コードギアス反逆のルルーシュR2
              Double  Rebellion














TURN-19 2人だけの戦争


あの後、2人は既に準備を始めていた。

「ルルーシュ、目的地は神根島、だな?」

ルルーシュは頷いた。

「やはりおまえもそう思ったか。皇帝はエリア11に来ながらも、トウキョウ租界には姿を現さなかった。つまり、あいつの目的は別にある。方角的には式根 島。いや、神根島の遺跡に用があると思われるからな」

「なら、急ごう」

ライとルルーシュはそれぞれ崩月と蜃気楼に飛び乗ると、周りに敵機がいない事を確認して、海中に潜った。
















一方、蜃気楼を逃がしてしまったアーニャは斑鳩の外で待機していた。
しかし、突然あまりの頭痛に顔をしかめ、頭を手で押さえる。
そして、それが収まった頃には既に切り替わっていた。
瞳は以前よりもさらに赤くなっている。

「そう、始めるつもりなのね」

すると、全帯域で発せられた通信がモルドレッドに入った。

『蜃気楼の現在位置は!?』

『未だ……』

『くっ!ブリタニアの協力も得られている。確認次第、全軍を挙げて蜃気楼を破壊するんだ』

『わかりました』

だが、そういう通信は一切聞かずにアーニャは甲板に機体を寄せた。
甲板にはC.C.が立っていたのだ。
彼女はどこか落ち着かない顔をしている。
しかし、そんな事は微塵も気にせずに、モルドレッドを甲板に着地させると、コクピットを降りてアーニャはC.C.に近寄る。

「直接会うなんて久しぶりね!私よ、私!」

しかし、C.C.の態度が違う事にすぐに彼女は気が付いた。
そして、その原因にも。

「C.C.、まさかあなた……」

そう言って怖がるC.C.に強引に近づき、こっちに顔を向けさせた。

「ごめんなさい!」

C.C.がそう言った瞬間にはアーニャの意識は彼女の中へと移って行った。

















そこは以前ライやルルーシュが行った事のある所だった。
アーニャはそこを何でもないように歩いている。
管理者と思われるC.C.と瓜二つの少女とすれ違っても、見向きもしない。
そして、程なくして目的の人を彼女は見つけた。

「何してるの、こんな所で」

しかし、相手からは返事がない。

「C.C.、C.C.」

そこでC.C.がやっとこちらに振り向いた。
C.C.は今まである一枚の絵を見ていたようだった。
それはC.C.とライが初めて出会った時の絵だった。

「誰だ?」

だが、言った後にそれが誰だかC.C.は気が付いた。
ライの携帯の画像や公的な写真で見た事がある。
ラウンズの席次は六番目、ナイトオブシックス、アーニャ・アールストレイム。
ついでに言うならライの彼女。
まあ、この点に関してはC.C.は気にいらなかったが、そこは今は関係ない。
しかし、彼女がここにいるという事は……。

「私よ、私」

アーニャの姿をした少女は言うなり、姿を変えた。
その形が輪郭が溶けて消えるように曖昧になり、続いて別の形を作っていく。
背が伸び、胸が膨らみ、着ていた服は騎士服から薄茶色のドレスへ。
幼かった顔は麗しい女性のそれに。
現実ではありえない事だが、この空間ではそれが起こる事もある。
いまC.C.がいるここは、そういう場所なのだから。
そして、彼女、マリアンヌ・ヴィ・ブリタニアはC.C.の前に姿を現した。
かつて、ブリタニアの后妃として生きていたときの姿そのままに。

「お前、こんなところにまでやってきて……そんなにルルーシュが心配か?マリアンヌ」

C.C.は椅子から立ち上がって呆れたように、だが、大して驚きはせずに言った。
対してマリアンヌは腰に手をあて軽やかに笑う。

「あらやだ。私がそんなに理想的な母親だと思っていたの?」

「しかし、ここに来たという事は私を連れ戻しに来たのだろう?」

「ええ、そうよ。でも、それとルルーシュは無関係。大体、それだったら、もう少し早く来てるわ。あの子とあなたが大チョンボをやらかす前に」

「…………」

「まあ、と言ってもやらかしたのはあのライっていう狂王の子とみたいだけど」

C.C.が立ったまま黙り込む。

(大チョンボ、か……)

マリアンヌがまた笑った。

「答えて、C.C.。自分で自分のコードを封印したのは何故?シャルルならあなたの、あなたの死にたいという願いをかなえてくれたのに」

コードを封印する。
それが今のC.C.の状態の直接の原因であった。
いまこの空間にいるC.C.と現実世界にいるC.C.とは感覚的なリンクが完全に切れているのだ。
C.C.自身がそれをしたのだ。

