魔 法先生ネギま!

〜ある兄妹の乱入〜

30時間目 「楽しい部活見学 文科部編」

 

 

 

 

 

 

「それではこの辺で、文科系に行くでござるかな♪」

運動系のクラブをあらかた回り終えて、今度は文科系へ。
楓と鳴滝姉妹に先導されながら、また別の場所へと向かう。

「でも、文科系っていくつだったっけ? 百以上あるんでしょ?」
「とても、全部は見て回れませんね」
「安心するでござる。今日は、3−Aの生徒が所属しているクラブに限定するでござるよ」
「全部回ってたら、時間がいくらあっても足りないよ」
「それこそ、時間の無駄かもです」

御門兄妹の質問に、楓たちはこう答え。
目的地が見えてきた。

「あそこでござる」
「え? おお」
「なんと・・・」

その光景に、勇磨と環はビックリ。
いち学園内に、こんな景色が存在するとは。

「あの建物こそ、我が麻帆良学園名物のひとつ、通称”図書館島”でござるよ♪」
「あ、図書館なのか」
「湖に浮かぶ島の上に建っているとは、なんとも幻想的ですね」

橋を渡り、図書館の建物へと向かう間、簡単な説明を受ける。

それによると、創立は学園の創立と同時の明治時代中ごろ。
2度の大戦中、戦火を避けるため、世界中から様々な貴重書が集められたという。
蔵書数も世界最大級だとか。

「世界最大級・・・」

聞いているうちに、環の目が輝いてくる。
熱中するというほどではないにしろ、読書が趣味の身の上では、興味を惹かれるのだろう。

やがて橋を渡り終え、図書館の建物内へ。
しばし見て回っていると、これまたクラスメイトの顔を発見した。

「あれぇ? 御門君に御門さんじゃーん」

向こう側で真っ先に気付いたのは、メガネの彼女。
早乙女ハルナである。

「あ・・・・・・こ、こんにちは」
「どうもです」

ハルナの傍らに、ややオドオドしながら挨拶するのどか。
そして、読んでいた本からチラリと目を上げて挨拶の、夕映もいる。

彼女たち3人は、席に仲良く隣り合わせて腰掛け、なにやら読書中のようだった。

「どうしたの、放課後に出歩いてるなんて珍しい」
「何か調べ物でもあるですか?」
「あ、いや、そういうわけじゃなくて」

確かにハルナの言うとおり、部屋からは出ないことが多いので、意外だったのだろう。
夕映からも尋ねられると、勇磨は楓たちを示した。

「長瀬さんたちに言われてね。現在、部活見学中なんだ」
「そういうことでござるよ。お二人とも、よくご存じないということなので」
「ほっほーう。これまた珍しい組み合わせだと思ったけど、そんな事情が」

納得のハルナ。
のどかと夕映も受け入れる。

「そういえば、図書館に来たのはいいけど、ここはなんの部活なの?」
「ふふ、聞いて驚くなかれ!」
「は、はあ」

肝心な質問に、ハルナはメガネをくいっと指で上げながら、大々的に言った。

「”図書館探検部”よ!」
「図書館・・・」
「探検部・・・?」
「そう。ようこそ、我が図書館探検部へ! 歓迎するよ♪ ほら、のどかと夕映も何か言いなって」
「あ・・・・・・よ、ようこそです〜」
「冷やかしはお断りですよ」
「ゆ、ゆえ〜」

精一杯の笑みを向けるのどか。
直後の夕映の辛辣な物言いに、あわわと自制を促す。

「あの、探検って、どういう・・・?」
「見た感じ、大きくて広そうですけど、普通の図書館のように思えるのですが・・・。
 確かに、蔵書数は世界最大級だと伺いましたけど、大げさすぎやしませんか?」
「外見はそうだけど、甘い! 甘すぎるわ!」
「はい?」

再び、効果音が付随しそうなリアクションを取って、ハルナが叫ぶ。

「この図書館島を外見で判断しちゃダメ! とっても大きな、深いふか〜い秘密が眠ってるんだから!」
「は、はあ・・・」

「ハ、ハルナ〜・・・」
「いつものごとく、無駄にテンションが高いですねハルナは」

のどかの困惑はさらに深まり。
同じく、困ったものだと、夕映も苦笑した。

「いいですかお二人とも」

同様に困り果て、まったくわかってない御門兄妹を見かねて。
夕映が説明に乗り出した。

「仰るとおり、蔵書数こそ多いとはいえ、この図書館島は外から見る限りでは、何の変哲も無い図書館です。
 しかし、その蔵書数が次々と増えていった結果、何度も増改築を繰り返しています」
「増改築?」
「ですが、そのような形跡は・・・」
「ですから、外見ではわからないのです」

