魔 法先生ネギま!

〜ある兄妹の乱入〜

31時間目 「麻帆良の日常 そのさん」

 

 

 

 

 

 

「ほらほら勇磨。そんなものか?」
「くっ」

魔力全開のエヴァが、両手の爪を鋭くして迫る。
全身を魔力で強化し、並みの格闘家なら真っ青な動きである。

「全力で来いと言っただろう? 遠慮は要らんぞ」
「く〜」

かろうじてエヴァの攻撃を避けた勇磨。
さすが、”闇の福音”との二つ名は伊達ではない。

「そ〜ら。早く本気を出さんと、黒焦げになるぞ。リク・ラク・ラ・ラック・・・
「げっ! さらに魔法を撃つか!?」
来れ虚空の雷、薙ぎ払え! 雷の斧!!

「!!」

巨大な雷が勇磨に向かう。
速い、避けられない。

彼が咄嗟に取った行動は・・・

 

ドンッ!!

 

エヴァが望んだとおり、本気を出すこと。
周囲に黄金のオーラを噴出させ、雷を迎え撃った。

「うおおおおお!!!」

右手に霊力を集中。
解放した妖力をもプラスして、あらゆるダメージを緩衝するバリアを展開させる。

ドンッ!!

シュゥゥゥウ・・・・

魔法の雷は、一瞬で掻き消された。

「さすがだな」

それを見て、ニヤリと微笑むエヴァ。
防がれるだろうとは思ったが、こうもあっさりやられてしまうと、逆にすがすがしい。

「今のは、決め技としてはそれなりの有効な、上位古代語魔法ハイ・エイシエントだっ たんだが」
「道理ですごいと思ったよ。アチチ・・・」

熱が少し伝わってきたぞ、と右手に息を吹きかける勇磨。
片手一本では、さすがに無理があったか。

「えっとーエヴァちゃん。まだやるの?」
「当然だ」

尋ねられたエヴァは、さらに悪どく、ニタァと笑みを見せ。

「今日こそ、貴様のすべてを吐き出させてやる!」

 

 

 

 

 

 

「兄さん。帰りますか?」

今日も授業が終わった。
放課後となって、環は勇磨にそう声をかける。

「あー」

が、勇磨は生返事。

「何か御用事でも?」
「まあな・・・」

具体的なことを尋ねても、勇磨はお茶を濁すだけだった。

(怪しい・・・)

他にも、視線を泳がせていたりと、あからさまに怪しい。
環でなくともそう思う。

しかも・・・

「そういえば兄さん。ここ2、3日、体調が優れないようですけど」
「あー・・・」

再び生返事の勇磨。

普段からわりとだらしない様子の勇磨であるが、ここ数日は富に顕著である。
授業も、常に真面目に受けているとは言えないものの、はっきり舟を漕いでしまったりと、
なんというか疲れているように見えるのだ。

エヴァとのハードな修行をこなしている、ネギ以上のものがある。

「大丈夫ですか?」
「ああ・・・大丈夫大丈夫・・・」
「本当にそうですか?」

ここまで疲れるようなことをしているのだろうか?
とてもそうは思えないし、兄が自分に隠し事をしていると、少し悲しくなってくる。

「大丈夫だって・・・。じゃ、俺は用事があるから」
「あ・・・」

話を強引に打ち切って、勇磨はさっさと教室を出ていってしまった。

「・・・・・・」

心配そうに彼の背中を見送った環。

「そやな。大丈夫やろかゆう君?」
「っ・・・!!」

そして、同じく心配そうなこのか。
背後からの唐突な声に、さしもの環も、悲鳴こそ寸でのところで飲み込んだが、仰天した。

「何かあったんかな〜?」
「こ、このかさん・・・。いつのまに・・・」

私に気付かれず接近するとは・・・
戦慄する環である。

まあ、ただ単に、意識の外であったがためのことなのだが。

「たまちゃん、何か聞いてへんの?」
「聞いていたら、こんなに心配しませんよ・・・」
「そりゃそうやな。ん〜、ゆう君どうしたんかな〜?」
「・・・・・・」

2人でそのまま、勇磨が出て行った教室後部のドアを見つめていること、数秒。

「そや!」

ぽんっ、とこのかが手を打った。

「ゆう君のあとをつけてみーひん?」
「ええっ?」

唐突な、とんでもない提案である。
今度は、さしもの環も、声を押しとどめることは出来なかった。

「そ、そんな、ストーカーのような真似を・・・」
「だったらたまちゃんは、このまま黙って見過ごしてもええの?」
「・・・・・・」
「確かめるためには、あとをつけてゆう君の行動を見てみるの1番や。どや?」
「・・・・・・・・・」

