魔法少女リリカルなのは
                  Accel  Knight


















第10話 組織ではなく自らの信念のために





「というわけで……」

何がというわけでなのかというと、要するに今俺となのは、ユーノはアースラにある会議室にいる訳である。
あの後、俺達は指定された場所で合流し、この艦に再び来ていた。
ここには艦長であるリンディ、執務官であるクロノのほかにも艦のスタッフが集まっている。
リンディが話を続ける。

「本日0時をもって、本艦全クルーの任務はロストロギア、ジュエルシードの捜索と回収に変更されます」

この最後の言葉の変更されます、という辺りが先の様子見していた事が容易にわかる。
まあ、それについては既に向こうも認めているので、別段気にしていない。

「また本件においては、特例として問題のロストロギアの発見者であり、結界魔導士でもあるこちら……」

「はい、ユーノ・スクライアです!」

とユーノが思いっきり立ち上がった。
おそらく緊張しているのだろう。

「それから彼の協力者でもある現地の魔導士さんとその戦士さん」

「た、高町なのはです!」

「北川乱だ」

なのはも緊張しているようだ。
対する俺はこういう会議特有の空気も慣れているので、ある意味初めての事でも緊張したりしない。
むしろ、俺の方が無礼な態度だと思われているだろうが、気にもしない。
別にここに対する俺の評価なんてどうでもいいのだ。
しかし、戦士とは……随分的を得た表現だ事だ。

「以上三名が現地協力者の扱いで事態にあたってくれます」

「「「よろしくお願いします」」」

と俺達3人は礼をした。
まあ、最低限ここはきちっとやっておくべきだろうと俺も礼をする。
その間、リンディやクロノは俺達を見ていたのだが、それに気づいたなのはがぱっと笑顔になる。
すると、クロノが顔を真っ赤にし、顔を背ける。
なんつーわかりやすい反応(笑)
ユーノはそのクロノに対しじとーっとした視線で、俺はニヤニヤとしながら見ていた。
なるほど、クロノはなのはみたいな子がタイプ……と。
こんな感じで俺は心のメモにそう記しておく。
いいからかいネタになりそうだ。
当のなのははその態度がどういうものかさっぱりわかっていなかったが(笑)




















あの後、会議を終え、部屋から出た俺達はアースラのブリッジに来ていた。
艦長であるリンディに招かれたというのが正しい。
そのリンディが口を開く。

「じゃあこれからはジュエルシードの位置特定はこちらでするわ。場所がわかったら現地に向かってもらいます」

「「「はい」」」

返事をした俺達に、エイミィがリンディへお茶を持ってくる。

「艦長、お茶です」

「ありがと」

そのお茶を受け取る前にリンディは砂糖をスプーンたっぷりに二杯、さらにミルクを入れた。
はっきり言おう。
相変わらずありえねぇ。
それ茶じゃなくてコーヒーじゃねぇの?って突っ込みたいくらいである。
隣にいるなのはもうえ〜みたいな顔でその様子を見ている。
そして、リンディはそのお茶を平然と飲んだ。
飲んだところで、俺達に思い出したように声をかけてくる。

「そういえば、なのはさん。学校は大丈夫なの?」

慌てて表情を直したなのははその質問に答える。

「あ、はい。家族と友達には説明してありますので……」

「ラン君、あなたは?」

「俺に両親はいねえから問題ねえし、友達にはなのはから説明してもらってるから大丈夫だ」

その学校では、なのはと俺のためにアリサとすずかが頑張ってくれていたのは補足としておこう。























その後、俺達はジュエルシードを次々と封印して行った。
火の鳥っぽいのも相手したし、その他もろもろ……。
まあ、どれもありえない現象だったので、説明するのがめんどくさい。
という事で、俺達はとりあえず三つはジュエルシードを回収できた。
そして、俺達はアースラに乗ってから既に10日経っていた。
俺は今、なのはの部屋にお邪魔している。
というのも、なのはから招待されたからだが。

