魔法少女リリカルなのは
                  Accel  Knight


















第12話 星VS雷 〜乙女のガチバトル〜





レイジングハートを構えたなのはを見て、フェイトが飛び上がった。
空中でバルディッシュを再び構える。

「ラン君!絶対手を出しちゃダメだよ!」

「そのくらいわかってる。……なのは」

「え?」

「今までの訓練と実戦で学んだ全てをぶつけてこい」

「うん!!」

「飛ぶぞ、ユーノ、アルフ」

俺はユーノを肩に乗せて、アルフと共に巻き込まれないように戦闘圏外まで跳躍した。













一方アースラでもその様子は確認していた。

「戦闘開始みたいだね」

「ああ」

クロノが頷いたところで、エイミィが意外そうに言った。

「しかし、ちょっと珍しいよね。クロノ君がこういうギャンブルを許可するなんて」

「まあ、なのはが勝つにこっした事はないけど、あの2人の勝負自体はどちらに転んでもあまり関係ないからね。もし、負けたときにはランに出てもらう事に なってるから」

「よくあの子が承諾してくれたね?」

「僕も意外だったよ。あっさりと承諾してくれたからね。ただ、彼はこの勝負が完全に終わるまでは手を出さないって言ってたけど」

クロノはランがマンションに戻った時に彼になのはが負けた時の保険として、代わりにフェイトを保護するように頼んだ。
それをランは勝負には絶対に手を出さない事を条件に承諾した。
これをランに頼んだのは、以前彼がフェイトを圧倒したという話とその技量を見込んでの事だった。
もちろん、さらに保険としてクロノも出るつもりでいる。

「どっちにしても、なのはちゃんが戦闘で時間を稼いでくれているうちにあの子の帰還先追跡の準備をしておくってね」

「頼りにしてるんだからね、逃がさないでよ」

「おう!まかせとけ!」

話しながらエイミィの髪をといていたクロノだったが、その返事で彼女が思いっきり振り向いたので、驚いた。

「でも、あのことなのはちゃん達に伝えなくていいの?プレシア・テスタロッサの家族と、あの事故のこと」

「勝ってくれるにこしたことはないんだ。今は、なのはを迷わせたくない」

そう言って、クロノはモニターを見続けた。

























なのはとフェイトは戦闘を続けていた。
両者の武器がそれぞれ振り下ろされ、ぶつかり合い、2人はまた離れる。

「Photon Lancer」

バルディッシュの音声と共に金色の魔力球がフェイトの周囲に作り出される。

「!」

対するなのはもレイジングハートを構える。

「Divine Shooter」

レイジングハートの音声と共になのはの周囲にもピンク色の魔力球が現れる。
互いに機を窺い、先に動いたのはフェイトだった。

「ファイア!」

「シュート!」

互いの発射した魔力弾が入り乱れる。
それは互いを標的とし、それぞれに襲い掛かる。
なのはは身を捻って、フェイトの放った魔力弾をかわす。
フェイトは上空へと上がり、回避しようとしたが、誘導弾だったので、振り切れないと判断し、当たる前に防ぐ。
しかし、そこで彼女は目を見張った。
既になのはが次の攻撃に入っていたのだ。

「シュート!」

また四つの魔力弾がフェイトに襲い掛かる。

「Scythe Form」

向かってくる魔力弾をフェイトはかわし、または切り飛ばす。
そのままの勢いでフェイトはなのはに襲い掛かった。

「!」

今度はなのはが驚く番だった。

「Round Shield」

なのはが慌ててシールドを張った。
フェイトの振り下ろした鎌はそのシールドに激突し、防がれる。
フェイトはそのシールドをそのまま力づくで押し込んで破壊しようとする。
だが、なのはは慌てずに先ほどフェイトがかわした魔力弾をフェイトの後ろからぶつけようと操作する。
フェイトはそれに気づき、シールドでその魔力弾を防御する。
そして、振り向いた時にはなのははいなかった。

(どこ……!?)