夕映はそう言いきって。
自分の足元を指差した。

「増改築は、地下に向かってなされていったのですから」
「え?」
「地下へ? それはなんとも・・・」

普通、増改築といえば、横、最大でも上へ向けてなされるものではないのだろうか?
それを地下とは・・・。余計に手間もかかるだろうし、予算も必要だろう。

「それも、繰り返し繰り返し、何度も行なわれました。その結果、
 現在では、地下何階まであるのか、どのような本が眠っているのか、その全容を知るものはいません」
「ええっ?」

再びの衝撃。
そんなことがあっていいものなのか。

「図書館島の全容を把握すべく、麻帆良大学の提唱で設立されたのが、”図書館探検部”です」
「は〜・・・」
「・・・壮大な活動目的なのですね」

ただただ圧倒されて、感心した声を上げるしかない勇磨。
環も、ただの読書クラブなんだろうと思っていた考えを改める。

「でも、私たち中学生は制限もつくので、主な活動は大学部の人たちがやっていますが。
 普段はこうして、普通に読書をしていることが多いです」
「ふーん」
「読書・・・・・・ですか」

勇磨は頷いただけだったが、環のほうは頷きながら、周囲にある膨大な本棚、本の山を見回す。
期待に満ちた視線だったので、夕映も気付いた。

「そういえば環さんは、読書がお好きだと」
「ええ。四六時中、というわけではありませんが、本は好きですよ」
「入部しませんか? あなたとなら、実りのある討論も出来そうな気がするです」

またしても勧誘された。
しかし、今度の場合は勇磨ではなく、環のほうである。

「おー、よく言った夕映! 勧誘に努めるたぁ部員の鑑だねぇ。
 あなたたち体力もありそうだし、考えてみれば、うってつけの人材だよ。
 入ってくれない?」

続けてハルナからも。
のどかも、前髪で表情は窺えないが、なんだかそわそわしている。

「ちょっと待った。あなたたちってことは、俺も含まれてるわけ?」
「ん? そうだけど? 仲すごく良さそうだし、兄妹一緒のほうがいいっしょ」
「ハルナ。いくら兄妹仲が良いからといって、同じ部活に入らなければならない、
 ということにはならないと思いますが」

「あの、さ・・・」

慌てて尋ねた勇磨。
ハルナと夕映がこう話す中、申し訳なさそうに告白する。

「自分で言うのもなんだけど、俺って、文字だらけの本を見てると、頭が痛くなってくるんだよね・・・」
「あー、いるいるそういう人。いるよねー」
「・・・・・・」

同意するハルナと、心中で「イメージ通りです」と毒づく夕映。

「その・・・・・・漫画はある?」
「あるにはあるですよ」
「漫画を読んでても怒られないなら、入ってもいいかな? あは、あははは」

乾いた笑みを浮かべるしかない勇磨。
大きなため息をついている環。苦笑のハルナ、のどか。
夕映は無言のままだが、おそらくは、また心の中で何か言っていることだろう。

「ほほぅ。ということは、つまり・・・」

苦笑していたハルナは、目の奥を光らせる。

「御門君は、漫画なら興味があるわけだね?」
「まあ、そうかな」
「それじゃあ、”漫研”のほうに来てよ。素人でも、最初から面倒見るからさ♪」
「や、あの・・・」

1人で話を進めるハルナに戸惑いつつ。
思ったことを素直に述べてみた。

「”漫研”って、早乙女さん漫才もするんだ。なんだか納得というか」
「違ーう! というか納得しないでよ!」
「漫画研究会のことですよ。ハルナは、そっちにも所属しているです」
「ハルナの絵、すごく綺麗なんですよー・・・」
「あ、な、なんだ、そっちか」

