魔 法先生ネギま!

〜ある兄妹の乱入〜

19時間目 「嵐の修学旅行! そのきゅう」

 

 

 

 

 

 

結界を抜け出た一行は。
近くの平らな大岩の上で、飲み物を用意して休憩していた。

しかし、雰囲気は休憩という感じではない。

一緒に居るのどかに、魔法がバレてしまったことだけでなく。
環が結界内に残ったことも、一同に大きく影を落とす理由となっていた。

のどかは、ネギとの仮契約によって得られたアイテムの”本”を使うことによって、後を追ってきていた。
この本、相手の心の内を映し出すという不思議なもので、先ほどの小太郎との戦闘の際も、
小太郎の心中を映し出した本の内容をネギに伝えることで、優位を得ていたのだ。

「環さん、大丈夫かな・・・」
「だ、大丈夫よ!」

ネギがポツリとそう漏らすと、場の空気を改めるように、
アスナが努めて明るく声を出した。

「環って強いんでしょ? あんなガキ、すぐに叩きのめしちゃってるって!」
「・・・そうですね」

何事かを考えている様子だったネギ。
アスナからこう言われた後もしばらくは無言だったが、やがて表情を取り戻す。

(あーもー。何で私がこんな役回りを〜)

すっかりネギの保護者。
いや、今さらか・・・

アスナは自分に怒りつつ、自分に呆れた。そして諦めた。

「そ、それで・・・・・・えーと、あの・・・・・・その・・・・・・」

ネギの視線が、のどかへと向く。

「バ・・・バレちゃいましたね。黙っててすいません。秘密・・・だったので」
「いいえ。あの、前から薄々は・・・」
「えっ!?」

まさか、のどかにも。
本当に仰天するネギ。

のどかは、ネギが魔法使いであることを知っても、過剰に驚くことはせず。
むしろ、本の中だけだと思っていた世界に触れることが出来て、うれしい様子である。

(で、でもネギ。本屋ちゃんは巻き込まないんじゃなかったの?)
(は、はい。でも、ここまで知られちゃったら・・・)

