コードギアス反逆のルルーシュR2
              Double  Rebellion














TURN-11 ラブ・アタック!?(前編)


中華連邦での事件が終わって、数日……。

「今日からこのアッシュフォード学園に転入することになりました、ライです。よろしくお願いします」

教壇の前で一礼するライ。
それに対して女子生徒からの黄色い悲鳴が起こった。
手はず通りルルーシュのクラスにライは転入する事になった。
ルルーシュの身近で行動するなら同じクラスが適しているという事だった。

「じゃあ席は一番左後ろの席で」

教師であるヴィレッタの言葉に頷くとライは指定された席まで行って座った。
その後ホームルームを終えて、授業に入る。
ライはそれを黙々と受けていった。
他人から見れば結構まじめな人に見えただろう。
元々マメな性格も影響しているのかもしれない。
授業の合間の休み時間にはライへの質問などで大勢の生徒(主に女子)がライの周りに集まった。
ライはそれに嫌がることなく笑顔で質問に答えていた。
そして、数日前とは一転して平穏な午前を終えて昼休みになった所でルルーシュとシャーリーに呼び出された。
何でも生徒会長のミレイがライの顔を見たがっているとの事だった。
特に断る理由もないのでライは快くそれを受けた。
こうして昼食を生徒会メンバーととる事になった。

中庭に着いたライ、ルルーシュとシャーリーはそれぞれベンチに座った。
ほかのメンバーは既に座っている。

「会長、何で俺が彼を連れてこないといけなかったんですか?」

開口一番ルルーシュが呼び出し主であるミレイに文句を言った。

「そうですよ、会長!私なんか皆、特に女子に睨まれたんですよ!」

ルルーシュはライを連れてくるのにシャーリーに手伝ってもらったが、シャーリーにはとんだ災難だ。
ルルーシュにライと美形男子2人と一緒に歩いているのだ、目立ちもするだろう。

「いいじゃない、私だって噂の美形転校生見てみたいんだもの。……にしても」

と言ってミレイはライを見ながら続けた。

「確かに美形ね。ルルーシュに負けず劣らずじゃない?ってああ、紹介が遅れたわね。あたしミレイ・アッシュフォード。よろしくね」

「よろしくお願いします」

続いてほかのメンバーも自己紹介してくれる。

「さっき教室で何人かは話したと思うけど、ちゃんと自己紹介した方がいいよな。俺はリヴァル・カルデモンドっていうんだ」

「あたしはシャーリー・フェネット。よろしくね、ライ君」

「枢木スザクです。よろしく」

「……ルルーシュ・ランペルージだ」

「ロロ・ランペルージといいます。よろしく」

「私は……」

とジノが言いかけた所で横にいたリヴァルが小声で「じゃなくて俺」って訂正するように言った。

「ああ、俺はジノ・ヴァインベルグっていうんだ。で、こっちがアーニャ・アールストレイム。ま、よろしくな」

金髪の青年は笑顔でそう言った。
対して紹介されたピンクの髪の少女は無表情で携帯をいじっている。

「ライです。こちらこそよろしく」

そう言ってライももう一度自己紹介すると、続けた。

「そういえば、スザクとジノとアーニャは……もしかしてナイトオブラウンズの?」

と言ってライは思い出したように「って呼び捨てでも良かった?」って聞くと、スザクは「それで構わないよ」って言ってくれた。
ほかの2人にも視線を向けると、2人ともそれでいいようだった。

「うん、そうだよ」

「やっぱりそうか……!いや、感激だな。あのナイトオブラウンズを間近で見られるなんて」

もちろんこれは芝居だ。
彼らがナイトオブラウンズである事は知っているし、実力も凄いのは身を持って知っている。
しかし、一般人を装う時点で何も聞かないというのも変だから聞いておく事にしたのだ。

