コードギアス反逆のルルーシュR2
              Double  Rebellion














TURN-12 過去からの刺客


キューピットの日から数日後。
ライは学園と中華連邦を行き来するという本来の日常に戻りつつあった。
黒の騎士団の司令補佐としての任務をこなしながら、学園ではアーニャと付き合ったりと忙しいながらも楽しい日常だった。
C.C.にアーニャの事を知られた時はそれはもう怖いくらいの笑顔で追い掛け回された後……とにかくすごい事になったらしい。
ライは後にこれを「死ぬかと思った……」という程げっそりした様子で語っている。
さすがに詳しい内容までは恐ろしくて話せないようだった。
という事がありつつも、未だにアーニャとの関係は続いており、ライもそれで少なからず彼女の事を大切な人に思えるようになっていた。
そして、今ライはルルーシュやロロと共に地下司令室に来ていた。
画面には中華連邦の領土全体が見える地図があり、今そこにピックアップされている剣門関という所に「CONQUEST」と表示された。

「これで剣門関は落ちたな。澳門の空軍施設も抑えた。カザフスタンの守りには朝比奈とホン・グを回せばいいとして。成都の内政担当には水無瀬と杉山にまか せるか」

ルルーシュが言う間に黒の騎士団の幹部メンバーのリストが表示され、そこにはパラメータのような物が映し出される。
もちろんそこにライのもある。

「順調みたいだね。兄さん」

そう言ったロロは学園での宿題をしている。
ルルーシュに見てもらうためにここに一緒にいるのだ。

「敵と言っても僕達を受け入れない地方軍閥がバラバラに兵を挙げているだけだからな」

理由をライが答えたが、特にロロに異議はなかった。
あれからライはロロともなんとか仲良くなり、お互いに助けたり、接する機会も増えた。
だから今こうして彼とも問題なく話せている。

「地方軍閥をまとめられる旗印は兄さんが先に手に入れてしまったし」

「そういうことだ」

言ってルルーシュが立ち上がると、ライもそれを見て立ち上がり、壁に立てかけてあった刀袋を取った。
外見はバットを入れるバッグと一緒なので特に怪しまれる事はない。
一応偽装もしてあるので中身を見られても問題はない。

「どこへ?」

2人の行動を見てロロが問いかけた。

「イケブクロの様子を見てくる。念のため、ライも護衛に連れてく。宿題の続きは帰ってから見てやるよ」

「いってらっしゃい」

ロロの言葉に送り出されて二人は地下司令室を出た。




















あれから20分程でルルーシュとライはイケブクロの駅ビルに着いた。
そして、今はその一角にルルーシュとライはいた。
ルルーシュは渡された作業進行状況の資料を見ている。

「いいだろう。初期段階としては十分だ」

しばらくして見終わった後、ルルーシュは資料を作業している駅員に渡す。
ちなみに作業員全員は既にルルーシュのギアスで操っている。
彼らは皆ルルーシュの言いなりだ。

「では、このスタイルで作業を続行します」

ルルーシュとライはこのためにここに来たのだ。
ライが来ているのは護衛もだが、司令補佐としてどのような事が行われているかは知っておく必要があった。
そして、確認を終えた2人は帰路につく。

「環状線の都市機能の麻痺化。つまりトウキョウ租界の停止。考えたな」

「ああ。そうすれば最新のナイトメアの動きを止めるまではいかなくても、それ以前のナイトメアは止められるのに加えて政庁の防衛機能も働かなくなるから な。敵の戦力は半減すると言っていい」

ルルーシュが考えていたのは電車にゲフィオンディスターバーを積んで都市機能を麻痺させるという作戦だった。
その一部が先ほどの取り付け作業で、それをほとんどの環状線に施している。
それの作業状況を要は確認しに来たのだ。
来るべきナナリー奪還作戦のために。
そう、近い未来ルルーシュはナナリーとカレンを取り戻す計画を立てていたのだった。

