淡く、しかし沈む夕陽の輝きに勝るとも劣らぬ光を放つ世界樹の神秘的な姿を、多くの人が目にしていた。

 その頂上から放たれる、同じ色の光の筋が空を翔けていくのを、世界中の人が目撃していた。

 そして―――その光を見た人も、見ない人も、皆一つの事実を、真実を、共有し合っていた。

 

 

 この世界には。

 魔法と呼ばれる超常的な力が、技術が、人間が、存在しているのだ、と。

 

 

「―――勝ったか。」

 

「―――そのようですね。」

 

 

 礼拝堂の屋上から、世界樹を眺める二人の人影があった。

 エヴァとアルだ。ワイングラスを傾けながら、世界樹の頂点から世界中に広がっていく光の筋を感慨深げに見つめている。

 

 

「そういえばエヴァ、貴方は全世界に魔法を知らしめる事になってよかったのですか?」

 

「フン、随分と今更な質問だな。この街からようやく解放される上に、私を嵌めてくれたクソジジイを惨めに追い落とす事が出来る。妨げる理由があると思うか?」

 

 

 アルはそれには答えず、やれやれと肩を竦めるばかりだった。エヴァはアルコールを吐き出すように大きく息を吐くと、真剣な表情でアルに向き直った。

 

 

「…お前は、さっさとここから去らなくていいのか?お前は全ての罪状を一人で全て背負うことになっているんだろう?」

 

 

 それは、アルビレオと天ヶ崎、そしてレインが手を組む時に、最初に取り決めた誓約を、アルビレオ自ら拡大解釈した物。

 この“六月聖戦(ジュネオラ・ロック・レジェンド)”によって発生する全ての罪状を、アルビレオ一人が被る事になっているのだ。全世界を対象とした魔法の存在の開示、その過程での破壊活動の数々、首謀から実行まで、罪状を箇条書きにしていけば、A4用紙十数枚分にはなる。

 それは、これまでのアルビレオの英雄としての功績を、殆ど無にしてしまう物だ。

 

 

「逃げようとは思っていますがね。焦らなくとも良いでしょう。せめてこのワインを飲んでからでも。」

 

 

 しかし当のアルからは悲壮感の類は全く感じられず、いつも通りの飄々とした態度のままだ。

 

 

「それに、今出て行ってしまうと、さっき出ていったタカミチと会ってしまう可能性がありますからね。少し時間をずらさないと。」

 

「その心配は無用だぞ。アイツ、ジジイを助けに行くとか言ってたから。」

 

 

 礼拝堂内で負傷者の手当てを行うシャークティからの報告を受け、目を覚ましたタカミチを見張ろうとしたエヴァだったが、予想に反してタカミチは抵抗する様子は無く、エヴァから学園側の敗戦を聞くと、さっさと礼拝堂から出て行ってしまった。

 去り際に、「学園長を拾っていく」と言い残して。

 

 

「『いけ好かないジジイだったし、負けた事を馬鹿にしてやりたいけど、明日菜君を長年匿ってくれた恩だけは忘れない』だとさ。義理がたいんだか、直情的なんだか。以前の桜咲を彷彿とさせたよ。」

 

 

 タカミチが何処に行くつもりなのか見当も付かないが、恐らく二度と会う事はないだろう。長年修行の面倒を見てやった相手でもあるので、少し寂しくもあったし、今後の彼の道程が気がかりでもあった。

 そしてそれは、目の前の飄々とした態度を装っている男にも言える話だ。

 

 

「お前は、これから…どうするつもりだ?」

 

「一応北欧にに隠れ家を一つ持ってますので、そちらに。そこから欧州を中心に点々としようかと思ってますよ。悠々自適なロハスライフです。羨ましいでしょう?」

 

 

 あっけらかんとした様子を崩さないアルだったが、対するエヴァの表情は暗く、硬くなっていく。

 残る人生ずっと世界中からその身を追われる事になり、英雄としての名声は一転、魔法界の忌み名となる。そうして疎まれ続ける事の辛さを知っている身としては、知り合いが同じ境遇に身を落とすのは、どうしてもいたたまれない。

 

 

「―――――これでいいんですよ。」

 

 

 そんなエヴァの心中を読み取ったかのように、アルが何の脈絡もなく呟いた。

 

 

「今まで果たせなかった未来への責任を、押し付けてしまった負の財産を、ようやく贖う事が出来た―――それだけで充分です。…詠春にも、恥じ入る事無く会いに行けそうだ。」

 

 

 エヴァがぎょっとした表情に変わった。

 

 

「お、おい、お前―――――――」

 

「死ぬ、という訳ではありませんよ。死んだ後に、まともに詠春の顔を見る事が出来る、という意味です。…まぁ実際、病気とかそういう物を持っているわけではないですが、そう永くはないと思いますけどね。」

 

 