「私達が手に入れたジュエルシードは、8、9、12の計3つ」

「そして、フェイトが手に入れたのがシリアル2と5の2つか」

「って事は……後6個か」

なのはが呟いたのに始まり、俺とユーノも続いて呟いた。
フェイトは俺達とは違う方法で探しているらしく、ジャマーもかけられているので、こちらのレーダーにもかかる事はなかった。
つまり、彼女とはここ10日間会っていないのだが、その間にジュエルシードを2つ取られている。
と言っても、俺は取られた感は別にないのだが。
特に欲しいと思わない限り、俺は取られたという感覚は起こさない。

そして、俺達はとりあえず部屋でのほほんとした雰囲気の中を過ごした後、食堂に行っておやつを食べる事にした。
トレイにジュースとお菓子を乗せて、席に着く。

「今日も空振りだったね?」

なのはの言葉に俺は何気なく返す。

「そうだな。まあ、そう簡単にいかないのが普通だ。仕方ないさ」

「そうなると、結構長くなるかもしれないね」

俺は話をしながらなのはと黙々とお菓子を食べていたのだが、不意にユーノが謝ってきた。

「なのは、ラン、ごめんね……」

「え?」

「ん?」

いきなり謝られて俺達はポカンとする。
だが、ユーノは続ける。

「寂しくない?」

「別にちっとも寂しくないよ。ラン君やユーノ君と一緒だし、それにラン君がいてくれるなら寂しくないから」

そういう言葉に俺はそれはある意味プロポーズか?と冗談混じりに思っていたが、口には出さず、なのはの話に耳を傾ける。

「小っちゃい頃はよく1人だったけど、ラン君と知り合ってからそれもなくなったから。1人で家にいる事もあったけど、ラン君がその時によく遊びに来てくれ た し……。だから、私、寂しくないんだ。ラン君がずっと傍にいてくれるって信じてるから」

「…………」

俺はその言葉に少々驚きつつも、口を出さなかったが、今度はユーノが俺に聞いてきた。

「ランは?」

「別に俺は寂しいなんて思ってない。あの時に寂しいなんて感情は置いてきてからな。そもそも、寂しいと思うのなら1人暮らしなんてしていない」

「あ……そうだったね。……ごめん」

配慮の足りない発言かと思い、ユーノが謝るが、俺は微笑んだ。

「別にユーノが謝る必要はねぇよ。俺がちょっと特殊なだけだ」

言って、俺はお菓子を食べる。
そういえば、と俺はユーノに尋ねる。

「俺はユーノの家族の話とか聞いた事ねえな?」

「あ、私も」

俺の言葉になのはも同意すると、ユーノは話してくれる。

「ああ、僕は元々1人だったから」

「そうなの?」

「両親はいなかったけど、部族の皆に育ててもらったから。だから、スクライア一族皆が僕の家族」

「なるほど。いい家族じゃないか」

「そうだね」

そう言って、俺達はまたお菓子を食べ始めた。

















それから少しして、艦内に警報が響き渡った。

「エマージェンシー!捜索域にて大型の魔力反応を感知!」

俺はすぐに立ち上がる。

「行くぞ!なのは、ユーノ!」

「あ、うん!」

「はい!」

俺達はすぐにブリッジに向かう。
そして、そのブリッジにてエイミィがその事態を見て思わず声を挙げた。

「な、何てことしてるの!?あの子達!」
























警報を聞いて通路を走っていた俺達だったが、なのはが途中で遅れ始めたため、俺は彼女を無理やり抱っこして超特急でブリッジに向かった。
なのはは運動音痴なため、俺の走りについてこれないのだ。
もちろん、充分遅めに走っているのだが、なのはには結構きついらしく、俺は途中で無理やり抱っこしたのだ。
同じ年齢の俺にお姫様抱っこされたなのはは何故か顔を真っ赤にして俯いている。
ユーノはそれなりに運動能力はあるようで、しっかりついてきている。
まあ、俺がなのはを担いでいるのに、スピードが全く落ちない事に驚いているようだが……。

「す、凄い力持ちだね、ラン君……(///)」

なのはが呟いたので、俺は走りながら答える。

「屋根飛び移れるんだから、これくらいできて当然だろ?」

「そ、それもそうだね……(///)」

言って、なのはは再び口を閉じたが、とりあえず俺はブリッジに向かう事を優先した。
程なくしてブリッジ前に着いた俺達はなのはを下ろし、扉をくぐる。
ブリッジの映像には、なにやら竜巻がいくつも起きている映像が映し出されていた。

