悪党はショタ連れロリに御用心!?


第一話(前半)
    
    少女と少年と殺しのライセンス






「場違い」というべきだろうか、

いやそれが当たり前のようにまかり通っている

その現場こそが狂っているべきと言うのが正しいのだろうか?

妖美な女性達が客の男に酒を勧め艶やかな会話を肴に夜の一時を楽しむ店

その店の真ん中に十代半ばいや十代前半とも見える少女が酒を啜り、女たちは酒を勧める。

そして客の男たちは彼女を先生と呼び、「今宵一時甘い時間でも」と声をかければ

少女はそれをさらりと流す。そんな男をみてさらに男達がそれを肴に大騒ぎし

店の女達は次は誰が行くのかとやんややんやと男達を囃し立てる。

はてさて、こんな騒ぎ、果たして事情を知らぬ者が見てなんと思うだろうか?



そんな世にも奇妙な店のある場所、それは地球という名前がつけられた星から

遥か遠く、銀河を超え宇宙を越えてそのまた宇宙の果てを越え無数の宇宙の先の中

その中にある星、ティスターグランド。その星の中でも海と平原と山に囲まれた自然

豊かな国、アボルド王国。王都ジェッセル。

その騒がしい店にまたカラリと店の鐘をならし一人の剣士らしき少女が・・・

あ、いや、少年が少女の前に男女を掻き分けて近づいていく。


「先生!先生!!帰ってこないと思ったらまたここでこんなに飲んで!こんな服も肌蹴させて!」


「んーーー?バルックかぇ。うむ、一人で帰れるくぁらー、心配せんでもよいぞぉ?」


「クサッ!って先生、そんな酔ってて本当に帰れるんですか!?それに最近、

 年端もいかぬ女の子達が行方不明になる事件が相次いでるんですよ。」


「おー?ナニィナニィ、もしかしなくともぉーわしぃのぉ心配してくれてるのかぇー?


