コードギアス反逆のルルーシュR2
              Double  Rebellion














FINAL-TURN Re:birth


ここはとある田舎のオレンジ畑。
ルルーシュ皇帝の騎士だったジェレミア・ゴッドバルトは、今騎士という位を捨て、この場所でのどかに暮らしていた。
そこには、アーニャ・アールストレイムとライが身代わりとなったルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが同居している。
ライは、自分が身代わりとなった後、ルルーシュを人目のないところで世話をしてほしいと遺言を残していた。
「人目には出られなくなってしまうが、それでも僕はルルーシュに生きてほしい」、それがライの願いだったのだ。
そして、ライがいないとジェレミアと一緒に住み始めた時にわかっていたアーニャもナイトオブラウンズと騎士を辞め、ここでオレンジ畑の栽培の手伝いをして いる。
と言っても、恋人であるライを失った代償は大きく、アーニャには元気がなかった。
第三者から見てもわからないだろうが、まるで以前の彼女に戻ったように、いや、さらに口数が少なくなっていた。
それに、ルルーシュも元気がないのは一緒で、目が覚め、ライが死んだとわかった後、しばらくはかなり荒れたが、今はジェレミアの家の地下で大人しくしてい る。
元気がないのはこちらも一緒だった。
これにあえて、ジェレミアは何も言わず、彼ら自身で自分の気持ちを整理させるように努めていた。
まだ若い少女と我が主を思う故の行動である。
そして、現在、日本で行われた歴史的会談から数日が経っていた。


























ライが死んだとわかったあの日からアーニャはずっとある事を考えていた。
最後の戦いで本当にシュナイゼル側についてよかったのか?
もし、ライの側に付いていたら彼を救えたのではないか?
どこで、どう選択を間違えてしまったのか?

ライと最初に出会ったのは、互いに学生として。
そこで、接する内に恋人となった。
だが、後になって、ライが前々から敵だったとわかり、ラウンズとして戦わなければならなかった。
その後、黒の騎士団からライがいなくなったという事がわかった。
ライの行方がわかった時、既に彼はルルーシュ皇帝の騎士、ナイトオブゼロになっていた。
そして、ライと戦った。

だが、その中でどう選択を間違ったのかなんて、いくら考えてもわかるはずがなかった。
どこをどう仮定して考えてみても、答えが出ないの繰り返し。
考えれば、考える程わからなくなってくる。
涙が出てくる。
だから、アーニャは昼間ジェレミアのオレンジ畑の栽培を手伝って、体を動かす事で考える事をやめにしていた。
熱中すれば、考える暇もないし、その考えが一時的にでも頭の中から消えるからであった。
しかし、夜になって1人になると、どうしてもその考えが頭の中に浮かんでしまい、密かにベッドの上で泣いて寝るという日々。
そんな事の繰り返しだった。
そして、今もベッドの上でそれらの事を考えていた。

「私……バカ」

アーニャは思わず呟く。
世界はいい方向に向かっているというのに……。
私の人生はこんなにもつまらないものだったのだろうか。
ライが死んだとわかってから、心の中に大きな穴が空いたようだった。
ライの意志に気づいたのはその後。
ジェレミアに聞かされてから。
だが、その時には既にあまりにも遅かった。
心の穴は広がっていく一方だった。
そして、どうしても最後にライに好きだと再びちゃんとした言葉で伝えられなかった事がアーニャの心残りだった。
あんなにも彼は自分を好きだと言ってくれたのに。

(私はライが……好きだったのに…)

心の中で、アーニャはそう呟く。
もういない大好きで、大切な人への愛と心残りが、今アーニャの足を止めていた。
大切な人を失った彼女は、まだ己の足で前に進めないでいる。


