「なんともあきれた無茶をする子だわ!」

「無謀ですね、間違いなく自滅します。あれは個人が出せる魔力の限界を超えている」

どうやら映像を見て話しているようだが、俺はとりあえず状況確認を優先する。

「状況は?」

「見ての通りよ」

リンディがそれに答えたが、確かに向こうの熾烈さは映像を見ればわかる。

「それはわかる。だが、なんであんな凄い事になっているんだ?異常気象のレベルじゃないぞ?」

「おそらく魔力流を叩き込んで、海中にあるジュエルシードを強制発動させて回収しようとしてるんだと思います」

モニターの操作をしてるエイミィが俺の質問に答えてくれる。
それに俺は呆れた。

「おいおい……。確かに一つの方法としてはアリかもしれないが、これは無茶しすぎだろ……」

俺の呆れ声の後、事態の危険さを察知したなのはが口を開く。

「あの私急いで現場に!」

だが、俺が耳にしたのは、予想した言葉ではなかった。

「その必要はないよ。放っておけば、あの子は自滅する」

俺は僅かに目を見開いた後、クロノに問う。

「それは自滅するのをここで見てろって事か?」

「そうだ。仮に自滅しなかったとしても、力を使い果たしたところで叩けばいい」

「でも!」

なのははその言葉に納得がいかず、異議を唱えようとするが、クロノに聞く気はなかった。

「今のうちに捕獲の準備を」

「了解!」

指示を受けた局員が捕獲の準備を始める。
モニターに映っているフェイトは竜巻に吹き飛ばされ、助けようとしたアルフは雷に体の自由を奪われる。
ここからでも現場の熾烈さは充分にわかった。

「私達は常に最善の選択をしないといけないわ。残酷に見えるかもしれないけど、これが現実」

「で、でも……」

なのははリンディに強く言えずにいた。
俺はしばらく見ていたが、振り返ってユーノのところまで行くと、ユーノに小声で話しかける。

「ユーノ、あちらまでのゲートを作れるか?」

「あ、うん。できるよ」

「なら、頼まれてくれるか?」

そう言った俺に、ユーノは頷いてくれた。

「うん。僕もこれには納得できないから」

「なら、準備を頼む」

そう言って、再びなのはのところに行って、現場へ行くか聞くと、なのはは頷いた。
そして、俺がなのはとユーノのところへ行こうとしたところでそれにクロノが気づく。

「君達は、何をしようとしている?」

それに俺はなのはを先に行かせて足を止めた。

「見てわかんねえか?現場に行くんだよ」

「待て!その必要はない!」

俺はそれに断固として反対した。

「おまえらには必要ないかもしれないが、俺にはある」

それで気づいたリンディも止めに入ってくる。

「命令には従ってもらうと言ったはずよ」

「なら、拒否権を使わせてもらう」

それに対して、リンディが怒った。

「待ちなさい!そんな勝手!」

だが、俺はその言葉を聞く気はない。

「命令に従えないから拒否権を使うんだろ。当然だ」

「だからと言って……!」

リンディがさらに言い募ろうとしたが、俺は遮って言う。

「確かに艦長としてあんたの判断は正しい。艦のクルー全員の命を背負うあんたなら、その選択は最善なんだろう」

「なら……!「だが!」」

「それでも俺達にとって最善ではない。組織としてあんたの判断は間違っていないが、俺達個人がその判断に従えない。それだけだ」

俺はそう言いながら、フェイトの顔を思い出す。
あの寂しさを秘めた瞳。
あれを見なかったらおそらく俺はリンディの判断に従っていただろう。
敵は敵。
そう割り切るのが俺、いや俺達の戦いだったはずだ。
だが、フェイトに出会って、俺はフェイトを助けなければいけないと思った。
それは、彼女の、その寂しさを消し去ってやりたいと思えたからだ。
そして、その動機が今の俺を動かしている。
俺はGドライバーダブルを取り出し、腰に装着すると、ジョーカーメモリを取り出す。

