コードギアス反逆のルルーシュR2
             Double  Rebellion














TURN-2 運命の邂逅


ライはC.C.達とは別ルートでこの作戦目的地であるバベルタワーに侵入していた。
今は作戦に入る前の準備段階だ。
そして、ライはそのための潜入工作をしている。
もちろん潜入なので、貴族の青年が着るようなコート等を着て軽く変装している。
ライ自身は顔はわれていないので、その心配はする必要がなかった。
ライは柱の陰に隠れて警備員をやり過ごす。
すばやく周囲に人がいない事を確認し、人の気配がない事を確かめてからある部屋に入り、持っていた携帯端末とパソコンを繋げてキーボードの上で指を走らせ る。

「まったく、こんな事まで仕込んでくれたバトレーに感謝すればいいのかわからないな」

いや、正確にはもう一人いたか…。
この体を随分と特別に強化してくれた張本人が…。
まあそれはおいておいて、ここまでクラッキングができるのはバトレーに散々弄くられた結果だろう。

ライが今いるのは来客用の休憩室だ。
今はライのほかには誰もいない。
おそらくみなカジノの方に行っているのだろう。

このバベルタワーは調べた所によると、バベルタワー内のパソコンは全て同一のサーバーが使用されている。
つまり警備室に侵入せずともいいという事だ。
仕掛けられたセキュリティを解除していくと同時に自分の足跡も消していく。
クラッキングだろうがハッキングだろうが痕跡を消すのは当然な訳で。
さらに念のためいくつものパソコンを仲介しているので、侵入がバレてもこちらまではたどり着けないので問題はない。

『設計図は盗めそうか、ライ?』

「ああ。でも今やってるところだからできれば話しかけないでくれ」

ライが耳元に着けている通信機から響いた少女の声にライは指の動きを止める事なく答える。

『ちょうどいい、どうせなら警備体制に関する情報も盗め』

「はいはい」

ライは投げやりに答えながら作業を続ける。
そして、すぐにディスプレイに映された情報に「当たり!」と呟く。

『さすがだな』

情報をすばやくダウンロードして、無事に完了すると、携帯端末を取り出して、自分のポケットに仕舞うと立ち上がる。

「C.C.、当面の任務は完了した。バベルタワーをある程度回ってからそちらに合流する。何かあったらこちらから連絡を入れるから通信は切るよ」

『了解。…ああ、そうだ。せっかくだからカジノに行ってみるといい。おもしろい事があるかもしれないぞ』

そんな意味深な言葉を最後に通信は切られた。
首を傾げながら周囲を警戒し、ライは部屋を出た。















カジノにライが着くと、そこの一角に人だかりができていた。
気になって行ってみると、どうやらチェスをしているらしいという事がわかった。
人だかりの中に入って見える所まで行くと、二人の対局者がいた。
一人は確か黒のキングと噂された人物だ。
そして、もう一人は…。

(ルルーシュ…!)

この辺りにいる事は連絡を受けていたが、まさかここにいるとは。
懐かしい感情がこみ上げてきて彼に声をかけたくなるが、思いとどまる。

(だめだ。こんな所でボロが出ては作戦が全てパアになる)

そう考え、ルルーシュの勝負を見守る事にした。
その時、カレンもいる事に気づき、アイコンタクトだけでお互いを確認した。
そして、さらにライが周りを見ると、ある人物を見て驚いた。

(あの少年は神根島の!?)

以前見た資料で知った時も驚いたが、まさかここでも一緒にいるとは。
ルルーシュの監視員だと予測は付いていたのでおかしくはないが。

(ならなるべく早くアレを確かめておく必要があるな)

ライはルルーシュの弟役の少年も注目対象に入れておく事にした。
そして、それから数分後…。

「チェックメイト」

黒のナイトをd6に置いた時点で、ルルーシュの静かな声が響いた。
決着だった。

「バ、バカな……」

(見事だ。ルルーシュ)

やはり彼の腕は記憶が変わっても健在のようだ。
それにライは少し嬉しさを感じた。

「食べられるのはそちらでしたね」

周りがざわざわとざわめきだつ中、急に黒のキングが話し出した。

「困るな。こんな噂が広まっては」

「言いふらす趣味は…」

「違うよ、学生君。君が仕掛けたイカサマの話だよ」

そこでライは驚いた。
この男何を言っている!?
イカサマがチェスでできるはずもないだろう!