「でもここではそういう立場を気にしないでもらえると嬉しいな」

「わかった。じゃあそうするよ」

笑顔で答えるとライはみんなと同じように昼食を食べ始めた。
みんなが楽しく話しながら食べていると、ミレイがライに尋ねてきた。

「ねぇ、ライ。生徒会に入ってみない?」

「え?」

唐突な誘いにライはきょとんとした。

「会長、いいんですか?そんなにメンバー増やして」

「別にジノやアーニャが増えた所でまた一人増えてもいいじゃない」

シャーリーの疑問にミレイは気にした様子もなく答える。

「それはありがたいですが、本当にいいんですか?」

「うん、人数多い方が仕事もはかどるし、楽しいしね」

「じゃあ、よろしくお願いします」

「ああ、そんな固くならないでいいわよ。気軽にね」

こうしてライは生徒会に入る事になった。
昔と同じ位置に落ち着けるというのが、ライは内心とても嬉しかったのだ。
メンバーは若干変わっているが、それでもここはあの頃と変わらないものだった。

「ということでルルーシュ!放課後、ライを案内してあげて!」

「俺がですか?」

「同じクラスなんだしいいでしょ」

断れそうにないと思ったルルーシュはわざとため息をついた。
わざと面倒そうにため息をついたのは、普段通りの自分とライと初対面である事を演じるためである。
ここにはスザクもいるため用心に越した事はない。

「はぁ、わかりましたよ。……じゃあライ、放課後案内するから。それと、俺の事はルルーシュでいいから」

「ありがとう、ルルーシュ」

こうしてライは楽しい昼食の時間を生徒会メンバーと過ごした。

















放課後、ライはルルーシュに学園を案内(ライが既に学園を知っているのをルルーシュも知っている)した後、学園の地下にある司令室に来ていた。
案内は別にしなくても良かったのだが、初めて来たという手前さすがにしないのはまずかった。
一方、この地下司令室は本来は機情局のものだったが、ルルーシュがロロを取り込み、機情局員をギアスで支配して、ヴィレッタを取り込んだ頃からすでにル ルー シュのものとなっていた。

「ライのおかげでデートのキャンセルが増えた……助かったよ」

「でも、この予定だけを見ると完全にダメ男の定評がつくな。まあ主に女子にだが……。しかもそれでもVIP級並のスケジュール……」

ライは見せられている中身がきっしり詰まっているルルーシュのスケジュールを見ながら呟いた。
その中身はほとんどデートだが、それに挟んで黒の騎士団でのゼロとしての予定まで入っている。
減って少し余裕はできたものの、それでもやはり凄かった。

「それは咲世子が勝手にやった事です!」

「ルルーシュ様のキャラクターでしたら問題ないかと思ったのですが……」

端で控えていた咲世子の言葉にライは苦笑した。

「どれだけルルーシュがいい人なんですか……(汗)しかも安請け合いするのは人間関係を円滑するとは限りませんよ。…ってそういえば咲世子さん天然で した ね。まあそれならルルーシュのミスでもある訳だが……」

「否定できないな」

ライの言葉にルルーシュは肩を竦めながらも同意した。

「とにかくそれはルルーシュにまかせる。僕にはこれ以上どうしようもないしね。それで、もう一つの問題っていうのはラウンズの事か?」

「ああ。ナイトオブスリー『ジノ・ヴァインベルグ』、ナイトオブシックス『アーニャ・アールストレイム』。スザクに加えてラウンズが二人もこの学園に入っ てきた。そこでライ、おまえにあの2人がどういう意図で学園に入ってきたのか調べてほしい」

「君の正体が探られているかという点も含めて?」

「そうだ。それも含めて頼む」

「わかった。じゃあ僕はそろそろクラブハウスに戻るよ」

ライは笑顔で言うと、地下司令室から出て行った。

「……ねぇ兄さん、あのライって人、僕の事避けてないかな?」

「そうか?」

「うん。前ここで最初に自己紹介した時も一瞬、ほんの少しだけど身構えたんだ」

ライは転入する前にここにいるロロとヴィレッタと咲世子に自己紹介していた。
もちろんルルーシュの友であり、黒の騎士団の司令補佐として。
だが、いくらライでも一度殺されかけた人物に対してすぐに仲良くなれるわけではない。
あの時もロロを見た瞬間ライは一瞬だが、身構えた。
ライがそうやって構えを取るのは一種の癖のようなものだ。
もちろんルルーシュもその事は知っていたから事情も理解していた。

