魔 法先生ネギま!

〜ある兄妹の乱入〜

外伝 図書館島探索、再び

 

 

 

 

 

 

ある日の放課後のこと。

麻帆良学園の図書館、通称『図書館島』の一室にて、読書中の一団がいる。
彼女たちの共通点は、クラスメイトだということだろう。

「ねー。御門さんは、悲劇って好き?」
「悲劇?」

その中の1人、早乙女ハルナは、向かいの席で本を読んでいた環に向かって、そう問いかけた。
本から視線を上げた環は、ハテナと首を傾げる。

「どういう意味ですか?」
「あー、えーと、物語として、って意味。どう?」
「つまり、シェイクスピアの作品のようなものを、どう思うかということですか?」
「そうそう」

唐突だったので、聞き返して要領を得た。
少し考えて。いや、考えるまでもない。

「それは、好きか嫌いかで答えたら、嫌いとしか言いようがありませんが・・・」
「やっぱりそう?」
「一般論でしょう。これは」

誰も、物語が悲劇で終わることを望みはしまい。
空想上だから問題ない、と言ってしまえばそれまでだが、そこはやはり、
幸せな結末を迎えて欲しいものである。

が、完成度が高いことも事実。
実際、環が例に出したシェイクスピアの悲劇は、広く演じられてきている。

「ただまあ、私情を抜きにしまして、純粋な創作としてみれば、素晴らしいものもあるんでしょうが」

後年になった今でも、高評価を受けているものがほとんどだ。
環はフォローするように言った。

「では環さんは、シェイクスピアの悲劇の中で、何が1番だと思います?」
「わ、私も聞いてみたいなー・・・」

すると、隣で本を読んでいた夕映とのどかも、興味を惹かれたのだろう。
そう言って、会話に参加してきた。

「何をもって1番とするかが難しいところですが・・・」
「項目を区切ってみたらどうでしょう・・・?」
「なるほど」

甲乙つけがたい作品があるため、悩んでしまう環。
のどかの提案に、それだ、とばかりに頷いた。

「では、物語性としてはどうです?」
「月並みですが、やはり『ロミオとジュリエット』かと。
 女としては恋焦がれるものがありますし、悲劇ですが、最終的には両家が和解して、
 ほんの少しでも、光明が差しているところがいいですね」
「うん、そうだね」
「私も同じですー・・・」

環の答えに、うんうんと頷いているハルナとのどか。
やはり花も恥らう乙女としては、ある意味、憧れるものがあるのだろうか。

「悲劇性では?」
「それは間違いなく、『マクベス』でしょう。
 私利私欲に突っ走るストーリーですし、有名な『血が落ちない・・・』の下りも不気味です」
「環さんは『マクベス』ですか」

同意しつつも、夕映は少し納得の行かない顔をしている。
それを察した環は、逆に尋ねた。

「夕映さんはどう思われているんですか?」
「私は『リア王』ですね。
 そのあまりの悲劇ゆえに、喜劇に変えて上演されたこともあるそうです」
「なるほど・・・。確かに、『リア王』の悲劇もすごいですね」

「『ハムレット』も捨てがたいわよん♪」
「登場人物のほとんどが死んじゃいますからー・・・」

夕映だけではなく、ハルナとのどかも、自分の意見を述べた。

こういう議論は、解釈が人それぞれのため、ひとつに纏まることはなかろう。
なんにせよ、名作と呼ばれるものについては、名作ゆえに話が尽きないと。

4人はその後も、自分の意見を述べたり、討論したりしていたが。

「あっ、ハルナー! 捜したよ!」
「え?」

不意にやってきた女生徒。
彼女は一目散にやってくると、まだ座ったままのハルナの手を取り、強引に立ち上がらせて
引っ張っていこうとする。

「締め切りが近いのに、こんなところで油売ってんじゃないわよ!」
「あ、あははー。ちょっと息抜きのつもりだったんだけどさー、話が盛り上がっちゃって〜」
「ちゃって〜、じゃない! というわけで、ハルナ借りていきまーす」
「じゃあね〜♪」