「イカサマ!?」

「いけない子供だ」

このままでは…!
そう思った矢先、地鳴りが起きた。

(作戦開始!)

すばやくカレンがそばにいた黒のキングを蹴り倒す。
ライは当初の予定を変更し、彼女の援護を行うべくガードの男達に迫り、銃がこちらを向く前に二人とも素手で沈黙させた。

(C.C.の奴、最初からこのつもりだったな…)

C.C.のたくらみを悟ったライは内心ため息をついた。
まあ、作戦が開始した以上ぐずぐずはしていられないので行動を開始する。
作戦の全容は既に頭の中に入っているので、問題はない。
カレンがルルーシュを連れ出す。
このままいけば、うまく収まるのだが。
……やはりそうはいかなかった。
カレンとルルーシュを目で追っていたライはいつの間にかルルーシュだけを見失ったのだ。

「カレン!」

ライは呆然とした顔で尻餅を着いたカレンに駆け寄る。

「ごめん!発信機取り付けられなかった上にルルーシュを見失っちゃった!」

「いや、それは仕方ない。それより次の段階に移行しないと。卜部さん!」

ライは通信を開いて卜部に繋げた。

『ライか!』

「発信機の取り付けに失敗し、ターゲットを見失ってしまいました。作戦段階を次に移行してください」

『了解した』

ライは通信を切ると、カレンに向き直る。

「僕たちも行こう、カレン」

「ええ!」

そう言って二人とも走り出した。















誰もいない一角に二人がたどり着くと、そこには四機の無頼と二つのコンテナがあった。

「すまない!僕の月下まで」

『気にしないでください。卜部さんとC.C.さんの指示ですから』

「そうか」

短く返事をしたライはカレンと共にそれぞれの愛機に飛び乗る。
機体を立ち上げながらライは一人呟く。

「対応が思ったより早い…。いや、これを狙っていたのか!ルルーシュを監視して」

機体のコクピットが閉まると、ライはカレンに通信をかけた。

「カレン、君は独自にルルーシュを捜してくれ」

『わかったわ。あなたは?』

「僕もルルーシュを捜す。後で合流しよう」

ライはそう言うと、月下を駆り、カレンの紅蓮とは別方向に向かった。



















ライはルルーシュの捜索を続行していると、一機のサザーランドに鉢合わせた。
サザーランドがこちらにアサルトライフルを撃ってくる。
ライは月下を器用に操って弾をぎりぎりで避けると、サザーランドに接近して左手で敵の頭部を掴む。

「取った」

ボタンを押し込むと輻射波動が発動してサザーランドを膨張させ、爆散させる。

(敵の目的を知っておいたほうがいいか…)

どうにか脱出した敵パイロットを器用に捕まえる。
少しの不安があったがライは意を決する。

「ライが命じる……」












「なるほど。C.C.をおびき寄せるためにルルーシュを餌にしたのか。嫌な事を考える」

一時眠っていたおかげかギアスは落ち着いて使えた。
しかし、いつ暴走するかわからない恐怖はある。
これからは使用を控えた方がいいだろう。
パイロットは既に聞きたい事を聞いた後始末したので(本意ではなかったが)、ライは再び月下を走らせる。
すると、C.C.からルルーシュを発見したとの通信が入った。
そちらへ向かう途中に卜部とカレンと合流い、目的地に再び向かう。
そして、三人は着いた後、目的地の真上に着たのを確認し、床を突き破る。
突き破って着地した前には二人の人物が立っていた。
一人はC.C.、そしてもう一人は……。

『お待ちしておりましたゼロ様、どうか我々にご命令を』

「いいだろう。何故なら私はゼロ!世界を壊し、世界を創造する男だ」

(これでやっと本当の君に会えた……)