【JOKER!】

「もし、止めたいのなら力づくで止めるんだな。もっとも、できればの話だが」

言って、俺はジョーカーメモリをレフトスロットへ装填する。

【JOKER!】

俺はゲシュペンスト・ジョーカーに変身し、ユーノの背後にあるゲートに向かって歩き出す。

「行かせるか!」

クロノがバリアジャケットを纏って、デバイスであるS2Uを振り下ろしてきたが、俺は後ろも見ずに軽く右手で掴む。
見なくても、相手の気配でわかるのだ。

「なっ!?」

俺は掴んだクロノのデバイスごとクロノを投げ飛ばし、なのはと共に転送装置へ入る。
すれ違う時にユーノに「後を頼む」と言って。

「ごめんなさい。私もあなた方の命令には納得できません。だから、ラン君と同じく拒否権を使います!」

「あの子の結界内へ転送!」

ユーノが指で印をいくつか結んだ後、そう言い切った。
その後、俺となのはは転送された。






















転送された場所はフェイト達がいる遥か上空。
そこからゆっくりと俺達は落下していく。

「さて、行くぞ。なのは」

「うん!行くよ、レイジングハート!風は空に、星は天に、輝く光はこの腕に、不屈の心はこの胸に!レイジングハート!セーットアーップ!」

「Stand by Ready」

なのはがピンク色の光に包まれる。











現地で奮闘していたフェイトは上空から差し込んだ光に気づいた。
暗雲の中から光が生じている。
それは、なのはの光だった。
そこから、ゲシュペンスト・ジョーカーの俺と変身したなのはが舞い降りる。

「フェイトの邪魔をするなー!!」

ジュエルシードの魔力に捕まっていたアルフは、俺達が邪魔をしに来たと思ったのか激昂して襲い掛かってくる。
俺はそれを止めようとバーニアを噴射しようとした。
だが、そこへいつの間にか転移してきたユーノが展開した魔法陣によってアルフの突撃を止めた。

「違う!僕達は君達と戦いに来たんじゃない!」

「ユーノ君!」

「フッ、ユーノも結局来てしまったか」

『馬鹿な!何をやってるんだ!君達は!』

クロノが俺達を通信で怒鳴ってきた。
もういい加減うんざりしていた俺は怒鳴り返す。

「うるせえよ!!拒否権使用したんだから、文句はねえだろ!何もする気がないなら黙って見とけ!!」

俺の声に驚いたのか、押し黙るクロノ。
俺のキレた声に他の皆も驚いたのか、こちらを見ている。
確かに戦闘状態で、あいつらの前でキレた事がなかったから当然か。

「とりあえず、封印が先だ。だから、俺達がおまえらをサポートしてやる」

元の口調に戻った俺に安心しつつも、アルフが答える。

「……ホントかい?」

「俺は女性に対して嘘はつかない。あいつらも嘘はつかないさ」

「……わかった」

そう言って、アルフが引き下がると、俺はユーノに指示をする。

「ユーノはなのはの援護、アルフはフェイトの援護に回ってくれ」

「わかった!」

「言われなくても!」

言って、二人が飛び出した。
一方、なのはもフェイトに近づいて話しかける。

「フェイトちゃん、手伝って。ジュエルシードを止めよう!」

レイジングハートのコアから桃色の魔力が放出され、バルディッシュのコアへと流れ込む。

「Power Charge」

それで魔力が復活し、バルディッシュに再び魔力刃が形成される。

「Supplying Complete」

「2人できっちり半分こ!」

フェイトは不思議そうな顔をしていたが、なのはは力強く頷くだけだった。
と、そこへ俺が舞い降りる。

「話の途中で悪いが、いいか?」

「ラン君!」

「ラン……」

俺はそれでフェイトが名前で呼んでくれている事に気が付いた。
なのはのように自己紹介した事はないが、以前からあれだけ頻繁に名前を呼ばれていれば誰だってわかる。

「ようやく名前で呼んでくれるようになったみたいだな、フェイト」

「…………」

何故かそこでフェイトが俯く。
心なしか顔が赤いような気もするが、俺はそれを気にしている暇はなかった。

「っと、関係ない事はこれくらいにしておいて。なのは、フェイト、俺がこれから全ての竜巻、ジュエルシードの活動を一時的に停止させる。おまえらはそこを 狙って封印しろ」