もはや、環に断る術は残されていない。

「それじゃ早速いこーか。早くせんと、ゆう君見失ってまう」
「・・・はい」

尾行開始。

続けて教室を出た2人。
急いで勇磨を追いかけ、昇降口で追いつくことに成功した。

「外へ行くん?」
「こうなると候補は絞られます」

彼の言う”用事”とやらは、屋内で済ませられることではないということだ。
入部して以来、和室にはわりと頻繁に通っているようだが、真っ先に候補から外れて、ホッとする環。

(エヴァンジェリンさんではないと。少し安心しました・・・)

要注意人物から遠ざかったので、まずはひと安心。
外へ向かった勇磨を、彼女たちも靴を履き替えて、付かず離れずあとを追う。

「このかさん。気配は消してください」
「えー、そんなん出来へんよ」

とある建物の陰に隠れながら、そんな会話。
無論、武道の心得も何も無いこのかには、そのような芸当が出来るはずもなく。

「そうでしたね・・・。では、私より前に出ないように。
 気配を殺す簡易結界を張ります」
「おー、すごいんやなたまちゃん」

兄も、あれでいてけっこう鋭い。
普通に尾行などしようものなら、ものの数分でバレてしまうことだろう。

苦肉の策として、強引に気配を消すことにする。
これでもバレないかどうか五分五分だが、何もしないよりは、確率はだいぶ増す。

「街に出てきたな〜」
「待ってください。街が目的ではないようです」

街中にまで出てきたが、勇磨は店などには目もくれず、そのまま通り過ぎていく。

「追います」
「はいな」

さらに尾行。
勇磨は郊外へと向かっているようだ。

と・・・

「あ、エヴァちゃんや」
「なんと・・・!」

事もあろうに、勇磨はエヴァと待ち合わせていたようで。
おそらくは遅いとでもなじられているのだろうか。エヴァに向かってぺこぺこ謝っている。

「・・・・・・」

呆然とする環。
同じ教室なのに、わざわざ人目を避けるかのごとく、この場所で落ち合ったということは。

(ま、まさか・・・・・・)

デート? 逢引?
サ〜ッと全身の血の気が引いていくのを感じる。

「あ、またどこかに向かったえ。たまちゃん、行こ」
「・・・・・・」
「たまちゃん? たまちゃんってば!」
「ハッ!?」

衝撃のあまり、意識が向こうの世界に旅立っていた環。
このかから声をかけられ、身体を揺すられて、ようやく我に返った。

「早く追わんと、見失ってまうよ!」
「そ、そうですね。行きましょう」

このかも、なんとなく気付いているのだろうか。
心なしか焦っているように見える。

まだ、”そういうこと”だと決まったわけではない。
それを確かめる意味でも、最後までついていかなくては。

尾行を続けると、彼らはさらに郊外へと出て行って。
1軒のログハウスへと消えていった。

「あれは・・・」
「エヴァちゃんの家やね」

間違いなく、エヴァの住居。

「・・・このかさん。入ってみましょう」
「え? そ、そこまでは・・・・・・さすがにバレてまうよ?」
「構いません。こうなった以上は、最後まできちんと確かめないと!」
「で、でもー」

環はあくまで強攻策を主張。
さすがにそこまでは、と渋るこのかだったが

「あなたは、兄さんとエヴァンジェリンさんがあの中で何をやっているのか、気にならないんですか!?」
「気にはなるけど、でもー」
「もし万が一・・・・・・いえっ、そんなことにはなっていないと信じていますけれどもっ!」