帰路の途中、ルルーシュとライが建物の間の橋を渡ろうとしていた所、前方にスザクとシャーリーがいるのを見つけた。

「シャーリー?」

「あれ、スザクも」

その言葉で2人とも振り返った。

「ルルーシュ、ライ…!」

何でシャーリーとスザクが…?
ルルーシュとライには同じ疑問が頭に浮かんでいた。




















あれから4人で歩いたが、結局微妙な空気のままビルの屋上の公園へとやってきていた。
ライはともかく、スザクとルルーシュの仲は以前と比べて良くはなく、シャーリーの様子もどこかおかしかった。
それでライも話し出せないでいたのだ。
そして、そこは租界とゲットーとの境界線だった。

「境界線だな」

「租界とゲットー。でも失くしてみせる、いつか……」

(そうだな……いつか、きっと……)

そう思っていたライだったが、シャーリーが急に振り返ったのに気づいてそちらを見た。
そして彼女を見たライは異変に気が付いた。
明らかにライ達三人を見て怯えている。
それにルルーシュとスザクも気づいたようだ。

「どうした?シャーリー」

そう言ってルルーシュが近づこうとした時だった。
さらにシャーリーが怯えた顔をして後ろに逃げる。
そして、先にあった塀に乗る。

(((まずい!!)))

そう思った三人は彼女に駆け寄る。

「来ないで!」

しかし、シャーリーはそれを拒絶した。
言われて思わず三人の足が止まる。

「シャーリー!」

「嘘つき!皆偽者のくせに!」

(どういう事だ?一体彼女に何が……)

彼女の訳の分からない言葉に少なからず混乱するライ。
ルルーシュやスザクもそうであった。

「私は…あっ!」

彼女が続けようとした瞬間、後ずさりしすぎて塀から足を踏み外した。
シャーリーが落ちる。
すぐさま三人が動いた。
先にルルーシュが飛んで、彼女の手を掴み、ルルーシュの足を片方ずつスザクとライが掴む。
なんとか掴めたものの、完全な宙吊り状態だ。

「くっ……!」

さすがにスザクと一緒に支えているとはいえ、片手で2人分の重さにライは歯を喰いしばった。
ルルーシュがさらにシャーリーの手を両手でしっかりと握る。
だがそこでルルーシュは気が付いた。
シャーリーが一時的にだが、気を失っている。
だが、すぐに気が付いた彼女はまず下を向いて驚き、上を見て今度は抵抗し始めた。

「いや!放して!放して!」

「ダメだ!放さない!!」

ルルーシュがそんな彼女にはっきりと言い放った。
それにシャーリーがハッとする。

「俺はもう…俺はもう失いたくないんだ。何一つ失いたくない…!シャーリー…!」

それを聞いたシャーリーは落ち着きを取り戻した。
彼女にとって、これは紛れもなくルルーシュの本音と思えたのだ。

「うん……」

返事をして、ルルーシュの手をシャーリーがしっかりと握る。
これで安定した。

「ライ!スザク!」

それで頷いたライとスザクが顔を見合わせてもう一度頷いた後一斉に引き上げた。
それでなんとかシャーリーを助けることができた。

「はぁはぁ……」

さすがに精神的な疲労と腕の疲労が重なって少し息遣いがルルーシュは荒かった。

「前にもこんな事あったよね」

「え?」

荒い息遣いながらもルルーシュが聞き返した。

「ほら、2人がアーサーを捕まえようとして……」

「ああ、そういえば……」

思い出したようにスザクが呟いた。

「確かにあったな。そんな事も」

ルルーシュも思い出したのかそう言った。

「引き上げるのはいつもスザク君の役だね。今回はライ君もだけど」

「そうだね」

「ルルーシュが上だったら皆落ちてるよ」

「体力バカが。そこまで言うなら落ちる前に助けろ」

「無理言うなよ」

そう言って自然に場の空気が和んだが、スザクはハッとしたように視線を反らした。
それに気づいてルルーシュも顔を反らす。
2人の態度を見て少し悲しくなったが、ライはこのやり取りが何だか昔に戻れたようで嬉しかった。
その時、ルルーシュの携帯の着信音が鳴る。

「ああ、ごめん……」

そう言ってルルーシュが携帯を取り出した。
そして、少し離れて電話を始める。

(電話を受け取った様子から見ると、ロロからか?)

