Trick or Treat

〜 Happy Halloween 〜














―――さぁ、今宵一晩の祭りを始めよう。





闇よりい出し同胞達よ、今日は無礼講だ。思う存分暴れるがいい。
我らを排斥せんとする人間どもに力の限り恐怖を与えてやれ!

Trick or Treat!
Trick or Treat!

渡さぬと言うならば恐怖のどん底に叩き込め!
渡すと言うならば遠慮はするな! 目に映るもの全てを徹底的に奪いつくせ!

Trick or Treat!
Trick or Treat!

声が小さい!
腹の底から雄叫びを上げろ!

Trick or Treat!
Trick or Treat!

まだまだ小さい!
そんなものでは戦場では生き残れんぞ!

Trick or Treat!
Trick or Treat!
Trick or Treat!
Trick or Treat!


そうだ! その調子を忘れるな!
そして、今こそ前に出ろ! 我らの最後の戦いを。奴ら……人間どもに焼き付けるために!
右手には幻想を、左手には現実を。叫びにはありったけの脅し文句を乗せて、―――我らの戦場へ!









――――――Go Ahead!!

















そこまで読んでから青年は顔を上げた。
手には一冊の台本。先ほどまで読んでいたものだ。
表紙には『Happy Halloween! 〜最後の聖戦〜』とやけに派手な装飾文字が踊っている。

「……ラピス、これは?」
「今日のパーティの台本」

青年の問いに、大きなかぼちゃに背を預けて座っている少女・ラピスラズリが答えた。
彼女はパーティ用の魔女のドレスを着込み、手には一本の杖を握っている。
もともとの神秘的な容姿もあって本当に魔女の娘のように見える。

青年の目が自分に向いていることを確認すると、ラピスはニッコリと顔に微笑を浮かべた。
それから台本を手に持つ青年、アキトに歌でも奏でるような透き通った声でこう言った。


「Trick or Treat?」













ラピスの言葉に、アキトは突然何を言い出すのだろうと思った。
あげる菓子ならあるが……壁にかけられている時計を見ると、まだパーティには早い。
一人抜け駆けさせるわけにはいかない。
まだ駄目だ。パーティまで待つんだ。
そう言おうとして口を開けたアキトだが、瞬間、頭に何かが閃いた。

「―――ラピス。この台本は誰が書いた」
「私。アキトは熱血が好みだと思ったから」

指折りで何かを数えているラピスの答えを聞いて、アキトは確信した。
つまりラピスはこう言っているのだ。その台本が嫌なら手作りの菓子をよこせ、と。
タイミングからしてそれしかない。それに彼女は今日皆に配る予定の自分が作る菓子を楽しみにしていた。
少々フェアではない気がしたが、この台本を読むよりはマシだ。

「わかった。今から菓子を取りに行くから―――」
「時間切れ―――Trick」

声は意外に近くから聞こえてきた。
不思議に思って前方にあるかぼちゃを見ると、そこにラピスはいない。
するとすぐ足元でクスッと笑い声が漏れた。それと同時に何か柔らかいものがのしかかって来た。


「うわ……!」

突然のことに軽く体勢を崩す。
いったい何だ、と思ったときには唇に柔らかい感触が押し付けられていた。
軽く啄ばまれた後、温かい何かにペロリと唇を舐められる。



「―――っ、ラピス……!」

何をされたのかに気付いて彼女の名前を叫んだが、
当の本人は既に自分から離れて廊下へと続くドアの前に立っている。
彼女は少し赤くなった顔にやはり微笑を浮かべ、

「じゃあ、先に行ってるから。ちゃんと来てね、アキト」

そう言ってドアの向こうへと消えていった。
後に残されたものは、唇に指先を当てたまま呆然としているアキト一人だった。




感想

詩葉さんにイラストを使ったSSSを頂きました♪

ハロウィンの作品です!

いや〜、こういった作品を作っていただけるというのは嬉しいもので す。

なんていうか、作った甲斐がありますね♪

ラヴリーなラピスのSSSありがとうございます!

何を言っているんですか! 詩葉さんは私のSSSも作ってくださっているのに! 
ヒロインの私を差し置いて!!

いや、まあ…ほら、今までのよりボリュームもあったし〜(汗)

やっぱ頼むなら…ねぇ?

それもそうかも知れませんね〜(怒) でも、当然次は私のイラストなんでしょうね?(怒)

いや、あははは…(汗)

特には…


予定が無ければ作りなさい! 
アキトさんと私のらぶらぶイラストを!!

はははは…



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