魔法世界流浪伝




















第3話 守るべきものは



あれからさらに1週間。
光司は以前と同じでなのはの世話(あれから家族公認)をしていた。
ただ、以前とは違いなのはは以前よりも明るくなり、無理に笑う事は少なくなってきた。
このまま順調に行けば、なのはの歪みもそれ程大きい物ではなくなるだろうと光司は考えていた。
さらに変わった事といえば、時々高町家で夕飯を頂く事になったという事くらいだろうか。
さすがに毎回は光司も気が引けるし、何より申し訳ないので断っているが、それでも3日に一度くらいはこうして高町家で夕飯を取ることとなっていた。
だが、1つだけ光司が気になっている事があった。

「母さん、俺道場にいるからご飯ができたら呼んで」

なのはと遊んで帰った夕方。
彼女の兄である恭也がいつものように、店に顔を出してまた奥に引っ込んでいった。
なのはは店の手伝いをしている。
あの出来事以来、徐々にではあるがなのはの家に帰る時間は早くなっていた。
もちろん、それに応じて店の開いている時間にも帰る事にはなるのだが、なのはの母である桃子はそれを理由になのはの手伝いを拒んだりせず、彼女にできる簡 単な範囲でいつものように手伝ってもらっていた。
これはいい事で、桃子のなのはの思いやる気持ちがしっかりとわかる一面だ。
しかし、それに連れてなのはの兄である恭也のああいう姿を目にするのも多くなった。
店の客として、カウンターの端に座っていた光司は、近くにいた美由紀に尋ねる事にした。

「美由紀さん、今ちょっといい?」

「あ、はい」

彼女を光司が呼ぶと、彼女は手元の仕事を済ませこちらに来てくれる。

「何ですか?」

「えと、君のお兄さんの事なんだけど、いつもああなのか?」

その言葉で、美由紀の表情が暗くなる。
何か複雑な理由なのだろうか。

「……はい。お父さんが入院してからいつもああなんです。お店の手伝いはしてくれるんですけど、いつも手伝いが終わって時間ができると道場に行って素振り してるんです。自分はもっと強くならないといけないって……」

その言葉を聞いて、光司は考える。

(……なるほど。なのはちゃんのお父さんの入院の原因が何かは知らないが、その原因がきっかけで焦ってるといったところか。…だから、あんなにどこか焦っ た瞳をしていたのか。僕より少し下の年頃の人がする瞳でもないだろうに……。って僕も人の事は言えた立場ではないが)

恭也が店から引っ込む前や交流を多少なりとも持った時から感じ取っていた物に、光司はそう推測を立てた。
光司は、ある事情から他人の感情を読み取るのが得意だ。
もちろん全ては当然無理であるが、それがどういう心理を表しているかはわかる。
そのある事情に長年浸かっていたため、他人の感情の動きには敏感になっていた。

「じゃあ、なのはちゃんの事も?」

「はい……。お母さんがとりあえず危なくない範囲で手伝いをさせるという事は伝えたみたいなんですけど、どうも話しづらいみたいで……」

「そうですか……」

光司の予想通りだった。
もし、なのはの事を知っていれば兄である彼があんな事を続けているはずがない。
そこで家族が話せばいいだろうと思う人間もいるかもしれないが、あの危機迫る雰囲気が家族にも近寄りづらい雰囲気を醸し出しているのだろう。

(……問題は、なのはちゃんだけではなかった。といったところか)

そう思うと、光司は立ち上がった。

「その道場はどこに?」

「えっと……」

光司は美由紀からその場所を聞きだすと、店を一旦出て行った。
彼女の止める言葉を無視して。























そして、道場に向かうと美由紀の言葉通り恭也が木刀で素振りをしていた。
その様子を開いていた扉から黙って見る光司。

(……筋は悪くない。まだ発展途上といったところか。腕も…精神も……)

そうして少しの間、恭也の素振りを見ていたが、彼の素振りが終わったところで、彼が光司に気づいた。

「……いつから見ていたんですか?」

どこか棘のある言葉。
実は光司自身、恭也にはあまり好印象を持たれていない。
確かにどこぞの馬の骨とも言える人間が、彼の妹と仲良くしているのだからそれは当然と言えた。
この点に関しては、特に光司は気にしていない。
他人が持つ自分の印象の事だ。
特に自分がどう思われていようと苦には思わないし、以前からそういうのは気にしていない。

