魔 法先生ネギま!

〜ある兄妹の乱入〜

37時間目 「悪魔がやってきた! そのろく」

 

 

 

 

 

 

学園中央、巨木・世界樹が雄大な姿を見せている広場。
間近に迫った学園祭『麻帆良祭』に向けて、ライブなどに使われるステージが建設途上だ。

そのステージ上で、アスナは目を覚ました。

「なな何よこの格好は〜〜〜〜っ!」

気がついてみると、両腕は頭上の屋根から伸びたツルのようなものに拘束され。
なにより、格好が、服装が変わっていた。
ビスチェ、と呼ばれるようなものだろうか。要するに、下着である。

「囚われのお姫様がパジャマ姿では、雰囲気も出ないかと思ってね。
 少し趣向を凝らさせてもらったよ」
「なんなのよこのエロジジィーッ!」
「ろも゜っ」

すぐ隣に姿を現したヘルマンに、両手を繋がれたまま蹴りをかますアスナ。
まともに喰らったヘルマンは、ドクドクと鼻血を出しつつも、生きが良くてうれしいと気取る。

「アスナーッ!」
「!?」

そこへ、背後から自分を呼ぶ声が響いた。
驚いて振り返ったアスナが見たのは

「このか!」

半球状の、半透明な物体の中に入れられた、このかの姿。
そういえば一緒にいたんだった。併せて攫われてしまったのか。

「彼女は観客だ」

ヘルマンはそう説明する。

「本当は、ネギ君の仲間と思われた7名は、すべて招待するつもりだったのだがね」

視線が横へ。
その先の光景を見て、アスナはさらに驚くことになる。

「そちらのお嬢さんに邪魔されてしまってね」
「な・・・・・・環っ!? それに刹那さんも!」

向かって右側には環が、左側には刹那が。
このかが入れられているものと同じような、球状の物体に入れられていた。
2人とも手足を縛られており、意識が無いのか、微動だにしない。

「退魔士の少女は危険なので、眠ってもらっている。
 そちらのお嬢さんに関しては、データが少なすぎるのでなんとも言えんが、同じく危険なのでね」
「・・・!?」

ヘルマンの言葉に驚愕だ。
とどのつまり・・・

(ちょっ・・・・・・何がどうなって・・・・・・。環と刹那さんが捕まっちゃうなんて・・・・・・)

事態を正確に飲み込めというほうが無理だろう。
そんな中、アスナは懸命に、状況を冷静に分析しようと試みる。

まず、これは夢でも幻でもない。現実だ。
そして、尋常ならざる事態だということくらいはわかる。
目の前にいる黒服、白髪の大男は、敵だということであろう。

重要なのは、環や刹那が捕まってしまうくらい、強大な敵だということである。

(くっ・・・・・・私だけじゃ、とても・・・・・・)

同じく囚われの見である自分には、どうしようもなく。

(ネギや勇磨君は何してるのよ!?)

この場にいない2人に対し、怒りをぶつけた。
ネギはともかく、いつも環に一緒といる勇磨は、いったいどうしてしまったのだろうか。
こういう事態になったとき、真っ先に駆けつけ防ぐべきなのは、その彼らなのではないのか。

「そちらのお嬢さんともう1人が、最近になって現れたらしいが」
「・・・!」

その片方の答えは、ヘルマンが教えてくれた。
彼が言っているのは、間違いなく、環と勇磨のことである。

「本当は、揃って別の場所へ誘き出すつもりだったんだがね。
 上手い具合に分散してくれていたようで、計画通りにいかなかったよ。
 我が部下がやられてしまったことを含めて、少々誤算だったね」
「・・・・・・」

ヤツの言葉を信じるとすれば。
勇磨は今、別の場所にて戦っている、ということか。

「こんなことして、何が目的なのよ!」
「なに、たいしたことではない」

いよいよ本題に触れる。
ヘルマンは特に隠し立てせず、白日のもとにさらけ出した。

「学園の調査が主な目的だが・・・。ネギ・スプリングフィールドとキミ・・・カグラザカアスナが、
 今後どの程度の脅威となるかの調査も、依頼内容に含まれている」
「え・・・・・・わ、私!?」

ネギはわかるが、自分まで? 自分が脅威?
何を言っているのだ、とアスナは混乱した。

あくまで一般人である自分が、そんな”脅威”とやらになりうるというのか?

