外伝『試合』


 時空管理局 第二拠点に備え付けられている、魔導師用トレーニングルームがある。ここに限ったことではないが、殆どの拠点、施設には常設されているものだ。
魔導師として高い腕を維持するためのことは勿論、バーチャル機能の高さから、様々なシチュエーションが想定できる優れものでもある。
本来ならば、そんな訓練施設に防衛軍の人間が入ることはない。彼らの艦にも、小さいものながら、トレーニングルーム等が備え付けられているからだ。
  だが、今日に限って、防衛軍の人間が一人やってきていた。そして、それと対当するのは、管理局の者であった。どちらも訓練用特殊スーツに身を包んでいる。
一見すると何やら決闘じみた雰囲気にも思える。対して、それを観戦室から眺める数名の目線は、目の前で行われることが、試合等と言う生々しいものではないことを知っていた。

「よろしくお願い致します、中佐殿」
「こちらこそ、よろしくお願いします。シグナム二尉」

先に口を開いたのは、時空管理局二等空尉 守護騎士団(ヴォルケンリッター)の“烈火の将”ことシグナム。片方は地球防衛軍 中佐 目方 真奈美。
  普通なら、こうして向き合うような機会はない二人。それが何故、このトレーニングルームの一室において、今まさに刃を交えんとしているのか。

(シグナムの悪い癖やなぁ……もっとも、口を滑らせたウチがあかんのやけど)

観戦室にてため息を漏らしたのは、シグナムの主――八神 はやてであった。シグナムは、周りの者が認める戦闘好き(バトルマニア)なのだ。それも、根っからの。
噂によれば、流血さえあり得る真剣勝負をした時でさえ、騎士としての血が疼くのだ、と勝負後に呟いたと言う話もあるという。
  とはいえ、それがプログラムの定めかは別として、人と何ら変わりない思考能力を持つ彼女らヴォルケンリッターの全員が、バトルマニアではない。
これはシグナムだけが持つもので、同じヴォルケンリッターのヴィータも性格からして気性が荒く、戦闘を好むと観られがちではある。
が、それは誤解と言うものである。彼女にそんなことが耳に入れば……。

「馬鹿野郎、あんなバトルマニアと一緒にすんな!」

と、反論することは間違いない。それ以上に茶化すようなら、彼女が〈グラーフアイゼン〉を持ってして、潰しにかかるのも間違いないであろう。
  見物者は、はやての他にリインフォースU、アギト、シャマル、ヴィータ、フェイト、なのは、ティアナの七名。
防衛軍側からは、上司の東郷、そして何故か、スタッカートとカンピオーニが来ており、これから行われんとする模擬戦闘を、興味津々の呈で待ち続けている。
東郷は目方の上司であるからして、観に来るのはおかしいことではない。スタッカートは、何処からか聞いたこの話に食いつき、珍しさを求めて、というものだ。
カンピオーニに至っては、美女同士の華麗なる戦闘を拝みたくて、というものである。戦闘模様ではなく、“美女”と付け加えるあたり、彼らしい理由であろう。
  静寂に包まれるトレーニングルームを、同じく静寂に包まれた観戦室で眺める観戦者達。その様子からして、ただならぬ雰囲気である。
それぞれ武器を構える二人。その二人が有する模擬用の武器は、同じ物ではない。その違う種の模擬武器に、なのはは着目する。

「目方中佐は薙刀、シグナムさんは剣……どっちが優位かな」
「中佐が使用する薙刀は、その攻撃範囲の長さが最大の武器だ。だが、一端懐に飛び込まれてしまうと、防御に徹するしかない」

その疑問に答えたのは、武道にも精通する東郷であった。彼は時間がある時に、目方を相手に稽古をつけていたことが何度もある。
目方は実家が神社であり、一家は揃って武道に長けている。そして、陰陽道にも精通し、使うことが出来るのだ。
だたし彼女は、陰陽道としての腕が、二流であることを認めている。しかし、それを余すが如く、彼女は薙刀の腕が一流である。

「方やシグナム二尉が持つ剣は、薙刀程の広い範囲は無い。しかし、攻撃と防御の両方を可能とする分、バランス性は良い」

  シグナムは〈レヴァテイン〉と称される剣――もといデバイスを駆使する女性騎士だ。その腕は一流と言っても過言ではない。
何せ数百年と言う時間の中で、彼女を筆頭とするヴォルケンリッターは、ことあるごとに戦争の渦中にあったのだ。
今の様な時代ではなく、血を流すことが普通であったとされる時代。その中で、彼女らは時の主のため、または生き残る為、相手の命を奪ってきたことは事実である。
その戦争の中で培ってきた腕は、ヴィータやシャマル、ザフィーラなども認めるところ。今においても、彼女に勝る腕の持ち主は、数えるほどしかいない。