「わからないんだよ、自分でも。ちょっと驚いてる」

沈黙を破ってC.C.は答えた。
それに「あははは」とマリアンヌが声に出して笑った。

「じゃあ確かめなきゃね。現実で」

「うーん……」

「私が決めたのだから、決定よ」

自信に満ちた声で宣言されて、C.C.はやれやれと肩をすくめてみせた。

「お前くらいだな」

「何が?」

「この私をいつも引っ掻きまわそうとするのは」

話す間に現実の世界に戻っていく。
目の前にはアーニャの姿をしたマリアンヌに戻っていた。

「ああ、感謝はしてるよ。私にギアスをくれた事に対しては」

「契約不履行のくせに」

「そう思うのなら、一緒に行きましょう」

「ああ、待ってくれ。せめてあれだけは」

「?」

C.C.のその言葉にマリアンヌが首を傾げた。
























「仕方ない。ゼロの戦死を発表しましょう」

一方その頃、黒の騎士団では蜃気楼の捜索(本当はそれに乗っているゼロも)されていたが、一向に見つかる気配がなかった。
各地からもその報告ばかりであったのだ。
そして、状況が状況のため、早めに手を打つ必要があったため、ディートハルトは思い切ってこの決断に乗り切った。

「まだルルーシュが見つかっていないのに?」

「既成事実にしようというのか」

「あのさあ、ゼロが裏切っていたってのはわかったんだけど、ギアスの事も発表するつもり?」

ディートハルトの決断に驚く扇と藤堂をよそに、ラクシャータはいつもの調子でディートハルトに尋ねる。
ちなみに彼女はあの後幹部から話を聞く事でこの事を知った。

「私達がおかしくなったと思われ、放逐されるだけです。……ありえない」

そう、基本的にギアスの存在はオカルトに入る代物なのだ。
そんな事を急に言われても、ほとんどの大衆は信じないだろう。
ライに言われたように提示できるような確たる証拠はないのだ。

「本物のゼロが出てきたら?」

「本物だとどうやって証明するのですか?」

そうだ。
本物のゼロがでてきたら、という懸念は実は全く必要ないのだ。

「仮面の英雄など所詮は記号。認める者がいなければ成り立ちません」

そういう事が理由だったからだ。
そして、結局この後黒の騎士団はゼロの戦死を発表する。
ちなみにライが行方不明というのも知られていたが、これは伏せられ、知るものは黒の騎士団の人間のみとなった。


















「そうか、それは良かった。本当に……」

『うん、やっと携帯繋がるようになったから。皆無事で良かった』

ルルーシュは目的地に向かう途中、シャーリーの携帯に電話をかけていた。
彼女や生徒会の皆は無事か確認するためだった。

『あ、でもルル達の部屋はなくなっちゃったけど、クラブハウスは開いてるから』

明るく話しかけてくれるシャーリーにルルーシュは心の中で励まされた。

「そうか、生徒会室は無事なのか?」

『うん、大丈夫だよ。それより、ロロはどうしたの?一緒にいるの?』

シャーリーのその問いにルルーシュは顔をしかめた。

「あ、ああ。……シャーリー」

『何?』

「……いや、なんでもない」

ルルーシュはその先を結局言わなかった。
言えば、行動力のある彼女だ。
心配はもちろん、何か行動を起こして危険に巻き込むのはルルーシュの望まないところだった。

「じゃあ、俺はこれから大事な用があるから」

『うん、じゃあね』

そして、ルルーシュは電話を切った。
彼女には嘘を付いてしまったが、それでもやらなければならない事がある。

「すまない、シャーリー」

その時、ライの崩月から通信が入った。

『ルルーシュ』

「どうした、ライ」

『君に話しておく事がある。大事な事だ』

この後ライが話した事で、ルルーシュは当初の予定とは少し違う計画を組む事になる。





















そして、それからしばらく。
先に式根島に潜入した二人はブリタニア軍の関係者をギアスで操っていた。
そして、ここでも。

「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる。お前達は今より私の指示通りに動け!」

ルルーシュの瞳の赤い翼が羽ばたく。
相手がギアスにかかるのを確認したライは踵を返す。

「これで全員だな」

「ああ」

「じゃあ、一足先に行っている。神根島に」

そして、ライは部屋を出た。
彼には彼でルルーシュとは別にやる事がまだあったのだ。






















そして、それから少し程して、枢木スザクはシュナイゼルにナイトオブワンになるという条件で主君であるはずの皇帝を暗殺しに神根島に来ていた。
皇帝を見つけたスザクは、皇帝に付き添っていたギアス 嚮団の生き残りを切り捨てる。