最悪、記憶を消すという手段もあるが。
自分の生徒に無理やり、という真似はしたくなかった。

となれば・・・

「しかし、こいつは使い方によっちゃ、異常に強力なアイテムだぜ!」

カモが、のどかのアーティファクトを手に取りながら、こいつは重畳とばかりに叫ぶ。

「いや〜、強力なパートナーが仲間に入ってよかったぜ!」

「コラそこー! エロガモー!!」

勝手に話を進めるな、とアスナが猛る。
しかしどのみち、記憶を消さないのであれば、その方法しかないのであるが。

「まったくもー・・・。あー、ネギもホラ、血が止まってないじゃない」
「ホントにかすり傷ですから・・・」
「あ、せんせー。私、消毒液とバンソーコ持ってます」

よく転ぶので、と取り出したのどか。
ネギの治療を始める。

「お・・・」

その様子を見て、一瞬でも言葉を失うアスナ。
すかさずにカモが突っ込む。

「『可愛がってた弟が突然、女を連れてきて複雑な心境の姉』って顔だな姐さ――」
「何か言ったかしらエロガモ」
「はれも゛も゛っ!?」

何を言うか心外な。
カモの頬を引っ張るアスナである。

「本当ですね。同意しますよ」

「「っ!!」」

不意に背後から声が。
驚いて振り返ってみると

「本当に、微笑ましい光景ですこと」

「たっ、環っ!?」
「御門の姉さん!?」

ネギとのどかの様子を見て笑っている、環が立っていたのだ。
別れる前と、なんら変わらない格好で。

「宮崎さんは、ネギ先生に好意を寄せているそうですね? 朝倉さんから聞きました」

「い、いつのまに!?」
「っていうか姉さん! どうやって結界を抜いてきたんだ!?」

2人が驚いているのを知りつつも、環はのほほんと言ってのける。
ね? と笑顔を向けられると、アスナとカモもそうだと頷くしかない。

「あ、あれ? 環さん?」
「どうも、ネギ先生。ただいま戻りました」
「無事だったんですねよかったー!」

治療が終わったところで環の存在に気付いたネギ。
うれしそうにホッとしつつ、駆け寄った。

見たところ怪我も無いようだし、異変も感じられない。

「そ、それで、あの子は?」
「大丈夫、きちんと倒してきました。あと数時間は目覚めないでしょう」
「そ、そうですか」

さすがに、環の返答にポカーンとなる。
自分があれだけ苦戦した相手を、そんな簡単そうに。

(す、すごいなー環さん。僕もがんばらなきゃ!)

(あれだけの相手、しかも獣化したヤツに無傷で勝ったってのか?
 しかも結界を抜いて戻ってきて・・・。欲しい・・・・・・絶対に欲しい戦力だぜ姉さんよぉ!)

ネギは改めて闘志を燃やし。
カモは改めて、勧誘に目覚めるのだった。

「ネギ先生、お怪我は大丈夫ですか?」
「あ、はい。宮崎さんにも治療していただきましたしー」
「なるほど。ですが、ちょっと失礼」
「え? あ・・・」

環はそう言うと、ネギの眼前に手をかざした。
疑問に思っていると

パァ・・・

環の手が淡く光りだした。
そのことに驚いていると、今度は、身体が楽になってくるのと同時に、痛みが引いていく。

「環さん、これって・・・」
「心霊治療、そちら風に申せばヒーリング、でしょうか」
「ヒーリング・・・。治癒魔法の一種ですね」

環が持つ能力のひとつ。
さすがに自分の怪我までは治せないが、戦いの上では、絶対に必要な能力だ。

「いかがです、ネギ先生?」
「すごく楽になりました。もう痛まないくらいですよー」
「本当は、完治するまで続けたいんですけど」

いつまた、敵の襲撃があるかわからない。
そんな状況では、常に万全な状態にしておくのが第一。

「でも、宮崎さんの行為を無にしてしまうのもなんなので、ここらでやめておきますね」
「た、環さん」
「はぅぅ・・・」
「くすくす。本当に、微笑ましいくらいのお二人ですね」

せっかく勇気を出して、良い雰囲気の中で行なわれた治療だ。
それを台無しにしてしまうのは避けたいと、環は途中で手を離し、治療をやめた。

ネギものどかも、途端に真っ赤になる。
それを見た環は、やさしくおかしそうな笑みを見せた。

(治癒魔法まで・・・。こいつを逃す手はねえっ! どうにかできないものか・・・)

カモがなにやら企て始めたことは、言うまでも無い。

「それで、宮崎さん」
「は、はい」

環に見据えられたのどか。
ビクッと反応する。

「そんなに萎縮しなくてもいいですよ。取って食おうというわけではありませんから」
「は、はいー」

それでも、のどかはおっかなびっくりな対応だ。
まあ、彼女は元からこのような性格のようなので、無理に言ってもしょうがあるまい。

「ネギ先生から、お聞きになりましたか?」
「魔法・・・のことですか? はい・・・」

気を改めて尋ねると、肯定の返事。

「すぐにとは申しませんが、なるべく早く、身の振り方を決めたほうがいいですよ」
「・・・・・・はい」

重々しく頷くのどか。

なんとなくわかった。
自分が足を踏み込んだ世界は、架空でもなんでもない。見た以上に過酷な世界。

それを知った上で、知ってしまった以上、どうするべきなのか。
決めねばならない。

「まあとにかく」

コホン、とわざとらしく咳払い。

「先ほどの罠は潜り抜けましたので、本山まではもう少しでしょう」
「そ、そうですね環さん。では早速・・・」
「お待ちなさい」
「えぐっ」

聞くや否や、すぐに出発しそうになるネギを抑える。
タイミングが合わず、襟を掴む格好になってしまったので、ネギから苦しげな声が上がった。

「す、すいません。ですがネギ先生。あなたはどうしてそう拙速なのですか?」
「せ、拙速?」
「そうです。先ほど痛い目に遭っておきながら、まだおわかりになりませんか?」
「・・・あ」

