コードギアス反逆のルルーシュR2
              Double  Rebellion














TURN-15 超合集国誕生(後編)


一方エリア11では皇帝陛下が行方不明になった事でその捜索と黒の騎士団及び中華連邦への対策に追われていた。
そして、総督補佐であるスザクは今総督府の庭園に着ていた。
黄昏ている彼に後から来たアーニャが不意に尋ねる。

「悩み事?」

そう言いながら携帯の画面の中にスザクを捉えるとボタンを押して画像を取る。
すぐにスザクのポカンとした顔が保存された。
その画面にスザクを捉えたまま、アーニャはスザクの答えを聞く。

「悩んでばかりだ。8年前に自分の生き方を決めたはずなのに…」

「信じてるの?8年前の自分なんて」

それで初めてスザクがアーニャに顔を向けた。

「過去の決意なんて愚かだって言いたいのかい?」

「…人の記憶は曖昧な物。信じる程価値はない……。ライに会うまでずっとそう思ってた」

「…今は?」

「記憶も悪くないって思える……。彼が私を覚えていてくれるなら私の曖昧な記憶も関係ないから……。記録も必要なくなってくる」

それを聞いてスザクは思い出した。
最近アーニャはライと付き合うようになってから確かに記録の回数が減った。
これにはジノも驚いており、同時に満面の笑顔だった。
たぶん2人の関係がどうなるかおもしろおかしく見守っているのだろう。
スザクもそれはいい事だと思えたし、そんな2人を応援したいと思っていた。
ただ、ライはしばらく前に休学届けを出しており、学園には来ていなかった。
アーニャはそれについて、それより前からライ本人から聞いていたようだ。
どう思っているのかは少しもわからないが。
ただ、スザクは当初ルルーシュとほぼ同時期にいなくなったライを疑っていた。
しかし、どこかでそれを信じたくない自分がいるのも確かだった。
そう、以前の時のような……。
だから詳しく調べる事はしていなかった。
加えて言えば、ここ最近エリア11の防衛の対応やラウンズの仕事でほかの事になかなか構っていられなかったのも影響していた。
そして、考えていたスザクをよそにアーニャは続ける。

「でも…今でも記憶が途切れる事がある……」

「それって…いつからなんだい?」

スザクは何となく聞いてみた。
もちろんアーニャがそれに答えてくれるとも思っていなかった。
しかし、アーニャはそれに答える。

「9年前…私が書いた日記がある。…でも私にはこの記憶がない」

「え?」

答えてくれた事とその内容に思わずスザクは声を出してしまった。
アーニャは続ける。

「ほかにもいっぱい……。私の記憶とデータとしての記録が違っているの」

聞いている内にスザクの顔がみるみる驚愕の色に染まっていく。

(まさか皇帝陛下がギアスを…!?何故アーニャに…?)

そんなスザクの疑問をよそにさらにアーニャは続ける。

「それだけじゃない。中華連邦であの蒼い奴と戦った時も突然」

とそこでアーニャが言いかけた時だった。

(殺気!)

スザクは自分に向けられる鋭敏な殺気に気づいた。
直後、ナイフが飛んでくる。
スザクはそれを見据えると、軌道上にあった顔をずらして左手でナイフをキャッチした。
峰の部分を掴んだから怪我はない。
アーサーも殺気に気づいていたようでその方向に威嚇している。
ちなみに殺気を感じ取るのは実はアーサーの方が早かった。
これは単純に動物が本能で感じ取る部分が人間より優秀だからだろう。

「必要なものとは何だ、裏切り者の枢木卿。それは命だ」

言って出てきたのはオレンジのオールバックに近い髪型の、オレンジのラウンズのマントを羽織った切れ目の男性。

「白ロシア戦線以来ですね、ブラッドリー卿」

「ナイトオブテン……!」

スザクは投げられたナイフを捨てながらそう返し、アーニャはちょうど柱の裏からそれを見て呟いた。
そう、今スザクにナイフを投げたのはナイトオブテン、ルキアーノ・ブラッドリー。
もちろん彼もナイトオブラウンズの1人。
しかし、世間一般には通り名の方がよく知られているかもしれない。
「ブリタニアの吸血鬼」と。
貴族階級出身であり、挙げた戦功も数知れず。
が、一方、戦い方は非常に残虐で、武器を持たない女子供であろうと容赦しないところがある。
加えて味方を平然と盾にしたり、先ほどのように平然と攻撃したりする事から彼は味方からも忌避されていた。
もちろん同じブリタニアの貴族階級でさえも眉をひそめるほどだ。

