連合軍将達の憩の一時は、遂に終息を迎えた。予定通り、出撃する日が来たのだ。次元空間に浮かぶ、時空管理局(A・B)次元航行部隊の仮総拠点の第二拠点。
そして、一〇キロ程隣に並んで浮遊しているのが、防衛軍移動拠点〈トレーダー〉である。この二つの拠点の間には、時空管理局の次元航行艦、地球防衛軍(E・D・F)の戦闘艦、エトス、フリーデ、ベルデルの三ヶ国の戦闘艦、総勢一一三〇隻を数える艦艇群が隊列を組んでいる。
異種異混の艦艇群が並ぶ様は圧巻と言える。この戦争の大本であるSUS軍総本山〈ケラベローズ〉要塞を攻略する、歴史上類を見ない連合艦隊だ。
この連合艦隊が出撃する今日、戦場に行く勇士を見届けんと多くの人が、第二拠点へと集っている。さらには大々的に報じようと、メディア関係者も集まっていた。
  第二拠点ドッグのフロアには、連合艦隊総司令官のマルセフを始めとした、〈シヴァ〉の主メンバーが整列し並んでいる他、各艦隊指揮官と一部幕僚も並んでいた。
勿論、管理局初の第一機動部隊司令官に就任したクロノ・ハラオウン他、参謀の八神 はやて、副司令官のゼヴィル・ランスバッハ准将もいる。

(遂に、この日が来たんや……)

雌雄を決するべき時が来た事に、はやては武者震いを覚える。今までは特殊部隊――第六戦術教導団の再編や、新第一機動部隊の創設に尽力を尽くしてきた。
それ故、艦隊戦といった大規模な戦闘が行われる最前線に立った経験は無く、いよいよそれを目の当たりにしようというのだ。
  ただ今回は参謀としてクロノをサポートすることが、彼女の最大の役目だった。機動六か時代と同じように、自身が前線に出向くことはない。
代わりに前線へ出るのが、親友のフェイト・T・ハラオウン、高町 なのは、守護騎士団(ヴォルケンリッター)のシグナム、ヴィータら、他パイロット達である。

(生きて……生きて、皆で帰るんや)

  自分だけ後方にいるというのが、何やら後ろめたい事もある。だが、そのパイロット達に的確な対応を練るのも、はやての仕事でもある。
彼女の隣に浮遊するリィンフォースUも、いつもながらの可愛らしい表情の上に、緊張した表情を被せているようだ。
総力戦に全てを賭けるこの戦いで、未来が切り開けるかどうかは自分ら共々、連合軍全将兵の腕に掛かっている。自然と、はやての右手に力が入った。
  出撃へ向けての華、と言うにはあまりにも食い違いがある。連合艦隊出撃に際しての出発式が簡易的ではあるが、執り行われる事になったのだ。
総勢たる面々の表情は、まさに宇宙戦士あるいは軍人であることを示している。古の防人の如く敵地へ飛び立つ戦士達を、見送る側として伝説の三提督、レーニッツ、リンディ、レティら高官の提督勢に加え、地上部隊幕僚長マッカーシー大将、本部長フーバー中将らも、その席に顔を並べていた。
  そして、出撃する将兵達へ向けて、管理局を代表してラルゴ・キール元帥が前に立ち、言葉を発している。
これまでに、管理世界のために戦い続けてきた防衛軍に感謝の意を表するとともに、新たに友軍となったエトスら将兵に対しても、感謝した。
同時にこの戦争に巻き込む事となってしまった、と陳謝する。

「今まで多くの犠牲が出てしまった事は。悔やんでも悔やみきれない。そしてまた、こうして戦場へ向かう諸君には、誠に申し訳ない」

  これからもっと多くの犠牲を払う事になるだろう。SUSとの決戦も生半可ではないという事は、十分に承知している。
矛盾を言うようだが、犠牲を払ってでも勝たねばならない。さらにマルセフの唱えた早期講和、これが達成されれば一番犠牲が少なく済む筈だ。
無論、これが成功する保証は何処にも存在しない。お互いが死に絶えるまで、続く可能性の方がよほど大きかったと言えよう。
  そうなった場合、連合艦隊はどれだけ生きて帰れるだろうか。キールの話す傍で、リンディはそう思う。この決戦には、クロノとフェイトも参加している。
心配ではあるが、この席で暗い表情をするわけにもいかない。やがて、キールが全員の無事を祈る、と伝えると自分の席へ戻った。
そして次に立ったのはマルセフである。マイクの前に立つなり、一度辺りを見渡す。皆の視線が注目する中で、彼は出来る限り手短に纏めようと、口を開いた。

「フュアリス・マルセフだ。諸君、我々は遂に、SUSと雌雄を決する時が来た。敵はなお、強大ではある。だが……我々は、負けるわけにはいかん! 諸君、この短い間に蓄えた力を、全身全霊を持って発揮し、今一度、我々人類の……全生命の意地を見せつけてやろうではないか!!」

