魔 法先生ネギま!

〜ある兄妹の乱入〜

1時間目 「やってきた金色こんじきの兄妹」

 

 

 

 

 

 

麻帆良学園、郊外の上空。

ゴゴゴ・・・

何も無い中空。
そこに、ぽっかりと真っ黒な穴が開いて・・・

「どわっ」
「・・・!」

突然、2人の人間が姿を現した。

「な、なんだったんだ?」
「さあ」

十代後半くらいの、少年と少女。
和服、なのだろうか。巫女服や神主が着ている服のような感じの服装。

どうやら彼らにも、自分の身に起きている現象がなんだか、よくわかっていないらしい。

「いきなり目の前が光ったと思ったら・・・・・・ここはいったい?」
「とりあえず、いいですか?」
「ん? なんだよ?」
「ここ・・・・・・・・・空中です」
「へっ?」

長い黒髪の少女に言われ、同じく黒髪の少年は、思わず下を見た。

――地面が無い。

いや、無いわけではなかった。
あるにはあるのだが、見た感じ、10メートルは下なのである。

「・・・うそ?」
「いえ、私も信じられませんが」
「・・・・・・」

つまりは、今の自分たちは、空中に浮かんでいる状態?

「うあーっ、ウソだと言ってくれー!」
「無理です」

もちろん、人間が自力で、空中に浮かべるわけが無いので。
重力に従い、自由落下を始める。

このままでは地面に激突する!

「・・・くっ!」
「・・・・・・」

少年は苦し紛れに。
少女はあくまで冷静に。

 

ドンッ!

 

”能力”を解放。
2人の髪と瞳の色が金色へと変化し、周囲に同色のオーラが噴き出す。

ほぼ同時に、ネコのように空中で回転し、態勢を整えて。
2人とも見事に、着地を決めた。

「・・・ふぅ」
「なんとかなりましたね」

彼らが一息つくと、噴き出ていたオーラは消え。
黄金だった髪の毛や瞳も、元の漆黒へと戻っていった。

「まったく、何がなんだかわからんぞ」
「私も同感です、兄さん」

少女が少年のことを『兄』と呼んだ。
2人はどうやら兄妹らしい。

「何が起こったのか気にはなるが、現状を把握することのほうが大切だな」
「はい」
「じゃあまずは・・・・・・・・・ここはどこだ?」
「さあ?」

明らかに、”直前まで”、空中にいることを自覚するまで、
自分たちの居た場所とはまったく違う。

自分たちは、深い森の奥地で、封印から蘇った魔族と闘っていたはずだった。

ところが。
ここは森の中などではないし、時間は深夜だったはず。
見上げてみると、太陽は夕日であるが存在している。

「どこだかはわかりませんが、時間軸がずれたようですね」
「時間・・・タイムスリップ、ってことか?」
「はい。私たちの知覚時間では深夜でした。が、ご覧のように、今は夕刻のようですし」
「半日ほど、時間を遡った、ってことか?」
「わかりません。そもそも、同日なのか、私たちが知る世界と同じ世界なのか、不明です」
「なんだよ、そんな三流SF映画みたいなのは・・・」
「現状でこうなのですから、仕方ありませんよ」

少女は兄に向かって、タイムトラベルとパラレルワールドの可能性について、
軽く説明する。

「異世界、ということも考えられます」
「やれやれ・・・」

大きくため息をつく少年。

「で? 元の時間、元の世界に帰る方法は?」
「なんとも言えませんね。少なくとも、私たちに起こった現象の正体が、詳しくわからないと」
「はぁ・・・」

再びため息。

わりとそういう世界の人間だったりするから、そういうSFチックな、
オカルトチックな現象に対しては、わりと耐性があったりするにせよ。

やはり、落胆は大きい。

「しばらくは、この世界で暮らすしかないのか・・・」
「そうですね。運良く、そういう知識がある方と巡り会えればいいのですが。
 最悪、この世界に骨を埋めることになるかもしれません」
「そっちの可能性のほうが高そうだ・・・」