うんうん、うれしぃのぉー。だぁがぁーしかぁーしだぁーこのわしぃを行方不明に出切る輩

なんぞぉーいやぁーせんぞぇー?まぁーその前に年端もいかぬってのが、300歳越える

わしぃがー入るものかどうかがぁー心配だがのぉー?フフフフ・・・ハハハハーー。」

それにつられて回りも笑い出す。そう、この女、見た目は少女ではあるが実のところ300歳を

越えるバァブァグァー・・・




ピンポンパンポーン




「話の途中ですがしばしお待ちください」




し・・・失礼・・・タイニーエルフなのである。故にいくつになってもヒューマンでいう

十代の姿を保ち続けながら老いる種族である。まぁ老いるといっても1000年は生きますがね。


「まぁまぁ、バルック様もそこにたってないでイッパイどうです?」


と店の女が進めると、


「おうおう、そうじゃなぁ、折角だからお主もイッパイ飲んでけぇー・・・

 といいたいところだがそれはやめといたほうが懸命じゃのぉ。」


「あらあら、そうでした。そうでした。この前バルック様、一口飲むなりそのままバタンと

 倒れてしまわれて、先生が家まで運ぶハメになったんですよねぇ。フフッフフフフ。」


そう言うと、店の女はバルックをしっとりと眺め、


「でも、もったいないですわぁーまるで女の子のような容姿に先生直伝の剣の腕

 あぁあぁーん、私なら即いただいちゃいますのに、先生ったら手をださないですものぉ」


「うむ、わしも誘ってはおるんだがこれが神が付くほどチェリーでわしも困っておるよ。

 まぁーチェリー度だけはこの広いティスターグランドといえどこやつを越えるものはおるまいて。」


「ほれほれ、お前さんがその悩ましげな谷間を見せ付けるから、鼻血だして凍り付いて

 おるぞ?プププッ」


「ハッ、あ・・・アワワ・・・・ウワッ!」


バルックと呼ばれた少年は流している鼻血を片手で抑えながら電光石火の早業で客と店員を

すり抜け店を出ていった。・・・と思いきやすぐさま踵を返し


「外の教会で待ってますからね!直ぐに勘定すまして来てください!」


と用件だけを投げ捨てるように叫ぶと瞬く間に去っていった。

そして数秒の静寂の後、店は大爆笑に包まれていた。


「先生?、お迎えも着たようですしそろそろお帰りになったほうがよろしいんじゃないですか?」


「そうじゃのぉ、そろそろお暇させてもらうかのぉ、「夜の教会で待ってますから」なんてあんな
 美人に言われたら行かなきゃ男が腐るからのぉー。」


「って、先生は女だろぉ?」


と男の客が突っ込むと、またもや酔いに任せて爆笑に包まれる。


「さぁて、では真面目に帰りるかのぉ」


そう言うと、いわゆる着物に近い服の肌蹴を若干直し

キセルを口に咥え金を置いて店を出て行った。



夜は更けてはいたが、外は街灯などの明かりで難なく帰れる明るさであった。

これも、魔導炉でエネルギー供給が安定して普及しているからである。地球で言うなれば

電気が各家に供給されている。といったところであろうか。

そう、ティスターグランドもまた魔導科学さまさまと言った世界なのである。。


店から教会まではそのまま商店街を抜け公園を越えたすぐそこであったが、公園を抜ける

前あたり・・・いや、正確に言うと店を抜けたあたりからではあるが、

先生と呼ばれた少女を尾行している者がいた。どちらにしても良い気配とはいえなかったが

少女はあえて公園に入るまで無視をしていた。そして公園に入り広間に出るなり


「やれやれ、女の後を大の男が数人で後をつけるなんて、褒められたものではないのぉ」


そう言い足を止めた。すると


「フン!気がついてたのか。なら話が早い。嬢ちゃん大人しくつかまって貰おうか?」


といいながらリーダーらしき男が出てくるとそれにつれられ、ぞろぞろ回りから

男が4人でてきた。


「ん?わしなんぞ捕まえても何も特はしまい?それともお主らはそういう趣味の集まりかぇ?」


「フン、そんな趣味なのはクライアントのほうだな!まぁー怨むならタイニーエルフに

 生まれたのを怨むんだなぁ。いまや数少ないタイニーエルフ、捕まえちまえば一生遊んで

 暮らせるってもんさ、大人しく捕まれば痛い思いしないですむぜ?」


「やれやれまったく・・・。どのみち、捕まれば痛い以前にろくな目に合いそうもないのが

 丸見えではないか。それにそんな油ギッシュで一ヶ月は風呂入ってなさそうで

 あと数年で頭ツルツルになるオッサン達には捕まりたくないのぉ。

 せめて美男子でも用意すればいいものを・・・そすれば、まぁー多少なりとも遊んで

 やってもいいかもしれんがのぉ?なぜにこんなスライムと融合したかのような

 オッサンを相手にせねばいかんのかのぉ・・・はぁ」


「言いたいことを言わしておけば、ちぃったー剣の腕が立つと聞いたがその華奢な体で
 