普段になく、マルセフの演説には力が入っていた。これは全軍の士気を上げるための手段であり、自分自身に対する激励の意味もあったのだろう。
  事実、連合艦隊で一番に士気の低い部隊と言うのが管理局だった。彼らの有する艦船で新造された新鋭艦は、全体の一割程度しか存在しない。
他は従来の艦船であり、これがSUSには力不足でしかないことを、骨身に染みて分かっているのだ。いくら数を揃えようと、その不安は容易に消せるものではない。
艦長として艦を指揮する局員あるいは提督一同も、以前とは違って強気の態度は見られない。最初こそは、防衛軍の艦船など敵ではないと公言していたものだ。
意気消沈とまではいかないが、決して高くもない士気を高めて決戦に挑まねばならないマルセフ、そして管理局部隊総司令オズヴェルト提督の気苦労も絶えない。
  列席するリンディ達もそう心配する一人だ。だが、マルセフの演説で多少の効果はあったのだろか。徐々にではあるが、表情に明るみも増している。

「そして、最後に言いたい。諸君……必ず、生きて此処に戻ろう。生きて、家族と、そして友人と、再び会いまみえよう! ……以上だ!!」

ビシッ、空を切るような敬礼を、将兵一同に向ける。自然と、将兵側もそれに反応して敬礼を返す。そしてこれから各艦に乗艦し、出撃シークエンスに入る事になる。
列をなしてシャトルへと乗り込む各艦隊将兵達の姿に、親族や友人たちは大声で送り出す。頑張れよ、生きて帰ってこいよ、死なないで、と想いは様々だ。
リンディは声こそ出さないものの、乗り込んで行くはやて達を見送りつつも無事を祈る。

(クライド……この想いが聞こえたら、聞いて頂戴。どうかあの子達を……クロノ達を守って)

こんな時まで、夫へ守りを頼むなんていうのは図々しいかしら。そう悩むが、そうでもしなければ、あの子達が返ってこないのではないかと心配になるのだ。





「なのはママ、フェイトママ……」

  ミッドチルダの首都クラナガン郊外、聖王教会大聖堂の仮大教室にて、第二拠点出発式の報道を立ちながら眺めやる少女――高町 ヴィヴィオの姿があった。
腕の中には、少女が大切にしている兎の人形が抱きしめられているが、その抱きしめる腕に力が入る。ギュッと抱きしめるその様子に、少女の友人二人は声をかける。

「大丈夫だよ、きっと戻ってくるよ!」
「そうだよ。心配しなくても、戻って来てくれるよ」

その様に言ってくれる友人二人に、ヴィヴィオはややぎこちない笑顔を返す。血の繋がっていない母親とはいえ、育ての親となってくれている二人への愛情は大きなものだ。
一度はJS事件で、なのはを手に掛けようとしたが、それでも全力で自分を救ってくれた。今の少女にとって、二人の親を亡くすことは絶望に等しいだろう。
  画面の中でシャトルの多くが、各艦へ乗り込んでいく様子が見える他、時折まだフロアに残る連合軍将兵の様子も映されている。
ヴィヴィオ以外の少年少女達もまた、今目の前に起きようとしている過酷な戦闘を、ひしひしとその肌に感じ取っていた。


  ――ふと、少女は此処へ移動する時の、なのはとの会話を思い出す。


「高町一尉、お願いします! せめて管理局の内示だけでも!」

  それは、ザンクト・ヒルデ魔法学校が、聖王教会へと総移動となる当日の事だった。局員の手で制止されてもなお、インタビューを強制しようとする大勢の記者。
緊張の面持ちで頭を下げながら彼女は送迎に来た地上車に乗り込む。車はすぐに発進し高速道に入る。

「ママ……」
「ごめんね、ヴィヴィオ。少し大変だけど……これから教会の寮で、生活することになるから」

相次ぐ管理局の失態と敗北の中で、市民の彼らを見る目は厳しかった。各メディアの行き過ぎとも言える取材攻勢も、エスカレートする一方で管理局もその対応に苦慮していた。
それはエース・オブ・エースと呼ばれ、管理局の有力な魔導師である彼女ですら例外ではない。彼女の娘の場合、さらに状況が悪くなる。
  何といっても彼女は古代ベルカ王家『聖王家』の血統保持者なのである。この情報ですら非公式のものであるのに本来の姿は“最後の聖王のクローン体”である事なのだ。
クラナガンへのSUSの攻撃……この混乱の中、誰がこの少女を政治利用しないとも限らない。なにしろ管理局を構成する管理世界住民は、聖王教会を精神的なより所とするものも多く、聖王教会は古代ベルカの『聖王』を信仰の象徴としているのだ。
もしSUSに誘拐され旗印とされれば、聖王教会、管理世界住民そして管理局とドミノ倒しの様に倒れるのは、誰の目にも見えている。
  さらにこの混乱に乗じて各世界の反政府勢力、反管理局勢力も蠢動している。聖王を手にいれ“箔”を付けようという輩がいないとも限らない。
そこで管理局は過剰ともいえる手を打った。ヴィヴィオの通う学校であるサンクト・ヒルデ魔法学院初等科を、まるごと聖王教会本部に移すという計画である。
ただし、表向けには子供達の疎開として発表されてはいるが、この裏の事実を知る者はそうそういない。無論、防衛軍でさえ、であった。
  そして管理局の精鋭部隊と聖王教会騎士によって、聖王教会本部を封鎖。さらには防衛軍の戦力を借りて、実質的に籠城の構えを取らせる事にしたのだ。
誘拐には対抗できるし万が一、教会本部に敵が押し寄せても逃げる時間ぐらいは稼げるだろう。守られる対象となっているヴィヴィオとしては、自分の母親が、その精鋭部隊に配属されていると思ったのだが……。