そして、ルルーシュもアーニャと似たような状態だった。
どうしてあの時自分はライの意図がわからなかったのだろうか。
てっきりゼロレクイエムという計画に賛同してくれたと思っていた。
確かに、一度止められはしたが、方法はこれしかないという事もライは気づいていたため、結局ゼロレクイエムという方法を選んだ。
そして、俺が犠牲になれば、それで終わりのはずだった。
しかし、ライは、あいつはこの計画に納得などしていなかったのだ。
だから、最後に俺の身代わりとして、自分の意思を貫き通した。
結果、ライが見事に最後まで俺を演じ切る事で、世界は話し合いという一つの方向に向かいつつある。
俺はライに感謝している。
人目にもう出られないとはいえ、こうして生きていられるのは紛れもなくライのおかげなのだから。
だが、頭では納得できていても、心では納得できないところがあった。
どうしてライは自身が犠牲になる事を選んでしまったのか、どうして自分はそれを止められなかったのか。
そして、ライの死体はどこに行ってしまったのか。
実は、俺に扮したライの遺体はあの民衆が押しかけてきた騒ぎでいつの間にか消えていたのだ。
民衆によって引き離されたというのもあったらしいが、それっきりライの遺体の行方は全くとして知れなかった。
せめて、最後にライの顔だけでも見たかったのだが、それすら叶わなかった。
それがルルーシュの心残りであった。

そして、ルルーシュがジェレミアに用意された地下室のベッドの上で佇んでいると、地下室の部屋に入ってきた者がいた。

「C.C.……?どうしてここに……」

「何、旅の途中に寄っただけだ。にしても、まだライの事を引きずっているのか?情けないな、おまえは」

「……わかっている。失うはずだった俺の命をライは生かしてくれた。その事には感謝している。だが、ライが俺の代わりに命を落とす必要はどこにもなかった はずなんだ……。あいつが過去に狂王だったとしても。それだけが納得できないんだよ……。悔いるところは多いが、あいつの思いに気づけなかったこれが俺の 罰なのかもしれないな……」

そう言うルルーシュにC.C.は内心ため息をついた。

(思ったより重傷かもしれんな。それは上にいたあいつも一緒のようだが)

あいつとはちなみにアーニャの事である。

(やはり私の思ったようにした方がいいだろう。ライには悪いが、それがいい方に転ぶ)

そう思ったC.C.は口を開いた。

「もし、おまえが納得できないなら私と来るか?とっておきの情報を教えてやる」

「とっておき…だと?」

「ああ、とっておきだ」

そう言ったC.C.は微笑んでいた。



























ここはとある森の中。
そこに1人の青年が歩いていた。
綺麗な銀髪をなびかせ、黒い服とズボンの上には白いコートを羽織っている。
そして、肩には軽めの荷物をナップサックのような鞄に入れて担いでいた。
その青年がしばらく歩き、森の外に出たところである人物に出迎えられた。

「は〜い、ライ君。お疲れ様」

そう言って、死んだはずの青年の名前を呼んだのはロイド・アスプルンドだった。
そして、そう呼ばれた青年は笑顔で答える。

「いえ、ロイドさんこそ、僕の機体の整備は大変だったでしょう。ありがとうございます」

その青年はライと呼ばれた事を否定しなかった。
そう、実はライは死んでいなかったのである。
では、何故死ななかったのか?
それは、彼の改造された体が原因だった。

ライの体は、ウルフという破壊衝動を仕込まれている。
それは、もう一人のライとなっている訳だが、実はウルフを入れる際に改造されていた体にもう一つの特徴があった。
ライの体は、筋力、敏捷性などにおいてオーバースペックなのは、改造された経緯から明らかになっている。
しかし、それだけではなく、ライの体は治癒能力においてもオーバースペックだったのだ。
つまり、再生速度が普通の人間よりも遥かに速いのである。
それこそ、体を銃弾で貫かれようが、心臓を剣で刺されようが、すぐに再生してしまうため、まず死なない。
つまり、ほぼ不死身なのだ。
ただ、C.C.と違う点では、年はとるのと、後、頭を貫かれればさすがに死ぬという事だ。
さすがに脳の複雑な細胞までは再生できないのだ。
それが理由で、ライは頭を殺られない限り、物理的な要因で死ぬ事はなくなっていたのだ。
ちなみに以前、目覚めた時にこの能力が発動しなかったのは、おそらくウルフの事を知らなかったためだと思われる。
これは、ライ自身にもわからない事だったが、おそらくウルフの存在を認識できていなかった事が、再生能力自体のほとんどを封印していたのだろうと推測して いる。
知らない能力が使われないというのは、よくある話なのだ。
つまり、この再生速度はウルフがあってこその能力だという事だった。