さっきの罠のことだ、とわかった。
そのほかのことも、大まかにながら、環の言いたいことを理解する。

「私のヒーリングでだいたいは回復したにせよ、まだダメージは残っているはずです。
 これから向かおうとする場所は敵の総本山ですので、態勢は万全でなければなりません。
 わかりますね?」
「はい」

真剣な表情で頷くネギ。

「魔力のことはよくわかりませんが、それでもかなり消耗したはず。
 敵の襲撃も退けたことですし、まだしばらくは大丈夫でしょう。
 もう少し身体を休めておくべきです、ネギ先生」
「わかりました。それではお言葉に甘えて、横にならせてもらいますねー」

実際は、かなり厳しい状態だったに違いない。
横になる際に漏らした、よいしょ、という声がそれを物語っている。

ヒーリングで怪我は治るが、体力までは全快ともいかない。魔力はもっとそうだ。
ましてや10歳の子供。休息は必要である。

「宮崎さんに、膝枕でもしてもらってはいかがです?」
「え、あ・・・・・・た、環さん、それは・・・」
「はぅぅ・・・」
「ふふふ」

再び微笑ましい空気が流れる。
環も腰を下ろして、一息入れて空を見上げた。

(兄さんたちは、大丈夫でしょうか・・・)

自分たちに襲撃があったのならば、向こうにもあって然るべき。
思いを馳せる空は、青かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その勇磨たちはどうしていたか。

「はあ、ひぃっ」
「ひいっ、はあ」

ついてくるハルナや夕映の息が上がっている。
刹那に手を引かれているこのかもそうだった。

「せ、せっちゃん、どこ行くん? 足速いよぉー」
「ああっ。す、すいませんこのかお嬢様」

「な、なぜ・・・・・・いきなり・・・・・・マラソン大会に・・・?」
「ちょ、ちょっと桜咲さん・・・・・・何かあったのー!?」

悲鳴が上がる。
先ほどからずっと走り続けているのだから無理もない。

無論、理由が無いわけではない。
走って逃げねばならない事態に遭遇しているのだ。

シュッ、シュンッ

こちらに向けて、複数の何かが飛んでくる。
これは、刹那と勇磨が手分けして、仲間内に気付かれる前に手早く掴む。

(白昼堂々、街中で・・・)
(く・・・。学園では、お嬢様を直接巻き込まぬよう、お守りしていたのだが・・・)

その2人も、焦りを禁じえない。
このような強攻策に打って出てくるとは、予想の範疇を超えていたことは事実なのだから。

「あれ、ここってシネマ村じゃん!」

目指していたわけではないが、偶然、辿り着いてしまったようだ。

「何よ桜咲さん。シネマ村に来たかったんだ〜!?」

しかも、いい具合に勘違いしてくれている。

(シネマ村・・・・・・ここなら・・・・・・)
(OK)

瞬時にアイコンタクトの刹那と勇磨。
無関係の級友を巻き込むわけにはいかない。

「す、すいません早乙女さん綾瀬さん! わ、私、このか・・・さんと、一緒に行きたいんです!
 ここで別れましょう!」
「え!?」
「お嬢様、失礼!」

唖然としているハルナと夕映を置いて、刹那はこのかを抱え上げ。
シネマ村の塀を越えて、そのまま中に入っていってしまった。

「ど、どーゆーコトですか? つーかカネ払って入れです」
「うーん。女の子同士で・・・まさか? ねえ、御門君もそう思うよねえ?」

ハルナが同意を求めて隣を見るも。

「・・・って、いない!?」

勇磨も、そこにはいなかった。

 

 

 

 