「気のせいだろ。それにこれから一緒にやっていく仲なんだからな」

「うん、そうだね……」

そう返事したロロを見ていたルルーシュの心は『当然だろう』と呟いており、それは憎しみの色に彩られていた。


















それから三日後。
ライは特に問題もなく、平穏な日々を過ごし生徒会メンバー全員とすぐに打ち解けていた。
昔生徒会の仕事を手伝っていた事もあって、ライはすぐに生徒会の重要人物となった。
そして今日も生徒会長のミレイから一つの決定事項が伝えられた。
そして、それを聞いたライは驚いた。

「僕がラウンズの案内!?」

「そ、ライってもう学園の中にも完璧に詳しいし」

「そうだよね〜、ここって広いのにライ君全然迷わないんだもん」

「ルルーシュに案内してもらったから。…っていうかまだ2人には案内してなかったんですね」

苦笑いしながらライが聞くとミレイさんが「うん、忘れてたのよね〜」とあっけらかんと言った。
さすがにこれにはライも呆れてしまった。

「いいんじゃないか、ライ。案内をしてあげたら」

他人事のように言ったルルーシュを驚いて見るライ。
しかし、そこでライは思い出した。
ラウンズ2人を調査するという事を。

「…わかりました。引き受けます」

納得したライはその任を引き受ける事にしたのだった。















言われてすぐ後に、ライはジノとアーニャを連れ立って学園を案内していた。

「でも凄いな、ライは」

唐突に口を開いたジノにライは彼の方に向く。

「ん?何がだ?」

「だって私…じゃなかった、俺達より遅く転入してきてしかも間もないのにもう学園の地理全部わかってるんだぜ」

「それは仕方ないんじゃないか。案内されてないなら」

「いや、実を言うと案内はされたんだ」

ライは言ったジノの言葉に首を傾げた。

「え?どういう事?」

「大抵必要な所は案内してもらったんだが、こういう部活動とか細かい所は案内してもらってなかったって事だったんだよ」

「あ、なるほど。…ってそれならそうとミレイさんは言ってくれたら良かったのに……」

納得すると同時にちゃんと説明しなかったミレイをライは少し恨んだ。

「まあそういう事ならその辺りを重点的に回ってみようか」

「おう!」

「…うん」

そう言って返事した2人を連れていたライは程なくして体育館に着いた。
中ではバスケ部が試合をしている。
バスケットボールは激しく、目まぐるしく入れ替わる攻防とボールを操るテクニックが印象的なスポーツだ。

「おー、凄いな。あれって何だったっけ?」

それを聞いたライは一瞬きょとんとしたが、ジノが本来は貴族だっていう事を思い出した。
ちなみにその話は有名でブリタニアでは広く知られており、それほど珍しい事でもない。

「あれはバスケットボールっていうスポーツなんだ。って2人とも体育でした事はないのか?」

「……うん。まだしてない」

意外にもそれにアーニャが返事をした。
てっきりしているかと思っていたライだったが、確かにこの3日でした覚えはなかった。
比べるのもどうかと思ったが、とりあえずそういう理由で納得した。
そんな感じで見学していたライ達だったが、それが目に止まったらしい。

「あ、ライ君だ!」

「あ!ホントだー!」

主に女子バスケ部に。

「それにジノ様とアーニャさんも!」

すると女子バスケ部の何人かが入り口付近で立っていた三人を強引に部の所に連れてきた。
そこで、丁度試合が終わったのか連れられたライ達に女子バスケ部員達が集まった。
一人明るい子がライに質問してきた。
迫るように。

「どうしてここに!?」

「いや、ジノとアーニャの案内で、部活動をしている所を中心に回っているんだ」

あまりの剣幕にライは若干ひきつつも答えた。
みんなほどよく汗をかいている。
汗臭いなどとは決して言わない。

「あ、そうだ!ライ君、ジノ様、アーニャさんもやってみない?」

「そうだね!それいいと思う!」

他の子が提案した事に周りの部員達も同意していく。
どうしようかと迷ってるライにジノがこっそりと話しかけてきた。

「いいんじゃないか?ライ」

「いいのか?ジノ」

「俺は構わないぜ。いや、むしろやってみたい」

笑顔で興味津々のジノを見てこれは断る事は無理そうだと判断した。

「じゃあ折角だし、やらせてもらうよ」

笑顔で言ったライの言葉に、女子バスケ部員は嬉しそうな声を挙げた。




















今バスケットの試合では女子達に混じってライが試合をしていた。
服装はちゃんとバスケット試合用の服装に着替えている。もちろん男性用を。
ジノとアーニャは基本等を学んでいるので試合はしていない。
パスされたボールをライはキャッチすると、すばやくドリブルして敵陣のゴールに向かう。
ディフェンスの一人をロールでかわすと、飛んでダンクでボールをゴールに叩き込んだ。
見事にゴールが決まり2ポイントが入る。
そこで試合終了のブザーが鳴った。
結果は16対12。
ライ達のチームの勝ちだった。