 何ができる!ギタギタにして趣味じゃないが痛い目に遭うだけじゃなく、

 クライアントに行く前にヒィヒィ言わして穴という穴を犯して俺達の怖さをその体に
 
 叩き込んでやる。」


「うげぇ、下品じゃのぉ・・酔いには効きすぎるわ・・・」


 そう少女がウンザリしていると、スライム融合男が地を蹴り殴りかかった。、


その見た目に似合わぬ俊敏さで少女との間合いを一瞬でつめていたが、 

当たる寸前まで確かにそこにあった少女の体はすでになく、その巨大な手は空を切っていた。


「残念じゃのぉ、んー今のは100点満点中・・・・0点かのぉ?」


 男は同じように拳を振り回すが結局のところ同じ結果に終わった。


「ええーーーい、ちょこまかと!野郎ども、もー遠慮はいらねーやっちまえ!!」


そう言うと男達は剣やら斧やらを構え襲い掛かかる。


「やれやれ、酔い覚めに少し遊んでやるとするかのぉ」


荒れ狂う男達の斬撃の中を少女は宙を舞う紙の様にヒラリヒラリと鮮やかにかわす。

長いツインテールがまるで新体操のリボンのように動きに合わせしなやかに舞い踊る。

そして数小節舞うとカチリという音を合図にダンスは止まる。

するとどうであろう。咥えていたキセルは少女の右手の中にあり、その先は切られることなく

男の剣を正面から受け止めていた。


「ふむ、いかんのぉ。よいか、刃物は力いっぱい振り回せば切れるというものではないぞ。

 折角切りやすいように形状に工夫がこなされておるのだ、その重みと形を使って切るのが

 良いというものだ。」


そう言うと、キセルが剣から離れたと思うと男の手からは剣が手放され、

その剣はいつの間にか少女の手に取られていた。

そのスキを狙ってかリーダーらしき男が背後から斧を一振り。すると紙一重で交わし

まるで、舞い踊るかのように剣を片手に旋回する。ゆっくりと静かに着物の帯や袖を

風に乗せ、長いツインテールがほんのり赤みを帯びた白い体を後から付き従うように

夜の闇に螺旋を描く。男達の目にもまるで王宮のダンスをスローで何度も再生してるかのように

それはハッキリと見えていた。

そして、ゆっくりとその髪が慣性の力から解放され優しく少女の肌を撫でると

キーーーーンという金属音が地面からし、それを合図にしたかのように男達が

ハッと気がつく。すると一人の男の剣が切れていた。そう、刃の部分の中ほどから

向こうがないのである。その先は地面に転がっていた。


「どうじゃ?こんなナマクラでもそれなりに作られておる。しっかりとした使い方をすれば

 無理なく無駄なく切れるであろぉ?」


「え・・・え??・・・・」


「な・・・な・・・バ、バケモノ・・・!うわぁーーーー!」


と剣を斬られた男が逃げ出すと後を追うように男達は一目散に逃げていった。


「やれやれ、バケモノ扱いとは酷いものよのぉ。この程度ならバルックでもできると言うに。」


(ん?ああ、教会に行くんだったか、とんだ道草をくってしまったのぉ またバルックめが遅いとうるさいか。やれやれ。)


そう頭の中で考えているとこちらに

人一人が走ってくる気配が窺えた。


「先生!大丈夫ですか?怪しげな男たちが走っていくのを見たのでまさかと思ったのですが・・・」


「見ての通りじゃぞ?お陰で酔いが醒めてしまったのぉ。しかし、心配して走って此処まで

探しに来てくれるなんてイイ男になったのぉ、わしはドキドキじゃ。」


そういいながら頬を染め妖美な眼差しで見つめるとバルックの手をとり肌蹴た着物の隙間にもぐらせ

その手に心臓の鼓動を確かめさそうと肌に直に当てさせる。



              「ブハァッ」



その直後大量の鼻血を出しバルックはぶっ倒れてしまった。

驚いたのは少女の方で、少し唖然としながら倒れている少年をキセルでつつき


「お・・・おい?バルック??・・・バルックちゃんアサダヨー・・・」


と言いながらツンツンつつき続けるがやはり反応はない。


「ほ・・・本当に伸びてしまいおったか!?・・・い・・・イタズラがすぎたかのぉ・・・」


やれやれとばかりにため息を一息つくと


「ふむ・・・」


そう言いキセルを左に持ち地に向かって空中で魔方陣を描き出しす。そしてその魔方陣が

光を放つと、2mを遥かに超える巨体の影が現れ


「む・・・またバルック殿が倒れたか?」


と現れるや早々、低く静かな声が空気を揺るがし問いかける。


「うむ・・・まぁ、そんな所じゃ、こやつとわしを家までたのむぞ。」


「承知」


そう全身筋肉質で牛と獅子と巨人でも混ぜて3で割り角を付け足したかのような

巨体が答えると、少年を抱え、少女を肩に座らせ、大地を蹴り風を唸らせながら

民家の屋根の遥か上を飛び越えながら疾風怒濤の勢いで闇夜を駆けて行った。








(チュンチュンチュン)