懐かしさが今ライを満たしていた。
そんなライの気持ちに関わらずゼロ=ルルーシュが次々と指示を飛ばしていく。
その時、C.C.がライの月下の方を向く。

「ああ、おまえは残れ」

ライはそれが自分を指している事を理解していたため、指示通りにする事にした。
三人を残してカレンと卜部はここを飛び出して行った。



















ルルーシュは残った青い月下を見上げてからC.C.に尋ねた。

「C.C.、この青い月下に乗っているのは誰だ?この月下に乗れる奴はいなかったと思うんだが」

そう、乗れる奴がいなかった馬鹿げた調整をしてある月下。
非常に過敏であのカレンですらまともに扱える事すらできなかった機体。
そして、何故かC.C.が異様に執着していたもの。

「おまえ以前連れて来いと言っただろう?この月下に乗れる奴を」

「本当に乗れる奴がいるとはな。……まさか本当にナイトオブラウンズとかじゃないだろうな」

ルルーシュの鋭い視線を受けてもC.C.の笑みが濃くなるだけだった。
彼女は月下のパイロットに声をかける。

「降りて来い。新しく入団したんだ。トップであるゼロに挨拶をしろ」

月下のパイロットは数秒間沈黙していたが、意を決したようにコクピットを開いた。
血の臭いが充満し、いくつもの死体が転がっているこの場に、月下のパイロットはコクピットから身軽に飛び降りる。
現れたパイロットの姿をルルーシュはただ呆然と見つめていた。
銀色に輝く髪にルルーシュに勝るとも劣らない端正な顔付きの青年を。
その青年はこの場を見て軽く眉を寄せ、C.C.に視線を向けた。

「顔色が良くないな。血の臭いに当てられてか?それともおまえの過去と重なったか?」

「…あいにくこういう場で平然としてる程僕の神経は図太くないんでね」

C.C.の問いにはぐらかし気味に青年は答えた。
そんな青年にルルーシュはただ歩み寄っていく。
この青年の事は知らない。
ただ何か自分が求めていた者が目の前にいるような感覚がして。
普通そんなものはルルーシュは信じないのだが。
というのもルルーシュは以前からある人物を探していた。
それはミレイ会長が妖精と呼んでいる人物だった。
いつの間にか生徒会の仕事をある程度仕上げてくれる。
そんな事から妖精と呼ばれるようになったのだ。
そして、自分も何故か誰もいないのに隣によく声をかける、というような事が多々あった。
何故かそこに親しかった誰かがいたような気がして。
ルルーシュはその誰かを妖精だと考え、彼の手がかりを掴むためずっと探していたのだ。
困惑と疑問が混じった感覚で青年に近づく。

「おまえ…は……」

青年はルルーシュに視線を合わせなかった。
だが、意を決したように顔を上げると口元を和らげ、微笑む。

「初めまして、ルルーシュ。僕はライだ」

そして、青年は続ける。

「さあ、僕らの反逆を始めよう」

その言葉が契機だっただろうか。
いや、それとも彼の名前を聞いた時からか。
それよりも前に彼が現れた時だったのかもしれない。
だが、それでルルーシュは思い出した。
妹のナナリーのほかにも大切な人がいた事を。

(ああ、そうだな。……ライ。始めよう、俺達の反逆を)