元の世界、家族、友人。
再び会える日はやってくるのだろうか。

「まあ・・・・・・・・・環。おまえと一緒だっていうのが、唯一の救いかな。
 俺1人だけだったら、とっくに気が狂ってる」
「光栄です、兄さん」

兄の言葉に、うれしそうに微笑んで見せる少女。
彼女としても同じだった。

冷静を装ってはいるものの、心中は穏やかではないのだ。
自分たちに起こったこと、これからの生活、元の世界に帰る方法など、
不安なことはいくらでもあるのだ。

と・・・

「・・・! 環!」
「はい」

彼らは、猛然と接近してくる気配に気づいた。

「いち、に・・・・・・数はふたつか」
「ええ。このスピード、かなりの手練れですね。人間か、あるいは・・・」
「魔物か・・・。来るぞ!」

考えているヒマもなかった。
それは、すぐにやってきたから。

「捕捉しました、マスター」
「見つけたぞ!」

「・・・!? 空飛ぶ、女の子・・・?」

予想外の場所から出現され、度肝を抜かれた。
いや、その正体のほうに驚いた。

薄い翠色の、なにやら耳に変なカバーをつけている女性と。
その彼女に抱かれている、長い金髪の女の子。

金髪の彼女のほうは、10歳かそこらにしか見えない。

「人間? いや・・・・・・・・・環よ」
「はい」
「俺には、空を飛んできたよう見えたが」
「私にもそう見えました。重ねて申せば・・・」

人間が空を飛ぶ。
コレだけでも驚きだが、さらに驚いたことは・・・

「あの女性、どういう原理だかはわかりませんが、ジェット噴射で浮いているように見えますね」

そうなのだ。
翠色の髪の女性は、背中と足元から、なにやら戦闘機のエンジンのような噴射をしているのだ。

まさか、それによって宙に浮き、推力を得ているのか?

「ここは、俺たちの知る世界より、未来なのか・・・?」
「・・・さあ」

彼らの世界では、もちろん、人間1人サイズのそんなものは実用化されていないわけで。
未来へとタイムスリップしてしまったというのか。

「貴様ら、何者だ!!」

金髪の女の子から怒声が降ってくる。
2人は軽く焦った。

友好的な声ではなく、明らかな警戒、敵対の意志が見えたから。
さらに言えば、戦闘意欲が満々に見えたから。

無論、少年たちに戦う気などまるで無い。
正直、それどころではないのだ。

「そうか、答えられんか・・・。なら、力ずくで吐かせてやる!」

なんと説明したものか、考えあぐねていると、その沈黙を誤解。
即座に戦闘態勢へと入った。

「わっ、ま、待った待った!」
「お待ちを! あなたたちと敵対する気はありません! どうか私たちの話を・・・」

「聞く耳もたんわっ!
 来れ虚空の雷、薙ぎ払え! 雷の斧ッ!!

慌てて声をかけるが、時すでに遅し。
2人に対し、巨大な雷が迫る。

「くっ」
「・・・・・・」

回避する2人。

「ほう、コレを避けるか。やはり只者ではないな」

それを見て、にやりと笑う金髪の少女。
だが、すぐに疑問の表情を浮かべる。

「しかし、なんだ・・・? ヤツラからは魔力のかけらも感じられん。
 茶々丸。確かに巨大な魔力が感じられたな?」
「はい。通常状態の約10万倍にも及ぶ、巨大な魔力が検出されました」
「だよな」

翠髪の女性と、そう言葉を交わす。

「魔力・・・?」

少女・環の耳にも、その声は聞こえた。
出てきた単語に反応する。

「それは本当ですか!?」
「白々しいぞ。確かに、今は魔力を感じないが、貴様らがやったんだろう? それで結界に穴を開けたか」
「ですから、誤解なんです」

話に応じてもらえたので、ここぞとばかりに畳み掛ける。
ここで聞いてもらえなければ、事態は最悪の方向へ傾いてしまうのだ。

「私たちにも何がなんだか。気付いたら、ここに、この世界に立っていたんです」
「そ、そうなんだよ! さっぱりわからないんだ!」

「なんだと?」

少女の兄も必死に叫ぶ。
今度は、金髪の少女のほうがピクッと反応した。

「”この世界”・・・だと? 茶々丸、下りろ」
「はい、マスター」

す〜っと地面に下りる。
そして、2人を見据えながらこう発言した。

「よかろう。話を聞いてやる、詳しく話せ」

 

 

 

 