ハルナに笑いながら怒られ、夕映とのどかから指摘されて、ようやく勘違いに気付く。

「御門く〜ん? どこをどう納得したのか、詳しく教えて欲しいなぁ〜?」
「い、いやあの・・・・・・あはは・・・・・・」

そう言われても、感覚的なものだとしか言いようが無い。
再び苦笑するしかない勇磨である。

「まったく。そんなお約束のボケをかましてくれるなんて、
 御門君のほうが、よっぽどお笑い向きなんじゃないの?」
「あはははは・・・・・・・・・ごめん」

確かに、あんまりな早とちりだった。
小さくなって謝罪する勇磨。

「部活の掛け持ちはいいのですか?」

環がそんな質問をする。
図書館探検部と漫研、ハルナが両方に入っているということから、疑問に思ったのだろう。

「もちろん」
「掛け持ちしているコは結構いますよ。かく言う私も、探検部以外に、ふたつ入っているです」
「ほう」

視線を落とし、何かを考えるような仕草を見せる環。
読書好きにとっては、魅力的な環境だから、心が揺れているのか。

「環。俺のことは気にしないでいいから、入りたいんなら入ってもいいぞ」
「兄さん・・・。いえ、そういうわけではないのですが・・・」

麻帆良にいる以上、護衛の仕事があって、鍛錬にも時間を割かねばならない。
悩む理由は、決して兄のことばかりではないのだ。

部活に出られる時間が、まともに取れるのかという、大きな問題である。

「前向きに検討してみます」
「いい返事を待ってるからね♪」

悩んだ末、環はそう答えた。

 

 

 

 

さてさて、図書館島をあとにした一行は。
出てきたときとは逆に、校舎の中に入っていく。

向かった先は、美術室。

「うーん・・・」

そこには、絵筆とパレットを手に、真剣な顔でキャンパスに向かっているアスナがいた。
描いているのは、どうやら人物画のようだ。

「やあ、神楽坂さん」
「すいません。お邪魔します」

「・・・え?」

集中しているところを悪いとは思ったのだが、このまま立ち去るのもなんなので、声をかける。
アスナは本当にビックリして、意外そうに振り返ってきた。

「あ・・・・・・な、なによあんたたち。何か用?」
「ごめん邪魔して。部活を見学して回っててさ」
「美術部には、アスナさんがいると伺ったものですから」
「そ、そう」

「おや? 見学者かな?」

そこへ現れる、メガネをかけたダンディズム溢れる男性。
彼を見たアスナは、慌てて立ち上がった。

「たたた、高畑先生!」
「ごめん、驚かせちゃったみたいだねアスナ君。少し離れているから、続けなさい」
「は、はい!」

彼の名は、高畑・T・タカミチ。
英語科の教員で、美術部の顧問をしている。

が、その実体は泣く子も黙る、校内では「デスメガネ」「笑う死神」との二つ名で呼ばれる、
学園長に次ぐ実力を誇る魔法先生である。

邪魔しちゃ悪いよ、と一行を連れてアスナの元から離れると、彼はこんなことを言う。

「見学なら構わないけど、なるべくなら、部員の集中を乱さないようにして欲しいかな」
「あ、す、すいません」
「はは、そんなにかしこまることはないよ。学園長から聞いてはいるからね」
「・・・・・・」

タカミチは笑っている。
彼からそんなことを聞いた勇磨と環は、表情を引き締めた。

「はじめましてだね、御門君。僕は高畑・T・タカミチ。英語の教員をしている。よろしく」
「こちらこそ」
「よろしくお願いします」

軽く握手を交わす3人。
無論、”魔法に関わるもの同士、よろしく”という意味である。

(この人は・・・・・・デキるな)
(只者ではないようですね)

御門兄妹は敏感に、そのことを感じ取って。
脇から見ていた楓と鳴滝姉妹は、小首をかしげていたとか。

 

 

 

 

続いて、とある教室へ。
入ってみると

「あっ、ゆう君にたまちゃんや♪」

すぐに気付いたのか、このかが笑いながら駆け寄ってきた。

「どうしたん?」
「参考にね、ちょっと部活を見て回ってて。ここはどんな部活なのかな?」
「ここ? 占い研究部や」
「占い?」
「そや。これでもウチ、部長さんなんやで♪」
「へえ、そうなんだ」