 さして気にも留めていないかのように語るアルとは対照的に、エヴァは肺の中の全ての空気を吐き出すかのように、重苦しい溜め息をついた。

 

 

「…気難しく考え過ぎなんだよ、どいつもこいつも。」

 

 

 舌打ち交じりに呟かれたエヴァの言葉は、とても実感のこもった物で、傍らのアルにもその言葉が誰に向けられたものなのか、大体見当が付いてしまった。

 

 

「私はともかく、長谷川さんはもう大丈夫でしょう。彼女は自分がどうしていったらいいのか分からず、戸惑っていただけです。しかしすでに彼女は道標を見つけた。後は自分で歩くだけじゃなく、他の人も引っ張っていく事が出来るでしょうね。」

 

「…貴様もそうなってみたらどうだ。今からでも遅くはあるまい。」

 

「無理ですよ。見つけた結果がこれですから。…まぁ、ネギ君が成人するまでは、陰ながら支援していこうとは思ってますよ。出来ればナギも見つけたいですけどねぇ。」

 

 

 エヴァは不満気に眉を顰めるものの、反論の言葉が思いつかず、ワインを飲むばかりだ。そして、グラスを空っぽにした後、ようやく一言だけ絞り出した。

 

 

「…未来のための人柱となった貴様に、この景色はどう映っているんだ?」

 

 

 問われたアルは、エヴァと同じようにワインを飲み干し、幻想的に光る世界樹を見つめた。

 

 

「…この上もなく綺麗ですね。あの中に私が居ないというのが、尚更素晴らしい。」

 

 

 エヴァは短く、そうか、とだけ答え、口を閉ざした。その表情に一抹の寂しさが巣食っている事を目敏く見抜いていたアルが、こっそりと苦笑していた。

 

 

「…ワイン、新しいのを開けましょうか。」

 

「…ああ。」

 

 

 空っぽになったワインの瓶を退けて、新しい瓶のコルクを抜き、お互いのグラスに注いだ。

 

 

「…乾杯しましょうか。」

 

「ああ…さっきと同じでいいよな?」

 

 

 アルが頷きを返す。

 二人はグラスを世界樹に向けた。

 

 

 

「終わる時代と、新しい時代に―――――乾杯。」

 

 

 

 

 

 

 

#51 オリオンをなぞる

 

 

 

 

side 千雨

 

 

 

 午後6時半。女子中等部校舎の屋上。

 近右衛門との激戦を終えた2時間後、私は一升瓶とグラスを片手にそこに向かった。

 

 屋上からは、世界中へ魔法の開示を行った光線の放出を終えた今も淡く幻想的に光る世界樹の姿を一望出来た。その光景を視界に収めながら、すでにその場でそれを眺めていた人物の傍らに座った。

 

 

「お疲れさん、超。それとおめでとう。」

 

「こちらこソ。お疲れ様、そしてありがとウ。千雨さン。」

 

 

 互いに健闘を称え合いながら、持ってきた二つのグラスに酒を注ぐ。

 小さなグラスで乾杯し合い、一気に飲み干す。急遽用意してきた物なので、エヴァの家にあったような上等な酒ではないが、正しく勝利の美酒というべき味だった。

 

 

「ふぅ…ずいぶんと安酒じゃないカ。もっと美味い酒用意しておけヨ。」

 

「ぐだぐだ言うなよ。『別荘』で二日分休んでからこっちに来たんだ。この騒ぎでどこも店じまいしちまってるしよ。これ手に入れるので精一杯だったんだ。」

 

 

 超が本気で私を非難している訳ではない事は、その顔に浮かんだ太陽のような微笑みから明白だ。修学旅行で私をけちょんけちょんに貶した時を思い出して、少し苦笑いしてしまう。

 

 

「また『別荘』に籠ってたのカ?傷を癒してたとか、そんな感じカ?」

 

「正にそれ。ジジイと決着付けてから二時間な。正直、歩くのもきつかったから。ここに来るのも、レインの手借りてたし。」

 

 

 実は明日からのどかの手配で、京都にある病院に入院することになっている。この病院は関西の息がかかっているため安心とのこと。今回のこの魔法開示騒動に乗じて、関西は日本国内の魔法勢力のまとめにかかり、魔法界からの脱却を推し進めるそうなので、元老院とやらの介入の心配もしなくていいらしい。

 

 

「にしても、世界中大混乱みたいだな。」

 

「そりゃそうだヨ。何千年も明るみに出なかった魔法の存在が、ここに来ていきなりバラされたんだからネ。各国の魔法組織が対応に追われてるはずヨ。」

 

 

 そっか、とだけ返し、世界樹の方角を見つめ直す。ちょうどその向こうには、麻帆良学園の正門があるはずだ。

 アルビレオが私たちに科されるべき罪状を一人で全て被り、落ちのびていく逃避行の始まりの門。そこから出ていくとは限らないかもしれないが、わざと自分の姿を人目に付かせるために、目立つ場所から出ていく可能性が高い。

