アユ世界 朝霧高校 職員室




 不意に背中に気配を感じた。
そう、そんな登場の仕方をするのは彼の知る限り一人だけである。
振り返ると予想通りの人物が居た。

「久しぶりだな、先輩。
 また仕事か?」
「状況を手短に説明しよう。
 おまえが投入されるのはコータロー世界、2204年の火星の海だ。
 火星は現在、太陽系の火薬庫といえる不安定な政治状況にある。
 中央政府である地球からの独立を叫ぶ革命派武装組織の火星独立軍と、中央政府が派遣した治安維持部隊との間で激しい内戦が起きている」
「唐突だな」
「こっちも久々に余裕が無い。
 どれくらい余裕が無いかと言えば戦力比太陽系2299に対して火星側1だ」
「うわぁ」

 相変わらず無茶を言う彼に向けてやる気の無い悲鳴をあげてみる。
悲鳴を上げる権利と、恨みや呪いの声を上げる権利くらいは持っている。

「お前の任務はこれから逐次投入される絢爛舞踏が集まるまで時間稼ぎする事。
 そして火星独立軍に味方し、火星の独立を成功させる事だ」
「地下組織か、燃えるシュチエーションだな」
「知ってると思うがうちにはそう言うバカが多い
 これまで色々な世界に派遣したからやり方は大体分かるだろう? 独立方法は任せる。
 できる限り人的被害はさけてくれ」
「出来る限りやってみない事も無きにしもあらずだ」

 いつもの訳のわからない返事はスルーされた。

「良い返事だ。だがこっちもいつまでもコータロー世界に介入できる余力が無い。
 そこで100年の平和にめぼしが付いたところで我々の介入を終了する事とする。
 ちなみに期限は3年だ」
「またアバウトな…」
「火星解放戦線は『ダイアンシス』と言う潜水艦で活動している。 そこで必要なものは大体揃う筈だ」

二人は連れ立って職員室を後にした。





コウタロー世界 ダイアンシス 医療室





目を開くと、視界一杯に見知らぬ天井。
視線を動かせば、並べられたベッドと柱に備え付けられた小さなアクアリウム。
そして清潔そうな白に埋もれるように椅子に座り込んだ一人の男が見えた。
黄色いジャンパーを着た青年は、こっちの視線に気付き立ち上がる。

「意識はあるな?その身体にも、違和感はないようだ」

私は肯定の意思を伝える。
糞真面目な印象のメガネの男は1人満足そうにうなずくと天井に向かって話し掛けた。

「予定通りだ。 オモイカネ」
【はい】
「乗員達には、漂流者発見と。
 パイロットとして、新しい仲間に迎え入れると説明しておいてくれ」
【了解】
「さて…、手短に説明するか。
 俺はヤガミ。
 ヤガミ=ソーイチロー」

私も名前を名乗る。
『マイフミコ』
故郷では少し古風になってしまった私の名前。

「ここは火星独立軍、夜明けの船という艦の中だ。
 我々は、火星の海の中を…
 真の平和を求めてこの艦で活動している。
 逃げ回ってる、と言ってもいい。
 お前はこれから、火星独立軍の一員として、
 太陽系を含む銀河系での不毛な争いを止めさせるために動くことになる。
 所属部署は、RBパイロットだ。
 そしてその体は、お前がこの世界で行動するために作られた義体だ。
 せいぜい人間らしく振舞ってくれ」

何か言おうとするヤガミを遮って質問を投げかけた。
この青に金の刺繍と言う服は誰の趣味なのか?
当然の疑問だと思っていたがしかめっ面をされた。

「それは統合軍の制服だ。
 お前は漂流されていたところを拾われた戦争捕虜と言う設定だ」

身も蓋も無い事を言われた。
その設定を作ったのは誰なのかとか
この体は誰が作ったのかとか調子に乗って聞いてみたが
教えてはもらえなかった。

「あらためて…ようこそ火星へ、マイフミコ
 我々火星独立軍は、お前を歓迎する」





コータロー世界 アルカディア 港区






”長い夜が 昼を分けるのは”