「ママは、今からフェイトママのところ?」
「うん……ごめんね。ヴィヴィオと一緒にいたいけど、それじゃみんなを守れないヴィヴィオも……」

  ヴィヴィオは愚かな子ではない。むしろクローンとして基礎的な知識と自意識を与えられ、二桁の年齢にならない内から並外れた判断力を持つ。
さらに母親たる、なのはとの絆も強い。伊達に以前の事件で、母娘相撃(娘が操られていたとはいえ)を乗り越えたわけではないのだ。それでも不安は消えない。
何故ならば、これは“戦争”である。いままでの事件とは違う、本気の殺し合いを要求されているのだ。恐ろしくて不安でたまらない。それでも何も口に出せない。
  沈黙の中、車の駆動音だけが鳴り響いている。そして地上車は目的地に着き別れの時が迫る。

「大丈夫」

教会正門前で、なのはがそう語りかける。

「今まで、ママにも一杯いろんな事があった。泣いた時や死んじゃいたいと思った時もあった。でもママは戻ってきたよ、フェイトママや、はやてちゃんのところに。だけど今度は違うよ。ママはヴィヴィオの所に戻ってくる。ほかの誰でもなく……ヴィヴィオのところへ」

何も言わずヴィヴィオが、なのはにしがみつく。そして振り返らずに教会の門まで走る。絶対に振り返らない、振り返ったら泣いてしまう。
戦場に行くママの前で涙だけは見せまいと必死でヴィヴィオは耐えた。また、ヴィヴィオはなのはママの抱擁が震えていたのを敏感に察していた。
  JS事件とは比較にならないであろう大会戦。母親は、それを生きて戻ってくると約束したのだ。ならば、自分もそれを信じて帰りを待とう……いつものように、明るい生活に戻れることも信じて。
  同じ教会内の執務室。そこには、当教会の主たるカリム・グラシアを始めとして、シャッハ、ユーノ・スクライア、ヴェロッサ・アコースらもいる。
報道されている艦隊の様子を見て、カリムが最初に口を開いた。

「遂に、この時が来ましたね」
「そうだね……君の予言した内容が、現実になるかどうか……」

そうだ、予言では破壊神が率いる軍勢がSUSを打ち砕く、というものであったのだ。占い程度のものだと言っていた彼女も、これが現実に成り得るかは分からない。
予言が外れる可能性も否定できないのだ。予言が当たるかどうかは、マルセフ総司令一同の腕に掛かっている。後方にいる彼女らにどうできる問題ではない。

「これで今後の路線が決まる。僕らが……地球世界が、管理世界が、未来を与えられるか。それとも……」

ユーノがその先を言わないが、それは皆が予想している。SUSに打ち勝ち一先ずの自由を得るか、それともSUSの属国として管理局や世界の歴史に終止符を打つか。
そして、戦いにゆく連合艦隊には、ユーノやカリム、ヴェロッサらもよく知る友人や幼馴染が大勢乗っている。全員が無事に帰ってくれることも、切に願った。





  視点は次元空間を超え、マルセフ達の故郷――地球に移る。地球の防衛軍総司令部、中央指令室に集う数名の高級指揮官や政府組の姿があった。
まずは防衛軍総司令官の山南元帥を始めとして、総参謀長のカバード中将、次席参謀の島准将ら軍人組。別の方では、科学局長官の真田、そして地球連邦大統領バライアン他数名。
その中の一人、五七歳で痩せ型体系、ちょび髭を生やしたその表情はホンワカとしており、何処となく古い時代を匂わせている人物がいる。
  政府組の一人、極東管区日本支部行政長官 近衛 史昌(このえ ふみまさ)だ。名称と形は違えど、昔で言う総理大臣に相当する役職である。
軍人ではなく行政関係の人間で、組織管理能力は悪くないが、積極性に欠けるきらいがある。さらには、どんな時も慌てた事がないと評判であったが、逆に“昼行燈(ひるあんどん)”とあだ名される始末である。
  ただし彼の“昼行灯”というあだ名は良い意味で伊達ではない。どんな時も慌てず、冷静に閣僚を纏める事に徹し、市民への対応を練ってきたのだ。
即ち、組織内部において調和性に優れた人間と言える。様々な性格や考えを持つ官僚を纏めるのは、並みならぬ苦労があるのものだ。
それを彼は持ち前の性格で、官僚内及び連邦議会において歩調を合わせてきた。彼の祖先は定かではないが、かつて政治界で首相を経験したほか、爵位を持っていたともされる。
  が、彼にして見れば差ほど重要視する程でもない事である。

