俺――兵藤一誠はライザーこと冥界産発情地鶏を美味しく調理する為、グレモリー家所有の別荘がある山で同眷属であるアスナ達と共に料理修行をすることになった訳なんだが、実は今日で修業を開始して11日目に突入していたりする。

え?時間軸が跳び過ぎ?そんなのは今更だから気にするな。それじゃあ、この11日間で俺達が得られた成果について報告しておこうか。

まずは俺と一緒に修行することになったアスナと木場についてだ。2人は未だに『十戒の聖石剣(ホーリーブリング・ブレード・テン・コマンドメンツ)』の『武器破壊(アームブラスト)』に奮戦中だったりする。

4日前までは刃毀れや刀身に亀裂を入れられる程度だったけど、現在は完全破壊までいかずとも刀身の半ばまで斬り裂く、謂わば半壊状態にすることができるまでの成果は出しているので、まずまずと言った所だろう。

この2人の場合、戦闘技能そのものを心配する必要は無さそうだからな。アスナはアインクラッドで、木場ははぐれ悪魔狩りでと実戦経験についても心配する点が殆どない。

2人が使用する聖剣と魔剣の性能さえ向上させれば、戦闘技能そのものを付け焼刃で向上させなくても、発情地鶏の眷属程度なら降すことも容易な筈だ。現状でも発情地鶏の王妃(クイーン)と妹僧兵(ビショップ)以外なら完勝できると俺は思っている。

しかし、流石に『十戒の聖石剣(ホーリーブリング・ブレード・テン・コマンドメンツ)』の『武器破壊(アームブラスト)』という同じ作業を延々としていたらストレスが溜まってしまうのは分かりきっていたので、修業2日目以降から1日2〜3回という地味なペースで模擬戦をやっていたりする。

模擬戦内容は1対1で行うこともあったけど、基本的にはアスナと木場のコンビネーションを向上させる意味合いも込めて、2対1が多かったりする。

と言っても、2人とも戦闘においては自己主張が強いタイプでもないので、別にコンビネーションで心配する点とかは特になかった訳だけど。それでも模擬戦の結果が俺の全戦全勝だったのは、完全に経験値の差だと思う。

次は黒歌と白音、アーシアについてだ。アーシアは部長の許可を得て城兵(ルーク)へと昇格(プロモーション)した黒歌と白音を相手に、高確率で引き分けることができる位に成長した。

あっ、ちなみに黒歌と白音は猫又モード未使用状態だってことは理解しておいてくれ。流石に猫又モードを使用されたら、アーシアに勝ち目はない。

しかし、猫又モードを使用されていない上、引き分け率が100%ではないとはいえ、合気道を習い始めて1ヶ月前後で黒歌達と引き分けることができる様になったアーシアは正直言って凄い。

アーシアに合気道の才能があったと言えばそれまでの話なんだが、実際は才能ではなく努力の賜物だろう。俺の目から見ても、アーシアの武の才能はほぼ皆無だったからな。

ほぼ皆無であって皆無ではなかった上、俺達の見ていない所で反復練習やイメトレを欠かさずにやっていたんだろう。その努力の成果が今のアーシアの実力へと繋がっている、と俺は思っている。

そして、黒歌と白音もアーシアに指導を行う一方で自己鍛錬を欠かさず、新技の開発も行っていた。

黒歌が仙術で生み出した毒霧を収束することで、液状の鋭い毒針を形成し、それを大量に標的へと直接射ち込む『クリムゾンソーン』という技を開発していて、毒針を射ち込まれた木が一瞬の内に枯れ死ぬのを見て、戦慄を覚えたのは記憶に新しい。

まぁ、この『クリムゾンソーン』という技は、星闘士聖也という漫画のIFストーリーに登場する戦士の技で元ネタがある為、黒歌のオリジナル技とは言えないんだけどな。

以前、星闘士聖也のアクションゲームを作るという機会があって、設定知識として星闘士聖也の漫画を読んだことがあるから、俺も地味に詳しかったりする。そういえば、最高位の白金(プラチナ)も含めて登場する星衣は中々に格好良かったな。

