魔 法先生ネギま!

〜ある兄妹の乱入〜

15時間目 「嵐の修学旅行! そのご」

 

 

 

 

 

 

修学旅行2日目。
旅館の大広間にて、みんな揃っての朝食タイム。

「ふあ〜・・・・・・眠い・・・」
「兄さん。大あくびはやめてください、大あくびは・・・」

御門兄妹も、並んで朝食を取っている。

「眠いんだからしょうがないだろ。あんなこともあったわけだしさー」
「そうですけど・・・」

「あはは。実は僕も少し眠いです」

隣にはネギの姿もある。
ゆうべはあのあとも見回りをしていたので、睡眠は不足気味だ。

「ネギくん。ゆう君とたまちゃんも眠そやなー♪」

そこへやってくるこのか。

「夕べはありがとな♪ なんやよーわからんけど、せっちゃんやアスナと一緒に、ウチを助けてくれて」
「い、いえ、僕はほとんど、刹那さんについていっただけで」
「無事でよかったよ」
「まあ、お気になさらず」

(細かいこと気にしない人で助かるぜ・・・)

それぞれ一言ずつ言葉を返して。
ネギの肩にいるカモも、このかの前では喋れないので、心中でそんなことを思う。

「・・・あ、せっちゃん♪」

「・・・!」

このかが刹那を見つけた。
ビクッと反応する刹那は、冷や汗をかきながら移動しようとする。

「あんっなんで!? 恥ずかしがらんと一緒に食べよー」
「・・・・・・」
「せっちゃん、なんで逃げるん〜〜〜〜〜?」
「刹那さーん」
「わ、私は別にー・・・」

それをこのかは追いかけるものだから、ネギも加わって、追いかけっこに発展してしまった。
周りは笑いに包まれる。

「はぁ、なにやってるんだか、あの2人は・・・」

味噌汁を飲みつつ、苦笑の勇磨。

「だけどまあ、現実問題として、あの関係はまずいよなあ」
「お互い好意があるだけに、微妙なところではありますが」

環も話に乗ってきた。

「刹那さんが吹っ切れば、すんなりいくでしょう」
「むーん。どうにかならないもんか」

そうこうしているうちに、朝食が終わって。

「でも、きのうはあのサル女を追い返せてよかったわね」
「あ、はい」

ネギとアスナが、並んで広間から出てくる。
背後には、御門兄妹も並んでいた。

「ですが、あの悪い女の人はまた来るかもしれないので、気をつけないと」
「あ、それについては大丈夫」
「え?」

勇磨から声が飛ぶ。
周囲を気にして、ボリュームを落としつつ。

「夕べの失敗を教訓にして、結界を強化しておいたから」
「呪符を使うのではなく、地脈に直接働きかける方式に変更しましたので、
 滅多なことでは破られません。旅館にいる間は安心していいですよ」