「え!?あれ全部ラン君が抑えるの!?無茶だよ!」

なのはが心配そうに言ったが、俺は笑った。

「心配はいらない。とっておきがある」

「とっておき?」

俺は説明している時間はないので、ユーノとアルフに指示を飛ばす。

「ユーノ、アルフ!俺がこれからジュエルシードの活動を全て一時停止させるから、おまえらはなのはとフェイトのサポートを頼む!」

2人はその言葉に驚いたが、俺の視線で何かを感じたのか頷いた。
そして、俺はメモリをもう一本取り出す。
それはサイクロンメモリ。
このままでは少々きついから、2本同時に使う事にしたのだ。

【CYCLONE!】

ボタンを押したと同時に音声が鳴る。

「メモリを変えるの?」

見た事もないメモリになのはが興味を示した。
俺は手短に答える。

「いや、2本同時に使う」

言って、俺はドライバーを立てると、ライトスロットにサイクロンメモリを装填した。
そして、もう一度倒す。

【CYCLONE!JOKER!】

音声が鳴った瞬間、俺の体の右半分だけ緑色に変化した。
なのは達にゲシュペンスト・ダブルの真の姿を見せるのは初めてだ。

「え?どう変わったの?黒のままだよ?」

「……こっちは緑?」

「……どっちもだ」

右側と左側にいるなのはとフェイトには色が片方しか見えないのだろう。
俺は苦笑しながら、そう答えた。
さらに、左腰のカードスロットから一枚の白いカードを取り出す。

「それは?」

「これがとっておきだ」

そう言って、俺はカードをローダーにセットして閉じた。

【ロード!スターダストドラゴン!】

音声が鳴った瞬間、俺から輝く粒子が一斉に放出される。
それがきらきらと俺の周囲を照らし出す。

「わぁ……!」

「きれい……」

その光景に感動しているなのはとフェイトだったが、あいにくそんな場合ではない。

「よし、これからこいつの効果で竜巻を沈静化させる。タイミングを誤るなよ」

俺の声で2人とも感動から戻ったのか、頷く。

「うん!」

「わかった」

フェイトもするべき事がわかったのか、頷いてくれた。
俺はそれを確認した後、バーニアを吹かせて一気に飛び上がる。
竜巻のある上空へと。

「行くぜ!スターダスト!」

頭の中でスターダスト・ドラゴンの咆哮が聞こえる。
俺はそれに笑みを浮かべると、その場で止まった。

「よし!スターダスト・ドラゴンの効果発動!ヴィクテム・サンクチュアリ!!」

言った瞬間、俺から輝かんばかりの粒子が放出される。
それが、竜巻に降り注ぐとじょじょに竜巻が沈静化されていく。
そして、少しすると、その竜巻が完全に止まった。
浮いてきたのは、6個のジュエルシード。
それを見たなのは達はすぐに自分達のすべき行動に入る。

「ラン君が竜巻を止めてくれた!だから、今のうち!2人でせーので一気に封印!」

フェイトの前に出たなのはがレイジングハートを構える。

「Shooting mode」

レイジングハートの形態が砲撃形態に切り替わる。

(1人ぼっちの時に一番してほしいのは、大丈夫?って聞いてもらう事でも、優しくしてもらうだけでもなくて……)

なのははそんな事を心中で考えていた。
確かにそれも大事だ。
けど、本当にしてほしい事は他にある。
そして、ラン君がしてくれたのはそれもだけど、本当にしてくれたい事もしてくれた。
だから……!
そして、なのはは展開した魔法陣を足場として、その上に乗る。
フェイトもすぐに封印に移る。