「少し前からだ。盗み見るつもりはなかったんだが、いい素振りだった物でね」

「……そうですか」

そう言って、一度自分の汗を用意していたタオルで拭き、スポーツドリンクで軽く水分補給する恭也。
その様子を見ていた光司は、前々から気になっていた事を聞く事にした。

「……恭也君。君は、何をそんなに焦っている?」

「!?」

自分の心理を見透かされた驚きに、恭也が光司に振り向く。
光司は構わず続ける。

「時間があれば、すぐに稽古や素振り。正直、ここ何日か君のその行動を見かける事はあったが、その練習量はどう見ても可笑しい。身の丈に合わない練習は自 分の身を滅ぼすよ?」

「………」

「君も君のお父さんも何かの流派を会得しているみたいだが……その強さや威信なんて命を懸けて守る程重い物ではないよ」

バン!!

その時、大きい音が鳴った。
それは、恭也が近くの壁を殴った音だった。

「あなたに何がわかる!!何も知らないくせに!!父さんの剣術を見たことがないあなたが知った風な口を聞くな!!」

「………」

どうやら逆鱗に触れてしまったようだと光司は悟る。
しかし、前言を撤回する気はない。
だが、それで黙って普通にしている光司の態度は恭也の怒りをさらに掻き立てる。
おもむろに恭也は普通のサイズの木刀をかけてあったところまで行って掴むと、光司に放った。

「おろ」

やや危なげに受け取った光司に恭也は指差した。

「勝負しろ、あんたが言う父さんの剣術がどれ程の物か。見せてやる」

その言葉に、光司はやれやれと肩を落とした。

「……僕は正直木刀は苦手なんだが、仕方ないか」

こうして、2人だけの決闘が決まった。


















互いに木刀を構える。
恭也は小太刀サイズの木刀を二刀。
光司は青眼の構えで。

「勝負は一本勝負だ。いいな?」

「ああ、構わないよ」

すっと構える両者。
しばらくじっとしていたが……。

「ふっ!」

恭也から動いた。
常人からすれば、かなりの速さを誇る剣。
一気に間合いが詰まる。
しかし──。

すっ……

光司はその迫った剣戟を流れるように、最小の動きと距離でかわす。

「っ!」

容易くかわされた事に恭也は多少驚くが、次々に追撃の剣を放つ。
しかし、その攻撃も全て光司は流れるような動きで回避していく。
しばらくそれが続いたが、恭也が突然攻撃の手を止めた。

「……何故、反撃しない?」

静かな瞳で光司は答える。

「僕は人に見せる剣を振るう気はない。ましてや力比べのためにもね」

「くっ……ふざけるな!」

まるで、今の自分を否定されているようで恭也は、思うが侭に飛び出して木刀を振るう。
しかし、どれだけ攻撃しようと光司は反撃に出る事はなかった。






















それからしばらく。

「はぁはぁはぁ……」

恭也は息を乱して攻撃の手を止めており、対する光司は息1つ乱さず構えていた。

「……気は済んだか」

「くっ……ふざけるな…!」

木刀を杖代わりにして立つ恭也。
恭也がこれほど疲労しているのは、怒りに乗じて隙のある大振りとはいえないもののそれに近い攻撃を繰り返し続けていた事ともう1つ他にある。
それは、自分を省みない稽古のツケだ。
それが、恭也よりも数段上の相手と稽古した際に如実に現れていた。

「……何故それ程に強くなろうとする?聞かせてもらってもいいか?」

恭也は息を切らせつつも立ち上がりながら言った。

「俺は…強く…ならなくちゃいけないんだ。大切な人が傷つかないように……。もう、嫌なんだ……!何もできずにただ見ているだけなんてのは……!」

その決意を聞いた光司はすっと一瞬目を閉じ、また静かに開いた。

「わかった。君のその決意に免じて、一度だけこちらから行こう。その一撃が捌けたなら、この勝負君の勝ちだ」

「……!」

そこで、光司は構えを無形の位にした。
構えが変わったのを見て、すぐに対応できるように構える恭也。

「行くぞ……!」

瞬間、恭也には光司が消えたように見えた。

(いや、違う!速い!!)

気づけば、その間合いは既に詰められていた。
右薙ぎに振るわれる木刀。
それを咄嗟に木刀でガードしようとする。
激突するかと思われたその振るわれた木刀だったが、振るった光司の腕にはその木刀はなかった。

(!?)

