第89話『ナデシコ編2 火星へ…』


西暦2197年2月3日

=機動戦艦ナデシコの世界=

ナデシコ艦内の楔に世界扉が開く。
「よっと…」

即座に世界扉を消しナデシコ船体と同化、潜伏にはいる。
1光分の制限以上の距離移動だが、楔打った物体がリアル時間を使って移動していた為に問題なく一発で開く事ができた。

ナデシコは火星軌道上での戦闘を終え、
エステバリスを回収しつつあった時にカオルは出現する。

火星軌道上には大型戦艦をはじめとした24隻にも及ぶ木連…
まだこの時期は世間的には木星蜥蜴と呼ばれ実態がナデシコクルーには、わからなかったので、
木星蜥蜴でいくが、無人艦隊が哨戒を行っていて、
迎撃行動に移り始めた。
だがエステバリス隊…特にテンカワ機の活躍により、木星蜥蜴艦隊は敗退、
大気圏突入が可能になったところだった。

前回から再びカオルがこの世界に出る間の流れだが…

まずサツキミドリ2号での戦いの後ナデシコは火星へと進路をとる。

現実の化学ロケットの燃料効率優先の、ホークマン軌道にて8ヶ月、
燃料効率無視の片道強行で最短3ヶ月かかる火星までの道のりを、
最新鋭艦の威力を発揮して燃料効率を考慮しながらもたった1ヶ月という速度で進んでいた。

その間にナデシコの性能を試すような攻撃は時たま来るが、シールドに阻まれ、
最低限の人数での警戒ですませられるような通常航行は続いていた。

通常航行の間にネルガル社所有コロニーのサツキミドリ2号で殉職した社員達の葬式を執り行う。
ただし、責任者である艦長が執り行うものであり、
かつ1個人ずつの様式に合わせた形の為…死者の数だけ開く事になる…
激務に艦長がダウンすると、今度はくだらない理由…当人らにとっては真剣な理由での反乱がおきる。

現連合軍でも乗艦中の恋愛沙汰はご法度であり、またネルガルとしても好ましくないとして、契約書に禁止事項として記載していた。

現代のアメリカ海軍でも乗艦軍務中の軍人同士の恋愛は処罰対象である。
特に5千人の男女が乗艦する空母では一航海に1回は恋愛でのゴタゴタが発生し、
それに伴う処罰がでてるといっても過言ではない。
理由としては恋愛のもつれが、命に関わる事態に実際になる…例えば整備している航空機にミスが出たり等だ。
だからそれを未然に防ぐ大前提となっている。

だがその反乱中に攻撃がきて対艦隊戦へと突入した。

という流れであった。

さて今回の目標は火星…
この時間にでなくっては間に合わないし、時間もかかる事になる…

ナデシコの世界で楔を撃っている箇所は木星都市船団、横浜、ナデシコの3箇所であり、
火星に近いのは移動体でなければ地球だ。
だが地球と火星間では遠い…
カオルが地球から飛ぶとなると、
2年…下手したら5年はかかるだろう。
そんなに時間もかけれないからこの場面にでるのは重要であった。

……

艦内に異物が侵入した事を知らない艦橋では…

「火星熱圏内、相転移反応下がりま〜す」
ハルカ・ミナトが報告で声をあげる。
22歳、操舵手。元秘書。
プロスペクターにスカウトされた操縦能力に秀でた逸材。
妖艶な爆裂ボディの持ち主であり…

「何、あれ?」
メグミ・レイナードが疑問の声をあげた。
17歳、通信士。元声優。
プロスペクターに同じくスカウトされた。
過去には良い子のお姉さんとしてテレビ出演していた。

この時点ではアキトを押せ押せで落とそうと…

「ナノマシンの集合体だ」
ゴート・ホーリー…32歳、ネルガル重工からの出向者、戦闘指揮担当。
軍隊経験をかわれて乗船した人物。
只今ミナト操舵手と交際中。

「なの?」「ナノマシン…小さな自己増殖機械。火星の大気組成を地球の環境に近づける為、ナノマシンを使ったのね」
ホシノ・ルリ…11歳、オペレーター。
遺伝子操作によって生まれたIFS強化体質チルドレン。
ナデシコAIのオモイカネの友人。