「つまりだ……中佐は有利な遠距離で仕留められるか。シグナム二尉は如何にして懐に潜り込み、技を決めるか」

  それしかあるまい。そう呟いたのは、以外にもカンピオーニだった。彼とて、女性に目が無いが、軍人としての素質はピカイチ(・・・・)であり、こうした武術にも一応の心得はある。
また日本風に言えば、シグナムは『肉を切らせて骨を断つ』戦法を選ばざるをえない、ということだろう。彼は、この勝負がどういった展開を生むのか、楽しみで仕方ない。
和と洋の美女同士による、華麗なる戦闘が見たいと言うのは確かだが、その中にある、互いの技量をぶつけ合う様も観たいのだ。

(怪我しなければ良いんだけど……シグナムさん、こういうことになると止めるのが難しいし)
(同感。真剣を使わないだけ、危険なことは無いと思うけど……)

  そう語るのは、シグナムとの模擬選の経験も多い、なのはとフェイトである。が、どちらかと言えばフェイトの方が、シグナムとの模擬選回数が多いだろう。
何せ一〇年も前の〈闇の書〉事件では、初対面のシグナムと刃を交えたのは彼女なのだ。それからと言う者、好敵手――もしくは良きライバルの様な意識を持っているらしい。
  そしてシグナムとの模擬選が、試合ならぬ死合いになったことは、数える程度だが実際にあった。それも、つい最近のことでもある。
シグナムの騎士としての素質か、あるいは性格か、傷つけぬように戦う非殺傷設定では物足りなさを感じるのだろう。
一般人からしたら、彼女が危険極まりないと感じることは疑いない。とはいえ、そこはヴォルケンリッターの長である。時と場所、状況の弁えくらいは出来て当然であった。
  構え合う二人は、模擬専用の武器を手にしていると先述した。これは、本来な刃である部分が、柔軟素材で出来ている特殊な物に覆われている。
この部分には、人では感じにくい微弱な電流が流れてるのだが、それだけでは何の役にも立たない。そこで特殊模擬戦用スーツにも工夫が凝らされていた。
スーツ全体に、人間の筋肉を麻痺させる電流システムが組み込まれている。先の模擬用武器の刃部分が触れることによって、触れた部分に電流を流す仕組みになっているのだ。
どれ程の強さで当てられたかによっても、流される電流の量は変わる。人工的ではあるが、なるべく実戦に向けられるように、防衛軍が開発したものであった。

(とはいえ、結構効くんだよなぁ、あの特殊スーツ)

  カンピオーニも、特殊スーツを纏っての模擬戦は多く経験している。故に、叩かれた時の電流の痺れ、痛みはどれ程のものかも知っている。
強く叩かれた時の痛みは、相当なものだ。それでも、本当に切られたりするわけでもないので、かなりマシである筈だ。
特殊スーツは射撃訓練でも大いに活用される代物で、陸上部隊では日常茶飯ことだ。パラライザーが命中すれば、命中判定の電流が流される。
パラライザーはスーツが無くとも、生身の体に命中しても殺傷する能力はない。とはいえ、当たり所が悪いと、死なずとも身体に障害を残す可能性は否定できないのだ。
  どちらが勝つだろうか、と判断しかねる一同をよそに、シグナムと行動を共にすることが多いアギトは、自分の主の勝利を確信していた。

(非魔導師の奴が、マイスターに勝てるとは思わないな)

中々に失礼な物の言いようだが、それも彼女の性格故だ。強気で粗暴な言葉づかいから、ヴィータに通ずるところもあるが、やはり根は良いらしい。
アギトはシグナムの剣の技量をその目で見ている。彼女の前マイスターとの死闘を演じ、シグナムは勝ったのだ。
今回が模擬戦であろうと、百戦錬磨とも言えるシグナムが負ける筈がない。小さなパートナーは心からそう信じているのである。
  皆が見守る中で、静寂な空気が打ち砕かれる。

「……始まりましたね」

遂に、静まり返っていた空気が動き出し、二人の模擬戦が開始された瞬間だった。





  ことの発端は、はやてが自覚していたように、シグナムにうっかりと口を滑らせてしまったことにあるが、その滑らせる要因はまた別にある。
それは不幸な破壊神と、彼女に率いられた地球防衛軍が次元空間へ迷い込んできてから、およそ二ヶ月半が経過しようとしていた頃だった。
この時、SUSが各拠点に襲撃を仕掛けてきており、管理局はどう対応したものかと、苦慮している時期でもあった。
  そんな中で、管理局の中には防衛軍に個人的に接触し、戦闘についてのノウハウを吸収しようとしている者が数名ほどいる。
代表格となるのが、クロノだ。東郷から艦隊戦の教えを受けており、この先の戦闘で揚げ足を取らぬようにと、奮闘している。
その次に義妹のフェイト。彼女は艦隊司令のマルセフから、戦闘におけるノウハウ、武器の知識などを教えてもらっている。
三人目となるのが、はやてである。彼女もまた、目方の教えの下、戦争における用兵学、戦術・戦略理論、兵器の特質などを頭の中へ叩き込んでいた。

