魔 法先生ネギま!

〜ある兄妹の乱入〜

外伝 トラブルトラベル 1話目

 

 

 

 

 

 

「待ったエヴァちゃん」
「ん?」

ヘルマンの襲撃を退けた翌日の放課後。
いつものように教室から出て行ったエヴァを、勇磨が呼び止めた。

「何か用か?」
「えーと実は――」
「断る」
「が・・・!?」

頼みごとがあったようだが、いきなり断られてしまった。
エヴァはそのまま、スタスタと歩いて行ってしまう。

ズッコケそうになった勇磨だが、慌てて追いかけて前に出る。

「ちょ、ちょっと待ちい!」
「うるさいな。私はヒマじゃないんだ」
「話くらい聞いてくれよ!」

まだ何も言ってないのに、と勇磨は憤慨した。
内容も聞かないまま断るのはひどい、と。

だが、エヴァはにべも無い。

「貴様に関わるとロクなことにはならん。過去がそう言っている」
「な、何かあったっけ?」
「ぼーやの師匠を引き受ける羽目になった」
「う・・・」
「修学旅行に行く羽目になった」
「ぐ・・・。って、それは喜んでたような・・・」
「うるさい」

修学旅行に関しては、少なからず、楽しんでいたような気もするが。
一蹴するエヴァである。

「とにかく、ダメだ」
「そんなこと言わずに〜。話だけでも聞いてくれよ〜。
 環に知られたくないんだよ。今だって、あいつの目を盗んできてるのに・・・」
「ほう・・・?」

少しだけ興味が湧いた。
あの厳しい妹に隠し立てしてまでやることとは、いったいなんなのかと。

それに、妹の知らないことを知りえるチャンス。
ほんの少し、悦に浸らないわけでもない。

「頼むよ〜エヴァちゃん以外に頼れる人がいないんだよ〜」
「ここではなんだ。屋上へ行くぞ」
「へ・・・? あれ?」

急な態度の変更に、勇磨は混乱する。
まさかこの短時間で、180度、主張を変えるとは思わなかったのだろう。

「聞いてくれるの?」
「何をしている。妹にバレたらまずいのだろう? 急ぐぞ」
「あ、ありがとうっ!」

いつ、教室から環が出てくるかわからない。
勇磨は勇んで、エヴァと共に、早足に階段への角に消える。

その直後。

「御門さんってさ〜、どんなジャンルを読むの?」
「あ、と、そうですね・・・」

図書館探検部の面子に囲まれた環が、周りを気にしながら出てきた。

なんてことはない。
これから部活に行こうとし、彼女たちの質問攻めに遭っていたのだ。

(兄さんはどこに・・・)

ハルナからの質問に考える振りをしながら、キョロキョロと周りを見る。
帰り支度をしているところに彼女たちが来て、なにやらやり取りをしているうちに、
少し目を離した隙に、いつのまにやら勇磨がいなくなっていたのだ。

「御門さん?」
「どうかしたですか?」
「い、いえ・・・」

3人に首を傾げられてしまう。
このままでは挙動不審。

「えと、特に選り好みはしませんが・・・」
「へえそうなんだ!」
「これは稀有な人材をゲットした気がするです」
「すごいですね〜・・・」

とりあえず、質問に答えてみた。
感心されている間も、兄の姿を密かに探る。

が、見つけることは出来なかった。

「じゃ、行こうかぁ〜♪」
「・・・はい」

さしもの環も、ふぅ、とため息をついて諦めた。
今日は、彼女たちと一緒に、図書館へ行く約束だったのだ。

(まったく、行き先を告げずにいなくなるなんて・・・)

内心では愚痴りながらも、あの図書館の蔵書量を思い浮かべると、
自ずと期待感が湧いてくる環だった。

 

 

 

 

屋上。
放課後には賑いそうだが、幸い、まだ誰もいないようだ。

内密な話なので、ちょうどいい。

「で、私に頼みとはなんだ?」
「ええと・・・」

先を行っていたエヴァが振り返り、そう尋ねてくる。
はたして、勇磨の頼み事とは?