「そ、そうですかー」
「夕べも思ったけど、あんたたちもつくづく規格外よねー」

捕捉に入った環の説明を聞いて、驚くというよりは呆れのほうが大きい。
アスナの言葉は本音だろう。敵も味方もバケモノだと。

「特に環の、あの特大の炎はなんだったの?」
「ああ、あれはすごかったですねー。僕の魔法でも、ああはいきませんよ」
「・・・まあ」

しっかり見られていたか。
少し失敗したかと思いつつ、環はこう話す。

「魔法、のようなものですよ。少し違うんですが」
「へえ」
「勇磨君も使えるの? あんなの」
「いや、俺はほとんど剣だけ」
「ふーん」

使えても、もう今さらで驚かないけどねー、とアスナは笑う。

「それで、今日はどうしますか?」
「今日は奈良だったな。自由行動?」
「はい。まあ大勢でいれば、向こうも襲い掛かってはこれないでしょうし」

大雑把に、団体行動を取りつつこのかを守る、ということで一致。
同じ班にアスナがいるし、自分たちも、付かず離れずの位置で護衛に付いていれば・・・

「そういや、うちの班の自由行動はどうなってるんだ?」
「聞いてませんね」

ネギやアスナと別れた後、ふと思った。
自分たちが属する6班は、どういう予定で奈良を回るのか。

予定があるにしても、このかの護衛には付かないといけないから、外れることにはなるが・・・

「おい、御門勇磨」
「え? ああ、エヴァちゃん」

思案していると、エヴァから話しかけられる。

「今日の自由行動は約束どおり、私に付き合ってもらうぞ」
「あー、覚えてた?」
「もちろんだ」

きのうの、新幹線内での将棋勝負のこと。
無論、あそこから勇磨が巻き返せるわけはなく、見事に敗北を喫していたのだ。

「どのみち班行動だ。一緒に回ることにはなったんだがな」
「あー、エヴァちゃん。わかっているとは思うけど、俺たちは仕事が・・・」
「わからんヤツだな」

勇磨がたった今まで考えていたことを話そうとすると、
エヴァは片目を瞑り、半身になって勇磨を睨む。

「うちの班の班長は誰だ?」
「誰だっけ?」
「刹那さんですよ」

首を傾げる勇磨に、答えたのは環。

「そう、桜咲刹那だ。ヤツが班長だということは、必然的に、近衛このかの近くにいることになる」
「お・・・・・・おーおー」

確かに、と手を打つ勇磨。
逆に、エヴァはふんっとばかり、不機嫌そうに言うのだ。

「だが、四六時中、側に引っ付いている必要もあるまい。その・・・・・・少しは・・・・・・だな・・・・・・」
「わかった」
「・・・え?」

モジモジしながら、肝心なことは言いあぐねていたエヴァだったが。
勇磨からの承諾の声に、意外そうに聞き返す。

「可能な範囲で構わないね? それで勘弁して」
「・・・・・・」

お願いっ、と手を合わせられたエヴァは。

「・・・ふ、ふんっ! 今回はそれで勘弁してやる!」

くるっとそっぽを向いて、ぶっきらぼうに言い放つ。
顔がほのかに赤いのも気のせいではない。

「よかった、ありがとう」
「・・・! も、もういい!」

礼を言われるのは、これ以上ない追い討ちで。
エヴァは真っ赤になりながら行ってしまった。

従っていた茶々丸も、ぺこっと頭を下げて、エヴァについていく。

「なんだエヴァちゃん。やっぱ怒ったのかなぁ?」
「・・・どうでしょうね」

エヴァの本心を理解していないであろう兄の様子に。
妹は、なんというか、複雑な思いであったとか。

 

 

 

 

奈良公園。
人通りの中にも平気で出没している鹿に、クラス一同は大はしゃぎ。

「今のところ、おサルのお姉さんは来ませんねー」
「うーん」
「おそらく今日は大丈夫だと思いますが・・・」

少し離れて、ネギ、アスナ、刹那の3人が歩いている。

「奈良といえば大仏だな、大仏!」
「はいはい」
「エヴァンジェリンさん、浮かれてませんか?」
「マスター、うれしそうですね」

彼らの後ろに、御門兄妹とエヴァ、それに茶々丸がいる。

「念のため、各班に式神を放っておきました。何かあればわかります。
 このかお嬢様のことも、私が陰からしっかりお守りしますので・・・
 お二人、勇磨さんと環さんも、修学旅行を楽しんでください」

刹那はそう言い、振り返って御門兄妹にもそう告げる。
単純に疑問に思ったアスナは、こう尋ねた。

「なんで陰からなの?」
「・・・・・・」
「隣にいて、おしゃべりでもしながら守ればいーのに」
「いっいえ、私などがお嬢様と、気安くおしゃべりなどするわけには・・・」
「またもー。なに照れてんのよ桜咲さん」
「なっ、別に私は照れてなど!」

刹那の様子は相変わらずである。
これは少し荒療治が必要かと、勇磨がそう考えたときだった。

「班長の許可も下りたことだし、では行くぞ」
「・・・え? あ、ちょっとエヴァちゃん!?」

急に腕を取られ、引っ張られていく。
犯人はもちろんエヴァだった。

「早く来い、御門勇磨」
「わ、わかったから。手は離してくれないかな〜」

「・・・・・・はぁ」
「すみません、環さん」

連行されていく兄の姿を見ながら、環は深いため息をつく。
ぺこりと謝る茶々丸。

「マスターのあのようなお顔、見るのは本当に初めてで・・・。
 大切なお兄様だとは思いますが、もうしばらく、あのままにしておいてはいただけませんか?」
「・・・わかってますよ」