2人はそのまま、部屋から去っていった。
直後は、ぽか〜んとした空気に支配される。

「・・・漫研の話ですか?」
「そ、そうみたいですね」
「ハルナは毎月、修羅場ってますから」

3人それぞれ、はぁ、とため息をついて。
ハルナが抜けて話が一段落したので、それぞれの読書に戻ろうか、ということになる。

が、しかし。

「そういえば・・・」
「なんですか環さん?」

不意に環が、何かを思い出したかのように口を開いた。
夕映が聞き返す。

「先日・・・」

環は立ち上がって、この小部屋と廊下とを仕切っている扉まで歩いていき、周囲の気配を窺う。
幸い、周囲に人の気配はなく、図書館だけあってシーンとしていた。

安心して、先ほどハルナを迎えに来た彼女が開けたままにしていった扉を閉め、
もう1度、先に戻りつつ話を切り出した。

「ネギ先生からお伺いしたのですが・・・」
「な、何をです?」

だがそれでも、声のトーンは自然と下がる。
いったい何事かと、夕映とのどかもゴクリとツバを飲み込んで、身を乗り出していった。

「この図書館の地下には、それはもう広大な空間が広がっているというのは、本当ですか?」
「・・・・・・」

本当だが、夕映は、すぐには答えられなかった。
予想だにしない質問だったからである。

「夕映さん?」
「は、はい。本当です」

促されて、ようやく、頷くことが出来た。

「図書館探検部は、度重なる増改築で、その全容をまったく掴めなくなった図書館島の
 真実を探るために設立されたことは、すでにお話しましたね」
「ネギ先生と一緒に、地下深くまで行ったそうですが?」
「え、ええ。少し垣間見てきましたが・・・」

念を押すように尋ねられ、さらに頷く。

正直に答えることには少し躊躇したが、環が”魔法を知る”人物だということを思い出し、
素直に答えることにしたのだ。

「・・・っ」
「どうされました?」
「いえ、ちょっと・・・」

”あのとき”、ネギにくっついて、図書館島の地下まで潜って行ったときのこと。
あの屈辱を思い出して、夕映は思わず、両手を握り締めていた。

「嫌なことを思い出しまして。トカゲの分際で・・・・・・ぶつぶつ」
「はあ」
「ゆ、ゆえー・・・」

一緒だったのどかにはわかるが、行かなかった環にはわからない。
曖昧に相槌を打つしかなかった。

「あ、危ないところなんですよー。私たちも、すぐに戻ってきちゃったくらいなんですからー。
 茶々丸さんが助けに来てくれなかったら、助かっていたかどうか・・・」
「・・・そうですか」
「み、御門さん・・・?」

のどかは危険性を訴えるが、環に届いたのかどうか。
いや、確実に届いていない。その証拠を、のどかは見た。

「おもしろそうですね」
「え・・・」

環の口元が、興味津々とばかりに、緩んだのを。

「夕映さん、宮崎さん」
「は、はい?」
「な、なんでしょうか・・・」

そんな環の視線が、交互に2人を捉えた。
ようやくトリップから戻った夕映も、何を言われるのかハラハラしているのどかも、
思わずたじろいで。

「もう1度、行ってみる気はありませんか?」

やはり、とんでもない提案であることは、間違いなかった。

 

 

 

 

次の週末、早朝。
麻帆良学園図書館前。

「ふわ〜・・・」
「まだですかね?」

制服を着込んだ御門兄妹の姿がある。

大あくびをしている勇磨は、いかにも眠そうだ。
一方、環のほうは、待ち合わせでもしているのか、しきりに時計を気にしている。

「もう来てもおかしくない時間なんですが」
「・・・なあ、環」
「なんですか?」

勇磨が訊きたいことは、皆様と同じであろう。
即ち・・・

「なんで俺、こんな朝っぱらから、こんな場所に連れられてきてるわけ? あふ・・・」

再びの大あくび。
これは無理もなく、現在時刻は、まだ6時にもなっていない。

「しかも、休みだってのに、なんで制服着て学校に来なきゃならんのだ・・・」

今日は土曜日。
今は一般に週休二日制であるから、今日はお休みのはずなのだ。
ゆっくり寝ていていいはずなのだ。

それが、なぜだか叩き起こされて、始発に乗せられ、
無理やり引っ張られてきた場所は、麻帆良学園の図書館前。

「知りたいですか?」
「是非とも教えてもらいたいね・・・」
「じきにわかりますよ」
「うおーい」

まともに答えてくれない環。
実は、先ほどからこの調子なのである。

「それにしても遅い・・・。まだですか、ネギ先生方は」
「へ? ネギ先生?」

不意に聞こえた単語。
ここで待っている相手は、ネギなのか?