「別荘を貸してもらえないかな〜、って」
「何を言うかと思えば、そんなことか」

やれやれ、と肩をすくめるエヴァ。
ガッカリするのと同時に、改めて頼まれることでもないと、ため息をつく。

「どうして同じことを2度も頼むんだ?
 勉強で使うのなら、妹との話しがついているはずだが。
 いちいち断らず、自由に使えばいいではないか」
「いや、そうじゃなくて・・・。俺個人で使いたいな、って思ってさ」
「個人で? どういう意味だ?」

エヴァは首をかしげた。
何を言っているんだ、と。

それはつまり、勉強で使うのではなく、他の用途で使用するということか?

「いや〜、なんというか・・・」
「言え。はっきりしないと、使わせてやらんぞ」
「えーと・・・・・・特訓したいと思ってさ」
「特訓?」

ますますワケがわからない。
何か? 修行するとでも言うのか?

「実はさぁ、コレ、なんだけど」
「ん? 仮契約カードか?」

勇磨が制服の内ポケットから取り出したもの。
1枚のカードだった。

「きのうの戦いで、これを使ってみたわけなんだけど〜」
「ああ、妙な悪魔が来たみたいだな」
「そう、そのときに・・・って、知ってたのかエヴァちゃん?
 なんで助けに来てくれなかったんだよ〜」
「侵入者があればすぐにわかる。それに、応援が必要なほどの状況だったのか?」
「うーむ、そうだけど・・・」

話を聞く限りでは、ネギたちは苦戦したようだが、一気果敢に環がケリをつけたとか。
まあ、環がいるのならば、よほどのことが無い限りは大丈夫だろう。

「でも、駆けつけるくらいのことは・・・」
「貴様は何をやっていたんだ」
「うぐっ・・・・・・それを言われると痛い・・・・・・」

まんまと乗せられて、別行動になってしまったのは自分の失態。
おまけに、武器を忘れるというさらなる失態を犯してしまったので、小さくなるしかなかった。

「まあ、ぼーやの潜在能力を見れたので良かったとしよう。
 ・・・で? 仮契約カードがどうした?」
「え? あ、ああ、それが・・・・・・って、隠れて見てたのか。ずるいぞエヴァちゃん」
「いいから本題に入れ。話が進まん」
「あ、ああ、そうだった」

脱線してばかりだ。
エヴァは腕組みをし、呆れるように顔を背けた。

「このカードから得られる・・・えーと、なんていったっけ? 個人ごとに違うアイテム」
「アーティファクトのことか?」
「そうそう、それそれ。そのアーティファクトがさ、とんでもない代物でさあ」
「それはそうだろう。私だって驚いたぞ」

先日、勇磨のカードを見て、驚いたことは先述した通り。
あまりに有名な”一品”だったからだ。

「まさか、天叢雲剣だとはな」
「知ってるんだエヴァちゃん? あー、だから驚いてたのか、あのとき」
「私をバカにしているのか貴様は。ソレくらい知っておるわ」

ふんっ、と勇磨を一瞥するエヴァ。
無知だと言われているようで腹立たしい。

「この天叢雲なんだけどさ〜」
「・・・何事も無かったかのように進めるな」
「え? なに?」
「・・・・・・いい。話を続けろ」

一言くらい、謝るか、フォローを入れてくれてもいいだろうに。

この男に期待するほうが無駄か・・・
諦めて、話の先を促した。

「なんか、すごい能力を持ってるみたいなんだよ」
「貴様の言葉は信用できんからな・・・。何がどう凄いというのだ」
「空間を斬っちゃうんだよ」
「・・・なに?」

何か、さらりと、とんでもないことを言われたような。
エヴァは自分の耳を疑い、思わず聞き返す。

「だから、空間を斬っちゃうんだって。振るうと発動するみたいでさ。
 何も無い虚空をズバッと切り裂いちゃったわけ。その裂け目は異次元なんだか、
 何もわからないけど、灰色の薄気味悪い空間が覗いてて・・・」

「・・・・・・」

驚きで言葉が出ない。
そんな状態のエヴァだが、知ってか知らずか、さて置いて、勇磨は言葉を続ける。

「その裂け目が閉じると、斬られて開いたところは、空間ごと消滅しちゃうみたいなんだよね。
 敵との間合いが一気に詰まって、ちょっとヒヤリとさせられたよ」
「・・・・・・」
「恥ずかしいことにあまり使いこなせなかったものでね・・・。
 それに、なんか滅多やたらに使っちゃいけないような、危険な力のような気がしてさ。
 危ないからこそ、慣れておかないとヤバイとも思うし、ちょっと練習しようと思って〜。
 エヴァちゃんの別荘を使わせてもらえないかな〜と」