「目方中佐にお会いしに来ました。許可は、とってあります」

  この日も、はやてはリインフォースUを連れて、〈ミカサ〉へ赴いていた。目方から、また用兵学等の教えを受ける予定にあったのだ。
予めに目方との約束はとってあり、それは東郷も知るところである。また、時間帯も警備兵に通達されている。
はやては予定よりも一〇分前に、〈ミカサ〉のタラップ前に到着していた。警備兵に対して、彼女はアポが取得済みだと話し、序でに身分証も見せた。
  それを確認すると、警備兵は通過を許可して彼女を艦内へと迎え入れた。

「副長は、ただいま取り込み中です。その間、八神二佐には、ゲスト・ルームにてお待ちいただきますので、ご了承ください」
「分かりましたが……お忙しいところとは、知りませんでした」

申し訳なさそうに言うはやてに、警備兵はにこやかに返答する。

「御気になさらずに。副長は、稽古時間が伸びてしまったようなので」
「稽古?」

ここで稽古等という言葉を聞くことになろうとは、思いもよらぬことである。だが、目方が武道を行っていることは、直接に聞いていた。
それを思い出すと、それも頷けることだと納得した。日々の鍛錬も重要だとされるのは当然のことだが、副長たる目方も稽古もとい訓練をしているとは、少し意外に感じた。
  はやて自身、機動六課時代では、指揮官としてデスクワーク等が殆どで、訓練に真面に参加した回数は、ほぼゼロに近い。

(防衛軍の艦長さん達は、皆そうなんやろか)

そう考えると、自分はそういった点からして、彼らに劣っているのではないか、等と考え込んでしまう。
確かに防衛軍では、士官であろうとも訓練を蔑ろにする者は少ない。とりわけ、地上や宇宙空間で戦う空間騎兵隊は、己の肉体を使うだけあって、怠ることはまずない。
過去において、宇宙艦隊で訓練を欠かさなかったのは〈旧ヤマト〉の面々が代表的である。艦長代理の古代 進、船務長の森 雪など、各チーフ等も訓練を欠かさなかった。
  ここで、彼女は気になった。目方は 実家が神社なうえに、家族の大半は陰陽道を駆使する数少ない陰陽師。それに加えて、武術も巧みであると言う話である。
聞くところによれば、彼女は陰陽術はいまいちなのだが、武術はピカイチらしい。本当なのだろうか。疑う訳ではないが、やはり気になるものだ。
そこで、案内してくれている警備兵に、軽い気持ちで聞いてみた。

「付かぬことを聞きますが、目方中佐は、武道は御強いんですか?」
「あぁ、副長は……」

驚愕の返答が、返ってきた。それにはやては絶句し、隣にいるリインフォースUも小さな身体で、凄いです、といっぱいに表現して見せた。

「本当に御強いですからね……っと。こちらにて、お待ちください」

  警備兵はうっかりと通り過ぎようとしたゲスト・ルームの前に立ち止まり、はやてはリインフォースUの両名に待ってもらうように告げる。
その間にも驚きが取れないはやてだったが、そこへ主計課の兵士が、緑茶を淹れたカップをトレイに乗せて運んで来た。勿論、リインフォースUの分も乗せている。
珈琲ではなく、緑茶を出すと言うところが、この艦が日本人中心であることを主張しているようだ。勘違いしてはならないが、決して全員が緑茶好きと言う訳ではない。

「おおきに」
「ありがとうです」

感謝の言葉を受けると、その者は軽く会釈してそそくさと退室した。一八歳ほどの若年兵士のようで、やや頬を赤らめていたような気もする。
  はやては、運んでくれたカップを手に取り、軽く口に含んだ。珈琲とは違った苦味、そして香りが、故郷を思い浮かべる。
管理局では珈琲を主流に飲んでいただけに、たまに緑茶を飲むのも良いものである。等と里心を擽られる様な心境だ。
また、リインフォースUも、丁寧にも小さなカップに淹れられた緑茶を、口で、ふぅ、と冷ましつつも飲んでいる。
にこやかな笑みを浮かべながら、はやては自分の緑茶を啜った。

(リンディ提督だと、ミルクと砂糖を入れようとするからなぁ。緑茶っちゅうよりも、甘めな抹茶みたいなもんやで)

緑茶通な者から見れば、さぞ外道と言える呑み方に違いない。
  そんなことを考えながら待つこと五分後。待ち人がゲスト・ルームに姿を現した。

「ごめんなさい、はやてさん。待たしてしまったようで」
「いえ、そないなことはありません。稽古中だとお聞きしましたが……」

はやては、ここ数回の個人的教えを受ける中で、次第に本来の口調かつ、名前で呼び合うような関係になっていた。無論、こうして自分らだけの時に限るが。
ふと見れば、目方の髪は多少だが湿っているように思える。稽古後に、軽く汗を流すためにシャワーでも浴びたのだろうか。

「えぇ。いつもと言う訳にはいかないけど、たまに身体を動かさないと、(なま)るから」
「へぇ……真奈美さん、本当に生真面目でいらっしゃるんやな。私も見習わなあかん……」