10分後。

「・・・なるほど」

話に話して、どうにか通じてくれたようだ。

「つまり貴様たちは、”違う世界”から飛ばされてきたと、そういうわけだな?」
「まだそうだと決まったわけではありませんが、おそらく」
「はは〜ん。先ほどの魔力はそういうことか。ありえるな」

ふむふむと頷いている彼女、エヴァンジェリンというらしい。
彼女が言うには、魔力による時空間移動の可能性が高い。

彼らがトリップする寸前、視界が白い光に包まれたのは、おそらくは魔力の暴走。
暴走した魔力によって空間が捻じ曲げられ、生じた時空の歪みに飲み込まれてしまったのだろう、と。

「あなたは、こういうことには詳しいんですか?」
「まあ、ある程度はな。これでも”真組”の吸血鬼だぞ。
 といっても、異世界から来たおまえらにはわからんか」
「吸血鬼・・・」

不穏な単語に、環は一瞬だけ表情をゆがめる。

「ん? 吸血鬼など、信じないか?」
「いえ、信じます。私たちが元いた世界にも、魔物やそういった類の生物はいましたから」
「ほう」

察したエヴァがこう尋ねるが、そういうことではなかった。

「ちなみに、あなたほどの実力者ならば、いずれバレと思うので、言っておきます」
「なんだ?」
「実は、私たちは・・・」

ここで環は、自分たちに関する重大な秘密を打ち明けた。

隠していても、隠しきれるものではないと判断し。
ならば今のうちに打ち明けて、信用を得ようと考えた。

今のところ、彼女たち2人にとって、この世界での知り合いはこのエヴァのみ。
頼ることの出来るのは、エヴァだけなのだ。

「・・・ほほう?」

エヴァのほうも、その内容に驚いたようで。

「そう言われてみれば、おまえたちからは、何か違うものを感じるな」
「他言無用でお願いしますよ」
「わかっている。私としても、私の正体や、魔法のことを騒ぎ立てられては困るからな」
「”魔法”?」

この単語にも戸惑った。
なぜなら、環たちにとって魔法とは、知られて困るようなことではないからである。

「知らないのか?」

意外そうに聞き返すエヴァ。

「なんだ、魔物などが日常的にいる世界のようだから、知っているのかと思ったが」
「いえ、魔法の意味するところくらいは知っています。
 私が聞きたいのは、魔法のことを知られてはまずいのか、ということです」
「そういうことか。この世界では、魔法の類は一切が秘匿されている。
 知っている人間はごく僅かだ」
「そうですか。いえ、私たちの世界では、オープンなことだったので、つい」
「ほう、そういう世界もあるのか」

そういう世界も楽しそうだ。
めいいっぱい暴れられそうだからなと、エヴァは笑った。

「まあいい。おまえたちにはそういったことも説明せねばならんし、ついてこい。
 これからのことも決めねばなるまい」
「え、はあ。兄さん、行きましょう」
「ああ」

言われるまま、エヴァに付いていく。

「そういえば、自己紹介がまだでしたね。私は御門環(みかどたまき)といいます。
 で、こっちが、私の兄の・・・」
「勇磨(ゆうま)。御門勇磨だ。よろしく、エヴァちゃん、茶々丸さん」
「そこっ、馴れ馴れしく呼ぶなっ!」
「よろしくお願いします」

いきなり”ちゃん付け”な勇磨に対し、激昂するエヴァ。
対して茶々丸は、丁寧に名乗り返していたりする。

「あ、ところで」

思い出したように、勇磨が尋ねる。

「ここは、どこなの?」
「ここか? ここは・・・」

答えるエヴァ。
どことなく、誇っているようにも、言うことがうれしそうにも見えた。

「『麻帆良学園』だ」

 

 

 

 

2時間目に続く

 

 

 

 

 

 

 

 

<あとがき>

シルフェニアの皆様、はじめまして。
三流SS書きの昭和と申す者でございます。

このたび、このようなものを受け入れていただきました。
管理人の黒い鳩様には御礼申し上げます。

さて、お察しの通り、これはネギまの世界を使った、オリキャラ主体の物語です。
ただ単に、私の作ったキャラが、ネギまの中で動くのを見たかった、という
短絡的な動機のもとに書き綴ったものです。

こんなものでも許容できるという皆様には、末永いお付き合いをよろしくお願いいたします。



感想は二話まとめてにさせて頂きます。


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