箒達が出撃しようと歩き出した時、ユックリと2つの人影が箒達の進路を阻んだ。
身構える箒達はその人影が誰かすぐに解った。

キラとアスランだ。

「案の定、だね……」

そのキラの言葉に全員がビクッとする。
正直、キラの言葉は静かだが恐怖を感じずにはおれない物があった。

「全く……様子を見に来て正解だったな……」

アスランは明らかにキレていた。

「お前等……何処に行く気だ? 待機命令の筈だが?」

その言葉に箒達は答えられない。

キラは静かに、だが、強い口調で箒達に言い放つ。

「君達は何をしているか理解して行動しているんだろうね?」

その言葉に何も言えない箒達。

その態度にアスランがキレる。

「待機命令無視、ISの無断使用、軍法に照らし合わせればよくて無期懲役! 悪くすれば銃殺刑だ!!」

その怒声に萎縮する箒達。

しかし、ラウラは反論する。

「アスラン、確かに軍でのそれらは軍刑法に照らし合わせた時の罪状だ。だが、今の我々はIS学園生徒だ。国家軍法及び、国際法は適応範囲外だと認識しているが?」

その言葉にキラはIS学園の校則を言う。

「IS学園校則第23条、『IS管理委員会作戦命令下における特例軍事作戦使用の場合、国際法の適応範囲内とし、IS学園生徒は国際法を遵守するものとする』ってあるけど?」

更にアスランはラウラの反論を理論的に潰す。

「更に言えば、IS学園校則第20条、『IS学園生徒はIS管理委員会が定める有事の際、派遣国家の軍事指揮下に置くものとする』とある。ラウラ、悪いがそんな幼稚な言い逃れは通用しない。力を持つものは何かしらの鎖で繋がれているものだ」

更にキラは付け加える。

「今回の作戦は本部、IS管理委員会の勅命での作戦だから確実にハーグ法やジュネーブ法なんかの国際法や、日本国の自衛隊法が適応される」

そう言われ、ラウラはしまったと言う顔をした。
そしてキラ達は武装展開をしながら箒達にビームライフルを突きつける。

「ISを没収する。出せ。さもなければ軍法に基づきお前達を射殺する」

アスランの有無を言わせぬ言葉は何処までも冷たく恐ろしかった。
銃口から殺気を感じるほどに。
勿論、キラもアスランも本気で撃つ気は無い。

脅しだ。

こうでもしないと彼女達は出撃してしまう。
その為、キラ達は一芝居打ったのだ。

しかし、箒達は頑なに否定する。

「キラ、アスラン、今しか無いんだ、 チャンスは!! 福音は止まっている今しか!!」

箒の叫びは静かな海岸に木霊す。

その言葉に鈴も頷く。

「悪いけどキラ、アスラン、今回は箒に賛成するわ。軍法だか国際法だか知らないけど私達にとって今が戦う時なの」

その言葉に全員が無言で頷く。

「……頭を冷やせ。一時的な感情の赴くままに武力を使うな。明らかに君達は頭に血が上っている」

アスランの言葉にキラも頷く。

「一時的な感情に流されての行動ならハッキリいって失敗する。冷静になれ。誰も出撃するなとは言わないよ。君達のISをカスタマイズするからISを出せと言っている」

そのキラの言葉に箒達は目を丸くする。

まさか、キラ達がそんな事言うとは思いもしなかったからだ。

箒達の知るキラ達は事、戦いになるとリアリストだ。
実現可能な事しかしないし言わない。

「な!? ホント!? キラ?」

シャルの驚きにキラは微笑んで答えた。

「戦いを挑むにしても万全の体制で臨む。ソレが僕達の流儀だ。織斑先生に新しい作戦案を提出してきた。それも可決済み。後は君達だけだ。如何する?」

キラの言葉が終わるとアスランは言い放つ。

「行動を起こす時は。冷えた頭で考えろ。そして熱い想いで任務に当たれ。自分が成すべき事、できる事、したい事と自分の実力と照らし合わせて行動しろ。お前達にはソレが出来る能力がある」