それにしても、とはやては思う。失礼ではあるが、目方は武道に長けた様な体躯には見えなかった。女性らしさを見せつつも、スラリとした体系はきゃしゃ(・・・・)に思える。
  だが、外見で決めつけてはならないのは、はやても良く分かっている。武道に関することではないが、彼女の周囲にいる友人、後輩たちにも、見かけによらない者が多いのだ。
例えば、先のリンディしかり。さらに家族のシャマルは、御淑やかさで通る美人だが、料理がてん(・・)で駄目であるのは、身に染みて知っている。
親友のフェイトはと言えば、馬鹿が付くほどの親馬鹿ぶり――過保護である。後輩のスバルは元気溌剌娘だが、体型を大きく無視する大食い娘だ。

(考えれば、完璧、なんてのはおらへんな)

何もかもが完璧などと言える人間はない。どこかしら欠点はあるものだ。そして、はやても例外ではない。セクハラ上司やチビ狸と称される人間である。
  それはさておき、はやては、先ほどの警備兵が言っていてことが気になり、直接確かめることにした。

「真奈美さん、武道大会で優勝されたって、ホンマですか」
「え! えぇ、まぁ、確かにそうだけど、どうしてそんなことを?」

驚く目方。先の警備兵曰く、全国日本武道大会(薙刀の部)を優勝した実力者なのである。今の時代にあって武道大会があるのも珍しいが、それも日本ならではだ。
しかも防衛軍内部で薙刀を扱う者達でさえ、彼女に勝った人物はいないという。ただ例外と言えば、上司である東郷だけであった。
  彼は薙刀ではなく剣道派であるが、薙刀と剣道による異種試合を行った際、五分五分の展開を見せたと言う。
結果は東郷の勝利だったらしいものの、彼女の実力は東郷をして、最強と言わしめている。全く、そうは見えない――というより、見させないのかもしれない。

「陰陽道の修行は出来なくても、武道の稽古は出来るから。これで武道まで腕が落ちたんじゃ、父になんて言われるか」

苦笑しながら言う目方の表情は、どこか懐かしそうであった。因みに目方家で手練れな者は、父親であるという。今では試合などに出はしないものの、その腕は娘を上回る。
そして彼女の姉――恵子は、その次に強いらしい。もっとも、姉の場合は武道大会に出ることはなく、殆どを陰陽への修行などにつぎ込んでいるとのことだった。

「いや、何と言うか……誰の目から見ても、凄いと思いますよ」
「ありがとう」

にこやかな笑みを見せて、目方は新たに運ばれたお茶を啜る。数分程、たわいもない話を続けたが、区切りをつけてはやてへの特別講師を行うのであった。





  その後、目方からの特別講師を一通り受け終わった。はやては礼を言って戻ろうとしたが、不意に目方から、薙刀を見せてあげる、と言われた。
無論、本物の薙刀ではない。あくまで、どのような動きをするのか、といったものを見せようと言うのである。
はやては、最初は遠慮しようと思ったが、せっかくの機会だということで同行した。生まれて初めて目にする、薙刀である。
  トレーニング・ルームへと案内されたはやては、そこで目方の駆使する薙刀のさばきを、短い時間だが堪能することとなった。
まずは、士官ジャケットと、スカーフ、そして靴と靴下を脱いで裸足になる目方。だが防具を付ける時間はないため、独りトレーニング用に人形を持ち出したのである。
訓練用の薙刀を構えると、彼女は訓練人形を前にして動き出した。

(身体が上下しとらん……まるで、スライドしているみたいや……)

その素早く、無駄のない足の動きに、はやては早々に驚きを露わにした。身体を上下に揺らさず、スッ、スッ、という滑るような動きは、スライドしているかのようである。
一見すると地味に見えるが、この地味さこそが、身体を前後左右へ迅速に動かす秘訣とも言えるのだ。
  そして、彼女は手始めに決め技の一つ、面を打ち付けた。それも、普段の目方の声量とは思えぬ気迫と勢いだ。

「メエェンッ!!」


はやてとリインフォースUは、彼女の怒声とも言える声にドキリとした。彼女の声量と、人形の頭部が叩かれる音と、そして右足踏み込んだ音が、同時に響いたのだ。
薙刀の持つ長い距離を正確に把握し、まるで突き込むような動作で、面を打った。無駄の無い動きであるのが、はやてにも分かる。

(なんちゅう気迫や……普段のおっとりした真奈美さんとは思えんわ)

その後も短い時間だが幾種かの技を披露され、演技と言われる武道の“形”も彼女らの前で見せてくれた。
はやては、時折頷いて見せたり、考え込むような素振りを見せながら、目方の演技を真剣に見続けたのであった。

「わざわざ、ありがとうございました、真奈美さん」
「こちらこそ。遂、熱が入っちゃって……迷惑ではなかったかしら?」

そう言われて、はやては首を横に振って否定した。貴重な時間を割いてまで見せてくれたことに、彼女は目方に対して深く感謝を示した。
  改めて礼を述べた後、自分らの執務室へと戻った。そこには書類整理に追われているマリエル、フェイト、ティアナ、シャーリーらの姿があった。
また、第六戦術教導団のメンバーとして迎え入れられる、なのはと、スバル、ヴィータの姿もあった。一時的だが、詳しい経緯等を確認しに来たのである。