「どうして――」

「お待たせしましたーっ!」

勇磨が真偽を尋ねようとすると、上空から声が降ってきた。
いや、声だけではない。

いつもの杖に乗ったネギ、夕映、のどかの姿だった。

「すいません、遅れてしまいました」
「遅いですよ、ネギ先生」
「あうっ、スイマセン! アスナさんに見つかってしまいまして、ごまかすのに時間が・・・」
「まあ、いいです」

遅刻だが、それほど気にするほどのことでもない。
イラついていたわりには、環は簡単に許した。

「あれ、勇磨さんも行くんですか? これは頼もしいです」
「いや、行くも何も、俺は何も聞かされていないわけなんだが・・・」
「へ? そうなんですか?」
「何をするつもりなんだ、君たちは。綾瀬さんと宮崎さんもいるし・・・」

「おはようございます」
「お、おはようございますー・・・」

勇磨から横目で見られても、平然と挨拶を返す夕映。
のどかも、少しドギマギしたようだが、ぺこっと頭を下げた。

「ネギ先生。夕映さんと宮崎さんも、準備はいいですか?」
「整えてきましたよ」
「この通り、長期戦になっても、備えは万全です」
「はいー」

よくよく見ると、彼らは3人とも、リュックを背負っていて。
夕映がチラリと見せてくれた中身は、お菓子やらジュースやら弁当やら。
そういえば、環も大きなリュックをひとつ、持ってきていた。

「???」

一方で、何をするのか聞かされていない勇磨は、盛大に首を傾げている。

準備ってなんだ?
長期戦? 水や食糧が必要なほど、長時間にわたってすることなのか?

勇磨の中で、様々な疑念が渦巻く中。

「じゃあさっそく行きましょう! 勇磨さんと環さんは、どうします?」
「ご心配なく。いつぞやのときのように、杖に掴まっていきますので」
「わかりました。夕映さんとのどかさんは、また杖に乗ってください」
「「はい」」

「待て待て待て!」

勝手に話を進められるので、大声を張り上げる勇磨である。

「なんですか兄さん?」
「だから、どこへ行くのか、何をするのか、教えろっつーの!」
「道すがらお話します。ほら、兄さんも杖に掴まってください」
「っなろ〜・・・」

なんだかんだ言いつつも、環には逆らえない勇磨。
渋々、浮かび上がり始めたネギの杖の、最前部に近い部分に手をかけた。
環は逆に、1番後ろの部分を掴む。

「行きますよー!」

ネギが一声かけると、杖は宙高く舞い上がり、目指す図書館島の地下深くへと飛び始めた。

 

 

 

 

地下へと進行中。
またしても、強風や蜘蛛の巣などに邪魔をされつつも、順調に進んで行く。

ネギたちは2回目だけあって、わりと余裕があるようだ。
少なくとも、現時点では。

”アレ”が待っているので、突破は容易ではないと思いつつも、今度こその思いも強い。

「・・・というわけなんです」
「へー」

その道中。
勇磨はネギから、今回のことも説明を聞かされていた。

「お父さんの手がかりが、この奥にね」
「はい、そうなんです。でも・・・」
「でも?」

話が、”アレ”のことに及ぶ。

「奥にはすごい”強敵”が待ち受けてまして・・・
 父さんの手がかりを得るには、もっと先に進まなくちゃならないんですけど、
 それのせいで、この間は撤退を余儀なくされたんです」
「ふーん。どんなヤツ?」
「ドラゴンです」
「ドッ・・・?」