「相変わらず女を落とすのは大得意らしいな〜。例の虐殺皇女様も…」

そう言われかけてさすがのスザクも黙ってはいられなかった。

「それ以上言えば、名誉をかけて決闘を申し込む事になります」

スザクの宣言を聞いたルキアーノは眉を顰める。

「ほぉ、忘れたのかな。私が人殺しの天才だって事を」

そう言ってルキアーノがナイフを一気に何本か並べて取り出す。
手さばきは器用だが、人殺しの天才というのは彼の自称である。

「血筋ってものを理解できぬナンバーズ上がりが…」

またも言いかけた所で今度は2人の間にナイトメアが降り立ってきた。
噴き上げる風に思わずスザクは手を盾にしていたが、収まったのを感じてそれを見上げた。

「これは…ギャラハッド!」

『2人とも、相手を間違えるな!』

ギャラハッドと呼ばれたナイトメアからスピーカーを通して叱責の言葉が聞こえた。

「ナイトオブワン…!ヴァルトシュタイン卿までどうしてここに…!?」

さすがのアーニャもこれには驚く。
ナイトオブテンだけでなく、ナイトオブワンまでこのエリア11に来れば驚くのも当然だ。
ちなみにギャラハッドの搭乗者はナイトオブワン、ビスマルク・ヴァルトシュタイン卿。
称号から見てもラウンズを統括する立場にあり、実力も全ラウンズの中でNo.1である。

『愚問だな、アーニャ。黒の騎士団が攻め込むとしたらこのエリアしかない。…ルキアーノ、ヴァルキュリエ隊もそのために連れてきた。ガレスもそのために用 意した。おまえのスタンドプレーは戦場で示せ。今はシュナイゼル殿下指揮の下、我らが力を合わせる時』

それにルキアーノは軽い口調で応える。

「ハッ、わかってますよ。あなたに言われるなら…」

そう言ってルキアーノは庭園を後にした。
そこから見える上空には既にピンク色のヴィンセントやあのガウェインの量産型とも言えるガレスの部隊が見えていた。
























蓬莱島の海辺に建造された式典会場は、まるで彼らの前途を祝福するかのことく、まばゆい陽光に包まれていた。
いや、少なくとも彼らにとっては祝福しているように思えた。
そう、今日はついに合集国憲章批准式典なのである。
そして、彼らとはそれに参加する加盟国の皆の事であった。

ここはゼロ=ルルーシュの部屋。
今ルルーシュはディートハルトと準備の打ち合わせと合流の電話をしていた。

「わかった。私もインドとギニア代表に会ったら会場で合流する」

そう言ってルルーシュは電話を切った。
それを見てライも立ち上がると座っていたC.C.に言った。

「外には出ないように」

「あ、はい…。あ、あの、その……」

「ん?」

何か言いたそうにしている彼女に気づいてライは耳を傾ける。

「いってらっしゃいませ……」

その言葉にライとルルーシュは顔を見合わせると何だかおかしくなり、軽く笑うと二人で言った。

「「いってきます」」

ルルーシュはゼロの仮面を被ると、ライと共に部屋を出て行った。





















そしてついに式典が始まった。
合集国憲章。
簡単に言えば、それは反ブリタニアを標榜する合集国において、各国家間の取り決めを文章化したものである。
中でも特徴的なのはその中の一部分、第17条に関する内容であろう。
それを今合集国日本代表であり、超合集国最高評議会議長、皇神楽耶が発表する。