このかは何がうれしいのか、ニコニコ笑顔を振りまいている。
まあ、この笑顔が、彼女のトレードマークみたいなものなのだが。

「せっかく来てくれたんやし、何か占ったげるな♪」
「え、いいの?」
「もちろんや。ささ、そこ座って」
「うん」

机を挟んで、このかの対面に腰掛ける勇磨。
このかは自分の荷物から、水晶玉を取り出した。

「いろいろあるんやけど、今日は、この水晶玉を使った占いや♪」
「おお、本格的」
「何を占おっか? なんでもかまへんで♪」
「うーん・・・。じゃあ、気になる恋愛運で」
「・・・! 了解や!」

そう聞いた途端、表情が変わったこのか。

「む・・・・・・むむむむ・・・・・・」
「いやあの・・・このか? 何か余計にチカラ入ってない?」
「むむむ〜っ・・・!」
「おーい」

水晶玉に手をかざして、何か切羽詰ったような雰囲気を醸し出している。
もはや勇磨の声も届いていない。

そのままの状態が続くこと、およそ30秒。

「・・・・・・出たっ!」
「それで、なんて?」

結果が出たようだ。

「・・・・・・女難の相が出ています」
「へ? じょ、女難?」

恋愛運を見てもらって、女難とは・・・
上手くいかないということの暗示だろうか。

「そっか・・・。うぅ、なんか落ち込む・・・」
「あわわ、大丈夫やゆう君!」

自分が占った結果、勇磨が落ち込んでしまった。
このかは必死にフォローしようとするものの

「ウチの占い、よく当たるって評判・・・・・・ひゃああっ!」
「そうなんだ・・・・・・よく当たるんだ・・・・・・」

見事に墓穴。

「ちゃ、ちゃうよ! 今のはほんの冗談で・・・」
「いいさ、慰めてくれなくても・・・」
「も、もし本当にそうなっても、ゆう君にはウチがおる!
 ウチがゆう君のこと守るから、安心や!」
「うん、ありがとう・・・。やさしいな、このかは」
「ひゃああ!? そ、それほどでも〜!」

勇磨は感極まって、このかの手をギュッと掴んでいた。
もちろん他意はなく、純粋に感謝の気持ちを示しただけなんだろうが・・・

突然のことに驚いているこのかは、無論、それだけだとは受け取らない。
好意を抱いている身としては当然である。

「ま、任せといてな!」

手を握られたことに驚きつつも、うれしそうに、声高らかに宣言した。

「兄さん・・・・・・###」

見ていた環は、プルプル震えながら、低い声を出して。

「おやおや」

糸目の忍者は、いつもの表情のまま、こんなふうに呟き。

「史伽、なんかイライラしない?」
「奇遇ですねお姉ちゃん。私もそんな気がします」

鳴滝姉妹も、良い気はしていなかったとか。

 

 

 

 

その後は、家庭科室に行って、お料理研究会の料理を試食させてもらったり。
天文部や演劇部を見に行ったり。

気がつくと、日没が近い時間となっている。

「うーん。時間からして、あとひとつ回ったらおしまいかな?」
「そうでござるな」

勇磨の言葉に頷く楓。

(正確には、あと”ふたつ”でござるが。ニンニン♪)

いつもの糸目のままで、何を考えているのやら。

と、最後の訪問地に着いたようだ。
扉の上に出ている表示は、『和室』。

部屋からして、推測できようというもの。

「失礼します」

「・・・ん?」

案の定、室内に入ると

「なんだ貴様ら?」
「これはこれは、ようこそいらっしゃいました」

推定700歳の吸血鬼と、その従者の姿。
部活見学に来た旨を伝えると、彼女たちも納得したようだ。

「まあ、呼んではいないが、それなりの礼儀はある。座れ」

とエヴァが言うので、茶々丸が用意してくれた座布団に正座して。
茶々丸が点ててくれたお茶を一服。

「・・・結構なお手前で」
「お粗末さまです」

型通りの挨拶を返した勇磨だが。

(・・・にがっ)