さすがに衝撃があったようだ。
ドラゴンだと聞かされては、無理もあるまい。

「マジですか」
「はい、マジです。でも助かりました」

頷いたネギは、心から安心したような、信頼を向ける声で言う。

「いつかまた挑戦しなきゃってずっと思ってたんですけど、あのドラゴンは、
 僕1人じゃどうにもならないような気がして・・・。そこへ、環さんから今回のお話です。
 二つ返事でOKしちゃいました!」

うれしそうに、喜んで。

「少なくとも、修行が終わるまでは無理かなって思ってましたから、本当に助かります!
 ありがとうございます勇磨さん環さん。お二人がいれば百人力ですよ!」
「あーそう。頼りにしてもらえるのはうれしんだけどね・・・」

なんとまあ、純粋で強固な思いなのだろう。
それほど父親への思いが強いとも言えるが、ネギ特有の、向こう見ずな無鉄砲とでも表そうか。

環がどのようにして話を持ちかけ、そそのかしたのかはわからないが、
もうしっかりとその気になってしまっているようである。

いや、すでに図書館島の地下へ進行中なのだから、何を言っても、すべては今さらなのではあるが・・・

「環ぃ・・・」
「いいじゃないですか。いい退屈しのぎになりますよ」
「退屈しのぎで、ドラゴンと戦わされちゃ、たまらんぞ・・・」

げんなりと脱力する勇磨。

この先にいるドラゴンとやらが、どの程度の強さなのかはわからないが、
竜族といえば、最強の力を持っているものだ。
彼の言葉通り、遊び半分で戦いを挑むような相手ではない。

「私たちも、お二人には期待していますです」
「が、がんばってください!」

「はいはい・・・」

夕映とのどかからも、期待をかけられているようで。
勇磨は脱力したまま、力なく頷いた。

(いいですね、のどか・・・)
(う、うん・・・)

そんな彼女たち。
再び無理を言ってくっついてきた理由は、もちろんある。

(あの京都での一件を解決したという、御門兄妹の力・・・。じかに見せていただきます)
(ど、どんななんだろう・・・。楽しみなような、怖いような・・・)

魔法の世界をもっと詳しく知りたい、という当初の動機も当然ある。
しかし、現時点での最も大きな興味は、御門兄妹の強さだった。

ネギがこれほど信頼し、あのエヴァや楓たちも一目置く、勇磨と環。
実際に2人の戦闘を見たことがないので、この機会に、と思ったのだ。

(楽しみです。どのようなものを見せていただけるですか・・・)
(ドキドキ・・・!)

しばらくして、徒歩での歩きに変わり。
トラップに気をつけながら進んで・・・

再び、対峙する。

 

 

 

 

『アンギャァァアアア!!!』

咆哮を上げるドラゴン。
場所柄からして、やはり、奥へと続く扉を守る門番、といった線が強いと思われる。

「まあ、来たからにはやるっきゃないか」
「とはいえ、油断は出来ませんよ兄さん」
「わかってるって。なんといってもドラゴンだからな」

「夕映さんとのどかさんは、離れていてください!」

すぐに戦闘態勢を整える御門兄妹とネギ。
夕映とのどかは、とばっちりを受けないよう、物陰に走って行く。

「まずは小手調べだ。だあっ!」

勇磨が素早く間合いを詰めて飛び上がり、顔面めがけて刀を振り下ろすが

ガツッ

鈍い音を立てて、跳ね返されてしまった。

「くっ・・・。やっぱ一筋縄じゃいかないか」

RPGなどによれば、ドラゴンの皮膚は、鋼鉄以上の硬度を持つとか。
生半端な力と技では通用しない。

『ゴアッ』

「おっと」

吐き出されてきた火炎の塊を、横っ飛びに回避。

「環、お返ししてやれ!」
「はい。天狐流妖術・鬼火!!

即座に、ドラゴンは紅蓮の炎に包まれた。
動きも止まる。チャンスだ。

ラス・テル・マ・スキル・・・

すかさず詠唱を始めるネギ。
前衛をがんばっているうちに、大技を放つのが、魔法使いの仕事。

最近は、自らも前衛に出るやり方を研究・修行中だが、
今はそれは綺麗サッパリ忘れて、本職に徹するべき場面である。

来たれ虚空の雷、薙ぎ払え。雷の斧!!