「シュナイゼルの差し金か」

「自分の意思です」

皇帝の質問にスザクははっきりと答えた。

「陛下、自分を取り立てて頂いた事には感謝しています。しかし、あなたには二つの罪がある」

「ほう……」

皇帝シャルルは面白そうな顔をする。
スザクは構わず続ける。

「一つは王たる責務を放棄した事。そして、もう一つは……」

スザクが西洋式の剣を構える。

「ギアスに手を染めた事」

「それが罪だと?」

「ギアスは人の悪なるものを引き出します。すべてを知るあなたならユフィの事だって救えたはず。なのに見捨てた」

「それがどうした」

スザクの言葉を皇帝はその言葉で返す。
本当にその事に対して何も思ってないらしい。

「この剣にルルーシュとナナリーの絶望も込めさせて頂きます。覚悟!」

振りかぶった剣をスザクが振り下ろした。
だが、剣がシャルルに届く前に誰かが割って入った。
振り下ろした剣を受け止められる。
そして、受け止めた人物はナイトオブワン、ビスマルク・ヴァルトシュタインだった。
その姿を見てスザクが驚く。

「ヴァルトシュタイン卿、どうしてここに!?」

「ギアスの事を知っているのは自分だけだと思っていたか?残念だったな、おまえのような裏切り続けのような男を誰が信じるというのだ」

「ビスマルク、俗事はまかせる」

「イエス・ユア・マジェスティ」

皇帝シャルルが踵を返して神根島の遺跡に入っていく。

「待て!」

スザクは追おうとしたが、ビスマルクに薙ぎ払われた剣によってそれは遮られた。
スザクはとりあえず目の前の敵に集中する事にした。



















それからスザクはビスマルクとの戦闘を継続していた。
ビスマルクの剣をかわすために飛び退る。
両目は赤い色に灯りつつあった。

(いけない…!僕にかかっている生きろというギアスが…ここは逃げろと叫んでいる!それほどまでに危険な相手か、ナイトオブワン!)

そう、スザクは劣勢だった。
それにビスマルクの殺気と実力に生命本能が反応して、生きろとかけられたギアスに影響を及ぼし始めている。

「しかし!弱さは捨てた!」

ギアスが発動しかかっていたが、スザクは精神でなんとか抑えて、剣を構えビスマルクに飛び込む。

「おろかな。おまえの弱さこそが!」

言いながら飛び掛ってきたスザクをビスマルクは手にした剣で薙ぎ払った。
スザクが吹っ飛び、地面に叩きつけられる。
剣は先ほどの反撃で吹っ飛ばされてしまった。
なんてパワーだ。

「優しさという強さの裏づけであったものを。……そう、批判なき強さなどただの暴力。ならば……ここで死ぬがよい。枢木スザク」

「確かにその通りだが、それはどうかな」

声が響くと同時に、ビスマルクはハッとした。
何かが強烈な殺気と共に迫っている。
ビスマルクが反射的に飛び退く。
直後、今までビスマルクがいた空間を何かが通り過ぎると同時に横の地面に亀裂が入った。
ビスマルクとスザクは殺気が発せられている崖の上を見上げた。

「さすがだな、今のを避けるとは」

そこにいたのは銀色の髪をなびかせ、肩に刀を担いだ青年だった。
そして、スザクはその姿に見覚えがあった。

「ライ!?」

「ほう、知り合いか」

スザクの驚きをよそに、ライは崖を飛び降り、ビスマルク達と同じ高さの地面に着地する。

「どうしてここに!?」

「どうして、ここに?愚問だな。僕が黒の騎士団いたのは既に君も知っているんだろ?ルルーシュの道作りだよ。目的に辿り着く前に危険があるといけ ないからな」

もちろん、その事に関してはルルーシュも手を打っていたが、もしもの時のためライが威力偵察を行っていたのだった。
だが、スザクはライがゼロの正体を知っていた事にも驚いているようだった。
しかし、ライはスザクを一瞥しながら淡々と説明するだけだ。

「で、来てみれば予想通りの人物と予想の上をいく人物が交戦中だったという訳だ」

そして、ビスマルクに向けてライは刀を構える。

「という事でここから退場してもらいますよ、ヴァルトシュタイン卿」

「なるほど。そういう事か。ならば、おまえも枢木スザクも殺して終わりにしよう」

ビスマルクも剣をライに向けて構えた。

「そう上手くはいきませんよ。残念ながら、ね」

言ってライがビスマルクに向けて飛び出した。
刀を構えて下段から迫る。
瞬く間に間合いが詰まる。
ライの右切り上げをビスマルクが大剣で受け止める。
じりじりと鍔迫り合いをする両者を見て、スザクがハッとして起き上がると、二人に向けて飛び出した。