ライのその推測は当たりで、少し離れたここからでもその電話の内容が黒の騎士団関係である事もわかった。
こんな時にと思いながら、スザクを横目で見る。
スザクには先ほどの笑顔の欠片もなく、冷たい表情をしていた。
電話を終えたルルーシュにスザクが近づいていく。

「何かあったのかい?友達からの電話って訳じゃあなさそうだけど……イテっ!」

そんなスザクをシャーリーが後ろから頭を叩いていた。

「ダメだよ、スザク君。私の用事が先でしょ」

「ああ……」

「そういえば2人で待ち合わせしてたんだな」

「やきもち妬いてくれた?」

それを聞いてルルーシュは肩をすくめながら苦笑した。

「ありがとう。ルル」

「待ってくれないかな。先に……」

「さ!行きましょ!スザク君!」

そう言ってシャーリーは強引にスザクを連れて行った。
しかし、それはこの場ではありがたかった。

「ルルーシュ」

「ライ、オレンジがここに向かってきているらしい。迎撃するぞ」

「オレンジ?…ああ、あの……」

確かC.C.やルルーシュの話だとブラックリベリオンの時にナイトギガフォートレスを駆って、ルルーシュと戦ったらしい。
その後機体と共に姿を消していたが、向こうが回収していたようだ。
ちなみにオレンジという通称はそれよりも前からついていたものだ。
それはライも知っていた。
そして、そのオレンジが刺客として送り込まれてきた。
そう判断するのが正しいだろう。

「どうやらオレンジの他にも数名ここに入ってきているようだ」

訂正。
オレンジの他にもいたようだ。

「どうする?僕はいいが、ルルーシュは……」

相手は既にギアスを知っていると考えた方がいい。
ギアスに関しては何らかの方法で対策済みと考えるのが妥当だろう。
そうなると生身での戦闘はルルーシュには荷が重い。

「ライは他の刺客を頼む。俺が準備をするまで時間を稼いでくれ」

ライはルルーシュには何らかの勝算がある事を今の言葉で確信した。

「シャーリーはスザクに預けておけば大丈夫だろう」

「……そうだね」

ライは何だか嫌な予感がしていたのだが、とりあえず迎撃のためにルルーシュと行動を開始した。





















そして、ライの嫌な予感はすぐに的中する事となった。
あの後、迎撃のためにジェレミアをルルーシュが誘い出す役目を引き受け、ライはほかの刺客の迎撃のために別行動を取っていた。
ライがルルーシュとは離れた場所で迎撃しようとビルの階段を下っていると、階下のフロアでシャーリーを見かけたのだ。

「なっ!?シャーリー!?」

ライが叫んだ事でシャーリーが気づいた。
そんな彼女にライは階段を飛び降りて駆け寄る。

「ライ君!?」

「どうしてここに!?いや、そんな事よりも早くここから……っ!危ない!」

ライがシャーリーにここから出て行くようにと言いかけた所でこちらに向けられている殺気に気づいた。
狙われていると直感したライはシャーリーを抱き寄せて咄嗟に横に飛ぶ。

バンッ!!