と、話が逸れてしまった。黒歌の次は白音の新技の説明をしないとな。と言っても、白音の新技も漫画が元ネタだったりするんだけど。

白音が新技の元ネタにした漫画は、火燐(かりん)の炎っていう自称:忍者の少女とその主である治癒能力を持つ少年を中心としたロー・ファンタジーだ。

で、白音が再現した技は主人公である忍少女が使っていた八俣の火竜と呼ばれる8つの形態の炎だ。現時点で再現できているのは2つだけだけどな。1つは火玉を弾丸の様に放つ弾炎の『崩』。もう1つは炎で形成する結界・結界炎の『円』だ。

大人形態の猫又モード――真・猫又モードで使用可能な『火車』をベースにしているそうで、浄化の力も付与されていて今後開発されるであろう6形態の炎も凶悪な仕様になりそうで、正直な所今から怖かったりする。

ちなみに火燐(かりん)の炎という漫画について俺が微妙に詳しい理由は、星闘士聖也と同じ経緯だったりする。

それじゃあ、最後は部長と副部長についてだな。2人は基本的に別荘の書庫に篭もって、ゲームの種類と各ルールの再確認、各ゲームに適した戦術・戦略の考案を行っていた。

あと、グレイフィアさん経由で発情地鶏の公式戦記録を取り寄せ、ライザー眷属の戦力を研究していたりした。

無論、2人は11日間も書庫に籠りっきりという不健康な生活を送っていた訳ではない。1日に2時間位は外に出て気分転換をしていた。

例えば、俺の目隠しした状態での遠距離魔力攻撃回避の訓練に付き合って貰ったり。俺は訓練になるし、2人はストレス解消になっていただろうから一石二鳥だ。

書庫内での気分転換として、各ゲームのルールを即行で把握した俺が仮想敵を務めたこともある。流石に仮想敵が部長と副部長の互いだけってのは問題があるから。

ゲームに関してなら、それが体を使うものだろうと頭を使うものだろうと、ルールブックさえ見せて貰えれば俺は短時間で記憶できるし。一番記憶し易いのはVRMMOを含む電子ゲームだけど。

以上が11日の間に行っていたことと成果にな―――ん?俺自身の行動について何も語っていない?そうか。それは悪かったな。それじゃあ、できる限り手短に話そうか。

アスナ達だけでなく、黒歌達や部長達の成果について語ったことから、他のメンバーの修行の手伝いをしていたことは分かると思う。

でも、他のメンバーの修行を手伝うだけで時間を潰していたりしたら、自分の修行を疎かにしていると部長に説教されるのは火を見るより明らかだ。

修業期間は最短で10日、最長でも2週間前後と俺は考えていたからな。現時点で最短期間が超えているのは僥倖と言える。が、それでも限られた期間での修業で説教なんていう、する側もされる側も時間を浪費する様な無駄なことはしたくない。

だからこそ、俺は手伝いに行かない時はアスナと木場から少しだけ離れた所で意識を神器(セイクリッド・ギア)に集中させ、主に『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』の深奥へと潜っていた。

ちなみに『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』の深奥に潜っていた理由は、常時発動型の禁手(バランスブレイカー)に至ってしまった『十戒の聖石剣(ホーリーブリング・ブレード・テン・コマンドメンツ)』と『十戒の魔石剣(ダークブリング・ソード・デカログス)』が鍛造記録機能を失ってしまっている上、剣の形状と属性がほぼ固定されてしまっているので、各深奥に存在する歴代使用者の残留思念に会っても意味が無いからだ。

まぁ、属性強化で能力を向上させることもできるけど、両十剣で属性強化が可能なのは第十の剣だけな上、調整が難しいから2週間前後ではできないんだよな。残りの剣は強化限界を迎えてるし。

強化機能がないと、駄天使殲滅戦で使用した『闇の双竜剣(テネブラリス・ブルー=クリムゾン)』のアイスサイドの説明が付かないだろう?原子振動すら停止させる絶対零度を凌駕する凍気を放てるとか、初期スペックでそれは在り得ない。

アイスサイドの初期スペックで放出可能な凍気温度はマイナス200℃だったが強化に強化を重ねた結果、今ではマイナス500℃以下という絶対零度――マイナス273.15℃を超える凍気を放てる様になったんだ。