通常空間でやるには危険が大きすぎる。
何せ現状では、剣を振るうたびに、空間の裂け目が出来てしまうのだから。
何が起こるか予測できない。

その点、エヴァの別荘内なら最初から異次元だし、危険は無いだろう。
そう思って、エヴァに頼むことにしたのである。

環と話が付いているのは、あくまで勉強する目的で使わせてもらうというだけ。
また、勉強するとなれば、必然的に他のメンバーも同行することが確実であり、
他人、特に環と一緒となれば、勉強漬けで、練習できる時間など取れないに違いない。

秘密裏に特訓するには、個人的にお願いする必要があったわけだ。

「あそこなら安全だから。少なくとも、この世界に影響が出ることはないっしょ?」
「・・・なるほどな」

ようやく話を飲み込めた。
とりあえず、動機はわかった。

「つくづく思うが、規格外なヤツだな、貴様は・・・」

このアーティファクト能力を始めとして・・・
こちらの世界に召喚されたこともそうだし、自分のような吸血鬼に、
なんのためらいもなく接していることもそうだし・・・

(・・・まあ、それが勇磨か)

そう納得できてしまうのも、普通ではないかもしれない。
だいぶ毒されてしまったようだ。目の前の、規格外生物に。

「頼むエヴァちゃん! このとーりっ」
「わかったよ」
「ホントか? ありがとうエヴァちゃん!」

許可を得た。
喜びを爆発させる勇磨であるが

「ただし」
「・・・へっ?」

交換条件があるようだ。
ドキリとさせられた。

「私は悪い魔法使いだ。わかるな?」
「え〜と・・・」

ニヤリと微笑むエヴァに、嫌でも、そのことを意識させられる。
初めてではないのだ、このようなことは。

「何をお望みでしょうか・・・」
「ふふん、話が早くて助かるな」

妖しく舌なめずりするエヴァ。
ものすごく嫌な予感がするが、承知しない限り、別荘を使わせてもらえない。

「お、お手柔らかにお願いします・・・」
「任せておけ。では、さっそく行くか」
「はいー・・・」

大きな不安を感じつつ。
うれしそうに歩き出すエヴァと共に、彼女のログハウスへと向かった。

 

 

 

 

「じゃあ、アーティファクトを出してみろ」
「・・・へーい」

別荘内。

満足そうな、恍惚そうな表情で、げふっと息を漏らすエヴァが指示を出す。
一方、げっそりした勇磨は、テンションの低い声で応じる。

・・・すでに、代償行為である”何か”は行なわれたようだ。

アデアット!

めげずに召喚呪文を唱えて、アーティファクトを具現化させる。
『アメノムラクモノツルギ』は、勇磨の右手に現れた。

「ほお? カードを見たときも思ったが、現物もやはり変な形か」
「否定はしないけどね」

普通の、しかも西洋剣からしてみれば、常識外の形なのだ。
古代剣だからと言ってしまえばそれまでだが、特殊な形状だからこそ、
崇め奉られたのではないかとさえ思える。

「空間を斬るという能力、実際に見せてくれ」
「わかった」

前代未聞の能力。
信じてはいるが、実際にその目で見るまでは、まだ疑っている面もあるのだろう。

「よーく見とけよ〜。本当なんだからな〜」

そういう気持ちを、敏感に感じ取ったのか。
普段は鈍いくせに、こんなところは変に鋭い。

「っせあ!」

だから、失敗など出来ないと、気合を入れて振るってしまい。
慎重に振るわなければいけない代物を、力いっぱい、振るってしまい。

 

斬ッ!!