暖かい日差しがカーテンの隙間を抜け柔らかく部屋を包んでいる。そして鳥のさえずりが朝だと

伝えるかのように静かに響いていた。



「う・・・うーーん、朝か・・・あ、あれ?ここは・・・ん・・・なにか甘いニオイもするけど
 
 自分の部屋じゃない・・・?昨日の夜は確か・・・うーーん・・・」


「ん、んん・・・・うーーーん、はぁぁぁー」


その艶やかな声を聞くなり少年は振り向くと


   「うぁぁぁぁぁぁ・・・」


と叫び

     「 ドッシィーーーン 」


とベットから転げ落ちた。


「いっつー」


「んーーー朝から騒がしいのぉ・・・。もう少し静かに起きられんかのぉ?」


とぼんやりしながら少女が言うと


「セ・・・セ・センセイ・・ナ、ナ、ナ、ナナゼニココニイ・・イルンデスカ??」


「ん?自分の部屋のベットで寝てはいかんのかのぉ?」


「そ、そうですよね・・・ハハハハ、ここ先生のっ・・・エエーーーなんでココに僕いるんだ!??」


「うん?バルック、お主、覚えてないのかぇ?あんな昨晩は激しく求めてきたというのに・・・」


そう頬を染めながらうっとりと、置き上がり、裸の上半身を柔らかな朝日に包ませると。


「エ??ええ??ええーーーー」


と少年は鼻から血を流しながら壁際まで座ったまま後退する。


「フフフ、冗談じゃ、お主が昨晩、公園でぶっ倒れたから家まで運んで着包み剥いで洗濯機に突っ込んで

 寝かせたまでしかしておらぬわぁ。フフフ」


「え?ええ??」


そう言われると自分を見回し、自分も裸であることに気がつくも、思考が混雑しどうしてよいか

分からず鼻血を垂らしながらただただ朝日に包まれた柔らかな少女の体を見つめるだけであった。


「ふむ、して、いつまでその男の朝の生理現象を見せ付けておる?ああ、もしかしてこの体を見てもう朝の生理現象

 などではなくなったかのぉ?わしとてソコまでマジマジと見つめられた挙句その元気なモノを見せられたら恥らわずには

 いられないではないか。それともそれをわしに静まらせておしいのかのぉ?」


「え?、う・・・うわぁーーーー」


そう叫びながら少年は器用にも、やはりしゃがみ込んだまま後退し部屋をあっという間に出て行った。

さながら、ゴキブリが走り抜けるように・・・。


「やれやれ、面白いが困ったものよのぉ・・・あれでは、陰魔どもに会いでもしたらなす術なしといったところか。

 しかし、まぁあのように凛々しいモノを見せられてしまっては下腹部が疼いてしまうというものじゃ。はぁ〜。」


とボヤキながらベットを出て、一糸纏わぬその美しい肢体を朝日で着飾りローゼットに向かっていった。



しばらくして湯浴みを済ました少女は昨晩とは別の着物をこれまた肌蹴ながら着ながら

リビングでくつろいでいた。


「えっと、あ、あの、さっきは取り乱してすみませんでした。お、おはようございます。」


「うむ、おはよう。よいよい、わしもいい目の保養になったからのぉ」


そういってクスリと笑うと少年は顔を真っ赤にしてうつむいてしまう。


「ああ、今一度着替えてくるが、バルック、飛竜の用意をしてまいれ。」


「え、ピッフィーですか? はい先生。」


そう告げると二人はリビングから反対方向に移動していった。



着替えを済ました彼女が青く若草萌える地面をしなやかに竜と少年の居る方向へ歩いていく。


「バルック、支度はできたか?」


そう少女は少年に声をかけると


「はい。ピッフィーの調子もいいようです。あれ?今日はいつもの和服ではないのですか?」


そう言いながら少年は振り向くと、白と黒のシックでヒラヒラのあるドレスと

髪を下ろした少女のドレス姿が目に映り込んできた。


「うむ、今日は王宮でアクリス王女と謁見。その後恐らく、ルーウィン殿の所まで

 行くことになるやもしれぬ。」


「なるほど、それでピッフィーが必要でしたか。トレーナーの爺も最近遠出がなくて

 ピッフィーが運動不足ではないかと心配してましたが、タークスビレッジまでならピッフィーにも

 いい運動になりますね。」


そうピッフィーと呼ばれた細身のドレイクと呼ばれるドラゴンの一種の頭を撫でると

帯剣しているとは逆のほうに付けている小さなケースから干しマンゴーを与えていた。


「さて、いくぞ」


「はい」


そう言うと、少年はピッフィーに跨り、少女は足をそろえ鞍に腰掛けるように座る。

するとドレイクは羽ばたき一陣の風に成り青空を舞っていった。



王宮まではドレイクならあっという間である。王宮のドレイクポートにドレイクを

つけると、衛兵がやってきて身分等を照合をする。そして、向かい合った10mほどの

小型の魔導鋼機兵と門を潜り王宮に入る。