「よ〜お疲れ」

笑顔で手を振ってきたジノにライは軽く手を挙げた。
ライは息は切れていないが、程よく体が温まっている。
そんな感じだった。
試合時間は10分だからこれくらいでバテたり息を切らす事はまずない。

「どうだった?」

「バスケってやっぱ結構すごいのな。次は俺もやるから」

満面の笑顔でジノが言った。
それにライの笑顔が引きつった。
ナイトオブラウンズで長身のジノが混じったらおそらく洒落にならない。
でもこの好奇心、やる気満々の笑顔を見れば止められそうにない。
だからこう言うしかなかった。

「マジか?」

「マジだ」

ジノはまたも満面の笑顔でそう言い放った。
ライはこれはとんだ学園案内になりそうだと内心ぼやかずにはいられなかった。



















結局ライはあの後2試合した。
しかも、アーニャまで加わってしたもんだからかなり大変な事になった。
ジノは長身でしかもラウンズだからとにかくジャンプの最高点が高い。
アーニャは小柄だが、その分素早い。
さらに言えば二人ともさすがラウンズといった所で基礎身体能力ができていて、しかも技術の吸収力も凄い。
技術はレギュラー程とはいかないまでも、2人共本来の能力を生かしてレギュラー以上の働きを見せた。
その上ライにとって不幸だったのが、2試合共その2人が敵のチームだったのだ。
ライもジノ達よりは技術が上だったが、さすがに大きな差はなくかなり苦戦させられた。
しかも2人同時に攻めたり守ったりしてくるものだからたまらない。
2試合中、一勝一敗で終わり、ほかにも回らなければならないということできりあげたが、さすがに疲れた。
そして、今度は……。

「本当にいいのか?」

「いい、変に気を使わないで」

「……わかった。でもどこかおかしかったり辛かったら言ってくれ。すぐにやめるから」

「大丈夫……だから来て」

第三者が声だけ聞けば激しく誤解しそうな事を2人は言っている。
まあこの2人だから仕方のない事なのだが。

「はぁっ!」

「っ!」

ライの持っている剣がアーニャ目掛けて振り下ろされる。
アーニャはそれを回避すると反撃の突きを繰り出した。
ライの顔目掛けて剣先が迫るが、ライはそれを紙一重で避ける。
連続で斬撃が繰り出されるが、ライは全てそれをぎりぎりで避けていく。
そう、今ライとアーニャは剣術の練習場で打ち合っていた。
ジノは脇で2人の打ち合いを興味深そうに見ている。
打ち合いといっても最初の一撃以降ライは反撃できず、アーニャの攻撃の前に防戦一方だ。
と言っても今ライは実力をあまり出しておらず、彼女の攻撃を避ける事だけに専念している。
建前上普通の学生を演じている以上、必要以上の事は許されない。
とはいえ、怪我をする訳にもいかないので攻撃を避ける事に専念して、誤魔化す事にした。
ただ、服装は防具ではなく学生服。
防具を付けないと危ないとライは主張したのだが、アーニャはそれを聞かなかった。
アーニャの攻撃を危なっかしく(見せかけ)避けながら、ライは彼女の動きを観察する。

(……素早い動きでかく乱して、突きで仕留めるスタイル、か。モルドレッドの時とは真逆の戦いに近いが、一撃で仕留めるのは変わらないな)

また顔面に横合いから放たれた突きを身を引いて避ける。

(でも、さっきから本気で顔面狙われてるな。他の箇所もだが。いくら学園で使う模擬剣でも当たっていたら骨が折れるな)