だが、そこで疑問が浮かんでくる。
何故、あの時ナナリーに死んだと判断されたのか?
それは、ライが刺されて落ち、ナナリーに伝える事を伝えた後、自ら仮死状態に入ったからだ。
幸い、再生能力が常識を逸していると言っても、箇所によってはそれなりの血が出る。
それで、外見的には致命傷だと判断させることが充分に可能だった。
傷は治ってしまうが、噴出した血はそのままなので、それなりの演技を合わせれば、充分に周りに死んだと思わせる事は可能だった。
そして、結果的にそれは成功し、パレードの後、騒ぎに乗じてこの事を伝えていた一部の部下に自分を回収させ、人目のないところで、ライは目を覚ましたの だった。

ちなみに、ライが今まで親しい者にもこの事を話さなかったのは、この時のためでもあるが、実際は化け物扱いさせるのが怖かったからである。
致命傷を負っても、平気な顔でいられる存在だ。
この事を知った人達は、必ず自分を避けるだろうし、場合によっては忌避してくる。
興味を持った者は利用してくる事さえありうる。
ライの存在は一つの兵器なのだ。
だからこそ、なるべく傷は負わないようにし、負ったとしても、治ったという事を隠す事にしていた。
例えば、以前星刻から負った肩の傷も彼が去った時には既にほぼ治っており、ライは先に自分でその部分に一通りの治療をしたように見せかけて、包帯を巻いて いたのだ。
それで、今までこの能力は誰にもバレずに済んだのだ。

そして、ライはあの最終決戦でルルーシュには生きていてほしいという自分の本心を知り、あえてこの能力を使って、彼の代わりになる事で、世界を話し合いと いう一つの方向へと向けさせたのだ。
親友も自分も死なずにゼロレクイエムを完成させるには、これが一番の方法だったのだ。
もちろん、一瞬でもミスれば、そこで計画自体が歪んでしまう可能性もあった。
しかし、ライは自らに課したその使命を見事に果たし、今こうして生きているのであった。
結果的に、皆を騙す事になってしまったが、ライはこの事を言わずに、以前ルルーシュに言われた事を密かに実行し、愛機の天月と共に身元を隠して世界を見て 回るという事をしていた。
そして、今は愛機の天月を、メンテナンスとして、ロイドに預け、受け取りにきていた。
もちろん、ロイドはライの再生能力の事を知っており、ライが生きているという本当の真実を誰にも話さないという契約でライに協力していた。
ロイドにとっての報酬は、天月を触れる事だという。

「僕としては未来の新型に触れられるというのは、とても嬉しい事だからね。願ってもない事だよ。まあ、欲を言えば、一度君のその体も調べてみたいんだけど ね」

それにライは冷や汗を流した。

「それは、勘弁してください。もう体を調べられるのはこりごりですから(汗)」

「そっか……それは残念」

この時ライは、本気で残念がっているロイドを少し怖いと思った。
科学者魂恐るべしである。

「それで、天月は?」

「うん、それならこの先の開けた場所に置いてあるよ。別に人は来ない所だから心配しないで」

ロイドが天月を見ている場所は以前、ライが田舎のある場所に作った地下基地である。
なので、そこをロイドが利用し、天月を整備してくれるので、外に出してもまず他の人間の目に触れる事はないのだ。

「そうですか、なら僕はそろそろ行きますね」

そう言って、ライはロイドの横を通り過ぎた。
そして、ライが少し歩いたところで、ロイドが言ってくる。

「君が生きている事、本当に伝えなくていいのかい?」

ライは振り返って苦笑した。

「えぇ。この世界に僕は本来いてはならないはずの存在です。だからこれからはライでもない他ならぬ影として、この世界をずっと見守っていきたいと思ってい ます。だから、何度も言うようですけど、この事は皆には内緒にしておいてください。主だった人物はゼロレクイエムの真実をご存知でしょうから、僕が生きて いるとなると、また事態を混乱させかねませんからね」

「わかった。君がいいなら、それでいいんだ」

「では、失礼します」

そう言って、ライは礼をすると、今度こそ去って行った。
それをロイドは見送ると、通信端末を取り出した。
そして、通信機を通して相手に話しかける。

「こっちは予定通りライ君を所定の場所まで送ったよ。でも、いいのかい?ライ君の意思を無視して」

『ああ。あいつには残された者がどんな思いをしているのか、知ってもらう必要があるからな。それに、ライが思ってる程、他の奴らはライの事を悪く思ってな いし、それほど事態を混乱させる事もない』