「先生、見ました?外にあった魔導鋼機兵、新型でしたよ!あれ、たしか小型ですが出力

や反応速度は大型のものほぼ同数値のものですよ。いいなぁ。はやくプラモででないかなぁ。」


「う、うむ・・・よくはわからんがすごいのぉ」


と答えながら、こういう所は男の子らしいなぁと少女は微笑ましく感じていた。

そして、長く白い廊下を抜け広間に出ると受付の兵士に話を通す。すると


「ラティマ・グランディア様。謁見の方承っておりますが、申し訳ありません。

 バルック・ディンゴ様、本日の謁見は男子禁制の場所で行われますので

 こちらにてお待ちください。」


と帰ってくる


「うむ、そうか、というわけじゃ、バルックよここでしばし待っておれ。」


「分かりました先生」


そう答えると、案内の兵とラティマは奥の通路を抜けていき、バルックは

一人ポツンとたっていることになった。すると、


「お?そこボサッと立っているのはラティマ様の弟子と言う名の愛玩具のバルック殿ではないか?」


「あ、いつも平和で暇そうな王宮護衛長のガディガさんじゃないですか。」


「ふ、なかなか言うようになったじゃないか!」


「ガディガさんのお陰ですよ。」


「「フフ、ハハハ、」」


「お二人とも静粛にお願いします。」


「「す、すいません」」

そう、2人はシンクロしてるかのように手を頭に当て誤っていた。


「しかし、三剣聖の一人を直々にアクリス王女が呼ぶとは穏やかじゃないね。」


そう、大柄でワイルドさが体から炸裂している男がつぶやくと、

バルックもなにやら考える用に黙り込んだ。

アボルドの剣聖、そう呼ばれる3人の剣士がいる。一人は近衛長「グラッグス・グリアン」

彼はヒューマンであり、もうかなりの老齢であるが、その剣気は年を重ねるごとに

研ぎ澄まされ、剣気のみで人を切るとまで噂されている。

そしてもう一人は、猫公爵と呼ばれる獣人の「ルーウィン・レファニード」

彼はかつて200年前の世界戦争を終結させたサーティーンナイツの一人ともそれを

まとめた一人とも、また人の心を読み未来も見るともできる、と言われている。

そして最後はバルックの師でもある「ラティマ・グランディア」

その小柄の少女という容姿に似合わぬ剣技とその技の美しさ、タイニーエルフということから

剣の妖精などとも呼ばれているらしい。

三剣聖のグラックス以外の二人も王宮の客人などで呼ばれるのは珍しくは無いが、

アクリス王女直々に呼んだというのが引っかかるのである。アクリス王女は王女という

地位以外にも王宮内の高官の監視である王宮公務監査局の局長を担っているのである。

とどのつまり王宮内の高官に容疑があり、その調査を剣聖に頼んでいるという可能性が

高いということである。それは非常に危険で厄介なことではある。

わざわざ最上級の実力者に頼まなければならないのだから。

そう考え込んでいると、ガディガが問う。


「そういや、お前、どうやってラティマ様のとこに弟子入りしたんだ?」


「え?ああ、実は僕は赤ん坊のときに先生に拾われたんです。」


「え?そ、そうなのか・・・なんかワリィこと聞いちまったな・・・。すまねぇ。」


「いえ、いいですよ。」


「うっし、じゃー俺はまた一回りして、剣技でも磨いてくるわぁーそれじゃ、また暇になったら

 勝負しようぜ。」


「はい、それではお仕事がんばって。」


そう挨拶を交わすと大男は背を向け軽く手を上げて去っていった。

それから数十分静かな空間で少年は少女の戻りを待っていた。



「待たせたのぉ。バルック。」


その聞きなれた優しい声に瞑想から少年は戻ると


「先生。・・・どうでした?」


「ああ、・・・殺しのライセンスを預かってきた」


と真面目な顔で答える。

殺しのライセンス、別名、S級特務捜査官、殺人許可証、など呼ばれ合法的に殆どの犯罪を許可される。

これをもつ者はアボルド王国広しといえど片手で数えるほどしかいないであろう。

2人は無言で王宮を歩いていたが、少年が先に口を開いた


「なんで、先生なんですか?剣聖でいいなら他にいるじゃないですか。」

そう、興奮気味に言うと。冷静な声が返ってくる。


「まぁ落ち着け。そんなに荒立たなくてもよい。他の2人では無理であろう?グラッグス殿は

 王宮内で顔が割れすぎているし、 ルーウィン殿では魔術があれど、あの姿を隠すのには目立ちすぎる

 ドラゴンウィングのマフィーでも実力的には申し分ないが彼にライセンスを与えたのなれば

 他のドラゴンウィングや官職も不平を言わずにはおれまい。その点わしは名こそ有名だが顔あまり

 しられてないし、いかに珍しいタイニーエルフであろうと年齢を知られない限りほかの

 エルフ達と見分けが付くまいて。それに年端のいかぬ少女が特務捜査官などと思うまい?