差し出されていた青年、ライの右手をルルーシュは握ると、こう続けた。

「やっと会えたな…。仕事のできる妖精君。お前には聞きたい事は山ほどある。すべて答えてもらうぞ」

ルルーシュが口元を歪めると、ライは心底驚愕していた。

「え…、そんな…、まさか……記憶が…?」

それでルルーシュは確信した。

「なるほど。俺達からお前の記憶を消したのはおまえ自身か」

「…っ!!C.C.、彼の僕に関する記憶は戻らないんじゃなかったのか!?」

ライは戸惑いを隠す事すらせず、C.C.に向かって叫んだ。
C.C.はそれをどこか楽しそうな色で、しかし冷ややかな口調で答えた。

「私は嘘を付いていない。それに事実カレン達の記憶は一切戻ってないだろう?」

「だったら、どうして…」

「その坊やが自力で思い出したんだろ?意外と根性があるじゃないか。少し見直したぞ」

「黙れ、魔女」

そんなC.C.の言葉をルルーシュは一蹴すると、握った手を離して明らかに動揺しているライに向き直った。

「どうして俺達の前から姿を消した?」

「…僕に関する記憶も戻ったのなら、わかるはずだろ?」

「お前の記憶が戻った事、先が長くない事は確かに聞いた。だが、それがどうして姿を消し、俺達の記憶を消す事に繋がるんだ?」

ライは整った眉を歪め、悲哀の色を瞳に宿らせる。

「周りの人を…僕の大切な人達を傷つけたくなかったからだ」

「どうしておまえが俺達を傷つける事になる?」

「………」

ライは沈黙する。
しかし、ルルーシュはそれを許さなかった。

「おまえが取り戻した記憶に関係しているのか?」

「…少し僕の話をしよう。説明するならそこからの方がわかりやすいからね。…いや、君には知っておいてほしい」

ルルーシュは黙って彼が話すのを待った。
ライは続ける。

「僕は…数百年前のブリタニアの地方領主だった。辺境の小国の支配者として生きていたんだ」

ライから告げられた言葉にルルーシュはさすがに驚いた。

「ち、ちょっと待て、ライ。数百年前のブリタニアの地方領主とは一体…」

「時間があるとは言えないから、詳しい事は後になるけど、要するに僕はこの時代の人間じゃないって事だ」

ルルーシュは驚きながらも、ライの話を聞き続けた。
ブリタニアの地方領主だった父と日本の貴族の母との間に生まれたライとその妹。
最愛の母と妹を守るためにライは王となる事を選び、周りから母と妹を守るため小国の支配者として領土を広げ、暴虐の限りを続けた。

「今考えると、力だけを求め続けるのは愚かだったんだけどね」

哀しそうに苦笑しながらライは続ける。
結局求め続けた力で、母も妹も、民も国も、全て失い、生きる理由を失ったライは遺跡で眠りに着いた。
しかし、その眠りをバトレーに妨げられ、エリア11にあった研究所から逃げ出し、ルルーシュやミレイと出会う事になったのだ、と。

正直に言えば、到底信じられるものではなかった。
ライがブリタニアの皇族とイレヴンの貴族のハーフにして、数百年前の人間。
ただライが嘘を言っている感じは微塵もなかった。

「信じられない、だろうね。僕も最初は信じられなかった。他の人からにしてみれば到底」

しかし、ルルーシュは続きを遮るように言う。

「信じる。他でもないお前の言葉だ。俺は信じる」

ライはそれで一瞬驚いた顔をしたが、「ありがとう」と言った。

「さて、ルルーシュが最も知りたいのはもう一つあるんだろ?」

「ああ、どうやって俺達の記憶を消した?」

苦笑するようにライは告げる。

「君が持っている力と同系統の物だよ」

「まさか……」

ルルーシュにもそこまで言われると思い当たる事があった。

「そう、ギアスだ」

やはり、そうなのだ。
しかし、先ほどの言葉を言われるまでそれが彼の口から出るとは予想していなかった。
いや、したくなかったのかもしれない。

「しかし、それをどこで!?…まさかC.C.、おまえが!?」

「ライに力を与えたのは私ではない。それとついでに言っておくが、こいつの能力は聴覚を媒介するもので、おまえと同じ絶対遵守だ。さっきライが言っただろ う?同系統だと」

真偽を問うようにC.C.に向けていた視線をライの方に向けると、ライは頷いた。

「事実だよ。でも君もその力を持つとC.C.に聞いた時には正直驚いたけどね」

それで納得もできたけどね、とライは言った。

「僕のギアスは既に二回暴走している。一回目は僕が全てを失う事となる百年前。二回目は…」

「俺達の記憶を消した時、だな」

ライは意外そうな顔をした。

「気づいてたのか?」

「ああ、おまえがギアスを持っていると言われた時点でな」

ライは表情を戻すと話を続けた。

「実際の所、僕はもう二度と目覚めるつもりはなかった。ギアスの契約で死ぬに死ねない僕は再び神根島で眠りにつくしかなかったんだ」

だが、それからしばらくしてC.C.によって目覚めさせられた事。
しばらく眠っていた事でギアスの暴走は抑えられている事。
ライから語られる言葉をルルーシュは全て聞き逃す事なく受け止める。