力説する環だが、その顔は赤い。
何を想像したのか。

「万が一・・・億分の一でも、そんなことになっていたらどうするんですかっ!」
「わ、わかった」

環の気迫に押され、頷いたこのかは。

「ゆう君を間違った道から戻さんとな。ウチもがんばる!」
「その意気です!」

何がどう間違った道なのかは、それこそ気になることであるが。
2人は家の外装に取り付いて、慎重に中の様子を窺ってみる。

「・・・誰もおらへん」
「おかしい・・・・・・確かに、中へと入っていったはず・・・・・・」

しかし、外から見た限りでは、中に人の気配が感じられない。
部屋の電気も消えたままだし、無人の様子である。

「・・・・・・突入しますか」
「うん!」

もうすっかり、このかもその気になってしまった。
普通の精神状態ならためらうようなことも、平気で受け入れてしまう。

鍵が開いていたので、屋内への侵入は難なく成功。
だが、やはり誰もいない。

「いったいどこへ・・・」
「たまちゃん! こっちに階段があるよ! 地下室みたいやー」
「行ってみましょう」

なるほど。
地下に密閉された空間があるのなら、気配は限りなく殺されて然りかもしれない。

勇んで階段を降りてみると、そこには・・・

「な、なんやろうこれ?」
「うーむ・・・」

明るい光を放つ、奇妙な物体があった。

四角い台の上に置かれたそれは、概ね球形をしていて。
中には、何かの建物、塔のようなミニチュアが入っている。

「・・・あ!」
「どうしました?」

正体が掴めず、考えながら見つめていると、このかが声を上げた。

「今、中にゆう君が見えたような・・・」
「ど、どういう意味です?」
「だから、この中に小さいゆう君が・・・」

カチッ

「「・・・え?」」

急に、歯車がかち合ったような音がした。
顔を見合わせる2人。

その次の瞬間には、彼女たちは異空間へと跳んでいたのだ。

 

 

 

 

「御門真刀流奥義! 迅雷いかずちッ!

「ぬ」

勇磨の殺気が膨れ上がり、手にしている刀に、青白いスパークが走ったかと思った瞬間。

刀が振るわれると、自身の上位魔法にも匹敵するような電撃がエヴァを襲う。
が、エヴァは微動だにせず、自慢の魔法障壁によって跳ね返した。

「おおっ? これでも効かないのか」
「フン」

エヴァは得意げに胸を張る。
しかし、ギリギリなところではあった。

「わりと本気な一撃だったんだけど」
「この程度ではな。だがさすがに、魔法障壁の出力が下がったぞ。
 連発されると怪しいところではあるがな」
「むーん。魔力が全開になると、やっぱりとんでもなく強いんだな、エヴァちゃんって」
「当然だ」

伊達に真祖を名乗ってはおらん、とエヴァはさらに胸を張る。

ここはエヴァの別荘で、異空間であり、魔力も満ちているため、彼女は全開で戦えるそうだ。
詳しい原理など知らないし、聞いてもわかるまい。

「貴様もやはり強いな」
「そう?」
「ああ。私と互角にやりあえる奴など、サウザントマスターを除けば限りなくゼロに近いさ。
 ところで、今のが貴様の流派の技なのか?」
「そうだよ」

軽く頷いた勇磨。
手にしている刀を見つめながら、こう言った。

「御門流退魔術のね。霊力を各属性に変換して、敵を討つ技だ」
「ほう? では、妹の使っているあの妖しげな術はなんだ?」
「あいつは、俺よりも妖狐の血が濃いからさ。母譲りの炎術だよ」

納刀し、笑って見せる。

「あいつは何でも出来るぞ。剣に、体術に、妖術に・・・。頭も良いしさ。
 しかもそのすべてが超一流と来るものだから、たまったものではないのでありますよ」
「フフ。双子で比べられる存在、しかも兄としては、というところか」
「そうそう。特に勉学面ではね、何かと泣かされてきたのですよ・・・」
「そ、そうか」

苦笑する姿が、なんだか哀愁を感じさせる。
エヴァも戸惑ってしまった。

「早い話が、貴様と妹では、どちらのほうが強いんだ?」
「環」
「・・・即答か」

しかも、返答が返答である。
プライドは無いのか、と思ってしまった。

「だってさー、俺は剣しか、まともに扱えるものが無いし。
 いろいろ出来て、頭も良い分、あいつのほうが強いんじゃないかと思うわけですよ」
「まあ確かに、取り得る戦略の幅があって、それを適宜選択できる冷静さと、
 その通りに実行できる実力があれば、そうだろうな」

環のことを思い浮かべ、それもそうか、と納得する。
逆に勇磨のほうは、自分でそう言っておいて、納得しかねているようだ。

「くそぉ。純粋に剣だけを習ってた頃は、俺のほうが断然強かったのに。環のヤツめ。
 母さんに泣きついて、妖狐譲りの体術と妖術を習いやがって、以降は負けの連続だよ畜生」

「お、おい・・・」

愚痴が始まってしまった。

「何かひとつくらい、妹に勝っているものは無いのか?」

様子があまりにアレなので、かわいそうになってきたエヴァ。
フォローしようと、こんなことを尋ねる。

「最高出力くらいかなぁ・・・」

勇磨の答えは、こんなものだった。

「力を解放して、その状態になったときのか?」
「うん。瞬間最大的なパワーでは、あいつよりいくらか上だから、全力で奥義を撃てば、
 勝てるチャンスもあるんだろうけど。そのチャンス自体を、あいつが与えてくれるとは思えないんだよね・・・」
「確かに、な・・・」

