コードギアス反逆のルルーシュR2
              Double  Rebellion














TURN-8 新しい地で


中華連邦。
世界最大の人口を誇る連合国家。
しかし、その実態は既に老人と言っていい。
国家の象徴たる天子。
その地位を陰で操る支配層、大宦官がこの国を牛耳っていた。
そして、事実裕福なのはこういう人物とその一部のみだった。
貧困と停滞に人民の活力は奪われていた。

日本を脱出した黒の騎士団が向かったのはこの中華連邦である。
時の権力者大宦官は日本人のために黄海に浮かぶ人工島「蓬莱島」を貸し与えた。
事前に話がついていたとは言え、これが何を意味するのかは後にわかる事となる。









「じゃあこれは厳重に保管しておくって事でいいんだね?」

ラクシャータに聞かれたライは頷いた。
ラクシャータが言った“これ”とはライが以前乗っていた月下改であった。
まだ使えない事はないが、ライが崩月に乗り換えた以上これはもう必要なかった。
ならば、誰かが乗ればいいと思うが、これはライ専用の設定が施されたままでライ以外は扱えない。
廃棄するという手もあったが、ライはそれを容認しなかった。

「短い間とはいえ僕の相棒でしたからね。それにゼロに許可は取ってあります」

「ん〜、了解〜。じゃあこの蓬莱島に保管しておくわね〜」

「お願いします」

ライはラクシャータにそうお願いして、格納庫を出ていった。
この蓬莱島に着いてからライも仕事に忙しいのだった。

















その翌日ライは藤堂達と当面の事を軽く話してからゼロがいるという部屋に向かっていた。
その手にはピザを持っている。
C.C.に持って来いと頼まれたものだった。
まもなくしてライはその部屋に着いた。