「Sealing mode. Set up」

「……うん、いくよ。バルディッシュ」

そう言って、フェイトはバルディッシュを構える。
ちらりとフェイトがなのはを見ると、なのははそれに気づいてウインクをした。
そして、なのはが動く。

「ディバインバスター、フルパワーいけるね?」

「All Right. My master」

なのはの魔法陣が大きくなると同時にフェイトも足元に魔法陣を大きく展開する。
それを確かめたなのはは声を挙げる。

「せーの!」

「サンダー……」

ジュエルシード3つに向けて魔力の雷が落ちる。

「ディバイン……」

なのはの杖の先に魔力が集中する。

「レイジ!!」

フェイトが魔法陣にバルディッシュを突き立てる。
その瞬間、雷の威力がさらに上がる。

「バスター!!」

レイジングハートの先から極太の魔力が放出される。
それがジュエルシードを次々と呑み込んでいく。
そして、辺りは閃光と光に包まれた。


















その頃アースラのブリッジではその様子が確認されていた。
ジュエルシードの反応を窺っていたエイミィが報告する。

「ジュエルシード、6個全ての封印を確認しました!」

「な、なんてでたらめな……」

「でもすごいわ……特にあのランって子」




















海上で、私とフェイトちゃんは向き合っていて、海上から現れていたジュエルシードが封印された状態で私達の前に並ぶ。
私はその光景を見ながら、心の中で思う。

(同じ気持ちを分け合える事……。寂しい気持ちも悲しい気持ちも半分にできる事……)

それが大事だとラン君に教えられた。
だから、今度はフェイトちゃんとも分け合いたい。
そう思った。
竜巻が収まってしばらく経ってきたので、空が晴れていく。

(そっか……やっとわかった。私この子と分け合いたいんだ)

私は胸に手を当てて、告げる。

「友達に、なりたいんだ……」

「!!」

フェイトは驚きで目を見開く。
その様子にアルフは驚いていた。
そして、ランは2人に近づきつつも、それを黙って見ていた。
だが、その時ランはぞくりとした悪寒を感じ取った。

(!!……何かまずい!!!)

ランはすぐさまバーニアを全開にして、2人の元へ急ぐ。
すると、空が紫色に光り、そこから雷が落ちてきた。
海上が水しぶきをあげる。

(間に合え!!!)

超高速でランは二人の間に割って入り、その体を突き飛ばした。

ドン!

「ラン君!?」

「ラン!?」

その声にランが微笑んだ瞬間、ランに雷が直撃した。
全身を引き裂くかのような激痛が走る。

「ぐ、あああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「ラン君!」

「ラン!」

ランが雷を受けた様子に二人とも驚き、声を挙げる。
その様子にユーノとアルフも声を挙げた。

「ラン!」

「ラン!」

だが、ランへの雷攻撃はまだ続いている。
しかし、ランはそれを気合で捻じ伏せつつあった。

「な、なめんなあぁぁぁぁぁ!!!」

吼えて、ランは腕を広げると、降った雷を力で振り払った。
まだランの体のところどころで帯電しているが、体を動かす事はできそうだった。

「後は……ジュエルシードか……」

ランはそう言って、手を伸ばすと三つのジュエルシードを手に取る。
そこへ助けたフェイトとアルフが寄ってきた。

「ラン…!私をかばって……!」

「大丈夫なのかい!?」

「…ああ、このくらい平気だ。それよりもこれを持って早く退け。直に管理局の魔導士も来るぞ」

そう言って差し出したのは先ほど取ったジュエルシードだった。
それを見て、フェイトは混乱する。

「でも……ランは……?」

「いいから、これを持って早く行け!」

「っ!!」

言って、強引にランはフェイトにジュエルシードを渡した。

「アルフ、頼む」

「……わかったよ」

そう言って、アルフは多重転移で撤退して行った。
ランはそれを見て微笑む。
すると、そこに転移してきたクロノが現れた。

「……やってくれたね」

「……うるせえよ」

軽口で答えつつ、ランは周りを見た。
なのはもユーノも無言で立っている。
そして、この場所は嵐は去ったものの、その名残である雨が未だに降り続いていた。
























あとがき


まさかの約1週間での更新です。
そして、ついに10話という二桁に入る事ができました。
正直自分でも驚いているのですが。
忙しさから解放されて、逆に暇になるとどんどん筆が進みますね。
まあ、私としても、読んでくださっている読者の人にとってもいい事なんですが。
ぼちぼちと完結に近づきつつあるこの話。
この調子で行けば、3月の終わりには完結するかもしれませんね。
この調子で行けばの話ですが。