「合集国憲章を批准した国家は、固有の軍事力を永久に放棄する。その上で各合集国の安全保障については、いかなる国家にも属さない戦闘集団、黒の騎士団と 契約します」

ちなみに、ここで言う黒の騎士団とは、蓬莱島に移住した日本人だけで組織される集団のことではない。

「契約、受諾した。我ら黒の騎士団は超合集国に資金や人員を提供してもらう。その代わり我らは全ての合集国を守る盾となり、外敵を制する剣となろう」

ゼロが受諾した事を宣言した。
そう、実際には各国家から派遣される人員や兵力(特に連合内でも大国である中華連邦の数が多い)を含めた軍のことだった。
以前の黒の騎士団を“小”とするなら、この黒の騎士団は“大”と言ったところだろう。
それぞれの国家が国力に合わせた負担を背負うことで成立する、一種の公式傭兵部隊。
ちなみにライの地位は最も特別な地位にあたる門外顧問というものだった。
この地位は序列で言えば、最高司令官である黎星刻の次にあたる。
ただし、これは通常とは異なっている地位であった。
これはもし黒の騎士団のCEOであるゼロが万が一暴走などしないため、そのための制止力と同時にその意志の最高決定機関でもあった。
これには経緯がある。

合集国憲章第7条はそのままでは烏合の衆となりかねない連合軍において、指揮系統をまとめ、一個の軍としてあのブリタニアの強大な軍と戦えるようにするた めにルルーシュとライが考案したシステムであったが、当然の事ながら反対意見も多かった。
特に彼らが躊躇したのは、それぞれの国家が固有の武力を放棄するという一文である。
事実、この点についてはあの中華連邦の黎星刻も再考をゼロに促してきた1人であった。
そこでライの提案で、既に実際につける段階であった門外顧問というものを設置した。
これは要は軍事行動においての決定がゼロとライの2人の承諾がない限り通らない、というものであった。
もしどちらか1人がそれを承諾しても、もう一人が承諾しない限りその軍事行動は実際に移せない。
加えてゼロがもし超合集国の評議会の意志に沿わない、または暴走した時のための制止力になるのと同時にその時点ではゼロを上回る決定権、指揮権を与えると いうものだった。
もちろんライは元々黒の騎士団の一員でゼロの補佐をしていた訳だから信用は完全にある訳ではない。
ライとしてはこれまではゼロとしての部下の立場という手前、自分の意見よりもゼロの指示を優先している所があった。
しかし、ライは意見はしっかり言う方でこの立場としては適任といえた。
それにライ自身も、この立場においては公正を規すつもりであった。
だが、それでは少々各国を納得させる材料が足りないとの事で、騎士団内での特別軍事法廷の設置等をしばらく後に取り付ける事となったのだった。

そして、合集国中華代表である天子がさらに読み上げる。

「それぞれの国が武力を持つのは騒乱の元。超合集国では最高評議会での議決によってのみ、軍事力を行使します」

先ほど言った事を踏まえれば、要は評議会での議決で軍事力の行使を決め、さらにゼロとライがそれを承諾する事で初めて可能になるという事だった。
そして、最後、超合集国連合による最初の決議が行われようとしていた。
マイクの前に立っていた神楽耶が集まった各国代表に問いかける。

「それでは、まずわたくしから最初の動議を。……現在、我が合集国・日本の国土が他国により蹂躙され、不当な占領を受け続けています。黒の騎士団の派遣を 要請したいと考えますが、賛成の方はご起立を」

そして、一斉に神楽耶の周囲で各国代表が席を立つ。
それを満足げに見回してから、神楽耶は高らかに宣言した。

「賛成多数。よって超合集国決議第一号として、黒の騎士団に日本解放を要請します!」

ゼロはライを見ると、頷く。
ライもそれを見て頷いた。
これで2人の承諾は得られた。
ゼロが大きく手でマントを跳ね上げる。

「いいでしょう、超合集国決議第一号。進軍目標は……日本っ!」

高く天を指さしてから、日本の方向へ指した。
とたんに爆発的な歓声が上がった。
会場全体を揺るがすような大歓声。
それをライは斑鳩の甲板にたたずんだまま聞いていた。

(カレン……、ナナリー……今そっちに行くよ……)

その時会場のあちこちに設置していた巨大モニターに異変が起きた。
ノイズが走り、そこにある人物が映し出された。
そこに映っていたのは斑鳩で歓声を上げていた群衆でもステージ上の神楽耶達でもなかった。