「彼らには災難続きですな……誠に忍びない」
「致し方ありますまい、近衛長官。SUS絡みともなれば、放ってはおけますまい」

指令室の大型ディスプレイの一面を眺めながら近衛が呟くと、山南がそれに応える。以前の会議の場では、軍官僚や政治官僚の三分の一近くが、いっそのこと管理局に対しては援助に留め、帰還させるべきではないか?と言う意見も出ていたほどだ。
  だが転移した残存艦隊は面倒事に既に巻き込まれ、はては敵が一度交えたSUSとくる。しかも帰還する術がなく、結局は管理局の技術を借りる他ないのである。
ともなれば、防衛軍はタダでは帰る事もままならず、共通の敵となったSUSを放置することは防衛軍にとって脅威となり続けるのだ。

「戦力は辛うじて拮抗するという事だが……勝てるだろうか」

やや不安な言葉を口にしたのは、バライアン大統領である。冷静さ維持しつつも、やはりその表情に不安の色は隠せていない。無理もないであろう。
移民計画での大ウルップ星間国家連合との戦争で、大いに肝を冷やしていたものだったが、今度は次元空間内部での戦争とくるのだ。
どれだけの人命と艦船が失われていくのだろうか。地球連邦を纏め上げる人間として、心の痛みは増すばかりであった。
  大統領の不安に、今度はカバード総参謀長が安心させるよう、配慮する。

「心配はいりますまい。第二次移民船団護衛艦隊の生き残りは、我々の救援まで、見事に耐えきったのです。他国との協調性も固いものとなっております」
「それに、あの〈ヤマト〉がおります。三倍の敵を前にしてもなお、移民船を離脱させた古代司令もおらるのです。大統領、今は彼らの力を信じましょう」

島もカバード総参謀長に続いた。〈ヤマト〉は過去の武勲、功績からして伝説化、神格化されている存在だ。それが、移民船団でも奇跡を起こした。
  こうして出撃する連合軍艦隊を見送る市民の中にも、その伝説や活躍を知ってか知らずか、必ず勝って帰って来てくれるだろうことを信じていた。
とはいえ、あまり伝説化された話などを好む島ではなかったが……。むろん、〈ヤマト〉らを嫌っている訳ではない。神格化とは、時に暴走しがちなものだ。
それが硬直化へと繋がりかねない時もある。そこがまた、難しいものである、と島は後々に記録に書き記している。

「……そうだな。今は、彼らの武運を祈るしかあるまい。それに、我々も安心してばかりもいられまい」

  バライアン大統領が不安視する、もう一つの原因。それが白色彗星帝国の侵攻艦隊の動きだった。攻めてくるこれらの敵を、何としてでも撃退せねばならない。
山南の報告によれば、水谷大将自らが陣頭に立って迎撃を展開するつもりのようで、今この場にいないのも、その迎撃戦の準備を整えるためだ。
彼は今、土星第六衛星タイタンに建設された、地球防衛軍宇宙艦隊総司令部にいる。二ヶ月半から三ヶ月後に来るであろうガトランティスの迎撃案に明け暮れている。
次元空間側もだが、こちら地球側でも安心はしていられない。彗星帝国もさることながら、依然としてボラー連邦への注意も背けることができないのだ。
最悪の場合、挟み撃ちと言う事態になりかねないが、ガルマン帝国という存在がそれを阻止してくれている。

「兎も角、彼らの無事を……祈るとしましょう」

次元空間にて激闘を演じることになる古代、そしてマルセフら将兵の安否を気にする真田が言う。一同はそれ以外に言う事もなく、ただ静かにスクリーンを眺めやった。
  佐渡フィールドパークにて勤務する古代 美雪もこの映像を見ている。可愛がっている子犬ほどしかない、虎の赤ん坊を抱きかかえながら、ディスプレイを見つめる。
側には主任の佐渡 酒造と、長い付き合いのアナライザーもいた。美雪は心配そうな表情を、佐渡は信じているぞ、という確信した表情を……。

(生きて帰ってきて、お父さん……)

ゴロゴロ、と喉を鳴らす子虎の顎下を撫でてやる。それに気持ちよさそうに、目をつむる様子はまさに可愛らしい姿だ。ホッと美雪はその不安な表情を崩した。
  時を同じくして、日本ではなく欧州ヨーロッパ。イギリス首都ロンドンのマンションに住まう女性もまた、同じ映像を見ている。
マルセフの義娘、マーシィ・マルセフだ。病院の勤務が終わり、自宅に戻ってきて早々、出発式の様子をずっと眺めていたのだ。
途中、先の演説も聞いており、自分の父親がどれ程、この決戦に心血を注いでいるかが窺える。そうだ、お義父さんはいつもそうだったね。
  あまり時間が無くて私の事を見てやれなかったと言う父だが、その愛情は常に本物であると知っている。温厚で、優しくて、物分かりが良くて……。
そして、一度決めたら絶対に曲げない、屈しない。そうやって、地球を守ってきたのだ。かの沖田元帥も、似たようなことを言っていたのを、記録文書で見たことがあった。