その言葉に全員が驚く。

自分達は唯、闇雲に出撃しようとしただけなのに、キラとアスランは次の戦いに備え、具体的な方法を提出し、万全の体制で挑もうとしている。

理解するしかない。

自分達は頭に血が上り冷静な判断が出来なくなっていた。

そして、キラ達は冷静な判断と決断と行動で示した。

これが箒達とキラ達の明確な差なのだろう。

箒達はキラ達に比べてガキでしかなく、具体的な打開策は無く、感情の赴くままに流されて行動したに過ぎないことを。

ソレが堪らなく悔しかった。

年は変わらないのにキラとアスランは大人をしている。

客観的に物事を見て、現実的か如何かを判断し、理想と現実のギャップを埋める為の努力を惜しまない。

更に、今、成し得る最良の一手を投じる事を怠らない。

その証拠に、キラ達は千冬に作戦の許可を貰う為に即席とは言え、千冬が納得し承認できる内容の作戦を立案したり、箒達の暴走を察知し、箒達を諭し、箒達が納得できるプランまで提出した。

実力はもとよりその精神さえずば抜けている2人に何時か自分達もと思う箒達だった。


一方のキラ達は箒達の無謀を理解していた。

何せ、自分達も感情の赴くままに戦いを繰り広げ、取り返しの付かない所一歩手前まで来ていたのだから。








キラ達は海岸近くの駐車場に止めてある大型トラックのコンテナの中にいた。

アスランは今回のカスタマイズの説明を箒達にしていた。

キラはOSの調整を行う為に忙しなくキーボードを叩いていた。

「今回のカスタマイズはお前達のこれまでの訓練や実戦で得たデータを情報化し、其処から兵装最適化を行い、追加兵装及び推進システムの強化と改良を重点的に施した。更に、ソレを十全に操作する為に思考制御システムの向上も図っている」

その説明にウィンドウを展開しながらアスランは説明する。

「先ずはセシリアのブルーティアーズは兵装面での強化を行う。強化プランはブルーティアーズの操作性の悪さの改善、スターライトmkVの改良が挙げられる。これはキラのストライクフリーダムのドラグーンシステムをスピンオフする形でセシリアの空間認識能力に合わせてカスタマイズされている。これによりブルーティアーズを操作しながらの高速機動が可能だ。次にスターライトmkVの改良だが、レーザーから荷電粒子ビームへの変更とビームライフル銃身下方にレール砲を搭載してある。これにより戦局に応じた兵装の使い分けが可能だ」

そう言いながらディスプレイ画面を操作しセシリアに説明する。

「次に鈴の甲龍だが、双天牙月の刃の部分にビーム発生デバイスを装備、高周波振動により斬撃の威力も向上している。龍咆の改良型の改良点は衝撃波の弾道強化及び多弾幕放出能力を持たせた。これは多方向に弾幕を張る事が出来る能力で距離や威力、弾数も思考制御で調整可能、推進能力も旋回上昇能力の向上を計った設計をしている。つまり、ドックファイトでの戦闘能力向上を図っている」

そして、アスランはシャルに向き直り、機体解説を行う。

「シャルのラファールリヴァイヴカスタムVだが思考制御系の調整を行い、よりラビットスイッチの効率的な運用が可能となった。更に、フリーダムのレール砲の技術をスピンオフする形で両腰部に折り畳み式のレール砲も搭載してある」

説明が終わると今度はラウラに向き直り、ラウラの機体説明を行う。

「ラウラのシュヴァルツェアレーゲンだが、PICの高軌道改良とアハトアハトの弾頭に追尾機能を持たせた。その為、火器管制の神経接続ネットワークの見直しを行っている。後、パッケージの増量によりアハトアハトの弾頭交換が可能だ。弾頭はバリアバスターで、種類はサーモバリック弾頭、キャニスター弾頭、AP弾頭、などがある。」

最後に箒の方を向き直りアスランは説明する。

「箒、今回の紅椿の改良点だが全兵装のエネルギー効率が悪い事から低シールドエネルギー消費大出力型のビーム兵装に変更してある。火力そのままにシールドエネルギー消費量は通常の5割まで削減した」