通信相手はC.C.だった。
実は、彼女はルルーシュ達などのライの親しかった人物にライが生きている事を知らせ、その事をC.C.と同じように知っていたロイドに、ルルーシュが思い ついた計画に協力させていたのだ。
C.C.もライから聞いていて、生きている事は知っていたが、彼女はギアス能力者の位置もわかるので、生きている事自体話さなくても彼女には筒抜けなので ある。
そのC.C.も他言無用と言われていたのだが、まあ個人的な理由でライを思いっきり裏切っていた。
この場合はいい裏切りなのだろうが。
もちろん、ライはそんな事全く知らない。

「なら、僕の役目はここまでかな。後はよろしくね〜」

そう言って、ロイドは通信を切った。
そして、ロイドはそそくさと自分の研究所に帰っていく。
今日も空は青く晴れ渡っている。

























ライはロイドに言われた通り、先にあった少し開いた平原に出た。
だが、そこでライは目を見開いて絶句している。
確かに天月はある。
だが、その前にいる人達が問題だった。

「な…んで……」

やっと出た言葉がそれだった。
目の前には、ルルーシュ、C.C.、スザク、カレン、ナナリー、アーニャ、ジノ、生徒会の皆、元黒の騎士団の人達などライと親しかった者達がいたのだ。
何故、この場所に彼らがいるのか。
ライには、すぐに見当がついたが、驚くあまりまともな言葉を発せられないでいた。
そんな中、ルルーシュが言葉を発した。

「ライ……本当に…生きて…いたのか……」

そう言うルルーシュも驚きと共に喜びの表情を浮かべている。
そんなルルーシュに、C.C.は軽口を言う。

「何だ、私の言葉が信用できなかったのか?」

その言葉にルルーシュはムッとした。

「そうじゃない。直接見られるまで、完全に信じられなかっただけだ」

それも同じだろと思ったC.C.だったが、言わないでおいた。
その時、黒の騎士団の皆や生徒会の皆がライに向かって駆け出す。
もちろん、冷静な人達はそこまでしていないが。
そして、ライはすぐに玉城や杉山、ミレイやリヴァル、シャーリーなどにもみくちゃにされた。

「この野郎!生きていたなら、生きてるって言えよ!」

「全く、その通りだ!」

「ライ、本当に悲しかったんだからね!」

「そうだぞ!それなのに、生きてるって事黙っていやがって!」

「本当に、私も悲しかったんだから!でも、生きてて良かった……!」

と口々に言いながら、ライをもみくちゃにする。

「いや、あの…ちょっと皆……痛い……」

ライは思いっきりもみくちゃにされていたが、その顔はどこか嬉しそうだった。
そこへ、藤堂と四聖剣、星刻、ジェレミアがやって来る。
すると、皆もみくちゃにするのをやめて、ライをその人達の前に押し出した。

「藤堂さん……四聖剣の皆さん……」

「ライ君、本当に生きていたんだな」

「はい。こんな体ですから、死に切れませんでした」

苦笑しながら言う、ライに今度は四聖剣のメンバーが口々に言う。

「何言ってるんだよ。君が生きてくれて本当によかったって思ってるんだ」

「そういう言葉は感心しないぞ」

朝比奈と卜部にそう言われる。
ライはさすがに言い方が悪かったと思い、謝る。

「すいません」

「まあ、君が生きていたなら良し。まだ若い者が死ぬには早いからのう」

「全くだ。おまえが敵対した理由がわかったからこうしていられるが、今度はもっと私達を頼るようにしろ。いいな?」

「わかりました」

ライは仙波と千葉の言葉にそう答えると、星刻に向く。

「お久しぶり…ですね。星刻さん」

「ああ……そうだな。君には随分世話になった」

「治療…上手くいってますか?」

「おかげさまでな。そう言えば、天子様が君に礼をと言っておられた。『星刻の治療データの事、ありがとう』とな」

「礼には及びませんよ。僕が勝手にした事ですから」

「それでも……だ」

「……なら、ありがたく頂いておきます」

そう言って、礼をすると、今度はジェレミアにライは顔を向けた。

「ジェレミア郷、あなたには本当に迷惑ばかりかけてしまったようで……すいませんでした」

だが、ライの言葉を気にする事もなく、ジェレミアは応えた。

「何、私は我が主ルルーシュ様のためと思ってやった事。君に協力したのは、それがあったからにすぎない。だが、君は生きている事はちゃんと言っておいてく れないと困るな。私が嘘を言ってしまった事になる」