「命ある限り、希望を捨てはしない……か」

今まさに、義父もそうのような心境にあるのではないだろうか? 多くの願いと命運を背負い、総力戦に臨むその後ろ姿が見えるようだ。
ディスプレイを見続けながらも、彼女はただただ、沈黙も持って届かぬ場所にいる義父の無事を祈り続けた。





  天の川銀河 西部方面に位置するケンタウルス腕、ネルトラル星系第四番惑星バンデラス。それは銀河中心から一万二〇〇〇光年離れた位置にある星系であり、銀河系のおよそ四割近くを支配下に置くガルマン・ガミラス帝国の第二の首都星である。
あの忌まわしき災厄――二重銀河の衝突によって天の川銀河の中心北部、特にガルマン・ガミラス帝国とボラー連邦は、その国力に甚大なる被害を受けてしまった。
突如現れた赤色銀河の数多の惑星や恒星が、植民星に衝突しては砕け散り、数度のハイパー・ノヴァを引き起こしたのだ。これらによる二大国の受けた被害は計り知れない。
  しかし、その大災害から一七年という歳月は、ガルマン・ガミラスの復興には十分な時間でもあった。一年で大帝国を築きあげた帝国の底力を、再び見せつけたのだ。

「銀河交差から一七年……我が偉大なる民族は、既に立ち直っている」

バンデラス首都中心部に聳え立つ、帝国の中枢たる総統府。その中でさらに中心に位置する執務室で、古代の宿敵にして親友アベルト・デスラー総統はひとりごちた。
  彼は肘掛のスイッチを押し、デスクから立体映像のチェス盤を出現させる。そのチェス盤は銀河系であり、駒は幾多の戦艦を従えた大艦隊を示している。
これは彼のスケールの大きさを物語っているだろう。ガルマン軍を示す緑色の駒は、北部方面の国境沿いにあたるマス目に、全部で六個が並んでいる。
一駒に付き一個空間軍団――凡そ六〇〇隻の艦隊。前線で待機しているのは六個空間軍団――凡そ三六〇〇隻に昇る。

(我が軍は押しているが、このまますんなりと進むとは限るまいが……)

彼が呟きながら見る北部の駒は、じわりじわりと北進しいき、ボラー連邦をさらに北部から東北部へと圧迫していた。着実に、ガルマン軍は侵攻しつつあった。
  対するボラー連邦は、先のアルデバラン会戦で失われた六〇〇隻もの艦隊があったならば、また話も違っていたことだろう。
情報部によれば、ボラーが展開する戦力は五個空間軍団(ガルマン基準に換算)に相当するようで、その数は凡そ三〇〇〇隻程だという話だった。
ガルマン帝国の総戦力は、主力の一六個空間軍団と、親衛隊による一個空間軍団、次元潜航部隊、その他警備艦隊を合計して計一万三四〇〇隻に昇る。
ボラー連邦の総戦力は残念ながら把握しきれていない。実際のところ、ボラー連邦は八〇個艦隊(一五個空間軍団並み)及び、警備艦隊などを加えれば凡そ一万二二〇〇隻前後。
  前線に出せる戦力も限られ、結果としてボラー連邦は残った五つの駒では、我が帝国の進撃を抑えられまい。いずれ大きく崩れるだろう。
何故なら、このバンデラスには残る六個空間軍団が、今か今かと出番を待っているのだ。そして問題は、ボラー連邦の精鋭がどれほど残っているかだ。
デスラーは軽く首を振り操作盤を弄る。軽く苛立った声を上げながら、もう一つのチェス盤を出現させた。

(いや、彼らを動かせないのは……ボラー連邦がいるからではない)

遂、先程の会議で議論された、SUSと称する成り上がりの国家の存在が、彼の苛立ちを誘う原因の一つであると言っても過言ではあるまい。
SUSは我等が混乱した隙をつき、銀河中心から南東方面にかけて大ウルップ星間国家連合とかいう勢力を作り、急速に勢力を拡大させてきていた……そう、“いた”のだ。
  連合国家として急成長した挙句の果て、地球に喧嘩を吹っ掛けたらしいのだが、その結果は既に知っている。自業自得としか言いようが無い。
初戦では奇襲で地球艦隊と民間人を虐殺したものの、その後はあの古代と〈ヤマト〉を筆頭とした地球艦隊の反撃に、あっという間に叩き潰されてしまった。
しかも同盟国にまで見限られたらしく、SUSはこの世界より放逐。残された星間国家連合の幾つかが、地球に吸収されたようだ。
だがあくまで、吸収ではなく“対等の連合”と地球政府は宣言しているようだが、実態は地球を指導者とした広域連合国家と言っても差し支えは無いだろう。

(地球に古代が居る限り、他国も早々に牙を向けて来る事はあるまい。SUSはどうでるか?)