一気果敢に決めようと、今の自分に出来る、最大最強の魔法をいきなり繰り出した。
巨大な雷がドラゴンを捉える。

ラス・テル・マ・スキル・・・

さらに、それだけでは留まらない。

魔法の射手・光の一矢!!

強烈な閃光が、重ねてドラゴンを捉えた。
数ではなく、質を狙った一撃である。

「はあ、はあ・・・・・・どうだっ!?」

現に、かなりの魔力を込めたため、息を切らしているネギ。
ドラゴンはどうなったか。ダメージは与えたか?

『ギャァァアアアアアアア!!!』

「!!」
「無傷!?」

轟く大絶叫。
収まった衝撃の中から姿を現したドラゴンは、ほとんど無傷に見える。

「さすがに、ドラゴンですね」
「茶々丸さんが、あれは魔法生物だから、低レベルの魔法は効かないって言ってましたけど・・・」

環の妖術にしても、ネギが放った魔法にしても、低レベルのものでは決してない。
これでも傷つけられないとなると、正直お手上げではないのか。

「まーだ諦めるのは早い」

「・・・! 兄さん!」
「勇磨さん!?」

「へーい」

いつのまに回り込んだのか。
ドラゴンを挟んだ向こう側、ドラゴンの背後に、勇磨がいる。

「鬼さん・・・いや、竜さんこちらっ、ってか〜」

『!』

そのまま、ドラゴンの背中へ飛び移り。
ドラゴンが対処する間も与えずに。

「はあ〜っ・・・」

キラッ

瞬く黄金の輝き。
次の瞬間

「ふっ!!」

 

斬ッ!!

 

勇磨渾身の抜刀術が炸裂。
首を綺麗に薙いでいった。

ドラゴンの頭部はドサリと落ち、数秒遅れて、その巨体も音を立てて崩れ落ちた。

「どんなもんだい」
「さすがです兄さん。お見事でした」
「や、やりましたね勇磨さん! すごい!」

これにはもちろん、環とネギは、手放しで喜んで賛辞を贈る。

「・・・・・・」
「・・・・・・」

一方で、物陰から見ていた夕映とのどか。
すぐには言葉が出てこない。

「い、一撃で、ドラゴンの首を・・・」
「あわわ・・・」

夕映は、勇磨の攻撃に驚き。
のどかのほうは、そのあとの衝撃的な光景に、より驚いているようだ。
刺激が強すぎたようである。

「今の一撃といい、環さんが放った炎といい・・・
 やはり、只者ではないのですね、あの兄妹は・・・」
「あわわ・・・」
「それにしても、斬る直前、一瞬だけ光ったあの輝きは、いったい・・・」

あわわ、としか言わない、言えないのどかを尻目に、1人考える夕映。

あれか? いわゆる”気”とか”オーラ”とか呼ばれる類のものなのか?
いやいや、そんな非科学的なもの、存在するわけがない。
でも、魔法は現に存在しているぞ。魔法使いも目の前にいる。ハテナ?

「むむむ・・・」

夕映の思考が、出口の見えない迷宮に迷い込みそうになったとき。

「これで先へ進めますー! やったぁ!」

ネギが無邪気に喜んでいると。

ピク・・・

「・・・え?」

首の無いドラゴンの身体が、わずかに動いた。
かすかにだが、確かに動いた。

「た、倒したんじゃ・・・」
「ダメだ! 離れろネギ先生!」
「!!」

確認しようと近づくネギだったが、勇磨の声で思いとどまり。
急いで退避する。次の瞬間・・・

「立ち上がった!?」

首がないのに、のっそりとではあるが、立ち上がるドラゴン。
そして・・・

「頭が再生したぁっ!!?」

にょっきりと、一瞬で、斬られた頭が再生してしまったのだ。
元通りに。何事も無かったかのように。

『アンギャァァアアアア!!』

雄叫びも上がる。
完全に復活してしまったらしい。

「あ、あわっ・・・・・・どどど、どうなって・・・・・・」
「魔法生物だということですね。とすると、魔法の力で、復活してしまうのかもしれません」
「そ、そんなことが!?」

あくまで可能性だが、確率は高いと思われる。
そうだと考えねば、説明がつかない。
先ほどから、ダメージらしいダメージを与えられないのも、そのせいなのではないか?