「そうですね……もうこういう事はしないようにしますよ」

「ああ、それでいい。……早く行くといい。私の他にも言うべき者がたくさんいるだろう」

「はい」

そう言って、ライは笑顔で応えると、今度は自ら足を進めて、カレンとジノの前に立った。

「なんか、こうやって会うのは久しぶりだな」

「ホント、今まで何してたの?生きてるって言ってくれても良かったじゃない」

「全くだ、皆結構ショックだったんだぜ?」

カレンとジノの責め口調にライは苦笑した。

「世界を旅してたんだ。まあ……生きてるって言わなかった事については謝るよ。すまない」

「その謝り方……なんか納得いかないわね……」

カレンが不機嫌そうに呟く。

「えぇ!?」

嫌な予感がすると同時に驚いたライだったが、カレンはライの素っ頓狂な声を聞いた後、息を吐いた。

「……いいわ。今回はお咎めなしにしておいてあげる。けど、今度からはちゃんと連絡をしなさい。いいわね?」

「ああ、わかった」

言って、ライが苦笑すると、ジノが話しかけてくる。

「あ、後、今度またおもしろい場所連れて行ってくれよ」

「あれ?ジノは既におもしろい場所行ってるんじゃないのか?なんか凄い記録に挑戦してるような事聞いたよ」

(なんかエベレストのような高い山を登ってると風の噂で聞いたが……)

「アレは別だ。それに、おまえには俺達に生きている事を知らせていなかった罪がある。これは、その貸しの分だ」

「……わかったよ」

「じゃあ、さっさと行ってやれ。おまえのフィアンセがお待ちだぜ?」

「いや、フィアンセって……」

ジノの言葉にライは突っ込もうとしたが、今は野暮かなと思い、すぐにルルーシュ、スザク、ナナリーの前に行った。
だが、なんとも話しかけずらく、ライは口を開く事ができない。
それはそうだ。
この3人を直接的に一番騙していたのだから。
言うべき言葉が見つからない。
すると、ナナリーが先に口を開いた。

「良かった……ライさん。生きていらっしゃったんですね?」

「……ああ。すまない、ナナリー。君を騙す形になってしまって……」

「いえ、ライさんが生きていてくださって本当に良かった……!」

と思うと、ナナリーが嬉しさのあまり泣き出してしまった。
ライがなだめようとすると、すぐ横で殺気を感じた。
ギギギと機械のように、その方向へ顔を向けたライは、次の瞬間、見た。
凄い黒い表情でルルーシュがこちらを見ているのを。
完全に冷や汗だらだらのライである。