「そしてあわよくば、新たに学園に現れた2人、ミカドユウマとミカドタマキに関しても、
 詳しいデータを得られれば、ということだね」
「・・・・・・」

どういうことなのか、混乱状態のアスナには理解しきれなかった。
もっとも、正常な状態だったとしても、理解しきるのは無理であったろう。

「・・・ふむ、来たようだ」

上空を見上げるヘルマン。

「彼があのときから、どの程度使える少年に成長したかは、私自身、非常に楽しみだ」
「え・・・?」

意味深な発現をしたへルマンへ。

魔法の射手・戒めの風矢!!

杖に乗って、救援にやってきたネギの魔法が迫る。

「うむ! いいね」

しかし、ヘルマンは慌てず騒がず。
その場から一歩も動かずに、それを掻き消した。

「!? あうっ・・・」

瞬間、アスナにかけられたペンダントが光り輝いたのは、
同時に衝撃にも見舞われた彼女自身しか、知り得なかった。

「弾かれた!」
「障壁か!?」
「いや。何かに掻き消されたように見えたぜ」

ステージに降り立つネギたち。

「来たでおっさん!」
「みんなを返してください!」

ステージの周り、円状に配置された客席の1番上。
降り立った小太郎とネギが叫んだ。

「あなたはいったい誰なんです!? こんなことをする目的は!?」
「いや、手荒な真似をして悪かった、ネギ君。
 ただ、人質でも取らねば、君は全力で戦ってはくれないかと思ってね」

悠然と構えるヘルマン。

「私はただ、君たちの実力が知りたいだけだ。
 私を倒すことが出来たら、彼女たちは返す。条件はそれだけだ。
 これ以上、話すことは無い」

「上等や!」

至極単純な条件だった。
小太郎にとって、これ以上シンプルな解決法は無い。

「来たまえ」

「行くでネギ!」
「うん!」

迷っているヒマは無い。
先手必勝。

「いけるか兄貴!?」
「いけるよ。『戦いの歌』!!

「あ、ばかネギ! 魔法使いのおまえが突っ込んでどうするんや!」

驚く小太郎を尻目に、ネギは飛び込んだ。
もちろん、成算あってのことである。

「む?」
「双撞掌!!」
「うぬ」

「おお!? なんやソレ、ネギ!」

突っ込んだネギは、2つ3つヘルマンと互角に攻防を重ねたあと。
両手を前へと突き出す必殺技をクリーンヒットさせた。

予想だにしない展開に、小太郎は驚くのと同時に、喜びを爆発させる。

「何って、魔力供給の呪文だよ。完全版」
「ちゃうちゃう、その体術や! 流派は!? 変な動きや」

小太郎が驚いた原因は、ネギが見せた真新しい動きにあった。
少なくとも、彼の知っているものではない。

「中国拳法だけど。八卦拳とか、八極拳とか習ってて・・・」
「アッハハハ中国拳法か。そらええわ!」

「まぐれ当たりかもしれんぞ。ぬか喜びしないことだな」

小太郎は大笑い。
まさかこの短期間に、そんなものを身に着けていようとは、あのときとは見違えるではないか。

が、ヘルマンはノーダメージの模様。
2人を見据えると、再び構えた。

「はん。いきがるなやおっさん!」
「みんなを返してもらいます!」

今度は、小太郎を含めて攻撃に出る。

「悪魔を舐めてもらっては困る」

「ほざけ!」

3体に分身した小太郎。
それぞれがヘルマンに攻撃を仕掛ける。

攻防を繰り広げるが、やはり、ヘルマンに通用するまでには至らない。

「そんなものかね?」
「へっ。やっぱ舐めてたのはおっさんやな」
「なに?」
「ネギ! やったれ!」

「はああ」

小太郎が突っ込んだ一方で、ネギはネギで準備をしていたのだ。
飛び退いた小太郎に代わり

魔法の射手・光の一矢!!