素質を認められてナデシコオペレーション訓練を施されて、
ナデシコに配属された。

「ふ〜ん」

「そう、今でもああして常に大気の状態を一定に保つと共に、有害な宇宙放射線を防いでいるのです。
その恩恵を受ける者はいなくなっても…」
プロスペクター…45歳、あだ名で通している。
ネルガル重工からの出向者で、会計監査を担当。

ナデシコクルーの人選を担当した人物だ。

「ナノマシン第一層通過」
淡々と報告の声があがる。

「そんなの、ナデシコの中に入っちゃってもいいんですか?」

「心配いりません。火星ではみんなその空気を吸って生きてたんですから。
基本的に無害、おトイレで全部出ちゃいます。あっ、いけない」
ミスマル・ユリカ…20歳、ナデシコ艦長。アキトの幼なじみ。

地球連合大学時代に戦略シュミレーションで無敗をほこった為に、
ネルガルがスカウトし艦長に抜擢される。

「そうか、艦長も火星生まれでしたな」

ーそうなんだ…
プロスペクターの言葉を聴き、呟くメグミ。

「グラビティブラスト、スタンバイ」

「良いけど…どうせなら宇宙で使えば良かったのに…」

「地上に第二陣がいる筈です。包囲される前に撃破します。
…艦首敵へ向け傾けてください」

「はいは〜い」

艦長の推測通り、
「地上チューリップ1、小型機動兵器多数探知」

「目標、チューリップ…照準あわせ」

「照準固定よし」

「グラビティブラスト発射〜」
地上へむけグラビティブラストが放たれた。

「敵影消滅、周囲30km圏内木星蜥蜴の反応なし」
姿勢を直し降下続け…火星地表に到達。
赤い大地が広がっている。

火星はナノマシンによるテラフォーミングで、
火星移民計画は始動され作り変えられる事となった。

通常火星は、酸素量がとても少なく生身では20秒ほどしか呼吸が持たず、
1分後には死ぬであろう…
だが二酸化炭素量は地球とくらべ58倍もあるが為、
リアル現代でも植物はテラフォーミングなしで水さえ確保できれば植生できるかもしれない。

2098年、テラフォーミング計画の一貫として、
ナノマシンが火星の大気に投与される事になる。
大気はナノマシンにより組成自体を作り替えられ、
長い期間がかかったが、2170年代にはとうとう地球と同様に、
呼吸ができるように大気が作り変えられてた。

火星入植はまだ呼吸困難だった2155年頃から始まり、
最初は地下施設のみに限定されていたが、
2172年から次第に地上施設に広がり…2195年には火星入植者は約300万人を数えていた。

だが10月1日、木星蜥蜴が襲来、
連合軍第一艦隊が敗退し、火星入植者約300万人を残して地球連合軍は撤退し…


その日から1年と4ヶ月後、ナデシコが火星に突入した。

軽く軌道上から探索するも無事であるコロニーが見当たらず、
僅かな生き残りである人々を探しに…
研究所のデーター回収に…
火星の大地へと探索に向かう。

カオルは格納庫にて、アキトが出る機体に取り付き、
ユートピアコロニーを探そうとしていた。

まだ位置関係が正直わからない為、
機体に取り付くしかない…

「オーダーはいったぞ〜、
増装バッテリー付きの砲戦フレームをテンカワ機にだ」

途端に作業で慌ただしくなる。

『テンカワ機ルートAEPカタパルト』
発進準備の為に移送されてるテンカワ機に、
「何するんだ?危ない!」

メグミちゃんが駆け上り…
「メグミ…さん?」
テンカワ・アキト…18歳、コック兼パイロット。
ナデシコ世界での主人公で、
艦長の幼なじみ、火星出身。

ナデシコ搭乗までは見習いコックの身であったが、
ユリカを追っかけてネルガルの施設に入って捕縛され、
その際プロスペクターにスカウトされ搭乗する。
この頃はメグミちゃんのアタックになびきつつ…

「あの〜私も一緒にいっちゃいけませんか?」

「え?なんで?」

「故郷みたいなぁ」

「…わかった。ブリッジ」

『はいはい〜』

「カタパルト発進中止で、自由落下で発進します」

『了解〜。楽しんてきてねぇん』

「いってきますね〜」

カタパルトを自走で端までいくと…

「しっかり捕まっててな」

「はい、アキトさん」

宙にエステバリスが飛び出した。

スラスターを稼動させ軟着地し、滑走させる。

「うわ〜あ、気持ち良い〜!!」

メグミちゃんは、エステバリスのコクピット上部から顔を出して正面から風を受けていた。
エステバリスは一人乗り。二人以上はコクピット内に収まるには窮屈であり、
ハッチを半開きにしメグミちゃんはコクピットの背もたれに足を載せて立ち乗りの形だ。