『ゼロよ』

「な、何っ!?」

「!?」

それにゼロとライは心底驚いた。
なんと映っていたのは行方不明のはずの皇帝シャルル・ジ・ブリタニアだったのだ。
この時既に黒の騎士団の回線はハッキングされ、予備ラインも既に抑えられていた。

『ゼロよ…、それでわしを出し抜いたつもりか?』

(まさか……)

『だが、悪くない』

あまりの事に声を失っている人々……いや、ゼロに向かって皇帝はさらに嘲笑の気配を漂わせて語った。
もしかすると、ライに対しても含まれているのかもしれない。

『三極の一つ、EUは既に死に体。つまり、貴様の作った小賢しい憲章が世界をブリタニアとそうでないものに色分けする。単純、それゆえに明解。畢竟(ひっ きょう)、この 戦いを制した側が、世界を手に入れるということ』

(生きて……いや、こんなにも早く戻ってきた……?)

『いいだろう、ゼロ。挑んでくるがよい』

(…いや、待て!それじゃあナナリーは…?ゼロの正体がルルーシュとバレているこの状況では……!)

『全てを得るか、全てを失うか。戦いとは元来そういうものだ。オールハイル・ブリタニアアアアァァァ!』

(ナナリーはどうなってしまうんだ!?)

そして、会場にはブリタニアコールに対し、日本万歳というコールが占めていた。

























式典が終了した後、部屋に戻ったゼロ=ルルーシュは明らかに動揺していた。
ゼロと共に戻ったライは既にその動揺から脱している。

「皇帝が生きていた!?」

ルルーシュの動揺ぶりにもライは何も言わなかった。
無理もない。
つい先程まで行方不明のままだったのだ。
ライとしてはいつ戻ってくるのかが問題だったのだが、思ったよりも早かった。
それがルルーシュの動揺ぶりに拍車をかけているのかもしれない。

「あ、あの……おかえりなさい」

「ああ……ただいま」

ライは丁寧にも言ってくれたC.C.にそう返した。
その間もルルーシュは対策案を次々と考えているようで、意識も向いていない。
だが、どの案も良くないはずだ。
現状では……。

ルルーシュは一旦仮面を取るも、まだ考えに耽っている。
ライは話しかけるのは良くないだろうと判断していて、これまでの道中彼に話しかけなかった。
すると、C.C.が取っておいたのかピザが二枚残っていた皿を取ると、ライに近寄ってきた。

「あの、こ、これご主人様方のために取っておきました。朝ごはん取られていなかったようでしたから……」

ライは律儀にも残しておいてくれた彼女に苦笑しつつもありがたく受け取る。

「ありがとう」

そう言ってライは一枚もらうと、それを食べた。
と言ってもすぐに食べ終えてしまった。
どうも味わう気分になれそうもない。
それを見たC.C.は今度はルルーシュの方に向かった。

「あの、良ければこれ……」

「うるさい!」

そこで周りのライとC.C.の声が鬱陶しいと感じたのか、ルルーシュが振り返ると同時にC.C.が持っていた皿を手で跳ね除けた。
床に落ちた衝撃で皿が割れる。

「C.C.!」

尻餅を着いて倒れたC.C.にライが駆け寄る。
それにルルーシュもハッとする。
そして、C.C.の手が皿の破片で傷付いているのに気が付いた。

「おい……!」

ルルーシュが近づくのに気づいたルルーシュが近づこうとすると、C.C.は怯える。

「ごめんなさい!今綺麗にしますから…!」

「待って。それは僕がしておく」

そう言ってライも気づいていたのか指の傷を診る。

「大丈夫か?」

「あ、平気です。これぐらいいつもより全然平気です…」

「いつもよりって……」

ライとルルーシュはそれで彼女の過去を思い出した。
眉を顰める2人にC.C.は続ける。

「でも寒いときは助かるんです。ひりひり熱いから…。寒いと手足が動きにくくて仕事が……。だから、平気です。外から痛い方が中から痛いよりも……」

ライはそんな彼女にそえていた手にもう一方の両手を重ねる。

「……君は中から痛い時どうしていたんだ?」

「私は……!……友達」

躊躇いがちにC.C.が言った。
それにルルーシュがハッとする。

「……え?」

そんなルルーシュに構わず彼女は続ける。

「友達がいたら良かったんですけど…親とか兄弟とかと違って友達なら後からでも作れるし……。でも、私にはそんな味方もいなくって……」

「味方?」

「あの、そう聞いたんですけど、違うんですか?」

やはり躊躇いがちにC.C.はライとルルーシュを見て言った。

「いや……違わない。そうだな?ルルーシュ」

「…ああ、そうだな」

それでライとルルーシュはお互いを見て微笑んだ後頷いた。

(そう、ここには親友のライがいる。なら、ブリタニア側にいる俺の友達は……)