先ほどまで2人がいた空間を銃弾が通り過ぎる。
ライはすぐにシャーリーと柱の陰に隠れる。
その後、撃ってきたと思われる方角を見ると、そこには5人の黒服の男達が立っていた。

「さすが狂王ライと言った所でしょうか」

「……ジェレミアと一緒に来た刺客だな」

確信を持った声でライは言った。
ライの言葉を刺客と言われた男達は肯定する。

「ええ、V.V.様のご命令でルルーシュと狂王ライ、あなた方を殺しに参りました」

男達は既に先ほどから銃を持っていた。
無論さっき弾丸を発射したのもあの銃だろう。

(こっちの正体もご存知という訳か……)

ライはそれに関しては別に驚きはしなかった。
V.V.とは面識もある、当然だ。
しかし、それを知らないシャーリーは恐怖と驚愕の混ざった表情でライの顔を見ている。
彼女に説明しなければならなくなったが、それは後回しにした。
それにこのままではシャーリーまで巻き込んでしまう。
それは何としても避けたかった。

「この娘は関係ない一般人だ。解放してやってくれないか」

「それはできません。目撃者は排除しろとのご命令です」

ライの希望はあっさりと打ち砕かれた。
すると、男達は耳にイヤホンのような物をあてる。

(僕のギアス対策か)

ライはその理由にすぐに気づくと、持ってきていた刀袋から偽装を解いて、刀『蒼焔』を取り出した。
男達との距離はまだある。
自分が飛び出して引き付ければ大丈夫だろう。
元々多人数相手は慣れている。
それにシャーリーはこの事態に体が震えて動かない。
無理に動かすのもダメだ。
それに彼女は何故か拳銃を持っていた。
危険だが、これを護身用に持っていてもらおう。
そして、最終的な結論は当初の通り自分が刺客を排除する。
これしかない。
当初と少し違って誰か一人は捕らえてV.V.の居場所を吐かせるつもりだったが、こうなってしまっては仕方ない。

「ライ……君」

震えるシャーリーがライに縋り付いてくる。
それにライは笑顔で応じた。

「シャーリーはここにいて。君は絶対に僕が守る」

「ライ君は……?」

「僕は大丈夫だから。すぐに終わらせて戻ってくるよ」

ライはそう言うと、シャーリーの返事を待たずに物陰から立って姿を現した。

「ほう、いい覚悟ですな。死ぬ覚悟でもできたのですか?」

ゆっくりと姿を現したライに刺客は余裕に満ちた口調で告げる。
しかし、ライにはその言葉が耳に入っていない。
ライは既に静かな怒りに支配されていた。
既にもう一人の自分『ウルフ』と“入れ替わっている”。

「おい」

「?」

ライの声に訝しげに銃を構える刺客。

「お前達は、死ね」

そう言った瞬間ライが飛び出した。
とてつもなく速い。
突然のライの行動に驚いた刺客達だったが、訓練されているためすぐに銃で応戦してくる。
しかし、目が、照準が追いついていない。
銃弾が床やライのいた空間を通り過ぎた頃にはライは既にその場にはいない。
そして、この時刺客達の最大のミスはある程度固まっている事だった。
ライは瞬く間に男達の間に辿り着くと、容赦なく刀を振るう。

「円月巻閃」

次の瞬間、ライの回転切りによって刺客3人の鮮血が舞う。
いつものライとは違い、完全に急所狙い。
一瞬で3人の仲間を殺された事に、残りの刺客達に驚愕が走る。
しかし、その隙にライはもう一人の刺客の後ろを取り、刀を突き刺す。

「がはっ」

無造作に刀を引き抜く。
残りは一人。
残った刺客が銃をライに向ける。
ライはその刺客にたった今殺した刺客を投げつける。
射線を遮られたと同時に仲間を放り投げられた刺客はそれを避ける。
しかし、視線を戻した時にはライはいなかった。

「どこを見ている」

そう言われて刺客が振り替えろうとした瞬間、彼は絶命した。
斬られたと認識できたかどうか。
ライは最後の刺客を葬り去ると、刀の血を振り払って刀を鞘に収めた。

「俺の友人を巻き込んだ事を呪うんだな。……交代するぜ、相棒」

言うと、ライの意識が切り替わった。
先ほどのセリフはライ自身のセリフだった。
それをもう一人の自分が代弁してくれた。
もちろん、ウルフにそんな感情はほとんどないと言っていい。
だが自分の頼みを聞いてくれたもう一人の自分にある程度感謝しつつ、ライは殺した刺客達には目もくれず、柱の陰に隠れて縮こまっていたシャーリーに近寄っ た。
返り血はあの中でも一滴も浴びていないので彼女を怖がらせる事はないだろう。
ライは彼女の視界の中に姿を見せると、安心させるように言った。