「C.C.、ピザ持って…きた…よ…?」

ライがドアを開けると、そこにはルルーシュを押し倒しているカレンがいた。
その姿を見てお互い硬直してしまう。
ただC.C.はお目当てのピザを見て目を輝かせている。

「……すまない。続けてくれ」

そう言ってライはそのままUターンした。
ピザを持ったままで。
冷静に見えて動揺していたらしい。

「あ、待て!私のピザ!」

その後をC.C.が追いかけようとするが、その時通信が入った。

『ゼロ様!斑鳩に来てください!大変な事が!』

結局ルルーシュとカレンはこの状況をライに誤解だという事を言う機会を失くしてしまった。

















斑鳩に到着したライ達はブリッジに集まった幹部達とゼロとで会議を始めた。
そして、その内容は天子が政略結婚をするという事だった。
もちろん相手はブリタニア。

「何!?政略結婚!?」

さすがのゼロも身を乗り出した。

「ええ。皇コンツェルンを通して式の招待状が届いたのですけど…。新婦はこの中華連邦の象徴、天子様。私を友人として招きたいと」

「そして新郎はブリタニアの第一皇子」

「オデュッセウスとかいう人」

藤堂の言葉をラクシャータが引き継ぐ形で言った。

「用意していた計画は間に合いません。まさか大宦官が……」

「いや、ブリタニアの仕掛けだな」

ディートハルトの予測をゼロは否定した。
ライもそれは同感だった。

「だとしたら俺達は……」

「最悪のケースだな」

淡々と言うゼロだが、仮面の中では歯を喰いしばっている事だろう。
その時玉置がお気楽に口を開いた。

「何心配してんだよ。俺達はブリタニアと関係ないだろ?」

「はぁ!?」

案の定の馬鹿発言にさすがのカレンも驚いた。

「国外追放されたんだからさ」

どこまでもお気楽で馬鹿な玉置に新しくオペレーターになった子達が口々に意見する。

「あの…罪が許された訳じゃないんですけど…」

「それに政略結婚ですし」

「中華連邦が私達を攻撃してくる可能性だって…」

まあ遅かれ早かれ十中八九そうだっただろうな、とライは考えている。

「じゃあ何かよ!?黒の騎士団は結婚の結納品代わりか!?」

「あら、上手い事言いますわね」

「使えない才能にみちみちているな」

それはライも同感だと思った。

「呑気こいてる場合か!大ピンチなんだぞ、これは!」

「だからさぁ…」

「それを今話してるんだよ」

ようやく事態を察した玉置にさすがのみんなも怒っているようだった。
そんな玉置は置いておいて、ゼロの傍に立っていたライはゼロに話しかけた。

「ゼロ、この裏にはやはり…」

「ああ、もう一人いるな。険悪だった中華連邦との関係を一気に。こんな悪魔みたいな手を打った奴が」

ライとゼロの予測の先には同一の人物があった。


















会議の後ゼロに呼び出されたライは、ゼロの部屋にノックをしてから入った。

「何だ?用って」

ちなみに部屋のドアは入った後ロックしたのでルルーシュはゼロの仮面をはずした。

「今夜俺は招待された神楽耶と共に祝賀会に行く。そこでおまえにはカレンと共に護衛を頼みたい」

ライはその言葉に少し驚いた。

「護衛の件はもちろんだが、まさか君が直々に行くのか?」

「ああ。黒幕が誰かをこの目で見ておく必要があるからな。不服か?」

ライは首を振った。

「いや、そうじゃない。少し驚いただけだ。君がそのつもりなら僕はかまわない。そんな君を補佐するのが僕の役目だ」

「ありがとう、ライ」

「礼には及ばない」

ライが笑顔でそう言った時、ルルーシュは思い出したようにライに言う。

「言い忘れていたが、祝賀会に行く時は顔を隠していけ。おまえの正体がバレるのは避けたい」

ライはそれを聞いてきょとんとした。

「え?何故だ?それは君の事だろ?」

「もちろんそうだが、おまえには俺の左腕として常に傍で動いてもらった方が助かる。ただ祝賀会にはおそらく護衛としてスザク達ラウンズもいるだろうから な。特にスザクにはおまえの顔を見られるのは避けたい」

ライはそれで顔を隠せという理由に納得がいった。
まだブリタニア軍に顔がわられていないライは自由が効く。
つまり、ゆくゆくはルルーシュの隣で動いて行くにあたって、ライの顔が割れるのは避けたいというものだった。

「わかった。じゃあ丁度アレを使ういい機会だな」

「アレ?」

ルルーシュがアレが何なのか尋ねたのを聞いてライは頷いた。

「ああ。何かの役に立つかなと思って仕入れておいたものだ。一般的に趣味の悪いものだけどな」

こうして、ライはルルーシュ達の祝賀会行きに同行する事になった。


























ライ達は祝賀会の会場である迎賓館に到着すると、そのまま中に入った。
ライは黒の騎士団のコートを着ていて髪型を変え、顔にはかなり趣味の悪い仮面を付けている。
いや、むしろ怖いというイメージがつくだろうか。
だが、これだけでも雰囲気は変わるものだ。
まあライとしては個人的に気に入ってる代物だ。

『皇コンツェルン代表、皇神楽耶様ご到着!』

来た事を知らせる声が館内に響き渡った。
そして、そのまま神楽耶、ゼロ、カレン、ライは階段を上った。
上りきると、一斉に階段に目を向けていた会場の人たちがざわめき出した。
その中の面々にはスザク達ナイトオブラウンズの面々や第二皇子シュナイゼルまでもがいる。

(あの人が黒幕と見るべきだな)

当のその本人はおもしろそうな顔をしている。
そして、すぐに衛兵がライ達の周りを囲む。
槍を構えた兵に対してライは僅かにゼロと神楽耶の前に出ると、僅かに構えた。
ライは剣術を修得しているのだから、体術もかなりのレベルで扱える。
もし攻撃されてもこの程度なら2人を守りながらでも問題はない。
もちろん、カレンは自分の身は自分で守れるし、あくまでラウンズが割って入らなければの話だが。
黙ってライは構えたままだったが、シュナイゼルがそこで前に出てきた。

「やめませんか、いさかいは。本日は祝いの席でしょう」

「ですが…!」

大宦官の一人が意見しようとするが、シュナイゼルはとりあわなかった。

「皇さん、明日の婚姻の儀ではゼロの同伴をご遠慮いただけますか?」

「それは…致し方ありませんね」

「ブリタニアの宰相閣下がおっしゃるのなら……引けい!」

大宦官の命で兵が退いたので、ライも構えを解いた。
しかし、位置はそのままだ。
そして、シュナイゼルがこちらに歩み寄ってくる。
だが、その間に割るようにスザク達ラウンズが立ちはだかった。
やはり警戒はしているようだ。