熱力学上の最低温度である絶対零度を軽く突破してる訳だが、統計力学上では絶対零度以下のマイナス温度も存在しているので、マイナス500℃以下というのはその証明とも言える訳だ。

その気になれば、駄天使殲滅戦で襲い掛かって来た奴らを一瞬で氷像に変えることもできただろうな。実際の所、アイスサイドよりファイアサイドの方が相性は良かったりするんだけど、その話はまた後日に行おう。

取り敢えず、そんな訳で俺は短期間で急成長できる可能性が高い『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』の深奥に潜っていた訳だ。

事実、『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』の深奥には未だに会話すらまともに交わせていない歴代使用者の先輩方が大勢いる。

まぁ、その先輩方も所謂レイ●目で、世界を呪っている的なことをブツブツと愚痴っていて鬱陶しいことこの上ない存在だったりする訳なんだけど。

初めてこの深奥にやって来た時、先輩方の余りの鬱陶しさにブチギレて、1人残らずヤクザキックをかましたのも今では懐かしい思い出だ。

普通なら「そんな場所でまともな修業ができるのか!?」と思うだろう。しかし、深奥にはまともな先輩も存在しているんだ。たった2人だけだけど。

1人は歴代最強の赤龍女帝であるエルシャさん。もう1人は男の赤龍帝で歴代最強のベルザードさんだ。

ベルザードさんの方は寡黙で殆ど会話をすることが無いけど、他の先輩と違って女々しい行動をしていないから、まともな先輩にカテゴライズしたんだ。

逆にエルシャさんは結構なお喋りで、自分のことだけでなくベルザードさんや他の先輩のことを教えてくれる親切な先輩だ。

ん?男で歴代最強の赤龍帝はベルザードさんじゃなくて俺なんじゃないかって?俺は赤龍帝じゃなくて、歴代唯一無二の赤龍剣帝だから、赤龍帝というカテゴリーで最強を名乗るつもりはないんだ。

多分、俺以降の赤龍帝で先天的に3つの神器(セイクリッド・ギア)――『聖剣創造(ブレード・ブラックスミス)』と『魔剣創造(ソード・バース)』を一緒に所持する奴は現れないだろうからな。


俺が赤龍帝として名を残すとすれば、歴代で最も規格外な赤龍帝という称号だろう。それ以外は在り得ない。と、話が少し逸れたな。

兎に角、この11日間に俺は『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』の深奥でベルザードさんと模擬戦したり、エルシャさんからドラゴン系神器(セイクリッド・ギア)所持者のみが扱える特殊な技法を教わったりしていたって訳だ。

ん?ドラゴン系神器(セイクリッド・ギア)所持者のみが扱える特殊な技法とは何か?何でも、元は歴代の先輩の1人が編み出した技法だそうだ。

神器(セイクリッド・ギア)に封印されているドラゴンと取引を行い、体質――体の内側と外側の全てをドラゴンのものへと変質させることで使用可能な禁忌技法。

ドラゴンの体質を以ってドラゴンを打倒するドラゴン迎撃用技法・滅竜技法。この世界に存在する数少ない滅竜手段の1つでもある。

そう。俺はエルシャさんから滅竜技法の存在を教えて貰った瞬間、躊躇なくドライグと取引を行い、滅竜技法を習得することにしたんだ。

といっても、俺の場合は赤龍帝であることとエターナルでの恩恵の相乗効果によって、体の外側は人型ドラゴンに近い性質に変化していたみたいで、体の内側――内臓器官のみを変質させるだけで習得可能だった訳なんだが……。

ちなみに歴代の赤龍帝の中で滅竜技法を習得した先輩方は、全身の7割以上を取引でドラゴンのものへと変質させていたそうだ。それ故に純粋な人間とまともに接触することができなくなっていたのだとか。

そんな訳でエルシャさんから滅竜技法を教わり、ベルザードさんと滅竜技法を使った模擬戦をしたりしてた訳だ。勿論、滅竜技法を使った模擬戦にはエルシャさんも参加していた。

あと、滅竜技法の修行だけでなく、『十戒の聖石剣(ホーリーブリング・ブレード・テン・コマンドメンツ)』や『十戒の魔石剣(ダークブリング・ソード・デカログス)』を使った模擬戦も行った。あの時はエルシャさんとベルザードさんの2人が通常の禁手(バランスブレイカー)である『赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)』を纏った状態で、1対2だったからかなりキツかった。