「ライ……おまえ…ナナリーを泣かせたな?」

「いや…あの……これは…その……」

上手く状況を切り抜けられる理由が見当たらない。
事実だから、どうしようもないのだ。
しかし、そこでルルーシュはフッと表情を緩めた。

「……だが、まあ今回は許しておいてやる。俺がおまえに命を救われたのもあるしな。だから、ライ……もう二度とこんな真似するなよ?」

「……ああ」

そう言って、ライとルルーシュは笑い合った。
そして、ライはスザクへと向く。

「スザクも……手を下させるような真似をして…すまなかった」

「いや、君が生きていて良かった……。それと……君の事思い出したよ」

「……そうか」

「君の事を思い出したときは驚いたけど、今はそれで良かったと思ってる。友達は大切だから……」

「そうだな、ありがとう。スザク」

そう言うスザクは涙を流している。

「なんだスザク、泣いてるのか?」

そこへルルーシュが軽口を入れる。
スザクは涙を拭きながら言った。

「嬉しいんだからいいじゃないか」

「……そうだな」

そう言って、ルルーシュも微笑んだ。
すると、ナナリーがライの前に出て、手を差し出してきた。

「ライさん、これを……」

「これは……」

ナナリーの手の中にあったのは、以前2人で折った折り紙の桜と同じ物だった。
かつて彼女に教えたように、綺麗に折られている。

「お守りとして持っていてください。あなたが生きていると聞かされて、頑張って折りました」

「そうか……ありがとう、ナナリー」

お礼を言ったライが見たのは、眩しいくらいのナナリーの笑顔だった。
ナナリーが桜を渡したのを見届けた後、ルルーシュがライに話しかける。

「ライ、行ってこい。2人が待ってる」

「ああ、そうさせてもらうよ」

ルルーシュにそう応えると、ライは歩き出した。
それを見て、ルルーシュが呟く。

「本当に……戻ってきたんだな」

「そうだね。でも、前よりもたくましく見えるよ」

「そうですね」

ルルーシュの言葉にスザクとナナリーもそう思うのだった。
それは、ライがようやく自分のために生きているからかもしれない。





















そして、ライは最後にC.C.とアーニャの前に出た。
その瞬間、アーニャがライに飛び込んでくる。

「ライ……!」

がばっと飛び込んでくるアーニャをライはとっさに受け止める。
そこで、彼女に何か言おうとしたライだったが、一旦やめた。
自分に抱きついた彼女が、泣いているのがわかったからだ。
抱きついた拍子で、顔が隠れているので、表情はわからないが、雰囲気と時折聞こえてくる泣き声と嗚咽でそれがわかったのだ。

「良かった……グスッ………ライ……ヒック……」

自分が生きていた事を喜ぶと同時に、自分の死でこんなにも彼女を苦しめていた事にライは気が付いた。
だから、優しくライはアーニャの頭を撫でた。

「すまない……。アーニャにはつらい思いばかりさせてしまったな」

そう言って、優しく頭を撫で続けていると、それを見ていたC.C.が口を開いた。

「全く、おまえは本当に罪作りな奴だな」

その言葉にライはフッと苦笑する。

「C.C.、君だろ?皆に僕が生きている事を教えたの」

「ほう、何故わかった?」

そのC.C.の確認にライは微笑んだ。

「わかるさ。ロイドさんはあまりこういう事に興味は持たないからね。まずバラす事はない。なら、自分の都合でよく動くC.C.がバラしたという事になる。 元々僕の生存を教えている人は少なかったからね。単純な消去法でもできるさ。ただ……」

「ただ?」

「君の事はよくわかってる。だから、ここに皆がいた時に君がバラしたと確信したのさ」

ライの最後の言葉にC.C.はフッと笑った。
そして、皮肉を加えて言ってくる。

「なら、言わない方が良かったか?」

その言葉にライは真剣に答えた。

「……確かに最初は計画に歪みが生じると思って、僕の生存は知らせないようにしていた。でも、今皆に会えて、アーニャやC.C.に会えて、良かったと思う よ。心からそう思う」

「そうか……」

すると、そこでようやくアーニャが泣き止んでライからやや離れる。
そして、彼女は口を開いた。

「ライ……そろそろ決めてほしい事があるの……」

えらく真剣なアーニャの表情だったが、ライにはその決めてほしい事が何なのかわからなかった。

「?…決めてほしい事?」

「そうだ」

問い返したライに、今度はC.C.が応えた。
どうやらC.C.にも関係がある事らしい。
すると、アーニャがその内容を口にした。

「……私とC.C.、どっちと付き合うのか。いい加減にはっきり決めて」

「………ええええぇぇぇぇぇぇぇ!!?」

ライはその言葉に凄く驚いた。
さっきまでの雰囲気ぶち壊しである。
それに何でアーニャがC.C.と自分の関係を知っているのかわからない。
というかこんな事を聞かれるなんて思わなかった。