「アキトさんが住んでた所って遠いんですか?」

「え、ってうわっ!?」
アキトが答えようと上を自然とみると純白のが目に入りあわてて下に顔を背ける。
顔が湯だったように赤い。
「アキトさ〜ん?」

「えっ、えっと…こ、こっからだと…1時間半程だね」

エステバリスは約60kmで滑走を抑えている。
勿論それ以上の速度を出せるが、速度をだすとメグミちゃんの顔が赤く腫れ上がる事になる。

風防無しで風うけると…気持ち良いがだいたいそんなもの。
80kmはちょっと…
100kmはすこし痛い、120kmは痛い、
140kmはいでぇ!!
になる。
雨なんか降ると…80kmでもいでぇになる。
高速道路で肌を露出させた手を窓からだしてみれば理解できるだろう。
バイカーが夏の暑い日でも長袖で走行する理由の一つでもある。

……

「そろそろ見えて来るはずだ…」

「あ、あれですか?」
前方に壊れているチューリップが突き刺さっているのが見えてきた。

フクベ提督の艦が特攻し、撃墜したチューリップ…
ナデシコに乗ってるフクベ提督とはアキトはまだ気がついてない。

「うん…ユートピアさ…メグミさん、周囲に生存者いたらおしえてくれ」

しかしメグミちゃんはその言葉には答えられないだろう…

……

市街地中心部あたりまできて、機体をとめると…

「じゃあ…ちょっと周囲探索しようか…メグミさん、先に降りてくれる?」

「わかりました」
先に降りさせて、機体を駐機態勢にし、
アキトもおりてく。

アキトは周囲を観察てがら…ボロボロのヘルメットを拾いあげているようだった。
しばらく二人の会話が続く…

アキトが突如として消え、

「きゃああああああ!?」
メグミが更に開いた穴に落ちてく…
崩落によりシェルター通路に落下した二人を追跡するために、地下に降りていった。

「…すべきか、せざるべきか……何はともあれ、コーヒーぐらいはご馳走しよう」
フードを被った女性に案内されていく二人。

彼女はイネス・フレサンジュ…27歳、後にナデシコの医療及び科学を担当する事になる。

元々はネルガルの科学者で火星にてナデシコに関わる相転移エンジンや、グラビティブラスト等の研究に関わり、
艦体の基本設計行い地球へと報告する主任の立場にいた。

「説明しないわけにはいかないな…あちこちのコロニーの生き残りが、
ここに集まって基本的に木星蜥蜴どもは人間には…」

「良かったなぁ…」

ここまで案内してもらったアキト達から離れ、
目的の物を壊滅前に探しだすべく、
シェルター全体に広げていく…

探しだそうとしていたのは、生き残った人々の記録だ…

火星放棄してからすぐに300万人が今シェルターにいる人数程度に減ったわけではない…

襲撃時にシェルターに避難できていて更に多くの人々が生存してた筈であり、
その避難民リストを探して…

探索中にシェルターに振動がはしる。
直上にナデシコが着陸した衝撃の音だろう。

目的のデーターを見つけ出す事ができた。

195年10月2日、シェルター避難人口約151万人。

ある兵士の記録によると…
第一艦隊から、
艦隊敗退の為地上支援不可、
自力にて生き延びよの通信が入った旨がしるされていた。


10月3日、シェルターからの信号途絶相次ぐ。
シェルター名簿より約98万人。

10月4日、生き残った人々が連絡を取り合い、
残留駐留軍含めた武装団結成、この時点での人口約49万人。

10月5日、
地上防衛施設等比較的被害の少ない軍事施設がある、
ノアキスコロニーに集結する事が決定、
命をかけた大移動が開始される。

移動を拒否しシェルターに残った人々の内、22%のシェルターの反応が消える。
推定人口約45万人。


10月6日、
ノキアスコロニーに生き残りの人々が集結し始め、
虫に対して大規模防衛戦闘態勢を可能なように整える。