「ライ、それは僕の十字架だ!」

スザクがビスマルクに切りかかる。
直後、ライの刀を弾いてビスマルクはスザクの攻撃を避けたのだが、そこでライが、攻撃したため近距離にいたスザクを刀を持っていない左手で殴り飛ばした。
予想しなかった攻撃に吹っ飛ぶスザク。

「何をするんだ、ライ!」

スザクはライに抗議したが、スザクを見るライの視線は冷たかった。

「三千万人程吹き飛ばして頭がおかしくなったか?今の僕と君は敵だぞ。それにさっきの言葉は何だ?自分の意思でブリタニア軍に入ったくせに、今度は敵対し ていたルルーシュと同じような事をするのか?矛盾しているぞ。……君の事は好きだが、自分の意志や決意をころころ変えるような人間は、僕は嫌いだ」

そして、もうそれ以上は言わずにライはビスマルクに向き直る。

「すみませんね、待っていてもらって」

ライは皮肉を込めて言ったが、事実そうだった。
話している間、ライはほとんど無防備に近かった。
だが、ビスマルクは攻撃してこなかった。

「何、先ほどの貴公の行動の訳を知りたかっただけだ」

それはスザクを殴り飛ばした事だろう。
ライはフッと笑うと、再びナイトオブワンに飛び掛って行った。





















あれからしばらくライはビスマルクとの戦闘を続けていたが、決着はなかなかつかなかった。
ライは神速を主体とした剣術に対し、ビスマルクは豪剣とも言えるスタイルの剣術。
一見、対照的に見える二人だったが、お互い致命傷らしい傷すら与える事ができなかった。
一旦、切り結んだ両者がまた離れる。

「なるほど。貴公がキュウシュウで戦ったあの蒼いナイトメアのパイロットか」

「ああ。あの時の決着をと思ったんだが、さすがナイトオブワンだ」

両者共に相手を賞賛していたが、正直余裕はなかった。
ビスマルクとライの実力は拮抗していて、ライに至っては先ほどまでの敬語はない。
それを端で見ていたスザクはライの実力に驚嘆していた。

(ライ……、君は一体……!)

確かに動きは以前相対したあの蒼いナイトメアの動きと似ていた。
なら、そのパイロットがライなのも納得できる。
ただ、その実力が以前対戦した時よりもさらに上がっているように思えるのだ。
そして、今こうしてナイトオブワンと互角に渡り合っている。

このまま勝負は続くと思われたが、ここでライが呟いた。

「そろそろ時間か……」

直後、遠方で爆発が起こった。
そこから煙が上がっているのが、こちらからでもわかった。














そして、その爆心地の近くではルルーシュが1人歩いていた。

「我が名はルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。マリアンヌ后妃が長子にして、帝国により捨てられし皇子」

ルルーシュは目的地である神根島の遺跡に向けて真っ直ぐに突き進む。
そして、それとほぼ同時にブリタニア軍で式根島の軍隊が反乱を起こす。
ルルーシュのギアスの命令によって。













一方、ナイトオブワンであるビスマルクは一旦ライとの戦闘を中止して、遺跡前にあった通信装置で状況を確認していた。

「反乱だと!?」

聞いた報告にビスマルクが声を荒げる。
それにオペレーターは驚きつつも、しっかりと返答する。

『はい。皇帝陛下は?』

「陛下は最も安全な所へ移っておられる。今は……」

そう言って指示を出そうとしたビスマルクだったが、ふとスザクが走り去っていくのに気が付いた。
そして、次にある異変にも。

(……!?あの男は!?)

そう、いつの間にかライもいなくなっていたのだ。
だが、この短時間の間に一体どこに?