ちなみに何でこんな事になっているのかというと。
剣術の練習場に来て少ししてからの事だ。

「ライ、剣使える?」

「え?まあ…できるけど……」

「勝負」

「…は?ちょっと待て!それならジノの方が適任だと思うんだが……」

「ジノとは何回もやってるから……飽きた」

それに今までおもしろそうに聞いていたジノがつっこんだ。

「おいおい、飽きたってどういう……!いや、いい。おまえが言いたい事はわかった」

ジノは途中で納得したようにそう言ってライに振り返る。
そして、耳元に小声で話しかけた。

「ライ、どうやらアーニャはおまえに勝負してほしいみたいなんだよ。やってくれないか?」

「…でも僕はラウンズと勝負できるほど強くないよ?それに危ないんだが…」

「やばくなったら俺が割って入って止めるから。な?」

こうして一分もかからない内にライは仕方なくやる事になってしまったのだ。


ライは未だに繰り出される攻撃を次々とぎりぎりで避ける。
正直戦いに対する昂ぶりが高まりつつある。
すると、攻撃しながらアーニャが不満そうに問うてきた。

「何で攻撃しないの」

ライは一見大変そうな口調で答えた。

「そんなの……っ!とても…っ!攻撃…できる状況じゃない…!」

そう言いながらも攻撃は回避する。
しかし、その瞬間ライは見てしまった。
今までの考えとか緊張感とか昂ぶりとかを吹き飛ばしてしまうものを。

「ぶっ!!?」

そして思った。
着替えさせるべきだったと……。
アーニャが着ているのは女学生が着る女生徒用の学生服。
そして、今しているのは剣術の勝負。
激しく動きまわっているのは当然な訳だから。
この際正直に言っておこう。
スカートがめくれ上がって白いふとももは元よりそれより上のその……ピンクの生地……が見えてしまった。

「あの……アーニャ」

「何?」

「もうやめないか?」

「なんで?」

「いや、かなり言いにくいんだが……」

「集中して」

そうやってアーニャはライへ飛び掛った。

「……スカートだから……見えるよ?」

もう見てしまったが……。
もちろんそれは言わない。

「…え?……あ」

ライの一言でアーニャが気づいたように声を上げた。
そして、その拍子にバランスを崩す。

「っ!?」

咄嗟にライは不安定な態勢のまま飛び込んできた彼女を受け止めた。

「大丈夫か?」

「平気……ここはもういい。次行く」

こうして剣術勝負は終わったが、ジノも一部始終を見ていたため散々ライとアーニャはからかわれた。



















それから色々と回り、全部回り終えた所で夕方となったので三人はそろそろ帰る事にした。
正確にはジノとアーニャが帰らなければならなくなったからだ。

「いや〜、楽しかった」

「うん」

「……僕は疲れたよ」

はつらつなジノやアーニャに対してライはげっそりしていた。
正直言って疲れたのだ。
あれだけ動いたり、意外とお馬鹿なジノにつっこんだりしたのだ。
疲れもする。

「でも庶民の学校も色んなものがあるなぁ〜。やっぱ庶民の学校ってこんなものなのか?」

「まあ一般的なものもあるだろうが、中には特殊なのもあるらしいよ」

「そうなのか?」

「今度ルルーシュかスザクあたりに聞いてみるといいよ。一度ルルーシュに部活関係で奇妙で大変な体験したのを聞いた事があるから」

「ふ〜ん、そっかぁ。じゃあ今度聞いてみるよ」

いい事聞いたみたいな顔をしているジノだったが、ふと思い出したようにライに言った。

「なあ、ライ今度暇があったら遊園地ってものに連れてってくれないか?」

「え?」

「いや、俺達こんな職業だろ?それに俺なんか貴族だし。そういう所あまり行った事なかったんだよ」

それにライはなんとなく共感できた。
確かにこんな若い時からラウンズなんてやっていたら遊ぶ暇なんてほとんどないだろう。
まあこういうのは調査する意味でもいい機会だ。