 

「・・・あ」
「うわっ!?」

巨大な裂け目が出来てしまった。
それこそ、人を飲み込んでも、まだ余りあるような、大きな断裂。
不気味な灰色を覗かせている。

「や、やり過ぎだ馬鹿者!」
「ちょ、ちょっと力が入っちゃったかな? あは、あははは」
「笑い事ではないわー!」

なにしろ、巨大すぎる。
ましてや不確定な能力なのに、これから何が起こるか・・・

「まったく・・・。おい、早く閉じろ。気味が悪いぞ」
「へ? どうやって?」
「どうやってって、わからんのか!?」
「うん。だから練習しようと思ったんだよ」
「・・・・・・」

頭が痛い。
思わず頭を抱えるエヴァが、そこにいた。

「きのうも、独りでに閉じてったしなあ」
「・・・・・・」

たはは、と苦笑する勇磨。
それを見て唖然とし、うんざりするエヴァ。

大きく裂けた空間の割れ目を除けば、微笑ましい光景だろうが。

ピシッ・・・

「ん?」
「え?」

すでに、逃れられない現象が、始まっていたのだ。

ピシピシピシッ・・・!

「お、おい勇磨・・・」
「・・・なにかな?」
「裂け目が・・・・・・さらに大きくなってないか?」
「なってるねぇ・・・」

ピシピシピシッ・・・!

「・・・・・・」
「・・・・・・」

開いた裂け目から、四方八方に向けて、周りの空間すら蝕む亀裂が成長。
それは順々に大きくなっていき、裂け目を徐々に大きくしていっているようだ。
収まるどころか、さらに激しく、崩壊は進んで行く。

息を飲む2人。
このままでは・・・

この空間自体が、裂け目に飲み込まれる!

「たっ、退避ーーー!!」
「なんてことをしてくれたんだ貴様はーーー!!」

急いで脱出しなければ。
慌てて、現実世界との出入り口を目指すが。

「・・・そういえばここって、1度入ると、24時間は出られないんだよね?」
「・・・・・・」

滝のような汗を流しながら言う勇磨に、エヴァも思わず青くなった。

根本的なことを忘れていたようだ。
つまり、現在は脱出不能。

 

ガラガラガラァッ!!!

 

「ぬわっ」
「なにぃーーーーっ!?」

そうこうしているうちに、ついに訪れた大崩壊。
足場ごと崩れ去ってしまい、無論、2人は・・・

「お助けぇーーーーーーー!!!」
「やはり貴様に関わるとロクなことにならんーーーーー!!!」

空間の裂け目に、落ちていった。

 

 

 

 

続く

 

 

 

 

 

 

 

 

<あとがき>

というわけで、その場しのぎの外伝1発目。
まずはエヴァとの異世界紀行。
2人はどんな世界に飛ばされたんでしょうかねぇ?(ニヤニヤ)

勇磨のアーティファクト能力、こういう使い方をするために付けたんですよ(え?

1発目から続き物ですが、2話目は年明けになっちゃうかな・・・
申し訳ありません。

 

 

以下、Web拍手返信です。
拍手していただいている皆様、本当にありがとうございます!

>ハーレムで逝きましょう!!

逝きますか!
って、字が違う上に(笑)、そんなに期待しないでくださいってば・・・

>短編や外伝も楽しみだなー

そんな大層な代物にはならんと思いますが・・・精一杯がんばります。
こんなんでよろしいでしょうか?

>勇磨があまり出ない我にもっと勇磨をそしてハーレムをください!by烙印

外伝では、勇磨は出まくりですから・・・
それまでお待ちを・・・って、こんな感じですがどうでしょう?(爆)

>とても面白かったです。お体に気を付けて頑張ってください!(できれば勇磨にもっとハーレムを!!)

お気遣い大変ありがたく存じます。
ハーレムは需要ありまくりですねぇ・・・

>勇磨面白かったです。

ヤツにシリアスは似合わない・・・(酷)

>殿、アキラをなにとぞアキラをおだしください

短編・・・というか外伝で出番があるぞよ。
それまで待つがよい(爆)

 


答えろ小太郎ォ!!  流派御神流は!!

聖なる風 よ!!

破魔!!

大聖!!

見よ、東方は

ぅぅぅ !!!

 

 

……なあ、環 のねーちゃん

なんですか?

こんなのがほ んっとうに修行なんか?

ええ、そうで す

私も兄さんも これから始めましたから

さ、これをあ と一万回やりますから

ネギ、俺、間 違えたかもしれんわ……

 

 

 

 

なんかもう、色々とごめんなさい

押して頂けると作者の励みになりますm(__)m



昭 和さんへの感想はこちらの方に

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