しかし、考える暇はなく走り去るスザクを止めようかと考えた所だった。
ミサイルの流れ弾がスザクの近くの地面に着弾した。
直後、地面が崩れ、スザクはそれに巻き込まれていった。
発生した土煙から顔を庇いながらも、ビスマルクは再度状況を確認する。

「グレートブリタニアで指揮を取っているのは?」

『ナイトオブトゥエルブ、モニカ・クルシェフスキー卿です!』

「よし、ならば私はギャラハッドで出る!」

スザクは流れ弾に巻き込まれたが、生死の確認はできていない。
それにライの動向も気になったが、今はそれどころではない。
ビスマルクはすぐに通信を切って、愛機の方へ向かった。
























祭壇の上で、神聖ブリタニア帝国皇帝シャルル・ジ・ブリタニアはただ笑っていた。
一面に広がる雲と、夕暮れめいた紅の光に包まれた世界『黄昏の間』。
ただし、以前、これと酷似した世界でシャルルが息子のルルーシュと狂王のライと対峙した時と違って、いまは雲と祭壇の他にも異様なものがそこには存在して いた。
シャルルが立つ石造りの祭壇の前、眼下の雲のさらに下から伸びた巨大な柱。
いや、それは本当に柱なのだろうか?
表面には複雑怪奇な模様が無数に浮かび、まるでドリルのように捻じれながら上昇を続けている。
雲を突き破り、シャルルが立つ祭壇の前を通り過ぎ、さらには頭上の空の中心点、そこだけは紅ではなく白く輝く天に向かって、ひたすら突き進む。
柱が上昇する度に、辺りに響くのは低く重厚な振動音。
そこでシャルルはなおも笑っていた。
それは彼が玉座に座ったときに浮かべる形式的な笑いでも、他者を見下すときに見せる冷笑でもなく、ただただ歓喜の笑いだった。
無理もないのかもしれない。
いままさに、彼が己の生涯を費やした計画、願いは成就しようとしている。
完全なる成就には、どうしても後一枚のカードが必要だが、それも問題はないだろう。
もう間もなく、彼の伴侶であり、最大の理解者でもある女性が、そのカードを携えてここへやってくることになっている。

「さあ、『神』よ」

空の中心点に向かって、シャルルは太く分厚い哄笑を投げかけた。
そして、ギアスの紋章のある右手を掲げる。

「決着の時は来た」

哄笑は続く。
だが、そのときであった。














「違うな。間違っているぞ、シャルル・ジ・ブリタニア」

不意の声は背後からであった。
永遠に続くかと思われたシャルルの笑いがピタリと止まった。
静かに振り返る。
そこには二人の少年がいた。
1人は闇のように黒いマントの裾をなびかせ、ゆっくりとこちらに向かってくる。
もう一人は黒いコートをなびかせ、腰には刀を携え、共にこちらに向かってくる。
傲然とした笑みを浮かべた彼の息子、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。
そして、切れるような鋭い視線をこちらに向けているかつて狂王と呼ばれたもの、ライ・エス・ブリタニア。
これが本来のライの本名だった。
ある程度の距離まで近づいた二人は立ち止まり、ルルーシュが言い放つ。

「決着をつけるべきは神ではない。この俺だ」

笑みの絶えていたシャルルの顔が再びにいと笑った。

「どのようにして?銃でも剣でもギアスでも、このわしを殺す事はできぬというのに」

「それはどうかな?」

口にしたのは今度はライの方だった。
すると、ポケットからあの柄だけの刀と剣を取り出す。

「まさか、それは…!」

それが何なのか気づいたシャルルは目を見開く。
直後、ライを光が包む。
そして、その光は柄だけの刀と剣から発せられている。
しばらくして、光が収まり、ライの手にあったのは刀身のある刀と剣だった。
刀はの刀身は白銀に光り、剣は金色に輝いている。

「これが何なのか、ギアス 嚮団に関わっていたあなたなら知っているな?」

「神刀『天羽々斬』、そして神剣『フェニックス』……!」

「そう、かつて王だった頃僕が所有していた刀と剣。どちらとも、神が作り、そしてコードを持つ者でさえも断つ事ができると言われている唯一の武器だ」

そこでライはフッと苦笑した。

「と言っても、今の所僕しか扱えない代物だが。適合するものが極端に少ないからな」

シャルルは歯噛みした。
まさかあの後 嚮団でこれを見つけていようとは…!

「そして、貴様がこの場所に入ってくれたおかげで、保険をかける事もできた」

「何?」

ルルーシュが口にした直後だった。
辺りに響き渡ったのは、耳をつんざく大音響。
続いて空間そのものが激しく震動する。
そして、この黄昏の間と現実世界を繋ぐ、あの神根島の遺跡の扉周辺では大爆発が起きていた。
呼応して、空間全体に走るスパーク。
空に走ったのは不吉な稲妻。

「っ!出口を封じた?」

シャルルが言い、ルルーシュはさらに高笑いした。

「そうだ。ギアスも貴様も俺とライと共にこの空間に閉じ込める。現実世界に干渉できなくなれば、例え死ななかったとしても、貴様が何を企んでいようと意味 をなさない。死んだも同然だ」