「終わったよ。もう大丈夫」

「え……?」

まだ恐怖が体から抜けていないのだろう。
ライはそんな彼女の手を取る。

「さ、ここから出よう。ここが危険な事には変わりない」

「う、うん……」

そう言うと、シャーリーはライの手を支えにして立ち上がった。
そして、ライは刺客達の死体を彼女に見せないようにこの場を立ち去った。





















ライとシャーリーはあの場から離れた公園に来ると、ベンチに腰掛けた。
ライは返り血は浴びていなかったが、あの場の血生臭さはまだ消えていない。
これはどうしようもなく、今はシャーリーの事を優先させた。

「もう落ち着いたか?」

「うん、ありがと…」

あれから少ししたので彼女もようやく落ち着いてきたようだ。

「ところでシャーリー。何故あんな所にいたんだ?」

シャーリーはライの質問を聞くと、おずおずと話しはじめた。

「戦っているルルを1人にしちゃいけないと思って……」

「?」

ライにはそれが今一要領を得ない答えだった。
すると、そこに今度は彼女から質問してくる。

「私からも聞いていい?」

「あ、ああ」

「ライ君。ライ君はあの時のライ君、だよね?」

それを聞かれた瞬間ライの頭に電撃のような物が走った。
ライにはそれがどういう意味かわかったからだ。
それはライが望んでいたような…そうでないような…そんな言葉。
しかし、ライには咄嗟に答える事ができなかった。

「………」

「ねぇ、どうして私は……私達はあなたの事を忘れちゃってたの?」

「それは……」

やはりそうだった。
シャーリーは自身の記憶を取り戻したのだ。
ギアスが解けたようだ。
しかし、ライは迷っていた。
あの時は状況のせいにしてごまかした。
しかし、それはもう効かない。
答えてもいいのか。
答えるという事は彼女にギアスの事、ひいては自分の事を話す事になる。
もう嘘はつけない。
それで彼女と友達でいられなくなるかもしれない。
いっその事シャーリーにもう一度ギアスを使ってしまうか。
ライが迷っている所にシャーリーが言ってくれた。

「ねぇ、お願い。教えて、ライ君。私、ルルのようにあなたを信じたいから」

ライはその言葉で迷いが消えた。
彼女の言葉とその真摯な瞳がライに決断をさせた。
彼女に全てを話す事を。

「わかった。話すよ。いや、聞いてほしい」

それにシャーリーは頷いた。

「うん。もう一度聞くけど、ライ君は、あの時のライ君でいいんだよね?」

「ああ」

「何で……いなくなっちゃったの?」

「それは………」

ライは話し始めた。
かつて記憶を取り戻したルルーシュに話したように、自分の事、ギアスの事……。
彼女はそれに真摯に耳を傾けてくれた。






「そうだったんだ……」

「……すまない。あんな真似をして」

「ううん。ライ君は私達の事を思ってしてくれたんでしょ?」

「ああ」

「ありがと。でも、もう二度とこんな真似しないでね?」

「わかった」

「それと、もしほかの誰かが私のように思い出した時は隠さずに話してあげてね?」

「ああ、そうする」

それで互いに微笑んだ。
だが、ライはすぐに表情を戻して今度は彼女に尋ねた。

「今度は僕から聞いてもいいか?」

「うん、いいよ」

「シャーリーはもしかして……ギアスの事を知っていたのか?」

ライのギアスの話を聞いてシャーリーは一度少し震えたが、それ以外は特に驚いてもいなかった。
あまりの反応の乏しさにライは彼女がもしかしたら知っているのではないか、という事を思い始めたのだ。