環は、もうひとつ息を吐いて。
しぶしぶだろうが承諾する。

「環さん。向こうに茶屋があるそうですので、一緒に参りませんか?」
「・・・そうですね。お付き合いしましょう」
「では、こちらへ」

こういうことで、環と茶々丸も列を離れ、残ったのはネギたち3人だけ。
そこへ・・・

(おっ、これは好都合! いくよゆえ!)
(合点です)

図書館探検部出動。
のどかの想いを遂げさせてやるため、特攻をかける。

「アスナアスナー! 一緒に大仏見よーよー!」
「へぶっ」

早乙女ハルナと綾瀬夕映、ダブルキックがアスナに決まった。

「せっちゃん! お団子買ってきたえ。一緒に食べへんー?」
「えっ・・・」

いつのまにやら、このかまで加わって。
それぞれを強引に引っ張っていく。

「あれ?」

気付いたら、ネギは1人になっていた。

「ああ、あのー。ネギせんせー・・・」
「あ、宮崎さん」

一大決心し、満を持してネギへと話しかけるのどか。
成り行き上、2人は一緒に見て回ることになり。

のどかの決意が実を結んだのかどうかは・・・

 

「ぼー・・・・・・・・・」

夕刻。
日程を終え、旅館に戻ってきたネギの様子を見れば、一目瞭然だった。

(み、宮崎さんに・・・・・・こ・・・告白されちゃった)

呆然とソファーに座り込み、焦点の合わない目で、中空を見つめるのみ。

帰ってきてからずっとこんな調子なので、心配したクラスのメンバー。
何かあったのかと尋ねてみたまでは良かった。

混乱しているネギは、「告られた」と自らカミングアウト。
大騒動に発展してしまう。

「これは・・・」
「彼女の出番だねっ」

事の真相を聞く前にネギに逃げられてしまった一同。
謎を謎のままにはしておけないと、ある人物に調査を願い出る。

「スクープあらば即参上! 朝倉和美にお任せあれ!」

それがこの人である。

朝倉は独自に調査を開始。
本人にも話を聞いておくかとネギを尾行して、決定的瞬間を目にしてしまうのだ。

車に轢かれそうになったネコを助けるため、ネギが魔法を使う場面を。
オコジョが喋る場面を。

これは超大スクープ!

俄然やる気を出した朝倉は、変装して風呂にまで忍び込み、ネギに迫った。
バラされると困るネギ。執拗な質問攻めに思わず号泣。

おかげで魔力暴走の煽りを喰い、痛い目に遭った朝倉だが。

「魔法使いは一筋縄じゃいかないわね」
「そんなことねーよ姉さん! アンタ、キラリと光るもん持ってるぜ!!」

カモにその能力を見出され。

カモと共謀し、ひと騒動起こすこととなる。

 

 

 

 

「ええ〜っ、魔法がばバレた〜!? しかも、あああの朝倉に〜〜〜っ!?」
「は、はい。ぐし・・・」

ネギは正直に白状した。
アスナから絶叫が上がる。

「し、仕方なかったんです・・・・・・人助けとか、ネコ助けとか・・・・・・」
「う〜ん。朝倉にバレるってことは、世界にバレるってことだよ〜〜〜」
「まったく・・・」

諦めムードのアスナ。刹那もむすっとしている。

「あの方は、そんなにすごいんですか?」
「そりゃあもう!」
「そ、そうですか」

つい尋ねてみた環だったが、アスナの剣幕に引いてしまう。
隣では、勇磨も苦笑している。

「もーダメだ。アンタ世界中に正体バレて、オコジョにされて強制送還だわ」
「そんな〜っ。一緒に弁護してくださいよ〜っ!」

「おーいネギ先生〜」
「ここにいたか兄貴ー♪」

とか何とか言っていると、当の本人、朝倉がやってきた。
カモを肩に乗せて。

「うわっ、あ、朝倉さん!?」
「ちょっと朝倉。あんまり子供イジメんじゃないわよー」
「イジメ? 何言ってんのよ」
「そうそう。このブンヤの姉さんは、俺らの味方なんだぜ」
「え・・・? 味方?」