 なればこそじゃ、それにお主もおろう?剣技はダメダメだが、その体に刻み込まれた

 魔術式に勝てる魔術は同等のものか、特殊な魔術師以外お主を倒せまいて。」


そう少女は説明するが、納得いかないという文字が体からあふれ出ていた。


「それにのぉ、お主が生まれる前なんぞ、もっと危険な橋ばかり渡っていたし、

 ルーウィン殿と共に血と炎と魔術が舞う戦場に突っ込んでいったこともあるのじゃぞ?」


「・・・・・・・う、うん」


 少年はうなずくとそのまま黙ってしまった。まるで子供が拗ねているかのように。


「よし、ルーウィン殿のとこまではわしがピッフィーを操ろう。」


そう言いドレイクポートまでいきドレイクに少女が先に跨るとつづいて少年が跨る


「ほれ、しっかり捕まっておれ、飛ばすぞ!」


そういうとピッフィーは疾風を巻き起こし瞬く間に王宮から飛び去っていった。

少年はしっかりと少女にしがみつくと額を背中にあずけ、優しさと甘い香りを

無意識のうちに古い記憶と照らし合わせながら懐かしい鼓動を感じ取っていた。

一時間半ほどピッフィーを飛ばしただろうか。目的地にドレイクをつけると、

2人は降りて庭の丘で風を浴びる一人の猫の獣人の方へ歩いていった。


「久しいなぁ、今朝、懐かしく麗しい友人が訪問に来るよと風の妖精、ウィディが囁き
 
 去っていったがラティマ殿にバルック君だったか。元気で何より。
 
 ようこそタークスビレッジへ。」


「お久しぶりじゃな。ルーウィン殿も息災で何より。」


「こんにちわ、ルーウィン様」


「うむ、大きくなったなぁバルック君、しかし今でも思い出すよ、泣きそうな様子で赤子を抱いて

 ラティマ殿が尋ねてきたときは。正直驚きを隠せなかったよ。

 しかし、戦うばかりのお姫様がよく女で一つでここまで育てたものだ。フフフ、なつかしいな

 背中に赤子を背負って、できない子育てを必死に・・・」


「ゴホン、ンンッ、ンンッ、そのような昔のこと良いではないか。」


 顔を赤らめながら咳払いをし、少女はルーウィンの言葉を遮った。


「そうだな、フフフ、今のラティマ殿の心は昔と違い、そうだな、さしずめ恋する乙女のような

 心の色をしているよ。うんうん、いい事だ。」


「な、な、な、何を言ってるのじゃ、わしは今日は預けたアレを返して貰いにきたのじゃ。」


「ああ、これだな、16年も前になるか・・・。フッ」


そう言うとアレが何かを問うこともなく、初めからすべてを知っていたかのように宝石二つ

ポケットから出し、少女に渡した。


「相変わらずじゃな、わしがここに何のようで来るのか、これから何をするのか
 
 知っているといった感じじゃな。」


「そうでもないさ、ただそんな気がしただけだよ。それに未来はいつも変わり続ける

 ラティマがその子を育てたように、その二つの宝具を私に預けたように。真っ直ぐな心で突き進む

 絶え間ない努力があれば 常に未来は変わり続けるさ。」


まるで風に語りかけるようにルーウィンはつぶやく。


「また、難解なことをいうのじゃのぉ。まぁよい。そろそろ帰るとするか、下手に長居して

 あの絶倫ウサギに捕まってはたまらんからのぉ。」


「あらまぁ、絶倫ウサギとはボクのことなのかな?」


と背後から声をかけられ振り向くと、そこにはナイスバディを見せ付けるかのような
セクシィーな服装の女性が立っていた。



「ヒィェッ!? いえいえ、それではールーウィン殿、ミキティー殿、急ぎの用がそれではごきげんよう。」


そう全身の毛を逆立てながらいうと、一目散に少女はその場から姿を消していった。


「あ、先生!?」


そう少年が後を追うとすると


「バルック君、いつどんなときも古き騎士の教え忘れるでないぞ。

 『騎士は勇気を礎に、聖剣は己の心中にあり』とな

 では行くがいい騎士バルックよ。」


と老いた猫が少年に語りかける。


「はい!」


そうバルックが元気よく答え、一礼をし走っていった。