今回はフェイトがジュエルシードを回収するために最も無茶をする回でした。
それを見たランがなのはやユーノと共にフェイトを助ける。
敵ながらもこういう関係はいいですね。
個人的に原作の管理局の対応は腹立たしかったので、本編ではランに啖呵きってもらいました。
プレシアの次元魔法による雷で撃たれるはずのフェイトをランが庇ったりと、ランはフェイトのためにかなり頑張ってくれました。
ゲシュペンスト・サイクロンジョーカー再度の登場とスターダスト・ドラゴンのカードの使用。
それで竜巻を全て鎮めてしまった訳ですが、この点において言えばスターダスト最強ですね。
要は周囲の環境や不可抗力でダメージを負う事がない訳ですから。
設定はあとがきの後に載せていますので、そちらを参考にしてください。
その他にもちょっとした日常やハプニング(?)もあるので、そちらでも楽しめて頂けたら私としてはいいと思います。
個人的になかなか日常場面を書くのは苦手なので。

次回はランへの説教と戦闘なんて皆無の日常場面です。
アルフとの交渉場面もあります。
ランがどう説教されるのか、それが見物かもしれませんね。
使っている力が強力なだけに。
次回も乞うご期待ください。

今回は久しぶりの随分早い更新でした。
感想にもありましたが、正直管理局の質量兵器禁止法って本当にややこしかったです。
書くにあたってあれやこれやと考えさせられたのを覚えています。
そういうの正直めんどくさかったのですが、ひっかからないといいです、本当に。
まあ、前回にその部分については一応対応しているので、問題はないと思いますが。
少し話が逸れたかもしれませんが、今回はここまでです。
後、キュベレイさんがこの作品のために扉絵を書いてくださいました。
重ねてお礼を申し上げておきます、ありがとうございました。
読者の方もいいと思われたら是非キュベレイさんに感想をしてください。
キュベレイさんも喜ばれるかと思います。
扉絵も書いて頂いたこの作品。
完結まで頑張っていきますので、これからもよろしくお願いします!
では、また次回に!
















設定(7)


ゲシュペンスト・サイクロンジョーカーWithスターダスト・ドラゴン

ゲシュペンスト・サイクロンジョーカーにスターダスト・ドラゴンのカードを読み込んで、その力を付加、シンクロした形態。
ゲシュペンスト・サイクロンジョーカーでも強力だが、さらにスターダスト・ドラゴンの力が加えられた事でさらに強力になっている。
スターダスト・ドラゴンの性質を取り込んでいるため、破壊効果に対する耐性が強い。
使用時の変化として、ゲシュペンストから光る粒子が放出される。
効果は自分が把握するフィールドの破壊現象や災害現象を止める事。
今回はフェイトが魔力を打ち込んだジュエルシードが発生させていた竜巻を一度に全て鎮めるために使用した。
マキシマムドライブ使用時の必殺技は音波を纏って両足で蹴りを放つ「ジョーカー・ソニック」。



スターダスト・ドラゴン

レベル8/風属性/ドラゴン族・シンクロ/効果/ATK2500/DEF2000

今回ランが使用したカード。
対破壊効果に優れているカードで、優秀なシンクロモンスターカード。
ドライバー使用時での効果は、このカードの力を1分間使用不能にする事で自分の把握するフィールドの破壊現象や災害現象などを止めるという内容になってい る。
当然使用不能の間は効果はもちろんスターダスト・ドラゴンの力を得る事はできない。
性格は冷静沈着。
使用可能形態とメモリはゲシュペンスト・サイクロン、ゲシュペンストサイクロンジョーカー、ゲシュペンストサイクロントリガーとサイクロンメモリ。



風属性モンスターの使用時設定

基本どのカードもサイクロンメモリと相性が良く、サイクロンの時は使用可能。
ただ、サイクロンの他にメモリを組み合わせる場合、モンスターの形態によって使用できる組み合わせが限られている場合がある。



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