今なら彼と歩む事ができるかもしれない。
以前二人の間にあった壁は、もうなくなった。
ならば……、と思える自分がいた。

すると、C.C.が急に話し掛けてきた。

「ルルーシュ、一つ忠告しておいてやる。ライのギアスは既に二回暴走していてかなりやばい所まで行っている。お前の暴走など可愛いと思えるくらいにな。も う一度暴走すれば、ライは間違いなく死ぬぞ」

内容は深刻なものなのに、なんでもないように言うC.C.にルルーシュは彼女を睨んだ。

「まあ、使えない訳ではないから使わせたいようなら好きにするといい」

要するにC.C.の言っている事はこうなのだ。
捨て駒にするだけなら命は関係ない。
ゼロとしておまえはどちらを選ぶ?、と。
ルルーシュは声にはないC.C.の問いかけを無視してライに向き直った。
その時、ライはルルーシュが口を開くより早く話し出した。

「それと君にはもう一つ言っておく事がある。君達を傷つける可能性があるのはこのギアスだけじゃない。もう一つある」

「何だ、それは?」

「この力は昔とは関係ないんだ。むしろ、僕が強化改造された経緯にある」

「もしかしてバトレーか?」

ライは首を横に振った。

「これにバトレーは直接的な原因はないんだ。…話を戻すよ。僕が君達を傷つける可能性があった力…それは狂気なんだ」

「何?」

「僕の体をバトレーと共に強化改造したある人物は僕にあるものを施した。そいつはそれを『ウルフ』と呼んでいる」

「ウルフ?」

ライは頷いた。

「それは要は破壊衝動で、それを僕に仕込んだんだ。そして、たまたまそれと共鳴率が高かった僕はそれに適合し、ウルフはもう一人の僕になった」

「つまり、もう一人のおまえが俺達を傷つける、という事か?」

「そうだ。ただそれは記憶が戻るまで使い方も、存在している事も知らなかったから記憶が戻る前まではもう一人の僕が出る危険性はなかったんだ」

つまり、記憶を取り戻した事でもう一人の危険な自分がいつ出るかわからなくなってしまったのだ。
ルルーシュはこれも信じがたい話だが、疑う事はしなかった。
話を聞いたうえで、ルルーシュは確認する。

「今は大丈夫なのか?」

「ああ。一応扱い方も思い出したし、抑える事もここ数ヶ月で習得した」

そうか…、とルルーシュは言うと、ライに別の事を尋ねる。

「姿を消した理由はわかった。だが、何故記憶を消す必要があったんだ?」

「……みんなを悲しませたくなかったからだ」

もう君達と会う事もないと思っていたから、とライは哀しそうに言った。
ルルーシュはそれと正反対の怒りが湧き上がってきた。

「っ!!ふざけるな!!記憶を消せば、俺達が悲しまないだと!?」

ルルーシュが、怒鳴った事に驚いた表情のライの胸倉を掴み、自身でも制御できない怒りを彼にぶつけた。
ルルーシュの手は怒りから細かく震えている。

「俺が、俺達がどれだけ苦しんだと思ってるんだ!?」

ナナリーはライと一緒に折った桜を持って静かに泣いていた。
自分でもわからないのに。
それからナナリーの笑う回数は減った。
それは生徒会のみんなも同じだった。
ミレイも、リヴァルも、シャーリーも、ニーナも、カレンも、そしてスザクでさえも。
みんなどこか寂しそうな時があったのだ。
みんな理由はわからずとも、失った記憶で悲しんでいたのだ。