「……うん」

シャーリーは少し躊躇った後、肯定してくれた。
そして、今度は彼女から話してくれた。
何故ギアスを知っているのか、そして、ゼロの正体がルルーシュである事を。
ライもそれに静かに耳を傾けた。






「それでギアスの事を……」

「うん……」

シャーリーの話で合点がいった。
だから彼女はギアスの事を聞いても反応が思ったより薄かったのだ。

「でも、私はルルを許せたよ。だって私はルルの事が好きだから」

「そうか」

それでまた互いに笑い合った。
しかし、シャーリーは思い出したように問いかけてきた。

「ねぇ、ライ君がルルがゼロだって聞いて驚かなかったのって……」

「ああ、僕も黒の騎士団なんだ。最初からではなかったんだけどね…。……すまない、黙っていて」

「そっか……。あのね、ライ君……」

「何?」

「私も…私もルルを助けたいの!ルルの力になってあげたいの!だから!」

ライはそれでまた一つ合点がいった。
なるほど。だからシャーリーはあの場にいたのか。
彼女は戦うつもりだったのだ。
ただの学生である彼女が。
そう言うシャーリーをライはやんわりと手で制する。

「それはルルーシュが望まない事だよ」

「でも、それでも私は!」

シャーリーの、大好きな人の力になりたい。
ライにはその気持ちがよくわかった。
だからこそ。

「聞いて、シャーリー」

「え?」

「君が戦う必要はない。それは戦士でもある僕がやるべき事だ」

「でも!」

言い募ろうとする彼女をライはやんわりと押しとどめる。

「さっきそうしようとして無理だっただろ?」

「それは……」

「君が無理に戦う必要は全くない。それは僕の役目だ。……でも人にはそれぞれその人にしかできない事がある。僕にしかできない事があるように、シャーリー にしかできない事もある」

「私にしか…できない事?」

ライは頷いた。

「君はルルーシュや僕の大切な人だ。だから君には守ってほしい」

「守る?」

「ゼロじゃない、ルルーシュの帰るべき場所を守ってほしい」

「帰る、場所?」

「そう。いつでも彼がそこに帰ってこれるように。彼の本当の支えになってあげられるように。……これは僕や他の誰にもできない、君にしかできない事だ」

それで意味を理解したシャーリーは力強く頷いた。

「分かった。私、守るよ。生徒会を…ルルやライ君の居場所を」

「ああ、ありがとう。……おっとそうだ」

ライは思い出したように彼女の持っていた銃を手に取った。

「これはもう必要ないよね?」

「うん!」

それにライは笑顔で応えると、彼女の持っていた銃を預かった。
こうして、彼女には時が来るまで皆にはこの事を話さないように念を押した後、ライはシャーリーと共に学園へ帰る事にした。
この時、この瞬間、ライに新たな目的と覚悟ができた。

















あの後学園に戻ったライはシャーリーを送り届けると、地下司令室に向かった。
そして、既に室内に戻っていたルルーシュにシャーリーの記憶が戻った事以外の事の全てを話した。
それを聞いたルルーシュにライは開口一番こう言われた。

「どうして、おまえが狙われている!?奴らの狙いは俺1人じゃなかったのか!?」

ルルーシュのいつもの冷静さがない。
それを狙われた本人に言わないでくれ、と思ったのだが、ライにも心当たりはあったので答える事にした。

「僕がギアスを持っているからだろう。それにV.V.には面識もある。前も確か言っただろ?」

「……そうだったな」

「で、これからどうする?位置はジェレミアのおかげで割れたんだろ?」

ライが刺客と戦っている頃、ルルーシュはジェレミアと対峙し、彼がここに来た訳と戦う理由を知った。
そして、彼を部下として仲間に加えたのだ。
その時に嚮団の位置も聞く事ができたのだ。
ちなみにライはシャーリーを送り届ける前にルルーシュに密かに連絡を取っていたため、その事を知っていた。
その時にはシャーリーの事を話していなかったからこうなった訳なのだが。