「枢木さん、覚えておいでですか?従兄妹である私を」

神楽耶がゼロの前にくるりと回って出た。

「当たり前だろ」

「キョウト六家の生き残りは私達だけとなりましたね」

「桐原さん達はテロの支援者だった。死罪は仕方がなかった」

スザクの言葉に神楽耶が残念そうな顔になる。

「お忘れかしら。昔ゼロ様があなたを救った事を」

神楽耶は腰に手を当てて自身満々に言う。
それでスザクはハッとなった。

「その恩人も死罪になさるおつもり?」

「それとこれとは…」

「残念ですわ。言の葉だけで人を殺せたらよろしいのに」

確かにそれならいいのかもしれないが、少なくともこの中にそれができる人が2人いる。
すると、そこでゼロが口を開いた。

「シュナイゼル殿下。一つチェスでもいかがですか?」

「ほう」

「私が勝ったら枢木卿を頂きたい」

「え?」

「は?」

スザクとカレンはその言葉に驚いた。

「神楽耶様に差し上げますよ」

「まあ!最高のプレゼントですわ!」

喜ぶ神楽耶をよそにライはゼロの意図がわかっていた。

(要するにスザクが邪魔という訳か…)

別にゼロはスザクがほしい訳ではないのだ。

「楽しみにお待ちください」

ゼロが言い終わると、今度はシュナイゼルが言う番だった。

「では私が勝ったら仮面をはずしてもらうとしようかな?そちらの彼も」

今度はゼロとライが驚く番だった。
態度には表れていなかったが、それでもライは内心条件に自分が入れられた事に驚いていたのだ。
ゼロも同様なのだろう。
ゼロの左隣にいたカレンも驚いている。
顔をわずかに右に向けてこちらに視線を送ってきたゼロにライはわずかに頷いた。

「いいでしょう」

ライの意思を読み取ったゼロはそれを承諾した。

「はは、楽しい余興になりそうだね」


















そして、その余興は別室で行われる事になった。
ゼロとシュナイゼルの対局が始まる。
どちらも強く、決着はなかなかつかない。
対局模様はほぼ互角だが、僅かにゼロが押している。
シュナイゼルの傍には副官らしき人物とスザクがいた。
それに対するようにライが立ち、その僅か後方、ゼロの隣にカレンが立っている。

「これが黒の騎士団の双璧。一人は紅蓮のパイロット」

「って事はゼロと同様悪趣味な仮面をかぶっているあいつがこの間の蒼い奴のパイロットか」

あくまでジノやアーニャの勘だったが、それは当たりだった。
そもそもライの挙動には隙がないし、洗練された形がある。
カレンの顔はわれていたので、ジノとアーニャにそういう推測、いやある種の確信に至ったのだ。
戦場にいる者の勘と言った所だろうか。
スザクも同様に思っているだろう。

「しかし、紅蓮のパイロットは手配画像よりずっといいな。ああいうのタイプなんだ」

ジノはそう言ってカレンに向けて手を振った。
それを見たカレンは咄嗟に顔を背けた。
対するアーニャはずっと仮面のライの見ていた。
その間にも対局は進んでいるが、まだ決着はつかない。

「強い…!殿下が押されている…!」

副官らしき人物が呟いた。
と言ってもほぼ互角。
一瞬の気の抜きが命取りになる。

「ほお、まさか切り返されるとは…」

そう言ったゼロは少し考えると、キングを手に取った。

「キング?」

「王から動かないと部下は付いて来ない」

そう言ってゼロは黒のキングを前に進めた。

「見識だね。では、こちらも…」

それでゼロが僅かに顔を上げた。
シュナイゼルが白のキングを前に進める。
対してゼロも黒のキングを前に進める。
これは意地の張り合いか、それともせめぎ合いか。

「どうです?これ以上は進めないでしょう」

ゼロがさらにキングを前に進めた。
一マス開けた状態でキング同士が向かい合っている。

「このままではスリーフォールドレピティションとなる」

「私も本意ではないが、引き分けかな?」

誰もがそこで終わりかと思った時、シュナイゼルが白のキングを手に取った。

「いや…、白のキングを甘く見てはいけないな」

「まさか…!」

シュナイゼルが黒のキングの前に白のキングを進めた。

「チェックメイト」

「それではゼロが駒を進めれば…!」

「シュナイゼルのキングが」

「取られてしまう!」

確かにそうだ。

「何ですかな?これは。拾えと言われるのか、将に」

どう見てもふざけているとしか見えない。
だが……。

(この人、ルルーシュを試している)

