キラとアスランは海岸線に空を見上げながら瞳を瞑る。
その瞬間、2人は輝きを放ち2人はフリーダムとジャスティスを起動する。
「行こう。アスラン！」
「ああ！」
そう言うと2人は何時もの通りに膝を折り曲げて発進する。
先行はアスランだ。
アスランはスラスターを全開にまですると言い放つ。
「アスラン・ザラ、ジャスティス、出る！！」
そう言うとアスランは地面を蹴り大空へと舞い上がった。
続いてキラも発進する。
「キラ・ヤマト、フリーダム、行きます！」
そう言うとキラもアスランと同じ方向に飛び立つ。
2人は赤と蒼の軌跡を残して海岸から姿を消した。
ソレを見送った千冬はインカム越しに全員に作戦開始を告げる。
「現時刻を持って、『オペレーション・ブロークン・ゴスペル』を開始する！」
時間は1時間前に遡る。
キラとアスランの作戦はこうだ。
先ず、キラとアスランが福音に接敵、威力偵察を開始、詳細スペックデータに無い情報、敵ＩＳのウィルスの汚染の有無、コアユニットの無傷での奪取の可否、敵ＩＳの学習能力速度の調査、クラッキングの場合、解除の可否及び、衛星データリンクの洗い出しによる発信源の調査、情報に無かった敵兵装の正確な破壊能力と射程の調査を行いつつ、一夏達が到着するまで福音を足止め、然るべき後に情報を加味した上での福音との戦闘。
外部からのアクセスが通じる場合はキラがアクセスするまでの護衛及び時間稼ぎ。
ソレが困難或いは不可能と判断された場合は全機による集中砲火による破壊。
が、キラ達が提示した作戦プランだ。
あくまで作戦の成功を考えればキラ達だけで落とすべきなのだろうが、外部からの妨害も予想される為、兵数は多いに越した事はない。
「以上が僕とアスランの作戦です。質問は？」
その質問にラウラが挙手をする。
「作戦の大まかなプロセスは理解した。問題は兵員配置だが、どの様に配置する？」
その質問にアスランは真耶の所まで歩み寄り、畳の上に投影された画面を左手でキーボードを操作しながら、右手のポインターで指し示し説明する。
「先ずは、突撃前衛は一夏、箒が担当、強襲掃討は鈴とシャルが担当する。迎撃後衛は俺とキラが担当。戦況に応じて俺は突撃前衛と強襲掃討を兼任、キラは打撃支援、砲撃支援、を兼任してもらう。セシリアは、打撃支援を担当、ラウラ、君には砲撃支援と制圧支援の両方の任務を行ってもらう」
続けてキラは作戦詳細を説明する。
「後は、戦況に応じての臨機応変な対応を行って貰う。実戦部隊の指揮官は今回、アスランが担当。その理由は福音が制御可能な場合、僕が制御を行わなければならないから部隊指揮所じゃ無いんだ。その為に今回は皆、アスランの指揮下に入ってもらう。HQは織斑先生及び山田先生が担当になるから」
そう言い、キラ最後にこう言い放った。
「皆、コレは実戦であり訓練じゃない。最悪の場合、“戦死”だ。作戦参加の強制はしない。それでも、戦うと言うなら。僕達の指揮下に入ってもらう」
その言葉に、一夏は覚悟を決めたらしく握り拳を作り言う。
「やる。俺はキラとアスランの作戦に参加する」
その言葉に皆頷きながらキラとアスランを見る。
アスランはディスプレーの前に立ち、一夏達の覚悟を受け止めた。
「すまない皆、皆の命を俺にくれ」
そういい、アスランは背筋を伸ばし敬礼をした。
キラもまた、アスランに習い敬礼をする。
正直、アスランもキラも自分の事がバレるかも知れないが、覚悟を決めた一夏達に最大限の敬意を払いたかった。
それ故にアスランとキラは敬礼をしたのだ。
その姿に、一夏達はキラとアスランに軍人の面影を感じた。
特にラウラはソレを肌で感じ取りながら思う。
（先ほどの作戦立案といい、部隊配置といい、部下への訓示といい、敬礼といい、アスランもキラもまるで軍の指揮官ではないか……アスラン、お前は一体どんな過去を背負っているのだ？ 聞きたい……アスランが最愛といった女の事を含めて……だが……何故だ？ 私は怖いと感じている……一体、何を恐れているのだ？）
ラウラの恐怖はソレを聞く事でアスランとの関係が壊れるのでは、という恐怖だが、恋愛経験の無いラウラにソレを理解する事は難しいかも知れない。
シャルもまた、キラを見ながら想いを馳せる。
（キラって軍人みたいだね……さっきの敬礼にしても、更衣室や大浴場で見た体つきにしても……聞きたい……キラの過去を……でも……聞けない……キラの心を傷つけずに心を土足で入らないように聞く事なんて出来ない。解らないけど……あの瞳の奥にある憂いを帯びた光……正直、ソレを聞く勇気も資格も僕には無いと思う……）
そう思いながらキラを見つめるシャルだった。
地図にない基地では福音暴走の対応に追われていた。
オペレーターはコンソールを忙しなく操作し、上級指揮官は関係各省庁に連絡を取っていた。
「福音、尚も超高速で移動中！」
「アクセスはまだ受け付けんのか！？」
その言葉にオペレーターが叫ぶ。
「駄目です！ 全て試しましたが効果ありません！！」
指揮官は明らかにイライラしながら事の状況を見守っていた。
その時だった、オペレーターが叫ぶ。
「高熱源体、急速に福音に接近！！ 数は２！！ その速度……」
オペレーターが言いよどむ。
指揮官は怒鳴るように命じる。
「早く言いなさい！！」
「……その速度は福音の３倍の速度で接近中！！」
その言葉に指揮官は我が耳を疑う。
実際、福音の速度はマッハ４。
現在、第３世代では最高速と自負している。
ソレの３倍の速度で移動している物体がこの世界にあり得るのかと。
「ミサイルか？」
指揮官の質問にオペレーターは熱紋ライブラリーを慌てて称号する。
「これは……ISです！！ ISが２機、極超音速で接近しています！！」
「一体何なの！？」
キラとアスランは極超音速で移動しながら通信で会話をする。
「アスラン、目標到達まで後１分、先行して足止めして！」
「解った！！」
その瞬間、福音は銀の鐘を発射した。
しかし、キラとアスランは極超音速の速度を殺す事無く回避してみせる。
そして、先行したアスランはニヒルに微笑みながら福音を見つめ、こう言い放った。
「見せて貰おうか、アメリカとイスラエルが開発したISの性能とやらを」
と。
あとがき
今回の配置はマブラヴオルタの兵員配置を参考にしました。
後、アスランが某赤いロリコン彗星の語りになってしまった。
押して頂けると作者の励みになりますm(__)m