1対2の10連続模擬戦で、俺がエルシャさんとベルザードさんを降せたのは僅か1回。残りの9戦は引き分けが4、負けが5。勝率は1割だ。

まぁ、俺自身負け込んだままでいる気はない。滅竜技法の他にも今回の合宿で手にした力があるから、それに慣れ次第勝ち越しに転じるつもりだ。

ん?滅竜技法以外に手にした力が何か?端的に答えるなら妖精魔法だな。実は子供の頃に黒歌と白音から地球(ガイア)に妖精種が多数存在していることは聞かされていたんだ。

黒歌と白音が妖精種のことについて知っていたのは、他種族の容姿や能力、生息地域を知っておくのが人外にとっての一般常識だからだそうだけど。

妖精魔法が魔力をエネルギー源としていて、悪魔でも使用可能ということを聞かされた記憶があったから、部長達がグレイフィアさんから発情地鶏の公式戦記録を取り寄せる際に、妖精魔法の魔導書を可能なら取り寄せて欲しいと頼んでおいたんだ。

で、冥界にある部長の実家――グレモリー公爵家本邸にある書室に闇妖精族(インプ)影妖精族(スプリガン)風妖精族(シルフ)の魔導書がいくつか蔵書されていた様で、それらを持って来て貰ったって訳だ。

妖精魔法はエターナルの魔法とは異なり、魔法名を口にするだけで効果を発揮するものではなく、魔法効果を明確にイメージしつつ、長い呪文を詠唱しなければならないという違いもあって、基本的に覚えるのが大変だったりする。

というか、現時点で俺が覚えられた妖精魔法が影妖精族(スプリガン)風妖精族(シルフ)のものが1つずつだけだから、ぶっちゃけ付け焼刃とも言える。

だが、一応は魔導書に記載されている分の妖精魔法は種族に関係なく、その効果を完全に把握した上で発情地鶏とのゲームで最も有用と思われるものを吟味して覚えたので、付け焼刃と言ってもそれなりに使えるとは思っている。

え?魔導書に記載されていた呪文や効果をどう読み解いたかのか。種族が異なる以上、日本語で書かれている訳でも無いだろう、だって?

勿論、魔導書に書かれている言語は日本語ではない。けど、妖精文字という訳でも無い。悪魔が保有している魔導書なのだから悪魔文字だ。

妖精文字ではなく悪魔文字であるなら、純血悪魔である部長がいるのだから、気分転換も兼ねて魔導書1冊の十数ページの内容を目の前で翻訳して貰うこともできる。

俺自身、後天的な混血悪魔となったことで悪魔語だけでなく、全世界の音声言語を強制的に一致させることができる様になってはいるんだ。

音声言語が一致している上、目の前で十数ページ分も翻訳して貰えば、文法の把握も短時間でできる。良くも悪くも知恵を働かせる人間の力を嘗めちゃいかんよ。俺の場合は元だけど。

しかし、魔導書に書かれている文字が妖精文字だったら完全にアウトだったな。なんとなく聞いてみた話なんだが、流石の部長も妖精文字までは翻訳できないみたいだし。

兎に角、悪魔語を覚えるのに必要な時間が短縮されたことで、俺が妖精魔法を覚えるのに立ちはだかった問題は、詠唱呪文の長さと魔法効果のイメージという2つの事柄のみになった訳なんだが、その片方は意外にもあっさりと解決した。

解決した問題ってのは詠唱呪文だ。実は、妖精魔法の詠唱呪文の殆どが『SLO』の魔法詠唱と同じだったんだ。

部長に翻訳して貰った時は偶然の一致だと思ってたんだが、自分で魔導書を読み進めていても魔法の効果や詠唱呪文の内容が見覚えや聞き覚えのあるものばかりだったことから、『SLO』の魔法と同一であることは間違いないだろう。

というか、これは一体どういうことだろう?もしかして、レクトの『ALO』開発陣の中に人間と妖精族の混血でもいたのか?流石に純血の妖精族がいたとは考え難いし。……いくら考えても答えに辿り着ける訳でもないし、この件については考えるのを止めよう。