唐突に何を言い出すのか。
固まったネギだったが、直後の朝倉の言葉に、両手を挙げて歓喜することになる。

「報道部突撃班・朝倉和美。カモっちの熱意にほだされて・・・
 ネギ先生の秘密を守るエージェントとして、協力していくことにしたよ。よろしくね♪」
「ほ、本当ですか!?」

今まで撮られた写真も返してもらい、大喜びのネギ。
アスナは呆れながらも、ネギの心配事が減ったことを一緒に喜ぶが。

「なんか無意味に、秘密を知るものが増えていってるような気がするなー」
「兄さん。それはツッコんではいけないところです」

御門兄妹にしてみると、あまり歓迎すべきことではなかったり。
秘密を知るものが増えれば増えるほど動きづらくなるし、なにより一般人なのだ。
足を引っ張られる、といった状況も想定せねばならなくなる。

「あらら? 御門君たちもいるってコトは、なに? あんたらもそーなの?」
「まあね」
「ネギ先生と同様、他言無用でお願いします」
「ほっほー、そういうことだったのかー。なるほどなるほど」

なにやら理解した朝倉。
この場はこれで散会となったが・・・

夜・・・

 

 

 

 

「名付けて、『くちびる争奪! 修学旅行でネギ先生とラブラブキッス大作戦』!!!」

各班からペアを選出し、ほかの先生による監視網を潜り抜け、旅館内のどこかにいるネギ先生の唇をゲット。
妨害はありだが武器は枕のみ。上位入賞者には、豪華商品をプレゼント!? という寸法である。

だが、それは表向きの話であって、カモと朝倉の真の狙いは、ネギとのキスで生じる仮契約カードの入手である。
そのために、すでに旅館の四方を魔法陣で固めてあるのだった。

ノリのいい3−Aの生徒たちは、即座に参加を決断。
本来は止めるべき立場の委員長あやかも、ネギとのキスというエサを目の前にぶら下げられ、
見事に懐柔されたのだった。

「ねーねー朝倉。対象はネギ君だけ?」
「え?」
「男の子、御門君もいるよねー?」
「お・・・」

「きゃーなにー!? あんた御門君ねらってるの!?」
「そ、そういうわけじゃないけどさー」

なにやら、話が微妙な方向に。
盛り上がる一同。

「まー、商品は保証できないけど、いいんじゃない? 個人のレベルならさ〜」

朝倉もこんなふうに言ったことで、ますます盛り上がる。
かしましい乙女たちにとっては、恋の話はなによりのスパイスなのだ。

(・・・・・・また馬鹿騒ぎを)

その様子を、廊下の影から見守っていた環。
結界を強化したとはいえ、昨夜のように絶対ということも無い。
念を入れて見回りをしていたのだが、おかげで、聞き捨てならないことを聞くことが出来た。

(兄さんも対象? ・・・これは由々しき事態です)

ぎゅっと、力を入れて拳を握る。
ほとんどはネギ狙いであろうから、勇磨を狙ってくる輩が何人出るのかわからないが・・・

不逞の輩に、ましてやゲーム感覚などで、兄の唇を奪われるわけにはいかない。

(断固、阻止します!!)

それだけは、確か。

 

 

 

 