あの性格と戦法だから、まともに正面きって戦える場面は少ないだろう。
よしんば攻撃できたとしても、スピードと鮮やかな身のこなしで、避けられてしまう可能性が高い。
おまけに、頭も良く回る。

つくづく、哀れである。
エヴァもこれ以上は無理だと、思わず匙を投げた。

「なるほど。よくわかったよ」
「へ?」

直後、”あくの魔法使い”たる、邪悪な笑み。

「貴様らのことが、な。貴様らと戦うことになったときは、大いに参考にさせてもらうよ」
「あ、きっ、きったねぇ! 雑談の振りして、俺らのことを根掘り葉掘り聞きやがったな!?」
「気付かず話したのは貴様だぞ。
 貴様は妖狐の血を引いているくせに、人を騙すばかりか、騙される側のようだなハッハッハ」
「くぅ〜っ」

本当に、ペラペラと話してしまった。
環の話は話だけで、実際に見せてはいないが、自分は奥義の数々も使ってしまった。

丸裸にされたも同然である。

「で、でもエヴァちゃん、俺らとマジで戦う気があるのか?」
「む?」
「残念・・・。エヴァちゃんのこと、仲間で、友達だと思ってたのに・・・・・・」
「ま、まあ、アレだ」

勇磨からそう言われると、エヴァは途端にオロオロしだして。
取り繕うようにこう言うのだ。

「貴様らが麻帆良にいる間は、おとなしくしていてやるよ・・・」
「本当に?」
「ああ・・・。かっ、勘違いするなよ!? 別に貴様のためだとか、他意があるわけじゃないぞ!?」

顔を赤くして、手足を振り回す様は、外見にマッチしている。

「単にめんどくさいというか、そんな必要も無いというか・・・・・・半分だが、呪いを解いてもらった恩もある。
 と、とにかくだ! 私から貴様と敵対するつもりは無い! 以上だッ!!」

「いや良かった、それを聞いて安心したよ」
「・・・・・・フンッ!!」

笑顔を向けられて、さらに赤くなったエヴァ。
盛大に視線を逸らせた。

「ところで、もういい?」
「あ、ああ。とりあえず満足した」
「じゃあ・・・・・・ふぅ」

了解を取り、勇磨は解放していた力を抑える。
オーラは消えて、髪と瞳の色も、普段の漆黒へと戻った。

「あー疲れた。これってけっこう疲れるんだぞ? しかもここのところ、毎日のように呼び出して」
「ぼーやの師匠役を、私に振った罰だ」

勇磨が疲れていた理由も、これでおわかりだろう。

エヴァはネギを弟子にしたわけだが、きっかけは勇磨から話を振られたことにある。
面倒なことを押し付けられたと感じたエヴァ。かくして、勇磨にも代償を払ってもらう、という話になって。

その突きつけた代償というものが、自分と戦うこと、だったのだ。

「そろそろいいんじゃないかな? 環に勘付かれそうだぞ」
「ほう? では今日で終わりにするか。貴様らの技の一端もわかったわけだしな」
「そ、そう? じゃあそういうことで」
「では最後に、とびきりの代償を払ってもらうこととするか」
「え゛・・・」

とびきりの代償ってなんだ?
それよりも、今まで闘っていたのが、代償ではなかったのか?

目が点になっている勇磨に、エヴァは妖しく舌なめずりしながら、告げた。

「え、えーとあの・・・・・・今までのが代償だったのでは?」
「何を言う。全然足りぬ」
「げろんぱ」

詐欺だ、騙された!
許されるのならば、弁護士を呼んでもらいたいところだろう。

「それではいただこうか。フフフ・・・」
「あ、あう」

エヴァは妖艶な笑みを見せながら、勇磨へにじり寄っていった。

 

 

 

 