対象を見失い、キョロキョロと周りを見渡すフェイト。

「Flash Move」

「せぇぇぇぇぇ!!」

そこへなのはが上空からフェイトに襲い掛かってきた。
フェイトがその声でなのはが上にいると気づき、見た時には彼女は既に目の前にまで迫っていた。
咄嗟にバルディッシュを眼前に構えて、振り下ろされたレイジングハートを防ぐ。
その際に凄まじい衝撃波が発生する。
この一連の動きはランとの訓練で身に付けたものが大きい。
回避は訓練と実戦の両方で培ったものだが、防御中の死角からの攻撃はランの「利用できるものは利用しろ」、上空からの急襲は「人の死角は後ろもあるが、実 は上も死角なんだ」というアドバイスからヒントを得ての実行だった。
さらに射撃から一転しての接近戦は以前ランが見せたのと訓練での再度のやり取りから。
ラン曰く、「射撃戦は基本中・遠距離戦が中心だが、戦いでは常にその戦闘を続ける事は難しい。ならば、その観念の意表を突いた接近戦を行う事も必要だし、 有効だ。臨機応変に対応してこそ、本当の戦いができる」との事である。
今のなのはは積極的にその言葉通りの事を実践していた。

しかし、そのなのはは衝撃波のせいで、フェイトを見失っている。

「Scythe Slash」

だが、フェイトはなのはを見失っておらず、隙を見て横からバルディッシュで切りかかる。
気づいたなのははすんでのところで回避したが、胸のリボンがその攻撃で切られる。
しかし、気にしない。
ここで、距離を離そうとしたなのはだったが、後ろを振り返ったところで気が付いた。
進路をフェイトの設置していた魔力球が塞いでいる。

「!!」

「Fire」

間髪おかずにフェイトの設置していたフォトンスフィアが発射される。
なのはは咄嗟にシールドを張って、魔力弾を防ぐ。
はずれた魔力弾が海中に当たり、水しぶきを上げる。
魔力弾の連弾が治まると、なのははフェイトと距離を取る。
互いに本当に全力で戦っているため、息が乱れ、肩を上下させている。

(初めて会ったときはただ魔力が強いだけの素人だったのに……もう違う。速くて強い。迷ってたら…やられる!)

なのはがここまで強くなったのは、本人の資質があったのも大きいが、これまでのランとユーノの訓練と実戦から学び取ったものも大きい。
ランも素人のなのはに戦闘のいろはを短期間で教えるために、特別メニューを考えてまでやったのだ。
ある意味ここまで強くなったのは当然である。

フェイトは祈るようにバルディッシュを縦に構える。
それと共にフェイトの足元に巨大な魔法陣が展開される。

「!」

その次の瞬間、なのはの周囲に魔法陣が消えては現れ消えては現れが繰り返される。

「Phalanx Shift」

さらにフェイトの周囲に凄まじい数のフォトンスフィアが形成される。
その数は先ほどの比ではない。

「!!」

なのははそれを警戒して、レイジングハートを構えようとしたが、突然背後に現れた魔法陣にレイジングハートを持つ左手を拘束される。
咄嗟に訓練で培った機転で、レイジングハートを右手に持ち替えようとするが、続けて右手も拘束されてしまう。
足も拘束され、なのはは空中に磔された形となる。

「ライトニングバインド」

「やばいよ!フェイトは本気だ!」

それを見ていたアルフが慌て始める。
まあ、見れば発動しようとしている技のやばさはなんとなくわかるが。

「ラン、すぐになのはのサポートに!」

だが、ランは、

「やだ」

断った。

「な、何言ってるんだ!?それじゃあなのはが!」

「2人の戦いには手出ししない。それがなのはとの約束だ。それに、他人の信念を懸けた真剣勝負の戦いには決して手出しはしない。それが俺の持っている信念 の一つだ」

「でも、フェイトのあれは本当にまずいんだよ!」

アルフも心配して言い募ってきたが、ランは断った。

「なら、信じてやるしかないだろ。もし、ここでなのはが負けるようなら、なのははそこまでだったって事だ。酷な言い方だけどな」

「そんな……」

「だが、俺はなのはが勝つって信じてる。俺は今日までなのはにそれができるだけの事を教えたし、ちゃんとその成果も出てる。後は、なのはを信じるしかない んだ。ユーノも今日までなのはと一緒にいたんだから、信じてやれよ。それが友達なんだと思うぜ」

「……わかった。君がそう言うんだ。僕もなのはを信じるよ」

ユーノの言葉を聞いて、ランは笑った。
そして、なのはを見る。
今までのやり取りが聞こえていたなのはは、ランに感謝した。

(ありがとう……ラン君)

