魔 法先生ネギま!

〜ある兄妹の乱入〜

9時間目 「美少女剣士とスナイパーの襲撃」

 

 

 

 

 

 

朝。

「ふわ・・・・・・ぅ・・・」

登校中の御門兄妹。
昨日も見た光景に、環は呆れながら問う。

「兄さん。人目を気にしているんではなかったんですか?」
「いや、もう諦めた」

勇磨は、あくびによって出てきた涙を拭きながら、あっけらかんと答えた。
たったの1日で随分な変わりようである。

「もう悟ったわけよ・・・。結局はここに通い続けるわけだから、気にしても無駄ってな。
 ならもうすっぱりと諦めて、飾らないことにした。幻滅するならしちくり、ご勝手に〜」
「はあ、そうですか」

そう言いながらも、あくびを連発している。
まあ、周囲の騒ぎはどうせ一過性であろうし、気にしてもしょうがないといえばしょうがない。

だが・・・

(・・・でも、みっともない真似はやめてくださいよ)

はあっと、ここに来てからもう何回目、何十回目だかのため息をつく環。
生まれてこのかただと、下手をすると、万にまで届いてしまうのではなかろうか。

注意したいのは山々なのだが、言っても聞かないのが我が兄。
あーだこーだと屁理屈をこねられて、結局は、またため息をつくことになるのだ。

だから最近では、お小言を言うにも考えるようになってしまった。

(やれやれ・・・)

ふぅ、と息を吐く。
なんにせよ、どちらでも変わらないではないか。

ならば、言ったほうが言えるだけマシ。

「兄さ――」
「・・・!」

言おうとした瞬間。
異変を悟り声を切る。勇磨も気付いたようだ。

「・・・・・・兄さん」
「わかってる」

その場に立ち止まり、今度は小声で話しかける。
頷く勇磨。

慎重に周囲を探った。

「・・・・・・殺気」
「学園のど真ん中で。どこのどちらさんかな?」
「さあ、どこのどなたでしょうか」

どこの誰かのものはわからない。
が、殺気は明確に、自分たちに向けて放たれているものだとわかった。

「ふむ。宣戦布告、というわけかな?」
「舐めた真似を・・・」

話しつつ、2人はすでに正確に、殺気の放出源を特定している。
後方200メートル。まだ駅舎の中か。

数は、ふたつ。
あやかしの気配は感じない。

学園内部に、自分たちに敵意を持つ人間がいる、ということである。

「学園長かな?」
「違うでしょう。あの方なら、こんな回りくどいやり方はしないはず。
 それに、私たちは彼に雇われている身の上ですし、裏切るような真似をした覚えもありません。
 と、なると・・・」
「やれやれ」

思い浮かぶ可能性は、ひとつだけ。

クラスの教室に入った瞬間から、わかっていた。
表向きは穏やかだが、自分たちに向けられる確かな敵意。そして、好奇心。

「また厄介なことになりそうですね」
「勘弁して欲しいけど、無理だよな」
「はい。まさか、人目のあるところで襲い掛かってくるとも思えませんが・・・・・・どうします?」
「う〜ん・・・」

この場で戦う、周囲に正体がバレる。
それは、こちらにとっても向こうにとっても、本意ではないはず。

授業をサボる覚悟で、どこかひとけの無い場所へ誘導するか?
もしくは、向こうから誘ってくれるのか?

考えあぐねていると

「おーいっ」
「みっかどく〜ん、みっかどさ〜ん♪」

呼ばれる声が。
仕方なく振り返ってみると、数人のクラスメイトたちが、こちらに走ってくるところだった。

その姿を認めるのと同時に、殺気は消える。

(・・・後で考えよう)
(はい)