一条の光を発射。
予備動作も詠唱も無い、意表を衝くには充分な一撃である。

「なんと、無詠唱魔法かね」

事実、少なからずヘルマンを驚かせた。
この場で無詠唱魔法を成功させたこともそうだが、急造とは思えない息の合ったコンビネーションも、
褒め称えるには充分ではないか。

「ぬ・・・」

バシュウッ

しかし、ヘルマンは冷静に手を出して、光の一矢を受け止め散乱させる。
いや、再び掻き消されたのか。

(でも、目くらましには充分!)

ネギも冷静だった。
魔法を掻き消されているうちに、ヘルマンの後ろに回って、例の瓶を取り出す。

「僕たちの勝ちです。封魔の瓶!!

完全に背後を取った。
避けようなどあるはずも無い。

ところが・・・

「ひゃっ・・・・・・ああああっ!!」

「アスナさん!?」

再び、アスナの胸元で光り輝くペンダント。
彼女は苦悶の表情を浮かべ、光はますます強くなっていって。

パシィッ!

「え・・・な!?」
「封印の呪文が掻き消された!?」

瓶の効果をも打ち消してしまった。
周囲が驚愕に染まる中、ヘルマンだけは、余裕の表情である。

「実験は成功のようだね。放出型の呪文に対しては有効だ」
「・・・!?」

またしても謎が生まれる。
実験とはなんだ? なぜアスナが苦しむ? 呪文に有効?

「さて。そろそろ、私も本気でやらせてもらうとしよう。
 まさかこれで終わりではあるまい? ネギ・スプリングフィールド君?」

そんなことを考えている時間も無く、ヘルマンからは無情な宣告。

「悪魔パンチ!!!」

「!!」
「なに!」

一見、ただの魔力パンチのようだったが、威力が半端ではなかった。
かろうじて避けるも、ヘルマンは連続して繰り出してくる。

「瓶が使えんならしゃあない! ネギ、ゴリ押しや!」
「く・・・それしかないね」

それも回避しつつ、作戦を決定。

ラス・テル・マ・スキル・・・
「はああ・・・」

こうなったら、力ずくで。
共に全力で技を放つ。

白き雷!!

犬上流・空牙!!

しかし・・・

「あ、はああっ!」

「アスナさん!!」
「また消された!? とっときの気弾まで!」

ヘルマンに達する前に、何かに邪魔されるようにして四散してしまった。
アスナの悲鳴も轟く。ペンダントも輝いた。

「マジックキャンセル・・・・・・魔法無効化能力というヤツだよ」

ぽつりと、ヘルマンが呟いた言葉。

「一般人のはずのカグラザカアスナ嬢・・・。彼女がなぜか持つ魔法無効化能力・・・。
 極めて希少かつ、極めて危険な能力だ。今回は、我々が逆用させてもらった」

「な、なんやて!? 魔法無効化・・・?」
「カ、カモ君!」
「ああ。やはり姐さんのあの力、アーティファクトの力だけじゃなかったのか・・・」

召喚したものを、一撃で、問答無用に送り返してしまう能力。
すっかりアーティファクトによる力だと思っていたが、アスナ自身にも、その素養はあったのだ。

(あのペンダントか・・・)

