第七話
『実戦…やっぱ連携の練習とかしたほうが良いかな…?』

「あら?あなた達、外へ?」
指令書に示されてあった『シリアル・ホール』へ向かうため、メインゲートに来た三人に、
カリルが話しかけてきた。


「はい。シルバーリーダーからの命令で。」
リンリンシャオが答える。
「え?もう指令が?」
カリルが怪訝な顔で尋ねる。
「え、えぇ。」
そんなカリルの様子に戸惑いながらも、またも少女が答えた。

「そんなことはどうでもいい。カリル管理官、ゲートを開いてくれ。」
ベルトランが不機嫌な顔で言った。
「あ、あぁ、はい。今開きますね。」
カリルがコンピュータを操作する。それに応えるように、カリルが座る台座の右側にある大きな扉が開いた。

「…やっぱり外は綺麗だなぁ…。」
先に外へ出たアキラが、周りを見渡しため息をつく。
「…緑ばかりでつまらん。」
隣でベルトランが顔を顰める。
「分かってないな、自然が良いんじゃないか。」
「…どこがだ?」
「どこがって……植物は生きてるんだぞ?」
苦し紛れに言ったアキラに、ベルトランがあきれた顔を向けた。

二人がそんなやり取りをしている間、リンリンシャオはカリルに呼び止められた。
「リンリンシャオさん、気をつけてね。合格したすぐに指令が下されるのは、少し変だわ。」
カリルが不安そうに言う。
「…はい。分かりました。」
リンリンシャオは扉の向こうで、言い合っている二人を見つめながら、言った。


三人が腕につけているAPアダプタのボタンを押す。
それに応えるように、光と共にデジバイクが現れた。
「よし、それじゃ行こうか。」
アキラの言葉で三人はデジバイクに跨り、緑溢れる森の中を走りだした。

しばらく走ると、洞窟のような入り口が見えてきた。
三人は入り口の前で停止する。
「…ここで間違い無いな。」
ベルトランがAPアダプタから情報を引き出しながら言った。
デジバイクをAPアダプタに収納する。

「…準備は良い?」
アキラが緊張した面持ちで、二人に聞く。
「大丈夫だよっ。」
「当然だ。さっさと行くぞ。」
それぞれの答えが返ってくる。
二人の声からも緊張の色が見えた。

三人は洞窟の中に足を踏み入れる。
最終試験の時に入った『ブート・ホール』と同じく、中はゴツゴツとした岩肌ではなく整備されたトンネルのようだった。
ジメジメとした空気も変わらない。
初めてワームホールに入ったときと同じように、リンリンシャオが愚痴をもらした。

歩いて5分ほどだろうか。
先頭のアキラが急に立ち止まった。
「どうしたの?」
リンリンシャオが尋ねる。
「…何か聞こえない?」

アキラの言葉に二人は耳を澄ましてみる。
確かに何か聞こえる。金属がぶつかり合う音のようだ。
そう遠くは無い。

「行ってみるぞ。」
ベルトランが駆け出す。
二人もその後を追った。


通路のようなところから、広い部屋へ出た。
三人は、驚愕した。
そこに居たのは、戦闘を繰り広げている2体のデジモンと、1体の『何か』だった。
2体のデジモンは、最終試験で闘ったカエルのようなデジモンの『ギザモン』と
前足に長い爪を持つ狐狸のようなデジモン『ガジモン』だ。

その2体のデジモンは別に驚くほどではない。戦闘をしているのも不思議ではない。
ただ、その2体を相手にしている『何か』が、驚愕した原因だった。

その『何か』は、『人』だった。
否、『人』に似ていた。確かにその腕は人外のもの。
両腕に張り付いているかのような、大きな葉のようなもの。
本来指があるところから、3本ずつ鞭のようなツルが伸びている。
頭には、帽子のような大きな花を被っていた。

だが、その顔は紛れも無く、『人』だった。
顔だけではない。腕と帽子のようなものを除けば、体も『人』のように、いかにも脆弱そうで、
それを隠すように着ている物も、普段、アキラ達が着る洋服と同じものだった。

「な…なんだ…あれは…」
ベルトランが呟く。
呆然とその戦闘を見る三人。

「あっ!」
リンリンシャオが声を上げた。
ギザモンの『スパイラルエッジ』が、その相手を吹き飛ばしたのだ。

「あのデジモンが何なのか、今はどうでも良い!助けるぞ!」
アキラが言いながら、走った。
二人も続いて走り出す。

「ソウルチェンジ!」
三人が叫ぶ。
光から駆け出してきたもの。
アキラ達が変わったもの。
すなわち、恐竜に似た『アグモン』、小鳥を思わせる『ピヨモン』、てんとう虫のような『テントモン』だ。