兄妹はサッと目を合わせ、それだけで意志の疎通は完了した。

「おっはよー!」
「どうしたの? こんなことろで立ち止まっちゃって?」
「いえ、おはようございます」
「ああ、おはよう。えっと・・・」

険しかった表情を、パッと日常の顔に戻すが。

咄嗟に名前が出てこない。
なにせ転入したばかりだ。顔と名前が一致しない。
その名前すら怪しい。

「裕奈だよ、明石裕奈。ゆーな、でいいからね♪」
「私、佐々木まき絵〜♪」
「私は柿崎美砂♪」
「椎名桜子だよーん♪」
「あ、釘宮円です」

空気を読んだのか、先に名乗り出てくれる女の子たち。
さらに数人がいるが、彼女たちは、照れているのか戸惑っているのか、
進んで名乗ろうとはしなかった。

見かねた裕奈とまき絵がけしかける。

「ほらっ亜子、アキラっ」
「おしゃべりできる、仲良くなれるチャンスチャンス♪」

「うわっ」

背中をバンッと叩かれて、薄い紫色のショートヘアの少女と、
長身で髪をポニーテールにした少女が押し出された。

「え、えっと、あのそのっ・・・!」
「・・・・・・・・・」

しかし、ショートヘアの少女はあたふたするばかり。
ポニーテール少女のほうは、目を逸らして無言のまま。

「あー・・・」
「・・・・・・」

これでは、御門兄妹も反応に困る。

「え、ええと、えーとえーとっ!」

そのままの状態で居ること数秒。
あたふたしていた少女、和泉亜子は、ついに勇気を出して行動した。

「う、ウチ、和泉亜子いいますっ! よろしゅうっ!」
「あ、う、うん、よろしく」
「よろしくお願いします、和泉さん」

が、あまりに大声だったので、御門兄妹もビックリしながら返す。
周りは、「よくやった亜子ー!」と、褒め称えている。

「・・・・・・」

「・・・えーと?」
「あなたは・・・・・・・・・大河内さん、でしたね?」

さて、残るはこちらの長身の水泳少女、大河内アキラである。
環に尋ねられ、アキラは小さく頷いて。

「その・・・・・・お、大河内アキラです。よ、よろしく、お願いします」
「ああいや、こちらこそよろしく・・・」
「ご丁寧にどうも・・・」

アキラも精一杯がんばって、ぺこっと頭を下げた。
つられて勇磨と環も頭を下げる。

「あーもー硬いなー! 硬い硬い〜!」
「ほらっ、リラックスリラックス♪」
「お互いに頭を下げあうなんて、どこのコントかな〜♪」

本人たちをさて置いて、周囲は再び大盛り上がり。

「朝から凄いテンションだ・・・」
「アスナさんから聞いてはいましたが、これほどとは・・・」

御門兄妹は、とてもついていけない。
苦笑を浮かべるしかなかった。

「あ、そうだそうだ。御門さんって、運動得意なんだよね?」
「環、でいいですよ裕奈さん」

きゃいきゃいと話は続く。

「得意かと聞かれれば、まあ得意ですけど。
 自己紹介のときに申したとおり、身体を動かすのは好きですよ」
「じゃあ、バスケ部に入らない?」
「は? バスケットボール、ですか?」
「そう! 一緒にバスケやらない?」

前置きも何も無い、いきなりの誘い。
環は驚くのと同時に、戸惑った。

「ゆーな、さっそく勧誘〜?」
「やっぱりやったー」
「そういえば、最初のときになんか叫んでたっけ〜」

級友たちは見越していたようである。

「実は、うちのバスケ部って超弱くてさ〜。助っ人に入ってくれないかな〜、なんて」
「はあ」

「でもでも、ゆーな。環さん、何か持ってるよ?」
「あ、ほんとだ。桜咲さんと同じ・・・」

視線が、環が、もちろん勇磨も持っている荷物に集まる。
カバンとは別物の、細長い形状の物体。

「ってことは、それって、竹刀入れ?」
「はい」

クラスメイトに剣道部がいるので、よくわかった。
頷く環。

「あちゃー、先約があったかぁ。一押しの人材だと思ったのに〜」
「ゆーな、残念」

「あの、みなさん」

どうやら、これを持っているだけで、剣道部への入部を疑われなかったらしい。
勘違いなので、環は訂正する。

「確かにこれは竹刀入れですけど、別に、剣道部に入っているわけではありませんから。
 入部するつもりもありませんよ」
「え? そうなの?」
「じゃあなんで、そんなものを?」
「まあ、なんと言いますか・・・」

