と女子中学生一人では完全に重量オーバーだろう。
 なにより上条にはやらなければならない事があった。

「ガブリエルを止める。この要塞中枢にある施設を俺の右手でぶち殺さねえと、あの天使は止まらねえ。それにここだってそうだ。こんなデカい塊が自然落下で地上に落ちて見ろ。俺みたいなLEVEL0だって飛んでもねえ事になんのは分かる」

「な、なら! 私も連れて行きなさい!」

「駄目だ。フィアンマになんかやられて上手く超能力が使えねえんだろ。それに早く脱出しないとこのコンテナも動かなくなるかもしれない。それに魔術相手じゃお前お得意のビリビリでもどうにもならねえだろ」

 上条は歯を食いしばった。
 フィアンマを失ったベンツへレムの星はやがて力を失い地上へと落下する。
 しかし、上条が言った通りもしもこれだけの大質量が自然落下してしまえば恐竜が絶滅した氷河期を現代社会で再現することになるだろう。

「……『不幸』だよな。ラスボスが漸く倒されて、さぁ要塞から脱出しようって時になってコンテナが一人用。おまけに誰かが中枢にかないと人類滅亡……ホント、不幸だよ。なんていったって、それを止められるのが現状で俺だけなんだからな。誰かがやらねえと皆が不幸になる。自分一人が助かって幸福になって他の皆が不幸になるくらいなら、俺はそんな幸福はいらねえ」

「だけどっ! アンタは、そんな事すればアンタはどうなんのよ! 人類の滅亡だとか大天使とかも分かるわよ。でもアンタはこんな戦争とは何の関係もない一般人じゃない。ただ変な右手があるだけの! 勝手な事を言ってるのは分かってる。けど私は…アンタに、生きてて欲しいのよ」

「サンキュー」

 上条はにっと笑って御坂の頭を撫でた。
 まるで泣いてる子供をあやす様に。我が子を置いて死にゆく父の様に上条は笑って見せた。

「安心しろ、絶対に生きて帰る。偶には年上を信じろ後輩」

 そして上条はコンテナの射出スイッチを押した。
 御坂が口を開くがまるで救いの手を跳ね除けるように背を向ける。
 時間はない。早くしないと世界は終わる。
 主人公の旧約最後の戦いが始まった。




 キラキラと炎と光の羽がロシアの空を舞う。
 垣根とフィアンマとの激戦によって二人の翼から離れた無数の羽。太陽の光を受けキラリと反射しながら紅蓮色と黄金色に輝くそれは美という概念を凌辱するほどに美しかった。
 光り輝く十二枚の翼を操り垣根は空中に静止する。
 手にはインデックスの遠隔制御礼装があった。

――――――ていとく。

 インデックスの声が耳ではなく頭に直接聞こえてくる。
 垣根はコクリと頷いた。

「ああ、いこうぜ」

 遠隔制御礼装を使い遠く離れた島国イギリスにいるインデックスの頭の中にアクセスする。十万三千冊を守る数多のセキュリティー。普通に侵入しようとすれば即座に妨害されるであろうそれらも、玄関から堂々と鍵を使って入る者には働きはしない。
 垣根は禁書目録(インデックス)という名の魔道図書館の中枢に容易く到達した。

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 インデックスの中にある彼女を縛る首輪。
 これがある限り永遠にインデックスは一年以上の思い出を紡ぐことも出来ず、一年おきに死に続ける呪いを受けることになる。その運命を変える。悲劇を嘲笑する非常識をもって常識を破壊する。
 全てはこの時の為だった。
 学園都市と敵対してロシアへと旅立ったのも。魔術という能力と対になる異能を身に刻んだのも。数々の大冒険も。嗚呼、この時の為にこの大冒険はあったのだ。
 インデックスを縛っていた『首輪』の内容が書き換えられていく。魔力の制限などといった深奥にあるものに干渉することは流石に出来なかったが『一年毎に記憶を消去しなければ死ぬ』という戒めだけ解ければそれでいい。インデックスは十万三千冊の力なんてものを望んではいないだろう。垣根も十万三千冊より一年後もインデックスが自分を覚えてくれている事の方が大事に思えた。