カモはここで気付いた。
魔法が掻き消されるたび、アスナの胸元で光り輝く、あのペンダントが怪しいと。

「兄貴! 俺も何とかやってみる。持ち応えろ!」
「カモ君!?」

カモはネギから離れ、独自に行動を開始。
はたして上手く行くかどうか。

「さて、私に対して、もう放出系の術や技は使えないぞ。
 男ならば、拳で語りたまえ!」

ヘルマンの攻勢。
ネギなどは防備に回るしかないが、その隙に・・・

「姐さん姐さん!」
「カ、カモ!?」

カモが、アスナの足元に到達。

「今、その胸のペンダント取ってやるぜ。そうすれば兄貴たちも・・・・・・へぐっ」
「あっ」

大成功と行くかと思いきや。
とんだどんでん返しで、アスナも思わず声を上げる。

『グルルゥ』

「うわわっ」
「あ、頭が3つある犬!?」

どこから現れたのか、みっつの頭を持つ、全身真っ黒で大きな犬が、前足でカモを踏みつけている。
カモは目を回した。

「けっ、けけけケルベロスぅ!? あわわわ、おお、俺っちなんかを食っても、うう美味くないぜぇ!?」

なんとか逃げ出そうとジタバタもがくが、体格があまりにも違う。
しっかり踏みつけられて動けない。

『グル』

「ぎゃああ!?」

ついには、ケルベロスの片方の口が大きく開けられた。
かぷっと咥えられてしまう。

もはやこれまでか。

「うわっ」

そうではなかった。
ケルベロスはカモを加えたまま、このかが入っている水牢の前まで行くと、中へぽいっと放り投げたのだ。

「ひ、ひとまず助かったが・・・・・・これはやべぇ・・・・・・」

カモ、無力化。作戦失敗。

 

 

 

 

ヘルマンとの戦いも、非常にまずい情勢となっていた。

ネギと小太郎は2人がかりで攻めるも、力を出し始めたヘルマンに対応できない。
逆に攻撃を受け続ける一方で、本格的に劣勢が明らかとなる。

「ネギ君。思うに君は、本気で戦ってはいないのではないかね?」
「!?」

そんな折、ヘルマンが放った一言によって、ネギは衝撃を受けた。

「な、何を・・・? 僕は本気で戦ってます!」
「そうかね?」

無論ネギは反論したが、次第に反発できなくなっていく。

「サウザントマスターの息子、なかなか使えると聞いて楽しみにしていたのだがね。
 彼とはまるで正反対。戦いに向かない性格だよ。君は何のために戦うのかね?」
「な、何のために?」
「仲間のためかね? くだらない。実にくだらないぞネギ君。期待ハズレだ。
 戦いは常に、自分だけのものなのだよ。そうでなくてはいけない」

ヘルマンの饒舌は続く。

「義務感を糧にしても、決して本気になどなれないぞ。実につまらない」
「・・・・・・」
「いや、それとも・・・・・・君が戦うのは、あの雪の夜の記憶から逃げるためかね?」
「え・・・」

衝撃、なんてものではなかった。
いやそれよりも、なんでそのことを・・・

「では、コレなどはいかがかね?」
「・・・・・・・・・」

ヘルマンはいったん深く帽子を被り、顔を見せないようにして、帽子を脱いだ。
・・・顔が変わっている。

これを見たネギ、。
即座に全身が凍りついた。

「はっはっは、喜んでもらえたかな。いい顔だよネギ君、その表情だ」
「あ・・・・・・あなたは・・・・・・」
「そうだ。君の仇だネギ君」

あの日、あのとき・・・
あの雪の日の夜。村の人々を石化し、村を壊滅させた悪魔。
ごくわずかに召喚された、爵位級の上位悪魔の1人だった。

知っているはずだ。
当事者本人だったのだから。

「どうかね? 自分のために戦いたくなったのではないかね?」
「・・・・・・」

ネギはジッと俯き、動かなかったが・・・
突如として変貌する。

ドンッ!

ズガガガガガッ、ドンッガンッ!!!

すべて、ネギがヘルマンを圧倒している音である。
一瞬にしてヘルマンの懐に飛び込んだと思ったら、一撃ではるか上空へと跳ね上げ、
連続で拳の嵐を見舞い、蹴りを入れる。

「なんやあの動きは!?」

「ぐぬ・・・!」

小太郎ばかりか、挑発したヘルマン自身でさえ目を見張る変身ぶり。

「魔力の暴走だ!」

それを、カモはこう説明した。

「まだ修行不足で使いこなせちゃいねーが、兄貴の最大魔力は膨大だ。
 それが何かのきっかけで、一気に開放されれば・・・!」

エヴァとの戦いのときもコレで勝った。
まだまだ底知れない力を秘めているのだ、ネギは。

「ふはははは、いいね、すばらしい! それでこそサウザントマスターの息子だ!」

だからといって、やはり制御の効かない力は脆い。
一方的にやられつつも、不敵な笑みを浮かべているヘルマンが良い証拠である。

「だがしかし、そういった才能が費えるのを見るのも、私の楽しみのひとつだよ!」
「!!」

暴走状態のネギは、バカ正直に真正面から突っ込んで行く。
それを待っていたヘルマン。再び真の悪魔モードへと変身し、口を開けて必殺技を放つ。
ネギに回避できる余裕は無い。