吹き飛ばされた『何か』が現れた三体を見て驚く。
勝ち誇っていたギザモンとガジモンも気づく。
だが、それは遅すぎた。

アキラが、手を前方に交差させながらギザモンに突っ込む。まるで、というか、まんまフライング・クロスチョップだ。
ギザモンは避けることも衝撃を殺すことも出来ず、派手に吹っ飛ぶ。

ガジモンがアキラに飛び掛る。だが、その爪はアキラに届くことは無かった。
横から、リンリンシャオ…ピヨモンの『マジカルファイアー』と
ベルトラン…テントモンの『プチサンダー』をまともに喰らったからだ。

ガジモンが黒い粒子となって消える。黒い粒子はベルトランとリンリンシャオに向かっていった。
ギザモンはぶつかっただけなので、大したダメージは無さそうだった。

立ち上がるギザモン。その瞬間、大きな火球がギザモンを襲った。
アキラ…アグモンの『ベビーフレイム』だ。
直撃を受けたギザモンは、虚しくも黒い粒子となり、それはアキラの中へと入ってゆく。


「ふぅ…もうだいじょう…あれ?」
アキラがソウルチェンジを解きながら、件の相手を見る…が、見事にその姿は消えていた。
「…居なくなっちゃったね。」
リンリンシャオが悲しそうに呟く。
「助け損か。無駄な時間だったな。先を急ぐぞ。」
ベルトランが毒づき、歩み始める。
二人はすでにソウルチェンジを解いていた。

「……結局、あの子がなんだったのか…分からないままだったな。」
溜め息をつくアキラ。
「うん…」
リンリンシャオが肯く。
二人は後ろ髪を引かれる思いでベルトランのあとに続いた。



「・・・ん?」
先を歩くベルトランが、怪訝な声をあげ、歩みを止めた。
「どうかしたの?」
リンリンシャオが尋ねる。
「・・・あれを見ろ。」
その言葉に、二人はベルトランの体の向こう側を覗く。

視界に入ったのは、大きな部屋の入り口。その奥に、大きな影が見える。
「・・・あれは・・・」
二人が目を凝らす。最初に分かったのは、赤い色だ。
次に見えるようになったのは、その大きさ。自分たちの二倍はあるだろうか。
いや、三倍はありそうだ。腕や足と思えるモノの端には、鋭く白い爪が見える。

その姿は、肉食恐竜を思わせる。
成熟期の『ティラノモン』だ。

リンリンシャオの表情が強張る。ベルトランは平然としていたが、頬を流れる汗が、その心中を表していた。
「(・・・どうする?)」
アキラは自問自答を繰り返す。
正直、勝てる相手ではないだろう。成長期と成熟期には、かなりの差があるし、
実戦経験の乏しいこの三人には、荷が勝ちすぎる。

だが、ここまで一本道だった。他のルートを探すことはできないだろう。
なら、倒すしかないのではないか。
アキラは、二人を見る。ベルトランは平気そうだが、リンリンシャオが問題だ。
リンリンシャオは自らを弱いと考えている節がある。今までの戦闘も、どこか消極的だ。

アキラは、意を決したように二人を見た。
「・・・よし、二人とも、行こう。」
リンリンシャオとベルトランが、目を見開く。
「・・・た、戦うの?成熟期と・・・?」
リンリンシャオが怯えた声で言う。
「・・・良いだろう。行くぞ、リンリンシャオ」

ベルトランが歩きだした。少女が俯き、首を振る。
「い・・・いや・・・勝てるわけないじゃない・・・。」
アキラが、そっと肩に手を置いた。リンリンシャオがアキラの顔を見る。
「リンは、ここに居て。無理に戦うこと無いよ。大丈夫、オレ達だけで行くから。」
少年は優しい声でそう言うと、少女に背を向けた。


もうティラノモンは目と鼻の先だ。
「・・・リンリンシャオは?」
ベルトランが問う。
「あの子は、戦闘向きじゃない。」
「・・・ふん、甘いやつだな。・・・バトルフィールド展開」
ベルトランが、腕についているAPアダプタに命じる。
空間がゆがむ感覚。
バトルフィールドが形成されてゆく。

そこで、ようやく二人に気づいたティラノモンが、咆哮を上げた。
「ソウルチェンジ!!」
二人の体から光が発せられる。
そこにティラノモンの足が迫った。
地響きがなり、砂煙が舞う。

砂煙の中から、二本の光が飛び出してきた。
光はティラノモンを中心に左右へ分かれる。
途中、光がはがれるように消え、
アキラ・・・アグモンと
ベルトラン・・・テントモンの姿が現れた。