なのははランに向かって頷くと、フェイトに視線を戻す。
フェイトは目を閉じ、呪文を唱える。

「アルカス、クルタス、エイギアス……疾風なりし天神、今導きの元撃ちかかれ。バルエル、ザルエル、ブラウゼル……」

フェイトの呪文の詠唱が終わったようだ。
フェイトが目を見開く。
既に凄まじいパワーを秘めたフォトンスフィアが先ほどよりもさらに多い数で展開されている。
そして、フェイトは自身の持つ最強の魔法の名を告げる。

「フォトンランサー・ファランクスシフト!」

フェイトが右手を空高く挙げる。

「撃ち砕け、ファイア!!」

腕を振り下ろし、攻撃の対象であるなのはを指す。
瞬間、フェイトの作った魔力弾が一斉に発射され、まるで無数の雷の矢のごとく、なのはに襲い掛かる。
動けないなのははそれに耐えるべく、歯を喰いしばる。
次の瞬間、なのはに次々と魔力弾が命中し、着弾の爆発が起こる。
なのはが見えなくなっても、フェイトは攻撃の手を緩めない。
なのはを倒すべく、何発もの魔力弾が撃ち込まれる。
撃ち続けていたフェイトだったが、この攻撃がもたらす結果を想像してしまい、思わず顔を背ける。
そして、間もなくして攻撃の手が止まった。

「なのは!」

「フェイト!」

(容赦ないな〜。まあ、あれが普通だが)

と考えつつランはフェイトの行動を推察する。

(おそらく、攻撃を止めたのは魔力切れが近いからか。あんな技を長時間続けるのは、さすがに無理だろうし。だが、それだけでなく、フェイトが周囲の魔力 を左手にかき集めているのは、なのはがこれでも倒れていない場合にこれでダメ押しするつもりだからか。しかも、確実に命中させるために煙が晴れるのを待つ つもりだな)

事実、フェイトはランの推察どおりの行動を取っている。
そして、煙が晴れるとなのはの姿が見えた。
だが、ここでフェイトは驚愕の光景を目の当たりにする事になる。

「痛ったぁ〜。撃ち終るとバインドってのも解けちゃうんだね」

そこには、無傷とはいかないものの、なのはがいつも通りの様子で立っていた。
バリアジャケットに走っているパルスにより、ダメージがある事はわかるが、目に見えて大きなダメージは負っていない。
フェイトはその様子を見てただ驚くだけだった。
理由なんていくらでも思いつくが、それでも今の光景を信じられなかったのだ。
バインドの解けたなのはがレイジングハートを構え、反撃の態勢を取る。

「今度はこっちの……」

「Devine……」

レイジングハートの先に魔力が集中する。

「番だよ!!」

「Buster」

レイジングハートからピンク色の魔力閃光が放たれた。
フェイトは咄嗟に用意していた魔力弾を放つが、ディバインバスターにかき消される。
拮抗すらしていない。
威力が桁違いだ。
フェイトは次に防御すべくシールドを展開する。
そこへ激突するディバインバスターの閃光。

(……直撃!でも、耐え切る!あの子だって、耐えたんだから!)

「くっ……」

だが、なのはの砲撃の威力は凄まじく、防御ごしにでもフェイトに確実なダメージを与えていく。
グローブが、マントが、影響で破れていく。
バリアジャケットがじょじょに削れていく。

「くうぅ……」

もうダメかと思われた時、不意に砲撃が止んだ。

「フェイト……」

フェイトが耐え抜いた訳ではない。
これは、なのはの次への攻撃に繋げるために使った砲撃だったのだ。
つまり、ディバインバスターを初めとした二重攻撃。
シールドを一旦解除したフェイトだったが、先ほどの攻撃と今の防御で限界がかなり近い。

「受けてみて、ディバインバスターのバリエーション」

いつの間にか上空に移動していたなのはの前に巨大な魔法陣が形成される。

「Starlight Breaker」

すると、周囲から魔力が魔法陣に向けて集まり始める。

(戦闘で使って周囲に散った魔力の粒子を集めているのか……)

外野でなのはの様子を見て、新しい技を分析するラン。
それを見たフェイトは避けようと動こうとするが、動けなかった。

「っ!バインド!?」

そう、いつの間にかフェイトはバインドで拘束されていた。
おそらく疲労と磨耗で、注意力が必然的に落ちていた事が原因なのだろう。
フェイトが抵抗しようとするが、疲れきった体では、それも満足にできない。
その間になのはは魔力球を完成させた。
それはまるで一つの桃色の星のよう。