推定人口43万人、拒否残存シェルター、50%を切る。

10月10日、第一次ノキアス防衛戦、
襲撃してきた虫を駆逐。
推定人口37万人、
拒否残存シェルターの反応すべて消失。

11月1日、

第三次ノキアス防衛戦。
移動中行方不明以外の確定人口、残存12万人。


12月1日、

第七次ノキアス防衛戦敗退。ノキアスを放棄。

残存人口放棄前の時点で4万人。

以後公的記録無し。

年を明け1月頃には木星蜥蜴の行動パターンの研究される。
武器無し徒歩なら襲われない事が判明。
地上にて田畑等試みるが回収されてしまうので断念する。

翌3月に入り…
施設的に使用されずに生き残ってたユートピアコロニーのシェルターに、
生き残りの人々が次々と集まり始める。

この時点でシェルター人口百越え。
住民登録を自主的に始める。

以後、ひたすら耐え忍ぶ生活がユートピアコロニーシェルターにて営まれる。

生活に堪えられなくなった物から一人、また一人とさっていき…

シェルターに更に後に辿り着いた人口も増えたり減ったりするも減少傾向…

その他のコロニーでの反応も見られずの状態である。
ただし管理する者がいなく登録していない可能性がある。

2157年2月の時点で全土残存推定人口、五百人未満。

(何と言うか…)

生き残った人々、見捨てられた人々の凄惨さがわかる記録だった…

だが…何処で誰かが死に、
誰がどの時点まで生き延びたか?の記録が手に入ったのは嬉しい…
(後々の有効利用をさせて貰う事にしよう)
記録も見終えた事でそろそろ時間だろう。

アキトとイネスさん、メグミちゃんはシェルター内にも居ない。

地表へと意識をうつすと…

ナデシコに迫る大型戦艦、小型戦艦の艦隊が見え、
敵艦隊に対してナデシコのグラビティブラストが放たれる。
光が収まると…木星蜥蜴の艦隊が尚も接近して来る。

木星蜥蜴の艦隊もディストーションフィールドで対抗し始めてきた。
更に後方チューリップからの艦隊が出てきてナデシコ直上を包囲するように…

(そろそろか…)
状況確認し待ちかまえていた。
シェルターに身体を広げ目的の人たち…ほぼ全員だが救助準備を整え…

感覚を地上にもだして確かめつつタイミングをはかる。
ナデシコの上空の木連の無人艦隊の先端が光り始め…

(今だな)

シェルター内部にいた人たちを次々と、
「うゎぁぁ」「な、なに」
引き込み…救助を終えナデシコに同化する。
ディストーションフィールドが展開され、地面を押し潰した。
それと同時に攻撃は、雨のように降り注ぐ…

カオルは地上へとでると世界扉で…

……

ナデシコは甚大なる損傷を受け、火星からの離脱速度をえる事が出来なくなり、
調査を目的としながらも逃避行を続けていた。

先に北極冠にあるネルガル研究所への偵察部隊が派遣され、調査報告されてた。
研究所近辺はチューリップが5基あり現有戦力では到底到達不可能。

そこでフクベ提督から出された案はクロッカスを起動し遠隔操作で核融合反応炉を暴走させながら特攻、
チューリップ5基を消滅させるという手段。

護衛艦クロッカス…まだナデシコが地球にいたころに、
チューリップに吸い込まれた船であった。
ナデシコが発見した時には長い期間冷たい北極圏に放置してあったように見えていた。

核融合炉は通常は暴走等起こらないが、燃料過供給、リミット外し等の手段をとれば危険な状態にもっていける。
勿論、その様な手段は対人戦争では過去の国際条約で禁止されてる。
だが連合軍少将以上に手段とコードが対巨大隕石用の火力ブースト手段として受け継がれていて、
実際の使用が300km級隕石への一回だけあった。
勿論威力調整は可能であり、更に幸い交換部品は地下深くにある。
地表部分は消滅しても問題はないだろうと…
最早暴挙と思える手段しか手順はなかった。