さて、それじゃあ今度は残された問題である魔法効果のイメージについて話すことになる訳だが、本当にこっちの方は難問だった。

妖精魔法を発動させ、その効果を発揮させるには魔法の全体像を明確にイメージしつつ呪文詠唱をしなければいけない。つまり、イメージが曖昧だった場合はその効果は十全と発揮されないって訳だ。

自分で言っててなんだが、妖精魔法は初心者殺しとしか言いようがない気がする。魔導書に書かれている文章化された全体像だけで、明確なイメージとか浮かべられる訳が無いからだ。

俺の場合、魔導書に書かれていた妖精魔法の全体像が『SLO』の魔法と殆ど合致していたから良かったが、それも完全に合致しているとは限らない訳だし。

それでも俺が覚えた2つの妖精魔法は実戦での使用にも耐えうるものだから、問題は無いだろう。エルシャさんとベルザードさんの2人を相手に引き分けに持ち込むことができた位だし。

……それにしても説明していて改めて思ったが、妖精魔法ってのは基本的に使い勝手が悪いな。一流の棋士の様に一瞬の内に数十通りの手を考えられる分割思考?それとも並列思考だったか?兎に角、それができないと戦闘での単独使用は自殺行為だ。

何故なら仲間の援護が皆無な単独使用の場合、直接戦闘で相手の一挙手一投足に注意を向けながら呪文詠唱を行い、魔法効果の全体像を明確にイメージしなければならないからだ。

戦場を渡り歩いた多対1の戦いに慣れている戦闘のプロでもない限り、戦っている相手の動きを注意しながら他のことに意識を向けるなんてのは不可能に近い。これを自殺行為と言わず何と言えばいい?

俺の場合、前世やエターナルで戦い慣れしていることもあって、戦う相手の動きに注意を向けながら最低でも4つの事柄を思考することが可能だ。

ぶっちゃけ、二刀流スキルが未実装の『SLO』で二刀流を再現するのに、左右で異なる片手剣スキルを連続発動させるスキルコネクトというシステム外スキルを使う必要があるんだが、そのスキルコネクトを使用するには並列・分割思考は必須スキルだったしな。

しかし、並列・分割思考なんてスキルは俺みたいに特殊な環境にいた存在や常日頃から意識して使っている者以外が一朝一夕で使えるものでもない。

そう考えると、妖精魔法は完全に前衛と後衛のチームで運用することを前提に生まれた魔法としか思えない。いや、実際に妖精が妖精魔法を使用したらどうなるのか見てないから、断言はできないんだけど。

少なくとも悪魔が使用する場合は殺し合いという意味で戦い慣れしている戦闘のプロでない限り、妖精魔法の単独運用は不可能ってことだ。

取り敢えず、こんな感じで俺は俺なりにかなり有意義な修業期間を送っていた訳だ。一癖も二癖もあるものだが、僅か11日という短期間で新しい技術を2つも会得できたのは幸運であると思っている位だ。

と、そういえば今更だけど、現時点で既に当初の修業期間を1日だが過ぎていたりする。昨日の午前中の時点でグレイフィアさんから、ゲーム予定日の延長が告げられていたんだ。

なんでも、俺がグレモリーとフェニックスの両家に提示した対価の交渉は終了したものの、ゲーム内容についての話し合いが続いていたそうだ。

ん?何で過去形なのか、って?それは俺がこの11日間の経過報告をしている間にグレイフィアさんがやって来て、ゲーム内容が決定したと報告してきたからだ。

ほら、冒頭でも11日目に突入したと言っただけで、11日目の朝とは言ってなかっただろ?実は説明を始めた時点で11日目の夕方だったりしたんだよ。

そんな訳でグレモリー眷属側の体力を全快させる為、明日1日を休日に回し、1日置いた明後日にゲームが開催されることになった。

ゲーム内容は、公式戦でもメジャーなダイス・フィギュアというものらしい。が、通常のダイス・フィギュアとは異なり6面ダイスではなく、20面ダイス2個を使った特殊仕様だそうだ。