本当のことは言えない。
中身も竹刀ではないし、適当にごまかさなければ。

「生まれが剣の家だったもので。もう肌身離さず持ち歩いている、身体の一部のようなものなんです」
「へー、そうなんだ〜」
「剣道できるの? 強いんだ?」
「まあ、多少は」

これでも再び、うわーっと盛り上がる。
女子中生のパワーは侮れない。

(ついてけねえや。南無、環。骨は拾ってやるぞ)

たはは、と笑いつつ、勇磨は囲まれてしまっている妹に同情した。
心中で密かに合掌する。

「桜咲さんとどっちが強いかな〜?」
「それよりもー。ってことは、まだどこにも入ってないってことだよね? バスケ部に来てよ!」
「で、ですが、バスケの経験など、数えるほどしか・・・」
「大丈夫大丈夫! イチから教えてあげるからさ!」
「え、や、その・・・」

勇磨が懸念したとおり、裕奈からの強引な誘いを、環は断れない。
せっかく誘っていただいているのに、と無下に出来なかった。

押し問答が続いていると

「あら? どうしました皆さん、おそろいで」

クラス委員長、雪広あやかが登場。

「急がないと、遅刻しますわよ」
「え? あ、ホントだ」

これがきっかけとなって、話がお流れとなり。
集団になって教室への歩みを再開する。

「御門さんがた。この学園には、もう慣れましたか?」

途中、委員長らしい配慮で、あやかが言う。

「何かあれば、遠慮なく仰ってくださいね」
「ああ、ありがとう」
「そのときはお世話になります」

「いいんちょ、ポイント稼ぎ?」
「なっ!? そんなつもりではありません! 私は純粋に、クラス委員長として・・・!」
「はいはい」
「冗談だからー、怒らないでいいんちょ♪」

重ねて思うが、本当に騒がしいクラス。
アスナが嘆いていたことも、わかってきた。

「なーに朝から騒いでるのよ、いいんちょ」
「なんや? みんな揃うて、楽しそうやな〜♪」

さらには、アスナとこのかも合流して。
ますます手がつけられなくなるのだった。

 

 

そして、そんな光景を遠巻きに、駅のホームの壁にある窓から、覗き見ている人物が2人。

「さすがだな。こんなわずかな殺気でも気付いたか」
「・・・・・・」

長身で長髪の少女が、小柄で髪を横で結わえた少女に向かって言う。

「で、だ。まだ考えは変わらないのか?」
「無論だ。彼らが何者なのか、そして・・・」

尋ねられた小柄な少女。
手にしている竹刀入れを握る手に力を込める。

「お嬢様にあだなす存在なのかどうか、見極めなければ」
「やれやれ。難儀だな、おまえも」
「報酬は払う。今さら降りるとは言わさんぞ」
「わかってるよ。あの2人には私も興味がある。とはいえあまり気は進まんが、協力してやる」

なにやら物騒な会話。

「さて、そろそろ行かねば。遅刻するぞ」
「・・・ああ」

 

 

 

 

 

 