「よし」
 
 静かに頷く。
 首輪の書き換えに成功した。これでインデックスは呪縛から解き放たれた。一年を超えても記憶を留めているし思い出を失うこともない。
 漸くだ。漸くインデックスを光の世界へ帰す事が出来た。インデックスのような優しい人がいるのに相応強い日常へ。
 初めての経験だった。人の幸せが自分にとっても幸せになるなんてことは。今、垣根は最高に幸せだった。
 だからだろう。
 彼は頭上に舞い落ちてきた一つの炎の羽に気付くことがなかった。
 頭に奔った衝撃は一瞬で足の先から指の一本一本に至るまで浸透し、垣根から力というものを奪い去る。
 薄れゆく意識の中、遠隔制御礼装からインデックスが叫んでいる声を聴いたような気がした。
 なにもかもが失われていく。
 消えていく、
 虚無へと、
 ゼロへ、
 垣根帝督というモノが終わっていく。


 静まる虚無の中。
 垣根とインデックスは真っ白な世界で対峙する。色のない世界。黒も赤も、あらゆる色が白という無へと帰った0と1の狭間にある場所。

「――――良かった。これで全部だ。全て終わった」

 もうインデックスは一年毎に記憶を消す必要はない。記憶を消さないで苦しい思いをすることもない。思い出を失うこともなくなった。
 インデックスは今まで垣根と過ごしたことを来年も再来年も……その命の脈動が停止するその日まで覚えていることだろう。
 しかし垣根は少しばかり無情を呪った。
 どうせ今まで記憶を消していたのなら『垣根帝督』と過ごした日々も忘れてしまってほしかった。
 自分がいなくなった後、インデックスがどんな表情をするか。想像するのも嫌だった。インデックスにそんな悲しい思いをしてほしくない。なんの疑問も抱かずに垣根はそう願う。しかし記憶を消すという腐ったシステムは垣根自身の手で破壊してしまったばかり。
 けれど垣根はインデックスという少女の「強さ」を信じていた。
 強さとは何も「超能力」や「魔術」などの「暴力」だけではない。
 強さとは心だ。
 垣根は知っている。インデックスという少女の「強さ」を。
 魔術も使えない無力なその小さな体で、幾度も強さの権化ともいうべき相手に立ち向かっていったことを覚えている。困っている人を見れば迷いなく手を差し出し、どんな極悪人の中からでもちっぽけな善性を見つけようとする。人なんて普通、美徳よりも悪徳を先ず見つけ、自分を相手よりも上位に位置づけたがるというのに。インデックスにはそんなことは一切ない。
 彼女の声が好きだった。
 彼女と話をするのが好きだった。
 彼女と過ごす陽だまりの暖かさが心地よかった。
 だからこそ、垣根はもう彼女のもとにあってはいけない。
 
「インデックス。俺の頼みだ、最後に聞け」

「聞けって、それじゃあ命令形なんだよ」

 拗ねたようにインデックスは口を尖らせる。 
 そんなインデックスが愛おしくて、傷つけないよう優しくその頬に振れた。
 暖かい。もう二度と生身の手では触れる事がないであろう頬。この暖かさを冥府の底に堕ちようと覚えていよう、と垣根は胸に刻んだ。