 いけ好かない男ではあったが、修行も見てもらったし、罪も被ってくれた。作戦が成功に終わった今、感謝の想いを告げられないのが残念でならない。

 

 

「…逃げられているといいナ。アルビレオ氏。」

 

 

 超も同じ事を考えていたらしく、私と同じように世界樹の向こうの門を見つめていた。会話が途切れ、沈黙が流れる。いつの間にか超が差し出していたおつまみを頬張りながら、酒をちびちびと飲み続けた。

 

 

「…内向的で何処となく冷めており、他人と積極的に関わろうとしない。対人恐怖症気味。」

 

 

 3杯目を口につけた所で、超が唐突に、何の脈絡も無さそうな事を口にし始めた。

 

 

「趣味はコスプレ。ネットアイドルとして、自作の衣装をホームページに載せている。ハッキング技能に優れており、電子精霊を操作するアーティファクトにより、電脳戦においては無敵の技能を誇る。」

 

「…誰だ、そりゃ?」

 

 

 思わず尋ねてしまった瞬間、超の顔がにんまりと、悪戯を成功させた時の春日や鳴滝姉妹とそっくりの表情に変わった。

 

 

「アナタの事だよ、長谷川さン。私が知っていた限りの、本来の歴史が歩んでいた、長谷川千雨という人物。」

 

「な゛っ…!?」

 

 

 再度喉が焼かれたかのような掠れた声が飛び出し、そのまま口をあんぐりと開けたまま絶句してしまった。その様がツボに入ったのか、超は腹を抱えてげらげら笑い出した。

 

 

「くくくッ…!ねっ、ネットアイドルッ…!コスプレして、ポーズ取って、自分のHPに載せて、ち、ち、『ちうたんだぴょーーーん♡』っテ…!ひっ、ヒヒヒヒヒ…!!」

 

「うあああああああ止めろおおおおおおおお!!骨まで鳥肌立つわぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「ま、まあまあそんなにいきり立つなよ、ちうたん。ヒヒヒヒッ…!」

 

「その呼称だけは止めろォォォ!!二度と口にするんじゃねええええ!!」

 

 

 つむじの頂点から足の爪先まで駆け抜けた怖気のような寒気に身を捩じらせる。万が一クラスメイトに知られたら、次の日から私のあだ名はちうたんで固定されるだろう。そうなったら衝動的に衝撃波を放ってしまいかねない。

 

 

「はー笑った笑っタ。帰る前にまた一つ、良い思い出が出来たヨ。急に酒も美味しく感じれるようになっタ。」

 

「それを良い思い出にカテゴリすんな…ってか、やっぱり帰るのか、未来に。」

 

 

 超の満足気な横顔を覗く。超はしっかりと頷いて、懐から懐中時計―――の形をした航時機(タイムマシン)を取り出した。

 

 

「まだ世界樹の魔力が残ってるからナ。日付が変わる前に帰らないト。」

 

「…寿命か。」

 

 

 今度は小さな頷きが返ってきた。これまで超自身がそれについて明言した事は無かったが、おそらくそう永くはないのだろうと、察しの良い連中は皆薄々勘付いていた。勿論それを直接確かめるような愚行を犯す者は、誰一人として居なかったが。

 

 

「まぁ、本来世界樹の魔力放出は来年の予定だったから、一応後一年ぐらいは保つはずだけどナ。それでも、死ぬ事に変わりは無イ。皆に死に目を見せる訳にはいかないからナ。」

 

「え?お前、未来に戻って死ぬつもりなのか?」

 

「そんな訳ないだロ。むしろその逆、寿命延ばしに戻るんだヨ。」

 

 

 超の言葉にほっと胸を撫で下ろす。

 この、全世界を対象とした魔法の開示の、最大の目的。千年以上も秘匿を保ってきた魔法の存在を明かしてまで、超が変えたかった事。

 

 それは、宇宙開発・航行技術の飛躍的進歩である。

 

 魔法界が存在しているのは、火星―――地球から見れば宇宙だ。

 魔法界の崩壊は、蓄積魔力が底をついたから、と超とアルビレオは説明していた。しかしメガロメセンブリア元老院によってその事実は隠蔽されているため、第一段階として魔法の存在、魔法界の存在を明かし、その上で第二段階として、魔法界の崩壊の危機を暴き立てる。これはアーウェルンクスら“完全なる世界”の仕事だ。

 

 そして、第三段階として、地球〜火星間の有人宇宙航行を実現させる。

 

 これまでの科学技術を遥かに躍進させる魔法の存在に、各国の政府や軍隊、研究機関はこぞって飛びつくだろう。何せ宇宙は誰にとっても未知の世界、誰の手にも渡っていない世界だ。各国が競って宇宙開発を進めることは想像に難くない。