「ルルーシュゥ!ライィ!貴様らぁ!」

この時出口を封じたのはシャルルの逃走を防ぐと同時に自分達の退路をと断つためでもあった。
もちろんライの言う神剣で殺せなかった場合の保険もある。
しかし、ナナリーを失ったルルーシュは絶望しきっており、今自分の命さえも軽いものだった。
そして、これはその覚悟をさらに後押しするためのものでもあったのだ。
ただそれに関しては自暴自棄の自殺行為にほぼ等しい行動とも言えた。
だが、それを今気にするルルーシュとライではなかった。

「貴様が造ったこのシステムが貴様自身を閉じ込める魂の牢獄となった。さあ、俺と共に死ぬまで永遠の懺悔に苦しむがいい!」

ルルーシュとライはこれに全てを賭けていた。

























あとがき


今回は第19話をお送りしました。
今回は更新までにおもしろいゲームに熱中していたり、勉強で忙しいやら何やらで投稿が遅くなってしまいました。
楽しみにしていてくれる読者の方には申し訳ないです。
と言っても、更新から一ヶ月までには更新ができた訳ですが。
ですが、ちゃんと執筆はしていますので、気長に待っていてください。

さて、今回も続きをお送りした訳ですが、まあ大筋は原作通りです。
という事で今回は細かい所を解説していきたいと思います。
まずはルルーシュの電話の相手がシャーリーに変わった事ですね。
シャーリー生きているんですから、ルルーシュが電話しても不思議じゃないだろうという事でこうさせてもらいました。
ルルーシュの彼女を想ってはっきりと言わないところが個人的にいいと思います。
次はライとビスマルクの生身での対決ですね。
以前そういう関連の質問してきた方がいたので、答えたからおわかりの方もいると思いますが、一回やってみたかったので、書かせてもらいました。
後スザクを殴り飛ばすのも。
この場面で一回はこういうのをしてみたいと考えてました(笑)
私としては、それなりに上手く書けたと思ったのですが、燃えたり楽しんでくれたなら嬉しいです。
ちなみにその後、ライが忽然と姿を消したのは、実はライの持つ技の一つ『新月』の効果です。
これは一々名前を言う技ではないので、言わなかったというのが理由ですね。
後、状況的にも。
それで『新月』という技ですが、一言で言うと気配を消す技です。
正確には、使用者を極限まで認識できなくし、かつ存在を薄くし、再度の認識を困難にさせるというものです。
技の原理はミスディレクションと同じと思ってもらっていいかと。
本編の状況で説明すると、ビスマルクが状況の把握やスザクに気を取られている隙を付き、使用したという事ですね。
だから、ビスマルクはいつの間にかライがいなくなったと認識したという事です。
最後に以前14話でちらりと書いた刀身なしの刀と剣の正体が明らかになりました。
まあ、能力は本編に書いている通りです。
ただし、二本に共通する能力としてですが。
実は他にそれぞれの刀と剣の固有能力がもう一つ存在します。
それは本編中に登場するかはわかりませんが、登場しなかった場合は後に設定として書かせてもらいますね。
もちろん使える条件はあるのですが、とりあえず触りとして今の時点でライにしか扱えないという事です。
細かい事はまた機会があれば、説明させてもらいますね。

という事で細かい所で違った今回でしたが、どうだったでしょうか?
まあ毎回に言える事なんですけどね(苦笑)
今回は繋ぎとしての意味合いが大きい話でしたが、楽しんで頂ければ幸いです。

さて、次回はいよいよあの…!
ルルーシュとシャルルの決着の話です!
ルルーシュメインの話ですが、ライももちろん活躍します。
さらにライの神刀と神剣の謎もさらに明らかにされるので、そういう所も見所です。
そして、シャルルと対峙した結果、ルルーシュは、ライはどうするのか!?
結果を気にしている読者の方には目を離せない次回。
気になる方は是非次回を見てくださいね!