「ネギッ!」

間一髪ネギを救ったのは、飛び上がってきた小太郎だった。
身体ごと飛び込んで、ネギを抱えて射線から外れる。

「う・・・」

墜落した拍子に、正気に戻ったのだろう。
ネギは自らの手を見つめたまま、呆然としている。

「この・・・・・アホかーっ!」
「へぶ」

そんなネギを、小太郎は殴りつけた。
落ちた際、彼もダメージを追ったようだがお構いなし。
一気にまくし立てる。

「アホ!! いくらパワーがあっても、あんな闇雲に突っ込んでったら、返り討ち喰らうんは当たり前や!」

一歩間違えると、自分にも当てはまりそうなことである。

(ねーちゃん・・・)

いや、つい先ほど、自分もやってしまったことではないか。
そのために、環は捕まってしまったのだ。

チラリと環を見る。
ネギの様子に腹が立ち、血が上っているのは確かだが、環のことを考えると、
その上でも冷静になれるのだ。

「ったく、頭良さそうな顔しとるくせに! 仇か知らんけど、
 おっさんの挑発に簡単にキレよってからに!」
「・・・・・・」
「共同戦線ゆーたろ。2人で、あのおっさんブッ倒すぜ」
「・・・うん、そうだね、小太郎君」

怪我の功名か。
2人の間には、堅い何かが結ばれたようだ。

「ははは、いい仲間が出来たようだ」

アレはこれで終わりか、と残念に思いつつ。
だがそれでも、ヘルマンの絶対的優位は疑いようが無い。

「だがどうするね? 君たち2人だけで、私に勝てるのかな?」
「・・・・・・」

その問いかけに答える術が無いのも、また事実であった。

 

 

 

 

「チクショー・・・」

水牢の中。
このかの頭の上に陣取り、戦況を見つめるカモは、苦しげに呟いた。

「このままじゃマズい・・・・・・マズすぎる」

何か手は無いのか。
増援を呼べればいいのだが、現状では、無いものねだりも甚だしい。

「せめて、炎の魔法でも使えれば、ここから出られるんだが・・・。
 姐さんの胸のペンダントさえ取れれば、魔法が効いて少しは勝機も・・・」
「・・・!」

カモの呟きを聞いたこのか。
思い出したことがあった。

「実はな、ウチ、練習用の折りたたみ式のをポケットに・・・」
「お、おい、このか姉さん、これは・・・!?」

そう言ってこのかが取り出したのは、紛れも無く、魔法行使のための杖である。
エヴァには瞑想ばかりやらされている彼女であるが、少しでも早く魔法を使えるようになりたいと、
自主的に練習を重ねていたのだ。

「いける!」

カモは頷いた。

「姉さん頼む! 一瞬でもいいから、炎を出してくれ!
 発動できさえすれば、姉さんの巨大な魔力で一気に燃え上がる」
「うん!」

このかは杖を構え、準備に取り掛かる。
カモには祈ることしか出来ない。

 

 

 

 

そしてもう1人、戦況を見つめている人物がいる。

(・・・・・・)

同じく水牢の中。
もちろん、前述の2人でも、意識を失ったままの刹那でもない。

となると、残るはただ1人。

(いよいよもって、まずい状況ですか)

環である。
彼女はつい先ほど、自力で意識を取り戻した。

簡単に屈してしまった恥辱にさいなまされながら、今すぐ雪辱を期したい衝動を抑えて。
バレないように息を潜め、様子を見ている。

(ヤツの隙を衝いて、決着をつけようと思っていましたが・・・)

すぐに飛び出していかないのは、ヘルマンの隙を窺っているからだ。

この程度の水牢、手足を縛られていたって、彼女の炎術をもってすれば破るのはなんでもない。
しかし人質を取られている以上、下手な真似は出来ない。
隙を衝き、一気に決着を図るのが1番だった。

(そうも言っていられなくなりましたね)

ネギたちの状況が悪すぎる。
悠長に待ってはいられなくなってきた。

(致し方なし。私が・・・・・・・・・おや?)