シネマ村は、観光客などで賑っている。
これだけ人がいれば襲ってはこれまい。

「しかし、どうする?」
「ネギ先生たちが帰ってくるまで、時間を稼ぐのがいいかと」

勇磨とも中で落ち合って、方針を決める。
確かに、それが第一か。

親書さえ届けてしまえば、向こうが妨害してくる理由は無くなるのだから。

「せっちゃん、ゆう君〜♪」

「「はい? わあっ!?」」

話していたところへこのかから声をかけられたので、振り返ってみれば・・・
2人とも驚いた。

「お、お嬢様、その格好は!?」
「知らんの? そこの更衣所で、着物貸してくれるんえ」
「へえ」

このかは、綺麗な着物姿へと変貌を遂げていた。
昔風の傘を持って、まさしく『お姫様』という少女がそこにいる。

「えへへ、どうどう? せっちゃん、ゆう君」
「いや、そのっ・・・。もう、お、おキレイです・・・」
「うんうん。よく似合ってるよ」
「キャーーーーやったーーーー♪」

無邪気に喜ぶこのかに、刹那は思わず見惚れてしまった。

「ホレホレ。せっちゃんとゆう君も着替えよ♪ ウチが選んだげる〜〜〜」
「えっ、いえっお嬢様!」
「お、俺も?」

と、このかに引っ張られていった結果。

「なぜ私は、男物の扮装なのですか?」
「似合とるでせっちゃん♪」

刹那は、いわゆる新選組の隊服。
長い野太刀が不釣合いといえば不釣合いだが、服装的には、このかの言うとおりだ。

そして・・・

「・・・・・・あのさ」

勇磨は?

「なんで刹那さんは新選組なのに、俺は素浪人風なの?」

本人の言葉通り。
これといった特徴の無い、ごく普通の着物姿だった。

「まあ・・・・・・強いて言えば、坂本竜馬風に見えなくもないけど」
「そや〜。竜馬をイメージしたんやで〜。新選組と竜馬や〜♪」
「お、お嬢様・・・」
「あのさ・・・。新選組と坂本竜馬って、思想的に相容れない仲だって、わかってる?」

苦笑である。
まあ、服装のコンセプトがどうとかは些細な問題だ。

肝心なのは、このかを守ること。

(・・・さて刹那さん。俺は周りを見て回ってくるから、このかは頼む)
(え? あ、はい、わかりました)

近くには、1人が密着していれば充分だ。
ならば自分は見回りに出よう。

勇磨は小声で刹那にそう告げ、さらに

(せっかく2人きりになるんだから、がんばれ♪)
(ななっ!?)

励ましを入れておく。

(何をがんばれと!?)
(そりゃまあ、いろいろと?)
(なぜ疑問形なんですか!!)

途端に刹那は赤くなる。

そうそう。こういう反応をするなら、いっそ素直になってしまえばいいのに、と思うのだが。
手っ取り早くそうもいかないのが人の心なのだろう。

「このか。俺はちょっと行きたいところがあるから、これでね」
「えー、ゆう君行ってまうん? 一緒がええのに〜」
「それはまた次の機会ってコトで。今回は刹那さんと楽しんでよ。じゃね」

手を振って分かれ、独自の警戒へ。

2人きりになったこのかと刹那は。

「うわー、すごい美少年剣士とお姫様だー!」
「写真撮っていいですかー?」
「え?」
「ハーイ♪」

同じく修学旅行で来ているらしい女学生に、モデルさんに間違えられ。
写真を撮られているうちに、刹那も心がほぐれてくる。

(なんだか楽しいな・・・。思えば私はずっとずっと、お嬢様とこんな風に遊びたかった気がする・・・)

もう一歩か?