「悪うな、二人とも。忙しい時に」
「大丈夫だよ。私も、何かと役に立ちたいから」
「今更そんなことを言うまでもないだろ?」

先日の戦闘で危ぶまれたなのはだったが、今や回復し、元気な笑顔を見せている。ヴィータはいつも通りの荒い口調だが、明るい笑みを浮かべていた。
まだ召集すべき人物はいるが、早々簡単に呼び集めるのも簡単な話ではない。現にスバルなどは、まだミッドチルダで活動中とのことだった。

「シグナムは、来とらんのやな」
「あぁ。あいつならもうすぐ来るぜ」

  ヴィータがそう言うと、はやては、それまで待とうか、と言いながらジャケットを脱ぐ。それから簡素な台所へと足を向けた。一息つこうというのだろう。
それを見たシャーリーとティアナが慌てて立ち上がった。先輩にやらせるわけにはいかない、と思って言うものの、はやてはやんわりと断る。

「えぇから、座っとき。ウチが淹れたるから」
「一度に運べませんでしょう? 手伝いますよ」
「……じゃあ、運ぶの手伝ってな」

それから数分後、人数分の珈琲を淹れたカップを、皆に配膳された。その珈琲で、皆はホッと一息を付くが、はやては先ほどの、目方について思いだし、話を振った。
彼女が地球世界の日本全国大会での実力者であることを、話したのである。それを聞いた皆は、目を丸くした。日本に馴染がないシャーリーやティアナもだ。
  なのはは、自分の故郷では剣道の印象が強く残っている。実際、彼女の父親は剣道にかなりの腕を持ち、兄と姉の二人も、若いながらも確かな技量を伝授されていた。
例外なのは彼女だけで、剣道など本当に触る程度でしかない。それもその筈で、幼いころに魔導師としての道を進み始めたのだから当然だ。

「薙刀って、私達の世界でもあまり聞かないけど、目方中佐の世界では、その武道大会もあるんだね」
「そうらしいんや。違う未来の世界でも、そういった文化が残されとるんやな、とつくづく思ったわ」
「……でも、凄いですよ。全国大会を制覇した、というだけでも、相当な技量であることは想像できますし」

そう言ったのはティアナだ。ミッドチルダにも武道大会に似た大会が存在する。それは地球世界で言うなれば、格闘技大会と言っても差し支えはない。
魔導師達が参加し、互いの技量を出してぶつけ合い、優勝を争うものだ。局員の中にも、そういった大会に参加して、上位に上り詰めた実力者が幾人かいるという。
魔力と言う力が加わるため、地球世界の武道大会と比較するのも難しいが、とにかくも全国大会で優勝するだけの実力を持っていて、しかるべきである。
  はやては、ここにシグナムが居なかったのを思い出し、思わず口に出した。

「まぁ、こんな話をシグナムに聞かれたら、喰い付きそうであかんわ」

ケラケラと笑いながら、そんなことを語るはやてだったが、ここで彼女を除く皆の表情が固まった。思わず「どないしたん?」と尋ねようとしたが、言う前に理由が判明する。
さりげなく、はやての座るソファーの後ろに立っていた人物が声を発したからである。

「それは本当ですか、主はやて」

(しもたあああぁぁぁっ!!)


  真っ青になったはやては、上半身と首を捻じらせて、後方に要る人物――シグナムを見やった。やってしまった、話に夢中になりすぎてしまった故の、失態だった。
シグナムはと言えば、戦う相手が見つかったと言わんばかりの表情をしている。戦士としての眼、というよりも狩人としての眼、と言っても過言ではない。
もう一度、シグナムは尋ねた。

「主はやて、先ほどの話、本当ですか?」
「あぁ、あのな……今のは、地球での話やで」
(うわぁ……はやてちゃん、必死だよ)

なのはは親友に同情した。シグナムを目方の所へと向かわせたら不味い。そう、色々不味いのだ。管理局員が防衛軍士官と殺り合った、等と噂が広まっては……。
  フェイトも、シグナムの気を逸らそうと試みたが、その目論見は熱き鋼の意志を前にして、木っ端微塵に粉砕されてしまったのである。

「テスタロッサ。残念だが、今の話はこの耳で、しかと聞いていたぞ」
「そうだなぁ、何か防衛軍に凄腕の武道家がいるってさ」

続いたのは、アギトだ。この小さな少女までもが、先ほどの話を聞いていたらしい。これに、はやてら三人は肩を落とし、取り返しのつかないことになる、と先を予想した。
これで目方を怪我をさせたのでは洒落にならない。はやてはきつめに言って止めようとしたが……。

「もうおらへん!?」

何ということだろう。シグナムは既に、この場にいなかったのだ。眼にも止まらぬ速さとは、このことか。バインドを掛ける暇さえなかったのである。





  その後、どう取り繕ったのか、シグナムは目方との個人的な試合を申し入れてしまった。目方も、上司の東郷も、シグナムの申し入れを受けてしまったのだ。
それを取り下げてくださいとは、はやても流石に言いづらかった。恩師である彼女も、心ならずか楽しみな表情をしていたのである。
またシグナムは、目方と試合をする際に、彼女に合わせて魔力を使うことなく、生身の身体による能力だけを使用することを固く誓っていた。