  問題はその後だ。SUSは、こちらに攻め込む事ができないならば……と、選択を変えて他の世界に攻め込んだようだ。
それに地球連邦の艦隊が巻き込まれ、次元間大戦と言うべきものに変わっている。新しく出した盤に、地球側の三つの駒、SUS側の三つの駒をならべる。
そう、この戦いが銀河系に影響を及ぼす事が確実なだけに、安易に親衛艦隊を動かす訳にいかないのだ。
  何故遠く離れたデスラーがここまでの情報を得ているのか? 簡単だ。戦争に勝つために情報が必要なのは、古今東西どこも変わらない。
総統府直属の諜報機関は、敵国だろうが同盟国だろうが躊躇なくその手を伸ばす。その手を止めることができるのは、デスラー総統ただ一人である。
一七〇センチの長身、圧倒的なカリスマ性と指導力を持つ彼が、こうも考え込むことは珍しい。事が彼の既知宇宙だけに留まらないことから迂闊な手は打てない。
それが、彼の苛立ちのもう一つの原因でもある。
  ふと、執務室の秘書官から連絡が入り来客を告げる。チェス盤を消し、彼は弄っていた自らの金髪を整えると入室を許可する。
地球換算で六一歳程の将官が敬礼し、部屋に入って来た。

「お忙しいところ、失礼いたします。総統」
「構わん。それで、どうしたのかね? ヴェルテ」

入室して来たのは、細身で鼻下に生やした細い髭の男性――ガルマン・ガミラス帝国軍 軍需国防相長官ヴェルテ・タラン将軍(元帥)だ。
  デスラーは彼に要件の内容を尋ねた。彼は旧ガミラス帝国時代から、使えてきた古株の一人であり、常にデスラーの身を案じつつも補佐に徹してきた。
そして、その行為は副官と言う枠を超えてはいない。また彼には、弟の総統補佐官・兼任・親衛隊長官ガデル・タラン将軍(元帥)がいる。
中肉中背にカイゼル髭の容貌のため兄よりも軍人らしい容貌をしている。そして、兄以上に忠義に厚い男である。この兄弟は、デスラーがこれまでに最も信頼している軍人だ。

「ハッ。先ほど情報部が、地球(テロン)から他国へ送信されている映像を傍受いたしまして……」
「……映像?」
「ハイ。この送信先は、アマール、エトス、フリーデ、ベルデル各国と判明いたしました」

  デスラーは眉をピクリと動かし、情報の詳しい内容をさらに引き出させる。ヴェルテは携帯端末を取り出して、立体テレビジョンにその放映されている映像を投影させた。
そこには地球艦隊他、三ヶ国の艦隊が映っている。それだけではなく、見かけない艦隊も同行していた。そこでデスラーは情報部が入手した、とある情報について思い浮かべる。

「ジクウ……カンリキョクか」
「ハイ。どうやら、地球艦隊は連合軍を編成して、あのSUSに総力戦を挑むようでございます」

  次元空間へなど、興味はない。だがSUSと聞いて、デスラーは多少の不快感を示す。

(そうだ、銀河中心部で我々が混乱している最中に出しゃばってきた、軍事国家であったな)

地球艦隊もとい古代と〈ヤマト〉の活躍で、銀河系から消えたという話であったが……よもや、次元空間にまで進出してくるとはな。
デスラーは地球連邦からの情報を入手していた。信じがたかったが、時空管理局という次元空間を収める強大な組織が存在しているというのだ。
その次元空間に地球艦隊が落ち、大ウルップ星間国家連合もそれに巻き込まれた。だが、その後SUSの来襲に備え、次元空間で抵抗してきたと聞く。

(古代……お前も、次元空間にいるのだったな)

懐かしい戦友を思い浮かべる。だが、それは別としてガルマン帝国はそれに介入する気はさらさらなかった。それも当然と言える判断だ。
  地球とガルマン帝国は軍事同盟関係にはない。あっても通商同盟だ。それにボラー連邦相手に決戦を仕掛けようという最中でもあった。
古代は不屈の男だ。死闘を演じたデスラーだからこそ、確信できる。あの男は、SUSなどと言う下劣な相手に後れは取るまい。

「ヴェルテ」
「ハッ」

デスラーはファースト・ネームで呼びかけ、確認を取らせる。

「我々はボラー連邦との決戦を挑まねばならぬのを、理解している筈だな」
「承知しております」

その答えにデスラーは頷いた。あくまでこの件は、地球の問題だ。だが……無視しえない事が一つだけ存在する。

「……ガトランティスは、確実に地球へ向かってくると思うか? ヴェルテ」
「恐れながら、小官は地球へ進撃してくるものと、推測いたします」
「ほう。君もそう思うか」
「はい。ガトランティスは、〈ヤマト〉の反撃で首都と指導者を失いました。その報復行動に出ても、おかしくはないと考えます」
「そうだな」

共にガトランティスに身を寄せた経験があるからこそ、はっきりと言える推測であった。これはまた、ガルマン帝国の対応も変わらざるを得なくなる。
  万が一、不利な体勢にある地球連邦が、ガトランティスに降りる事にでもなれば……。彼らは銀河外縁部から、太陽系(ゾル星系)一帯――オリオン腕を前線基地と化して、この銀河制圧してを来るに違いない。
この銀河を征服する事こそ、亡きズオーダー大帝の意志でもあったのだ。それを成し遂げる程の、武力、知力の双方が伴えば、の話ではあるが。