今回もたくさんの感想とWEB拍手ありがとうございました!
今でもたくさんの読者の方々が読んでいてくださって嬉しく思います。
さて、今回もWEB拍手に感想をくれた方に返事をしていきたいと思います。


>> ファルーシュさん
期待通りであったようで、ホッとしました。
ライVS四聖剣&藤堂が実現するかどうかはまだ先の話ですね。
続きを楽しみにしていてください。
それでわかりますので。
楽しみで暴走してくれているのは、私としては嬉しいです。
いいのかは置いておいて。
伏線としては色々あるのですが、そういう所が捻りがあるのかないのかも含めて楽しみにしておいてください。
次回も頑張って投稿していきますので、よろしくお願いします。

>> もちさん
はい、ロロ死んでしまいました。
まあ、確かにその病みっぷりが危うかったんですよね……。

>> ラギアクルスさん
ツッコミだけで良かったですか……。
まあ、そう言われて少し救われた気がしました。
ありがとうございます。
扇がお役ごめんになるかどうかは続きでわかるので、見ていてくださいね。

>> 郷王さん
はい、突っ込みどころは突っ込ませてもらいました。
まあ、色々と疑問に思う事が多いですが、そこはシュナイゼルの巧みな話術の成せる技ですね。
ギアスと疑いたくもなるのもわかります……。
上手すぎますもんね。

>> ナナシさん
さて、今回の話であの方が誰かわかってくれたと思います。
それで楽しんでもらえたなら私としては嬉しいです。

>> リッチさん
前回の話で、原作での嫌いな感じがスッキリしたようで、私としては嬉しいです。
後、描写についての指摘もありがとうございます。
こういう出し方もあったのかと改めて納得しました。
期待されまくりな私の作品ですが、私なりに頑張っていきますので、これからも応援よろしくお願いします。

>> RRさん
ありがとうございます。
今回も楽しんで頂けたなら何よりです。

>> スザクさん
本当にウルフ大好きなんですね。
私としては嬉しいです。
今回はウルフは出ませんでしたが、まだ出る機会はあるので楽しみにしていてください。
ロロは死んでも物語は続くので、是非見ていてくださいね。
最近は暑さは和らいできたので、活動はしやすくなりました。
これからも応援よろしくお願いします。

>> 拳王侵攻隊さん
ごもっともな意見ですね。
ただ、主人公の周辺って絶対高亥のような外見には大抵なりませんからね。
難しい所ではあります。
私としては、気に入ればいいとは思うんですが、話題にのぼるのは難しいかもしれませんね。
まあ、共通している人がいればそれもあると思うのですが。
結構難しい話なんでコメントが曖昧になってすいません。
全員生存という意味も含めてこういうのを考えるのは確かに興味深いところはありますね。

>> ファルーシュさん
二回目の感想ですね。
続きを気にして読み返してくれているなんて、とても嬉しいです。
それに比べて私の更新速度が遅い……(汗)
少し申し訳ない気分です(汗)
星刻がどう出るかも気になる所ですね。
ライについていく人がいるかどうかは、続きを見て確認してくださいね。

>> YAMAさん
本当にそうですよね。
ライがギアス使いらしきことをほのめかしていたのは、伏線かどうか?
それは続きを見て判断してくださいね。
話したら伏線じゃなくなるんで(苦笑)
ジェレミアに頼んだのは……何なんでしょうね。
これも話せません。
しかし、これは時期が来たらまた話させて頂きます。
ライがいれば、スザクがいらないというのを見てつい私も「確かに」と思ってしまいました。
そんな私にちょっと自己嫌悪もしてしまいました。
いらない発言は良くないですね、はい。
と言いつつも、スザクの出番は減っています(笑)
今回も楽しんで頂けたなら嬉しいです。

>> おぼろ月さん
初めて感想をくれた方ですね。
ありがとうございます。
私の作品の影響でギアスのゲームを買ってくれるなんて……なんて嬉しい事でしょう。
おぼろ月さんが初めてではないのですが、こういう影響を受けてくれる人がいるという事はとても嬉しい事です。
確かに二次とはいえ、こういう小説を書くのは難しいです。
私もこういう作品を書けるまで長い年月を要しましたから。
それにこんな私の作品を素晴らしいと同時に憧れていると言って頂けて大変嬉しく思います。
と言っても、私もまだまだで表現したい事が書けないなんて時もあります。
褒めてくださってはいますが、こんな私でもまだまだ要精進って事ですね。
ちなみに私にコツとか聞きたい場合とかあれば、遠慮なく言ってください。
こんな私でも、実は他人の作品を評価したりした事はありますので。
もちろん、良ければですので。
そして、完結までこれからも頑張っていきますので応援よろしくお願いします!