教員部屋。
ネギの個室だったのだが、夜は勇磨の部屋でもある。

「はー、もうすぐ11時か。今日も大変だったなあ」
「おつかれさま、ネギ先生」

今も、ネギと勇磨の2人だけ。
布団の上でだら〜っとしていた。

先ほど、アスナと刹那が見回りを終えてやってきて、異常の無いことを報告していった。
現在は環が任に当たっているはず。

「俺もなんだか疲れたよ。ふわ〜・・・」
「あはは。勇磨さんもお疲れ様です」

大あくびの勇磨。
ゆうべのことがあって睡眠は不足気味だから、無理も無い。

「そういえば、相坂さんはどうしたんですか? 来ているんですよね?」
「ん〜・・・。そのへんをうろついてるんじゃないかなぁ〜・・・」

そう訊かれた勇磨は、荷物から位牌を取り出して、ネギの前に置く。
そして、のろのろと布団の中に入っていった。

「見るものすべてが新鮮だろうし、幽霊だから睡眠はいらないしねー」
「あ、そうなんですか」
「じゃ、俺は寝るねー。おやすみぃ・・・」
「あ、はい」

環が戻ってきたら起きるからー、と言って、勇磨はそのまま寝入ってしまった。
見回りは3時間交代だと決めたので、今のうちに寝ておかねば。

「もう寝ちゃった。寝付きがいい人なんだなー」

呑気に感想を漏らしていたネギだが。

「うぅ、なんだか変な殺気みたいなのを感じる・・・」

不意に、ブルブルッと妙な悪寒に襲われる。

「や、やっぱり僕も見回りに行こう。みんなにだけ任せるのもアレだし」

ネギ先生は10歳なんだからと、早く寝るように言われていた。
しかし、ここにいてはいけないような気がするのだ。

こんなとき、どうしてもとせがんで受け取った、これが役立つ。

「刹那さんにもらった、この『身代わりの紙型』を使って・・・」

万が一、他の先生が部屋を見回ってきたときも、これを使っておけば安心。
ネギは自分の名前を書くのに何回も失敗しながら、満足のいく1人を作り上げると、
「ここで寝ているように」命令して、部屋から出て行くのだった。

おそろしいゲームが始まっているとも知らずに・・・
そして、失敗して捨てていった紙型も、次々と擬人化していることも知らない・・・

 

 

 

 

さて、ラブラブキッス大作戦の模様だが・・・

他の者が遭遇し、潰し合いをしている隙に

「ゆ・・・ゆえ〜」
「なんですか、急ぎますよ」

5班の夕映・のどかコンビ。
旅館の外装まで利用する荒業で、端に位置するネギの部屋へと迫っていた。

あらかじめ鍵を外しておいた非常口から、再び内部へと戻り。

「まだ誰もいません。チャンスです。のどか」
「・・・う、うん」

案の定、廊下には誰の姿も無い。

――出し抜き成功!

そう思った瞬間

「ここをお通しするわけには参りません」

「・・・えっ」

2人の前に、長い髪の少女が立ちはだかった。

「みっ、御門さん!?」

環である。

「一応、お尋ねしておきますが・・・」

驚いて動けない2人に対し、環は凄んで見せて。
低い、抑揚の無い声で尋ねる。

「あなたたちの目的はなんです?」

「ゆ・・・・・・ゆえ〜・・・」
「・・・・・・」

夕映の背中に隠れるのどか。
その夕映も、瞬間的には怯んだが、ここで臆するわけにもいかない。

――ありったけの勇気を出して、告白した親友のために!

「ネギ先生です! ネギ先生とのどかを、キスさせることが目的です!」
「ゆっ、ゆえっ・・・!」

そう叫んだ夕映に、のどかは思い切り狼狽する。
そんな大きな声で、はっきり言わなくても・・・

だが、それが良かったのかどうか。

「そうですか。ではどうぞ」

「・・・へ?」

通さないと言っていた環が、すっと道を開けたのだ。
思わず目が点になる夕映とのどか。

「何をしているんですか? ここを通りたいのでしょう?
 早くしないと、他の班がやってきてしまいますよ」

「あ、あの・・・・・・訊いていいですか?」

この突然の態度変更は何なのか。
それも、まるっきり正反対へ。

「ネギ先生が目的ならば、私の関与することではありません。知ったこっちゃないです」
「そ・・・・・・そうですか」

しれっと言ってのける環に、夕映は呆然とする。
環にとっては、勇磨さえ守れればいいわけで、ネギのことは、本当に言った通りなのだ。

しかし、夕映にしてみれば、これは絶好のチャンス。

「のどか! 行くです!」
「あっ・・・」

どんっとのどかの背中を押して、部屋に入るよう促した。

ガタッ

と、天井から物音が。

「あっ、5班!?」
「しまった!」

「ふーちゃん、ふみちゃん〜〜〜〜!?」

天井の板が外されて、縄梯子を使って降りてくる小柄な少女が2人。
鳴滝姉妹、戦線突入。

「風香さん史伽さん! 私が相手です!」
「おのれゆえ吉!」

入り乱れての乱闘が始まる。
が、当ののどかは、あわわしたままで一向に部屋に入ろうとしない。

「たっ・・・環さん! 援護を・・・」

思わず、環に加勢を求める夕映だが

「鳴滝さん。あなたたちも、ネギ先生とのキスが目的ですか?」
「そうですー!」
「邪魔するなら、参加者以外でも容赦しないよー!」
「それなら邪魔などしません。思う存分どうぞ」