ルルーシュに考えてもいなかった一つの案が浮かんだ。
そして、ルルーシュはそれを実行しようと考えていた。


















あの後、ライは片付けをすると共にC.C.の手当てをして、彼女と共にルルーシュの様子を見守っていた。
ルルーシュは今スザクに電話をかけていた。
そう、彼は今敵であり、友達であるスザクに電話をかけているのだった。
しばらくして、ルルーシュがハッとした。
どうやらスザクが出たようだ。

「スザクか?」

ルルーシュの電話が始まった。
ライはその様子を見守っていたが、不意にライの携帯にも電話のコールがかかってきていた。
相手はシャーリーだった。
それを見ると、ライはC.C.に言う。

「すまない、僕も電話のようだから少し席をはずすよ」

「あ、はい……」

「ここでじっとしててくれ」

ライはそれだけ言うと、部屋を出て廊下で電話を取った。

『ライ君?』

「シャーリーだね?」

『うん、良かった。あれからずっと連絡取れなかったから心配してたの』

変わらないシャーリーの様子にライは安堵する。

「すまない、心配かけて。連絡してる暇がなかったんだ。でも、休学届けを出してたのは知ってるんだろ?」

『うん。……でもやっぱり心配で……』

たぶん彼女が言ってるのは黒の騎士団に関しての事なのだろう。
シャーリーの気遣いは嬉しかったが、ライは彼女が電話してきた用事がすぐにわかった。

「ありがとう。ところでシャーリー、君は黒の騎士団が日本に、エリア11に攻め込む事は知ってるよね?」

『うん。ニュースで見た。それで、ライ君に聞きたい事があるんだけど、いいかな?』

「……いいよ」

ライは考えた末にそう回答した。
こういう事を聞いてくるという事は周りは誰もいないのだろう。

『黒の騎士団が、ゼロが、ルルがエリア11を攻めるのは…その……やっぱりナナちゃんのため?』

「…ああ、そうだよ」

『そっか……』

「シャーリー聞いてほしい」

『え?』

「これからエリア11は戦争になる。君にはできるなら避難してほしい」

『え、いくらなんでもトウキョウ租界までは来ないんじゃ……』

シャーリーが言う途中でライは遮った。

「さっき言ったよね?ナナリーが目的だって……。ルルーシュは、黒の騎士団は必ずトウキョウ租界に必ず来る。だからそうなる前に君や生徒会の皆には避難し てほしい」

本来ライはこの事まで言う必要はなかった。
ただ、ライにとってシャーリーは大切な人の1人である上に、これ以上彼女を巻き込みたくなかった。
だが、彼女から帰ってきた答えは予想外のものだった。

『ありがとう……。でも、私逃げない』

「待て!君はただの学生なんだ。戦う必要のない民間人だ。なら無理にいる必要は……」

今度はライが言っている途中でシャーリーがはっきりと言った。

『ううん、私ここから逃げない。だって、前ライ君言ったでしょ?私にはこのアッシュフォード学園、ルルの居場所を守ってほしいって。だから私はここに残る の』

「………」

ライはそれで何も言えなくなった。
そうだ。
彼女には自分からそうお願いしたのだ。
シャーリーにしかできない事だから。
なら、それを言った自分が曲げるような事はしてはいけない。