「……嚮団を殲滅する」

「いいのか?C.C.から聞いたが、嚮団は武装組織じゃなくてただの研究施設だよ?」

「殲滅だっ!!」

さすがのライもルルーシュの火を噴くような言葉には驚いた。
しばらくしてライは口を開く。

「理由を聞いてもいいか?」

「お前だけでなく、シャーリーまで危機にさらされた。幸いお前が刺客を排除したおかげで今後シャーリーには危険が及ばずに済むが……。だからと言って許す 訳にはいかない。許 してはいけない……!もうこれ以上皆を巻き込まないためにも……!」

ルルーシュの言葉と様子を見てライはルルーシュの決意が固いもので覆らない事を悟った。

「……わかった」

(僕とシャーリーを狙った代償……か)

こうして嚮団の利用計画から殲滅計画に移行される。
近い未来始まるのは、ギアス狩り。






















あとがき


ついに皆さんの気になるであろう、12話をお送りしました。
今は何気に色んなゲームにはまってる途中ですが、思ったよりも順調に書けています。
今回はアニメの13話にあたる所をお送りしました。

それでは、今回の解説を。
前半はほぼ原作と変わらないですね。
でも、中華連邦の地名難しくて分かりづらくて苦労しました。
ほかにも、原作ではシャーリーとルルーシュをスザク一人で支えてましたが、この作品ではライにも支えてもらいました。
ちなみに表現では歯を食いしばったと書いていますが、そこは状況をわかりやすく表現するためです。
とは言っても全く重くないという事はないでしょうが。
読者の方々の感想にもありましたが、ジェレミアとの対決も考えたんですが、結局それはなしにしました。
結果的に今後に無理や差し支えがあるかなぁ〜と自分的に思いましたので。
代わりに襲撃の刺客の人数を後で増やしています。
学園の時点で増やしても、あまり意味を成さないでしょうから。

そして、ついに読者の皆さんが気になっていたであろう、シャーリーの生死!
見てくれた方は既にわかっていると思いますが、彼女には生きてもらう事にしました。
まあ私自身の個人的な感想と主張になりますが、原作通りだとあまりにもシャーリーがかわいそうなので。
彼女にはこれからも元気に生きてほしいなぁという事でこんな感じにしました。
最初はシャーリーの記憶が戻ったのを知らないライが、ルルーシュを追っている彼女を見つけ、直後に襲ってきた刺客を排除。
ちなみにギアスは相手が嚮団の刺客なので通用しないという事にしています。
そして、話を聞く内にシャーリーが記憶を取り戻した事を知り、そして自分が何者なのかを話していく……。
シャーリーにとっても、ライにとっても、これが本当のお互いを知る運命の日となるような話にさせてもらいました。

今回の解説は短いですが、ここまでです。
最終的には原作と同じ展開になっていきましたが、理由は書いている通りですね。
動機としては薄いような気もしますが。
ただ原作よりはルルーシュの罪悪感とかそういうのは薄いでしょうね。
後、ライの事ですが、実は沸点超えるとたまにウルフと意識が完全に入れ替わる事があります。
もちろん、任意でやってる事ですし、暴走はしないようにしているので、危険性は以前よりも下がっているのですが。
ライもキレるとおっかないという事ですね。
ちなみに混ざるとはまた別なので、そこは理解しておいてくださいね。

次回は嚮団襲撃です。
原作通りの殲滅ですが、果たしてライはその中でどう動いていくのか。
そして、ついにライの奥義が登場、炸裂します!
その辺りは次回で見てくださいね!