(シグナムったら……興奮しすぎて怪我させなければいいのだけれど)

  そう呟くのは、はやてに呼ばれて来たシャマルであった。医療を専門にする彼女が呼ばれた理由は明白で、もしも(・・・)のことを考慮してのことだ。
彼女も長年に渡りシグナムと時間を歩み渡って来た。それだけに、彼女の癖や性格も熟知している。それだけに、相手である目方が心配なのだ。
その様な心配を余所に、シグナムは構えた状態で目方を見据え、その隙の無さを感じ取っていた。

(まるで隙が無い。私を攻め込ませるつもりは、毛頭ない、ということか……)

  これまでにも、魔導師ではない、普通の人間を相手に剣を交えたことも多い。その経験の中で、彼女程に物静かかつ、物言わぬ気迫を放つ人物に会い見えたのは久々だった。
薙刀と言う代物を目にしたことは無い。だが、第97管理外世界に住んでいた時、興味がてら武道を雑誌やらテレビやらで見ていたことがあった。
そこに薙刀と称されるものが存在することを知ったのだ。中世時代に似た世界を渡り歩いてきたシグナムからすれば、それは槍に見えたであろう。
因みに突き刺すという使い方をする槍とは違い、薙刀は刀のように斬る武器だ。それをシグナムも承知している。
  方や目方はと言うと、シグナムと似たり寄ったりの感想を抱いていた。

(……成程。歴戦の騎士であることは、疑いないわね。長期戦で勝てる確率は……ない)

彼女は構え合っただけで、相手を見透かしたかのように、シグナムの気迫を察した。はやてからも聞いていた、守護騎士の長が相手である。
何百年と戦い抜いてきた騎士と手合せできる、と彼女は気持ちを高ぶらせた。元の世界にでさえ、これ程までの闘志を掻きたてる者はいないだろう。
  互いの剣先が触れ合った瞬間、先に動いたのはシグナム……の筈であった。

(先手を……っ!)

彼女は脚に力を込めて床を蹴り、目方の剣先を上から押さえつつ懐に飛び込み、剣を一瞬で翻して目方の右肩を斬る……つもりだった。
短期決戦を目論むが、それは瞬時に崩れた。目方の剣先が、小さく時計回りを描きながらシグナムの右側頭を狙ったのである。
  シグナムは瞬時に剣を翻し、頭部を守る。その半秒後、バシン、という音が響く。ギリギリの間合いで、目方からの剣先から頭部を守りきった証拠であった。
目方は、シグナムが剣先を押さえてくると予想していたのだ。抑え込んできた力を利用し、素早く円を描くように動かして、ガラ空きになったシグナムの右を攻めたのである。

(なんと素早い)
(流石の反応だけど、それで終わりじゃないわ)

  間を置く暇もなく、目方は受け止められた薙刀を素早く翻すと、今度はシグナムの右足を狙って斬りつけようとした。彼女は反応し、剣を下向きにして迅速に防御する。
この時、シグナムは危うく剣を手から離しそうになった。日頃の戦闘では、右手で〈レヴァテイン〉を正眼に構え、鞘を左手に逆手斜軸に構えるスタイルを主流としている。
つまりは二刀流と差支えない戦闘スタイルなのだ。が、今回は目方のレベルに合わせる意味でも、一本の模擬剣しか握っていない。
  また片手で剣を持つだけの握力を、彼女は当然にして持っている。が、剣同士で押し合う時などは、当然の如く両手を使うものであった。
目方の脚への斬撃を受け止める時、シグナムはどうしても下方向へ右手首を捻なければならなかった。或いは素早く飛び退く選択もあっただろう。
片手で、しかも捻った状態で剣を受け止めるのは、非常に負担がかかるのだ。シグナムは受け止め、一気に押し返すと同時に、素早く後退した。

「……強い!」

  観戦室で観ていたティアナが驚きの声を上げた。他者も同様である。烈火の将とされるシグナムが初手からして、目方に押し返されてしまったのだ。
しかも、追撃までこなした目方の行動と判断は、そこら辺の人間では出来ない芸当に思えた。流石は全国大会を制覇した実力派と言うべきか。
彼女に勝てた東郷など、これより遙かに強いということなのだろうか。はやては、一瞬だけ想像し、それを断念する。強さなど想像できるものではないからだ。
なのはも息を呑むばかり。実家の父親と、兄、姉の三人は、揃って剣道をやっている。誰もが強いと認める腕を持つが、目方と対戦したらどうなるだろう、と。
  シグナムは薙刀の厄介さを、改めて認知した。

(むぅ。全国を制した実力、これは嘘ではない。しかし……中佐の剣術技量と、あの薙刀の性質が結びつくと、予想以上に手強いな)