消えた木刀に驚く恭也。
しかし、木刀は消えてなどいなかった。
光司は木刀を振っておらず、振る直前で手放し、木刀を振るうふりをして手を薙ぎ払っただけにすぎなかったのだから。
そして、手放した木刀をすぐに左で掴み、刹那の時間差でガードの隙間目掛けて振るう。

“光環閃 虚”(こうかんせん うろ)

その瞬間、恭也は見事に一撃を喰らい、壁まで吹っ飛ばされた。

ダァン!!

「ぐは……っ」

見事なフェイントの一撃を喰らった恭也は立てずに壁にずるずるともたれかかる。

「勝負あり、だな……」

「っ……」

目の前に歩いてきた光司を見ながら、恭也は負けを認めざるを得なかった。
この人は間違いなく強かった。
父さんだったら、もっと上手くやれたのだろうか。
と、そんな事を思い、強くならなければという思いが強くなっていく。

「君の思いは本物だった。それは認める。勝負を分けたのは、単純な実力差。それも仕方ないだろう」

その言葉で恭也の中が強くなりたいという思いで支配されていく。

「だけど、君の本当に守りたい物は何だ?大切な人の命だけか?その人達の笑顔じゃないのか?」

だが、その言葉で恭也のその思いは霧散した。
ハッとした思いで、光司を見上げる。

「今の君は自分が強くなろうとするだけで、周りが全く見えていない。君のお母さんや妹の美由紀さんが本当に心配している事も、妹のなのはちゃんがついこの 間まで寂しそうにしていた事、君は知っているかい?」

「………」

その言葉に恭也は何も言えなかった。
光司の言うとおり、桃子や美由紀が心配している事を払いのけ、なのはの事に至っては全く知らなかったのだから。

「強くする事も、守ろうとする事も悪い事じゃない。ただ、今の君は不必要に周りを心配させ、傷つけるだけだ。……本当に自分の守りたいものは何なのか。そ のために自分にできる事が何なのか。もう一度しっかりと見つめ直すといい。武力だけが守る手段ではないよ」

そうすると、道場に置いてあった救急箱を光司は取りに行き、恭也の隣に立つ。

「さあ、とりあえず怪我の手当てをしよう」

そう言って、光司は手当てを始めた。
恭也はされるがままに手当てをされるだけであった。



























そして、あれから夕食となり、桃子には光司が事情を説明し、謝罪もした。
しかし、桃子はその事情には恭也にも非があったと判断し、この一件は両成敗という事で片が付いた。
その後、桃子やなのは達に挨拶を済ませると、翠屋を出た。
すると、出たところには恭也が立っていた。
光司は特に話す事もなく通り抜けようとすると、恭也が口を開いた。

「光司さん」

「何だ?」

「俺、やっぱり強くなるのはやめません」

「ああ」

「けど、自分が家族のために何ができるかそれもちゃんと考えて行動しようと思います。強くなる事ばかり考えていて、なのはの事何も気づいてやれなかったん ですから」

「話、桃子さんから聞いたのか?」

恭也はその言葉に頷いた。

「だから、まずは俺のできる事を精一杯やって、その上でさらに強くなろうと思います。それが、俺の今できる事ですから」

「……その分だと、ちゃんと守りたいものは見出せたみたいだな」

「はい」

答える恭也の顔は以前の焦ったようなものではなく、どこか静かで、しかし決意に満ちたしっかりとした表情だった。
それを見た光司は微笑むと、宿への帰路へとつくのだった。
























そして、あれからさらに1週間。
なのはの兄である恭也も以前のような焦った様子もなくなり、店の手伝いをしつつ鍛錬、しかし無理はしない程度に適度な休息も取るというしっかりとした生活 も送れていた。
結果、高町家は忙しさはあまり変わらないものの、以前のような歪みが見られる事はほとんどなくなり、どこにでもよくある明るい家庭が見られるようになっ た。
そして、光司は時々高町家にお世話になるという形で生活を送っていた。
現在もなのはと公園でいつものように遊んでいる最中である。
砂場でなのはと一緒に遊んでいた光司に、ふとなのはが明るい口調で話しかけてきた。

「そういえばね、光司さん!入院中のお父さんの目が覚めたの!」

「え、そうなの?」

「うん!!昨日の夜看護婦さんから連絡があったの!」

それで、光司には昨日桃子から今回なのはの世話はいいという連絡に合点がいった。

(そういう事だったのか)

そして、そのなのはのお父さん、士郎というらしいが、意識が戻ったという事を聞き、光司の腹は既に決まっていた。

(もうこの家族は大丈夫だろう。そろそろ、また流れるか……。彼女達とは今日でお別れかな)