「まあ、とにかくだ」
「え・・・」

隣に寄り添ってきた勇磨が、諦め加減に

「このままじゃキリがない、ってことかね?」
「・・・・・・」

さらりと、嫌なことを言った。
数秒間の沈黙。

「てて、撤退! 撤退しましょう!」
「異議なーし」
「夕映さん宮崎さーん!!」

 

 

 

 

そんなわけで、2回目のアタックも、失敗に終わった。

 

 

 

 

 

 

地上へと戻ってきた。
まだ息が切れている。

「だから言っただろ環。暇潰しにやるようなことじゃないって」
「そうですね。でも、なかなか面白かったじゃないですか」
「おもしろいとかの問題じゃないですよー・・・」
「な、なぜお二人は、そんなに冷静なのですか・・・」
「はー、はー・・・」

平然としているのは勇磨と環だけ。
ネギも、夕映も、のどかも、総じて膝に手をついて、息も絶え絶えな様子である。

「すいませんネギ先生。あまりお力にはなれませんでしたね」
「い、いえ、謝ることないですよ」

ようやく落ち着いたネギは、すまなそうに謝る環に対して、立ち上がりながら逆に礼を言う。

「もっと修行して、あのドラゴンを倒せるくらい、強くなってみせます!」
「その意気です。がんばってください」
「はい!」

まあ、何はともあれ。
ネギが決意を新たにしたのは、良かったことなのだろうか。

 

 

 

 

終わり

 

 

 

 

 

 

 

 

<あとがき>

今回はちょっと、ハーレム道は一休みしまして(汗)

図書館島に再挑戦も突破ならず!
突破したら、原作を越えちゃうんだもの・・・(爆)
何があるのかもわからないし、ね・・・

と思ったら、すでに明かされてたー!?Σ( ̄□ ̄;)
すんません、最新コミックス確認したの、つい最近なんです。
これを書いたのもっと前のことで・・・

なんか言い訳がましいですが、破棄するのももったいないので、
学祭前設定ということで許してください・・・

 

以下、Web拍手返信です。
拍手していただいている皆様、本当にありがとうございます!

 

>今度は刹那ですか、次は誰かな誰かな?

今回はちょっと息抜き。
まあ、たまにはこんな普通な感じのも(普通じゃないw

>せっちゃん来たー!!昭和さん最高です!

やっぱり、このかと刹那はセットですから。
とはいえ、本人同士の絡みはまったく無かったんですけどね。

>これで刹那フラグもあと少し・・・・・フフフ(ぉ

計画は着々と進行中・・・・・・フフフ(ぉ

>剣道と剣術、よく短い期間で癖を矯正できた、兄よ。環さん、どんな訓練頼んだんでしょうか……

まあなんだかんだ言って、実家は表向きは剣道道場ですからね。
身体で覚えているものを呼び覚ますくらい、すぐに出来たんじゃないかと。

>更新されるのが凄く待ちどうしいです、頑張って書いて下さい

ただただ恐縮でございます。
力の限りがんばります。

>がんばってください。応援しています。
>とてもおもしろかったです続き楽しみにしてます。
>更新楽しみに待っています。

応援ありがとうございます。
姉妹のほうも始めてしまい、ネタが尽きかけていることもあって、
これまでのようにはいかないかもしれませんが、これからもよろしくお願いします。

>今まで思っていたがハーレムはいい実にいい!だが木乃香愛の人には木乃香には幸せになってほしいなぁ

ハーレムは漢のロマンですが、バランスがね・・・
こちらを立てればあちらが立たず。ほんと奇跡のような微妙なバランスで成っているんだと思うわけですよ。
さて、勇磨はうまく立ち回ることが出来るのか!(爆)
このかについてですが、作者がハッピーエンド至上主義者なので、少なくとも悲しいことにはならないでしょう。
はたして彼女は、ハーレムも笑って許容するのか、それとも、嫉妬に荒れ狂うタイプなのか、どっちだ・・・?

 

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