本来の魔導師戦であれば、シグナムも〈レヴァンテイン〉を通常の形状から、鎖状にした形状にて、相手を遠間から攻撃もできる。
今は魔力を一切使用しない、さらに剣で固定された状態だ。普通の人間と合わせたやり方に不満はない。が、そういうところでの厄介さもあるものだと改めて感じる。
  シグナムは高揚感を感じ始める。そして、いつもの涼しい顔から一転して、獰猛な笑みを浮かべた。

「……先ほどは失礼した。どうやら貴女を侮っていたようだ。今度は……全力で行かせて貰う!」

これに慌てたはやてにヴィータが援護した。

「大丈夫だよはやて、シグナムはまだ試合モードのままだ。アイツが本気出せば、こんなチンケな闘技場とっくに粉々になってるぜ」

そんなこと言っても、心配なものは心配なものである。
  一方で目方は、本気を出したシグナムよりも早く、手を出した。その長い間合いを生かし、シグナムの左足を狙ったのだ。
今度ばかりはシグナムも不足を取られんと、素早い反応を見せる。斬り込まれる前に、彼女は上から、思い切り薙刀を叩き付けた。
目方の狙いは逸れ、地面へと剣先が叩き付けられる。これをチャンスと見たシグナムは、思い切り懐に飛びむ。

(間合いを詰めれば、こちらのもの!)

  薙刀は射程は長いが、近距離では攻撃どころか防御もおぼつかない。空いた目方の首を狙って、剣を翻す。このまま行けば首か側頭を狙える。
目方は防御に入らざるを得なかった。地面に叩き付けられた剣先を起こすよりも、長い柄の部分を持ち上げ、そのまま頭部を守ろうとした。
が、シグナムの狙いはそこに絞ってはいなかった。その先を狙っていたのだ。

(ッ!)

  危険を察した目方は後退するが、その回避は完全に間に合わなかった。彼女の左脇腹に微弱な電流が流れたのだ。それは、シグナムの剣先が触れた証拠であった。
シグナムは、目方が先にやった様に、剣で頭を狙うと見せかけて、そのまま時計方向へ円を描くように、空いた左脇腹を斬りつけたのである。
完全に斬ることは叶わなかったが、ダメージは着実に与えられたようだ。目方は冷や汗をかく。もし下がらなかったら、脇腹に直撃を受けて戦闘不能となったであろう。
  しかし、流れた電流により、多少の焦りが生まれている。対するシグナムは、ここで攻撃の手を緩めるつもりなどなかった。
せっかく懐に入り込み、目方に小なりと言えどもダメージを与えたのだ。ここで連撃を加えなければ、再び届かぬ間合いから攻められること必須である。

(目方中佐も、さしもの騎士には手を焼くか)

そう呟くのは、観戦室にいるカンピオーニであった。この試合は、あくまで白兵戦を想定したようなもの。剣道やら薙刀やらの試合形式を取っているわけではない。
大まかに言えば、剣術の型式にこだわる必要は、全くないのだ。勝てばいい、と言えば聞こえが悪いかもしれないが、戦場では形を求めるほど優しくはない。
それに目方の相手は、西洋剣術の類を持つシグナムだ。剣道とは違う。形の違う相手を前にして、何処かやりにくさを感じているのかもしれない。

(シグナム二尉の斬撃は、並大抵なものじゃないなぁ)

  シグナムは間合いを離さず、目方に攻めかかった。右から、左から、上から、剣を振るい、目方を追い詰めていく。流石は守護騎士の長である。
防戦一方になってしまった目方はと言えば、シグナムからの連撃を冷静になって受け流した。時折反撃を伺うが、その隙が無い。
となれば、連撃を防ぐ方法は一つしかない。目方も前へ出て、シグナムと剣を押し合うような体制へ持ち込んだのである。





  タックルにも似た間合いの詰めに、受け側のシグナムは連撃を止めざるを得なかった。勢いに乗った身体が相殺され、剣を振ることが叶わなくなってしまったのだ。
互いに剣と身体で押し合うような体制は、長くは続かない。目方は思い切りシグナムを押しのけ、一方的に距離を取ったのである。
瞬発力のある押しが、シグナムの体制を僅かながらに崩した。その瞬間を狙って、目方は後退しつつもシグナムの右足を狙う。
  これは、シグナムの跳躍で空振りに終わるが、跳躍したとなれば、着地時に隙が出来る筈。体制を崩しつつの跳躍ともなればなおさらだ。
二度目のチャンスを得た。目方は、先ほどシグナムがやったような連撃を見舞う。

(……くっ)

突き込むような攻撃を回避するシグナム。その間に、右脚の太ももへ微弱な電流が流れた。かすったのだ。その次は左腕。流れる微弱な電流が、焦りを生む。
間合いを詰めすぎない、絶妙な距離感での攻撃には、さしものシグナムも気圧される。本来の魔導師としての力を使っていたのなら、この間合いを容易く突破できるだろう。
それが出来ないハンデを背負うシグナムは、心内で愚痴を言うような性格ではない。寧ろ、魔導師ではない人間を相手にして、ここまで出来ると分かると増々、気持ちが昂る。
  互いが一進一退の攻防を続けて、試合開始から二分が経過した。短いようで長く、目方は時折、様子見で息を整える程度。