行動に出ようとしたとき、環も気付いた。
このかたちが何かをしようとしていることに。

(・・・便乗させていただきましょう)

それを見て、考えを改める。
このかたちが何かを起こしたとき、自分も行動を開始するときだ。

 

 

 

 

数十秒後。
”そのとき”は訪れた。

 

ボアッ!!

 

「っひゃあ!」
「よっしゃあ!」

水牢を突き破り、吹き上がる火焔。
驚いて悲鳴を上げるこのか。反対に、歓喜の声を上げるカモ。

水牢は弾け飛び、彼らは脱出に成功する。
言葉だけではなく、絶え間ない練習を重ねたこのかは、自力で魔法を発動させた。
努力の勝利である。

「ぬ、しまった」

ヘルマンは慌てた。
人質に逃げられてしまってはたまらない。
いや、それよりも・・・

「ケルベロス」

だが、慌てたのも一瞬のこと、しかもほんの少しのことで。
すぐにケルベロスへと指令を出す。

ケルベロスは命令に従い、このかたちに迫る。

「かっ、カモ君!?」
「うわあああ来るなぁ! こいつのことを忘れてたぁ!?」

飛び掛るケルベロスだったが・・・

『ギャヒンッ!』

このかたちの前に立ちはだかった何者かに、横蹴りされて邪魔をされた挙句。
次の瞬間には、思い切り殴り飛ばされて、悲痛な叫びを上げた。

「え・・・?」
「な・・・」

丸くなった、このかとカモの両目に映ったものは。

「大丈夫ですか?」

金色の背中。
そして、こちらに振り返る穏やかな微笑。

「た、たまちゃん!?」
「環姉さん!」

「おまたせしました」

御門環。
しかも、黄金の輝きモードである。

1度目にしていたカモはともかくとして、初めてのこのかは、心臓が止まりそうになった。
そんな彼女たちの驚きを尻目に、環は一言、それだけ言って微笑みを向けて。

「さて、そこの腐れ悪魔。屈辱は何倍にもして返してあげましょう。
 ”この”私を前にした以上、もはや往くことも退くことも叶わぬと心得なさい!」

 

ドンッ!!

 

言い切るのと同時にヘルマンを睨みつけ、黄金の輝きがさらに光を増す。

「く・・・」

これを見たヘルマンは、初めて、焦りを明確にした。
ここに来て、修正不可能な、明らかな計算違いが発生したためである。

 

 

 

 

38時間目へ続く

 

 

 

 

 

 

 

 

<あとがき>

ほとんどは原作通りですが、細かな違いがちらほらと。

さてさて、環が復活です。
思わぬ屈辱を受けてしまった彼女ですが、ここからが本番ですよ。
名誉挽回といきましょうか。

 

 

以下、Web拍手返信です。
拍手していただいている皆様、本当にありがとうございます!

>ハーレムwelcome!

welcomeっすか! 上等であります(笑)
でもまあ、実現するにしても、麻帆良祭のタイミングでどうなりますか。
ラブってる時間があるかどうか・・・

>頑張ってください、毎回楽しみにしています。

毎度どうもであります。
ヘルマン編をなんとか早く終わらせて、その次の構想を練りたいところ。
って、原作はどこまで行ってるんだ?

>修羅場の数だけ強くなれるさ〜♪

アスファルトに咲く花のように〜♪ って違う? こりゃまた失礼(笑)
でも、そうだといいですなあ。勇磨に期待w

>アキラに出番を

アキラ・・・・・・アキラ、う〜む・・・
容姿的には好みの部類なんですが、如何せん、原作でもあまり出番がありませんからね・・・
しかも戦闘要員じゃないし、部活もアレなので、なかなか絡ませられないのです。
あまり期待せずに、麻帆良祭編や外伝などをお待ちください。

>ガンバです!ファイトです!次も楽しみにしています

サンクスでございます。
とりあえずヘルマン編までは見込みがついておりますので、がんばります。

>頑張ってね〜。

はい〜がんばります〜。


相変わらず原作の流れを割りと上手く表現しているおりますな

金ピカモードの妹様はノーマル兄様があれほど苦労した、ケロちゃんを一蹴。

さすがでございまする

悪魔のオジサン、計画が狂って大ピンチ

どうする、アイ○ル〜

……まじめに感想を書こうとするとたった数行で終わる自分に絶望orz

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