”人の心が二つあるため”



”夏の終わりに秋が来るのは”


”冬の終わりに春が来るため”



”巡り”



”再び”



”繋がる”



”回る”




”全てを無くしたときに生まれ出る”




声に意識を向けると、闇があった。
続いて、鮮烈な光。太陽。
すぐに通り過ぎていく。
そして…水星、金星、地球。
悲しみが聞こえる。
あらゆるところから、その星に吸い寄せられるように
悲しみは集まっていく。




”人の心が二つあるのは”


”闇を抜けて光かがやく”



”恋の終わりに愛が来るのは”


”次の季節に生を生むため”



”巡り”



”再び”



”繋がる”



”回る”




”全てを無くしてまた手にいれる”





その星の海に悲しみが流れてくる。

その男こそ、人の心に春を呼ぶためだけの、ただそれだけの伝説である。
男の降り立った星の名前を、「火星」と言った。




コウタロー世界 ダイアンシス 医療室





希望の戦士を見送ると彼は1人つぶやいた。


「約束通り妖精が来た、絢爛舞踏祭が始まる…」







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あとがき(もしくは『うさぎホームラン』)

ども、掲示板読んでないみなさんおはつです。
掲示板でお会いしている方々、お待たせしました。(誰も待ってないと言う説はある)
絢爛×ナデシコをはじめさせていただいた『うさぎ』です。
元々、世界間の時間差の設定とかを使ってリアルタイムの無名世界観とナデシコ世界をクロスさせたお話をやろうと思ってたんですが
ゲームに負けてOVERSが機能停止しちゃったんで没企画になっちゃいました。




ようこそいらっしゃいました、うさぎさん


おぉぅ、これはルリ様じゃないですか
作品内のキャラの三次使用は自由らしかったんですが、流石にあとがき専用じゃ来ていただけないだろうなーとか思ってたところです。
黒い鳩さんに駄目元で「あとがき漫才に使いたいんでルリ様貸してください」って言ってみたん ですが、言ってみるもんですね


(漫才?)
ところで私のフォント見難くないですか?


ああ、ルリ様用の色なら瑠璃色だろうと調べたのをそのまま使ってるからですね。
本編の背景とあわせると見難くなるのは想定外ですが次までには見やすいような背景を調べておきます。
今回は太字対応で我慢してください。


今回はアキトさんは未だ出てきていないようですけど、ナデシコとのクロスと言う事はやっぱり私とアキトさんのラブラブな物語を…


やりません(超断言)



どっかーん(一号)


タメ無しで繰り出されたファーストブリッドを喰らって吹き飛ばされるうさぎ。
地面に落ちる12秒の火星の空の旅を満喫しながらうさぎは思った。 『ああ、空って青かったんだ…』(意味不明)



くっ、駄作家が増えました………

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感想

うさぎさん初投稿です♪

ナデシコと絢爛舞踏祭のクロス作品ですね〜

設定を見ると相沢祐一氏(カノン)も出るとの事ですし、表記上ナデ シコ×絢爛舞踏祭×カノンという事になりますか。

もっとも、絢爛舞踏祭はアニメでしか見ていないので、ちょっと良く わからない事もあるんですが……

取り合えず、絢爛舞踏祭はガンパレードマーチの平行世界の作品であ るため、第六世界群だとか第七世界群だとかいった設定が裏にあるようです。

後、恐らくアーヴによる銀河帝国のパロだろうと思われる、美少女に よる銀河帝国というのも絢爛舞踏祭にある設定です。

聖銃というのはロボットの事だと理解してまあ、間違いないと思われ ます。

ただまあ、この世界には普通のロボットとロストテクノロジーのロ ボットがあるんですが……

こういった込み入った設定が多いためとっつきにくい印象があるかも しれませんが、絢爛舞踏祭は面白い作品です!

ですので、うさぎさんの今後に期待しましょう♪

お話がどのように展開するのか、楽しみであります!

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