「これが私の全力全開!!」

なのはは形成した巨大な魔力球にレイジングハートを向ける。
そして。

「スターライト・ブレイカー!!!」

極太の桃色の閃光がフェイトに向けて発射された。
それに動けないフェイトは飲み込まれる。
フェイトを飲み込んだ閃光は、そのまま海面に激突し、水柱を起こさせる。
凄まじい光が海上を覆い尽くす。

それを見ていたアースラの一面は思わず叫んでいた。

「な、なんつーバカ魔力!」

「うわ、フェイトちゃん、生きてるかな?」

一方、外野で見ていたラン達も。

「容赦せずに止めの一撃を撃ち込んだところまではいいが、あれは……さすがにやりすぎだな。オーバーキルだぞ」

うんうんと頷くランにユーノは笑うしかなかった。

「あはは……」

アルフもその様子を見てポカーンとするしかなかった。
この一撃の怖さを皆が知った瞬間であった。





















結果、なのはは勝利し、今はレイジングハートが砲撃後の排熱を行っている。
なんとか勝てたものの、なのはもさすがにあれだけの砲撃をしては限界が近く、なんとか飛行する状態が精一杯であった。

「はぁはぁはぁ……」

なのははなんとか息を整え、フェイトを見ると、彼女は意識を失い、落下するところであった。

「あ!」

フェイトはそのまま落下していく。
海に落ちるかと思われたが、それを止めた人物がいた。

「ラン君!」

そう、フェイトをキャッチしたのはゲシュペンスト・サイクロンの姿をしたランだった。
その手にはバルディッシュもちゃんと握られている。
フェイトが落ちるのを確認する前に、ランは結果を予想して既に変身し、動いていた。
サイクロンは風を操る力を持ち、機動性に加えて飛行性能も高い。
それをランは使ったのだ。
ランは浮上し、なのはに近寄る。

「よく頑張ったな。なのは。ちゃんと見させてもらったぞ」

「うん!……あの、どうだった?」

恐る恐る評価を聞いてきたなのはにランは評価を下した。

「まあやりすぎなところはあるが……今回は満点だ。ちゃんと今まで教えた事生かせてたよ」

「やったぁ!」

それで喜ぶなのは。
しかし、疲れきっていた体で思いっきり腕を上げたので、集中力が途切れてバランスを崩しかける。

「あ……」

「おっと」

バランスを崩しかけていたなのはをランは器用に体で受け止めた。

「……あんまりはしゃぐなよ?勝ったとはいえ、ギリギリだったんだからな」

「うん……ありがと(///)」

顔を赤くしながらも礼を言うなのは。
その時、フェイトが目を覚ました。

「う、うぅ……」

「あ、気づいたか?フェイト」

「ラン……」

気づいたフェイトはランの顔(ゲシュペンスト顔)を見て、自分を抱き上げているのはランだと把握する。

「ごめんね、フェイトちゃん。大丈夫だった?」

「うん……」

今度は隣にいたなのはから声をかけられ、頷く。

「なのはの勝ち…でいいな?」

「うん…そう、みたいだね……」

どこか悲しそうな顔で言うフェイト。

「Put out」

バルディッシュの音声と共に、ジュエルシードが出された。

「飛べるか?」

フェイトは頷き、ランから離れると、ちゃんと飛び、ランからバルディッシュを受け取った。

「よし、なのは。ジュエルシードを確保して。それから彼女を……」

「いや、来た!」

クロノがなのはに指示を出そうとしたところで、エイミィが止めた。
空に突然雷雲が発生する。

(来たか……!)

この事態を前の経験から想定していたラン。
すぐにジョーカーメモリを取り出し、レフトスロットに即座に装填、倒す。

【CYCLONE!JOKER!】

すぐにゲシュペンスト・サイクロンジョーカーに変身する。
と、そこでフェイトに向けて雷が落ちてきた。
ただし、色は紫。

「下がってろ!」

そう叫んだランは雷に向かって踊り出る。

「なめんなぁ!」

言うと、ランは風を纏った回し蹴りを雷に向けて放った。
雷がランに激突するかと思われたが、ランの風を纏った回し蹴りで軌道を変更され、雷はランからはずれ、明後日の方向に飛んでいった。
だが、その隙にジュエルシードが雷雲に吸い込まれてしまった。

(ちっ……雷は囮か)