「C.C.、喋ったの?」

ライは深くC.C.に聞かなかったが、彼女にはそれで全部わかったらしく、肯定した。

「ああ。ライは私のものだとはっきり言ってやった」

「……(汗)全く…君って人は……」

そんな感じで頭を抱えるライだったが、アーニャが迫ってきた。

「ねぇ、決めて」

「今…ここで?」

アーニャは頷いた。

「ここで」

そこで、ライはC.C.の方を向いてみる。

「ここで、だ。今すぐ決めろ」

と言われた。
どうやらC.C.もアーニャと同じ思いらしい。
と言っても、いきなりそんな事言われても、決められない。
なんとかこの修羅場を脱しようと、ライは他の人に目線を向けたが……。
無駄だった。
皆微笑ましそうに見ている。
中にはジノやミレイのように楽しそうに見ている人までいる。
全員傍観を決め込むようだ。
この時、ライは初めて皆を恨んだ。
しかし、そんなライの心情を無視して、アーニャとC.C.が迫ってくる。

「ねぇ、私?」

「私がいいんだろ?どうなんだ?」

いつの間にかC.C.にまで近距離まで接近されて、2人一緒に迫られる。
2人の勢いにライは赤くなりながらやや後退したが、2人は迫るばかりで退けそうな状況ではなかった。

(……覚悟を決めるしかないか…)

そう思い、ライは真剣に考えた。
2人の事は好きだ。
愛してもいる。
だが、どちらか決めろと彼女達は迫っている。
当然だ。
ここまでずっと関係を引き伸ばしてきたのだから。
いくら自分が鈍いとはいえ、その思いに気づいていた時点で、それは言い訳にならない。
なら、ここは自分の思いを正直に話すべきだろう。
ずっと自分が彼女達に抱えていた本当の思いを。
だから、ライは口を開いた。

「僕は………」

そして、ライは彼女達に自分の思いを伝えた。
それを聞いた周囲から歓声が湧く。
今、この瞬間、ライ達は幸せだった。
皆互いに心から楽しそうに笑い合える。
そんな皆の心を表すかのように、空は青く晴れ渡っていた。
























あとがき


今回で去年の8月の4000万HIT記念作品として、1年9ヶ月続いたこの作品もいよいよ最終話となりました!
パチパチパチ〜。
という事で改めてここまで応援し、感想を書いてくださった皆さんにお礼を申し上げたいと思います。
本当にありがとうございました!!
14万を超えるアクセスと3千を超えるたくさんのWEB拍手という私としては本当に予想外な大人気でしたが、ここまで続けられたのも読者の皆様のおかげで す。

さて、今回も解説といきたいところですが、本編で結構説明しているので、あまりないですね。
今回で最終話という事で、どんなエンドになるか気になっている方も多かったと思いますが、まあ当然のごとくハッピーエンドでした!
私は暗いバッドよりか嬉しいハッピーなエンドの方が好きですので。
まあ、それに原作のギアスが主人公死んだで終わりというのも、微妙だな〜と思っていたので。
死んだはずのライと親しかった人達が感動の再会!
本当に良かったと個人的には思っています。
その際、今まで引っ張っていたライの体の秘密ですが、やっと全部出し終える事ができました。
正直、ここまで引っ張るのは中々しんどかったので、出せてほっとしています。
コード告いだ方が早いんじゃね?っていう人もいるでしょうが、そこはあえてオリジナルな要素を持たせてみました。
予測できる範囲でやっても面白みがないですからね。
ライが強化人間という事を最大限生かしてみました。
ギアスらしいハッピーエンドな形で終われているようであれば、私としては嬉しい事この上ないです。

という事で今回で最終話な訳ですが。
実は!
読者の皆様に以前からかねて申し上げていた企画をしたいと思います!
それは、本編の後日談、つまりエピローグですね。
それをなんと!
私の考えていた本編筋のエピローグだけでなく、想定しうる限りのエピローグをifという形で実施したいと思います!!
きっかけとしては、読者様の声ですね。
その声にできるだけ応えようと私なりに考えた結果がこれです。
これで、読者の方々のお声に応えられたらいいのですが……。
ヒントとして分岐しうる数は今回の最後で迫っていたC.C.とアーニャにライがどう答えたか!?
これによって分かれるエンドが企画として載る事となっています。
基本ハッピーエンド思考なので、バッドになりうるのは省いています。
え〜と、それについての読み方ですが、更新の際にタイトルである程度判別がつくようになっていますので。
自分がこのエンドが好きだ!という方から先に見て頂けると楽しめると思います。
あくまで本編エピローグ以外はif扱いをしていますが、これも1つのENDですので。
その後気になる方は他のエピローグも見て頂くと。
こんな感じです。
最後まで読者の方々に楽しんで頂けるように用意した企画!
最後まで楽しんで満足して頂ければ、本当に嬉しいです!