兎にも角にも、追ってシネマ村へと入ってきたハルナと夕映。
それに、先に来ていたらしい朝倉やあやかなどの匂いを嗅ぎつけた一行に
見守られながら、穏やかな時間が続くと思われた。

神鳴流を名乗る少女剣士・月詠が、馬車に乗って乱入してくるまでは。

 

 

 

 

見回りに出て行った勇磨。
周囲を警戒しつつ、シネマ村をそれなりに見ながら、歩く。

途中、その歩いている姿が様になりすぎていたのか。
やはりシネマ村の役者と間違えられ、ある一行に写真を撮られてしまったのはご愛嬌。

刀も抜いてと言われ、本気で焦った。
なぜなら、この姿だということで、竹刀袋に入れていたものを腰に下げていたから。
実はコレ、真剣なのだ。

写真をせがまれた人にも、ホンモノみたいと言われ、心中で本物ですと返したものである。

「いやー参った〜。・・・このへんは人通りが少ないな」

それはさて置き、歩いているうちに、あまり人のいない区画へ来てしまったようだ。
施設改善の余地アリ〜、とどうでもいいことを思いながら、路地の角を曲がる。

「・・・ん?」

そして気付く、不可思議なこと。

「水溜り?」

道の真ん中に水溜りがある。
思わず空を見上げた。

「晴れてるよな?」

結果、見事な青空が広がっていた。
雨など降っていないし、降るような兆候も無い。
少なくとも、朝からは降水は無いはずである。

「打ち水でもしたのか?」

となると、残る可能性は、人為的に水がまかれた、ということだけだ。
しかし、こんな道のど真ん中に、しかも左右に何も無いところへ打ち水など、明らかに変である。

「・・・・・・まあいいか」

あまり深く考えるようなことでもない。
思考をそこで打ち切って、濡れないよう、端を通り抜けようとする。

ギュンッ!

「・・・!」

その瞬間だった。
水溜りの中から、何かが弾けるようにして飛び出し、一直線に向かってくる。

いや、何かではなく、水そのもの。
水の矢。

「ていっ!」

驚きはしたものの、勇磨は慌てず騒がず、軌道を冷静に見極めて、
抜刀して斬り伏せた。

真っ二つにされた水の矢は、勢いを失って重力に従い落下。
水溜りへと戻っていく。

「・・・何者だ?」

「さすが、反応が早いね」

「む・・・」

訊くと、どうしたことか。
声が水溜りから聞こえるではないか。

すると、水溜りの中から、1人の少年が競りあがって姿を現した。
白い髪の、学生服を着た少年。

「君は何者? こちらのデータには無い、イレギュラーだ」
「こっちの質問に答えたら、答えてやるよ」

ふん、と一瞥をくれる。

「まあわかってるけどな。おまえも例の一味か」
「わかってるなら答える必要は無い。僕の質問に答えて」
「素直に言うと思うか?」
「思わないね」

少年がそう言うと、水溜りから何本もの水柱が立ち上がり。
先端は鋭く尖って、勇磨めがけて突撃を始める。

「こんなところでおっぱじめるのかよ!」

ひとけが無いとは言っても、シネマ村の中だ。
いつ、人目に触れるかわからない。

「イレギュラーは排除する。早いほどいい」
「そうかい。てえっ!」

再び納刀して、抜刀。
そのあとも素早い切り返しで、すべての水の矢を迎撃することも成功する。

しかし・・・

「無駄なことだよ」

「うっ!?」

少年がパチリと指を鳴らすと。
斬ったことで細かく舞っていた水の粒が、それぞれ空中に停止。
意思を持ったかのように動き出すと、一斉に勇磨へと迫った。

「うぐっ・・・」

さすがに、水の一粒一粒まで反応できない。
パチンコ玉ほどの大きさの水の粒でも、かなりの衝撃をもたらしてくれた。

(水を操る能力か・・・。ちっ、厄介なものを)

少年の能力を冷静に見極める。
水は変幻自在。使われようによっては、対処の仕方に悩むところだ。

「水は僕の味方。早く吐いちゃったほうが身のためだと思うよ」
「ふん、馬鹿にするな。そんな程度の水で何が出来る」

が、救いは、水溜り程度の水量しかないこと。
晴天であること。

これが雨中の戦いであったなら、早々にギブアップしたいところである。

「そう。じゃあ、思い知ってね」

再びパチンと指を鳴らす少年。
水溜りの中から、ウォーターウォールとでも呼ぶべき代物が起き上がった。

コレをまともに受けては、ものすごいダメージを受けるだろうが・・・
無論、受ける気など無い。

「御門真刀流奥義・・・」

ぼわっと、勇磨の周囲に青白いオーラが立ち上る。
霊力解放によるものだ。

起こした霊力を、愛刀に乗せ。

紅蓮ッ!!