「……わかった。でも、本当に危険になった時は避難してくれて構わないから」

『うん、そうする』

「あ、それとこの事は他言無用にしておいてくれ」

『ふふ、わかった』

思い出したように言ったライがおかしかったのかシャーリーが笑う。
そんな彼女にライもフッと笑った。

「じゃあ、くれぐれも気をつけて。シャーリー」

『うん、ライ君も気をつけてね』

そう言って互いに電話を切った。
そして、部屋に戻ったライにルルーシュから伝えられたのは彼がエリア11でスザクと会う事になったという事だった。
























あとがき


15話前編、後編をお送りしました。
前回の14話の投稿から一ヶ月ぶりに投稿できました。
当初はこんなに長くなるとは思いもせず、気の向くままに書いていたら予想より遥かに長くなってしまいました。
だから、前編後編なんて考えてもいなかった訳ですが、さすがに長いだろうって事で前編と後編に分けさせてもらった今回の話です。
ちなみに今回はアニメの16話にあたります。

それでは、今回の話の解説を。
前編はまさかのシュナイゼル視点から始まり、黒の騎士団(というかライ)中心の視点で進ませて頂きました。
前編はルルーシュ達が動いた 嚮団殲滅作戦の影響で黒の騎士団がどう動いているのかというものを書かせてもらいました。
続いて後編ですが、これもブリタニア側の視点や超合集国についてなど色々なものを書かせてもらいました。
アーニャの影響具合もびっくりでしょうが、ライの地位もついに決まりました。
ですが、そこが一番今回の話で苦戦した所でした。
ぶっちゃけ新しい黒の騎士団の地位についてはっきり言って、全然わからなかったので、適当に地位を作って入れちゃえって考えに落ち着きました。
どこかに入れると帳尻合わせるのが大変なので(汗)
それが、門外顧問という地位です。
某漫画を元にさせてもらったのですが、ぶっちゃけその地位に正しい役職となっているのかはわかりません(苦笑)
なので、この作品では門外顧問というのは、説明の通りこういうものだと納得してください。
突っ込まれてもそこは答えられませんので……(汗)
もちろん知っている方がいれば、黒の騎士団の地位はこういうものだよっていう助言はOKです。
そちらは助かりますので。
そして、最後はまさかのシャーリー登場!(電話ごしだけど)
12話書いた後に、よくよく考えれば、彼女にこれ以上ほとんど出番がないんじゃないか?って事に気づいて入れようと思ったのが初めなのですが、自分的には 入れてよかったと思っています。
こういうキャラが使えたっていうのは、とてもいい事だと思っています。

と、今回は長かったですが、解説はここまでです。
つなぎの話の意味合いが大きい今回ですが、それなりに楽しんでもらえれば私としては満足です。

次回はなんと!
作者この作品初のオリジナルストーリー!!
原作に沿いつつも、中身は作者のオリジナル要素が強い内容です!(作者的に)
まさかのブリタニア、黒の騎士団の頂上決戦!?
そして、なんと崩月の最後にして新しい武装が登場します!
他にも新要素がいっぱい出る次回、熱くなる事間違いなしのお話です!
あまり出番がなくて活躍が見られなかったキャラも活躍するかも……。

たくさんのWEB拍手や感想ありがとうございました!
間違いの指摘や質問までして頂いて……ありがとうございます。
ただ、前回は表現がつたなくておかしい部分もあったようで……すみませんでした。
以後気をつけていきますね。
質問に関してはこの後のなぜなにギアスでお答えしますね。

今回、かなり長くなりましたが、なんとか書けました。
忙しくて中々進まなかったのですが、今は少し落ち着いてこうして投稿できるようになりました。
これも読んでくださっている読者の方々のおかげです。
これからもどしどし感想やアドバイスなど送ってください!
ただ、アドバイスでのきつい発言は勘弁してくださいね(汗)
へこみやすいので。
それでは、今日はこの辺で。
今回も読んでくださった読者の皆様ありがとうございました!
これからも応援よろしくお願いします!
