「ああ、いいよ。僕で良ければ」

「私も行く」

「お?アーニャも行くのか?んじゃ3人で行くか!」

そう言ったジノにアーニャはこくりと頷いた。

「じゃあ行く日が決まったら、場所や集合時刻は僕が連絡するから」

そこで校門に着いたのでライはジノとアーニャとここで別れた。
















「アーニャ、ライと剣の勝負してどうだった?」

政庁への帰り道ジノがアーニャに質問してきた。

「どうもこうも見たとおり」

相変わらず平静な表情でアーニャが答えた。

「いや、そうじゃなくて相手したおまえから見てライをどう思ったって聞いてるんだよ」

しばらく黙っていたアーニャだったが、口を開いた。

「……なんか上手く避けられてた。避けるので精一杯に見えたけど、偶然にしてはできすぎてる」

「…だよなぁ。偶然にしたら偶然だったでライの才能が凄かったって事なんだろうけど……おもしろいって思えたな」

「同感」

ジノはアーニャがジノの意見に同意した事に驚いたが、そこでニヤっとした。

「へぇ、まさかアーニャがそう言うとは思わなかったな。つまらなさそうに見えたんだが。……まあおもしろそうだし、もうちょっとあいつを見てみるか」

意外とごまかしきれてないライだった。




















それからさらに数日後……。
今日の日にジノ達も休みだという事で当初の予定通り遊園地に行く事になった。
ライは午前にジノとアーニャとアッシュフォード学園の校門で待ち合わせて租界にある遊園地に向かった。
規模としては結構大きいので、ジノ達にも満足できるだろうとライが判断して決めた事だった。
今回は三人とも私服で着ている。
租界の電車を使って30分程して、遊園地に着いた。
と言ってもジノ達はどう入場するか知らないので、ライは2人に説明しながら入場券を買い、中へ入った。
この数日ジノとアーニャと接していてわかった事だが、2人とも一般常識というものをあまり知らなかった。
そのためおバカな発言から突拍子な行動まであったので、ライもこれはさすがに驚き疲れた。
そして、中に入ったジノが声を上げた。

「おぉ〜、こりゃすごいな!」

ジノはあちこちにあるアトラクションを見ていた。
アーニャも周りのアトラクションに興味があるのか目がそちらの方に向いている。

「人も多い…」

「まあ、そうだな。そういう所だから。…さて、どこから回る?」

入場券を渡した時にパンフレットのような物をもらっていたので、三人でそれを見た。

「……お、これなんかいいんじゃないか?」

ジノが指したのはどうやらジェットコースターらしきものだった。

「別にいいが、結構激しいアトラクションだよ?まあ、ジノ達にとっては遊び半分になりそうだけどね。そこは人次第だが、おもしろいには違いないから行っ てみるか?」

「ああ。じゃ、早速Let's GO!」

なんて言ってジノはノリノリで歩いていく。

「僕達も行こう。アーニャ」

「うん……」

言って、ライとアーニャもジノと一緒にジェットコースターに向かった。


















「いや〜、おもしろかった(笑)」

満面の笑顔でジェットコースターを乗り終えたジノが体を伸ばしながら言った。
元々大きいアトラクションで見つけるのは大したことはなかった。
まあ、乗る時にアーニャが携帯閉まってなくて注意されていたが。
スタートしたらしたで結構楽しかった。
思いっきり下りの時に手を上げて叫んだり。
アーニャもそれなりに楽しめたようだった。

「はは、そうだな。じゃあ次これとか行ってみる?」

そう言って今度はライが指したアトラクションに向かった。
ボートを使うアトラクションのようだ。
ジノとアーニャはそれにすぐに同意して、またすぐその場所へ向かった。












それからあちこち回っていた三人だったが、そろそろ昼の時間になっていた。
ただ、それまでがかなりハードだったりしたが。
あちこち回りまくっていて全く疲れた様子を見せないのはさすがラウンズといったところだろうか。
無論ライも一応体力バカの一人に入るので、それほど疲れてはいない。
たぶんここにルルーシュがいたら物凄く疲れていた事だろう。

「さて、次は……」

ノリノリのジノはまた次に行くアトラクションを決めようとしている。

「それよりジノ。そろそろ昼にしないか?一旦休憩取るのも必要だと思うよ」

「うーん、そうだな。じゃあそうするか」

という事で三人は近くにあったレストランで食事を取る事にした。
レストランに入って席に案内されてから、三人はそれぞれ座る。

「じゃあそれぞれ取りに行こうか」

ここはバイキング形式で自分で取って行くものだった。
三人はとりあえずトレイを取りに行ってそこからは各自に好きな物を取りに行った。
ライはとりあえずあまり重くならない程度にあっさりしたものを取ってくると席に戻る。
すると、アーニャが既に取り終えていたのか席に座って食事を取っていた。
ライも隣に座って食事を取り始める。
それから少しして、アーニャが話しかけてきた。