そう思いつつも、表にはそんな事露程も出さず光司はなのはに付き合って遊び続けた。
この時、なのはは自分の言葉でお別れが訪れるなどと思いもしなかっただろう。



















そして、夕方。
日が沈みかける頃、光司はいつものように翠屋へなのはを送り届けていた。
そして、店の前まで彼女と来ると立ち止まり、口を開く。

「なのはちゃん、実は大切なお話があるんだ」

「?何、大切なお話って?」

見上げるなのはは不思議そうな表情をしている。
光司は屈んで彼女と視線を合わせると告げた。

「実はね、僕は明日この町から出て行く事になったんだ。だから、今日ちゃんとなのはちゃんにはお別れを言おうと思ったんだ」

「え……?」

途端に呆然とするなのは。
いきなりそんな事を言われても飲み込めないのだろう。
しかし、程なくして立ち直ったかと思うと、縋るように問い詰めてくる。

「ど、どうして!?」

「僕は流浪の旅人なんだ。だから、次の世界に行かなくちゃならない」

「流浪の旅人?」

よくわからないのか首を傾げるなのは。

「そうだね…わかりやすく言えば、世界を旅して回ってる人って事だよ」

「で、でもそれだったら光司さんが家にずっといればいい事なの!」

「……そうもいかないんだ。世界を見て回って、困っている人達を助ける……。それが僕のやるべき事だから」

ぐすりと涙目になるなのはの上に、ポンと手を置く光司。

「だから、なのはちゃんにもわかってほしい。僕はまだ一所に落ち着く訳にはいかないんだ」

安心させるように言ったのだが、やはりなのはは俯いたままで納得できていないようだった。
どうしたものかと光司が考えていると、そのなのはがまた光司を見上げて口を開く。

「光司お兄ちゃんは……」

「ん?」

「なのはの事が嫌いになったの?」

その瞳は切実だった。
恐らく光司の言った事が難しく、理解できていない事は光司もわかっている。
だから、こういう事をもしかしたら言うかと予想していたが、やはり言ってきた。
まだ彼女の歪みは完全に治った訳ではない。
でも、こういうところは素直になった。
それは、光司にとって喜ばしい事だった。
なのはの言葉に光司は笑顔で首を振る。

「ううん、なのはちゃんの事は大好きだよ」

「あ……」

頭を撫でながら告げると、なのはの表情が少し和らぐ。
光司は続けた。

「まだまだ君は小さいし、放っておけないところもたくさんある。けど、君はもう大丈夫。ちゃんと支えてくれる家族がいて、なのはちゃんを思ってくれている お父さんやお母さん、お兄ちゃんやお姉ちゃんがいるんだから。最近よくお母さん達と話すようになっただろ?」

「うん!凄く楽しかったよ!」

その言葉に光司は笑顔のまま告げる。

「だから、僕は行くんだ。もう僕がいなくても、ちゃんとなのはちゃんは家族とやっていける。もう僕がいなくても安心できるから、僕はまた違う所に行くん だ」

「………」

しかし、やはり別れるのは寂しいのかなのはの潤んだ瞳は変わらない。
だから、光司は最後に言っておくべき事としておくべき事をする事にした。

「良い子だからなんて事は言わない。なのはちゃんはそんな子でいる必要はないからね。ただ、僕がもうここからいなくなるって事だけはわかってほしい。それ だけなんだ」

そして、光司はポケットからすっと2通の手紙を出す。
この世界を去る時期を決めた時、既に書いて用意していた物だった。

「これ、お母さんとお父さんに渡しておいて。挨拶をしたいのは山々なんだけど、引き止められるのが目に見えてるから」

そう言って、なのはの手に手紙を握らせて渡す。
そして、彼女の目を見て真摯に光司は告げた。

「なのはちゃん、最後になるけどこれだけは覚えておいて。もし、ここから先悲しい事や困った事、つらい事があったら自分だけで悩まないで親しい人に相談し てほしい」

「え?でも、人に迷惑かけたらいけないんじゃ……」

「大丈夫。そういう事を話すのは迷惑にはならないよ。少なくとも、なのはちゃんの家族はそう思わずにしっかり聞いてくれるはずだ。だから、この先自分だけ で悩まないでしっかり甘えて、お話してほしい。それが、僕からの最後のお願いだ」