彼の背中を見つめ、静かに目を閉じ帯剣している剣を抜きとり垂直に構えると


「偉大なる古き騎士の魂が彼と彼の愛する者に優しき光を与えますように。」


と静かに祈りを捧げた。


「あれまぁ、ルーウィン君。キミともあろう者がずいぶんあの少女と少年に御執心じゃないかい?

 ああ、なるほどなるほど、そういう趣味だったのかい?それでボクのお誘いに乗らないんだねぇ。」

そうウサギの耳を垂らした女が言うと


「ふむ、さてな、しかしミキティ殿こそラティマ殿に何をすればあんなに恐れられるのだい?」


「いやぁーあれねぇーあんましカワイイからついついやりすぎて、丸一晩寝ずにイカし続けちゃってさー

 あぁあぁ、でもあのボロボロになった姿もよかったなぁ。今でも忘れられないよ・・・。」


「・・・なるほど、つまり、喰いにかかったのが逆に喰いつくされたってことですか・・・。しかしあのラティマ殿を
 逆に喰いつくすとは・・・魔族は恐ろしいですねぇ。」
 

「よく言うよ、ボクと大してかわらないだろぉ?この星が存在する前から生きる神獣君。」


「知られてましたか。フフフ・・・でも他言無用ですよ?」


そう話しながら二人は空高く舞う一筋の疾風を見送るのだった。

第一話(前編)終


あとがき

ストーリー系では、はじめましてー やみねこ=らっふるず・くちん ですー
今回、投稿はデビューって形になります。
SS書きではないので、皆さん理解してもらえたでしょうか?
まぁ主人公・男らしいのがいるんですが主人公はラティマのほうです。
みためはロリロリなんですが、年寄りくさくてですね、剣聖であったりですね、ときにはエロお姉様だったり、
バルックの師であったり、育ての親の一面があったり、時には大人の女の一面だったり
それでいてどこか少女の心があったりして、いろんな側面の彼女がいるんですけど、そんな彼女を
事件と戦いというシチュエーションの中どんな思い出進んでいくのか?というのを追っていってですね、
最後の最終回にですねぇー誰か一人でもこー胸がジーーンと来るような形になればいいかなぁーと思って
書き始めました。まだ、一話前半なんですが、どうでしょうか?そんな感じがこのあとがき読んでからでも
そんな感じかなぁーというのが思い起こされればとりあえず成功かなと思っています。
もしかするとですね、普通に誤字脱字、あと真面目に漢字を勘違いしてるかもしれせんが・・・。
それでは次回第一話後編でまたお会いしましょう。




感想を承りました犬です。
やみねこさんは本業はSS作家さんじゃないのですが、それはそれ、十二分に面白いです。
というか、座談会メンバーはどうして絵と文の両方できる人が多いのでしょう……?
文を書けるというだけですごいなぁって思いますのにねw

ジャンルはオリジナルのファンタジー物ですね。
こういうのは読者に理解させるのが難しかったり、説明が細かすぎてわけわかんなくなることが多いのですがわりとすらすらと読めました。
でも展開が速いのは爽快ではありますが、置いてけぼりになるかなぁって気もします。
最初ですし、ネタももうちょっと小出しだと嬉しいかもです。
と言いつつ、そういう作品も私は好きなのですけれど。

あ、それと主人公ラティマがえろいです。
エロく攻めるくせに純情ラブですか。
てか逆源氏物語ですよね。ウブに育てておいてエロく攻めて手玉に取る当たりが素敵。
口では文句言ってますが、絶対わざとウブに育ててると思うのですがどうなのか。

バルック君とは親子というより師弟というより、威勢のいい女の子と振り回される大人しい男の子。
でもお互いにどこか楽しそうなのが、やっぱり長年連れ添ってるんだなぁって思います。
そういう仲ってひとつの形ですよね。


さて、いい感じにファンタジーなので、続きがどうなるかは読めません。
内部の腐敗を暴くという事件からどう発展していくか、期待して待っています。

それでは。





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