人の意図がどういうのものかをよく理解、察知できるライはシュナイゼルの狙いが何かをだいたいわかっていた。
だが対局者はルルーシュ=ゼロなので口出しはしない。

(それにこの人の目……)

その時ゼロの手が動いた。
ゼロが取った手は駒を引かせるものだった。
それに観客がざわめく。

「皇帝陛下なら迷わず取っただろうね」

それでハッとしたようにゼロが頭を上げた。

「君がどういう人間なのか少しわかった気がするよ…」

その時、ライは殺気を感じた。
その殺気はゼロに向けられている。
ライはすぐに身構えた。
直後、駆けてきた人の手をスザクが無理やり掴んだ。

「ゼロ!ユーフェミア様の仇!!」

こちらに飛び込んできたのはニーナだった。
物凄い形相で掴まれた右腕にはナイフが握られている。
ゼロは席を立って退くと、ライとカレンはかばうように前に出た。

「やめるんだ!ニーナ!」

スザクがニーナの腕を上げさせて止める。

「どうして邪魔するのよ!スザクはユーフェミア様の騎士だったんでしょ!」

叫ぶニーナにスザクはハッとした。

「あなたはやっぱりイレヴンなのよ!」

スザクを振り払ってニーナがこちらに飛び込んできた。
ライは彼女のナイフを紙一重でかわして、彼女の手首を強く掴んでナイフを取り落とさせる。

「邪魔をしないで!」

叫んできたニーナにライはすっと目を細めた。

「!!」

ニーナが床にへたへたと座り込む。
ライは周りに影響を出さないように最小限に鋭い剣気を彼女に叩き付けた。
剣気は主に剣術を修得したものが、使う気迫の一種でその腕によって強さは違ってくる。
本当なら相手を気絶させるくらいに放てるが、そこまでの必要はないと思いそれまでに留めた。
ライは床に落ちているナイフを拾い上げる。

「悪いが、君の望みは聞けない」

それだけライは小声で言うと、近づいてきたジノにナイフを手渡した。
その時ライは後ろにミレイがいる事に気づいた。
何故彼女がいるのか、何故ニーナもここにいるのかは知らないが、ライはまた会えた事だけでも十分だった。
ミレイは二度目で、ニーナの変わりようには驚いたが。
事態にとりあえずの収拾が付くと、シュナイゼルが口を開いた。

「すまないね、ゼロ。余興はここまでとしよう。それと確認するが、明日の参列はご遠慮願いたい。次はチェスなどでは済まないよ」

こうして波乱の祝賀会は幕を閉じた。
その翌日、式典で起こったクーデターに乗じてゼロが天子を奪い取る。



















あとがき


新しい年が始まって、初めての投稿作品になりますね。
第8話をお送りしました。
今回はアニメの第9話に当たる所です。

えーと、今回はあまり解説する所はないんですが、していきますね。
まずライには祝賀会にも同席してもらいました。
悪趣味な仮面付きで。
ちなみに悪趣味な仮面のモデルはブ○ーチの○護の仮面ですね。
あの仮面のデザイン個人的に好きなんでちょっと遊び心でやらせてもらいました。
もちろん顔を隠すのにはちゃんと意味があった訳ですが。

もう一つはこの話でライは相手の意図等を読むのに長けているというのを再認識してもらうという意図で書いたというのもあります。
この話ではライが第三者視点に回る事が多かったですが、そういう所でも相手の意図をしっかり読んでいるという所ですね。
まあこれが後に少し関わってきたりもする訳です。
ちなみにニーナに剣気を叩きつけてラウンズが動かなかったのは周りに危害を加えるものではないと判断したからですね。
もちろん気づいていなかったというのではないですが。

解説はこれまでですね。
ちなみに天子略奪の所はアニメ原作と変わらないのではずさせてもらいました。
気になる人はアニメ原作を見てね。

次回はライが天子を略奪した後での戦闘で大活躍します!
次回から戦闘シーンでライの活躍が目覚しくなってくるので、中華連邦編はそこからが本領です。
次回も是非見てくださいね!

新年になってもたくさんのWEB拍手ありがとうございました!
本当に嬉しいです!
不定期更新ですが、これからもがんばっていきたいと思います。
今年もこの作品とウォッカーをよろしくお願いします!







改訂版 修正箇所

ライのセリフの一部
その他文一部
誤字修正



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