「俺達は…俺は…忘れたくなどなかった!!」

「……すまない」

ルルーシュはライの胸倉から手を離すと念を押すように言った。

「二度と俺達の記憶を消すような真似はするな、いいな?」

「…ああ、わかったよ」

そう言って互いに堅い握手を交わした。
今、二人の反逆が始まる。













あとがき

再びの4000万HIT記念作品(続編)です。
投稿期限である9月いっぱいは記念作品として投稿するつもりです。
元々4000万HIT記念作品としてスタートしたものですから。
10月以降は通常の作品として投稿する事になります。

今回はTURN-2、つまり第二話を投稿させてもらいました。
まあ続きなんですから当然なんですけど。
アニメならちょうど第一話にあたる所です。
今回の話でライの事が少しわかってもらえたんじゃないでしょうか。
知っている方ならわかると思いますが、ライの過去のほとんどはゲームの設定通りです。
次回以降からもう少し明らかになりますが、ライの過去にオリジナルな部分も入れてあります。
知っている人はもしかしたらもうわかっているかも。
もう一つライが体を改造されたのはゲームと同じですが、単純に強化しただけって感じが僕個人としては強かったです。
バトレーの研究はコードR、つまりC.C.の研究でジェレミアの体を強化し、彼女の体構造を再現しようとしたというのが原作でありました。
だからこの際特別な強化を施された体でも良いのではないかと思い至り、ライの体を改造したのは別人で普通の強化人間とは違うという事にしました。
その詳しい事はまた後に明らかになると思います。
第二話に差し掛かったので、知らない人のためにライの事をおおまかに説明しておきます。
ライは頭の切れはルルーシュ並で、戦闘力はスザク並(もしくはそれ以上)、美形青年で、しかもギアス使い。
ギアス能力は今回の話で触れていますからわかりますね(設定はゲーム本編通りです)。
一見、完璧超人に見えるライですが、実は弱点もあります。
そこはここの物語のおもしろい所でもあるので、読者のみなさんが探してみて下さい。

今回の話ではついにライとルルーシュの運命の再会となる訳ですが、いくつか読者の方々が気になっていたであろう事を解説しておきます。
まず、ライが記憶を消した人達の事ですが、これはライが目覚めた後も戻っていません。
C.C.の力でもその部分の記憶は戻っていないルルーシュでしたが、結局そこは自力で思い出したという事になってます。
つまり現時点ではルルーシュ以外は記憶は戻っていないという事です。
C.C.は元々ギアスが効かないので例外ですが。
次にこの作品は最初にC.C.ENDからの続編と説明しましたが、実はルルーシュやナナリーENDの一部も使ってあります。
ゲームは基本的に好感度の最も高いキャラが描写されるという事になっていましたが、もしライが去ったら好感度がある程度高ければおそらく三人共それぞれの ENDを同時期にしていたのではないかと僕個人として思った訳です。
そこでC.C.ENDを主軸に置きながらルルーシュとナナリーENDも合わせた総合的ENDから始まるという事にしたのです。
だからライはC.C.だけでなくルルーシュやナナリー、みんなと親しかったという事ですね。

という訳で今回TURN-2を見ていただいた訳ですが、どうだったでしょうか?
この話はこれからのストーリーを見る上で非常に大事になってくる所でもありますから、むしろ楽しむというよりちょっとでも感動してくれたら嬉しいですね。
こんな作者の書き方で感動できるものが書けているかも怪しいですが。
次回の更新時期も未定ですが、これからも応援よろしくお願いします。

次回はいよいよバベルタワー脱出です。
原作をご存知の方は気になると思いますが、あの人は果たしてどうなるのか。
それは次回に乞うご期待ください!

前回の作品のWEB拍手をしてくださったみなさんありがとうございました。
思った以上の人気でびっくりしましたが、素直に嬉しかったです。
感想(コメント)をしていただいた方ありがとうございました。
こういう感想や声援は作者自身の励みにもなりますので、良かったと思ってくれた方は是非感想をお願いします!

我ながら長々とあとがきをしましたが、今回はこれで終わりです。
それではまた次回に!



改訂版 修正箇所

ライのセリフ
文の一部



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