 そしてその第一目標は、太陽系にもう一つ存在する有人惑星―――火星になる事は間違いない。

 崩壊する火星の同胞たちを救う―――例えお題目であっても、地球の各国が魔法界救済のため動き出す。

 それは、魔法界の住人たちが、プラント結晶に作り替えられる事を防ぐことであり、超のやってきた未来を、ノーマンズランドに繋がる未来を、否定するものだ。

 

しかしそう考えた途端、また別の疑問が頭を擡げてきた。

 

 

「けれど…お前のタイムマシンって確か、同一時間軸上への移動しか出来ないって、自分で解説してなかったか?だとしたら、すでに歴史が変わっちまったこの時間軸で、曲がりなりにもプラント素体であるお前の身体の寿命を延ばす方策なんて、見つかるのか?」

 

 

 タイムマシンとはあくまで時間を遡る装置であり、並行世界を渡るための装置ではない。すでに超が生まれた未来へ繋がる道が途切れた以上、そこに戻る事は不可能だ。

 

 

「さすがに現代(こっち)じゃ、理論も技術も機材も何も揃ってないからナ。寿命伸ばそうにも伸ばせなイ。例えプラントの無い時間軸上だろうと、少なくともこっちに居続けるよりは、可能性は断然高イ。」

 

「…ま、そりゃそうか。」

 

 

 確かにこちらに居続けて方策を探るよりは、必要な物資も技術も揃っている時代に行って模索する方が良い。

 だが、気になるのは、またこの時代に戻って来れるのか、という事だ。

 

 そんな私の視線を感じ取ったのか、超が肩を竦めた。

 

 

「心配しないでも、寿命の維持と固定が済んだら、こっちに帰ってくるつもりヨ。

…どうせもう、帰る所も帰りを待つ人も居なイ。私の居場所は、この時代にしか無いんだからナ。」

 

 

 寂寞の念に満ちた重い言葉に、私は何も返す事が出来ず、ちびちびと酒を呷るだけだ。

 私と超の間に、長い沈黙が流れた。すでに夜の帳は降り切っているが、世界樹の放つ光は、空に浮かぶ星と月より遥かに明るい。

 

 

「…私が、この時代に来る前、仲間たちと議論していた事があっタ。」

 

 

 不意に超が口を開いた事で、自然と視線が超の方を向いた。

 何故か超の口元には薄らと笑みが浮かんでいた。

 

 

「私たちは、自分たちの遺伝子上の親であるネギ先生の事柄について調べ尽くした。彼の経歴から始まり、一年ごとの健康状態の変化、そして彼の血縁や協力者まで、ありとあらゆる事柄ヲ。」

 

 

 まあそれぐらいはしていてもおかしくは無いだろう。というか、超たちのこの計画に賭ける執念を考えれば、当然の事と言える。

 

 

「そうしてこの計画を練り上げていく中で、私たちが一番警戒していなければならないと考えた人物が―――――千雨さン。貴方だっタ。」

 

「…え、何で?」

 

 

 完全に虚を突かれ、ぽかんと口を開けてしまった。

 エヴァやアルビレオを差し置いて、正体が露見していない頃の私を危険視する理由が全く理解出来ない。…ただでさえ、コスプレ好きだのネットアイドルだの、妙な趣味を持っているものと認識されていたのに。

 

 

「何でか分からない、って顔だネ。簡単だヨ。私たちの知っていた長谷川千雨は、唯一私たちの立てた計画を突き崩せる人材だったからダ。」

 

 

 ますます訳が分からなくなりそうだったが、不意に先ほど超が口走った私についての事前情報を思い出し、ピンときた。

 

 

「ハッキングか。…プラス、ネギ先生との仮契約とアーティファクト、かな?」

 

大正解(パーフェクト)。私たちが危惧していたのは正にソレでネ。」

 

 

 話し始める前に、超はグラスに残っていた酒を一気に飲み干した。お代わりの杯は、私が酌をした。

 

 

「ん、どうモ…。実を言うとナ。この作戦の成否は、千雨さんにかかっていたと言っても過言では無かっタ。千雨さんがネギ先生と仮契約し、アーティファクトを得た時、私たちの作戦の成功率はかなり下がるだろう、とナ。」

 

「…その根拠は?」

 

「一つは、私たちの知る千雨さんの能力(チカラ)が、余りに凄まじい物であったかラ。そしてもう一つは、千雨さん自身が非常に優れた人間だったからだヨ。」

 

 

 超の表情には未だに色濃く安堵の感情が浮かんでいるが、口元の笑みは消えて真剣な眼差しをしており、今口にした言葉が、全く誇張の無い真実であることを示していた。

 

 