そう言いながら機動状態の5機を見ながらアスランは今回の機体改良プランの説明を終える。

その説明を聞き、セシリアが挙手をして質問した。

「何だ、セシリア?」

アスランの問いかけにセシリアは質問を行う。

「国の許可は取っておりますの? ISは国家や企業が管理しているはず……ソレを易々と国家が許すわけありませんわ。どうやって国の許可を?」

その最もな質問にアスランは答える。

「今回は改良データを君達の国に公開する事による取引を行い、国の許可を得た。問題は無い」

つまり、キラとアスランは情報を餌に改良の許可を取り付けたと言う訳だ。

しかし、これは事後承諾の感が強く、各国も本部の勅命である事を踏まえた上であり、キラ達や千冬も押し切る形で許可を本部から取り付けた。

こう言った法律的な措置が曖昧なのに対し、キラ達を憤慨させたが、千冬曰く、『余りに前例が無い為の特例措置だ』と言う見解を示した。

しかし、政治的な問題や条約に文句を言える立場に無いキラ達が声高に叫んだ所で意味が無い。

兎に角、彼女達のISの調整に専念する事にした。

その時だった、トラックの扉が勢いよく開いた。

「俺のISもカスタマイズしてくれ!!」

一夏だ。

「一夏!? 傷は!? 怪我は大丈夫なのか!?」

箒が皆の言葉を代表してそう叫んだ。
箒としては一夏が撃墜される最大要因である事を自覚しているだけにその声は悲痛だった。

「ああ、大丈夫だ。問題ない」

一夏は皆を安心させるようにそう静かに力強く答えて見せた。
その言葉にアスランが一夏の所まで歩み寄り体のアッチコッチを触る。

「怪我や筋肉疲労は無いようだな……この短期間でどうやって直したかは解らんが後は……」

そう言い、アスランはビームライフルを武装展開し、強烈な殺気を一夏に叩き付ける。

一夏は若干怯んだものの直ぐ様アスランを睨み返す。

アスランは納得したのか武装解除し、殺気を霧散させると一夏に言う。

「PTSDの心配も無いようだな……いいだろう。ISを出せ。即時カスタマイズを行う」

そう言うと一夏はISを外し、アスランに差し出す。

ソレを受け取ったアスランは空いているスペースに白式を置くと展開させ調整に入る。

その時、アスランは気が付いた。

一夏のISが変化している事に。

「第二形態……雪羅……セカンドシフトしたのか……展開装甲の機能も持っているのか射撃、格闘、防御を全てカバーすることが出来る柔軟性を持たせた装備か……しかし、パワーエクステンダーでも連続稼働時間が3分に制約される。武装面の低シールドエネルギーの省エネを測る改良をすべきだな……射撃用の掌底部荷電粒子砲やビーム爪、防御用として零落白夜のバリアシールドの省エネが課題だろう」

その言葉にキラは頷きながら答える。

「それでも戦闘連続稼働時間は30分が限界……そうだ! アスラン、白式のウィング部分にパワーエクステンダーを装備させてみたら如何かな? イグニッションブーストや機体姿勢制御は翼の部分で補い、戦闘用のエネルギーは胸部のパワーエクステンダーで対応する方式にすれば延長は可能だよ」

そのキラの提案にアスランは頷く。

「そうだな、シャルのストライカーパックのエールを参考にすれば早くできる」

そう言うとアスランは部品とパーツを補修正し改良していく。

キラもそのOSの整備に追われる。

その様子を見ながら全員唖然とする。

何せ、改良プランを予め組んでいたセシリア、鈴、シャル、ラウラは兎も角、即興で一夏や箒のISを改良できるのだ。

驚くなと言う方が無理な相談だ。

しかし、キラ達は野戦整備や補給少ない前線での整備を行った事のある経験者だ。
部品やパーツの少ない状況からMSの調整を行わなければならない。

更に整備兵を前線に出すわけにも行かない激戦区での戦いが主であり一々前線基地に戻る暇も無い程、敵の砲火が降り注ぐ戦場だ。

その経験から野戦整備や機体のメンテは自分達で行う事が多かった。

その経験からこう言った機体のカスタマイズや調整はお手の物だった。

更に今回は費用やパーツ、部品は学園もちで豊富にある。

経費で落とせる事からキラ達は遠慮無しに高品質のモノを学園側に要求した。

値が張る品物ばかりだったが千冬も福音撃破が最優先とし目を瞑った。

兎に角、キラ達は福音撃破に向けての下準備を着々と進める。




あとがき
遅くなりました。
何とかISガンダムSEEDもボチボチあげていきたいと思います。



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