>> ムックさん
これは質問ですね。
卜部は……まあ黒の騎士団に残る事になります。
意外にも登場場面が少ないので、この際言っておきますね。
ただ、彼は彼でライやゼロの真意を確かめようとします。
どういった方法で確かめようとするかは続きを見てご覧になってくださいね。

>> ナナシさん
二回目の拍手ですね。
ちなみに今回はライの新型機の案の提供といった所でしょうか。
ありがとうございます。
アイデアの一つとしてはアリですね。
支援機との合体などの発想は私にはない斬新なものだと思います。
もちろんやりすぎなところもあるのですが、私もやりすぎなところがあるので、別に気にしませんでした。
そこは二次の醍醐味と言ってもいいので。
ライの特徴や敵の対策を踏まえたいいアイデアですね。
続きと新型が気になって書いてくれたと言ったところでしょうか。
果たして新型がこのアイデアの影響を受けるか、それとも私の案でいくのかは続きを見てくださいね。
恐らく2ヶ月ぐらいの間には、新型が明らかになりますから。
楽しみにしていてくださいね。

>> レイさん
ありがとうございます。
今回も楽しんでもらえたら嬉しいです。
最終回がどうなるか……それはその目で確かめてくださいね。
ハッピーエンドかは見て確かめてもらうのが一番ですから。


これでコメントへの返信は終わりです。
今回は前回にも増してたくさんの方が感想を書いてくれました。
同じ人が二回書いてくれた人も少々いるくらいです。
私としては、とても嬉しい事です。
これからも感想など頂ければとてもありがたいです。
これからの投稿はまたいつも通りの期間の投稿に戻ってしまいますが、気長に待っていてください。
更新は完結するまで必ずしますので。
今回も短いですが、なぜなにギアスをあとがきの後にやるので、是非ご覧になってください。
それでは、今回のあとがきはこれで終わりにしたいと思います。
また次回で。
暑さは和らいできましたが、気温の変動が激しいので、体調管理には充分お気をつけて。























なぜなにギアス

ラ「はい、という事で今回も始まりました『なぜなにギアス』。今回も読者様のために全力でお届けしたいと思います。では、まずゲストの方の紹介です。どう ぞ!」

C.C.(以降C)「何だ、ライ。私は忙しいんだ。なのに何故呼ぶ?」

ラ「いや、だって監督(作者)の指示だし。ってこのやり取り前にもしたような……。とにかく、後でピザでも買ってあげるから今はこのコーナーに集中してく れ」

C「!……なら仕方ない。付き合ってやるとしよう」

ラ「(前も確かこんな感じで釣ったような……。少し罪悪感があるのは気のせいだろうか……)」

C「おい、どうしたライ?始めるのだろう?」

ラ「あ、ああ。それでは質問に参りたいと思います。『ライのギアスって回数制限はあるんですか?』という質問です。提供してくださった縮図さんありがとう ございます」

C「ってそれはおまえに対する質問だぞ」

ラ「そうなんだよね。って事でこれには僕がお答えしたいと思います。答えは、あります。TURN-12でシャーリーにかけようとしたのは、何らかのきっか けで彼女にかけたギアスが解けている事がわかったからですね。だから、使おうかと考えた。そういう事です。後の質問は本編というよりもゲームに関するもの ですが、確かにその辺りの矛盾点がありますよね。という事は恐らく遺跡を通した時にはその回数制限の影響がなくなるって事でしょう。やっておいた僕が言う のも何ですけど、その仕組みについてはあまりわからないもので……すいません」

C「まあ、曖昧なのは許してやってくれ。元々こういう奴だからな」

ラ「うぅ……すいません。ちなみに禊手についての質問もあったのですが、まだネタバレになる段階なので、コメントは控えさせてもらいますね」

C「さて、今回はこの質問だけをお送りした訳だが、どうだったかな?今回のは以前のと違い不透明な回答だったが、納得して頂けると私としてもライとしても ありがたい」

ラ「本当にそうしていただけるとありがたいです。さて、次回ですが、次回はこのコーナーは休みとさせて頂きます。ネタがないのもありますが、監督(作者) が忙しいようなので。ついにこの決断に踏み切ったそうです。もし、原作のこんなの知りたいなどの質問がある方は是非、拍手や掲示板などでお寄せください。 では、またこのコーナーがあれば、お会いしましょう!このコーナーはライと!」

C「私がお送りした」

ラ「またね!」


なぜなにギアス 〜終わり〜

※ギアスの回数制限に関する、原作であるゲームの矛盾点についての説明は、作者の想像で書いている部分があります。さすがにそういう部分は設定では書いて いなかったので。ただ絶対遵守のギアスは回数制限があるような事が言われているので、作者はその設定に準拠してお答えしています。つまり、この作品の主人 公のライのギアスは回数制限がちゃんとあります。回数制限がなければ、恐らく能力としては間違いなく最強になってしまいますので。その旨を理解していただ いた上で、納得していただけたのならありがたいです。以上を注意書きとして加えさせていただきます。



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