「この対策も、次の会議で論議せねばなるまい」

  まだまだ、銀河の統一には難所が多いようだ。古代よ……お前も苦労が絶えないようだが、それもまた必然なのかもしれんな。
強ければ強い程、挑戦者は敵を求めて寄ってたかってくる。皮肉かも知らんが、〈ヤマト〉という伝説と化した存在が、地球を危機に陥れるとはな。
どの道、我らはボラー連邦を徹底的に叩きつぶさねば、先に進むことは叶わぬだろう。ガトランティス相手に、対応する事もできまい。

(さて、時空管理局とやらよ……法の番人とするお前達に、守りたいものがあるか? もしもあるのならば、血を流してでもそれを成し遂げてみせるが良い)

かつての〈ヤマト〉が戦い抜いてきたように、屈する事なく戦え。戦争において、そうする度胸もなければ、これから先の時代、成すがまま食われるままとなるのだ……。
ヴェルテを退室させ、侍女に持たせた酒入りのワイングラスを片手に取る。しん、とした執務室に映る連合艦隊の映像を視ながら、彼はそれを口に含むのであった。





「艦長、機関室の準備が整いました」
「火器管制システムに異常なし」
「航行システムに異常なし」
「レーダーに異常なし」
「通信機器に異常なし」
「総員配置に付きました」
「……艦長、〈シヴァ〉の発進準備が整いました」
「ウム。ご苦労」

  乗艦開始から一五分程が経過した。〈シヴァ〉第二艦橋において、各セクションの長が準備完了を告げ、最終的にはコレムがそれを確認してマルセフに報告する。
戦術長ジェリクソン、航海長レノルド、通信長テラー、機関長パーヴィスらは、いつも通りの流れで作業を完了させている。
が、これから向かう大会戦に少なからぬ緊張もあった。そして、準備完了の知らせにマルセフは指揮官席で頷く。その席から外を眺めやる。
そこには様々な艦種が寄り集まり、今まさに出撃戦としているのだ。

「壮観ですな、総司令」
「そうだな、参謀長。だが、これが戦いい終ってどれだけ生き残っているか……いや、生き残らせなければならない」

それもまた、司令官としての務めなのだ。

「……艦長、各艦隊旗艦より発進準備が整ったと入電!」
「全艦隊のチェック完了。全艦隊の出撃準備よろし!」

 全艦の発進が整った! マルセフは数秒だけ間をおいて、口を開いた。全軍が動き出す瞬間だ。

「これより、SUS要塞へ向かう……全艦隊、発進!」
「機関、前進半速!」
「了解! 機関、前進半速!」

マルセフが艦隊全体に向けて出撃命令を下し、コレムが〈シヴァ〉の前進命令を下す。〈シヴァ〉に搭載されている六連装波動エンジン三基が動き出す。
シリンダーが勢いよく回り始める。この二つのエンジンが、四五〇メートルの巨体を軽快に動かす動力源となっているのだ。まさに心臓だ。
巨大な艦体が前進を始めると、他の艦もそれに倣って前進を始めた。目指すは、SUS総本山たる〈ケラベローズ〉要塞!
そして、この先に待ち受ける過酷な戦いに身を投じた瞬間でもあった……が、それを見ている一つの目線があった。


連合軍、動く!!



  第二拠点周辺空間よりもさらに外空間で監視行動に出ていた、SUSの多目的支援艦〈ガゼル〉から報告が入ったのは、連合艦隊が出撃してからおよそ一〇分後の事だった。
そして〈ケラベローズ〉要塞の会議室には、この報告を受けて緊急に招集された艦隊指揮官が集まっている。皆して、連合軍に対する戦意を高めているようだ。

「諸君も聞いての通り、敵連合軍は行動を開始した。目的は言わなずとも……わかるな?」

ベルガーは待ちに待った日が来たと言わんばかりの表情だ。これで連合軍を完膚無きまでに叩き潰せば、この次元空間はSUSの支配下となるのも同意義なのだ。
機動戦力を失った連合軍は、遠巻きに占領されゆく管理世界を眺める事しかできない。会議室に顔を並べている指揮官で、彼と同等の笑みを浮かべる指揮官がいた。
第七戦隊司令ルヴェル少将だ。先日の会戦で親友のレイオス“大将”の仇を討てるぞ、とその剣幕からして想像するのも容易だった。

「偵察隊の報告によれば、敵連合軍の戦力は総数一一九〇隻あまり。内部構成につきましては、管理局六九〇余隻、地球一二〇余隻、フリーデ一三〇余隻、ベルデル一一〇余隻、エトス一四〇余隻と判明いたしました」

  しかし一一九〇余隻の艦隊が来ようともSUSからすれば、恐れるに足りない連中だとみていた。その理由は就役したばかりの〈マハムント〉、及び〈ノア〉の存在があった。
が、本当に余裕の笑みを浮かべられたのはそれだけが理由ではなかったのである。