ダイスが特殊である以外は基本ルールを遵守している。試合形式のゲームで、2個のダイスが出した目の合計によって1試合に出せる人員が決定しているとか。

例えばダイスの目の合計が12だとしたら、駒価値が3である騎兵(ナイト)僧兵(ビショップ)を全員出せたり、騎兵(ナイト)僧兵(ビショップ)を1名ずつと歩兵(ポーン)を6名出すことができる。

相手方がどの局面でどういったタイプの眷属を投入して来るかを読む、(キング)による先読み勝負という側面を持ったゲームでもある。

(キング)の駒価値については、アジュカ様謹製の(キング)価値測定器でゲーム当日に測定するのだとか。

まぁ、どちらにせよ。グレモリー眷属の場合は歩兵(ポーン)4個分と僧兵(ビショップ)1個分、城兵(ルーク)1個分の人員がいないので、ダイス目の合計次第では眷属全員を投入することができるだろう。

ただ、試合に投入された眷属は(キング)も含めて次の試合に出られない仕様なので、最終局面でもない限り使えない手段なんだけどな。

ゲームの内容も把握した所で、体調を万全とする為に試合が行われる明後日の深夜まで俺達は休息を取ることになった。

グレモリー眷属にとって今回のゲームが初ゲームという事になる訳だから、個人的な目標だけでも掲げておこうか。

俺は手持ちのスマフォを取り出し、カレンダーのゲーム開始日に「発情地鶏の調理日」ってタイトルの予定作成し、内容に「目標:誰一人欠くことなく全勝」と打ち込んだ後、別荘で利用させて貰ってる部屋で1人眠りに就くことにした。






あとがき

今月も何とか月一更新をできた沙羅双樹です。

更新できたことに一安心しているんですが、前話のあとがきで書いていた「ゲーム開始直前まで持って行く」発言を有言実行できなかったのが心残りだったりします。

と言っても、ゲーム開始直前までの構想を今から考えて書いていたのでは、今月中に更新できなくなる可能性もあったので更新することに優先しました。

さて、それでは作者の更新事情はここまでにしておいて、今話の話題に移りましょうか?

取り敢えず、二番煎じ――というか何番煎じ?と言いたくなる様な某妖精の尻尾の看板魔法的な能力を主人公に会得させました。(笑)

あと、黒歌と白音にも他作品能力を会得させましたが、作者は全く後悔していません。というか、満足しています!自己満足Full Boostです!!(笑)

その他にも読者様方にとって完全に予想外であったであろう(ほぼ名前だけですが)エルシャさんとベルザードさんのフライング登場や焼き鳥とのゲーム内容変更などが、サプライズ的な意味での驚きを皆様に提供していれば幸いです。

本文では書かれていない裏設定の様なものなんですが、実はエターナルで戦っていた頃にイッセーは『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』の深奥に辿り着き、歴代所有者と会っていたりします。

つまり、イッセーとエルシャさん&ベルザードさんの付き合いはその頃からという事になります。また、エターナルにいた頃は『聖剣創造(ブレード・ブラックスミス)』と『魔剣創造(ソード・バース)』の深奥にいた歴代所有者の残留思念に剣技を鍛えられていたという裏設定もあったりします。

歴代所有者の残留思念が神器(セイクリッド・ギア)の深奥にいるという設定は、他の神器(セイクリッド・ギア)にも組み込む予定なので、これから登場する神器(セイクリッド・ギア)所持タイプの敵も強敵として登場する可能性があります。
(少なくともアスナとユウちゃんの強化フラグはたちました(笑))

そして、レーティングゲームで早くもダイス・フィギュアが登場したことで、今後のゲームが異なってくる可能性が高くなりました。(笑)

例えば、家庭教師ヒットマンREB●RN!に登場したチョイスや虹の代理戦争がゲーム競技として登場したりするかもしれません。もしかしたら、エア・●アのパーツウォウの競技がゲーム競技として登場するかもしれません。(笑)

今後、レーティングゲーム回の時は、どういった競技が行われるのかといったことでも心躍らせて頂けると嬉しいです。

次回から本格的なゲームが始まる訳なんですが、どういったゲーム内容が繰り広げられるのかを期待し過ぎない程度に楽しみにして頂けると幸いです。

それでは、また次回のあとがきでお会いしましょう。(^_^)ノシ



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