蹴りで雷をそらしたランはその光景に舌打ちするしかなかった。
一方、アースラではエイミィがすでに追跡を開始していた。

「ビンゴ!尻尾掴んだ!」

ジュエルシードの転移によって次元座標を特定するエイミィ。

「よし!不用意な転送は命取りだ。座標……」

「もう割り出して、送ってるよ!」

なんというか、作業が早い。
それを受けてリンディが指示を出す。

「武装局員は転送ポートから出動!任務はプレシア・テスタロッサの身柄確保です!」

『は!!』

予定通り武装局員は時の庭園へと転送された。













一方、次元魔法を行ったプレシアもこの事態は想定していた。
だが、先ほどの魔法の反動で、血を吐いている。

「がはっ、ごほっ……。やっぱり、次元魔法はもう体がもたないわ。それに今のでこの場所も掴まれた。フェイト……あの子じゃダメだわ。…そろそろ潮時かも ね」

プレシアは手で口を押さえながら、フェイトの映る映像を見ていた。















「第二小隊、転送完了!」

「第一小隊、侵入開始」

アースラのブリッジに様々な報告が飛び交う中、俺達はフェイトを拘束してブリッジに着ていた。
拘束するのは、俺達の望むところではないのだが、一応形だけでもしておくべきだったのだ。

「お疲れ様!それからフェイトさん?初めまして」

リンディは挨拶したが、フェイトは俯いたまま今は待機状態のバルディッシュを見つめるだけだった。
そして、モニターの方に振り返ったリンディは俺達に念話をしてきた。

[母親が逮捕されるシーンを見せるのは忍びないわ。なのはさん、ラン君、彼女をどこか別の部屋へ]

[は、はい……]

「フェイトちゃん、良かったら私の部屋……」

指示通りに部屋へ誘おうとしたなのはだったが、フェイトは聞かずに一歩前へ出てモニターを見つめるだけだった。
その時、報告が上がる。

「総員、玉座の間に侵入。目標を発見!」

モニターに映っていた武装局員のリーダーらしき人がプレシアに通告する。

『プレシア・テスタロッサ。時空管理法違反及び管理局艦船への攻撃容疑であなたを逮捕します』

『武装を解除してこちらへ』

『ふっ……』

余裕の態度のプレシアを局員が取り囲む。
そんな中、局員たちが玉座の間にあった隠し扉を見つけ、扉を開く。

『こ、これは……!』

その先には生態ポッドらしき物があり、その中には……。

「え!?」

「何!?」

フェイトと同じ顔の少女が眠っていた。
フェイトもその光景に驚いている。

『うわぁ!』

『ぐっ!』

その時、プレシアがポッドに近づこうとしていた局員を吹き飛ばす。

『私のアリシアに近寄らないで!』

管理局員はデバイスの杖先をプレシアに向ける。

『撃て!!』

その杖先から号令と共に砲撃が発射された。
だが、プレシアの前にある見えない障壁に防がれて届く事はない。

『うるさいわ……』

プレシアは左手を上げると、そこに魔力を収束し始めた。

「危ない!防いで!!」

リンディがとっさに叫ぶが。

「…いや、無理だ」

俺が冷静にそう言うと、その通りにプレシアの手から雷が放たれ、局員たちはそれを浴び、気を失った。

『フフフフ』

「いけない!局員たちの送還を!」

「りょ、了解です!」

局員たちの状態を危惧して、リンディが指示を出し、すぐにエイミィが実行する。

「アリ…シア…?」

そんな中、フェイトはプレシアの呼んだ名を呟いていた。

「座標、0120 503!」

「座標固定!転送オペレーション、スタンバイ!」

プレシアはポッドに近づくと呟く。

『もうダメね。時間がないわ』

ただ、こちらが見ている事がわかっているのだろう。
呟くようにいっているが、その口調と声音ははっきりとしている。

『たった8つのロストロギアではアルハザードに辿り着けるかはわからないけど……。でも、もういいわ。終わりにする』

プレシアが後ろ、こちらを振り向く。

『この子を亡くしてからの暗鬱な時間も……この子の身代わりの人形を娘扱いするのも……』

「!!!」

フェイトがハッとする。

「何…だと?」

俺も思わずその言葉に呟く。
そして、俺となのははフェイトを見た。

『聞いていて?あなたの事よ。フェイト。折角アリシアの記憶をあげたのに、そっくりなのは見た目だけ。役立たずでちっとも使えない……私のお人形』

フェイトの顔がますます白くなっていく。
他の者たちもそれぞれの態度でその言葉を聞いている。
その時、下を向いたエイミィが説明してくれた。

「最初の事故の時にね、プレシアは実の娘アリシア・テスタロッサを亡くしてるの。彼女が最後の行っていた研究は使い魔とは異なる……使い魔を超える……人 造生命の生成。そして、死者蘇生の秘術、フェイトって名前は当時彼女の研究につけられた開発コードなのよ」