放課後。

「・・・環」
「ええ」

「あ、御門君たち帰るの?」
「じゃあね〜」
「また明日〜♪」

今朝のことで、仲良くなったクラスメイトに和やかに見送られ。
彼女たちに笑顔を返しつつ、胸の内ではまったく異なった感情を持ちながら、
御門兄妹は教室を後にした。

「・・・む」

校舎外に出ると、さっそく殺気が降ってくる。
だが、これは・・・

「誘われている、か」
「そのようですね」

こちらを挑発するようなもの。

「どうする?」
「行きましょう」

決断する。

「どのみち、決着はつけないといけませんし。
 こうして誘き寄せるからには、向こうのほうで手は打ってくれているでしょう」

人に見られるのはまずい。
それは向こうも同じはずで、舞台は整えていてくれているのだろう。

「わかった。行こう」
「はい」

導かれるままに、歩みを進める。

そうして辿り着いたのは、広場のような場所だった。

「セオリー通りだな」
「捻りも何もありませんね」

苦笑する。

周囲が開けた場所に誘い出す、兵法の常套。
これで、360度、どこから襲い掛かられても不思議ではないわけだ。

「出向いてきてやったんです。姿を見せなさい」

環が声をかける。
直後の出来事。

「ふっ!」

勇磨が行動を起こした。

持っていた竹刀入れから素早く中身を取り出す。
出てきたのはひとふりの日本刀。
超人的な反応で左手に鞘を持ち、右手は柄にかけて、”それ”が飛んできた方向へ向けて抜刀一閃。

コンッ、カラカラカラ・・・

真っ二つになった”それ”が、飛んできた運動エネルギーによって、
勇磨の後方に落下した以降も転がっていく。

「ゴム製の模擬弾ですね。味な真似をしてくれます」
「ゴム弾でも、当たり所が悪かったら大怪我だぞ。なに考えてんだ」

飛んできた物体の正体を確認した環が、馬鹿にしたように言い。
やや気分を害して、勇磨も吐き捨てるように言った。

・・・いや、それよりも。

「この学園には、ゴ○ゴ13でもいるのかね?」

”狙撃”された、という事実。

「笑えない冗談だな」
「ですが、700歳の吸血鬼がいる学園です。何があっても、不思議ではありませんよ」
「言えてるな」

くっくと笑って。

「いい加減に出てきなさい!」

痺れを切らした環が叫んだ。
すると、その声に応じたわけではないのだろうが

「・・・・・・」

「やっと出てきましたか」

スタッと、2人の前に、1人の少女が姿を現した。

予想外の不意討ちに、環はかなり頭にきているようで。
フンッとばかり、見下すような視線と声を突きつけた。

「隠れてコソコソと。今朝の殺気もあなたですね? いったい何の真似ですか」
「言いたいことがあるんなら、はっきりとどうぞ。ねえ?」

勇磨も、怒ってこそいないが、厳しい目つきで。

「桜咲刹那、さん?」
「・・・・・・」

2人の前に出てきたのは、紛れも無く。
クラスメイトである、桜咲刹那だった。

刹那は2人を見据えたまま、着地したままだった体勢を起こし、スッと大刀を構える。

「俺たちと戦うつもり・・・かな?」
「返答次第では、そうなる」
「なぜ? 君に狙われるような心当たりなんて、はっきり言って無いんだけど」

低い声で答えた刹那。
いつでも戦闘に移行できる態勢は取ったまま。

「・・・・・・」

勇磨の質問に、刹那は答えない。
やれやれと肩をすくめる勇磨。

「で? 俺たちが答えを渋る、またはウソをついたら、潜んでるもう1人の相方によってズドン! かい?」
「龍宮に頼んだのは、最初の1発だけだ。安心しろ」
「・・・龍宮さんか」
「妙な雰囲気はありましたけど、あの方も、”そういう”人間ですか」

スナイパーの正体判明。
妖しい気配を感じてはいたが、またもやクラスメイトというだけあって、少なくない衝撃だった。

「それで? 俺たちに何を聞きたいわけ?」
「単刀直入に聞く」
「うん」

刹那の意図とは?

「貴様らは何者だ? なんの目的で麻帆良にやってきた。吐け」
「あー・・・」
「別にどうでもいいでしょう」

振り出しに戻ってしまったかのような質問だった。
勇磨がどう答えるか思案していると、環は冷たい声で言い放つ。

「あなたには関係の無いことです。なぜあなたに教えねばならないのですか」
「そうか。では、斬る!」
「待った待った!」

一触即発。いや、止めなければ戦闘になっていた。
慌てて割って入る勇磨。

「桜咲さん。信じてもらえないかもしれないが、俺たちは本当に、君と敵対する意志など無い。
 環。おまえももう少し言葉を選べ」
「・・・・・・」
「・・・申し訳ありません」