「私たちの知る歴史では、千雨さんはネギ先生と仮契約し、“力の王笏”というアーティファクトを得タ。詳しい説明は省くが、電子精霊を操作し、広大なネットワークの海に接続し、掌握できるその能力は、大いにネギ先生たちの助けとなリ―――千雨さん自身も、ネギパーティの参謀的位置に納まっていタ。」

 

 

 違う歴史、違う私の話とはいえ、複雑な気分にならざるを得ない。

 電子精霊というのがどういう物かは知らないが、超が“掌握”とまで言い切ったのだ。敵に回せば厄介どころの代物では無かったのだろう。それを他ならぬ長谷川千雨(わたし)が手にしていたという事実に、何やら因縁めいた物を感じ、背筋が少し冷たくなった。

 

 

「私たちの作戦の肝の一つは、“学園祭終了までに長谷川千雨をネギ・スプリングフィールドと仮契約させないこと”だっタ。長谷川千雨がアーティファクトを―――電子精霊を操る術を身に付け、自分たちの敵に回られれば、それだけで危うくなる、とナ。

 だからこそ、始業式で貴方が突然サックスを吹き始めた時は、目ン玉飛び出そうな程驚いたヨ。」

 

 

 その台詞に、思わず私も苦笑してしまった。最重要警戒対象と目していた少女が、蓋を開けてみれば、ハッキングとは無縁そうなサックス奏者だったのだ。しかもその長谷川千雨という箱自体が二重底で、真の正体は未来から来た元殺人者だったりするのだ。さぞかし超は混乱した事だろう。

 

 

「そりゃもう、最初は混乱したヨ。今だから言うけれど、片っ端から千雨さんについての情報を調べタ。路上ライブにも足繁く通ったし、こっそり千雨さん行きつけの楽器屋に行ってみたりもしタ。それで何の情報も得られなかったんだから、ますます混乱したネ。」

 

 

 思い返してみれば確かに、超は私が路上ライブを始めたての頃によく顔を出していた。超包子の前で演奏したらどうか、と提案したのは四葉だったが、おそらくそれも超が四葉に授けた案だったのだろう。

 

 

「―――けれど、一番肝心な部分は変わっていなかっタ。」

 

 

 感慨深げに超が呟いた。

 その手に持つグラスがいつの間にか空になっていたので、酒を注ごうとしたが、その前に超の右手が酒瓶を掴んだ。そして、自分のグラスより先に、私のグラスになみなみと注ぎこんだ。

 

 

「厭世的で、面倒事と馬鹿騒ぎと非常識な事が嫌いなくせに、一度自分の懐に入った人間に対してはとことん甘く、面倒見が良過ぎる捻くれ者。それ故にネギ先生や仲間達からの信頼も厚く、自然とネギパーティの中心的存在となっていっタ。ネギ先生や仲間達が立てた武功の数々も、千雨さんの助けが無ければほとんど存在しないものばかりだったヨ。

 そしてこちらの世界でも―――千雨さんは皆の中心だった。非戦闘職種か戦闘職種かなど、些細な違イ。仲間想いのその性格は、むしろより一層過保護かつ不器用に偏って、歴史を変える原動力を作り出しタ。」

 

 

 正直な所、私はかなり驚いていた。

 私の事を蛇蝎の如く忌み嫌っていた超が、長谷川千雨(わたし)をここまで高く評価していた事が、余りに意外だった。

 

 

「おっと、勘違いするなヨ?私はあくまで、貴方の能力の高さを認めただけダ。全部ひっくるめた貴方への評価がプラスに転じる事だけは、絶対に有り得ないからナ。」

 

「はは、まぁそれも褒め言葉として受け取っておくさ。

 …修学旅行で、私が現在(いま)しか見てないからだって言ってたけど…。実際の所、私が過去を蔑ろにしているように見えたのが、お前の逆鱗に触れたんだろ?」

 

 

 超を支えていたのは、自分のために犠牲になった仲間たちの想いと、超自身の彼らへの哀悼だ。未来という名の過去を変えるために時を遡り、壮大な計画を企てていた彼女にとって、まるで今さえ良ければいいかのような、私の振舞いと生き方は、さぞかし怒りに火が点いた事だろう。私が超と同じく、未来からやって来た人間であったので尚更だ。

 

 

「ああ、その通りだヨ。千雨さんの過去に何があったのか、数ヶ月前の私には知る由も無かったが、千雨さんが自分の過去から目を背けている事だけは分かっタ。」

 

 

 私の予想はやはり正解だったらしい。それに加えて、“プラント”を酷使していた世界の人間であるという事、意図的にこの時代にやって来たのではないという事、私が敵に回る可能性など、超にとって気に喰わない事実が色々と重なり、私への敵視に繋がっていった。

 

 