……
2月9日

クロッカス調査にアキト、フクベ提督、イネスさんが派遣され、この時間にでたカオルもついていく…

……

艦橋につくと起動準備に…

「システムは…生きとるか…」

「これなら大丈夫そうですね」

「フレサンジュ君機関コンソロール頼めるかい?」

「わかりましたわ。提督」

二人がそれぞれのコントロール席につき、
システムの再起動を行い始めると…
艦内システムが立ち上がり、照明に火がつく。
「うむ…」

「後は起動して浮上ですね」

「しかし噴射口がか…アキト君、噴射口に氷が詰まっているようだ。とってきてくれ」

「俺っすか?」

「フレサンジュ君もついっていってくれ。彼だけではわかるまい」

「はい」
二人が作業の為に艦橋からでていった。

「さて…作業すすめるとするか…」
機関コンソロール等単独操艦に必要なのを切り替えて集め、
自爆の為のセッティングを行う…

噴射口をモニターで見てると、
エステバリスが見えた。
「頃合いか…」
通信システムをonにし、
「エステバリスどけ!浮上するぞ!」
クロッカスの船体に張り付いていた氷を剥がし、無事に反重力機関が動き浮上する。

安定したのを確認すると、
砲身をナデシコにむけ…通信をつなげる。

「現在の状態なら、クロッカスでもナデシコの船体を貫く事は可能だ」

『え?』『どうされたんです提督?』

通信を切り、映像データー転送する。

「早く動かんか…儂など、役にたたん老いぼれなど切り捨てておけばよいんだ…それとも…」
威嚇射撃をうちはなつ。

「聡明な博士がのっておるのだ…この儂の推測なんぞ理解しているはずだそ…」
レーダーが接近無人艦隊を探知する。

「さっきの砲撃探知されたか…」

やっとナデシコが動きはじめた。
「無人艦隊のおかげかもしれんのう…」

モニターがチューリップに進路をとるナデシコをうつし出している。

「それでいい、流石だな艦長」

チューリップの花弁が更に大きく開き、
中のエネルギーフィールドが露になる。
艦を操作し、チューリップの手前で反転停止した。

すると強制通信がつながる。

『提督、おやめください!
ナデシコ、いえ、私には提督が必要なんです!
これからどうやっていくのか、私には何も分からないのです!』

「私には、君に教える事など何もない。
私はただ、私の大切なもののためにこうするのだ」

『何だよそりゃ!?』

「それが何かは言えない、だが諸君にもきっとそれはある。いや、いつか見つかる…
私はいい提督ではなかった、いい大人ですらなかっただろう。最後の最後で自分の我が侭を通すだけなのだからな。
ただ、これだけは言おう。ナデシコは君らの船だ。
怒りも、憎しみも、愛も、全て君達だけのものだ。言葉は何の意味もない、それは……
通信が切れたか…言いたかったのう…」
艦に直撃弾が命中する。
「さて…一世一代の見せ場じゃな…
お客が無いのが寂しいが…地球連合を、武人をなめるなぁ!!」

自爆モードに設定していたコマンドを走らせた。
オートでも可能だったが、フクベ提督は火星の地で果てる事にこだわったのだろう…

シェルターに引き込み、
炉から溢れる数万度に及ぶ熱が艦内を走りいたるところで爆発がおき、
大爆発寸前の艦から離脱した。

離れると…後方でチューリップを巻き込み、火星の無人艦隊も巻き込んでの大爆発が起きた。
ディストーションフィールドでも防げない高熱により…無人艦隊は崩れおちた。

カオルは世界扉をとなえ…




寸劇風後書き

作者「という事で、火星の生き残りの人々と、フクベ提督を拉致しました」

ナギ中尉「……救助でなく?」

作者「…生き残りの人々は救助ですが、フクベ提督は自殺するつもりだったから…
拉致ですかねぇ…」

ナギ中尉「ん〜…」

作者「死にたくない!と思ってる人々を死ぬ運命から助けるなら救助ですね。
そういった意味だと艦と運命を共にしようとしたOG世界の艦長救助は拉致でしたし」

ナギ中尉「まぁ…そうかもね…ある意味北朝鮮的な面もあるだろうし…
ただ向こうとはちがって死ぬ運命の人々の解放だから…ねぇ…
話変わるけどこの後は?」

作者「火星に楔うったなら決まってるじゃないですか…あれですよ。あれ…
次回、第一次火星会戦…お楽しみにぃ」

追記…この時点でフクベ提督スカウトは知っての通りナデシコ世界歴史を変えちゃいます。
ですが…知らずにカオルは実行してしまいました。

H25年5月改稿



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