辛そうに顔をしかめる。
抹茶をそのまま飲むのは辛いものがあった。

「あ、失礼しました。お茶請けもありますよ」

気付いた茶々丸。
サっと、甘そうな和菓子を出してくれた。

「どうぞ」
「ありがとう。でも・・・」
「?」

すぐにでも飛びつきそうなものだが、勇磨は手をつけない。

「さっき料理研究会で試食させてもらったばかりだし、夕食も近いから・・・
 出してもらって悪いけど、遠慮させてもらうよ。ごめん」
「そうでしたか」

腹の具合が気になった。
先ほどの試食、美味しかったので、少し食べ過ぎたかもしれない。

理解して、茶々丸は片付けようとするも

「きっ、貴様っ!」
「エ、エヴァちゃん?」

突然エヴァが激昂して、立ち上がった。

「料理研究会のものは食えて、私の茶道部の茶菓子は食えんというのかっ!」
「いや、そういうわけじゃ・・・。ただその、時間がね?」
「ええいうるさい! ならばその分、夕食を遅らせるか、やめればよかろうっ!」

何がエヴァをそこまで怒らせているのだろう?
勇磨はワケがわからない。

「いいから食え! 出されたものを食うのは礼儀だ!」
「わ、わかったよ」

エヴァの気迫に押されて、勇磨は和菓子を口に運ぶ。
・・・甘いが、美味い。

「あ、これ美味い・・・」

元来、甘いものが苦手な勇磨でも、思わずそう声が出る。

「当然だ」

フフン、と得意げに胸を張る真祖様。

「わざわざ京都の老舗から取り寄せたものだぞ」
「へえ、そうなんだ」
「感謝するがいい。いつ来てもいいように準備を・・・って違う! いつも常備しているものだ!」
「・・・? でも、ほんとそうだな。これなら甘いもの嫌いでも食える・・・」

言いつつ、続々と口に運ぶ勇磨。
エヴァは赤くなったり吠えたりと、すごく忙しい。

一方で、甘いもの好きな環のほうは、すでにぺろりと平らげて優雅にお茶をすすっている。

「いや、美味かった。ありがとうエヴァちゃん」
「フン・・・」

すぐに完食。
礼を言う勇磨を、エヴァは片目だけを向けて対応して。

「そんなに美味いのなら、私の分もくれてやる。ほら」
「え、いいの?」
「美味いとわかった途端、目を輝かせおって・・・。いいから持っていけ」
「おおっ、エヴァちゃん感謝だ!」
「フフ・・・」

エヴァの分をもらった勇磨は、再びがぶりつく。
そんな様子を、エヴァは微笑みを浮かべて見守っている。

そして、爆弾発言。

「その代わり、茶道部に入ってもらうがな」
「・・・・・え?」

目が点の勇磨。

「えっと・・・・・・それはもう、決定事項なのでしょうか?」
「イヤなら、私の分を返せ。今すぐ返せ」
「・・・もう食べてしまいました」

ニタぁ、と笑みを見せるエヴァ。
・・・ハメられた。

「エヴァンジェリンさん! そんなムチャクチャがありますか!」
「・・・いや、いいよ環」
「兄さん! しかし・・・」

理不尽な要求なので環は怒るが、勇磨自身がそれを制し。

「俺でよければ、入部するよ」
「ふふん、そうだ。人間、素直が1番だぞ」

満足そうなエヴァ。
高笑いしそうな雰囲気で、さっそく入部届けを渡してくるのだった。

計画的な犯行に違いない。

「はい。これでいい?」
「うむ。これで貴様も、我が茶道部の一員だ」

勇磨はその場でサイン。

「マスター。卑怯な手をお使いになられてまで、勇磨さんを勧誘されて」
「・・・ん?」
「やはりマスターは――」
「巻くぞ? 巻くか? いや巻くべきだっ!」
「ああああ・・・・・・せめて最後まで言わせてくださいぃ・・・・・・」

やめておけばいいのに、口を挟んだ茶々丸。
こちらもお約束で、ネジを巻かれてしまうのだ。

「まあそういうわけだから、環も、自分の好きなように入っていいぞ」
「兄さん・・・」

そんな光景に苦笑しつつ、勇磨はこう言うが。

「仕事はどうするのです・・・?」
「学園内だから、そんなしょっちゅう出番があるってわけでもないだろ。
 刹那さんだって剣道部に入ってるみたいだし、大丈夫さ」
「はあ・・・」

小声でこんな会話。
確かに、刹那も部活に入っているので、まったく暇が無いというわけでもないだろう。

 

 

 

 

和室から出ると、暗くなり始めている。
今日はこれで解散だということで、再度帰り支度をしに、3−Aの教室へ戻る。

その道すがら。

(う〜む・・・)

長瀬楓は考えていた。

(正直なところ、エヴァ殿があのような強攻策に打って出てくるとは思わなんだが・・・)