アキラとベルトランは、ティラノモンを前後から挟むように対峙した。
ティラノモンの前に降り立ったアキラは、思い切り息を吸い、吐き出す。
大きな火球がティラノモンに向かう。
ベルトランが空中から、触覚を擦り合わせ、電流を飛ばす。

ティラノモンは体を回転させ、尾で電流と火球をかき消した。
だが、二人はその事を気にすることなく、距離を置きながら、各々の必殺技を放つ。
戦闘は、持久戦にもつれこんだ。



「・・・アキラ・・・ベルトラン・・・」
先ほど、バトルフィールドが展開された。あの部屋の中心でアキラ達が戦っているのだろう。

「・・・あんた、そこで何してるの?」
突然、後ろから声をかけられた。
リンリンシャオは跳び上がりそうになるのをこらえる。
振り向くと、そこには青い髪をツインテールにした同じくらいの少女が立っていた。
同姓のリンリンシャオからでも分かるくらい、可愛い顔立ちをしている。

頭にはメカニックがつけるようなゴーグルをかけ、
着ている服装も、ボロボロながらも作業服のようなツナギだ。

「え・・・えっと・・・あなたは?」
リンリンシャオが少女に尋ねる。
「あたし?あたしはマユミっていうの。よろしくね。」
少女は笑顔で答えた。
「あ、えっと・・・リンリンシャオです、よろしく・・・。」
その少女の明るさに少々気圧される。

「ん〜・・・ねぇ、リンリンシャオ、あそこで戦ってるの、あんたの仲間?」
リンリンシャオの表情が驚きの色になる。
それもそのはずだ。バトルフィールドは、その空間を切り離し、戦闘区域を隔離させるもの。
今、この少女は、そのバトルフィールドの中で戦っているアキラ達が見えているのだ。
それは、空間を越えて視認しているということ・・・。

リンリンシャオはそこまで考えて、頭を横に思い切り振った。
そんなバカな話があってたまるか。そんなことができたら、もう人間じゃない。
考えをまとめようとするリンリンシャオに、少女はさらに混乱させる要素を提供してくれた。
「・・・ねぇ、リンリンシャオ、なんであんた、見えない振りをしてるの?」









もう・・・アレです、アレなんですな言い訳。
どうも・・・かなり続きが遅れてしまって申し訳ありません感がバリバリの酒呑 童です。
なんというか・・・言い訳させていただくならば、デジモンワールド2のソフトが紛失してしまったこと、
パソコンが壊れていて、なんかもう、色々駄目だったこと、
そして、私自身のモチベーションがてんやわんやだったこと・・・

・・・はい、申し訳ありません。こんな駄作、楽しみにしてくださっている方がいらっしゃるとは思えませんが、
これはけじめの問題ですものね。

もうアレです、二次創作とは言えない代物にしてやりましょう。えぇ、してやりますとも。


・・・ごめんなさい、頑張ります。頑張りますから、見捨てないでください。

それでは、次の駄文で・・・。
またお会いしましょう!


感想

酒呑童さんソフト紛失とはまた……

私としては原作というのは
超えていくものだと思っていますし、いいのではない でしょうか?


まあSSっていうのは多かれ少なかれ元の作品と違ってくる物だし。

問題ないと思うよ。

でも、ルリ……っと様。

君が原作を超えていくなんていうのは珍しいね。

一体どうしたの?

原作……確かにいいものです。

私の扱いも大きいですし。

TVではヒロインの筈のユリカさんがミスりまくる所為で余計に私がクローズUPされましたしね。

でも、結局の所。アキトさんが結婚式をあげたのは
胸だけ女だけでした。

私は劇場版であれだけ切ない女の顔を見せたのに、

結局はキスすら満足に出来ていない始末。

正直言って、駄目すぎです。


つまり?

原作では私は幸せになれないんで す!!!

ですから、皆さんも原作など気にせず!

私とアキトさんのラブラブ話を書いてください!!!

いや、このお話とは全く関係ないでしょう。

というか、デジモンの感想書こうよ(汗)

……っは!

確かに少し熱くなっていたようです。

今回のお話は入隊直後のおかしな命令と、

その命令の先で見た常識外の出来事といった感じですね。

そうだね、人間とデジモンの中間みたいな格好をしていたそれも気になるし。

リンリンシャオに声をかけた少女も気になるね。

まあ、その辺りは大体予測がつかなくも無いですが。

しかし、少女って青い髪をツインテールにしたって……

私ですか!?

ははははは……

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酒 呑童さん への感想はこちらに!

掲示板でもかまいません♪



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