「俺はこれからいなくなる」

「えっ」

「もう会うこともねえだろ。お前との日々は楽しかったがこれでお別れだ」

 もう枯れ果てたと思っていたものが目から溢れそうになる。それを垣根は小さなプライドで押し止めた。自分がそれを流してしまえばインデックスが傷つくかもしれない。
 笑って逝こう。悔いなど無いと思えるように。自分の一生に満足して死んでいったと、インデックスが感じるように。
 本当は悔いは積もるほどある。自分のような外道の悪人がこう思うなど虫唾の良い話ではあるが、もっとインデックスと一緒に人生を送りたかった。もっと生きたかった。
 それが叶わぬ願いであることを誰よりも知りながらも、垣根は未練ったらしく心に秘めている。本当にらしくない。

「お前の事だ。俺が死んだのは自分のせいだ、とか糞下らねえアホみたいな勘違いをするんだろ。だがな。お前がそんな風に思う必要はねえんだ。全部俺が好きでやって、一人で勝手に死んだんだからよ。そのことにお前が負い目を感じることはない。ま、一年に一回くらい前にこんなバカがいたなーって酒の肴にでもしてくれ」

 嗚呼、終わっていく。
 垣根帝督という人間がこの世から消えていく。

「そして俺の命令はここからだ。―――――――お前は幸せになれ。幸せの形はなんでもいい。好きな男を見つけて結婚するのも良い。ガキでも作って順風満帆な家庭ってやつを築き上げるのも良いだろ。だがどんな形でも幸せになるんだ。それが俺の……最後の」

「ていとく!」

 インデックスは泣いていた。畜生誰だ……。インデックスにこんな表情をさせているのは。その誰かが己のことと知りつつも垣根は冗談っぽく自分に言い聞かせた。
 垣根はこれまでどうして遺言書なんてものを残すのか、その理由が分からなかった。
 自分の人生は一度。死んだ後は野となれ山となれ。死後のことなんて自分には一切関係ないではないか。なのに何故、わざわざ遺言書という形にして言霊を残すのかと。
 だが自分が死ぬ事ととなり、漸く垣根にはその心が分かった。遺言とは願いなのだ。自分が死んでしまっても、どうか愛する人達が健やかで幸せであってほしい。そう思うから願いを残すのだ。最後の力を振り絞り、文字に心を宿して。
 インデックスは幸せになれるだろう。垣根は知っている。インデックスには自分以外にも支えとなってくれる味方がいることを。
 ステイル=マグヌス、神裂火織。
 あの二人なら自分がいなくなった後も、あらゆる障害と理不尽からインデックスを守ってくれるだろう。そして幸せになる。インデックスの『幸福』に自分の姿がないのが多少悔しいが、インデックスさえ幸せでいてくれれば垣根は救われる。
 
「嫌だよ……ていとく。私、まだていとくと一緒にいたい」

「我がまま言うな」

 抱きしめたい衝動を抑えて、敢えて垣根は厳しい口調で言った。

「本当に不老不死の人間なんて……いやしねえんだよ。どれだけ大好きな奴でも、仲の良い友人だっていつかは死ぬ。別れる日が来る。でもな、もし自分の方がそいつらより長く生きたなら、まだ生きなきゃならねえ。前にお前、俺に言ったろうが。自殺は最大の罪、だって。もし自殺なんて下らねえ真似してみろ。俺は絶対にお前を許さねえ。死後も呪ってやる」

「でも……でもぉ。ていとくが、死んじゃったら……私は、もう……」

「本当に、馬鹿だよなぁ。お前は」

 もう垣根も限界だった。泣きじゃくるインデックスの体を両手で包み込む。小さい。こんなに小さな体に十万三千冊の魔道書が入っているなんてとてもじゃないが信じられない。その重荷がどれだけインデックスを苦しめていたのか。想像することも出来なかった。
 しかし重荷を軽くは出来た筈。普通に生きる分にはインデックスにはもう枷はない。
 これから彼女は普通に生きて、普通に子を為し、普通に老いて、普通に死ぬのだろう。