では、東北の大震災のおかげで感想は少なくなってしまったものの、感想をくれた読者の方々のために返事をしたいと思います。
今回であとがきに返事を書くのは恐らく最後でしょう。
これより後には掲示板なら掲示板に。
WEB拍手ならWEB拍手に適宜返信していきますので、ご理解の程よろしくお願いします。



>> スザクさん

そのまさかを実は狙っていたんです。
狙い通りで私としては嬉しいです。
そして、今回はハッピーエンドでしたよ!
お気に召したなら、書いた私としても嬉しいです!


>> 波旬さん

お久しぶりですね。
しばらく見てなかったと思っています。
予想外の結末に驚いてくれて、私は嬉しいです!
そして、今回はハッピーエンドでした!!
ライは復活というか、実は死んでいなかったのです!
どうだったでしょうか?
これが私のラストスパートだぁ!!
でも、まだエピローグが残ってたりするので、そちらも楽しみにしていてくださいね。


>> グローバルさん

この一言で私は超感動しました。
こんな事を言って頂けるなんて……。
もう感無量です!!
一番好きで、面白いだなんて……。
本当に嬉しいです!
私としても、終えてしまうのは寂しいのですが…何事にも終わりはくるという物で……。
完結後も気が向いたら見ていただいて、今後もこの作品を好きでいて頂ければ私としては言う事は何もありません。
そして、今回はご希望の通りハッピーエンドでした!!
気にいって頂ければ、ありがたいです。
これからも私の気力と発想が続く限り、書いていきますので、応援よろしくお願いします。
グローバルさんの言うとおり素晴らしい作品をこれからも書けるように頑張っていきますので!!


>> 夕さん

やはりライの死亡は読者の皆さんにとっては予想外だったんですね。
ちなみにナナリーとの再会は確かに長いですが、実際の現実の時間では一瞬に近いものだったので、実は長くないんです。
小説の描写でどうしても長く思えて、微妙になってしまうのは仕方ないんですけどね。
一応、その辺りは説明しておきますね。
今回で最終話という事だったのですが…「読みたい、けど終わってほしくない」と言って頂けて私は本当に超嬉しかったです!
この作品…愛されてるんだなぁって思えて。
その一言で後1年は頑張れそうなんですが、あいにく終わってしまうんですね(苦笑)
ですが、まだ企画が残っているので、それを頑張りたいと思います。
ぶっちゃけ言ってしまうと、アーニャ好きな夕さん向きの話も用意してあります!
好きなのであれば、エピローグは是非そちらを先に見るのをお勧めします!!
ここまで読んで頂いて本当にありがとうございました!


>> あおばさん

そうがっかりする事はありませんよ?
今回を見て頂いたのならわかると思いますが、ちゃんとライも生きています!
やっぱ主人公は生きてないと!という事です。
これを通して、原作のキャラも好きになってもらえると嬉しいです。
あおばさん的には本編のエピローグがいいのかな?
完結はしましたが、エピローグがまだありますので、そちらも見てくださいね。


>> YAMAさん

ありがとうございます。
確かに前半は原作と大差ないので、どうなるかハラハラされたと思います。
まあ、私はそこを狙った訳ですが。
原作のロスカラのライと意識的には変わらない部分もあるので、やっぱり最後はこうでしょうっていうので、ああさせてもらいました。
C.C.の発言と行動の意味は今回でおわかりになられたかと思います。
やっぱりやるならハッピーエンド!
まだエピローグがあるので、そちらも楽しみにしていてくださいね。





これであとがきによるWEB拍手の返事は終わりとなります。
以後はもうしないというよりできませんが、これからもたくさんの人が読んで頂ければうれしいです。
気が向いたらでいいので、また読んでくださいね。
そういえば、こんな面白い物があったな的な感じでいいので。
今回でこの作品は最終話で完結となりそうですが、まだエピローグが残っています。
そちらではそれぞれのあとがきを用意しています。
どちらを先に見て頂けるかはわかりませんが、またエピローグでお会いしましょう!
今までたくさんの応援、ありがとうございました!!
これからも私ウォッカーをよろしくお願いします!!



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