「が・・・!?」

あっけなく拒否されて、愕然となる。

「およっ、見つけたアルよ!」

さらに、2班代表の古菲と楓までやってきたものだから、さあ大変。
夕映は苦戦を免れない。

「古菲さん、長瀬さん。あなたたちの目的は?」

3度、環は同じことを尋ねる。

「そーアルね。ネギ坊主でもいいアルが、勇磨にも興味アルね! あれはかなりの腕前。強い男は好きアル!」
「あいあい。拙者は、まあ、秘密でござるよ♪」

古菲と楓の返答はこういうもの。
つまり、どちらが目的なのか、はっきりしなかった。

「兄さんという可能性もあると。ならば・・・」

「環さん!」

鳴滝姉妹に猛然と攻められ、苦戦中の夕映。
その表情が緩む。

「部屋へ入れるわけにはいきません! 私がお相手しましょう」

「おおっ、やるアルか!?」
「ニンニン♪」

どこに隠し持っていたのか、両手に枕を装備する環。
ルールを守っているあたり、律儀というか馬鹿正直だというか。

「環さん!」

チャンスと見た夕映は、力の限り叫んだ。

「貴女と私、のどか以外のものは通さないという点では同じ・・・。
 ここはひとつ、手を組みませんか!?」
「この場限りですが、同意しましょう」

同盟成立。

ある部屋でモニター中の朝倉も叫ぶ。

「おおっと、読書好き同盟成立かー!? これはラスボス風味! いったいどうなるっ!?」

観戦中の生徒たちはおおいに盛り上がり、戦闘はさらなる乱戦に突入する。

「環、覚悟するアルね!」
「甘い」
「さすがにやるアル!」

「拙者のことも忘れては困るでござる♪」
「楓さんこそ、私のことを忘れてますよ!」
「おお夕映殿」

「僕たちもいるぞー♪」
「や、やっちまえー、ですー!」

「あわわわわ・・・」

のどかはそれでも進めない。
乱闘の模様を眺めているだけ。

「のどかっ!」
「わっ」

再びのどかを押す夕映。
部屋のドアを開け、中へと押し込む。

「あ・・・」

ついに、のどかは室内へ。

「ね・・・・・・ネギせんせー・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

結末は・・・

「全員正座ッ!!」

ネギの偽物のおかげで、騒ぎはさらに大きくなって。
新田先生に見つかり、朝まで正座フルコース。

「・・・・・・不覚」
「な、なんで俺まで・・・・・・寝てただけなのに・・・・・・」

無論、環も一緒。
なぜだか、騒ぎに気付いて起き出してきた勇磨も捕まり、正座させられていた。

結局、得られた仮契約は、土壇場で事故によってキスが起きたのどかだけであり。
朝倉も捕まって、散々な夜となったのである。

 

 

 

 

16時間目へ続く

 

 

 

 

 

 

 

 

<あとがき>

ちょ、ちょっと中途半端かなー?
でも、これ以上は書けませんでした。ごめんなさい。

 



感想

本日はネギ君にキッスして仮契約カードをゲットしよう大作戦、のハズなんですが……

勇磨君も巻き込んでえらいお話になってますね〜

でも、ちょっと不思議に思うこともあります。

勇磨君は格好いいにしても、一応17歳くらいの男性です。

10歳程度のネギ君にキスするのとは訳が違うと思うのですが……

やっぱり、子供に対する場合なら親愛のキスですむでしょうが、勇磨君に対しては恋愛のキスになりますからね。

そんなお手軽でいいのか、仮契約とは関係ないんじゃ? とか気になってしまいます。

ノリのいい部分はあるにしても、彼女達も乙女なんですし、恥じらいが全く無いのは不思議かもしれませんね。

今後、そういう機微も見え隠れするともっといい作品になるのではないかと愚考します。


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