「なぁ、インデックス。一度しか言わねえから……聞き逃すなよ」

 インデックスの心臓の音を感じる。人を抱きしめるのがこんなにも心地よいなんて。末期に新しい知識が増えてしまったようだ。

「……わ、分かったん…だよ」

 涙にぬれた顔を上げたインデックスが垣根を真っ直ぐに見る。
 インデックスのグリーンの瞳に自分の姿が映し出された。その顔はインデックスと同じように濡れていた。

「俺は」

 恋と愛。自分の為にするものが恋ならば、相手の為にするものが愛。恋の定義はなんでもいい。相手の体が欲しい。愛が欲しい。思いが欲しい。一度でも誰かを好きになった事があるなら誰もが思うであろうことだ。
 しかし愛は違う。
 愛とは自らに還元されぬもののこと。その人が幸せであってほしい。その人が笑顔であって欲しい。その人が私がいなくなった後も笑っていてほしい。
 自分ではなく相手を想うこと。それが愛。
 だとしたら垣根帝督のそれは、紛れもなく。

「インデックス。俺は――――――お前を愛していた」

 過去形でしか、そのことを告げられない自分が悔しかった。
 パリンという窓の割れる音と共に、優しい幻想の時間が終わる。垣根帝督は自分が死にゆく現実に引き戻された。
 だが終わりゆく最中、垣根は頭からではなく心の奥底に眠る言葉を口から吐き出す。
 力を失い大空を飛ぶ翼をも失った垣根の体が、舞い散る羽根に混じり粉雪のように堕ちていく。しかし垣根の顔には確かな『笑顔』があった。
 そう。彼は人生の何時よりも幸せなのだ。幸せに笑いながら逝った。 
 この日。垣根帝督は死んだ。




 月日は流れる。
 ロシア成教総大主教の宣言で世界中に悪意を振りまき、それを超える善意を人の心に灯した第三次世界大戦は終結した。
 イギリス清教に属する教会の一つ。その廊下を白い修道服に身を包んだシスターは走っていた。
 第三次世界大戦終結とほぼ同時、彼女もまた自身を縛る『首輪』の戒めから解放されていた。それを為したのは学園都市に住んでいた一人の少年。
 インデックスは誰よりも大事なその人に会うために賢明に走っていた。

「ていとくっ!」

 教会のドアを勢いよく開ける。第一声はやはり彼の名前だった。
 その部屋には多くの者が詰めていた。インデックス自身は忘れてしまったが、友人だという神裂火織、その同僚のステイル=マグヌス、五和をぬいた天草式の面々、騎士団長、後方のアックア、第二王女キャーリサ。

「…………インデックス」
 
 神裂が唯一言ポツリと呟く。
 インデックスはそのことは気にせず人込みをかき分けベッドで寝かされていた垣根帝督の前にまで来た。第三次世界大戦でフィアンマとの戦いを終えた垣根は、途中で力尽き落下した所をアックアに受け止められたというのだ。電話越しでインデックスその事を聞いた時、心臓が飛び出しそうなほどの不安に襲われたが、神裂の話によると命の別状はないらしい。

「ていとく、私だよ」

 インデックスはそっと垣根の頬に触れる。
 すると垣根の目がすっと開いていった。そして、

「ああ……あーっ!あーっ!うううううううううううううううっ!あぁぁぁあッ!」

「えっ?」

 垣根が意味不明の奇声を上げた。インデックスは予期せぬその出来事に一瞬我を失い呆然とする。
 一体これはどういうことなのだ?
 垣根は飄々として格好つけで、こんな産まれたばかりの赤ん坊のように、ただ滅茶苦茶に暴れるなんて無様なことは絶対にしない。長い間、垣根と共にいたインデックスはそう確信できる。
 しかし目の前の光景は夢ではなく現実だった。
 確かに起きているリアル。
 垣根はジタバタともがきながらベッドから降りようとする。だが降りれない。まるでベッドから降りるという単純な動作を忘れ去ってしまったかのように。