「シグナムを相手に、ここまで粘っている」
「ほんまに言葉もでぇへんわ」

シグナムの相手をしていた経験のあるフェイトが驚き、はやても呆れと驚きを混ぜ合わせた表情をしている。なのはも、目方の身体能力の高さを目の当たりにし、言葉が出ない。
目方は最初よりも、大分息を切らし始めている。シグナムも普通の人間ではないとはいえ、疲れは確実に出ていた。これ以上続けていても、埒が明かない。
  二人はそう直感し、勝負を決めにかかった。同時に踏み出す二人。目方は、薙刀で渾身の突きを繰り出した。殺しにかかる一撃である。

(なっ!)

だが、意表を突かれたのは目方の方であった。身体を貫ぬかんとする薙刀は、まっすぐに、しかも素早い動きで突き出されたが、シグナムの応用が一枚上手であった。
シグナムは剣を持った右手首を素早く、そして小さく時計方向へと回転させた。すると、彼女の剣先は、目方の剣先を絡み着いたではないか。
  この瞬間、目方はシグナムの行った技術を察した。

(巻き込み!?)

剣道でも使われる巻き込みと言う技。それは、相手の竹刀を素早く巻き取るように動かし、その巻き込む反動で相手の竹刀を弾き飛ばすのである。
目方は弾き飛ばされぬよう、咄嗟に握りしめたが、それが最後であった。剣先を大きく狂わされた薙刀は、あらぬ方向へ向き、シグナムはその一瞬を見逃さなかった。
  弾き飛ばすために振り上げた剣を、直ぐに切替して振り下ろした。その一撃が、目方の右腕を襲ったのである。激しい痛みが、彼女を襲った。

「ぐ……っ!」
『右腕の上腕二頭筋を裂傷。戦闘不能』

模擬戦スーツに内蔵されているのコンピューターが、目方の負傷具合を瞬時に報告。シグナムの勝利を告げた。

「「おぉっ」」

観戦室からも観戦が上がる。防衛軍と管理局を代表した模擬戦闘の一部始終に、皆は二人の奮戦を称えた。そして、内心でドキドキしていたはやては、胸を撫で下ろした。
大きな怪我もなかったようで、一安心の様である。

「もう、最後なんか見えなかったわ……」
「魔力なしでああも速いんだから……中佐が魔導師だったら、もっと凄いんじゃねぇか?」

絶句するティアナに、感心するヴィータ。方や残念だったと呟く、防衛軍兵士数名。そして、満足だと言わんばかりのカンピオーニ。
  目方はメットを外して、深呼吸する。最後の最後に焦った、等と自己反省する彼女に、シグナムが声を掛けた。

「良き試合をさせて頂き、有り難うございます。中佐殿」
「いぇ。私の方こそ、感謝しますよ。貴女ほどの腕を持つ人を相手に出来て、光栄だわ」
「恐縮であります。願わくば、また、御手合わせ頂けませんか」
「……えぇ」

そう返答すると、両者は清々しい表情で、握手を交わした。



〜〜あとがき〜〜
御無沙汰しております。第三惑星人でございます。今になってようやく外伝の一本が完成しました。
とはいえ番外でもやったような、個人対決を繰り返しやってしまったようなものです……。なんでこんなことになったのか……気が付けば、書いていたような感じです。
番外では陰陽師と魔導師の対決で書きましたが、今回は純粋(?)な技量での対決を書きました。
それにしても、こういった個人の動きや表現を文章にするというのは、難しいとつくづく思いました。
私の好きな作家――田中芳樹氏を参考にさせて頂いておりますが、やはり雲泥の差が……。プロは違いますね。

あのヤマト2199が、幕を下ろします。いや、待つのは長かったですが、終わるときは早いものですね。
このリメイクは総じて本当に面白いと、私は感じます。なんやかんやで文句をつけるオリジナルファンがいるようですが……。
そして、よくデスラーは紳士で武人である、と騒ぎ立てている人が大勢いますが、はっきり言ってそれは間違いなんですよね。
彼が武人や紳士として描かれたのは、シリーズ二作目以降からのこと。オリジナル一作目は、紳士成分は多少含まれていますが、武人ではないです。
〈ヤマト〉一隻を侮った挙句にサンザー星系に侵入を許す始末。しかも親衛隊や本土の防衛艦隊を使おうともせずに、自分からガミラスへ引き込み、天井都市ミサイル(本当はこれに人が住んでいるんですが)を使って、地底の居住区諸共沈めようとする。
わざわざ母国に誘い込んで、市民の犠牲を顧みずに本土決戦をするあたり、オリジナルのデスラーも相当おかしいんですよね。
しかも復讐戦時には、鞭を振って部下を叩きますし、自艦が偶然〈ヤマト〉と激突したからと言って、わざわざ自分も乗り込んでいますし……。
比較するなら、きちんと原作を見てほしいと、心から思います。



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