「ライに尋ねたい事があるんだけど、いい?」

振り返ると、偉く真剣な表情のアーニャ。

「ああ、いいよ」

「これってルルーシュ?違う?」

そう言って見せられたのはルルーシュの幼い頃の画像。
さすがにこれにはライもぎょっとしたが、態度に表す事はなくて済んだ。
おそらくこれはブリタニア本国にいた時のルルーシュだろう。

「確かに似てるけど……。でも、なんでそれを僕に聞くんだ?」

「ライ、ルルーシュと仲良いから」

ああそういう事、と納得しながらも、でもなんでだよ、と突っ込む自分がいる。
仲良いからってこれを聞くのは的はずれなのだが……。
まあこの場合に限ってそれは間違ってなかったりもする。

「なるほどね。でも、もしこれがルルーシュだとしたらどうなるんだ?」

「ルルーシュは……皇族って事になる」

それにライはおどけてみせた。

「いや、さすがにそれは飛躍しすぎだろう。だってルルーシュはただの学生で、しかも庶民だよ?いくら似てるからってそれはないと思う。他人の空似じゃない か?」

「そう……」

アーニャはそれで問う事をやめて、また食事を取り始めた。
でも、それで今度はライに聞きたい事ができた。

「でもアーニャはそれをどこで撮ったんだ?」

「……よく覚えてない」

「覚えてない?どういう事だ?」

アーニャは手を止めてしばらく黙っていたが、ぽつぽつと話し始めた。

「……時々記憶が途切れる事がある…。これもそう。撮った覚えはないのに、記録には残ってる。もし私の記憶が不安定なものだとしたら、これが真実という事 にもなる。だからそれを確かめたいだけ」

「……そうだったのか」

アーニャの過去の断片を聞いたライだったが、彼女がこういう事で悩んでいる事は初めて知った。
ほとんど無表情の彼女だが、その内面ではそういう不安に襲われていたのだろう。
だけど、それを話してくれた事はライは嬉しかった。

(でも、アーニャが見せた画像はルルーシュ本人に間違いない。幼い頃と背景から見ると、場所はブリタニア本国の皇族が住んでいる宮殿辺りか……?だとした ら彼女もあの場にいたという事になる。でも彼女はルルーシュより年下だから……侍女かもしくはその見習いといったところか…?いや、そうとは限らないな。 他の可能性も……)

一方考えに耽っていたライに対してアーニャも珍しく考えこんでいた。
何故自分はさっき記憶の事をライに話したのだろう?
なぜ?なんで?
考えても答えが浮かんでこない。
だが、ここ数日アーニャはジノのほかにもライといる事が多かった。
それでよく頭を撫でられる事もあった。
そして、アーニャはそれが決して嫌ではなかった。
むしろ……。
すると、そこでジノが帰ってきた。

「お?どうしたんだ?2人して考え込んで」

「いや、何でもない」

「何でもない」

そう言ってライとアーニャは食事を再開した。
その様子を見たジノは首を傾げたが、食事が先かと思ったのか席に座ってこちらも食事を取り始めた。

















食事を終えた三人は早々に次のアトラクションに行く事にした。
この遊園地は広大で、三人の行っていない場所はまだまだあった。
それに三人とも楽しかったのだ。

「お、これなんてどうだ?」

「あ……それお化け屋敷」

ブリタニアにもお化け屋敷なんてあったんだな…と思ったライだった。
正確には西洋風のお化け屋敷と言った方が正しいだろう。

「おお、それは怖そうだな」

そういうジノは全くの笑顔である。

「まあ、実際に怖いんだろう。なんせお化けって言うくらいだから。行ってみるか?」

そう言って三人はお化け屋敷に入っていった。







しばらくして三人はお化け屋敷から出てきた。
で、実際はどうだったかというと……。
あまり怖くなかった。
というか機械や装置は仕方ないのだが、人がしている所は指導すらしている状態だった。
なんで怖がる立場の人間が怖がらせる人間に指導しているんだ…という奇妙な状況が多々あった。

「う〜ん、ここはいまいちだったな」

「まあ、そうだろうね…」

ジノの感想を聞いて苦笑するしかないライだった。
それから、またあちこちアトラクションを回った。
メリーゴーランドやコーヒーカップなど。
そして、そうしてる内に日が暮れていった。