「……やはりか、失礼」

 騎士団長がインデックスを押しのけ垣根の首に当身を入れる。バタリと全身から力が抜けた様に垣根がベッドに倒れ込む。そのまま天草式の一人が垣根に毛布をかけた。

「どういう…こと……なの? ていとくは、どうしちゃったの? て、ていとく……っ」

「事実だけを…簡潔に伝えます」

 震えた口調で神裂が言う。
 手はギュっと握りしめられていた。余りにも強く握りしめ過ぎて手から血が流れている。よく見れば肩も小刻みに震えていた。

「彼は脳に強い打撃を受け、脳に記録されてあったあらゆる情報を失っている状態です」

「それって、記憶喪失っていうことなの?」

「……いいえ。記憶喪失ならば記憶が戻る可能性はあります。しかし彼は思い出を司るエピソード記憶、言葉や言語を司る意味記憶、運動の慣れなどを司る手続き記憶――――その全ての記憶脳細胞ごと完全に破壊されています。――――今の彼は、歩く事も喋ることも出来ない……何も、出来ないんですっ! 恐らくは一生。フィアンマとの戦闘の影響によるものだと……推測されます」

 インデックスは科学サイドには疎い。魔術なら北欧や中東、アジアなどの術式を一目見るだけで完全に理解できるほどの知識と頭脳をもってはいる。しかしケータイやPCなどという科学技術の塊を満足に扱う事は出来ないのだ。
 だが神裂が言ったことの意味くらいは分かる。

「それじゃあ……ていとくは、私のことを忘れちゃったの」

 嘘であって欲しい。
 そう信じながら震える口から言葉を吐き出す。

「―――――――っ」

 神裂は答えない。答えてインデックスを傷つける事を恐れているようだった。

「もう、ていとくと遊ぶことはできないの?」

 幸せな未来が待っていると思っていた。
 十万三千冊の魔道書や『首輪』なんてものも関係なく、色んな所へ行ったり色んな事をしたりして笑えるのだろうと信じていた。

「…………」

 やはり神裂は黙したまま。
 周りにいる他の人に目を移しても、彼等はなにも喋ってはくれなかった。「垣根なら大丈夫」……その一言だけで幸せになれるというのに、誰もその言葉を言ってはくれない。

「ずっと一緒に喋ったりできないの? 歩くことも出来ないの? ずっと一緒にいられないの?」

 神裂火織は答えられなかった。
 インデックスという少女の記憶を失わせないために誰よりも必死に世界と戦った垣根帝督。そんな少年が辿り着いたのはインデックスの解放と自分の死。
 なんて……なんて残酷な運命(さだめ)
 神裂は初めて神を呪った。
 インデックスは力なく垣根の寝るベッドへと手をかける。

「ていとくは、もうなにも覚えてないの」

 神裂ではなく眠る垣根帝督にインデックスは問いかけた。
 緑色の瞳からはポタポタと涙が絶え間なく流れていく。それでも垣根は何の反応も示さない。

「ていとくと同じだよ。インデックスは――――――ていとくの事が大好きだったんだよ?」

 誰もその問いに応えてくれる人はいなかった。
 垣根は目を閉じたまま動かない。冷酷な現実がインデックスという小さな少女に襲い掛かった。力なくインデックスが床に崩れ落ちる。
 少女の叫びが病室に木霊する。
 文字通り全てを失ってしまったガランドウの少年は何も言わず眠りつづけていた。


 垣根帝督とインデックス。
 二人の物語は最悪の不幸な結末(アンハッピーエンド)を迎えた。




後書き

 メェェエエエエルヘェェェェエエエエエエエエエエエエエエン!!
 バッドエンドになったメルヘン! さらばメルヘン! ここにきて原作第一巻の上条さん状態……よりも最悪な状態になっちゃいました。
 さらばメルヘン。そして残されたインデックス。これが難易度ベリーハード。
 サヨナラ最高のハッピーエンド。コンニチワ欝展開。



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