乗せた霊力を炎に変換、突撃した。
直撃を受けた水壁は、瞬時のうちに沸騰し、音を立てて蒸発していく。

「水の弱点。蒸発させてしまえば使えない!」

気化してしまえば、もはや能力も何もないだろう。

「・・・なるほど、そんなことも出来るんだ」

水溜り自体が蒸発していく中、少年は顔色ひとつ変えずに呟いて。

「確かに、甘く見ていたのは僕のようだね。これで失礼するよ」
「・・・! 待て!」

出てきたときの逆再生を見るかのごとく、水の中に身体を埋めていく。
もちろん追おうとしたが

「いずれ、また」

「・・・くっ」

追いきる前に、完全に水の中へ入ってしまい。
その水も、自らが出した炎で蒸発しきってしまった。

ここにあった水溜りは、綺麗さっぱり、跡形も無く消滅。

「逃げられたか」

舌を打ちながら納刀する。
あの少年の力、まだまだあんなものではあるまい。

お互いに様子見だった、というところだろうか。

「・・・む?」

勇磨の目の前を1枚のお札が舞い、空中で焼失した。
結界符。

「なるほど」

頷く勇磨。
途中から人の姿がなくなったのは、結界のせいだったのか。

「勇磨さん! 勇磨さーん!」

「・・・ん?」

と、さよがなにやら叫びながら飛んでくる。

幾日か経って安定してきたためか、さよは前とさほど変わらない程度の行動半径を得た。
それどころか、勇磨の霊力もいくらか受けているので、数百メートル単位で動き回れるようになっている。

緊急の連絡係として、このかたちにつけておいたはずなのだが・・・
この様子では、何かあったか。

「どうした?」

「大変なんですぅ〜! なんか変な女の子が来て、近衛さんをかけて決闘だとかなんとか・・・」

「・・・そうか」

予想通り。
変な女の子? あのときの神鳴流の使い手か?

「わかった、ありがとう。危ないから、相坂さんは離れてて」

「は、はい」

「・・・さて」

勇磨は、さよにそう言い残すと。
来た道を急いで引き返していった。

 

 

 

 

20時間目へ続く

 

 

 

 

 

 

 

 

<あとがき>

勇磨と白い髪の少年の邂逅。
彼は、全開のエヴァでも倒しきれなかった相手ですからね。

激闘の予感です。



感想

襲撃編は舞台をシネマ村に移したみたいですね。

次は勇磨君の戦い、感じとしては連戦ですかね?

そうなるな、例の少年は近接戦闘のみとは言え私と互角に戦ったわけだしな。

最後に取っておくのが、お約束と言う物だろう。いや王道かな?

確かに、王道とお約束はほぼ同じですかね(汗)

今回は前哨戦といったところであろう。

それよりも、気になるのは次回の戦いよな。


そうですね、神鳴流のゴスロリ眼鏡娘か眼鏡猿女かと言った所でしょうね。

お話の流れを考えるなら、眼鏡猿女が妥当かな?

それはどうかな?

勇磨としても、眼鏡猿女では直接対決に不満もあろう。

あくまでこのかの力を得てこそ強かったというだけの存在だからな。

言い切りましたね(汗)

でも、確かにサルではたいした戦力にはならないでしょうね。

数は兎も角。

そう、その数だ、数がいれば刹那くらい足止めできよう?

同じ剣士同士でもあることだし、勇磨の相手はゴス眼鏡だろうよ。

ふむ、なるほど〜

しかし、ま、その辺りは昭和さんの決めることですし、次回を楽しみに待ちましょう。

それを言ってはおしまいだがな。

しかしな、一応忠告しておいてやるが、

感想がかけないからってこうやって誤魔化すのは良くないぞ?

ぐは!?



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