前回もたくさんの感想とWEB拍手ありがとうございました!
萌えたから予想外な感想までたくさんあったので、嬉しかったです。
萌え〜な評価があったのは特に嬉しかったですね。
そういうのを表現できるようにがんばりましたから。
ちなみに前回ちらりと一部シーンパクってませんか、というものがありましたが、それは断じてしていないので。
そもそも題材としている作品は主に原作で、他の二次作品(たくさんあるらしいですが)はほとんど知らないので。
そういう点では少なからずお騒がせしたようで、申し訳ありません。
今後はそういう疑いがかからないように気をつけていきたいと思います。
後ライのファミリーネームに指摘があったのですが、そこはほかの生徒達が質問に来た時に答えたという事にしておいてください。
ついでに、ライのファミリーネーム募集中です。
自分ではいいのが浮かばないというか1パターンな感じなので、なんかいいネームがあるという方は、WEB拍手か感想掲示版にでもお願いします!
今回もまた解説コーナーがありますので、良ければご覧になってください!
では、相変わらずの不定期更新ですが、また次回にお会いしましょう!








改訂版修正箇所

ライのセリフ
その他文一部











なぜなにギアス

ラ「このコーナーの司会のライです。読者の方々の高評価のおかげでこのコーナーも早三回目。このコーナーの司会としても主人公としても、嬉しく思います。 では、今日のゲストを紹介しましょう。どうぞ〜!」

「オール・ハイル・ルルーシュ!!この度からルルーシュ様の騎士となったジェレミア・ゴッドバルトだ(以降ジェ)」

ラ「今回はギアスに関する用語を中心に解説していきましょうという事で、オレンジことジェレミア卿に来てもらいました。っていうかそのネタは早すぎです よ、ジェレミア卿」

ジェ「おお、それはすまない。今のルルーシュ様はブリタニアの皇子ではないのでな」

ラ「だからって、語呂合わせな言い方でネタの先走りは良くないでしょ」

ジェ「うむ、それは反省している。以後気をつけよう」

ラ「そうしてください。それでは質問に行きましょう。ジェレミア卿はギアスキャンセラーという能力を持っていますが、それはどういう経緯で得たんです か?」

ジェ「ギアスキャンセラーが他人にかけられたギアスの効力を打ち消す能力というのは読者の皆も知っているな。無論、私にギアスが効かない事も。それで、私 がこの能力を手に入れた経緯だが、はっきり言って偶然だな」

ラ「え?そうなんですか?」

ジェ「うむ。私は元々C.C.の研究結果を応用して改造された。それから幾度の調整を受け、偶発的に得た新しいギアス能力がギアスキャンセラーだ。特徴は ギアスは瞳に赤い紋章が浮かぶが、ギアスキャンセラーは瞳に青い逆さの紋章が浮かぶことだ」

ラ「なるほど。まさか偶然とは驚きましたね。では、次の質問に行きますね。ジェレミア卿はジークフリートを神経電位接続というもので動かしていますが、そ れって具体的にどういう物なん ですか?」

ジェ「ならば、私が説明しよう。ナイトギガフォートレス・ジークフリートに搭載された得意な操縦システム、それが神経電位接続だ。半身を機械化された私専 用のシステムとして開発されたもので、操縦者の骨髄にケーブルを接続して、神経信号を直接マシンに伝達する。つまり、考えるだけでマシンを動かせるように なるシステムだ」

ラ「神経に直接繋ぐんですから反射がダイレクトに反映される。反射スピードも普通とは段違いに速くなるのも特徴ですね」

ジェ「その通りだ。さすがルルーシュ様の左腕だな、ライ殿」

ラ「いえ、僕なんてまだまだですよ。さて、今日のコーナーはここまでです。皆、わかってくれたかな?次回もギアスに関わる用語を解説していくね。嚮団中心 に解説していきたいと思います。では、また次回にお会いしましょう!このコーナーはライと!」

ジェ「ジェレミア・ゴッドバルトがお送りした。ライ殿とルルーシュ様の次の活躍も是非見てくれたまえ!オール・ハイル・ルルーシュ!」

ラ「ってまたネタの先走りしてるし!」

ジェ「む、すまん」

なぜなにギアス 終わり



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