「私は過去から目を背けている人間が、例外なく嫌いダ。過去を否定するという事は、これまでの自分自身を否定するという事だからダ。だからこそ、貴方が許せなかっタ。私たちの世界より、遥か未来の、遥かに酷い境遇で生まれ落ちながら、自我も生き方も曖昧なまま生きていた、当時の貴方ガ。

 …まぁ結局、最後の最後でどうしようもなくなって、頼る事になってしまったんだけれどナ。」

 

 

 別に私が悪いわけじゃないのだが、何となく申し訳ない気持ちになってしまう。確かにあのジジイは、最終的に力ずくで私たちの計画をぶっ潰せるだけの力を有していた。レインからもたらされたというあの情報が無ければ、まず間違いなくこの計画は破綻していただろう。

 すると、私の考えている事を察した超が口を挟んできた。

 

 

「ああ、別に戦闘力云々の事を言っているわけじゃ無いんだヨ。私が言っているのはもうちょい抽象的な―――そう、運命とか、そういった感じの話ダ。」

 

「…運命?」

 

 

 超らしくないその発言に、思わず首を傾げてしまう。

 超はグラスに残る酒を一気に煽り、すぐさま次を注いだ。もう酒瓶の残りは少ない。

 

 

「さっきも話したが、私たちの知っていた歴史上での長谷川さんの活躍は、目を見張る物ばかりだっタ。千雨さんが居なければ、ネギ先生の英雄としての名声は無かったものと考えて間違いなイ。」

 

 

 超はそこで一旦言葉を切って、まだ酒が入ったままのグラスを、自分の目の高さまで持っていった。真似して見ると、世界樹から放たれる光が、グラスと内部の液体を幻想的に煌めかせた。

 そして私は、超の言いたい事を何となく察した。

 

 

「そしてこの時代の、この戦いも、千雨さんの存在が全ての趨勢を決定付けタ。近衛翁の計画も、私の計画も、クラスの団結も、全て中心に千雨さんが居タ。

 …だからな、考えてしまうんだヨ。本当に千雨さんを中心に世界も歴史も回っているんじゃないかっテ―――」

 

「荒唐無稽ここに極まれり、だな。お前らしくもない。世界の運命(れきし)を丸っきり変えようとしていたお前が、運命論なんて振り翳してんじゃねーっての。」

 

 

 私が察した通りの事を口にしたため、少し辛辣気味な言葉で台詞を断ち切った。

 

 

「かく言う私も、血みどろの戦いの宿命とか、人殺しは何処までいっても人殺しとか、そういう風に考えてたクチだけどさ。だからこそ今は、それが間違いだって、胸を張って言い切れる。」

 

 

 一瞬だけ言葉を切って、グラスを持っていない方の手で、傍らのサックスケースを撫でた。

 

 

「―――世界を変えるのは、いつだって人間の想いだ。真っ暗だろうと、どん底だろうと、強い心と意志さえあれば、切り開けない未来は無いし、その先の可能性は無限に広がっている。手を引いてくれる人がいれば最高だな。

 ―――この時代に生まれ落ちて、色んな人がそれを教えてくれた。」

 

 

 レインが、のどかが、最愛のクラスメイトたちが、ネギ先生が、両親や周りの人たちが、闇の底で燻り、駄々をこねる私を、光の中に引っ張り上げてくれた。

 このサックスケースに触れる度に、その暖かさを思い出し、心が安らぐ。

 

 

「歩く足を止めるのが“絶望”なら、歩ませ続けるのは“希望”だ。因果だとか運命だとか、そんな言葉に惑わされてたら、やる気出なくなるだろ。他ならぬお前が、そんな事口にするモンじゃねえよ。」

 

 

 そこまで言いきって、ようやく私が少し怒っていた事に思い至った。運命論なんて悲観的な物を、超の―――クラスメイトの口から聞きたくなかったのだ、と。それに気付いた途端、急に気恥ずかしさが込み上げてきた。

 

 

「だから…その、なんだ…。お前がそういう事を口にするのは、どうしても違和感というか、不快感というか…何ていうか、気分が悪くてだな…。」

 

 

 急にしどろもどろになってしまい、ますます恥ずかしさが増していく。

 そして、それに止めを刺すかのように、超が勢いよく吹き出した。

 

 

「口にしてて恥ずかしくなるくらいなら、最初から言うなヨ。全く、格好付かないナ。」

 

 

 さすがに言い返すことが出来ず、誤魔化しがてらにグラスの酒を一気に飲み干し、間髪入れずに次を注いだ。ちょうど私の分で最後になりそうだった。

 

 

「あ、コラ。私まだ飲み足りないヨ。これで帰るんだから、最後の一杯は私に譲れヨ。」

 

「帰るんなら酒は程々にしとけ。これ以上飲んで酔っ払って、帰り方見失ったじゃ笑えねえぞ?」

 

「今更そんな注意すんなヨ。せめて半分よこセ―――――って、あああ!?」

 

 