その言葉でなのははしばらく俯いていたが、しばらくして顔を上げた。

「……わかったの。だから、お兄ちゃんも約束して」

「ん?」

「また会えるって。なのはと約束して!」

その言葉を聞いた時、嬉しいと思う自分がいた。
我侭が少しでも言えるようになった彼女に、そして自分にそう言ってくれる人がいる事に。
だから、光司は笑顔で応える。

「わかった。約束しよう」

「じゃあ、これするの!」

すると、なのはが小指だけ立てて手を差し出してきた。
しかし、光司にはそれがわからなかった。

「?これは?」

「えっとね、約束するときはこうするの!お兄ちゃんもこうして手を出して」

よくわからないが、光司が同じようにして手を出すとなのはは光司の小指に自分の小指を絡めた。
そして、元気よく縦に振る。

「嘘ついたら針千本のーます!指切った!」

と言って、手放す。
だが、光司にもなんとなく意味はわかった。

「はは、針千本飲ますか。これは怖いな」

「うん、約束破ったらそれだからね!」

「わかった。約束だ」

そういうと、光司は立ち上がった。
お別れの時だった。

「じゃあ、なのはちゃん元気でね」

「うん!」

「さようなら」

そして、光司は踵を返すといつも通りの帰り道を歩いていったのだった。
それをなのはは見えなくなるまで見送っていた。
























見送ったなのはは翠屋の前で立ったままだった。
光司はもうこない事がまだ信じられなかったからだ。
でも、どこかでわかっていた。
これが最後だって。
本当は行かないでほしい!そう言いたかった。
でも、光司の目を見た時になのはは気づいてしまったのだ。
例えなのはが何を言っても光司は行ってしまうって。
だから、いつもなのはの我侭を聞いてくれた光司に、なのはは最後だけ我侭を言わないようにした。
代わりに、また会う約束をする事で。
でも、やっぱり悲しかった。
いつも話して遊んでくれた──自分を見てくれていた人がいなくなるというのは、悲しくない訳がなかった。

「ふ、ふぇぇぇぇぇん」

だから、彼女は座り込んで泣き始めてしまった。
そして、程なくしてそれを彼女の姉である美由紀が見つける事となる。
それにより、高町一家は大慌てな状況となるのであった。
そして、光司はなのはに告げた言葉通り、翌日から翠屋や海鳴市に現れる事はなく、交換した連絡先にも通じる事はなかった。

これより、4年後。
高町なのはは、ある事件がきっかけで魔法少女へと覚醒する。
さらに、それがきっかけでなのは様々な出来事に巻き込まれる事となる。
そして、なのはが光司と再会するのはさらにそのもっと先の話である……。















あとがき

この作品を読んで頂き、ありがとうございます。
私をご存知ない方、はじめまして。
ご存知の方、お久しぶりです。
やっと就活で忙しい状況が終わり、その直後の無気力な症状も終わったので、こうして無事復帰する事ができました。

今回のこの作品は、今話題の作品に影響されて、なのはでもある目的のために罪を犯し、それを償うために旅をする青年が、未来の管理局を見たらどうなるか。
それを想定して書き始めました。
今回はプロローグ的な物です。
といっても、Strikersまでは原作ストーリーにはほとんど関わらないため、しばらくは主人公の旅物語的な感じになります。
そういう意味では、今まで原作沿いにやってきたこの私が、原作沿いではないストーリーに初めて挑戦したストーリーとなっています。
まあ、これを一度やってみたいと思っていたのもありましたので。
今回の1話〜3話は高町家での日常ストーリーです。
基本戦闘物しか書きたくないこの私が真っ先に日常物を3話も書き続けられるとは……。
正直、書き終わった後でも驚いています。
基本主人公は、旅をしながら人を助けていくのですが、今回は小さい頃のなのはを助けるという題材でやりました。
色々と心理描写をあれこれと書くのは大変でしたが、どうでしたでしょうか。
上手くできていたなら幸いです。
まあ、基本主人公が人を助けていくストーリーなのに、最後の最後でなのはを泣かせるというのは基本から諸にはずれる事をしてしまった訳ですが……(汗)
でも、色々と考えた末にやはりこの反応が普通なんだろうなと思って最後の最後はこういう描写にさせて頂きました。
何て事のない日常物の1章でしたが、少しでも楽しんで頂けたのなら私としては嬉しいです。

このストーリーの主人公は最初謎だらけですが、徐々に詳細が明らかになっていく物となっています。
ですので、ですので焦らずご覧になってくださいね。
後、色々と時系列や原作設定で不足や間違った点もあると思います。
そういう場合は是非教えていただけると助かります。
まだ始まったばかりですが、この作品をこれからもよろしくお願いします。



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