一方、偶然、エヴァの別荘に足を踏み入れてしまった環とこのか。
おそるおそる先へと進み、声がしたと感じて、その場所へと近づくのだが・・・

「ふふふ、いいだろ? もう少し」

「こ、これは・・・」
「エヴァちゃんの声? で、でも・・・」

近づくに連れて、明確に聞こえてくるようになってきた声。
判別できたのは、これがエヴァの声であるということと・・・

ものすごく、艶かしい声だった、ということ。

「も、もう無理だよ」

続けて、勇磨の声も聞こえてきたが。

「もう限界」

「少し休めば回復する。若いんだからな」

「あっ、ダメ」

「いいから早く出せ」

「こ、こらエヴァちゃ・・・・・・あ・・・・・・」

「フフフ・・・・・・いい加減、ちゃん付けはやめぬか」

聞きようによっては・・・・・・いや。
誰しもが、”そういうこと”だと疑って当然だという声。

「・・・・・・」
「・・・・・・」

環とこのかも、同じことを考えたのだろう。
茹でダコのように真っ赤になっていた。

「あわわわ・・・・・・まさか、ホンマに?」
「っ・・・」

ぶちりと、環の中で何かがキレた。

もう、なんだろうと構わない。
例え”コト”の最中だろうと、ひとこと言わないと気が済まない。

「なななな、何をやっているんですかーーーー!!!」

飛び出て、叫ぶ。

「ん?」
「エ、エヴァちゃん、これ以上は・・・」

「・・・・・・」

そこで見た光景は。
想像していたものとは違っていた。

違っていてくれてよかったものの。

「何を・・・・・・されているんですか?」

咄嗟には言葉が出なかったほどの、滑稽な光景だったのだ。
なにせ、互いに腰掛け、エヴァが勇磨の腕に噛み付いていたのだから。

「なんだおまえたち」
「それは私のセリフです」

気付いたエヴァは、こう言った。

「ぼーやの師匠をやるハメになった代償に、血を吸わせてもらっているだけだよ」
「血を・・・?」

・・・忘れていた。エヴァは吸血鬼だったのだ。
血を吸っていたとしても、なんら不思議ではない。

「まあおまけで、勇磨と闘って、貴様らのこともいろいろ聞かせてもらったがな」
「おまけだったのか・・・」

この2、3日の疲労はおまけ。
がっくりと落ち込む勇磨である。

「・・・・・・はぁぁ」
「な、なんや、そうだったんかー」

露骨に安堵のため息をつく2人。
ニヤリと、エヴァは意地悪そうに微笑んだ。

「なんだと思ったんだ?」
「う、うるさいですねっ!」
「そないなこと、言わせたらあかんーーーっ!」

案の定、2人はまた真っ赤になり。
満足そうにクックと微笑むエヴァだった。

「しかし、勇磨の血は、ことのほか美味だな」
「そ、そうなの?」
「ああ。まろやかで、コクがあって。妖狐との混血だということがそうさせているのかもしれん。
 妖狐は幻術が得意らしいからな、血にもそんな特性が出るんだろう。例えるのなら、
 極上ワインのようだぞ、思わず酔いしれるほどのな。普通の人間では味わえない感触だよ」
「そ、そう」

そんなことを言われても、血の味などわからない。ましてや自らの血液。
勇磨は戸惑いながら相槌を打つ。

「どれ、もう一口・・・」
「わーわー! これ以上吸われたら、貧血で倒れるって!」
「チッ。なんだケチだな」
「こっちは命がかかってるっつーの!」

慌ててエヴァから離れる勇磨。
少しと言いながら、わりと多くの血を吸われてしまい、本当に死活問題になりかねなかった。

「まあいい。ぼーやの修行も、次回からはここでやることにしたからな。
 その際に、ぼーやの血を頂くことにしようか。フフフ・・・」

「・・・あの顔を見ていると、まさしく、悪の吸血鬼なんですけどね」
「あわわ。エヴァちゃん、悪人やー」

エヴァの表情があまりに”悪”で、引いてしまう環とこのか。

「兄さん。やはり退治しましょう、今すぐしましょう、ええ」
「な、なに言ってるんだ」

悪の側面を見せ付けられ、兄を狙う邪魔者を消せる良い機会。
そう思って、環は半ば本気でそう提案したが、もちろん勇磨に速攻で否定される。

「あっ、そうや!」

再び、このかが思い出したかのように大声を上げた。

「エヴァちゃんにお願いがあったんや!」
「私に? なんだ?」

意外そうな顔で、エヴァは聞き返す。
このかのお願いとは?