 交渉が拗れかけた時は、大元から解決するに限る。グラスに注ぐと見せかけて、酒瓶に直接口をつけて一気にラッパ飲みした。アルコールの辛さが喉から胃まで染み渡り、全身で余韻まで味わった。

 

 

「ぷっ―――はぁ!御馳走様!あ、残ったおつまみはお前にやるよ。」

 

 

 何故か超は反応しなかった。それどころか、私の方すら向いておらず、携帯電話を弄っていた。

 なんとなく嫌な予感がして、携帯を覗き込もうとするのと、超が携帯を勢いよく閉じ、満面の笑顔で私に視線を向けるのは、ほとんど同時だった。

 

 

「今の一部始終の顛末、宮崎さんに余す所なく報告しておいたヨ♡覚悟しとケ?」

 

「ごめんなさい本当にごめんなさいこの通り謝りますからどうかのどかにとりなしのメールを送ってくださいお願いします…!」

 

 

 閻魔に密告されたに等しい。いや、現実に存在し現実に罰を与えてくる分、閻魔より恐ろしい。ここで土下座してでも謝っておかねば、精神的に崖から突き落とされる事は確定だ。

 

 …が、膝をつけようとした直後に、携帯電話がブルブルと震えメールの受信を告げた事で、違う意味で膝をつく事になった。見なくても分かる。むしろ見たくない。見たら間違いなく心が折れる。

思わず項垂れてしまったが、一方の超も笑い声が微妙に引き攣っているのが分かった。そういえば超も昔、のどかの“お説教”を喰らった事があったんだっけ。

 

 

「…まぁ、私が帰った後で、キッチリ怒られとケ。」

 

 

 きっと超も、のどかのお説教を喰らった時の事を思い出しているんだろう。あの地獄の業火と凍てつく寒さの板挟みに合っているかのような恐ろしさは、一度体感したが最後トラウマ間違いなしの代物だ。

 

 

「「…はぁ…。」」

 

 

 私と超の溜息が完全に重なった。

 二人同時に顔を見合わせ、そして盛大に吹き出した。それまでの私たちの遺恨を洗い流すように、二人でけらけらと笑い合った。

 

 

 

「まあ、何はともあレ―――――本当に、ありがとうネ。千雨さン。」

 

 

 

 誰よりも私を嫌っていた超鈴音(クラスメイト)の、嘘偽りの無い感謝の念が、私の心にすっと入り込み、満たしていった。

 

 勝ってよかった。

 戦ってよかった。

 

 生き返って、本当によかった。

 

 けれど終着点にはまだまだ遠い。運良く与えられたこのやり直しの人生を、最後の一瞬まで生き抜いてこそ、私の人生は本当のハッピーエンドを迎える事が出来るのだ。

 

 

「さて、酒も飲んだし、一頻り笑ったし―――そろそろ屋台に戻るかね。超、お前も帰る前に顔見せぐらいはしていくんだろ?」

 

「当たり前ネ。皆の顔見ておかないと、帰る気になれないヨ。それに何より―――貴方の演奏も、聞き納めておきたいしナ。」

 

 

 サックスケースを担ぎあげながら、肘で超を小突いた。まったく、さっきから嬉しい事を言ってくれる。

 

 私も超も、これから先、与えられた命で、仲間達と掴み取った世界の中を生きていく。

 今日はその門出の日だ。派手に盛り上げてやらなければ、幸先の良いスタートには成り得ない。

 

 

「そういえば、『別荘』に籠ってる間、休憩中に作曲に勤しんでたそうじゃないカ。修学旅行前に相坂さんにリクエストされて作った物を再アレンジしたり、新曲作ったりしたんだろウ?」

 

 

 そう。『別荘』での特訓の合間、骨休めがてら作曲活動も手掛けてみていたのだ。相坂に頼まれたヤツを始め、入学式で吹いた思い出の一曲のアレンジ、完全オリジナルなど数曲。確かに、そのお披露目にはもってこいだろう。よく考えれば、修学旅行以来、ようやくクラスメイトが全員揃ったのだ。

 

 

「タイトルとかあるのカ?」

 

「いや、別に。けれど、作った全ての曲に、共通のテーマみたいなモンはある。」

 

 

 余りにもベタベタで、口にするのはちょっと気恥ずかしいけれど。

 

 

 

 

“Ticket to Future”―――『未来への切符』、ってな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――その後、屋台に戻った私は、仲間たちの言葉と料理の限りを尽くした労いに盛大に出迎えられ、その勢いのまま用意されたステージに駆け上がり、サックスを吹き鳴らした。

 私も超もクラスメイトたちも、テンションは最高潮のまま下がる事を知らず、私が料理を食べている時は、椎名らの演奏や古と桜咲の剣舞、その他一発芸の数々で場を繋ぎ、私も10分と経たない内にステージに舞い戻って、次々と演奏し続けた。