信じてくれたのかどうか。とりあえず、動きを止める刹那。
しぶしぶながら矛を収める環。

「あのさ、俺たちはただの――」
「転校生だ、などと抜かしたら、その瞬間に斬る!」
「・・・言わせてくれてもいいじゃないか」

お決まりのセリフ。
途中で遮られて、勇磨は、よよよと肩を落とした。

「ふざけていないで、さっさと話せ!」
「別にふざけているつもりは無いんだけどね・・・」
「貴様らは、お嬢様を狙う刺客ではないのか!?」
「お嬢様? 誰?」
「このかお嬢様に決まっている!」

白々しいとばかりに、刹那は叫んだ。

お嬢様。このかが? このかがお嬢様?
ああ確かに、学園長の孫なら、”お嬢様”と云われることも不思議じゃないか。
魔法界の対立云々の話も聞いていたので、物騒な話もありえるか。

瞬間的にそう理解できたが、腑に落ちない点がひとつ。

「あのさ。どうして俺たちが刺客だと思うわけ?」
「この不自然な時期の編入。男子の女子部への編入。そしてその腕前。疑えばキリが無い」
「あなたっ――」
「環」

そう言われてみれば、怪しげな点は満載ではある。
しかし、まったくの言いがかりであるわけで、環が激昂しそうになったが、
先んじて勇磨が止めた。再びしぶしぶ引き下がる環。

そして勇磨は、温和な笑顔で話しかける。

「桜咲さん。それ、まったくの逆だわ」
「なに?」

ピクッと、刹那の眉が震えた。
それほど意外な言葉だったといえよう。

「だって俺たち、学園長から、このかの護衛を頼まれたんだから」
「な・・・!?」

今度こそ、刹那の顔は驚きで染まった。

 

 

 

 

「・・・驚いたな」

麻帆良のゴ○ゴ13・・・もとい。
3−A出席番号18番・龍宮真名は、スコープを覗きながら呟いた。

スコープのレンズ越しに見た、驚くべき光景。

「避けるだろうとは思っていたが、あんな避け方をされるとは思わなかった」

まさか、一刀のもと、両断されてしまうとは。

「認識を改めねばなるまいな」

無論、上方に。
評価はしていたつもりだったが、想像以上だったらしい。

「さて刹那、依頼は完了した。私は降ろさせてもらうよ。
 どっちみち、これ以上この件に付き合うのは、正直言ってゾッとしないからな」

そう言って、真名はもう1度、広場の方向を見やって。

「御門兄妹か。ヤツラの本気はまだまだこんなものじゃない。
 ふふ、面白いヤツラが転入してきたものだ」

姿を消した。

 

そしてもう1人。
付近の木の上で気配を消し、この様子を見ていた者がいる。

「やはり、思った通りでござったか。ニンニン♪」

それだけ言って、同様に姿を消した。

 

 

 

 

一方、広場では。

「もももももっ、申し訳ありませんっっ!!」

刹那が平謝りしていた。

「こちらの早とちりでした! まままさか、学園長がじきじきに依頼されていた方だとはっ・・・!」

事情を聞かされた刹那。(無論、ややこしくなるので、異世界云々は省いた)
途端に顔を真っ赤にして、自分の勘違いだったことに気づき、頭を下げまくっているのだ。

「あー、もういいよ」
「で、ですが・・・! ああっ、私はいったいなんてことをっ!」

勇磨がもういいと言っても、刹那は収まらない。

「そうですね。とんでもなく大迷惑を被りました」
「ごごごごめんなさいーっ!」
「どう落とし前つけていただきましょうかね?」

さらに、環が感情を押し殺した声でこんなことを言うものだから、
刹那の顔はみるみる青くなっていく。

「環。意地悪なこと言うなよ」
「コレくらい言っておかないと、気が晴れません」
「やれやれ・・・」

「え・・・?」

だが、無表情だった環が、ふっと表情を緩め。
刹那はぽかんとする。

「冗談です。いくら私でも、そこまでは言いませんよ」
「はぅ・・・」

へなへなと、その場にへたり込んでしまう刹那。
よほどのプレッシャーを感じたのか。

「ははは。桜咲さんて、クールなキャラだと思ってたけど、実は違うの?」
「そっ、それはっ・・・!」
「っくくく。いいよ、よくわかったから」
「〜〜ッ・・・! 兄妹そろって、意地悪ですね・・・」