「ウチにも、魔法を教えてくれへんかな?」
「・・・・・・」
「あぅ・・・・・・やっぱりダメやろな・・・・・・」

険しい表情のエヴァ。
それを受けて、このかは、引き受けてもらえないかと消沈するが。

「いいだろう」
「・・・え?」

返ってきた返事は、承諾、だった。

「ええの?」
「ああ。言い忘れていたが、近衛詠春から伝言があってな」
「父さまから?」
「真実を知った以上、本人が望むなら、魔法についてもいろいろ教えてやって欲しいとのことだ」

あーめんどくさ、と思いながら、マギステルマギを目指すことも可能だ、と説明する。
ネギも目指しているものになれる可能性があると告げられたこのかは、もちろん

「ウチ、がんばるから、よろしくお願いしますーっ!」

勢い良く、頭を下げた。

「えへへ」
「な、なに?」

そして、このかの視線は勇磨に向く。

「ゆう君に相応しいパートナーになれるよう、がんばる!」
「あ、ああ、うん、がんばって」

「なに!?」
「なんですって!?」

聞き捨てならない発言を聞いたエヴァと環。
すなわち”勇磨のパートナー”発言だが、すぐに猛った。

「どういう意味だそれは!?」
「どうって、仮契約したんだから、そういうことじゃないの?」
「・・・そうだった」
「・・・そうでした」

仮契約をしたその場にいたはずだし、先日の席でも、このかとの仮契約については言及した。
知らないわけが無いのだが、失念していたらしい。

「へへへ♪」
「このか?」

そんなことはさて置いて、勇磨に歩み寄ったこのか。

「ウチ、がんばるからなー♪」
「ちょ、ちょっと?」

がんばる発言3連発。
満面の笑みで、勇磨の腕を取る。

「「あーーーーーっ!!」」

上がる絶叫。

「なな、何をやっている!」
「離しなさい!」

「えー? ウチとゆう君はパートナーなんやから、これくらい当たり前や♪」
「そ、そうなの?」
「うん♪」
「そうなのか」

「そういう話ではなーい!」
「兄さんも納得しないでください!」

もはや大混乱。
この機に乗じて、爆弾発言が乱発される。

「で、では私も、兄さんと仮契約します!」
「や、それは無理だろ環。仮契約は、魔法使いと従者の間でなされるものだ。
 俺もおまえも魔法使いじゃないだろ?」
「な・・・・・・」

がっくりと膝をついてしまう環。
代わって高笑いを上げたのはエヴァだ。

「残念だったな妹! その点、私はとてもとても優秀な魔法使いだ。
 さあ勇磨。そんな初心者もいいところの魔法使いとは縁を切って、私と契約しようじゃないか?」
「ちょい待ち! エヴァちゃんが優秀だってのは認めるが、もう茶々丸さんがいるだろう?」
「優秀な魔法使いだからこそ、優秀な従者は何人いてもいいんだよ」
「そ、そうなの?」

「あかんーっ! ゆう君はウチのパートナーなんやー!」

負けじと、このかも、ギュッと勇磨の腕を取る手に力を込める。

「・・・だからといって、はいそうですかと引き下がるわけにはいきません!」
「優秀な従者は、優秀な魔法使いに仕えてこそなんだよ!」
「さっきエヴァちゃん、ウチならマギ・・・なんとかになれるって言ったもんー!」

・・・収拾がつかない。

「誰か、なんとかして・・・」

勇磨の望みは、ひどくわがままなものだと思うのは、気のせいだろうか。

 

 

 

 

32時間目へ続く

 

 

 

 

 

 

 

 

<あとがき>

これを「日常」と表するのは、だいぶ違うような気もしますが。(汗)

ついに実力行使に出だしたこのか。
エヴァと環はどう出てくるかな?(無責任発言)

 

私事で恐縮ですが、作者、今後8月中旬頃まで、本業が忙しくなります。
メールの返信等は行なえると思いますが、SSを書いている時間は無いと思われます。
ですのでストックを溜めておこうと思ったんですが、コレに関しては無理でしたごめんなさい・・・

よって、その頃までは更新が停止します。
ご理解の上、お待ちいただければ幸いでございます。

 

以下、Web拍手返信です。
拍手していただいている皆様、本当にありがとうございます!

>勇磨なら運動系かと思いきや、茶道と散歩ですかw
これからも楽しみにしてます。

ありがとうございまする。
いや〜、特に深くは考えず、ノリと勢いで決めちゃったんですが・・・
部活している場面、出てくるのかな?(爆)

>次回も期待!!

どうもです。
ご期待に沿えましたでしょうか・・・?

>僕はこのかが大好きです。
>勇磨とこのかが結ばれればいいかなとおもいます

私もこのかは好きですね。
結ばれるところまでは・・・・・・どうだろ、いくかな?(爆)

 

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