それは真実だった。

「よく調べたわね。そうよ、その通り。だけど、ダメね。ちっとも上手くいかなかった。作り物の命は所詮作り物。失ったものの代わりにはならないわ」

プレシアはモニターごしのフェイトに告げた。

「アリシアはもっと優しく笑ってくれたわ。アリシアは時々わがままも言ったけど、私の言う事をとてもよく聞いてくれた』

「やめて……」

なのはが悲しそうに言う。
しかし、プレシアはやめない。

『アリシアはいつでも私に優しかった……。フェイト、やっぱりあなたはアリシアの偽者よ。折角あげたアリシアの記憶もあなたじゃダメだった』

「やめて…やめてよ!」

なのはが懇願する。
それでも、プレシアはやめない。

『アリシアを蘇らせるまでの間に私が慰みに使うだけのお人形。だからあなたはもういらないわ。どこへなりとも消えなさい!』

手を振って最後にプレシアはそう断言した。

「お願い!もうやめて!」

『フフフ、アハハハ』

なのはは三度懇願したが、プレシアはそれを聞いて笑うだけだった。
フェイトの脳裏には今までの記憶が鮮明に流れている。

『フフフ、いい事を教えてあげるわフェイト』

(……やめろ。それ以上言うな。それ以上言えば、フェイトは…!)

絶望のどん底に叩き落される事になる。
声を出さずに心で俺はそう言う。
だが、無論、そんなものがプレシアに届く訳がない。

『あなたを作り出してからずっとね、私はあなたが大嫌いだったのよ!』

「!!!」

フェイトはあまりのショックに持っていたバルディッシュを落とし、目から光を失い、膝を付いた。
だが、その時、俺の中で何かが切れた。
理屈ではない、何かが。
皆がフェイトに駆け寄る中、俺は転送ポートへ向かった。
途中、クロノが慌てて俺に制止の声をかけたが、俺は無視してアースラの転送ポートへ向かい、自身を転送する。
行き先は無論プレシアのいる時の庭園。

(因果関係はわかった。……いいだろう。それがお前の答えなら、俺はお前を容赦なく叩き潰す。この手でな)

それが俺の決意だった。
























あとがき


第11話と第12話をまとめてお送りしました。
11話はちょっとした日常シーン、12話はなのはとフェイトの決着シーンとなっています。
今回はあまり多くは書かないのですが、原作でなのはのスターライト・ブレイカーを見た時は「やりすぎだな〜」と思ったのを覚えています。
12話では原作の拮抗にそれなりの理由を付けて私的に納得できる感じで書いています。
原作に関しては、ほとんどなのはの資質頼りでそこら辺の納得できるものがあまりなかったので。
11話では、ランが案の定怒られました。
もちろん、ランが反省していないのは、前回の行動が自分で正しいと思っているからです。
決して、倫理観とか持ってなかったり、反省しない子ではないので。
という事で、今回は私の事情でほとんどあとがきを書きませんでした。
というより何故か書く事が浮かんでこなかったというのが正しいです。
何か質問があれば、答えられる範囲で答えますので、WEB拍手や感想掲示板に書いてください。

そして、次回。
庭園に向かったランがもう1つの真の力で大暴れ!
そして、戦うランとプレシア。
果たして決着はどうなるのか!?
ランが大乱闘する次回、こうご期待ください!

今回は書く事が浮かばず、かなりグダグダなあとがきとなってしまいました(汗)
次回はそうでもないと思うので、今回は大目に見ていただけると助かります。
東北や関東では大震災や地震が起き、大変で私の作品を見る余裕などない人もいると思いますが、完結まで応援して頂けるとありがたいです。
こちらもいつの間にか完結までもうすぐ。
どうか最後までよろしくお願いします。
東北の大震災について、私もできる限り支援したいと考えています。
読者の皆様も困っている東北の方々にささやかでもいいので、何か支援してあげるといいかもしれませんね。
では、今回は短いですが、この辺りで!



押して頂けると作者の励みになりますm(__)m

<<前話 目次 次話>>

作家さんの感想は感想掲示板にどうぞ♪

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.