一部、計算違いがあったものの。

(まあしかし、掛け持ちは許されていることでござるし、問題は無いでござるよ♪)

自分たちの計画に支障は無い。
教室に戻り、支度を済ませたときが、計画発動のときだ。

(それにしても・・・)

一緒に回ってみて、よくわかったことがある。

(勇磨殿は、いろいろな方から愛されているでござるな)

傍から見ていればモロバレだ。
このかに、エヴァに・・・・・・無論、妹だが環もそうだ。
同性だが、ネギにも敬愛の念を持たれている。

無口で人見知りの激しいアキラとも、短時間で、自然に会話を交わすまでになった。

(これは、拙者も負けていられぬでござるかな?)

本気とも冗談とも取れないような楓。
その本心は、意図はなんであろうか。

そうしているうちに教室に着いて、計画は発動される。

「長瀬さん、風香ちゃん史伽ちゃん、今日はありがとう」
「おかげで、部活のことがよくわかりました。礼を言います」

「いやいや、なんのなんの」
「役に立てたなら良かったなー」
「こちらこそ、です」

例を言われた3人は、とりあえず礼を返し。
顔を合わせて、にやりと微笑んだ。

「ところで、ぜひ紹介したかったクラブで、まだ紹介していないクラブがあるのでござるよ」
「え? そうなの?」
「それなら、もっと早く言ってくだされば参りましたのに」

考えたとおりに、話を進める。

「いやいや、その必要はござらん。なにせ・・・」
「今日これまでのことが・・・」
「そのクラブの活動そのものだからです〜♪」

「・・・はい?」

3人は再び顔を見合わせ、順番にそう述べる。
違う意味で顔を合わせる御門兄妹に、彼女たちは・・・

「「「さんぽ部はいかがでござったかな(いかがでしたか)?」」」

 

 

 

このどんでん返しがかえって良かったのだろうか。
勇磨は笑い出して、さんぽ部のモットー『のんびりまったり』を聞くと、入部を快諾した。
茶道部との掛け持ちになり、出席は保証できないが、それでもいいと楓たちが言ったためだ。

逆に、ため息をついていた環も、結局は、図書館探検部に身を置くことにしたという。

 

 

 

 

31時間目へ続く

 

 

 

 

 

 

 

 

<あとがき>

前回に引き続き、御門兄妹の部活見学・文化部編。
出番の無いキャラに・・・と言いつつ、結局はいつもの面子に・・・

天文部とか書ければよかったんですけど・・・
ネタが思い浮かばずにボツ。好きなキャラではあるんだけど、ちづ姉ごめんよ・・・

 

以下、Web拍手返信です。
拍手していただいている皆様、本当にありがとうございます!

>少し間が空いたので、待ってました! これからも楽しみにしてます。

どうもすみません・・・。更新速度落ちてきました。
なるべく早く出せるようにしたいと思います。

>とても面白かったです。私はアキラが好きなのでもっと勇磨

途中で切れておりましたが、アキラのファンの方でしょうか?
ふむ、もっと勇磨と絡ませろとの仰せかな?
う〜む、正直、非戦闘キャラとは絡ませにくいところではありますが・・・・・・
文化祭ではどうなりますか・・・



感想


な!?

ぼんくら作家のせいで忘れていたが、茶道部と囲碁部は私が部長だった!?

それは、既に健忘症では?

いえ、それはいいのですが。

いいのか!?

いえ、所詮黒い鳩様の脳みそが腐っていただけの事 ですし、気にするだけ無駄です。

ふむ、言われてみればそれもそうか、気にしない方がいいな。

だが、いつも凄いなお前の理論武装は(汗)

はい、理論武装回路は正常に稼動中です。

どういう回路だ!!

多分、最近取り付けられた回路かと。

しかし、その取り付けた人たちですが。

今回で番がなかった事を嘆いているようです。

ああ、そういえばあったな。狂科学クラブだったか?

いえ、普通に科学部です。

…あいつらが、普通に科学部というのもおかしな話だが(汗)

科学部の部員がどういう人でも部は部ですし。

何気にひどいな、自分の製作者にも……。

仕様です。

(汗)

押して頂けると作者の励みになりますm(__)m



昭 和さんへの感想はこちらの方に

掲示板でも歓迎です♪



戻 る
1

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.