「総司令、奴らが一二〇〇隻近い艦隊で攻めてこようとも、所詮は烏合の衆でしかありません。対して我々は、本国から送られる精鋭の二個戦隊――四二〇隻があります」

ルヴェルは目頭が厚くなるような感覚にあった。SUS軍は決戦間近になってから、本国からの増援が決定された。その数四二〇隻――地球艦隊からすれば六個艦隊に相当する。
  これからするに、SUS軍総戦力は一六三〇隻に膨れ上がる計算となる。それは、連合軍の一一九〇余隻を大きく上回る規模と膨ると同時に、大きく優位に立つ事を意味する。
ここにあの空間歪曲波を加えれば、怖いものなしだ。波動砲を封じたうえに、こちらは全戦力で奴らを袋叩きにすればよい。
そして、ベルガーは全軍の出撃命令および配置を命令を下した。

「わしは要塞の指揮を執る。艦隊の指揮は……ディゲル、貴様が執れ」
「ハッ!」
「前衛の中央は第八戦隊、左翼に第二戦隊、右翼に第四戦隊を配置。後衛の中央に第一戦隊、左翼に第五戦隊、右翼に第三戦隊を配置する!」

  前衛から後衛にかけて、三個、三個という配置だ。最も戦意旺盛なルヴェルと、雪辱を晴らすだろうゲーリンらを前衛に置く事で、序盤から蹴散らそうというものだ。
場合によっては、中衛の三個戦隊が前衛の中央と両翼に進出する事も可能で、包囲殲滅戦も可能となりえる。が、それはタイミングを見計らわねばなるまい。
後に到着する二個戦隊は予備兵力として、さらに後方へ配置することになった。場合によっては、より効果的に動いてもらうだろう。
もはや敵に援軍はあり得ない。その余力さえないのは、予想するのにも難しくはなかった。

「さぁ、奴らに引導を渡してやろうではないか! 全軍、出撃せよ!!」
「「ハッ!!」」

  勇ましくも力強い命令に、会議室の司令官たちは刺激されたかのように復唱した。ディゲルは表情に現れないものの、ルヴェルに劣らぬ闘争心を掻き立てられていた。
前回の本局戦での屈辱的な敗北を、この戦いで晴らそうと言うのだ。SUSを相手にしたことが、どれ程に不幸な事であるかを教えてやる!
会議室から退室し、ドックへ向かう彼はそう意気ごんだ。そして、到着するやいなや、その座乗すべく巨大な化け物が、新しい主を待ちわびていた。
ハッハッハッハ! 見ていろよ、下等生物どもめ! この〈ノア〉と、全軍の力の前には手も足も出ないことを教えてやるのだからな。
  全長二qという巨大な三角錐型の艦体をした〈ノア〉。黒曜石のような艦体色で、艦首から艦尾にかけて、赤い三角形の模様が連なるように並んでいる。
平たい艦体上部の後部には、要塞と似たような形状の艦橋が建っている。一見何もない武装は、全て格納式、収納式の主砲とミサイル発射管だ。
その武装数は以下の通り――

収納式大口径単装主砲を四五門、格納式多連装中口径・小口径固定ビーム砲を四八六門、垂直式ミサイル発射管を三二四門……

圧倒的戦闘能力を秘めた戦闘母艦であることは、一目瞭然だ。艦体の三角形模様がそのままハッチとなり、内部にズラリと配備された副砲群、ミサイル群が露わになる。
しかも、防御性能もSUS戦艦の比ではなく、装甲はより強固に、電磁幕も新機関により強力なものとなった。その威力、波動砲(タキオン・キャノン)でさえ凌ぎ切る計算であった。
  艦橋に上がり、座席に身を預けたディゲル。オペレーター達は既に着席しており、出航準備も万全なものとなっていた。

「発進準備、完了しております」
「よろしい……。全艦隊、これより出撃する!!」

主機関一基と予備機関三基が唸り声を上げる。徐々に動き出す巨大な艦体は、やがて広大な次元空間へと飛び立つ。ディゲルは遂従事てくる艦艇を見やった。
この前の様にはいかんからな、覚悟することっだ。と、彼は口元を不気味なほどに釣り上げた。悪魔の笑みそのものである。

さぁ……血の宴会(ブラッディ・パーティ)の始まりだ!





〜〜あとがき〜〜
どうも〜第三番惑星人です!
二週以上の時間が空きまして、まことに申し訳ない!
しかも今回は各パートの様子を描いただけと言うもの……。
次回から、決戦に入る筈ですので、それまでしばしお待ちください!
それと、この作品内におけるデスラーの声はあくまで伊武氏です。五〇代ともなれば、この方が一番だと思いますし……。
加えてタランにも、独自設定ながらファーストネームを付けました。
公式設定で、正式な名前が確認でき次第、それに変更したいと思います。

※追記

それと、〈ノア〉級の設定はイラストとともに掲載しておりますので、ご覧ください。



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