なぜなにギアス


ラ「さて、このコーナーも恒例になってきました。それでは、いつものようにゲストの紹介にいきましょう!どうぞ!」

ロイド(以降ロ)「こんにちわ〜。呼んでくれてありがとうね〜」

ラ「という事で今回はナイトメア開発で有名なロイド伯爵に来てもらいました!では、早速質問と行きましょう。ナイトメアでよく第何世代って言われますけ ど、世代はどういう基準で分けられているんですか?」

ロ「いい質問だね〜。主にこれは時代で分けられる事もあるんだけど、正確にはその開発時期にあった特色ごとに分けられているんだよね〜」

ラ「ふむふむ。詳しい説明をお願いできますか?ロイド伯爵」

ロ「いいよ。まず第四世代は主に軍用KMFとして本格的に実用化がされた世代なんだ。グラスゴーなんかが代表だね。他には無頼とかいう機体もその世代にあ てはまるよ。続いて第五世代は、第四世代から改良を重ね、対KMF戦を想定する形で性能向上が図られ、主要兵器としての立場を確立した世代なんだ。サザー ランドが代表格で、他にはグロースターなどがこの世代になるよ」

ラ「第四世代の時点では、対KMF戦は想定されてなかったんですか?」

ロ「そうなんだよね〜。時代的背景がその原因にあたるかな。その頃はまだKMFの概念がまだそれほどなかったし、戦車とかそういうものしか敵にはなかった から。それより以前の第一世代と第二世代の頃のは軍用機という発想すらなかったんだよ。そして、第三世代の頃から軍用機としての発想が出てるから、その頃 は主力機を作るための試作機世代と言ってもいいかな」

ラ「なるほど。それが第四世代と第五世代の違いですね」

ロ「その通り。で、話を続けるけど、第六世代は第五世代で完成形を見せたKMFをさらに発展させようと技術的に模索された世代なんだ。ただ、さまざまな実 験や研究が行われたんだけど、第六世代に相当するKMFはそれほど実用化されてないんだ。その世代でよく知られているのは、ガウェインだね。ただ、あれは あれで特殊なんだけど」

ラ「なるほど。そして、次が第七世代という訳ですね?」

ロ「そう。より強力なKMFを開発すべく研究が行われた世代なんだ。ユグドラシルドライブを採用したランスロット、輻射波動という特殊技術を用いた紅蓮弐 式が代表的だね。この二機は第五世代以前のKMFを凌駕する性能を獲得し、次なる世代に大きな可能性を残したものでもあるんだよ〜。むふふふ」

ラ「なんか嬉しそうですね。ロイド伯爵」

ロ「もちろんだよ〜。ランスロットは僕が開発したんだからさ」

ラ「なるほど……(苦笑)」

ロ「続いて第八世代だけど、これは第七世代の機能を応用した機体がこの世代にあたるんだ。蜃気楼やラウンズ専用機はこの世代にあたるね。分け方は第七世代 がある種の試作機的な意味合いの多い世代だけど、第八世代はそれをさらに発展し、独自性の高い機体がそれにあたるんだ」

ラ「なるほど。そして、まだ登場してませんが、第九世代も紹介してしまいますか?」

ロ「そうだね〜、この際だから言っちゃおうか。第九世代は新技術「エナジーウィング」を搭載する形でさらに進化をたどった世代なんだ。攻撃、防御、飛行を 一体化させた新技術は、第八世代の機体さえ旧式然とさせてしまう程のものなんだよ」

ラ「すごいですね。一世代だけで格が違うなんて。ロイド伯爵、説明ありがとうございました」

ロ「いやいや、いいよ。僕も楽しかったから」

ラ「さて、ここからは読者の方々から寄せてもらった質問にお答えしていきます。というか指摘と確認ですね。これは(紙を見ている)。とにかく、内容は、掻 い摘んで言うと、ライのギアスは両目暴走と両目制御の中間あたりという理解で構わないでしょうか?という質問です。ってこれ僕に対するものですね」

ロ「じゃあ君が答えなよ〜」

ラ「そうします。で、理解はそれで構わないですよ。今の僕のギアスの状態は力が大きくなっていないから収まっているようなものですし。ただ、制御できるよ うになりたいとは思ってますね。そうすれば、ギアスによる命への危険はなくなりますから」

ロ「何かよくわからないけど、君も大変だね〜」

ラ「はい……。さて、今回のコーナーはここまでです。次回はこのコーナーはお休みして、崩月の設定を紹介したいと思います。気になる人はチェックしてみて ね。では、このコーナーはライと!」

ロ「僕がお送りしたよ〜」

ラ「では、また次々回に!またね〜」





なぜなにギアス 〜終わり〜



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