 そして、行き場を失くした麻帆良祭の来場者や生徒たちが次々と押し寄せ、超包子前はあっという間に数百人以上の観客で一杯になった。

 エヴァも何処からか酒類を持ち込んで、未成年飲酒厳禁など知ったこっちゃないとばかりに全員に振舞った。当然全員が飲み、ますますテンションは上がっていって、乱痴気騒ぎの様相を呈し――――――――

 

 気付いた時には夜明け間際だった。

 

 屋台の特設ステージ周辺は、騒ぎ疲れ酔い潰れたクラスメイトたちが、正しく死屍累々という言葉通りの状態で伏せっており、私以外の誰一人―――エヴァやレイン、雪広や四葉でさえも―――起きている者は居なかった。

 

 そしてやはりと言うべきか、すでに超の姿は無かった。

 

 見渡してみると、あれだけ飲み食い大騒ぎしていたにも関わらず、整然と片付いており、ゴミ一つ見当たらない。飲酒の証拠物件の数々も無くなっている。

 

 起こすの面倒臭いなぁ、と思いつつ、とりあえず一番顔色が悪く、苦しげに呻いているネギ先生の方に向かおうとして、サックスケースに張りつけられた紙の存在に気が付いた。

 

 紙には、たった一言。

 

 

 

 ―――再見。

 

 

 

 僅か二文字のその文章を、何度も何度も読み返し、胸ポケットに大切にしまい込んだ。

 

 東の空から登り始めた朝日は、未来のように眩い。

 産まれたばかりの太陽の光が、そこら中で寝転がる少年少女たちを、明るく、優しく照らしている。

 

 

「…しゃーねえ。手頃なやつから起こしていくか。」

 

 

 私は、少しだるい体に鞭打って立ち上がり、クラスメイトたちの方に歩み寄っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 そして、緩やかに時は流れ――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 


(後書き)

 第51話。酒が飲める酒が飲める酒が飲めるぞー回。というか今回登場人物飲酒しかしてねえ。ちなみにビールは飲ませません。作者自身がビール苦手なので。日本酒とかなら多少度数高くても飲めるんだけどなぁ。

 

 というわけで、超と千雨の遺恨をお片付け回でした。超が千雨を嫌う理由については、本文で述べた通り、千雨が現実しか見てないと語って、過去、すなわち超たち初期型プラントの犠牲あっての世界を振り捨てようとしており、そのくせ過去を引きずって歩いているように見えたからです。

 

 「未来への切符」は皆様のご想像の通りです。14巻のヴァッシュが再起する回のサブタイトルでもありますが、それ以上に、TRIGUN全体に一貫して存在するテーマが、正しくこれだと私は考えています。「白紙の切符」ではなく、「未来への切符」という所がミソ。この部分は結構悩みまして、他の候補には「終わらない唄」「スタンピードに捧ぐ」、そして「TRIGUN」もありました。

 

 にしてもアルが暗いなぁ…。何でこんなに暗いキャラになってしまったのやら。なお、冒頭で礼拝堂屋上でエヴァたちが飲んでるシーンと、千雨と超の会話の始めのシーンまでは、2時間程時間の開きがあります。なので、千雨たちが話し始めた頃にはすでにアルは学園外に逃亡しています。無論タカミチも。瀕死の近右衛門はタカミチが連れて行きましたが、あくまで助けただけで、その後行動を共にするという事は有り得ません。明日菜匿ってもらってたから、命だけは助ける、といった感じです。

 

 今回のサブタイはアニメ「TIGER&BUNNY」OPテーマ、UNISON SQUARE GARDENで「オリオンをなぞる」です。歌詞の「千里眼千里眼」の所、英語だと勘違いして必死で聞き取ろうとしていたのは、私だけじゃない…と思いたい。ちなみにカラオケで歌ってて初めて気付きました。

 

 それと業務連絡です。以前50話のサブタイ当てで見事正解され、外伝出演キャラリクエスト権を得た、無記名様へ。

 一応エヴァとの外伝は出来たのですが、内容が最初から予定していた外伝2話後の物になってしまったため、その二つを投稿してからになります。なので、早くとも4月前後になってしまうかと…。遅筆で申し訳ありません。

 

 

 

 …さて。

 

 思えば2年前の七夕の日に第一話を投稿し、様々な反響をいただきながら、ここまでやってきました。途中で移転したり、何度もスランプに陥ったり、語り尽くせないぐらい色々な事がありましたが、何とかここまで辿り着く事が出来ました。それもこれも、一重に私の拙い作品を読み、ご意見・ご感想を下さった読者の皆様方のおかげであると感じております。

 

 およそ一年半に及ぶ千雨の物語も、次回をもちまして閉幕となります。

 

 最終回は今話の4年後。ラスト一話、皆様どうか最後までお付き合い下さいませ。

 

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