「いや〜、楽しかった」

「うん」

「僕も楽しかったよ。それに選んだ僕にとってもそう言ってくれると嬉しいな」

そう言って笑いあうジノとライ。
今日はいい日になった。
ここの所戦争という戦いづけの毎日だったから。
これはいい休暇になったと思う。
でも、それ以上に、本当に楽しかった。

「また平和になったら行こう…」

「はは、そうだな」

呟いたライにジノは笑顔で答えてくれた。























そして、日が暮れて学園に戻ってきた三人はクラブハウスの近くで修羅場になっているルルーシュを見つけた。
大量の女子に追いかけられている……。

「お、ルルーシュ先輩何だかおもしろそうな状況になってるな」

「まあ、確かに……」

そう返事するライは朝待ち合わせする前の地下司令室でのやり取りを思い出していた。













〜ジノ達と待ち合わせする30分前〜

「さ、咲世子!このスケジュールは!」

朝早々に渡されたスケジュールを見てルルーシュが声を上げた。

「はい。休日ですので全て組み込みました。朝7時から手作りのお弁当をご馳走になって、9時から美術館、10時30分からショッピング、12時に水族館。 そのまま蜃気楼で移動開始。海面浮上は400km離れた時点とさせていただけますか。尚、着替え等はコクピット内に用意してあります。中華連邦に到着後 15時から上海にして通商条約の締結、現地滞在可能時間は47分です。帰国後21時から映画のレイトショー。24時にライブハウス前で待ち合わせ。その 後……」

なんてハードスケジュール。
今日は休日だから尚更だ。
これで本当にデートのキャンセルが増えたのか?と疑ってしまう程だった。
しかもまだあるのか……。

(ルルーシュ、ご愁傷様…。僕は僕の務めを果たしてくるとするよ…)

そう思わずにはいられないライであった。



















(なんて事があったな…)

と、他人事みたいに思い出していたライだったがその間に状況が進んでいたようだ。
シャーリーがルルーシュに迫っている。
どうやら鬼気迫るシャーリーに必死に弁解しているルルーシュが前方にいる。

「いいの?あれ」

「いいんだ、どうやら僕じゃもうフォローできない所まで行っているみたいだからな……」

アーニャの問いに構わず、我関せずを決め込むライであった。
と、その時。

「ルーーーーーック!!」

声のした上の方を見上げると、クラブハウスのテラスの上にミレイが立っていた。
しかもスポットライトまで当たってる。
さらに変な形の帽子を被っているのも特徴的だった。
っていうかいつの間に……。

「決めました!私の卒業イベント!名づけてキューピットの日!」

?どういうイベントなんだ?

「卒業ってこんな時期に?」

疑問に思ったジノが口にする。
その間に三人はルルーシュの所まで歩み寄る。

「ほら、私って留年してるからさ。足りない単位が取れちゃえば、卒業なの」

「へぇ〜、ここってそういうシステムなんだ」

説明されて納得した様子のジノ。

「でも会長、本当に卒業するんですか?俺達と一緒でいいじゃん…」

名残惜しそうなリヴァル。
そういえば、リヴァル会長好きだったみたいだな……。

「でさ、ミレイ」

「呼び捨て!?」

ジノの言葉にリヴァルの素早い突っ込みが入った。
でもジノは無視する。

「なんだよ、その、キューピットの日って」

それを聞いたミレイは得意気になる。

「ふふ〜ん、知りたい?」

「それは知りたいですよ、会長」

ライが言うと、うんうんと頷いたミレイは説明を始めてくれた。

「当日は全校生徒にこの帽子を被ってもらいます。男子はこっちの色ね」

ミレイが言ったのは手に持っている青い帽子の事だった。

「で、相手の帽子を奪って被ると……」

「被ると?」

「生徒会長命令でその2人は強制的に恋人同士になりま〜す」

………。

「「「「「「「ええええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!?」」」」」」」

これが会長の会長のための……ではなく生徒のためのイベントだった。
しかも、このイベントでライにとんでもない事が降りかかる事をまだライは知らない……。


























あとがき

今回は後編でまとめてします。











改訂版 修正箇所

ライのセリフ
その他文一部
ジノのセリフ一部
誤字修正



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