込み上げてくる笑いを堪えきれない勇磨。
刹那の表向きな性格を、数日とはいえ見ているだけに、おかしくてたまらなかった。

「でも、そうですか。あなたも、学園長が仰っていた、このかさんの護衛の1人ですか」
「え、ええ、まあ」
「そのわりには、このかさんとの接触を避けているように見えますが?」
「・・・・・・」

環の指摘は正しかった。
わずか数日の間でも、このかのほうは普通なのに、刹那のほうがわざと姿を消しているようなことがあった。

刹那が俯いて押し黙ってしまったことでも、事実だとわかる。

「まあ、詮索するのはやめておきます。
 あなたにも事情がおありになるんでしょうし、仕事のことは他言無用ですしね」
「・・・助かります」

環がそう言うと、刹那は本当に辛そうな声で答えた。

「私は、遠巻きにお嬢様をお守りできれば、それでいいんです・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」

影が差してしまう刹那を、勇磨も環も、何も言えずに見守って。

「まっ、これで無罪放免ということで」
「あ・・・その、本当にすみませんでした」
「いいってば。同じ仕事仲間、なによりクラスメイトとして、これからよろしく頼むよ。桜咲さん」
「あ、はい、御門さん」

握手を交わす両者。
と、手が触れる直前で、勇磨は自分の手を引いてしまった。

「・・・え?」
「勇磨、でいいよ」
「はい?」
「俺も環も”御門”だから。名前で呼んでもらったほうがわかりやすい」
「はあ」
「そのほうがうれしくもあるしね」
「わ、わかりました」

今度こそ握手。
もちろん、環とも握手を交わした。

「で、では私のほうも、”刹那”で結構です」
「了解」
「それでは、刹那さん、と」

大変な目に遭ったが。
仕事仲間、クラスメイトと親睦を図れたことは、素直に良かったか。

「修学旅行、何事も無ければいいな」
「・・・そうですね」

笑顔でそう言って、別れた。

 

 

 

 

10時間目へ続く

 

 

 

 

 

 

 

 

<あとがき>

タイトルで話の内容一発でわかる。(汗)

まあ、衝突は避けられないでしょうから。
この頃の刹那なら特に。

それにしても、修学旅行に入れるのはいつだろう・・・
旅行前に、解決しておきたいのがもう1人いますしね・・・

旅行前の数日が、いやに濃いものになっております。(汗)

 

 

以下、Web拍手返信です。
拍手していただいている皆様、本当にありがとうございます!

 

>連日更新お疲れ様です、次も楽しみにしています

本当にもう感謝感謝です。
そろそろ息切れしそうですけどね・・・

>ネギくん存在感薄いスね

まあ、オリキャラ中心のお話ですので、ある程度は仕方ないかと。
とはいえ、原作での活躍シーンは、それなりに盛り込もうと思ってます。



火焔煉獄さんに代理感想を依頼しました♪


 え〜黒い鳩 先生のご都合により、代理感想を請け負いました火焔煉獄です。

 けっこう電波なアレですが、あまりキニシナイでください。いやほんと。

 

 ま、そんな戯れ言はおいといて、感想いきます。

 相変わらずテンポも良くて読みやすいです。

 話が進まないのは……まあ、丸めてどっかにポイして流しちゃえばいいんですよ。

 そして朝から遭遇するハイテンションな中学生、それに翻弄される勇磨君&環嬢。

 いいですね、こういうほのぼのとしたノリ。

 うらやましいですよ(真っ黒)

 

 げふん、それはともかくまだまだ落とす予感がしますね〜勇磨君。いわゆるラブ臭全開ですね〜。

 ハーレムルートへまっしぐらですね〜(ぉ

 刹那との誤解も解けて、ゴ○ゴ13やら忍び娘も興味津々なようで。

 ますます楽しみですよ。どこまでイってくれるのかね(ニヤソ



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